説明

被覆粒状肥料

【課題】 水田等に被覆粒状肥料を施用する際に、水面上への被服肥料粒子の浮上を防止し、しかも被覆粒状肥料の製造時には、被覆肥料粒子同士の凝集・固結を防止させた被覆粒状肥料を提供する。
【解決手段】 樹脂で被覆した肥料粒子表面を、アミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物で被覆してなる被覆粒状肥料である。本発明は、このように樹脂で被覆した肥料粒子表面を、アミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物で被覆したことを特徴とする被覆粒状肥料であり、撥水製の強い樹脂を肥料粒子に被覆することで、被覆肥料粒子の浮上が生じ易い場合いでも、本発明の方法を用いることで優れた浮上防止効果とその持続性が得られ、更に被覆肥料粒子同士の良好な固結防止効果を同時に発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被覆粒状肥料に関し、更に詳しくは、水田等に被覆粒状肥料を施用する際に、水面上への被覆肥料粒子の浮上を防止し、しかも被覆粒状肥料の製造時には、被覆肥料粒子同士の凝集・固結を防止させた被覆粒状肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境の保全や農業におけるコストダウン等の観点から、施肥に際して作物に効率的に肥料成分を吸収させることで肥料の利用効率を高め省力化の促進及び水田での肥料の流亡による環境での水質汚濁の防止が強く要望されている。これらのことを達成するために、肥料表面に各種の無機又は有機材料を被覆した被覆粒状肥料が提案され実用化されている。
【0003】
有機材料を被覆した被覆粒状肥料は、肥料成分の溶出量を制御するために、必要な撥水性の無機材料又は有機材料を被覆する技術が使用され、具体的には熱硬化性樹脂、硫黄およびパラフィンワックスの混合物、ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体、パラフィンワックスに代表される各種ワックス類などで肥料粒子を被覆したものが一般に使用されている。
【0004】
このような被覆粒状肥料の表面は、強い撥水性を有しているため表面張力が大きく、水田等に施肥した際に被覆粒状肥料が水面上に浮上するという問題を生じていた。このため被覆粒状肥料の水田からの流亡や施肥むらを生じるという問題を有していた。
また、肥料粒子を熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス等で被覆する被覆粒状肥料製造時には、未反応のモノマー等の残留樹脂成分、あるいは溶融したワックス等が肥料粒子同士を付着させ、肥料粒子の凝集・固結の問題も有していた。
【0005】
従来より、肥料粒子の浮上を防止させた被覆粒状肥料に関する技術が知られている。これらの技術は、被覆材で被覆した被覆粒状肥料に微粉体と界面活性剤を付着させた被覆粒状肥料に関するものである。この技術は界面活性剤の親水性に着目して被覆粒状肥料表面に親水性を付与したものである(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、水溶性の界面活性剤処理した被覆粒状肥料を使用した場合は、水を張った水田中に入れると、肥料粒子表面より界面活性剤が溶出するため、持続的に親水性の効果を得るのは困難であった。また、強い撥水性を付与した溶出抑制能の高い被覆粒状肥料の場合には、界面活性剤が粒子表面に付着しにくく、時間の経過と共に界面活性剤が肥料粒子表面より剥離し、肥料粒子表面の界面活性剤等が相分離して移動しムラを生じるなどの原因から、肥料粒子の浮上防止効果が損なわれるという問題があった。
【0006】
また別に、無機物の微粉体を用いることにより肥料粒子の浮上防止性能を付与する技術が知られている(例えば、特許文献3、4、5及び6参照)。
しかしながら、これらの技術に使用される無機の微粉体を用いると、被覆肥料製造装置への微粉体や樹脂等の付着を促進したり、装置の磨耗を生じる等の問題があった。そこで、被覆肥料製造装置への磨耗抑制できる程度に少量の無機の微粉体を使用したときは、満足できる肥料粒子同士の凝集・固結防止効果は得られなく、満足できるような被覆粒状肥料の浮上防止効果も得られなかった。
【0007】
更には、肥料粒子同士の固結を防止させた被覆粒状肥料に関する技術が知られている(例えば、特許文献7、8及び9参照)。これらの技術は、被覆粒状肥料表面に珪酸オイル等の有機物や無機微粉体または無機繊維等を付着させる方法がある。しかし、これらの技術には固結防止機能は備えているが、浮上防止効果を併せもつものはなく、また被覆肥料製造装置への有機物や無機物の付着および磨耗等の問題が残されてるのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特公昭60-20359号公報
【特許文献2】特公昭63-23160号公報
【特許文献3】特公平6-74198号公報
【特許文献4】特開平10-167868号公報
【特許文献5】特開平10-130014号公報
【特許文献6】特開2000-128684号公報
【特許文献7】特公昭47-41813号公報
【特許文献8】特公昭48-12773号公報
【特許文献9】特開2003-176194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述の問題を解決すべく、強い撥水性を有する被覆粒状肥料の場合に於いても、水田への肥料施肥時に、最適の浮上防止効果とその持続性が得られ、しかも被覆粒状肥料の製造時には、肥料粒子同士の固結を防止する被覆粒状肥料を得ることを目的とする。
本発明者らは前述の如く問題点を有する被覆粒状肥料について、種々検討を重ねた結果、樹脂で被覆した肥料粒子の表面を、アミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物で被覆することによって、被覆された肥料粒子が強い撥水性を示し従来の浮上処理方法では処理が困難であった被覆粒状肥料においても、優れた浮上防止効果とその持続性が得られ、更には、被覆粒状肥料の製造時に、肥料粒子同士の凝集・固結を防止する効果を有することを見出し係る知見に基づき本発明を完成させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は樹脂で被覆した肥料粒子表面を、アミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物で被覆してなる被覆粒状肥料に関する。
本発明は、これらアミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物を、樹脂で被覆した肥料粒子表面に被覆して用いることにより、被覆粒状肥料に顕著な浮上防止効果とその持続性が付与できると共に、肥料粒子同士が凝集・固結を起こさない固結防止効果を得ることが出来るという特徴を有する。
【0011】
本発明において、被覆粒状肥料の浮上防止効果が得られる理由は定かではないが、アミノ酸塩類または水溶性高分子化合物のアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メチル基、メチレン基、ビニル基、ビニレン基、アセチル基等の親水基および疎水基の何れかまたは複数の基が被覆肥料樹脂の表面に最適な強度で吸着または結合していることによるものと推定される。
【0012】
また、本発明のもう一つの特徴である被覆粒状肥料の固結防止作用に関しては、アミノ酸塩類または水溶性高分子化合物が室温での乾燥状態では固体状であり、これを水溶液にして塗布することにより、水溶液が肥料粒子表面に均一に塗布され、その乾燥物が微粒子として粒状肥料表面に均一に分散付着しているため、これにより肥料粒子同士の固結が防止されるものと推定される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、樹脂で被覆した肥料粒子表面を、アミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物で被覆したことを特徴とする被覆粒状肥料であり、撥水性が強い樹脂を肥料粒子に被覆することで浮上を起こしやすくなった場合でも、本発明の方法によれば、優れた浮上防止効果とその持続性及び肥料粒子同士の固結防止効果が同時に発現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の被覆粒状肥料について更に詳細に説明する。
本発明は、樹脂で被覆した肥料粒子表面を、アミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物で被覆してなる被覆粒状肥料である。
【0015】
先ず、樹脂で被覆した肥料粒子に使用される粒状肥料の種類としては、従来から使用されている粒状肥料であれば何れであってもよい。
その具体例を挙げれば、窒素質肥料としては、例えば、尿素、硫安、塩安、燐安、硝安、石灰窒素、また加里質肥料としては、例えば、塩化加里、硫酸加里苦土、更に、リン酸質肥料としては、例えば、焼成リン肥、加工リン酸肥料、重過リン酸石灰、過リン酸石灰、苦土過燐酸石灰、更に、複合(化成)肥料としては、例えばリン硝安加里、硫加リン安、更に、マグネシウム質肥料としては、例えば、硫酸マグネシウム、更には、各種の有機質肥料等を使用することができる。
また粒状肥料の粒子径は、特に限定されないが、概ね1〜5mmであることが製造効率上好ましい。
【0016】
肥料粒子表面を被覆するための樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の何れもが使用出来るが、好ましくは熱硬化性樹脂が推奨される。
この熱硬化性樹脂の種類として、公知のものが使用でき、具体的に例示するとエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノ−ル樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができ、必要に応じてこれらの中から選ばれた2種以上を混合して用いても良い。これらの中で特に、イソシアネ−ト化合物とポリオ−ル化合物を反応させたウレタン樹脂が作業性、溶出性能の面から好ましい。その具体例としてイソシアネ−ト化合物でいえば、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)などが使用でき、ポリオ−ル化合物でいえばポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、シリコーンポリオールを使用することができ、ポリエーテル系としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリエステル系としては、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(テトラエチレンアジペート)、ポリカプロラクトン。ヒマシ油、ヒマシ硬化油、アルキド樹脂、ポリカーボネート系としてポリ(ヘキサメチレンカーボネートなどがあり上記に記載したようなウレタン樹脂原料を挙げることができる。
【0017】
肥料粒子表面を樹脂で被覆するために使用される被覆肥料製造装置は、粒状肥料を転動状態にする目的で使用され、特にその装置に制限はなく公知、慣用のものを用いることができる。例えば、回転パン、回転ドラムなどを例示することができ、この様な装置に加温設備を付設されたものを使用することが好適である。
【0018】
本発明における肥料粒子表面への樹脂の被覆方法は、熱硬化性ポリウレタン樹脂を例にとれば、転動状態にある粒状肥料に予め硬化剤や触媒を配合・混合された樹脂組成物を滴下又は噴霧により投入するか、あるいは、主剤、硬化剤、触媒等を別々に投入し、粒状肥料が転動する際に各成分が混合されるような方法で被覆する。
また、一度に投入される樹脂の量は、造粒装置の容積にも影響されるが1〜10分で硬化する樹脂量であることが好ましく、特に好ましくは3〜5分で硬化する量の樹脂添加量であることが望ましいが、特にその時間を制限するものではない。要はこの様な操作を所定の樹脂の膜厚になるまで繰り返して行うことで被覆粒状肥料を得ることである。
また、ここでいう硬化に関しては、一般にいう完全硬化の必要はなく、樹脂がゲル化点を過ぎ、曳糸性がなくなった状態となればよい。そのような状態になれば、その後は樹脂の粘着性によって肥料粒子同士が凝集・固結することはなく、次の樹脂組成物を添加することが可能となる。製品の被覆樹脂膜厚は、所望する肥料塩類の溶出パタ−ンによって異なるが、一般に20μmから200μmが好適な範囲である。
【0019】
また、実質的に本発明の被膜の性質を損なわない限り、被覆時の作業性の向上と肥効調節の補助的手段として、被覆材組成物に有機系または無機系の添加材を加えることも可能である。
この様な添加剤の例としては、有機系では、ヒマシ油、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、脂肪酸エステル、ワックス、酸化オレフィン、アミノ酸塩類、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、ポリビニルアルコール(完全ケン化型、部分ケン化型、変性型を含む)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ロジンおよびその誘導体、シリコーン樹脂、シランカップリング剤、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キトサン、キトサン誘導体、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、脂肪酸塩類、石油樹脂、無機系で言えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化鉄のような金属酸化物、ケイソウ土、酸化珪素、尿素、イオウ粉末等が挙げられる。これらを本発明にかかる熱硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲で添加又は塗布し、これらの種類および添加量によって作業性または肥料成分の溶出特性の調節を行うことも可能である。
【0020】
本発明の樹脂で被覆した肥料粒子表面に被覆させるアミノ酸塩類又は水溶性高分子化合物の被覆量に関しては、樹脂で被覆した粒状肥料全量に対して固形分として0.01〜10質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜5質量%で用いるのが望ましい。
【0021】
樹脂で被覆した肥料粒子表面に被覆させるアミノ酸塩類の種類としては、グリシン塩酸塩、アラニン塩酸塩、アスパラギン酸カリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩などがあげられるが、好ましくはアスパラギン酸カリウム、またはグルタミン酸ナトリウムのような酸性アミノ酸塩類がよい。
【0022】
また、樹脂で被覆した肥料粒子表面に付着させる水溶性高分子の種類としては、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルアルコール(完全ケン化型、部分ケン化型、変性型を含む)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウムなどがあげられるが、特に限定されることはなく水溶性であればすべて使用できる。特に好ましくは、ポリビニルアルコール(完全ケン化型、部分ケン化型、変性型を含む)、ポリビニルピロリドンなどの親水基と疎水基が含まれるものがよい。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。実施例に於いて%は特に断らない限り全て質量%を示す。
【0024】
尚、浮上試験及び固結試験は以下の方法で行った。
【0025】
1.浮上試験
平均粒径3mmの被覆粒状肥料20g(約1000個)を水面上1mより落下させ、肥料粒子の浮上数を調べ、これを3回繰り返し試験の平均値を浮上数として計数し、投入肥料粒子数に対する浮上数の割合からその浮上率を求めた。
【0026】
2.固結試験
被覆粒状肥料2.6kgを角型容器(固結試験機)に入れ、これに10kgの荷重を30分間かけた後前面のふたをはずし、固結した粒子を取り出し、その固結量を測定し、投入質量に対する固結量から固結率を求めた。
【0027】
[樹脂で被覆した粒状肥料の製造]
平均粒径3mmの粒状尿素肥料を予め70℃に加熱し、回転式粒子転動型被覆肥料製造装置内で転動させ、尿素100質量部に対して、撥水性の強い熱硬化性樹脂[ポリオール(油長47%のアマニ油ヒマシ油変性アルキド樹脂)とポリメリックMDI(BASF INOAC ポリウレタン(株)製ポリメリックMDIルプラネートM-12S)を使用したウレタン樹脂]15質量部噴霧した被覆粒状肥料(以下、アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料)と称する)を製造した。
【0028】
[実施例1]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに25%グルタミン酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製,試薬)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.1%になるように添加し、更に70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の製造当日の浮上試験、固結試験を実施した結果を表1に示した。また、この肥料の製造日より7日保管後、30日保管後の浮上試験結果についても浮上試験、固結試験を実施をおこなったが、製造当日の試験結果と殆ど変わりはなく、本発明の被覆粒状肥料であった。
【0029】
[実施例2]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに25%グルタミン酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製,試薬)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.2%になるように添加し、更に70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の製造後に浮上試験、固結試験を実施した結果を表1に示した。
【0030】
[実施例3]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに25%アスパラギン酸カリウム水溶液(和光純薬工業(株)製,試薬)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.2%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の製造後に浮上試験、固結試験を実施した結果を表1に示した。
【0031】
[実施例4]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これにポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株),商品名:ゴーセノールKL-05)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.2%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の製造後に浮上試験、固結試験を実施した結果を表1に示した。
また、この本発明の肥料の製造より7日保管後、30日保管後に浮上試験、固結試験を実施をしたが、製造当日の試験結果と殆ど変わりはなかった。
【0032】
[実施例5]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株),商品名:ゴーセノールKL-05)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.3%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の製造後に浮上試験、固結試験を実施した結果を表1に示した。
【0033】
[実施例6]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株),商品名:ゴーセランL-0302)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.3%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の製造後に浮上試験、固結試験を実施し、その結果は表1に示した。
【0034】
[実施例7]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに10%ポリビニルピロリドン水溶液(東京化成工業(株)製,試薬:K30)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.2%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の製造後に浮上試験、固結試験を実施し、その結果を表1に示した。
【0035】
[実施例8]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに10%ポリビニルピロリドン水溶液(東京化成工業(株)製,試薬:K30)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.3%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の製造後に浮上試験、固結試験を実施した結果を表1に示した
【0036】
[比較例1]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料に、表面処理剤を添加せずに製造を行った。同様に浮上試験、固結試験を実施したところ、浮上率と固結率は何れも高いものであった。
結果を表1に示した。
【0037】
[比較例2]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに10%ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム水溶液(日本油脂(株)製,商品名:パーソフトEK)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.1%になるように添加した。これを70℃で2分間転動させ、被覆粒状肥料を得た。
この被覆粒状肥料の浮上試験、固結試験を行い結果を表1に示した。表1の結果から明らかなように、浮上率、固結率は何れも非常に高い値であった。また、製造後7日保管後、30日保管後の浮上率を確認したところ、被覆肥料の浮上率は、製造当日の試験結果よりもさらに悪化していた。
【0038】
[比較例3]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、10%ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム水溶液(日本油脂(株)製,商品名:パーソフトEK)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.2%になるように添加した。これを70℃で2分間転動させ、被覆粒状肥料を得た。
この表面処理を行った被覆粒状肥料の浮上試験と固結試験を実施し、結果を表1に示した。表1に記載しているように、この肥料の浮上率は非常に高く、固結率も添加量を増加させた場合には、全て固結する結果になった。また、製造より7日保管後と30日保管後の浮上率を確認したところ、この被覆粒状肥料の浮上率は、製造当日の試験結果よりさらに悪化していた。
【0039】
[比較例4]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、10%ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド水溶液(日本油脂(株)製,商品名:スタホームF)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.1%になるように添加した。これを70℃で2分間転動させ、被覆粒状肥料を得た。
この表面処理を行った被覆粒状肥料の浮上試験と固結試験を実施し、結果を表1に示した。表1に記載しているように、この肥料の浮上率と固結率は、共に非常に高い値であった。また、製造より7日保管後と30日保管後の浮上率を確認したところ、この被覆肥料の浮上率は、製造当日の試験より更に悪化していた。
【0040】
[実施例9]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これにポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)製,商品名:ゴーセノールKL-05)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.1%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、その後25%グルタミン酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製試薬)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.05%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。
この本発明被覆粒状肥料の浮上試験と固結試験を行い、その結果を表1に示した。
【0041】
[実施例10]
アルキドウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに10%ポリビニルピロリドン水溶液(東京化成工業(株)製,試薬:K30)を樹脂被覆粒状肥料の全量に対して固形分が0.1%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、その後25%グルタミン酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製試薬)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.05%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、被覆粒状肥料を得た。
この表面処理済み被覆粒状肥料の製造当日の浮上試験、固結試験を実施した結果を表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】

表1の結果から明らかなように、アミノ酸塩類及び水溶性高分子化合物を表面処理剤として被覆した被覆粒状肥料は、水田への施肥において浮上することなくい。また、製造時の肥料粒子同士の凝集・固結もない、従って、本発明の被覆粒状肥料は、優れた効果を有することが明らかである。
【0044】
[実施例11]
実施例1で使用した樹脂であるポリオール代えて、ポリエチレングリコール(キシダ化学(株)製,1級試薬:ポリエチレングリコール400)を使用した撥水性の強い熱硬化性樹脂を製造した。以下、この製造樹脂を「ポリエチレングリコールウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料」と称する。
このポリエチレングリコールウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料の全量を、引き続き温度70℃で加温しながら転動させ、これに25%グルタミン酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製,試薬)をポリエチレングリコールウレタン樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分が0.005%になるように添加し、更に70℃で2分間転動させ、被覆粒状肥料を得た。
この表面処理済み被覆粒状肥料を、一部サンプリングし直後の浮上試験、固結試験を実施した結果、浮上率は20%、固結率は57%であった。更に、続けて25%グルタミン酸ナトリウム水溶液を固形分が0.005%になるように追加添加し70℃で2分間転動させ合計の固形分が0.01%の被覆粒状肥料を得た。この表面処理済み被覆粒状肥料の製造直後の浮上試験、固結試験を実施した結果、浮上率は5.0%、固結率は4.0%であり本発明の浮上率・固結率に優れた被覆粒状肥料であった。
【0045】
[比較例5]
実施例10で使用したポリエチレングリコールウレタン樹脂被覆粒状尿素肥料を、表面処理剤無添加で製造後に浮上試験、固結試験を実施した結果、浮上率は25.5%、固結率は100.0%であり浮上・固結率は非常に高いものであった。
【0046】
[実施例12]
実施例2で使用した粒状尿素肥料に代えて、平均粒径3mmの粒状苦土過燐酸肥料を使用して試験を行った。アルキドウレタン樹脂被覆粒状苦土過燐酸肥料に、25%グルタミン酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製,試薬)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分量が0.2%になるように添加し、更に70℃で2分間転動させ、被覆粒状肥料を得た。
この表面処理済み被覆粒状肥料の製造当日の浮上試験、固結試験を実施した結果、浮上率は0.3%、固結率は0.1%であり本発明の浮上性と固結性に優れた被覆粒状肥料であった。
【0047】
[実施例13]
実施例8で使用した粒状尿素肥料に代えて、平均粒径3mmの粒状苦土過燐酸肥料を使用して試験を行った。アルキドウレタン樹脂被覆粒状苦土過燐酸肥料の全量を、温度70℃で加温しながら転動させ、これにポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)製,商品名:ゴーセノールKL-05)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分量が0.1%になるように添加し、70℃で2分間転動させた、その後25%グルタミン酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製試薬)を樹脂被覆粒状肥料全量に対して固形分量が0.05%になるように添加し、70℃で2分間転動させ、本発明の被覆粒状肥料を得た。この本発明の被覆粒状肥料を用い、浮上試験と固結試験を実施した結果、浮上率は0%、固結率は0%であり、優れた浮上性と固結性を有していた。
【0048】
[比較例6]
実施例13で使用した粒状苦土過燐酸肥料を用いて被覆したアルキドウレタン樹脂被覆粒状苦土過燐酸肥料を、表面処理剤無添加で浮上試験と固結試験に供した結果、浮上率は22.0%、固結率は100.0%であり浮上率と固結率は何れも非常に高いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で被覆した肥料粒子表面を、アミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物で被覆してなる被覆粒状肥料。
【請求項2】
アミノ酸塩類が、アスパラギン酸塩類又はグルタミン酸塩類である請求項1記載の被覆粒状肥料。
【請求項3】
水溶性高分子化合物が、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンである請求項1又は2記載の被覆粒状肥料。
【請求項4】
アミノ酸塩類及び/又は水溶性高分子化合物の被覆量が、樹脂で被覆した粒状肥料全量に対して固形分として0.01〜10質量%の範囲である請求項1、2又は3記載の被覆粒状肥料。
【請求項5】
被覆肥料に使用する樹脂が、熱硬化性樹脂である請求項1〜4の何れか1項に記載の被覆粒状肥料。