説明

被覆組成物

本発明は皮革の被覆材(コーティング剤)に関する。特に本発明は皮革のためのトップコートに関する。本発明は、オルガノポリシロキサンと、水性分散物中の有機合成樹脂とを含む皮革コーティング組成物を提供し、この組成物は、オルガノポリシロキサンが水性エマルション中に存在し且つ実験式(1)(式中、Rは1〜30の炭素原子を有する一価の有機基であり、Zは水素であるか又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、xは0.75〜1.7の値を有し、yは0.1〜2.0の値を有する)を有し且つ25℃で1〜4000mPa.sの粘度を有するシリコーンレジンを含むことを特徴とする。我々は、本発明にしたがうシリコーンレジンの使用が、このコーティング組成物で被覆した皮革の耐摩耗性(テーバー法によって測定して)を大きく高めることを発見した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は皮革のための被覆材(コーティング剤)に関する。特に、本発明は皮革のトップコートに関する。
【背景技術】
【0002】
表面の滑らかさと皮革の柔軟性を向上させ、且つ、水、溶媒、天候、及び/又は摩耗に対する耐性を向上させるために、皮革(レザー)はコーティングされる。皮革は、車の内装、特に車のシート用に自動車産業において益々用いられてきている。これは厳しい用途、特に耐摩耗に関して厳しい用途である。
【0003】
皮革のためのコーティングは、溶媒から又は水性分散物から適用(apply)された合成樹脂、例えば、ポリウレタン及び/又はポリウレアに基づく。水性分散物からの適用は、溶媒の放出を避けるために好ましい。欧州特許出願公開第924230号公報は、ポリウレタン/ウレア上に反応したアルコキシシラン基を含むポリウレタン/ウレアの水性分散物に基づくコーティング組成物(被覆用組成物)を記載している。シリコーン類は、皮革コーティング組成物に添加されてきている。特開平10−120903号公報は、ポリオルガノシルセスキオキサンレジンとシリコーンゴム粒子とに基づくコーティングを記載している。シリコーンガム分散物も皮革コーティング剤に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第924230号公報
【特許文献2】特開平10−120903号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、オルガノポリシロキサンを皮革コーティング組成物に用いる。このオルガノポリシロキサンは水性エマルション中に存在し、且つ実験式:
【化1】

(式中、
・ Rは1〜30の炭素原子を有する一価の有機基であり、
・ Zは水素であるか又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
・ xは0.75〜1.7の値を有し、
・ yは0.1〜2.0の値を有する。)
を有し且つ25℃で1〜4000mPa・sの粘度を有するシリコーンレジンを含む。
【0006】
本発明による皮革コーティング組成物は、水性分散物中の有機合成樹脂と、オルガノポリシロキサンとを含む。このオルガノポリシロキサンは水性エマルション中に存在し、上で定義した実験式:
【化2】

を有するシリコーンレジンを含有する。本発明は、そのようなコーティング組成物を皮革の表面に適用(apply)し、その表面を乾燥させる、皮革をコーティングするための方法を含む。
【0007】
皮革コーティング組成物の調製のための本発明の方法では、シリコーンレジンを、有機合成樹脂の水性分散物に添加する。このシリコーンエマルションは、
A)上で定義した実験式:
【化3】

を有するシリコーンレジン 1〜70質量%;
B)ヒドロキシ末端のポリジオルガノシロキサン 0〜40質量%;
C)成分A)及びB)の質量を基準にして0.5〜20%の乳化剤;及び
D)このエマルションの質量を基準にして0.001〜5%の水溶性塩、
を含む。
【0008】
我々は、本発明によるシリコーンレジンの使用が、このコーティング組成物で被覆した皮革の耐摩耗性(テーバー法によって測定して)を大きく高めることを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の上記エマルション中のシリコーンレジンは、オルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンは、一般にそれぞれ、M、D、T、及びQシロキシ単位とよばれる、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)、又は(SiO)シロキシ単位から独立に選択されたシロキサン単位を含むポリマーであり、式中、Rは1〜30の炭素原子を含む任意の有機基であってよい。これらのシロキシ単位は様々な態様で結合して、環状、直鎖状(線状)、又は分枝状のオルガノポリシロキサン構造を形成できる。オルガノポリシロキサン構造の化学特性及び物理特性は、そのオルガノポリシロキサンに存在するシロキシ単位のタイプ及び数に応じて変わりうる。例えば、オルガノポリシロキサンは、揮発性又は低粘度の液体、高粘度液体/ガム、エラストマー又はゴム、及びレジンであることができる。本発明のエマルション中のシリコーンレジンとして有用なオルガノポリシロキサンは、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)、又は(SiO)シロキシ単位の任意の組み合わせを有することができ、但し、そのオルガノポリシロキサンが上述した実験式を有し、且つ25℃で1〜4000mPa・sの粘度を有することを条件とする。この粘度は、25℃で、例えば、10〜1000mPa・s、例えば、50〜500mPa・sであってよい。
【0010】
一つの態様では、本発明のエマルション中のシリコーンレジンとして選択されるオルガノポリシロキサンは主にD及びT単位を含む。この態様においては、D及びTシロキシはそのケイ素原子上にR置換基を有するほかに、OZ(Zは、水素又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基である)として表されるヒドロキシ又はアルコキシ置換基をも含みうる。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本発明者は、オルガノポリシロキサン中のこれらのOZ基の存在がこのレジン上に反応性部位をもたらして、エマルションから水を除去したときに固体コーティング(固体被覆)を続いて形成することを可能にすると考えている。典型的には、SiOZ基として存在するオルガノポリシロキサン上のOZ基の量は、オルガノポリシロキサンの少なくとも10%のSiOZ基、あるいはSiOZ基の質量%はオルガノポリシロキサンの10〜40%の範囲である。オルガノポリシロキサン中のSiOZの質量%は、29Si NMRスペクトルを使用してごく普通に測定できる。
【0011】
本発明の皮革コーティング組成物に有用なそのようなシリコーンレジンは、例えば、下記式を有することができる。
【化4】

式中、
・ c及び1−cはシロキシ単位のモル割合を表し、
・ aは0〜2であり、
・ bは0〜2であり、
・ cは0〜0.6であり、
但し、a+bが0.10〜2.00であることを条件とし、
・ Rは1〜30の炭素原子を有する一価の有機基であり、
・ Zは水素又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基である。
この式において、[(RSi(2−a)/2(OZ)]はDシロキシ単位を表し、[(RSiO(3−b)/2(1−c)(OZ)]はTシロキシ単位を表す。シリコーンレジン中に存在するD及びTシロキシ単位のモル割合は、それぞれ添え字「c」及び「1−c」によって表される。各シロキシ単位上のOZ基の量は、添え字「a」及び「b」によって示され、変わりうる。
【0012】
あるいは、本発明のエマルション組成物に有用なシリコーンレジンは下記式を含むことができる。
・ [(CHSiO2/2[(CH)SiO3/2
・ [(CH)SiO3/2
・ [(CHSiO2/2[(CH)SiO3/2、又は
・ [(CHSiO2/2[(CH)SiO3/2[(C17)SiO3/2
式中、添え字d、e、及びfはそれぞれ、上述した粘度をもつシリコーンレジンをもたらすのに十分な値を有する、ゼロより大きな整数である。
・ あるいは、dは0.4〜1、あるいは0.1〜0.3で変わりうる。
・ あるいは、eは0.1〜1、好ましくは0.7〜0.9で変わりうる。
・ あるいは、fは0〜0.1、あるいは0.01〜0.04で変わりうる。
【0013】
上記シリコーンレジンは任意の公知の方法によって調製することができるが、典型的には環状シロキサンの開環反応とそれに続いてのアルコキシシラン(1種又は複数)との加水分解重縮合か、又はアルコキシシランの加水分解重縮合によって調製される。両方法において、開環、加水分解、及び縮合反応は、酸又は塩基によって触媒されることができる。これらの反応に続いて次に触媒中和、副生アルコールの蒸留除去、ろ過、及び溶媒の除去を行い、所望する生成物が得られる。
【0014】
例えば、アルキル官能性シリコーンレジンは、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、及び/又は環状シロキサンの混合物を調製しこの混合物50〜90質量%を、50質量%以下の極性溶媒に溶かすことによって製造することができる。典型的には、この極性溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及び/又はブタノールであることができるがこれらに限定されない。この混合物を次に適切な酸触媒を用いて脱イオン水(1〜20質量%)と反応させる。例には、0.05質量%のトリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)又は塩酸が含まれるがこれらに限定されない。この反応の次に触媒中和、副生アルコールの蒸留除去を行なう。混合物を次にろ過し、加熱して溶媒を除去して、所望するアルキル官能性レジンを得る。典型的には、アルキル基はC1〜C4からなり、典型的なアルコキシ基はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、及び/又はイソプロポキシである。
【0015】
あるいは、シリコーンレジンは、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、及び/又は環状シロキサンの混合物を調製しこの混合物50〜90質量%を、50質量%以下の極性溶媒に溶かすことによって製造することができる。典型的には、この極性溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及び/又はブタノールであることができるがこれらに限定されない。この混合物を次に触媒量の水酸化カリウム水溶液(又は当業者に公知のその他の適切な塩基性触媒)を用いて、脱イオン水(1〜20質量%)で加水分解する。塩基性触媒の例にはナトリウムメチレート及びカリウムシラノレートが含まれるがこれらに限定されない。この反応の次に触媒(1種又は複数)中和、副生アルコールの蒸留除去を行なう。触媒はHCl水溶液(又は別の適切な酸、例えば酢酸)で中和することができる。混合物を次にろ過し、加熱して溶媒を除去して、所望するアルキル官能性シリコーンレジンを得る。典型的には、アルキル基はC1〜C4からなり、アルコキシ基は、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、及び/又はイソプロポキシである。
【0016】
本発明の皮革コーティング組成物は、一般に、水性分散液中の有機合成樹脂を含む。有機合成樹脂の語によって、我々は炭素化学に基づくポリマーを意味し、これはポリマー骨格中の原子の少なくとも半分が炭素原子であるポリマーである。有機合成樹脂は、例えば、ポリウレタン及び/又はポリウレアであることができ、コーティング組成物のための主要な膜形成性バインダーとして機能する。有機合成樹脂は、水溶液中、水性のエマルション又は懸濁液中に存在できる。
【0017】
有機合成樹脂は非反応性熱可塑性樹脂であることができるが、より普通には硬化性樹脂である。例えば、皮革コーティング組成物は、有機合成樹脂と反応してその樹脂を硬化させる硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤は、常温で樹脂と反応できることが有利である。あるいは、有機合成樹脂は昇温した温度で硬化剤と反応することができ、又は昇温した温度で自己硬化してもよい。有機合成樹脂は、例えば、活性化されたヒドロキシル基を有する硬化剤と反応するブロックイソシアネート基を含むポリウレタン及び/又はポリウレアであることができる。ポリウレタンは、アミノ樹脂硬化剤、例えば、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂と反応するフリーのヒドロキシル基を含んでいてもよい。ポリウレアは、エポキシ樹脂硬化剤と反応するフリーのアミノ基を含んでいてもよい。あるいは、フリーのヒドロキシル基を含むポリウレタン、又はフリーのアミノ基を含むポリウレアは、ブロックポリイソシアネート硬化剤と反応させることができる。
【0018】
有機合成樹脂は、それらのための任意の硬化剤とともに、例えば、水性コーティング組成物中に、少なくとも10〜20質量%から65又は70質量%以下、典型的には35〜60%で存在することができる。
【0019】
シリコーンレジンは、エマルションとして、有機合成樹脂の水性分散物に添加される。シリコーンレジンのエマルションは、通常、(A)上で定義したシリコーンレジン1〜70質量%、任意成分として(B)ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン0〜40質量%、(C)(A)及び(B)成分の質量に基づいて0.5〜20%の乳化剤、及び(D)エマルションの質量に基づいて0.001〜5%の水溶性塩、を含む。
【0020】
シリコーンレジンエマルションの乳化剤は任意のタイプ、すなわち、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性であることができる。例えば、成分(A)及びもし用いる場合には成分(B)を、ノニオン性界面活性剤、又は10〜20の範囲の組み合わせHLBを有するノニオン性界面活性剤の組み合わせを用いることによって乳化させることができる。ポリビニルアルコール(PVA)は、フィルム形成性コーティング剤を達成するための助けとなる乳化剤である。PVAは、例えば、600〜4000の重合度(P)、又は25,000〜200,000の質量平均分子量Mと、70〜98モル%、好ましくは80〜95モル%の(アセテートからの)加水分解度を有することができる。PVAの使用量は、例えば、成分(A)及び(B)の合計質量に基づいて2〜10%であることができる。
【0021】
水溶性の有機又は無機塩(D)は、本発明における水相を中性ないしわずかにアルカリ性にすることが好ましい。用いることができる水溶性塩の例には、カルボン酸及びリン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアンモニウム塩が含まれる。アミンも有効であり、例には、アルキルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが含まれる。エマルションの質量に基づいて0.01〜0.2%の使用量での炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが特に有効である。
【0022】
任意選択で場合によっては存在するポリジオルガノシロキサン(B)は、例えば、下記一般式を有することができる。
[RSi(OH)O1/2][RSiO2/2[SiR(OH)O1/2
式中、Rは1〜30の炭素を含む有機基であり、zは重合度を表し且つ1より大きい。
典型的には、ヒドロキシ末端ポリジオルガノポリシロキサンは、2〜1000、例として5〜200、例えば10〜100などの重合度(z)を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。
【0023】
上記シリコーンレジンエマルションは、例えば、皮革コーティング組成物に、有機合成樹脂(樹脂のための全ての硬化剤を含む)に基づいて0.5〜30質量%のシリコーンレジン(シリコーンレジンとともに存在する全てのヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを含む)となるのに充分な量で添加することができ、例えば、有機合成樹脂に基づいて1もしくは2%から10もしくは15%までのシリコーンレジンである。シリコーンレジンは、一般的に、皮革コーティング組成物中に0.1〜20質量%、例えば0.5〜5%で存在する。
【0024】
皮革コーティング組成物は、そのような組成物に用いることが公知のその他の成分、例えば、1種以上の顔料もしくはフィラー、きしり止め剤(antisqueak agent)、組成物の流れ性を増大もしくは低下させるためのレオロジー添加剤、発泡調整剤(foam control agent)、凍結防止剤、及び/又は殺生物剤を含むことができる。
【0025】
本発明の皮革コーティング組成物は、様々な種類の皮革、例えば、従来の皮革、ヌバック、又はスエードに適用(apply)することができる。このコーティングは、仕上げが終わった皮革、又は皮革の仕上げの最後の湿式工程で適用することができる。このコーティング組成物は皮革の表面に適用(apply)され、その表面で乾燥させられる。コーティングは、例えば、10〜100μmの湿潤フィルム厚さで適用され、これは約2〜70μmの乾燥フィルム厚さに相当する。乾燥は、組成物中の樹脂バインダーの硬化特性に応じて常温又は昇温してできる。
【0026】
シリコーンレジンを含むコーティングを用いて本発明に従ってコーティングされた皮革は、大きく増大した耐摩耗性を有する。耐磨耗性は、例えば、テーバー摩耗ホイールを使用して、コーティングされた皮革表面を擦ることで測定できる。耐摩耗性のこの増大は、最終的なコーティングの適合性及び柔軟性への害なしに達成される。耐摩耗性を増大させるためのその他の添加剤は、コーティングした皮革の手触りを荒くし、曲げへの抵抗性を増大させ、コーティングの構造中にひび割れ(クラック)を引き起こしうる。本発明によってコーティングした皮革は撥水性も増大させている。
【0027】
以下の例は、当業者に本発明を説明することを意図しており、特許請求の範囲に示される発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。「部」及び「パーセント」は質量に基づく。
【実施例】
【0028】
[例1]
8262.4gのメチルトリメトキシシラン、812.8gのオクタメチルシクロテトラシロキサン、404.1gのn−オクチルトリエトキシシラン、及び333.3gのメタノールを混合することによって、6000gバッチのシリコーンレジンを調製した。この混合物を、4.3gのトリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)及び1349.8gの脱イオン水を用い、この混合物を還流温度(68〜70℃)に10時間加熱しながら加水分解した。次に16.5gのCaCOを用いて触媒を中和した。アルコール副生物と残存溶媒を蒸留によって除去し、得られた組成物をろ過した。最終的なアルキル官能性シリコーンレジン組成物を分析し、これは16.0モル%のMeSiO2/2と84.0モル%のRSiO3/2、17.9質量%のSiOZを含んでおり、これは、R基の1.7モル%がオクチル基であり、残りがメチルであり、Zは水素又はメチルであって少なくとも80モル%がメチル基であるシリコーンであることを裏付けていた。
【0029】
上記のシリコーンレジン50部を、加水分解度92%及び175000の分子量のポリビニルアルコールの10%水溶液30部及び水20部と、均一になるまで混合してエマルションを作った。この混合物を次に4500rpmにて、20psi(0.1379MPa)の背圧及び40Hzオンス(1.134Hzキログラム)のポンプスピードで、2インチ(5.08cm)のパイプライン式Greerco(登録商標)ミキサー(Chemineer Corp)を通した。得られたエマルションは均一且つ乳白色だった。エマルションの質量を基準にして、0.1%の炭酸水素ナトリウムを添加した。
【0030】
上記のシリコーンレジンエマルション30部を、2成分形ポリウレタン皮革コーティング組成物(これは、10部の顔料、180部のきしり止め剤(antisqueak)、及び10部の流動性向上剤とともに、350部の水中に分散させた450部のポリウレタン樹脂バインダーを含む)からなるバインダー部分に混合した。次に70部の水中に分散させた70部の樹脂硬化剤を10分間かけて混合して、完全なコーティング組成物を形成させた。
【0031】
このコーティング組成物を、34ミクロンに調節したマイヤー・バー(Meyer’s bar)を使用して、植物なめしした皮革に適用(apply)し、室温で乾燥させておいた。この皮革を室温及び65%相対湿度で24時間コンディショニングした。
【0032】
摩耗試験では、コーティングした皮革をテーバー試験装置で摩耗にかけた。摩耗は、テーバーのアームのそれぞれにH18ホイールと250gの追加加重を用いて行なった(500サイクル)。試験後の目視検査では、このコーティングはわずかにしか分解を受けておらず、コーティングした皮革の全体的な外観は試験前と同じだった。1(劣る)〜5(優れている)の耐摩耗性の尺度の上では、本発明のコーティングした皮革はグレード4だった。
【0033】
比較試験では、植物なめしした皮革を、シリコーンレジンエマルションを除外して、上と同じ2成分形ポリウレタン皮革コーティング組成物でコーティングをし、上と同じ温度及び湿度でコンディショニングした。このコーティングした皮革を上と同じテーバー試験にかけたとき、このコーティングは摩耗した領域で破壊され、下の皮革構造が見えた。この比較例のグレードは1であり、上記シリコーンレジンが、コーティングされた比較の耐摩耗性を大きく向上させたことを示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性分散物中の有機合成樹脂と、オルガノポリシロキサンとを含む皮革コーティング組成物であって、
前記オルガノポリシロキサンが、水性エマルション中に存在し、且つ実験式:
【化1】

(式中、
・ Rは1〜30の炭素原子を有する一価の有機基であり、
・ Zは水素であるか又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
・ xは0.75〜1.7の値を有し、
・ yは0.1〜2.0の値を有する。)
を有し且つ25℃で1〜4000mPa・sの粘度を有するシリコーンレジンを含むことを特徴とする、皮革コーティング組成物。
【請求項2】
前記シリコーンレジンが下記式:
【化2】

(式中、
・ c及び1−cはシロキシ単位のモル割合を表し、
・ cは0〜0.6であり、
・ aは0〜2であり、
・ bは0〜2であり、
但し、a+bが0.10〜2.00であることを条件とし、
・ Rは1〜30の炭素原子を有する一価の有機基であり、
・ Zは水素又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基である。)
を有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載の皮革コーティング組成物。
【請求項3】
Rの少なくとも80%がメチルであり、Zが水素又は1〜4の炭素をもつアルキルであるか、あるいはZは水素もしくはメチルもしくはエチルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項4】
前記シリコーンレジンが、前記有機合成樹脂に基づいて0.5〜30質量%で存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項5】
前記有機合成樹脂がポリウレタン及び/又はポリウレアを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項6】
ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項7】
シリコーンレジンのエマルションが有機合成樹脂の水性分散物に添加され、前記エマルションが、
A)下記実験式:
【化3】

(式中、
・ Rは1〜30の炭素原子を有する一価の有機基であり、
・ Zは水素であるか又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
・ xは0.75〜1.7の値を有し、
・ yは0.1〜2.0の値を有する。)
を有し且つ25℃で1〜4000mPa・sの粘度を有するシリコーンレジン 1〜70質量%;
B)ヒドロキシ末端のポリジオルガノシロキサン 0〜40質量%;
C)成分A)及びB)の質量を基準にして0.5〜20%の乳化剤;及び
D)エマルションの質量を基準にして0.001〜5%の水溶性塩、
を含むことを特徴とする、皮革コーティング組成物の製造方法。
【請求項8】
前記乳化剤がポリビニルアルコールであることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記水溶性塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された皮革コーティング組成物。
【請求項11】
請求項1〜6及び10のいずれか一項に記載のコーティング組成物を皮革の表面に適用し、前記表面を乾燥させることを特徴とする、皮革にコーティングをする方法。
【請求項12】
皮革コーティング組成物におけるオルガノポリシロキサンの使用であって、前記オルガノポリシロキサンが、水性エマルション中に存在し、且つ実験式:
【化4】

(式中、
・ Rは1〜30の炭素原子を有する一価の有機基であり、
・ Zは水素であるか又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
・ xは0.75〜1.7の値を有し、
・ yは0.1〜2.0の値を有する。)
を有し且つ25℃で1〜4000mPa・sの粘度を有するシリコーンレジンを含むことを特徴とする、使用。
【請求項13】
皮革コーティングの添加剤であって、前記添加剤が水性エマルション中のオルガノポリシロキサンを含み、且つ実験式:
【化5】

(式中、
・ Rは1〜30の炭素原子を有する一価の有機基であり、
・ Zは水素であるか又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
・ xは0.75〜1.7の値を有し、
・ yは0.1〜2.0の値を有する。)
を有し且つ25℃で1〜4000mPa・sの粘度を有するシリコーンレジンを含むことを特徴とする、添加剤。

【公表番号】特表2011−522078(P2011−522078A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510978(P2011−510978)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056347
【国際公開番号】WO2009/153134
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】