説明

被覆粒子、被覆粒子の製造方法および吸着装置

【課題】吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能が得られる被覆粒子、かかる被覆粒子の製造方法、および、この被覆粒子を用いた吸着装置を提供すること。
【解決手段】本発明の被覆粒子は、少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成され、かつ平均粒径が1μm超である粒子の表面が、ポリアミン系化合物で被覆されている。また、かかる構成の被覆粒子は、水およびアルコールのうちの少なくとも一方を含む液体と、前記粒子と、前記ポリアミン系化合物とを含有する調製液を調製した後、該分散液を加熱することにより、前記粒子の表面に前記ポリアミン系化合物を被覆することにより製造される。さらに、調製液を調製する際に用いる液体としては、メタノールを主成分とするものが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆粒子、被覆粒子の製造方法および吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リン酸カルシウム系化合物は、カルシウムイオンとリン酸基とが高密度に規則的に配列した構造を有し、両性イオン交換体として静電相互作用に基づく吸着能を有する。このため、このリン酸カルシウム系化合物で構成される粒子(リン酸カルシウム系化合物粒子)は、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、細胞等の生体関連物質を分離する分離用カラムの吸着剤として広く利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなリン酸カルシウム系化合物粒子では、例えば、タンパク質を分離する場合、タンパク質が酸性タンパク質であると、その構造中に含まれるカルボキシル基がリン酸カルシウム系化合物粒子のカルシウムイオンに配位結合して吸着し、または、タンパク質が塩基性タンパク質であると、その構造中に含まれるアミノ基がリン酸カルシウム系化合物粒子のリン酸基にイオン結合して吸着する。そのため、タンパク質は、リン酸カルシウム系化合物粒子に対する各タンパク質における吸着能の大きさの差に基づいて分離される。
【0004】
しかしながら、リン酸カルシウム系化合物は、リン酸基による負電荷と比較して、カルシウムイオンによる正電荷の方が小さいため、負電荷を有する酸性タンパク質のような物質を吸着する吸着能が小さい。
【0005】
そのため、リン酸カルシウム系化合物粒子を吸着剤として備えるカラム(吸着装置)では、I)試料液中に含まれる負電荷の有する吸着物の回収率が低くなる、II)試料液中に負電荷を有する吸着物が複数含まれる場合、各吸着物が比較的早期にほぼ同時に溶出してしまうため十分な分離能が得られない等の問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−153588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能が得られる被覆粒子、かかる被覆粒子の製造方法、および、この被覆粒子を用いた吸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(16)の本発明により達成される。
(1) 少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成され、かつ平均粒径が1μm超である粒子の表面が、ポリアミン系化合物で被覆されていることを特徴とする被覆粒子。
【0009】
これにより、吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能を有する被覆粒子とすることができる。
【0010】
(2) 前記粒子の平均粒径は、2〜200μmである上記(1)に記載の被覆粒子。
これにより、本発明の被覆粒子を吸着装置が備える吸着剤に適用した際に、吸着装置が有するフィルタ部材の目詰まりや吸着装置内での液体の滞留を確実に防止しつつ、吸着剤が吸着物を吸着するのに十分な表面積を確保することができる。
【0011】
(3) 前記ポリアミン系化合物は、ポリエチレンイミンである上記(1)または(2)に記載の被覆粒子。
【0012】
ポリエチレンイミンは、エチレンイミンが直鎖状に連結されたのものと、分枝状に連結されたものとが有り、特に分枝状のポリエチレンイミンを用いれば、粒子に対してポリエチレンイミンで強固に被覆することができる。
【0013】
(4) 前記ポリエチレンイミンの平均分子量は、800〜100000である上記(3)に記載の被覆粒子。
【0014】
これにより、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が凝集塊を形成するのを防止しつつ、粒子の表面をポリエチレンイミンで確実に被覆することができる。
【0015】
(5) 前記粒子1gに対する前記ポリエチレンイミンの被覆量は、0.1〜100mgである上記(3)または(4)に記載の被覆粒子。
【0016】
これにより、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が凝集塊を形成するのを防止しつつ、粒子の正電荷を確実に増加させることができ、特に負電荷の大きな吸着物に対する吸着能および分離能を十分に向上させることができる。
【0017】
(6) 前記リン酸カルシウム系化合物は、ハイドロキシアパタイトである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の被覆粒子。
【0018】
ハイドロキシアパタイトは、生体関連物質に対するダメージを与える可能性が特に低いため、被覆粒子に吸着する吸着物として生体関連物質を用いた場合、この生体関連物質が変質・劣化しない状態で吸着することができる。
【0019】
(7) 少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成され、かつ平均粒径が1μm超である粒子の表面が、ポリアミン系化合物で被覆されている被覆粒子の製造方法であって、
水およびアルコールのうちの少なくとも一方を含む液体と、前記粒子と、前記ポリアミン系化合物とを含有する調製液を調製した後、該調製液を加熱することにより、前記粒子の表面に前記ポリアミン系化合物を被覆することを特徴とする被覆粒子の製造方法。
【0020】
これにより、吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能が得られる被覆粒子を、簡易な工程で製造することができる。
【0021】
(8) 前記調製液は、前記液体に前記ポリアミン系化合物を混合した後に、前記粒子を分散することにより得られる上記(7)に記載の被覆粒子の製造方法。
【0022】
かかる構成とすれば、ポリアミン系化合物が液体中に溶解した後に、液体中に前記粒子が分散することになるので、前記粒子に対してポリアミン系化合物を均一に接触させることができるため、得られる各被覆粒子をポリアミン系化合物で均一に被覆されたものとすることができる。
【0023】
(9) 前記調製液は、前記粒子を分散した後、さらに前記液体を添加することにより得られる上記(8)に記載の被覆粒子の製造方法。
【0024】
かかる構成とすれば、前記粒子の調製液中での分散性がより向上するため、得られる各被覆粒子をポリアミン系化合物でより均一に被覆されたものとすることができる。
【0025】
(10) 前記液体は、メタノールを主成分とする上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
【0026】
これにより、リン酸カルシウム系化合物とポリアミン系化合物とを効率よく反応させることができる。すなわち、リン酸カルシウム系化合物に含まれるリン酸基と、ポリアミン系化合物に含まれるアミノ基との反応を効率よく進行させることができる。その結果、粒子の表面のポリアミン系化合物による被覆率をより確実に向上させることができる。
【0027】
(11) 前記液体中における前記メタノールの含有率は、50wt%以上である上記(10)に記載の被覆粒子の製造方法。
【0028】
これにより、リン酸カルシウム系化合物とポリアミン系化合物とをより効率よく反応させることができる。その結果、粒子の表面のポリアミン系化合物による被覆率をさらに向上させることができる。
【0029】
(12) 前記ポリアミン系化合物は、ポリエチレンイミンである上記(7)ないし(11)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
【0030】
ポリエチレンイミンは、エチレンイミンが直鎖状に連結されたのものと、分枝状に連結されたものとが有り、特に分枝状のポリエチレンイミンを用いることにより、粒子に対してポリエチレンイミンが強固に被覆された被覆粒子を得ることができる。
【0031】
(13) 前記調製液中における前記粒子と前記ポリエチレンイミンとの重量比は、500:1〜10:1である上記(12)に記載の被覆粒子の製造方法。
【0032】
これにより、ポリエチレンイミン同士の結着によって、粒子同士が凝集塊を形成するのを防止しつつ、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で被覆することができる。
【0033】
(14) 前記リン酸カルシウム系化合物は、ハイドロキシアパタイトである上記(7)ないし(13)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
【0034】
ハイドロキシアパタイトは、生体関連物質に対するダメージを与える可能性が特に低いため、被覆粒子に吸着する吸着物として生体関連物質を用いた場合に、この生体関連物質が変質・劣化しない状態で吸着する被覆粒子を製造することができる。
【0035】
(15) 前記調製液を加熱する際の前記調製液の温度は、40〜100℃である上記(7)ないし(14)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
【0036】
これにより、調製液の突沸および変色を防止しつつ、アパタイトとポリエチレンイミンとを効率よく反応させることができ、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で被覆することができる。
【0037】
(16) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の被覆粒子を吸着剤として備えることを特徴とする吸着装置。
【0038】
これにより、試料液中に含まれる吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能を発揮する吸着装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0039】
少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成される粒子では、リン酸基による負電荷と比較して、カルシウムイオンによる正電荷の方が小さくなるという問題が認められるが、本発明によれば、被覆粒子の正荷電を大きくすることができるので、吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能を有する被覆粒子とすることができる。
【0040】
また、被覆粒子を製造する際に用いる調製液に含まれる液体としてメタノールを選択すれば、リン酸カルシウム系化合物とポリアミン系化合物とを効率よく反応させることができ、その結果、少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成される粒子の表面のポリアミン系化合物による被覆率をより確実に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の被覆粒子、被覆粒子の製造方法および吸着装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0042】
<被覆粒子>
まず、本発明の被覆粒子について説明する。
【0043】
本発明の被覆粒子は、その表面に、例えば、タンパク質、ヌクレオチド、核酸および細胞等の生体関連物質等の物質(吸着物)を吸着させる吸着剤として機能するものである。このような被覆粒子は、例えば、吸着装置が備えるカラム内に充填された形態で、試料液に含まれる複数種の吸着物を分離する分離用カラムの充填剤(吸着剤)として用いられる。
【0044】
この場合、複数種の吸着物を含む試料液を、カラム内を通過させることにより、試料液に含まれる各吸着物が被覆粒子に吸着する。そして、溶出液を、このカラム内を通過させると、被覆粒子に吸着した各吸着物が、被覆粒子に対する吸着性の差異および溶出液に対する親和性の差異に基づいた溶出時間で溶出する。そのため、このカラムを通過した溶出液を、所定時間毎に分画することにより、各吸着物がそれぞれ分離される。
【0045】
このような吸着剤として用いられる本発明の被覆粒子は、少なくともリン酸カルシウム系化合物で構成された粒子(以下、単に「粒子」という。)の表面が、ポリアミン系化合物で被覆されており、かつ粒子の平均粒径が1μm超の大きさとなっている。
【0046】
粒子は、被覆粒子の骨格を構成する部分であり、上述の通り、その少なくとも表面付近が、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成されている。
【0047】
リン酸カルシウム系化合物は、Ca10(POで表され、Ca/P比が1.0〜2.0のものが用いられ、カルシウムイオンとリン酸基とが高密度に規則的に配列した構造を有し、両性イオン交換体として静電相互作用に基づく吸着能を有する。このため、その少なくとも表面付近が、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成された粒子は、各種物質(特に、正電荷を有する物質)に対して優れた吸着能を有し、その表面に生体関連物質等の各種吸着物を吸着させる吸着剤の骨格として好適に使用される。
【0048】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、フッ素アパタイト(Ca10(PO)、塩素アパタイト(Ca10(POCl)、炭酸フッ素アパタイト(Ca10(PO,CO)、炭酸水酸アパタイト(Ca10(PO,CO(OH))等のうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
これらの中でも、リン酸カルシウム系化合物としては、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))を主成分とするものが好適である。ハイドロキシアパタイトは、生体関連物質に対して優れた親和性を有することから生体材料として広く用いられため、吸着物質として生体関連物質を選択した場合には、被覆粒子に吸着物質が極めて効率よく吸着するようになる。また、ハイドロキシアパタイトは、生体関連物質に対するダメージを与える可能性が特に低いため、生体関連物質(吸着物質)を変質・劣化しない状態で吸着させることができる。
【0050】
なお、これらのリン酸カルシウム系化合物は、公知の湿式合成法、乾式合成法等によって合成することができる。この場合、リン酸カルシウム系化合物中には、その合成の際に残存する物質(原料等)または合成の過程で生じる二次反応生成物等が含まれていてもよい。
【0051】
なお、粒子は、その全体がリン酸カルシウム系化合物で構成されたものであってもよく、図1に示すように、樹脂材料等で構成された粒子状の基材21の表面を主としてリン酸カルシウム系化合物で構成されるリン酸カルシウム系化合物層22で被覆した粒子2のような構成のものであってもよい。図1に示すような粒子とすれば、粒子の形状、大きさ(平均粒径等)、物性(密度等)等の調整が容易となる。
【0052】
基材21を構成する樹脂材料としては、各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的には、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン等、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、エボナイド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
また、リン酸カルシウム系化合物層22は、図1に示すように、基材21の表面付近に、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成された微小粒子23(以下、単に「微小粒子23」と言う。)の一部が貫入することにより形成されたものであるのが好ましい。これにより、リン酸カルシウム系化合物層22と基材21との密着性を優れたものとすることができる。このため、リン酸カルシウム系化合物層22の基材21の表面からの剥離を好適に防止すること、すなわち、粒子および被覆粒子の強度を優れたものとすることができる。
【0054】
この場合、リン酸カルシウム系化合物層22は、例えば、基材21の表面に、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成された多孔質粒子を衝突させることにより形成することができる。かかる方法によれば、容易かつ確実に、リン酸カルシウム系化合物層22を形成することができる。
【0055】
かかる構成の粒子は、ポリアミン系化合物で被覆されている。
このように粒子の表面をポリアミン系化合物で被覆すると、ポリアミン系化合物に含まれるアミノ基は、正電荷を有しているため、その一部が粒子表面で露出しているリン酸基に結合し、それ以外のものが被覆粒子の表面で露出することとなる。そのため、被覆粒子は、カルシウムイオンによる正電荷の他に、アミノ基による正荷電を有するものとなるため、負電荷を有する酸性タンパク質やヌクレオチドのような物質(吸着物)に対する吸着能が向上する。
【0056】
また、ポリエチレンイミンの被覆量を変化させることによって、被覆粒子の荷電状態を制御することができるので、目的とする吸着物の荷電状態に応じて、これに対する吸着性が最適となるように、被覆粒子の荷電状態を調整することができる。その結果、荷電状態が異なる各種吸着物に対して、より優れた吸着能および分離能を得ることができる。
【0057】
ポリアミン系化合物としては、例えば、ポリエチレンイミンおよびポリリジン等が挙げられるが、これらの中でも、特にポリエチレンイミンであるのが好ましい。
【0058】
このポリエチレンイミンは、下記化学式(1)で表されるエチレンイミンの重合体である。
【0059】
【化1】

【0060】
かかる構成のポリエチレンイミンは、エチレンイミンが直鎖状に連結されたのものと、分枝状に連結されたものとが有り、例えば、それぞれ、下記化学式(2)、(3)に示すものが有るが、本発明では、分枝状に連結されたものであるのが好ましい。
【0061】
【化2】

[式中、mは2以上の整数を表す。]
【0062】
【化3】

[式中、nは1以上の整数を表す。]
【0063】
エチレンイミンが分枝状に連結されたポリエチレンイミンは、上記化学式(3)のように、網目構造をなしていることから、粒子を被覆する際に、粒子に対してポリエチレンイミンで強固に被覆することができる。また、粒子の表面で露出するリン酸基にアミノ基が結合する際に、粒子の表面で露出するカルシウムイオンを被覆することなく網目構造から露出させることができる。その結果、被覆粒子は、負電荷を有する物質に対する吸着能をより確実に向上させることができる。
【0064】
なお、ポリアミン系化合物としては、上述したものの他、例えば、ポリエチレンイミンの水素の少なくとも一部が、他の元素または原子団により置き換えられたポリエチレンイミン誘導体であってもよい。
【0065】
ポリエチレンイミンの平均分子量は、800〜100000程度であるのが好ましく、5000〜10000程度であるのがより好ましい。平均分子量が小さ過ぎると、ポリエチレンイミンによって粒子を確実に覆うことが困難となり、被覆粒子の荷電状態を、所望のものとするのが困難となるおそれがある。また、平均分子量が上記上限を超えると、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が大きな凝集塊を作り、比表面積の大きな被覆粒子を得ることが困難となるおそれがある。
【0066】
ポリエチレンイミンの被覆量は、粒子1gに対して0.1〜100mg程度であるのが好ましく、0.5〜50mg程度であるのがより好ましく、0.5〜15mg程度であるのがさらに好ましい。被覆量が少ないと、被覆粒子における正電荷を増加させる効果が小さく、特に負電荷の大きな吸着物に対する吸着能を十分に向上させることができないおそれがある。また、被覆量が多いと、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が大きな凝集塊を作り、比表面積の大きな被覆粒子を得ることが困難となるおそれがある。
【0067】
なお、ポリエチレンイミンの被覆量は、例えば、次のようにして測定することができる。
【0068】
まず、被覆粒子0.10gと1N水酸化ナトリウム溶液20mLとを混合し、15secボルテックスをかけることによって3時間震とうし、懸濁液を得る。これにより、水酸化ナトリウム溶液中に被覆粒子を被覆するポリエチレンイミンが溶解する。
【0069】
次に、懸濁液を遠心し、その上清(原液)を採取する。そして、この原液の一部を、段階的に希釈することによって複数の希釈液を調製する。
【0070】
次に、原液および各希釈液の各20μLと、CBB試薬(タンパク質染色試薬)180μmとをそれぞれ混合し、20分間静置する。その後、各試料について630nmでの吸光度を測定し、希釈倍率と吸光度との相関図を得る。
【0071】
一方、既知濃度のポリエチレンイミン溶液(標準溶液)と、このポリエチレンイミン溶液を段階的に希釈した複数の希釈液について、同様にしてCBB染色および吸光度測定を行い、希釈倍率と吸光度との関係を示す検量線を得る。
【0072】
そして、この検量線の傾きと、試料における相関図の傾きとの比を求め、これに基づいて、原液中のポリエチレンイミンの量および被覆粒子1g当たりのポリエチレンイミンの量が算出される。
【0073】
さて、本発明では、上述したような構成の被覆粒子において、粒子の平均粒子径が1μm超となっている。
【0074】
粒子の平均粒径を1μm超とすれば、ポリアミン系化合物で被覆された被覆粒子を、後述する吸着装置4が備える吸着剤として適用したときに、フィルタ部材6、7の目詰まりを確実に防止することができる。また、被覆粒子同士の間を液体が容易に流れ、吸着装置4内で液体が滞留するのを防止することができる。その結果、被覆粒子は、優れた分離能を発揮するものとなる。
【0075】
また、粒子では、一般的に、その表面で露出するカルシウムイオンとリン酸基とでは、カルシウムイオンの露出量がリン酸基の露出量と比較して少なくなる傾向を示す。すなわち、リン酸基による負電荷と比較して、カルシウムイオンによる正電荷の方が小さくなる傾向を示す。そして、このような傾向は、粒子の粒径を1μm超のように比較的大きくした場合により認められる。
【0076】
そのため、粒子の表面をポリアミン系化合物で被覆して、被覆粒子を、カルシウムイオンによる正電荷の他に、アミノ基による正荷電を有する構成とすれば、被覆粒子の表面で負電荷と正電荷とをバランスよく露出させることができる。その結果、被覆粒子は、負電荷を有する物質および正電荷を有する物質の双方に対して、優れた吸着能を発揮するものとなる。
【0077】
粒子の平均粒径は、1μm超であればよいが、2〜200μm程度であるのが好ましく、2〜80μm程度であるのがより好ましい。これにより、フィルタ部材6、7の目詰まりや吸着装置4内での液体の滞留を確実に防止しつつ、被覆粒子が吸着物を吸着するのに十分な表面積を確保することができる。このため、かかる範囲内の平均粒径を有する被覆粒子が適用された吸着装置4は、より優れた吸着能および分離能を発揮するものとなる。
【0078】
<被覆粒子の製造方法>
次に、上述した被覆粒子を製造する本発明の被覆粒子の製造方法を説明する。
【0079】
なお、本実施形態では、全体がハイドロキシアパタイトによって構成された粒子の表面が、ポリエチレンイミンで被覆された被覆粒子を製造する場合を一例に説明する。さらに、全体がハイドロキシアパタイトによって構成された粒子を、湿式合成法を用いて作製する場合とする。
【0080】
[S1:ハイドロキシアパタイトの凝集体を含むスラリーを得る工程]
この工程では、水酸化カルシウム(第1の原料)とリン酸(第2の原料)とを、攪拌しつつ反応させ、ハイドロキシアパタイトの凝集体を含むスラリーを得る。
【0081】
具体的には、容器(図示せず)内で、水酸化カルシウムを含む液を攪拌しつつ、リン酸水溶液を滴下し、混合する。
【0082】
本実施形態では、リン酸を水溶液として使用する湿式合成法が用いられる。これにより、高価な製造設備を必要とせず、より容易かつ効率よくハイドロキシアパタイト(合成物)を合成することができる。
【0083】
なお、本発明では、第1の原料および第2の原料は、それらの少なくとも一方を溶液として用いるようにすればよく、双方を溶液として用いるようにしてもよい。
【0084】
また、この反応を攪拌しつつ行うことにより、水酸化カルシウムとリン酸との反応を効率よく進行させること、すなわち、それらの反応の効率を向上させることができる。
【0085】
[S2:スラリーを乾燥してハイドロキシアパタイトの粉体を得る工程]
この工程では、前記工程[S1]で得られたスラリーを乾燥させ、粉体を得る。
【0086】
この乾燥の方法としては、噴霧乾燥法が好適に使用される。かかる方法によれば、所望の粒径の粉体を、より確実かつ短時間で得ることができる。
【0087】
以上のような工程を経て、ハイドロキシアパタイト(合成物)の粒体(ハイドロキシアパタイト粒子)が得られる。
【0088】
[S3:ハイドロキシアパタイト粒子の表面をポリエチレンイミンで被覆する工程]
この工程では、前記工程[S2]で得られたハイドロキシアパタイト粒子と、ポリエチレンイミンと、溶媒(液体)とを混合することにより粒子・ポリエチレンイミン反応液(調製液)を調製した後、この反応液を加熱することにより、ハイドロキシアパタイト粒子の表面をポリエチレンイミンで被覆する。
【0089】
ここで、粒子・ポリエチレンイミン反応液を調整する方法、すなわちハイドロキシアパタイト粒子と、ポリエチレンイミンと、溶媒とを混合する方法は、特に限定されず、I)溶媒にハイドロキシアパタイト粒子とポリエチレンイミンとを同時に添加する方法、II)溶媒にハイドロキシアパタイト粒子を添加した後に、さらにポリエチレンイミンを添加する方法、およびIII)溶媒にポリエチレンイミンを添加した後に、さらにハイドロキシアパタイト粒子を添加する方法が挙げられるが、中でもIII)の方法であるのが好ましい。III)の方法であれば、ポリエチレンイミンが溶媒中に溶解した後に、溶媒中にハイドロキシアパタイト粒子が分散することになるので、ハイドロキシアパタイト粒子に対してポリエチレンイミンを均一に接触させることができるため、得られる各被覆粒子をポリエチレンイミンで均一に被覆されたものとすることができる。
【0090】
以下、III)の方法を代表に、具体的に説明する。
まず、ポリエチレンイミンと、水およびアルコールのうちの少なくとも一方を含む溶媒(以下、単に「溶媒(液体)」という。)とを混合してポリエチレンイミン溶液を調製する。
【0091】
その後、このポリエチレンイミン溶液に、ハイドロキシアパタイト粒子を加えて混合し、さらに、必要に応じて、溶媒(液体)を加えて混合することにより、粒子・ポリエチレンイミン反応液(調製液)を得る。
【0092】
なお、上記のように、ハイドロキシアパタイト粒子を加えた後に、さらに液体を加える構成とすれば、ハイドロキシアパタイト粒子・ポリエチレンイミン反応液中での分散性がより向上するため、得られる各被覆粒子をポリエチレンイミンでより均一に被覆されたものとすることができる。
【0093】
溶媒(液体)としては、水およびアルコールのうちの少なくとも一方を含んでいれば良く、具体的には、水、アルコールおよびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0094】
アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
これらの中でも、溶媒は、特に、メタノールを主成分として構成されているのが好ましい。溶媒としてメタノールを主成分として構成されているものを用いることにより、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとを効率よく反応させることができる。すなわち、ハイドロキシアパタイトに含まれるリン酸基と、ポリエチレンイミンに含まれるアミノ基との反応を効率よく進行させることができる。その結果、粒子の表面のポリエチレンイミンによる被覆率をより確実に向上させることができる。
【0096】
また、溶媒(液体)としてメタノールを主成分として構成されているものを用いる場合、溶媒中におけるメタノールの含有率は、50wt%以上であるのが好ましく、65〜85wt%程度であるのがより好ましい。これにより、溶媒としてメタノールを主成分と構成されるものを用いた場合に得られる効果がより顕著に発揮される。
【0097】
さらに、ポリエチレンイミンの被覆量を精度よく制御することができ、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で確実に被覆することができる。
【0098】
また、所望の被覆量を得るために要するポリエチレンイミンの使用量を抑制することができるため、材料コストの低減が図られる。
【0099】
粒子とポリエチレンイミンとの混合比(重量比)は、溶媒の種類、粒子の比表面積等によっても若干異なるが、例えば、溶媒としてメタノールを主成分として構成されているものを用いる場合、500:1〜10:1程度であるのが好ましく、100:1〜50:1程度であるのがより好ましい。ポリエチレンイミンの混合比が少な過ぎると、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で被覆するのが困難となるおそれがある。また、ポリエチレンイミンの混合比が多すぎると、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が大きな凝集塊を作り、比表面積の大きな被覆粒子を得ることが困難となるおそれがある。
【0100】
反応液の加熱温度は、溶媒の種類によって異なるが、例えば、溶媒としてメタノールを主成分として構成されているものを用いる場合には、40〜100℃程度であるのが好ましく、55〜95℃程度であるのがより好ましい。加熱温度が低すぎると、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとの反応が不十分となり、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で被覆するのが困難となるおそれがある。また、加熱温度が高すぎると、反応液が突沸するおそれがあり、危険である。
【0101】
また、この場合、反応液を加熱する時間は、5〜120分程度であるのが好ましく、15〜60分程度であるのがより好ましい。加熱時間が短過ぎると、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとの反応が不十分となり、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で被覆するのが困難となるおそれがある。また、加熱時間が長すぎると、それ以上の効果が認められないばかりか、粒子を被覆したポリエチレンイミンが変質・劣化してしまうおそれがあり好ましくない。
【0102】
なお、反応液の加熱は、図2に示すように、反応液10を密閉容器(反応容器)20内に収容し、この反応液10から加熱によって発生する気体を容器外に吸引した後、再び反応液に供給する循環経路30を形成して行うのが好ましい。これにより、気体が反応液10に供給される際、反応液10が攪拌され、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとの反応を促進することができる。また、かかる加熱方法の他、反応容器内に攪拌子を収容し、この攪拌子によって反応液を攪拌しながら、反応液の加熱を行うようにしてもよい。
【0103】
また、反応液10の加熱は、加熱手段を有する水槽40を用い、所定の反応温度に加熱された水槽40内の湯50中に、反応容器20を浸すことによって行うのが好ましい。これにより、簡易な装置で、反応液10を、前述の温度範囲に精度よく加熱することができる。
【0104】
[S4:被覆粒子を回収する工程]
この工程では、前記工程[S3]で反応を行った反応液から溶媒および未反応のポリエチレンイミンを除去し、ハイドロキシアパタイト粒子がポリエチレンイミンで被覆された被覆粒子を回収する。
【0105】
具体的には、前記工程[S3]における反応液の加熱を、密閉容器(反応容器)20を用いて行った場合、反応容器20内に反応液10を収容した状態で、循環経路30のうち反応液10に気体を供給する経路を閉じる。そして、反応液10を加熱しつつ、反応液10から発生する気体(気化した溶媒)を吸引して排出する。そして、反応容器20内の溶媒が、ほぼ完全に除去された時点で加熱を停止する。
【0106】
この加熱温度は、溶媒の種類によって異なるが、例えば、溶媒としてメタノールを用いた場合には、40〜100℃程度であるのが好ましく、55〜95℃程度であるのがより好ましい。加熱温度が低すぎると、溶媒を除去するのに長時間を要し、製造効率が低下してしまう。また、加熱温度が高すぎると、反応液10が突沸するおそれがあり、危険である。
【0107】
次に、反応容器20内の被覆粒子を、フィルタ上に載せ、被覆粒子およびフィルタに、蒸留水を通過させることによって被覆粒子を洗浄する。その後、フィルタ上から被覆粒子を回収し、デシケータ等を用いて乾燥する。
【0108】
この被覆粒子の洗浄は、被覆粒子およびフィルタを通過させた後の蒸留水が、ニンヒドリン試薬と反応させたとき、その呈色反応が確認されなくなるまで行うことが好ましい。これにより、被覆粒子に付着している未反応のポリエチレンイミンを確実に除去することができる。その結果、残存する未反応のポリエチレンイミンによって、被覆粒子の吸着能や分離能が損なわれたり、吸着物が変質したりすることを防止することができる。さらに後述する吸着装置が備える吸着剤に被覆粒子を適用した際に、溶出液中にポリエチレンイミンが漏出してしまうのを確実に防止することができる。
【0109】
以上のような工程を経て、ハイドロキシアパタイト粒子の表面が、ポリエチレンイミンで被覆された被覆粒子を製造することができる。
【0110】
以上のように、本実施形態で説明した被覆粒子の製造方法では、常法によってハイドロキシアパタイト粒子を作製し、この粒子の表面をポリエチレンイミンで被覆して被覆粒子を得た後に回収する。粒子のポリエチレンイミンによる被覆は、粒子とポリエチレンイミンと溶媒とを混合して反応液を調製し、この反応液を加熱するといった簡易な工程で行うことができる。さらに、反応液の加熱も、40〜100℃程度と低温であり、簡易な加熱装置を用いて行うことができる。
【0111】
<吸着装置>
次に、本発明の被覆粒子が吸着剤として適用された吸着装置(本発明の吸着装置)について説明する。
【0112】
図3は、本発明の被覆粒子が適用された吸着装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図3中の上側を「流入側」、下側を「流出側」と言う。
【0113】
ここで、流入側とは、目的とする吸着物を分離(精製)する際に、例えば、試料液(吸着物を含む液体)、溶出用緩衝液(溶出液)等の液体を、吸着装置内に供給する側のことを言い、一方、流出側とは、前記流入側と反対側、すなわち、前記液体が吸着装置内から流出する側のことを言う。
【0114】
図3に示す吸着装置4は、カラム5と、粒状の被覆粒子が吸着剤として充填された吸着剤1と、2枚のフィルタ部材6、7とを有している。
【0115】
カラム5は、カラム本体51と、このカラム本体51の流入側端部および流出側端部に、それぞれ装着されるキャップ(蓋体)52、53とで構成されている。
【0116】
カラム本体51は、例えば円筒状の部材で構成されている。カラム本体51を含めカラム5を構成する各部(各部材)の構成材料としては、例えば、各種ガラス材料、各種樹脂材料、各種金属材料、各種セラミックス材料等が挙げられる。
【0117】
カラム本体51には、その流入側開口および流出側開口を、それぞれ塞ぐようにフィルタ部材6、7を配置した状態で、その流入側端部および流出側端部に、それぞれキャップ52、53が螺合により装着される。
【0118】
このような構成のカラム5では、カラム本体51と各フィルタ部材6、7とにより、吸着剤充填空間56が画成されている。そして、この吸着剤充填空間56の少なくとも一部に(本実施形態では、ほぼ満量で)、本発明の被覆粒子が吸着剤1として充填されている。
【0119】
吸着剤充填空間56の容積は、試料液の容量に応じて適宜設定され、特に限定されないが、試料液1mLに対して、0.05〜10mL程度が好ましく、0.5〜2mL程度がより好ましい。
【0120】
吸着剤充填空間56の寸法を上記のように設定し、かつ被覆粒子の寸法を前述のように設定することにより、複数種の吸着物を相互にかつ確実に分離することができる。
【0121】
また、カラム本体51に各キャップ52、53を装着した状態で、これらの間の液密性が確保されるように構成されている。
【0122】
各キャップ52、53のほぼ中央には、それぞれ、流入管54および流出管55が液密に固着(固定)されている。この流入管54およびフィルタ部材6を介して被覆粒子に、前記液体が供給される。また、被覆粒子に供給された液体は、被覆粒子同士の間(間隙)を通過して、フィルタ部材7および流出管55を介して、カラム5外へ流出する。このとき、被覆粒子は、その平均粒径が1μm超であるため、被覆粒子同士の間には、液体が流れるのに十分な間隙が形成されている。このため、被覆粒子同士の間を、液体が容易に流れ、カラム本体51内で液体が滞留するのを防止することができる。そして、このようにカラム本体51内を液体が通過する過程で、被覆粒子が負電荷を有する物質および正電荷を有する物質の双方に対して優れた吸着能を有することから、試料液(試料)に含まれる複数種の吸着物は、被覆粒子に対する吸着性の差異および緩衝液に対する親和性の差異に基づいて確実に分離される。
【0123】
各フィルタ部材6、7は、それぞれ、吸着剤充填空間56から被覆粒子が流出するのを防止する機能を有するものである。これらのフィルタ部材6、7は、それぞれ、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエーテルポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる不織布、発泡体(連通孔を有するスポンジ状多孔質体)、織布、メッシュ等で構成されている。
【0124】
各フィルタ部材6、7の平均孔径は、本発明の被覆粒子の平均粒径が1μm超であるため、1μm以下であれば良いが、好ましくは0.2〜0.8μm程度に設定される。そのため、この被覆粒子を吸着剤1として備える吸着装置4では、被覆粒子がフィルタ部材6、7の孔部に入り込んで目詰まりが生じたり、被覆粒子がフィルタ部材6、7を通過して流出することが、確実に防止される。
【0125】
以上のように構成された吸着装置では、被覆粒子が負電荷を有する物質および正電荷を有する物質の双方に対して優れた吸着能を有することから、各種物質が主に静電相互作用によって被覆粒子に吸着し、この吸着剤1に対する吸着性の差異および緩衝液に対する親和性の差異に基づいて、それぞれを分離することができる。すなわち、試料液中に含まれる負電荷を有する物質および正電荷を有する物質の双方を、確実に分離・回収することができる。
【0126】
また、例えば、溶出用緩衝液の塩濃度を連続的または段階的に変化させことにより、複数種の吸着物を分解能よく分離することができるため、早期に負電荷を有する物質が溶出液中に漏出してしまうという問題も解消される。
【0127】
なお、本実施形態のように、被覆粒子を吸着剤充填空間56にほぼ満量充填する場合には、被覆粒子は、吸着剤充填空間56の各部において、ほぼ同一の組成をなしているのが好ましい。これにより、吸着装置4は、各種吸着物の分離(精製)能が特に優れたものとなる。
【0128】
また、吸着剤充填空間56の一部(例えば流入管54側の一部)に被覆粒子を充填し、その他の部分には他の吸着剤を充填するようにしてもよい。
【0129】
次に、このような吸着装置4を用いた分離方法の一例について説明する。
[1] 調製工程
まず、複数種の吸着物を含む試料と、緩衝液とを混合して、試料液を調製する。
【0130】
試料液の調製に用いる緩衝液は、その塩濃度が後述する溶出用緩衝液の塩濃度と等しいか低いのが好ましい。これにより、吸着剤1として充填されている被覆粒子に吸着物確実に吸着させることができる。
【0131】
試料液を調製する際に用いる緩衝液の量は、特に限定されないが、吸着物の質量に対して、5〜300倍程度であるのが好ましく、50〜150倍程度であるのがより好ましい。
【0132】
また、この緩衝液のpHは、試料に含まれる吸着物の種類によって異なるが、例えば、吸着物がタンパク質、ヌクレオチドおよび核酸等の生体関連物質である場合、6〜8程度であるのが好ましく、6.5〜7.5程度であるのがより好ましい。
【0133】
さらに、緩衝液の温度も、特に限定されないが、20〜50℃程度であるのが好ましく、25〜45℃程度であるのがより好ましい。
【0134】
かかるpH範囲および温度範囲の緩衝液を用いることにより、吸着物が生体関連物質である場合、その変質を確実に抑えて、被覆粒子に効率よく付着させることができる。その結果、目的とする吸着物の回収率の向上を図ることができる。
【0135】
なお、調製した試料液中に固形物が含まれる場合には、試料液中から固形物を除去するのが好ましい。これにより、カラム5の目詰まりを確実に防止することができる。この固形物を除去する方法は、特に限定されないが、例えば、試料液を遠心分離した後、上清液を回収し、この上清液から残存する固形物をフィルタにより濾別する方法等が挙げられる。
【0136】
[2] 供給工程
次に、この試料液を、流入管54およびフィルタ部材6を介して被覆粒子に供給して、カラム5(吸着装置4)内を通過させて、吸着剤(被覆粒子)1に接触させる。
【0137】
これにより、被覆粒子に対して吸着能の低い成分は、フィルタ部材7および流出管55を介してカラム5内から流出する。そして、被覆粒子に対して吸着能が高い成分は、カラム5内に保持される。
【0138】
[3] 分画工程
次に、流入管54からカラム5内に、吸着物を溶出させるための溶出用緩衝液(溶出液)を供給して、カラム5内から流出管55を介して流出する流出液を、所定量ずつ分画(採取)する。
【0139】
本実施形態では、溶出用緩衝液の塩濃度を連続的または段階的に変化させる。なお、溶出用緩衝液には、前記調製工程において用いる緩衝液と同種のものが好適に用いられる。
【0140】
ここで、複数種の吸着物が被覆粒子に吸着している場合、被覆粒子に溶出用緩衝液が接触すると、まず、被覆粒子に対する吸着能が低い吸着物が被覆粒子から離脱し、流出管55から流出する。その後、被覆粒子に吸着した他の吸着物は、被覆粒子に対する吸着能が低いものから、溶出用緩衝液の塩濃度に応じて被覆粒子から離脱する。そして、溶出用緩衝液中に混入し、流出管55から流出する流出液中に回収される。そのため、流出管55から流出する流出液を所定量ずつ分画すれば、複数種の吸着物を含む試料液中から特定の吸着物を分離することができる。
【0141】
ここで、被覆粒子は、ポリアミン系化合物の被覆量を変化させることによって、その荷電状態、すなわち、各吸着物に対する吸着能を制御することができる。このため、例えば、回収したい吸着物に対する吸着能を優先して、ポリアミン系化合物の被覆量を設定した場合には、この吸着物の回収率を向上させることができる。
【0142】
また、さらに、回収したい吸着物に対する吸着能と、他の吸着物に対する吸着能との差がより大きくなるように、ポリアミン系化合物の被覆量を設定した場合には、回収したい吸着物の溶出時間と他の吸着物の溶出時間との差をより長くすることができ、複数種の吸着物を含む試料液中から特定の吸着物を分離能よく分離することができる。
【0143】
なお、緩衝液の通液速度は、特に限定されないが、1〜10mL/min程度であるのが好ましく、1〜5mL/min程度であるのがより好ましい。
【0144】
緩衝液の通液時間は、特に限定されないが、それぞれ、5〜60min程度であるのが好ましく、10〜30min程度であるのがより好ましい。
【0145】
以上、本発明の被覆粒子、被覆粒子の製造方法および吸着装置について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0146】
例えば、本発明の被覆粒子および吸着装置の各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【0147】
また、本発明の被覆粒子の製造方法は、任意の目的で、1以上の工程を追加することができる。
【実施例】
【0148】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.粒子の製造
【0149】
(実施例1)
まず、水酸化カルシウム140gを純水1200mLに分散させて分散液を調製し、この分散液を攪拌しつつ、これにリン酸水溶液(リン酸濃度10wt%)700mLを滴下した。これにより、水酸化カルシウムとリン酸とを反応させてハイドロキシアパタイトを合成し、ハイドロキシアパタイトの凝集体を含有するスラリーを得た。
【0150】
次に、このスラリーを噴霧乾燥することにより、ハイドロキシアパタイトの粒体(平均粒径40μmのHAp粒子)を得た。
【0151】
次に、30wt%ポリエチレンイミン(MW70000)水溶液10gを、メタノール50mLに溶解してポリエチレンイミン溶液を調製した。
【0152】
そして、得られたハイドロキシアパタイト粒子10gと、ポリエチレンイミン溶液5mLとを混合し、さらにメタノール100mLを加えて混合することにより、粒子・ポリエチレンイミン反応液を得た。
【0153】
次に、反応液を、循環経路を有する反応容器内に収容し、反応容器を70℃の湯中に浸すことによって15分間加熱した。これにより、粒子を構成するハイドロキシアパタイトと、ポリエチレンイミンとを反応させ、ハイドロキシアパタイト粒子の表面を、ポリエチレンイミンで被覆した。なお、この反応の際、循環経路を介して、反応液から発生する気体を容器外に吸引した後、再び反応液に供給するようにした。
【0154】
次に、循環経路のうち反応液に気体を供給する経路を閉じ、反応容器を、70℃の湯中に浸した状態で、反応液から発生する気体(気化した溶媒)を吸引して排出した。そして、反応容器内の溶媒が、ほぼ除去された時点で加熱を停止した。
【0155】
次に、反応容器内の粒子を、フィルタ上に載せ、粒子およびフィルタに、蒸留水を通過させることによって粒子を洗浄した。この粒子の洗浄は、粒子およびフィルタを通過させた後の蒸留水が、ニンヒドリン試薬と反応させたとき、その呈色反応が確認されなくなるまで行った。
その後、フィルタ上から粒子を回収し、デシケータを用いて乾燥した。
【0156】
以上のようにして、ハイドロキシアパタイト粒子の表面がポリエチレンイミンで被覆された粒子(被覆粒子:PEI−HAp粒子)を得た。
【0157】
なお、この粒子について、前述のCBB試薬を用いる方法によってポリエチレンイミンの被覆量を測定したところ、5.99mg/gであった。
【0158】
(実施例2)
粒子・ポリエチレンイミン反応液を調製する溶媒として、メタノールの代わりに水を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、粒子(被覆粒子:PEI−HAp粒子)を得た。
【0159】
この粒子について、前述のCBB試薬を用いる方法によってポリエチレンイミンの被覆量を測定したところ、5.29mg/gであった。
【0160】
(比較例)
ポリエチレンイミンによる粒子の被覆を省略した以外は、実施例1と同様にして、粒子(HAp粒子)を得た。
【0161】
この粒子について、前述のCBB試薬を用いる方法によってポリエチレンイミンの被覆量を測定したところ、ポリエチレンイミンは検出されなかった。
【0162】
2.評価
2−1.タンパク質の溶出パターンの検討
実施例1および比較例で製造された粒子を、それぞれ、カラム(40×100mm)内に充填した。
【0163】
また、試料液として、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に、オバルブミン(Ova)を10mg/g、ミオグロビン(Myo)を5mg/g、α−キモトリプシノーゲン−A(α−Chymo)を5mg/g、チトクローム−C(Cyto)を5mg/gそれぞれ溶解したタンパク質溶液を用意した。
【0164】
そして、各カラム内に、タンパク質溶液を、1.0mL/minの速度で供給した後、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を、1.0mL/minの速度で1分間供給した。
【0165】
続いて、各カラム内に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を、その濃度を10mMから400mMまで連続的に変化させて15分間供給した後、400mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を5分間供給した。
【0166】
そして、各カラムから流出する流出液について、280nmにおける吸光度曲線を観測した。各カラムについて観測された吸光度曲線を、それぞれ、図4および図5に示す。
【0167】
図4および図5を見ると、いずれのカラムの吸光度曲線においても、オバルブミン、ミオグロビン、α−キモトリプシノーゲン−A、チトクローム−Cのそれぞれに対応するピークが観測されるが、各カラムで、その溶出パターンが異なっているのがわかる。
【0168】
すなわち、図5に示すように、比較例の粒子(HAp粒子)を用いたカラムでは、試料液中のタンパク質が、オバルブミン、ミオグロビン、α−キモトリプシノーゲン−A、チトクローム−Cの順で溶出する。これに対して、図4に示すように、実施例1の粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラムでは、ミオグロビン、α−キモトリプシノーゲン−A、チトクローム−Cがほぼ同じ溶出時間で溶出し、オバルブミンのみが、他のタンパク質よりも遅れて溶出する。
【0169】
このことから、ハイドロキシアパタイト粒子を、ポリエチレンイミンで被覆することにより、これを吸着剤とするカラムのタンパク質の溶出パターンが変化することがわかった。そして、実施例1の粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラムで、特に、オバルブミン(酸性タンパク質)の溶出時間が遅くなっていることから、特に、酸性タンパク質に対する吸着能が向上し、酸性タンパク質を他のタンパク質から分離する性能(酸性タンパク質に対する分離能)が向上することがわかった。
【0170】
2−2.ヌクレオチドの溶出パターンの検討
各実施例および比較例で製造された粒子を、それぞれ、カラム(40×100mm)内に充填した。
【0171】
また、試料液として、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に、AMP、ADP、ATPを、それぞれ5mg/mL溶解したヌクレオチド溶液を用意した。
【0172】
そして、各カラム内に、ヌクレオチド溶液を、1.0mL/minの速度で供給した後、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を、1.0mL/minの速度で1分間供給した。
【0173】
続いて、各カラム内に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を、その濃度を10mMから400mMまで連続的に変化させて15分間供給した後、400mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を5分間供給した。
【0174】
そして、各カラムから流出する流出液について、260nmにおける吸光度曲線を観測した。各カラムについて観測された吸光度曲線を、それぞれ、図6〜図8に示す。
【0175】
図6〜図8を見ると、いずれのカラムの吸光度曲線においても、AMP、ADP、ATPのそれぞれに対応するピークが、この溶出順序で観測されるが、実施例1の粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラム、実施例2の粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラム、比較例の粒子(HAp粒子)を用いたカラムの順で、各ヌクレオチドの溶出時間が遅くなり、各ヌクレオチドに対応するピーク同士の距離が広がることがわかる。
【0176】
このことから、ハイドロキシアパタイト粒子を、ポリエチレンイミンで被覆することにより、これを吸着剤とするカラムのヌクレオチドの分離能が向上することがわかった。また、実施例2の粒子(反応液の溶媒として水を使用)を用いたカラムに比べて、実施例1の粒子(反応液の溶媒としてメタノールを使用)を用いたカラムの方が、各ヌクレオチドに対応するピーク同士の距離がより広がっていることから、反応液の溶媒としてメタノールを用いることにより、より分離能に優れた粒子が得られることがわかった。
【0177】
なお、粒子をポリエチレンイミンで被覆する際の反応液の溶媒として、メタノールの代わりに、エタノールまたはイソプロピルアルコールを用いて粒子(PEI−HAp粒子)を製造し、同様の評価を行ったところ、反応液の溶媒として水を用いて製造された粒子(PEI−HAp粒子)の場合と同様の評価結果であった。このことから、粒子をポリエチレンイミンで被覆する際の反応液の溶媒としては、メタノールが好適であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の被覆粒子を構成する粒子の一例を示す断面図である。
【図2】粒子の表面をポリアミン系化合物で被覆する際に用いる反応装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の被覆粒子を適用した吸着装置の一例を示す縦断面図である。
【図4】実施例1で製造した粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラムについて、各種タンパク質を吸着させたときの流出液の吸光度曲線である。
【図5】比較例で製造した粒子(HAp粒子)を用いたカラムについて、各種タンパク質を吸着させたときの流出液の吸光度曲線である。
【図6】実施例1で製造した粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラムについて、各種ヌクレオチドを吸着させたときの流出液の吸光度曲線である。
【図7】実施例2で製造した粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラムについて、各種ヌクレオチドを吸着させたときの流出液の吸光度曲線である。
【図8】比較例で製造した粒子(HAp粒子)を用いたカラムについて、各種ヌクレオチドを吸着させたときの流出液の吸光度曲線である。
【符号の説明】
【0179】
1 吸着剤
10 反応液
2 粒子
20 密閉容器
21 基材
22 リン酸カルシウム系化合物層
23 微小粒子
30 循環経路
4 吸着装置
40 水槽
5 カラム
50 湯
51 カラム本体
52、53 キャップ
54 流入管
55 流出管
56 吸着剤充填空間
6、7 フィルタ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成され、かつ平均粒径が1μm超である粒子の表面が、ポリアミン系化合物で被覆されていることを特徴とする被覆粒子。
【請求項2】
前記粒子の平均粒径は、2〜200μmである請求項1に記載の被覆粒子。
【請求項3】
前記ポリアミン系化合物は、ポリエチレンイミンである請求項1または2に記載の被覆粒子。
【請求項4】
前記ポリエチレンイミンの平均分子量は、800〜100000である請求項3に記載の被覆粒子。
【請求項5】
前記粒子1gに対する前記ポリエチレンイミンの被覆量は、0.1〜100mgである請求項3または4に記載の被覆粒子。
【請求項6】
前記リン酸カルシウム系化合物は、ハイドロキシアパタイトである請求項1ないし5のいずれかに記載の被覆粒子。
【請求項7】
少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成され、かつ平均粒径が1μm超である粒子の表面が、ポリアミン系化合物で被覆されている被覆粒子の製造方法であって、
水およびアルコールのうちの少なくとも一方を含む液体と、前記粒子と、前記ポリアミン系化合物とを含有する調製液を調製した後、該調製液を加熱することにより、前記粒子の表面に前記ポリアミン系化合物を被覆することを特徴とする被覆粒子の製造方法。
【請求項8】
前記調製液は、前記液体に前記ポリアミン系化合物を混合した後に、前記粒子を分散することにより得られる請求項7に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項9】
前記調製液は、前記粒子を分散した後、さらに前記液体を添加することにより得られる請求項8に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項10】
前記液体は、メタノールを主成分とする請求項7ないし9のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項11】
前記液体中における前記メタノールの含有率は、50wt%以上である請求項10に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項12】
前記ポリアミン系化合物は、ポリエチレンイミンである請求項7ないし11のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項13】
前記調製液中における前記粒子と前記ポリエチレンイミンとの重量比は、500:1〜10:1である請求項12に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項14】
前記リン酸カルシウム系化合物は、ハイドロキシアパタイトである請求項7ないし13のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項15】
前記調製液を加熱する際の前記調製液の温度は、40〜100℃である請求項7ないし14のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし6のいずれかに記載の被覆粒子を吸着剤として備えることを特徴とする吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−256521(P2009−256521A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109616(P2008−109616)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(503209445)
【Fターム(参考)】