説明

被覆組成物およびそれからの被膜系

被覆組成物をベースコート層およびクリアコート層を含む被膜系のクリアコート層を形成するために使用する。該被覆組成物はカルバメート官能性ポリマー、該カルバメート官能性ポリマーと反応性のある架橋剤、および本質的に該カルバメート官能性ポリマーおよび該架橋剤と反応性のない酸官能性ポリマーを含む。該酸官能性ポリマーは少なくとも50mg KOH/gの酸価を有し、且つクリアコート層の酸エッチに対する耐性の増加に寄与する。該酸官能性ポリマーは、ベースコート層とクリアコート層との中塗りの付着力の増加にも寄与し、それによってベースコート層とクリアコート層との分離/剥離の可能性が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも50mg KOH/gの酸価を有する酸官能性ポリマーを含む被覆組成物に関する。本発明は該被覆組成物から形成されるベースコート層およびクリアコート層を含む被膜系にも関する。
【0002】
関連技術の説明
酸官能性ポリマーを含む被覆組成物は当該技術分野でよく知られている。酸官能性ポリマーは一般に水系の被覆組成物中で樹脂の分散を高めるか、あるいはカルボキシ−エポキシ被覆組成物中で架橋剤としてはたらく。しかし、酸官能性ポリマーはカルバメート官能性ポリマーを含む被覆組成物中では一般に使用されず、且つカルバメート官能性ポリマーを含む硬化した被覆組成物の酸エッチ耐性の増加を示していない。
【0003】
カルバメート官能性ポリマーおよび該カルバメート官能性ポリマーと反応性の架橋剤を含む被覆組成物は当該技術分野でよく知られている。それらの被覆組成物は特に自動車の塗料用途における使用に望ましい。なぜならそれらは硬化してクリアコートおよびベースコート(塗料)層を形成し、トップコート層としてはたらき、且つ持続性、堅さ、および均質な外見を示すことができるからである。しかしながら、該トップコート層は酸性雨からの酸エッチングの影響を受けやすい。酸性雨は、存在するヒドロキシル官能性ポリマーの任意の部位、例えばカルバメート官能性ポリマー中の任意の部位と、架橋剤中との間に形成される露出したエーテル結合を加水分解することがある。これが起きるとき、欠陥(例えば斑点および染み)がクリアコート層中に形成され、且つ容易には除去できない。さらには、多くの修復ベースコート/クリアコート層は特に、下層のベースコート/クリアコート層からの剥離を受けやすい。なぜなら、それらはベースコート層との減少した中塗りの付着力を示し、それにより乏しい持続性および堅さおよび整合性のない外見がもたらされるからである。
【0004】
過去には、酸エッチ耐性およびクリアコート層の中塗りの付着力との両方を改善して、それらの有用性を改善するため、およびクリアコート層の形成に使用される被覆組成物の購入の商業的な妥当性を改善するための取り組みがなされてきた。米国特許5593785内でMayoらによって開示される1つの前記の取り組みは、二成分樹脂系および架橋剤を含む膜形成組成物を開示する。その二成分樹脂系は、カルバメート官能性アクリルポリマーおよびポリエステルポリマーを含む一方、架橋剤はアミノプラストである。この二成分樹脂系において、架橋剤はカルバメート官能性アクリルポリマーおよびポリエステルの両方と反応(即ち、架橋)して、クリアコート層を形成する。特に、前記785号の特許のポリエステルは、質量平均および数平均の両方において可変の分子量、可変の官能性、および広い多分散性を有する。これらの特性、および特にカルバメート官能性はポリエステルポリマーに悪影響を与え、且つ該ポリエステルポリマーを個別の、可動の、且つ不反応性の酸官能性ポリマーとして機能させない。そのため、該ポリエステルポリマーは二成分樹脂系において反応物として、個別の、可動の、且つ不反応性の添加剤として使用できる酸官能性ポリマーの任意の量と比較して、増加した量で使用しなければならない。
【0005】
従って、特定の酸価を有する酸官能性ポリマーを含む被覆組成物を形成する可能性が残っている。硬化したときの酸エッチ耐性が改良した被覆組成物を形成する可能性も残っている。クリアコート層とベースコート層との間の中塗りの改善した付着力を有する被覆組成物から形成されたベースコート層およびクリアコート層を含む被膜系を形成する可能性も残っている。
【0006】
発明の要約および利点
本発明はカルバメート官能性ポリマー(A)、および該カルバメート官能性ポリマー(A)と反応性のある架橋剤(B)を含む被覆組成物を提供する。該被覆組成物は、本質的にカルバメート官能性ポリマー(A)および架橋剤(B)と反応性のない酸官能性ポリマー(C)も含む。酸官能性ポリマー(C)は少なくとも50mg KOH/gの酸価を有している。本発明は硬化した後に被覆組成物から形成されたベースコート層およびクリアコート層を含む被膜系も提供する。
【0007】
酸官能性ポリマー(C)はコスト効率の点で酸エッチに対するクリアコート層の増加した耐性に寄与する。酸エッチに対する増加した耐性は、酸性雨によるクリアコート層中の欠陥の形成の可能性を低減し、それによってクリアコート層の外見および有用性、およびクリアコート層を形成するのに使用する被覆組成物の購入の商業的な妥当性を改善する。酸官能性ポリマー(C)は、ベースコート層とクリアコート層との中塗りの増加した付着力にも寄与する。中塗りの増加した付着力はベースコート層からのクリアコート層の分離/剥離の可能性を減少させ、向上した持続性、堅さ、およびクリアコート層およびベースコート層の両方の外見をもたらす。酸官能性ポリマー(C)はさらに適用中、フラッシング中、および硬化中に被覆組成物の均展に寄与する。
【0008】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は水系あるいは溶剤系であり得る被覆組成物を提供する。好ましくは、該被覆組成物は溶剤系であり、且つ1質量%未満の含水率を有する。該被覆組成物はカルバメート官能性ポリマー(A)、該カルバメート官能性ポリマー(A)と反応性のある架橋剤(B)、および本質的にカルバメート官能性ポリマー(A)および架橋剤(B)と反応性のない酸官能性ポリマー(C)を含む。架橋剤(B)および酸官能性ポリマー(C)を以下により詳細に説明する。本発明は硬化後に被覆組成物から形成されたベースコート層およびクリアコート層を含む被膜系も提供し、それぞれを以下により詳細に説明する。
【0009】
カルバメート官能性ポリマー(A)は当該技術分野で公知の任意のカルバメート官能性ポリマー(A)であってよい。カルバメート官能性ポリマー(A)は少なくとも1つのカルバメート官能基を含み、且つ1つより多いカルバメート官能基を含んでもよい。記述の目的のためだけに、カルバメート官能基の化学構造を以下に図示する。
【0010】
【化1】

【0011】
カルバメート官能性ポリマー(A)は、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、アミドおよびウレア、アクリル、硫黄含有基、亜リン酸含有基、シラン含有基、およびそれらの組み合わせの群から選択される、1つあるいはそれより多くの官能基を含んでよい。カルバメート官能性ポリマー(A)はさらには脂肪族、脂環式および芳香族基を含んでよい。1つの実施態様において、カルバメート官能性ポリマー(A)は様々な官能性を有する分岐した有機構造を含み、これらは限定されないが、分岐炭化水素官能性、ヒドロキシル官能性、カルボキシレート官能性、カルバメート官能性、およびエステル官能性を含む。好ましくは、カルバメート官能性ポリマー(A)は1,000〜20,000、より好ましくは2,000〜8,000、そして最も好ましくは3,000〜5,000g/molの数平均分子量を有する。しかしながら、カルバメート官能性ポリマー(A)は任意の分子量を有してよいと理解される。
【0012】
好ましくは、カルバメート官能性ポリマー(A)は、被覆組成物100質量部あたり、20〜80、より好ましくは30〜70、そして最も好ましくは40〜50質量部の量で含まれる。しかしながら、カルバメート官能性ポリマー(A)を被覆組成物中に任意の量で含むことができる。
【0013】
カルバメート官能性ポリマー(A)を、当該技術分野で公知の任意の方法によって形成できる。1つの実施態様において、カルバメート官能性ポリマー(A)を、1つあるいはそれより多くの官能基を含む幹ポリマーの付加による製造と、1つあるいはそれより多くの非官能性エチレン不飽和モノマーとの重合を含む1つあるいはそれより多くのエチレン不飽和カルバメートのないモノマーと、該幹ポリマーと1つあるいはそれより多くの追加の反応性化合物との反応により、少なくとも1つのカルバメート基を有するカルバメート官能性ポリマー(A)を製造することを含む方法から形成し、該方法は米国特許6696535号内に開示され、ここで参照をもって開示されたものとする。他の実施態様において、カルバメート官能性ポリマー(A)は米国特許6855789号内に開示される方法から形成され、前記特許はここで参照をもって開示されたものとする。さらに他の実施態様において、カルバメート官能性ポリマー(A)は、少なくとも1つがエポキシ基および有機酸の開環反応から形成される複数のヒドロキシル基を含む化合物と、カルバメート基を含む化合物との反応生成物を含み、米国特許6420472号内に示され、前記特許はここで参照をもって開示されたものとする。さらに他の実施態様において、カルバメート官能性ポリマー(A)は、複数のヒドロキシル基を有する第一の化合物、一級カルバメート化合物、およびヒドロキシル基と反応性の末端基を有し、且つシリルアルコキシ基を有するシリル化合物の反応生成物である。さらなる実施態様において、カルバメート官能性ポリマー(A)はより具体的には複数のヒドロキシル基、カルボン酸無水物を有する第一の化合物、少なくとも1つのエポキシ基を有する第二の化合物、一級カルバメート化合物、およびヒドロキシル基と反応性がある終端基を有し且つシリルアルコキシ基を有するシリル化合物の反応生成物である。
【0014】
該被覆組成物は追加的なカルバメート官能性化合物、即ちカルバメート官能性改質剤を含んでもよく、それはカルバメート官能性ポリマー(A)とは異なり、例えばカルバメート官能性樹脂、カルバメート官能性オリゴマー、および他の化合物である。1つより多い追加的なカルバメート官能性化合物を該被覆組成物中に含んでよいとも考えられる。追加的なカルバメート官能性化合物は、カルバメート官能性ポリマー(A)と同様、当該技術分野で公知のどれでもよく、且つ当該技術分野で公知の任意の方法によって形成できる。該カルバメート官能性化合物は架橋化合物と反応してもよい。もし含まれるのならば、カルバメート官能性化合物は被覆組成物100質量部あたり、好ましくは3〜25、より好ましくは6〜18、且つ最も好ましくは10〜14質量部の量で含まれる。しかしながら、カルバメート官能性化合物を被覆組成物中に当業者によって決定される任意の量で含んでよい。
【0015】
ここで架橋剤(B)に言及すると、架橋剤(B)は、上で最初に述べられたように、カルバメート官能性ポリマー(A)と反応性があり、且つ任意の追加的なカルバメート官能性化合物と反応性があってよい。1つの実施態様において、架橋剤(B)はメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。他の実施態様において、架橋剤(B)は、部分的および完全にアルキル化したメラミンの両方、例えばメチル化メラミン、ブチル化メラミン、およびメチル化/ブチル化メラミンを含むモノマーおよびポリマーのメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。さらに他の実施態様において、架橋剤(B)は第一および第二のメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。この実施態様において、第一のメラミンホルムアルデヒド樹脂は被覆組成物100質量部あたり2.5〜4.5質量部の量で存在し、且つ完全にメチル化されたメラミンである。従って、第一のメラミンホルムアルデヒド樹脂は一般式
CH2OR1
[式中、
1は1〜20個の炭素原子を有するアルキル鎖]
のアルコキシメチル基を含む。この実施態様において最も好ましい第一のメラミンホルムアルデヒド樹脂はヘキサメトキシメチルメラミンであり、それはコネチカット州ウォリングフォードのCytec Industriesから市販されている。また、この実施態様において、第二のメラミンホルムアルデヒド樹脂は2.5〜20質量部の量で存在し、且つ部分的にメチル化されたメラミンである。従って、第二のメラミンホルムアルデヒド樹脂は上に定義されたように、メチロール基CH2OHおよびアルコキシメチル基CH2OR1の両方を含んでよい。この実施態様において、第一のメラミンホルムアルデヒド樹脂と第二のメラミンホルムアルデヒド樹脂との質量比は1:5〜5:1であり、より好ましくは1:2〜2:1である。架橋剤(B)は当該技術分野で公知のどれでもよいと考えられる。
【0016】
他の実施態様において、架橋剤(B)はアミノプラスト、フェノール付加物、シロキサン、シラン、アルキロール、イソシアネート、アクリル、無水物およびそれらの組み合わせの群から選択される。上述のメラミンホルムアルデヒド樹脂の他に、適したアミノプラストの限定されない例は、ウレアホルムアルデヒド樹脂を含む。シロキサンの限定されない例は、トリメトキシシロキサンを含む。アルキロールの限定されない例は、メチロールウレアを含む。イソシアネートの限定されない例は、脂肪族および芳香族イソシアネート、およびウレア、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、およびイソシアヌレートおよび/またはウレタン基を含むジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート、例えば変性ジフェニルメタンジイソシアネートを含む変性ポリイソシアネートを含む。該イソシアネートは、ブロックあるいは非ブロックポリイソシアネートであってよい。適したブロック剤の限定されない例は、高温で非ブロック化する材料、例えばカプロラクタムを含む。他の適したブロック剤は、限定されずに、フェノール、クレゾール、イソノニルフェノール、オキシム、例えばメチルエチルケトキシムおよびブタノンオキシム、活性メチレン基含有化合物、例えばジエチルマロネートおよびイソプロピリデンマロネート、アセトアセテート、および重亜硫酸ナトリウムを含む。無水物の限定されない例は、ポリコハク酸無水物を含む。
【0017】
好ましくは、架橋剤(B)は被覆組成物100質量部あたり0.5〜15、より好ましくは5〜9質量部の量で含まれて存在する。しかし、架橋剤(B)は被覆組成物中に当業者によって決定される任意の量で存在できると理解される。
【0018】
該被覆組成物は、上で最初に述べられたように、本質的にカルバメート官能性ポリマー(A)および架橋剤(B)と反応性のない酸官能性ポリマー(C)も含む。本発明の目的では、用語"本質的に反応性のない"は、カルバメートのメラミンへの、あるいはヒドロキシルのメラミンへの典型的な反応を含み、その反応は架橋密度あるいは適した物理的特性に達するために必要な硬化Tgへの寄与に重要ではなく且つ不必要である。1つの実施態様において、酸官能性ポリマー(C)は、カルバメート官能性ポリマー(A)および架橋剤(B)の両方と全く反応性がない。
【0019】
酸官能性ポリマー(C)は、酸官能性ポリマー(C)が少なくとも50mg KOH/gの酸価を有していれば、当該技術分野で公知のどれでもよい。酸官能性ポリマー(C)は少なくとも部分的に組成物および/またはクリアコート層の表面に移動する能力を有してよいと考えられる。1つの実施態様において、酸官能性ポリマー(C)は少なくとも120mg KOH/gの酸価を有する。他の実施態様において、酸官能性ポリマー(C)は少なくとも240mg KOH/gの酸価を有する。さらに他の実施態様において、酸官能性ポリマー(C)は240〜250mg KOH/gの酸価を有する。酸官能性ポリマー(C)の包含物は、意外にも、該被覆組成物から形成された硬化膜層および/またはクリアコート層の酸エッチ耐性を増加させる。包含物は硬化膜層および/またはクリアコート層とベースコート層との中塗りの付着力も増加させる。さらには、包含物は被覆組成物中に均展剤を含ませることの必要性を減少、および好ましくは無くす。なぜなら酸官能性ポリマー(C)が均展剤としてもはたらくことができるからである。酸官能性ポリマー(C)は厳密な分子量、しかし質量平均および数平均、狭いばらつきの官能性、および狭い多分散性を有している。それらの各特性は、酸官能性ポリマー(C)の様々な用途への厳密な改変を可能にし、それは当業者によって決定され、且つ酸性エッチに対する耐性および中塗りの増加した付着力の両方に寄与する。
【0020】
1つの実施態様において、酸官能性ポリマー(C)はアクリルポリマーを含む。該アクリルポリマーは当業者に公知のどれであってもよく、且つアクリルポリエステルを含んでもよい。他の実施態様において、酸官能性ポリマー(C)はポリアルキルアクリレートを含む。好ましくは、該ポリアルキルアクリレートはポリブチルアクリレートを含む。さらに他の実施態様において、酸官能性ポリマー(C)はポリエステルポリマーを含む。全ての実施態様において、酸官能性ポリマー(C)は酸官能性ポリマー(C)の酸価が少なくとも50mg KOH/gであれば、任意の構造を含んでよい。1つの実施態様において、酸官能性ポリマー(C)は、ポリアクリレートの側鎖を含む星状ポリエステルを含む。他の実施態様において、酸官能性ポリマー(C)はポリブチルアクリレートと共重合された混成のポリエステルを含む。
【0021】
好ましくは、酸官能性ポリマー(C)は1.02〜1.05、およびより好ましくは1.02〜1.04g/cm3の密度を有する。酸官能性ポリマー(C)は、25℃で好ましくは90〜1200、およびより好ましくは180〜200MPa.sの粘度も有する。酸官能性ポリマー(C)は、好ましくは3,500〜20,000、およびより好ましくは5,500〜20,000g/molの質量平均分子量、および1,500〜6,500、およびより好ましくは2,000〜6,500g/molの数平均分子量も有する。酸官能性ポリマー(C)はさらに好ましくは45〜60、およびより好ましくは49〜59パーセントの固体率を有する。好ましくは、酸官能性ポリマー(C)は1.4〜1.5、より好ましくは1.44〜1.46、および最も好ましくは1.44〜1.45の屈折率も有する。さらには、酸官能性ポリマー(C)は好ましくは4〜6のpKaを有する。しかしながら、酸官能性ポリマー(C)は、酸官能性ポリマー(C)が少なくとも50mg KOH/gの酸価を有していれば、任意の密度、粘度、分子量、固体率、屈折率、およびpKaを有してよいと理解される。
【0022】
被覆組成物の言及に戻ると、該被覆組成物は添加ポリマーを含んでもよい。その場合、添加ポリマーは酸官能性ポリマー(C)と異なる。しかしながら、酸官能性ポリマー(C)の上記説明を添加ポリマーに適用してもよい。1つの実施態様において、添加ポリマーはコネチカット州ノーウォークのKing IndustriesからDisparlon(登録商標)LAP−20の商標で市販されているポリアクリレートを含む。
【0023】
被覆組成物は好ましくは、硬化を高めるための少なくとも1つの触媒を含む。好ましくは、架橋剤(B)がアミノプラスト、特にメラミンを含むとき、酸性触媒を使用して硬化を高めてもよい。かかる触媒は当該技術分野でよく知られており、限定されずにp−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニル燐酸、モノブチルマレエート、ブチル燐酸、ヒドロキシ燐酸エステル、およびそれらの組み合わせを含む。本発明の被覆組成物において有用であり得る他の触媒は、限定されずに、ルイス酸、遷移金属塩、例えば亜鉛塩およびスズ塩、およびそれらの組み合わせを含む。典型的には、触媒は(1)カルバメート官能性ポリマー(A)と架橋剤(B)との間の反応に必要な温度を下げるか、あるいは(2)カルバメート官能性ポリマー(A)と架橋剤(B)との間の反応の反応速度を上げるかのいずれか、あるいは両方である。いくつかの例では、室温で反応速度を下げることが望まれ得る。該触媒をブロック、非ブロック、あるいは部分的にブロックできる。該触媒をアミンあるいは他の適したブロック剤、例えばオキシラン変性材料でブロックあるいは部分的にブロックできる。揮発性のアミンが適したブロック剤であり、なぜなら該アミンは被覆組成物が硬化するときに被覆組成物から蒸発し、それによって任意の従来の手段、例えばオーブンによって導入される熱のおかげで、硬化中に触媒を非ブロック化するからである。本発明の被覆組成物内で使用する、適した非ブロック酸性触媒はコネチカット州ノーウォークのKing IndustriesからNacure(登録商標)1051の商標で販売されている。もし含まれるなら、該触媒は被覆組成物100質量部あたり、好ましくは0.1〜1.2、より好ましくは0.1〜0.9、および最も好ましくは0.2〜0.7質量部の量で含まれる。
【0024】
被覆組成物はさらには、添加ポリマーとは異なる少なくとも1つの添加物を含んでよい。前記の少なくとも1つの添加物は、均展剤、界面活性剤、充填材、安定剤、溶剤、可塑剤、変形剤、湿潤添加剤、触媒、流動制御剤、顔料およびそれらの組み合わせからなる群から選択できる。適した界面活性剤の限定されない例は、ペンシルバニア州アレンタウンのAir Products and Chemicals社から市販のSurfynol(登録商標)界面活性剤を含む。適した可塑剤の限定されない例は、ミズーリ州セントルイスのCook Composites and Polymersから市販のCoroc(登録商標)アクリル可塑樹脂を含む。
【0025】
被覆組成物が添加剤として溶剤を含む場合、その溶剤は好ましくはカルバメート官能性ポリマー(A)、架橋剤(B)、および酸官能性ポリマー(C)をかなりの度合いまで溶解する。該溶剤は、任意の有機溶剤および/または水を含むことができる。1つの実施態様において、該溶剤は極性有機溶剤を含む。他の実施態様において、該溶剤は極性脂肪族溶剤を含む。さらなる実施態様において、該溶剤は極性芳香族溶剤を含む。さらに他の実施態様において、該溶剤はケトン、エステル、アセテート、非プロトン性アミド、非プロトン性スルホキシド、非プロトン性アミン、およびそれらの組み合わせの群から選択される。有用な溶剤の限定されない例はメチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、m−アミルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、キシレン、N−メチルピロリドン、2−エチルヘキサノール、n−ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、テキサス州アーヴィングのExxonMobilから市販のSC150溶剤、ナフサ、重ベンゼン、エチルエトキシプロピオネート、ブチルグリコールアセテート、ブチルグリコール、芳香族炭化水素の混合物およびそれらの組み合わせを含む。
【0026】
被覆組成物が添加剤として顔料を含む場合、例えば、被覆組成物をベースコート層を形成するために使用するとき、その顔料は有機および/または無機化合物、着色材料、充填材、金属および/または無機フレーク材料、例えばマイカあるいはアルミニウムフレークおよびそれらの組み合わせを含んでよい。適した顔料の限定されない例は、カーボンブラック顔料、二酸化チタンおよび他の無機着色顔料、例えば酸化鉄、クロム黄、モリブデン赤、チタン黄、ニッケルチタン黄、クロム緑およびその種のものを含む。
【0027】
被覆組成物が添加剤として均展剤を含む場合、その均展剤は限定されずにビニルアクリル共重合体、ヒドロキシル官能性ポリエーテルポリシロキサン、ハロゲン化ポリシロキサンおよびそれらの組み合わせを含んでよい。例示的なそれらのタイプの均展剤の市販の例は、限定されずに、ドイツ、ヴェッセルのByk Chemieから市販のByk373(ヒドロキシルポリエーテルポリジメチルポリシロキサン)、日本、東京の共栄社化学から市販のDisparlon(登録商標)LC955(ビニルアクリレート共重合体)、コネチカット州ミドルバリーのChemutura社から市販のSilwet(登録商標)L−7614(ヒドロキシル官能性ポリエーテル変性ポリシロキサン)、およびドイツ、ミュンヘンのWacker Chemie AGから市販のAddid(登録商標)761(フッ素化ポリシロキサン)を含む。
【0028】
被覆組成物が添加剤として安定剤を含む場合、その安定剤はヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含んでよい。含まれる場合、HALSは任意の当該技術分野で公知のどれを含んでもよい。本発明での使用に適した例示的な市販のHALSの例は、限定されずにノースカロライナ州シャーロットのClariant社から市販のSanduvor(登録商標)3058、およびスイス、バーゼルのCiba Specialty Chemicals社から市販のTinuvin(登録商標)292を含む。
【0029】
被覆組成物を好ましくは基材、例えば車体に適用し、そして硬化させて硬化被膜層を形成する。本発明の目的では硬化可能な被膜層は下塗り層、ベースコート層および/またはクリアコート層として使用でき、且つ、任意の塗膜厚で適用できる。好ましくは、硬化被膜層をクリアコート層として使用する場合、それを1.2〜2.5、より好ましくは1.6〜2.1、および最も好ましくは1.8〜2.0ミル(mils)の塗膜厚で適用する。硬化膜層をクリアコート層として使用する場合、該クリアコート層は好ましくは光沢を有する。1つの実施態様において、クリアコート層は80あるいはそれより大きい20゜での光沢(ASTM D523−89)、あるいは少なくとも80のDOI(ASTEM E430−91)を有する。クリアコート層として硬化可能な被膜層の使用は、下でさらに詳細に説明する。
【0030】
被覆組成物を当該技術分野で公知の任意の方法によって適用できる。適した方法は、限定されずに吹き付け塗布、浸漬塗布、ロール塗布、カーテン塗布、およびそれらの組み合わせを含む。基材は当該技術分野で公知の任意の適した基材であってよい。1つの実施態様において、基材は自動車のボディパネルを含む。他の実施態様において、基材はプラスチック、金属、例えば鋼、鉄、およびアルミニウム、およびそれらの組み合わせの群から選択される。基材は被覆されていても被覆されていなくても、処理されていても処理されていなくてもよく、且つ、それらの組み合わせであってもよい。最も好ましくは、基材は下塗りされているか、あるいは電着されており、且つ自動車のボディパネルを含む。
【0031】
上で最初に述べられたように、被覆組成物を基材に適用した後、その基材を好ましくは被覆組成物を硬化させる条件にさらし、そして硬化被膜層を形成する。様々な硬化方法が使用できるが、熱硬化が好ましい。一般に、放射熱源によって本質的に提供される高温に基材をさらすことによって熱硬化を実施する。しかしながら、任意のタイプの硬化を本発明に使用できる。好ましくは、被覆組成物を230゜F〜320゜Fの温度で硬化させて、硬化膜層を形成する。被覆組成物がブロック酸触媒を含む場合、該被覆組成物をより好ましくは250゜F〜300゜Fの温度、およびより好ましくは275゜F〜285゜Fの温度で硬化させて、硬化膜層を形成する。被覆組成物が非ブロック酸触媒を含む場合、該被覆組成物をより好ましくは180゜F〜220゜Fの温度で硬化させて硬化膜層を形成する。
【0032】
被覆組成物を好ましくは10〜60分間硬化させる。しかしながら、被覆組成物がブロック酸触媒を含む場合、該被覆組成物をより好ましくは15〜25分間硬化させる。被覆組成物が非ブロック酸触媒を含む場合、該被覆組成物をより好ましくは10〜20分間硬化させる。
【0033】
硬化および硬化膜層の形成後、該硬化膜層はGM材料規格#9984157によって測定される、好ましくは7未満、より好ましくは5未満、さらにより好ましくは3〜5、および最も好ましくは3あるいはそれ未満のジャクソンビルエッチ(Jacksonville Etch)を有している。本発明は該被覆組成物を使用した基材被覆の方法も含む。
【0034】
本発明は、上に最初に述べられたように、硬化した後に被覆組成物から形成されるベースコート層およびクリアコート層を含む被膜系も提供する。ベースコート層はアクリル、ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキド、ポリシロキサンおよびそれらの組み合わせの群から選択されるポリマーを含んでよい。好ましいポリマーはアクリルおよびポリウレタンを含む。該ポリマーは、架橋可能であり、且つ1つあるいはそれより多くの架橋可能な官能基を含む。かかる架橋可能な基は、限定されずにヒドロキシ基、イソシアネート基、アミン基、エポキシ基、アクリレート基、ビニル基、シラン基、アセトアセテート基およびそれらの組み合わせを含む。上に最初に述べられたように、それらを非ブロック化して所望の硬化条件で架橋できるように、それらの架橋可能な基を覆って、あるいはブロックしてよい。本発明は基材上に適用された被膜系を有する基材も含んでよい。
【0035】
ここでクリアコート層に言及すると、クリアコート層を好ましくは1.2〜2.5、より好ましくは1.6〜2.1、および最も好ましくは1.8〜2.0ミルの塗膜厚で適用する。クリアコート層は好ましくは光沢も有している。1つの実施態様において、上にも最初に述べられたように、クリアコート層は80あるいはそれより大きい20゜での光沢(ASTM D523−89)、あるいは少なくとも80のDOI(ASTEM E430−91)を有する。クリアコート層は、上にも最初に述べられ、且つGM材料規格#9984157によって測定される、好ましくは7未満、より好ましくは5未満、および最も好ましくは3〜5のジャクソンビルエッチを有している。
【0036】
ここでベースコート層およびクリアコート層に言及すると、ベースコート層およびクリアコート層は、GM試験番号9071Pによって測定される、好ましくは少なくとも1.6ミルのクリアコートの破壊塗膜厚までの中塗りの付着力を有する。1つの実施態様において、ベースコート層およびクリアコート層はそれぞれ修復層および元の層として使用され、且つGM試験番号9071Pによって測定されるおよそ3.3の中塗りの付着力を有する。好ましくは、ベースコート層およびクリアコート層は、さらにGM試験番号9071Pによって測定される、少なくとも95パーセントの付着率を有する。1つの実施態様において、ベースコート層およびクリアコート層は95〜100パーセントの付着率を有する。さらに他の実施態様において、ベースコート層およびクリアコート層は100パーセントの付着率を有する。
【0037】
ここに示される本発明のカルバメート官能性ポリマー(A)、架橋剤(B)および酸官能性ポリマー(C)の形成および使用を説明する下記の実施例は、例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
【0038】
実施例
4つの被覆組成物、被覆組成物1〜4を本発明に従って配合する。比較用の2つの被覆組成物、比較被覆組成物1および2を本発明の酸官能性ポリマー(C)を含めずに配合する。それぞれの被覆組成物1〜4および比較被覆組成物1および2を配合の後、クリアコート層、クリアコート層1〜4および比較クリアコート層1および2のそれぞれの形成に使用する。クリアコート層1〜4および比較クリアコート層1および2の酸エッチング耐性、およびベースコート層との中塗りの付着力および付着率を評価し、以下により詳細に記載する。
実施例1:
下記の表1に示すように、被覆組成物1を配合するために以下の成分を攪拌機能付きの適した容器に添加する:
77.570gのハイソリッドのカルバメートアクリル樹脂、ミシガン州サウスフィールドのBASF社で生産;
25.030gのカルバメート化ジオール、ミシガン州サウスフィールドのBASF社で生産;
34.510gのブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、ドイツ、ルートヴィヒスハーフェンのBASF社からLuwipal(登録商標)018の商標で市販、架橋剤(B)として;
0.400gの酸官能性ポリマー1、固体率49.8%、酸価248.6mg KOH/g、質量平均分子量19,993g/molおよび数平均分子量6,394g/molを有する;
20.240gのAerosil(登録商標)R972、9.8%のR972を28%の固体カルバメート化アクリル樹脂および溶剤中に分散した分散液、ニュージャージー州パーシッパニーのDegussa社から市販、第一の添加剤として;
10.000gのTinuvin(登録商標)384−2、ニューヨーク州アーズリーのCiba−Geigy社から市販、第二の添加剤として;
1.500gのTinuvin(登録商標)123、ニューヨーク州アーズリーのCiba−Geigy社から市販、第三の添加剤として;および
2.800gのNacure(登録商標)5225、コネチカット州ノーウォークのKing Industriesから市販、触媒として。
【0039】
実施例2:
被覆組成物2を配合するために、被覆組成物1の形成に使用した上述の成分を、0.400gの酸官能性ポリマー2で酸官能性ポリマー1を置き換える以外、同様に使用する。それも下記の表1に示す。酸官能性ポリマー2は固体率58.3%、酸価245.5mg KOH/g、質量平均分子量6,940g/mol、および数平均分子量3,100g/molを有する。
【0040】
実施例3:
被覆組成物3を配合するために、被覆組成物1の形成に使用された上述の成分を、0.400gの酸官能性ポリマー3で酸官能性ポリマー1を置き換える以外、同様に使用し、さらに下記の表1に示す。酸官能性ポリマー3は固体率49.0%、酸価121.3mg KOH/g、質量平均分子量5,611g/mol、数平均分子量2,300g/mol、25℃で粘度191MPa.s、密度1,027g/cm3、および屈折率1.4482を有する。
【0041】
実施例4:
被覆組成物4を配合するために、被覆組成物1の形成に使用された上述の成分を、0.400gの酸官能性ポリマー4で酸官能性ポリマー1を置き換える以外、同様に使用し、それも下記の表1に示す。酸官能性ポリマー4は、密度1,03g/cm3、屈折率1.452、および酸価80mg KOH/gを有するイオン性のアクリルコポリマーである。
【0042】
比較例1:
下記の表1に示すように、比較被覆組成物1を配合するために、以下の成分を攪拌機能付きの適した容器に添加する:
77.570gのハイソリッドのカルバメートアクリル樹脂、ミシガン州サウスフィールドのBASF社で生産、カルバメート官能性ポリマー(A)として;
25.030gのカルバメート化ジオール、ミシガン州サウスフィールドのBASF社で生産、カルバメート官能性化合物として;
34.510gのブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、ドイツ、ルートヴィヒスハーフェンのBASF社からLuwipal(登録商標)018の商標で市販、架橋剤(B)として;
0.400gのDisparlon(登録商標)、日本、東京の共栄社化学から市販、均展剤として;
20.240gのAerosil(登録商標)R972、ニュージャージー州パーシッパニーのDegussa社から市販、第一の添加剤として;
10.000gのTinuvin(登録商標)384−2、ニューヨーク州アーズリーのCiba−Geigy社から市販、第二の添加剤として;
1.500gのTinuvin(登録商標)123、ニューヨーク州アーズリーのCiba−Geigy社から市販、第三の添加剤として;および
2.8gのNacure(登録商標)5225、コネチカット州ノーウォークのKing Industriesから市販、触媒として。
【0043】
比較例2:
比較被覆組成物2を配合するために、比較被覆組成物1の形成に使用した上述の成分を、2.24gのNacure(登録商標)5225を触媒として使用する以外、同様に使用し、それも下記の表1に示す。表1の中で、全ての成分はグラムで示される。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
被覆組成物1〜4および比較被覆組成物1および2の形成の後、第一の溶剤としてミシガン州ミッドランドのDow Chemical社から市販のエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを14.000g、および第二の溶剤としてケンタッキー州コヴィントンのAshland社から市販のHi−Sol10を10.100g、各被覆組成物1〜4および比較被覆組成物1および2に添加する。第一の溶剤および第二の溶剤を、上で最初に述べられたように、ベースコート層を含み、別々にe−コートおよび下塗りされたACTパネル上への各被覆組成物1〜4および比較被覆組成物1および2の吹き付け用調製物に添加する。
【0047】
特にベースコート層を形成するために、e−コートおよび下塗りされたACTパネルに、BASF社からE54WW403の商標で市販されている白色の水系ベースコート組成物を吹き付け、塗膜梯子(film build ladder)上で0〜2.5ミルの塗膜にする。続いて、該パネルを通常のオーブン内で300゜Fの温度で90分間プリベイクし、それによってベースコート層を形成する。ベースコート層の形成後、被覆組成物1〜4および比較被覆組成物1および2をそれぞれ個々に、塗膜梯子上の0〜2.5ミルの塗膜と直列に種々のパネル上に吹き付け、そして通常のオーブン内で275゜Fで25分間硬化し、クリアコート層1〜4および比較クリアコート層1および2をそれぞれ形成する。その後、クリアコート層1〜4および比較クリアコート層1および2の、GM材料規格9984157によって測定される酸エッチ(ジャクソンビルエッチ)耐性、GM試験番号9071Pによって測定される、ベースコート層からクリアコート層までの全体の破壊塗膜厚(即ち、クリアコート層1〜4および比較クリアコート層1および2とベースコート層との間の中塗りの付着力)、およびGM試験番号9071Pによって測定される付着率を評価し、下記の表2に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
表2に示されるように、クリアコート層1〜4のジャクソンビルエッチは比較クリアコート層1および2のジャクソンビルエッチよりも低く、クリアコート層1〜4が酸性雨からの酸エッチング、しみ、および斑点に対してより耐性があることを実証する。また、表2に示されるように、クリアコート層1〜4の破壊塗膜厚は比較クリアコート層1および2の破壊塗膜厚よりも大きく、クリアコート層1〜4がベースコート層からの剥離および分離に対して比較クリアコート層1および2よりも耐性があることを実証する。表2にさらに示されるように、クリアコート層1〜4の付着率は比較クリアコート層1および2の付着率より高く、クリアコート層1〜4がベースコート層との向上した密着を示すことを実証する。これらの結果は、クリアコート層1〜4が自動車塗装用途における商業的な使用に適している一方、比較クリアコート層1および2はより使用に適していないことを示す。
【0050】
本発明は例示的に記載されているに過ぎず、使用されている用語は限定ではなく、記載の言葉の内容であるとされる。明らかに、上記の教示を考慮して本発明の様々な変更および改変が可能であり、且つ本発明は特段記載されたのとは別のやり方でも実施できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.カルバメート官能性ポリマー
B.前記のカルバメート官能性ポリマーと反応性のある架橋剤、および
C.前記のカルバメート官能性ポリマー(A)および前記の架橋剤(B)と本質的に反応性がない酸官能性ポリマー
を含む被覆組成物において、前記の酸官能性ポリマーが少なくとも50mg KOH/gの酸価を有する被覆組成物。
【請求項2】
酸官能性ポリマー(C)が少なくとも120mg KOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項3】
酸官能性ポリマー(C)が少なくとも240mg KOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項4】
酸官能性ポリマー(C)がアクリルポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項5】
アクリルポリマーがアクリルポリエステルを含むことを特徴とする、請求項4に記載の被覆組成物。
【請求項6】
酸官能性ポリマーがポリアルキルアクリレートを含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項7】
ポリアルキルアクリレートがポリブチルアクリレートを含むことを特徴とする、請求項6に記載の被覆組成物。
【請求項8】
酸官能性ポリマー(C)がポリエステルポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項9】
カルバメート官能性ポリマー(A)が
A.少なくとも1つがエポキシ基および有機酸の開環反応から形成される複数のヒドロキシル基を含む化合物と
B.カルバメート基を含む化合物
との反応生成物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項10】
架橋剤(B)が、アミノプラスト、フェノール付加物、シロキサン、シラン、アルキロール、イソシアネート、アクリル、無水物およびそれらの組み合わせの群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項11】
架橋剤(B)がメラミンホルムアルデヒド樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項12】
被覆組成物100質量部あたり、少なくとも1つの触媒を0.1〜0.9質量部の量でさらに含む、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項13】
均展剤、界面活性剤、充填材、安定剤、溶剤、可塑剤、変形剤、湿潤添加剤、触媒、流動制御剤、顔料およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項14】
カルバメート官能性ポリマー(A)と異なるカルバメート官能性化合物をさらに含む、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項15】
添加ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項16】
硬化後に、GM材料規格9984157によって測定される3〜5のジャクソンビルエッチを有する硬化被膜層が生成する、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項17】
溶剤系である、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項18】
水系である、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の被覆組成物を使用した基材の被覆方法。
【請求項20】
硬化後に被覆組成物から形成されたベースコート層およびクリアコート層を含み、且つ
A.(i)カルバメート官能性ポリマーと、
(ii)前記のカルバメート官能性ポリマーと反応性のある架橋剤
との反応生成物
および
B.本質的に(i)前記のカルバメート官能性ポリマー、(ii)前記の架橋剤、および(i)と(ii)との反応生成物と反応性がない酸官能性ポリマー
を含む被膜系において、前記の酸官能性ポリマーが少なくとも50mg KOH/gの酸価を有する被膜系。
【請求項21】
酸官能性ポリマー(B)が少なくとも120mg KOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項22】
酸官能性ポリマー(B)が少なくとも240mg KOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項23】
酸官能性ポリマー(B)がアクリルポリエステルを含むことを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項24】
酸官能性ポリマー(B)がポリブチルアクリレートを含むことを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項25】
カルバメート官能性ポリマー(i)が、
A.少なくとも1つがエポキシ基および有機酸の開環反応から形成される複数のヒドロキシル基を含む化合物と
B.カルバメート基を含む化合物
との反応生成物を含むことを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項26】
架橋剤(ii)がメラミンホルムアルデヒド樹脂を含むことを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項27】
被覆組成物がカルバメート官能性ポリマー(i)と異なるカルバメート官能性化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項28】
被覆組成物が添加ポリマーをさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項29】
クリアコート層が、GM材料規格9984157によって測定される3〜5のジャクソンビルエッチを有することを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項30】
ベースコート層およびクリアコート層が、GM試験番号9071Pによって測定される少なくとも1.6ミルの破壊塗膜厚の中塗りの付着力を有することを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項31】
ベースコート層およびクリアコート層が、GM試験番号9071Pによって測定される95〜100パーセントの付着率を有することを特徴とする、請求項20に記載の被膜系。
【請求項32】
基材上に適用された請求項20に記載の被膜系を有する基材。

【公表番号】特表2010−504401(P2010−504401A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529289(P2009−529289)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/075166
【国際公開番号】WO2008/036473
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, New Jersey 07932, USA
【Fターム(参考)】