説明

被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子の製造方法

【課題】 蛍光強度を低下させず且つ高い耐湿性及び耐水性を有する被覆膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】 珪酸塩蛍光体粒子の表面に一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物の下地層を形成した後、下地層の上にシラン有機金属化合物の加水分解縮合物を濃縮した第1被覆液で被膜形成し、大気雰囲気下に110〜350℃で加熱処理して第1被覆膜を形成する。この第1被覆膜の上に、更に末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを被覆し、大気雰囲気下に250〜300℃で加熱処理して第2被覆膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子の製造方法に関し、更に詳しくは、被覆膜の形成による発光強度の低下がなく、且つ高い耐湿性と耐水性とを有する被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色LED用の蛍光体材料としてよく知られている酸化物蛍光体として、例えば、組成式SrSiO:Eu、(Sr、Ba)SiO:Eu、(Sr、Ba)SiO:Euなどで表される化合物相からなるものがある。これらは高輝度型白色LED用蛍光体に使用される蛍光体であり、青色LEDからの励起光の一部を吸収することにより黄色発光され、更に青色励起光と混ざり合うことにより白色光を得ている。更に高演色型白色LED用蛍光体に用いられる(Sr、Ba)SiO:Euは緑に発色することで演色性を高めている。
【0003】
これらの黄色発光するアルカリ土類珪酸塩蛍光体は、空気中の水蒸気又は水によって蛍光体内部から構成元素であるアルカリ土類成分が溶出し、その表面には水和物又は炭酸塩が生成することにより劣化することが知られている。このように、アルカリ土類珪酸塩蛍光体には、大気中での長時間の使用や、励起光による温度上昇によって、蛍光輝度の低下及び色調の変化が起きるという問題がある。
【0004】
このような蛍光体の耐湿性改善策として、特許文献1には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、テトラエトキシシラン(TEOS)、シリカ、ケイ酸亜鉛、シリコーンオイル、ケイ酸アルミニウム、カルシウムポリフォスフェート、シリコーンオイル、シリングリース等を被覆材として、酸化物蛍光体粒子表面に被覆膜を設ける方法が開示されている。この方法によれば、被覆膜を設けた蛍光体は初期発光強度の低下がなく、且つ耐湿性が改善されるとしている。しかしながら、この方法は簡便な方法ではあるが、微細な酸化物蛍光体粒子の全面を均一に被覆すること、あるいは被覆膜の厚さを制御することは容易でないという問題がある。
【0005】
ところで、上記のような耐湿性改善方法を用いて蛍光体粒子表面に被覆膜を形成し、得られた被覆膜付き蛍光体粒子を成形して蛍光体素子を作製し、その耐湿性及び耐水性を評価するため、例えば高温加湿雰囲気中に蛍光体素子を投入すると、蛍光体表面が侵されて水和物や硫酸化物又は炭酸塩が生成し、発光特性が大きく低下することが分かった。この傾向は、特にアルカリ土類を含む酸化物蛍光体粒子の場合に著しいことが分かった。このように蛍光体の耐湿性・耐水性が改善されていない場合には、その蛍光体を用いて作製したLED発光素子を照明及び自動車用途等のように屋外で使用した場合、LED発光素子は直ちに劣化することになる。
【0006】
このような劣化を招く原因の多くは、被覆膜の材質ばかりでなく、被覆膜の欠陥(ピンホール等)にもある。例えば、蛍光体粒子表面に上記したテトラエトキシシランなどの有機化合物被膜を形成し、加熱処理して被覆膜を形成する場合、加熱処理により有機物を分解する際に被覆膜に欠陥が形成される。その結果、この欠陥を通って湿気や水分が蛍光体粒子内部に進入するため、蛍光体粒子そのものが劣化する。
【0007】
この問題を回避するため、被覆膜の膜厚を厚くすることが行われている。しかし、最も一般的に行われるアルコキシシランを加水分解して被覆する方法、即ち水又は非水溶媒に酸アルカリ触媒を添加してアルコキシシランを加水分解・縮合反応させる方法では、アルコキシシランがゆっくり加水分解・縮合反応して蛍光体粒子表面に析出物を堆積させるため、厚さ50nm以上の被覆膜を得るには長時間の処理を必要とする。このため、耐水性に劣る蛍光体粒子は長時間に亘って水分と接しているため、蛍光体粒子の劣化が生じ、強いては溶出物がアルコキシシランの縮合反応に影響を与えて溶液全体にゲル化が生じる。
【0008】
しかも、上記の加水分解・縮合反応は強アルカリ側以外のpH域で処理しないと、蛍光体粒子からの構成成分の溶出が加速される。また、強アルカリ側にすると縮合反応が促進され、アルコキシシランは被覆膜として粒子表面に堆積させずに粗粒となって遊離してしまう。更に、この方法は希薄液中での処理となるため、1バッチ当たり少量の被覆しかできず、生産効率が劣るという問題もある。
【0009】
更に、被覆処理後の問題点として、乾燥後の凝集がある。被覆は上記したように加水分解・縮合物を粒子表面に析出させて行うが、濾過・乾燥直後では表面が活性のための被覆膜同士が接着し、凝集することがある。これを無理に解砕すれば被覆膜が剥離し、未被覆の表面が露出してしまう。凝集した粒子は粒度分布が広がり、素子形成の封止材であるシリコーン樹脂に練り込んだ際に発光が不均一となるため、発光特性が低下することになる。
【0010】
一方、特許文献2には、光強度を低下させず且つ高耐湿性及び高耐水性を有する被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法として、蛍光体粒子表面にアルミニウム有機化合物膜の下地層を形成し、下地層の上に重量平均分子量5,000〜20,000のシラン有機金属化合物縮合物の被覆材膜を設け、これを乾燥して加熱処理することにより、被覆膜を備えた蛍光体粒子を得ることが記載されている。しかしながら、この方法によって得られる蛍光体粒子は、まだ満足すべき耐湿性及び耐水性を備えているとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−187797号公報
【特許文献2】特開2011−026535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、蛍光強度を低下させず且つ高い耐湿性及び耐水性を有する被覆膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために、蛍光強度を低下させず、且つ高耐湿性及び高耐水性を有する被覆膜を備えた蛍光体粒子の効率的な製造方法について鋭意研究を重ねた結果、耐湿性及び耐水性が低下する原因並びにその解決手段に関して以下の知見を得た。
【0014】
上述した従来の方法、特に上記特許文献2の方法によれば、蛍光体粒子表面に被覆膜を設けることで耐湿性及び耐水性が向上する。しかし、被覆膜が1層だけでは、被覆膜中の欠陥のため耐湿性及び耐水性が不十分となる。被覆膜中の欠陥は、被覆材で粒子表面を被覆した後、加熱処理により有機溶媒等を除去する際にガスが発生するため、このガスにより生成するピンホール等が原因と考えられる。このような被覆膜の欠陥をなくす手段としては、被覆膜の上に更に同様の被覆膜を設ける、いわゆる二重被覆が有効であることが分かった。即ち、被覆膜上に同様の被覆膜を繰り返し積層することで被覆膜中の欠陥が非連続的となるため、耐湿性及び耐水性が一段と向上する。
【0015】
また、二重被覆を行う場合、1層目の被覆膜と2層目の被覆膜で被覆条件を変えれば特に有効であることが分かった。具体的には、1層目の被覆膜を形成する際はシラン有機金属化合物を含む被覆液を用い、2層目の形成時には末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンで被覆処理を行う。その理由は、1層目の処理時には劣化が生じないように水分との接触を避け、短時間の処理で薄い被覆膜を形成することを目的とし、乾燥して粒子との密着性を高めておき、次いで、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを用いて2層目の被覆膜を形成することによって、1層目の被覆膜と強固に接着し且つ被覆膜の欠陥や被覆むら等を補修して、より緻密な被覆膜を形成することができるからである。
【0016】
即ち、本発明が提供する被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子の製造方法は、下記の第1〜4工程を含むことを特徴とするものであって、
第1工程は、有機溶媒中にアルミニウム有機金属化合物とテトラエトキシシランと加水分解用の水を添加混合して、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を得る工程であり、
第2工程は、有機溶媒中に珪酸塩蛍光体粒子と上記第1工程で得た一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を添加混合し、真空濾過分離して乾燥することにより、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物を下地層として吸着させた珪酸塩蛍光体粒子(A)を得る工程であり、
第3工程は、有機溶媒中にシラン有機金属化合物とアルミニウム有機金属化合物と加水分解用の水を添加し、撹拌混合してシラン有機金属化合物の加水分解縮合物を得た後、この加水分解縮合物を濃縮して第1被覆液(b)を得る工程であり、
第4工程は、有機溶媒中に上記第2工程で得た下地層付き珪酸塩蛍光体粒子(A)と上記第3工程で得た第1被覆液(b)を添加混合し、真空濾過分離した後、大気雰囲気下に110〜350℃で加熱処理して第1被覆膜を形成することにより、第1被覆膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子(B)を得る工程であり、
第5工程は、有機溶媒中に上記第4工程で得た第1被覆膜を備えた蛍光体粒子(B)と末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを添加混合し、真空濾過分離した後、大気雰囲気下に250〜300℃で加熱処理して第2被覆膜を形成することにより、被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)を得る工程である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粒子表面に緻密で欠陥のない被覆膜を形成することができるので、蛍光強度を低下させることなく、非常に高い耐湿性及び耐水性を有する珪酸塩蛍光体粒子を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明においては、まず、芯材となる蛍光体粒子の表面に、一部加水分解したアルミニウム有機化合物を吸着させる。この一部加水分解したアルミニウム有機化合物の膜が下地層となり、その上に形成する第1被覆膜との密着性を高めると共に、第1被覆膜中に含まれる水分から粒子を保護する役割を果たす。尚、アルミニウム有機化合物にも加水分解用の水を加えているが、添加した微量の水はほぼ全てが加水分解反応で消費されているため、一部加水分解したアルミニウム有機化合物の溶液と蛍光体粒子が直接接触しても水分の影響は極めて少ない。
【0019】
次に、上記下地層の上に、シラン有機化合物の加水分解縮合物を含む第1被覆液を用いて第1被覆膜を形成する。このシラン有機化合物の加水分解縮合物で蛍光体粒子表面を被覆することは既に知られているが、その被覆膜だけでは極めて高い耐水性が要求される蛍光体には不十分であり、長時間水分と接触させると蛍光体粒子の劣化が進行してしまう。そこで、本発明では、第1被覆膜の上に更に第2被覆膜を形成することによって、蛍光体粒子表面を二重に被覆する。
【0020】
第2被覆膜の形成には、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを用いることが重要である。その理由は、第1被覆膜と第2被覆膜は水酸基が水素結合することで吸着積層されると考えられるが、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物からなる第1被覆膜は加熱乾燥されるため膜表面の水酸基が減少し、第2被覆膜との水素結合が弱くなることが懸念される。そこで、第1被覆膜表面の水酸基の減少による結合力の低下を補うために、第2被覆膜として末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを用いることが重要である。
【0021】
本発明において芯材として用いる珪酸塩蛍光体粒子としては、構成元素として珪素(Si)と酸素(O)の他に、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びユーロピウム(Eu)から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、且つ、平均粒径がD50で1〜30μmのものを使用する。例えば、組成式がSrSiO:Euあるいは(Sr、Ba)SiO:Euで表される化合物相を含む黄色発光する珪酸塩蛍光体が好ましい。
【0022】
上記黄色発光する珪酸塩蛍光体の組成及び発光特性について説明すると、例えば組成式がSrSiO:Euの珪酸塩蛍光体は、波長430〜470nmの光で励起した際の発光スペクトルは、540〜610nmの波長範囲に発光ピークを有し、好ましくは560〜590nmの波長範囲に発光ピークを有する。付括剤であるEuの組成範囲は、5モル%未満では発光輝度が低下し、逆に20モル%を超えると濃度消光によって充分な発光輝度を得ることはできないため、5〜20モル%の範囲が好ましい。
【0023】
Srの一部をBaで置換した組成式が(Sr、Ba)SiO:Euの珪酸塩蛍光体は、565〜575nmの波長範囲に発光ピークを有する。Srの全量に対するBa量のモル比率は、通常1%以上が好ましく、2〜10%の範囲が更に好ましい。Baは通常ではSr原始位置を置換するが、Baによる置換量の割合が高くなると発光が黄色味を帯び、発光効率が低下する傾向がある。尚、これらの珪酸塩蛍光体は、市販品を使うことができる。
【0024】
これらの珪酸塩蛍光体は、特開2006−036943号公報に記載されているような固相法で作製可能である。また、SrSiO:Euは、特開2010−189583号公報に記載の固相法とは異なる方法で製造することもできる。例えば、金属元素化合物と水溶性珪素、及び溶媒を密閉容器に入れて加熱し、金属元素が均一に分散した珪素含有ゲルとし、このゲルから溶媒を除去して乾燥状態のゲルを得て、乾燥状態のゲルを加熱することにより有機物を除き、得られた複合金属酸化物前駆体を熱処理して蛍光体粒子を得る。原料である金属元素化合物は、溶媒に溶解するものであればよく、酸化物、水酸化物、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩を用いることができる。水溶性珪素は、テトラエトキシシランとプロピレングリコールの混合液に塩酸及び水を加えて作られる。
【0025】
次に、本発明の被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子の製造方法について、工程に従って詳細に説明する。
【0026】
「第1工程」
第1工程は下地層形成に用いる一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を調整する工程である。即ち、有機溶媒中にアルミニウム有機金属化合物とテトラエトキシシランと加水分解用の水を添加して混合することにより、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を得る。
【0027】
アルミニウム有機金属化合物は粒子表面にある吸着水や、薬剤中に不純物として混入している水分とも反応して加水分解するが、より積極的に加水分解させるために水を添加する。これによりアルミニウム有機金属化合物の官能基の一部が加水分解され、加水分解された官能基は水酸基に変わる。水酸基の増加により、蛍光体粒子の表面に吸着する割合が増加するため、下地層の形成が均一に且つ密着性よく行われる。尚、アルミニウム有機金属化合物に対して5重量%のテトラエトキシシラン(TEOS)を混合することより、下地層の均一性及び密着性が更に向上する。
【0028】
加える水の量は、アルミニウム有機金属化合物が一部加水分解する量であればよく、好ましくはアルミニウム有機金属化合物に対して5〜10重量%の水を添加する。多量の水を添加すると、液中に水分が残存して蛍光体粒子の劣化が進むため好ましくない。また、加水分解に用いる水は、導電率が4μS/cm以下のイオン交換水が好ましい。
【0029】
アルミニウム有機金属化合物の加水分解は、水分の混入を防ぐために密封した容器内で気密状態の下に行うことが望ましい。また、好ましい反応条件としては、温度を18〜40℃に制御しながら、2〜10時間撹拌混合する。ただし、加水分解が進みすぎると、縮合による粘度上昇やゲル化が生じすため、密着性は逆に低下する。
【0030】
加水分解用に使用する有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、一般式:ROH(ここで、Rは炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す)で表されるアルコールが好ましく、その中でも特にエタノール又はイソプロピルアルコールが好ましい。有機溶媒の添加量は、アルミニウム有機金属化合物に対して重量比で1:1程度とすることが好ましい。
【0031】
上記アルミニウム有機金属化合物としては、特に限定されるものではないが、上記した有機溶媒のアルコールに対して相溶性があり、蛍光体粒子表面への吸着力が高いものが望ましい。具体的には、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルキル基を含有するアルミニウムキレート化合物が好ましい。その中でも、エタノール及びイソプロピルアルコールとの相溶性が高いエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートがより好ましい。
【0032】
「第2工程」
第2工程は、珪酸塩蛍光体粒子の表面に、上記第1工程で得た一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)の下地層を形成して、珪酸塩蛍光体粒子(A)を得る工程である。即ち、有機溶媒中に珪酸塩蛍光体粒子と一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を添加して混合し、真空濾過分離して乾燥することにより、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物を下地層として吸着させた珪酸塩蛍光体粒子(A)を得る。
【0033】
具体的には、有機溶媒中に珪酸塩蛍光体粒子を添加し、28〜48kHzの超音波振動を5〜30分間与えて分散させた後、第1工程で得られた一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を混合して分散させる。尚、上記の混合手順に代えて、有機溶媒中に一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を混合分散させ、次いで蛍光体粒子を添加混合してもよい。次いで2〜18時間撹拌混合することにより、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を蛍光体粒子表面に吸着させる。
【0034】
蛍光体粒子、有機溶媒及びアルミニウム有機金属化合物(a)の配合割合としては、特に限定されるものではないが、例えば重量比で蛍光体粒子1に対して有機溶媒5〜50の範囲とすることが好ましい。また、上記混合撹拌の際には、水分の混入を防ぐために密封容器内などの気密状態下で混合することが望ましい。混合手段としては、撹拌羽やスターラ等の撹拌機による方法、或いは超音波ホモジナイザーを用いる方法などを採用することができる。尚、有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、上記第1工程の場合と同様に、一般式:ROHで表されるアルコール溶媒が好ましく、特にエタノール又はイソプロピルアルコールが好ましい。
【0035】
その後、真空濾過して固形分と有機溶媒を分離し、乾燥することにより、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物が下地層として表面に結合した珪酸塩蛍光体粒子(A)が得られる。真空濾過に関しては、第2工程のみならず、第4工程及び第5工程においても、0.05〜0.1MPaの真空度で濾過を行うことが好ましい。尚、上記真空濾過の代わりに、加熱により有機溶媒を揮発除去することもできるが、利便性の点から真空濾過が好ましい。また、有機溶媒の分離後の乾燥時には、80℃より高い温度で加熱乾燥すると、吸着したアルミニウム有機金属化合物が変質してしまい、後の工程でシラン有機金属化合物との吸着性が低下するため好ましくない。
【0036】
蛍光体粒子の表面に形成された一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物の下地層は、その上に形成する被覆膜の均一性を高める作用や、被覆形成用の被覆液中に含まれる水分の影響を抑制する作用を果たすことができる。下地層の厚さとしては、特に限定されるものではなく、乾燥時に粒子間の凝集や膜剥離が生じなければ薄くてもよい。
【0037】
「第3工程」
第3工程は、第1被覆液(b)を調製する工程であって、有機溶媒中にシラン有機金属化合物とアルミニウム有機金属化合物と加水分解用の水を添加し、撹拌混合してシラン有機金属化合物の加水分解縮合物を得た後、この加水分解縮合物を濃縮して第1被覆液(b)を得る。
【0038】
具体的には、有機溶媒中にシラン有機金属化合物と、触媒として作用するアルミニウム有機金属化合物と、加水分解用の水とを添加し、18〜96時間撹拌混合してシラン有機金属化合物の加水分解縮合物(b)を生成させる。次に、得られた溶液を液量が元の重量に対して80〜70%になるまで濃縮することにより第1被覆液(c)を得る。上記撹拌混合の際には、水分の混入を防ぐために密封容器内などの気密状態下で混合することが望ましい。また、上記濃縮時には、開放した容器中で強撹拌を加え、余分な溶媒、水分、未反応物を揮発させて除去する。濃縮した第1被覆液(b)を用いることにより、得られる第1被覆膜は緻密になり、耐水性や耐湿性は格段に向上する。
【0039】
上記シラン有機金属化合物の加水分解縮合物の生成に関しては、アルミニウム有機金属化合物と水の作用により、加水分解縮合反応が進行し、時間の経過とともに徐々に脱水縮合反応が進み、分子量が次第に増加する。この際、加水分解縮合物の分子量があまり大きくなると、次の第4工程での粒子表面への被覆性が低下する。一方、あまり小さな分子量の加水分解縮合物では、後の第5工程で加熱処理すると揮発等により膜質が低下すると共に、耐湿性及び耐水性の向上が得られない。このため、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物の重量平均分子量は5,000〜20,000の範囲とすることが好ましい。
【0040】
尚、上記加水分解縮合反応の終点判定は、粘度の測定あるいは溶液のNMR測定により行うことができる。粘度測定あるいはNMR測定によって、縮合反応の進行度を把握できるからである。また、加水分解縮合物の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)分析法にて測定することができる。測定試料は加水分解縮合物2ccを採取し、この中にテトラヒドロフラン18ccを加えて撹拌し、濾過して調製する。
【0041】
シラン有機金属化合物としては、特に限定されるものではないが、加水分解縮合物(b)の作製時の安定性、被覆性及び膜質から、トリアルコキシシランが好ましい。具体的には、メチル−、エチル−、i−プロピル−、i−ブチル−、n−プロピル−、n−ブチル−等のトリアルコキシシランが好ましい。これらの中でも、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシランが好ましく、メチルトリメトキシシラン又はメチルトリエトキシシランが更に好ましい。即ち、メチルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシランは、適度な反応速度であるため、長時間にわたる加水分解縮合物の作製においても急激な粘度上昇や沈殿物の生成、又は白濁化といった不安定さが生じることはなく、所望の分子量に制御することが容易だからである。
【0042】
アルミニウム有機金属化合物としては、特に限定されるものではないが、上記第1工程で使用できるアルミニウム有機金属化合物として例示したものが好ましく、その中でも特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。尚、第3工程でアルミニウム有機金属化合物を用いるのは、蛍光体粒子を分散させる分散剤的な機能とシラン有機金属化合物の縮合を促進させ活発化させる触媒的な機能を利用するためである。また、有機溶媒としては、上記第1工程の場合と同様に、一般式:ROHで表されるアルコール溶媒が好ましく、特にエタノール又はイソプロピルアルコールが好ましい。また、加水分解用の水としては、導電率が4μS/cm以下であるイオン交換水が好ましい。
【0043】
上記有機溶媒、シラン有機金属化合物、アルミニウム有機金属化合物、及び水の配合割合は、例えば重量比で、シラン有機金属化合物に対して、有機溶媒を0.5〜1倍量、アルミニウム有機金属化合物を0.0125〜0.05倍量、水を0.2〜0.5倍量とすることが好ましい。有機溶媒が上記配合割合より多いと濃縮工程で要する時間が長くなり、逆に上記配合割合より少ないと混合が不均一となるため好ましくない。また、アルミニウム有機金属化合物が上記配合割合より多くなると、シラン有機金属化合物の反応が活発化しすぎるため、粒子表面に吸着せずに有機金属化合物縮合物同士が凝集し、溶媒中で粗大沈殿を形成しやすくなるため好ましくない。
【0044】
尚、第3工程の加水分解縮合反応は、水分量を制御するために、撹拌混合時における気密状態の保持方法や、有機溶媒中に含まれる水分量にも注意が必要である。即ち、シラン有機金属化合物は水分により加水分解縮合反応が進むので、その水分量の制御が反応の安定性に大きく影響するからである。尚、使用する有機溶媒中に含まれる水分量は、カールフィッシャ水分計で0.2g/l以下であることが好ましい。
【0045】
また、加水分解縮合反応は、白濁したり沈殿物を形成したりしないように、ある程度の時間を掛けて行う。こうすることにより、安定して重量平均分子量5,000〜20,000の加水分解縮合物を収率良く得ることができる。具体的な第3工程の撹拌混合条件としては、特に限定されるものではないが、下記の要件を満足することが好ましい。
【0046】
即ち、撹拌混合は、水分の混入を防ぐために密封した容器内で気密状態下に行うことが望ましい。また、混合温度は18〜40℃が好ましいが、18〜30℃がより好ましく、20〜25℃が更に好ましい。温度が18℃よりも低くなると反応が不十分となり、30℃より高くなると反応が激しくなり過ぎるため、液が白濁したり沈殿物を形成したりする。尚、撹拌混合の手段としては、公知の撹拌羽、スターラ等の撹拌機による方法、あるいは超音波ホモジナイザー等を用いることができる。
【0047】
また、混合時間としては18〜96時間が好ましく、36〜72時間が更に好ましい。混合時間が18時間未満では、加水分解・縮合反応が不十分であり、加水分解縮合物中に多くの低分子が含まれやすくなる。このため、熱又は水に対する耐性が劣り、良好な被覆膜として機能しない場合がある。一方、混合時間が96時間を超えると、形成される被覆膜の吸着性が劣るものとなりやすく、局部的に未被覆部分が生じやすい。
【0048】
上記加水分解縮合物の濃縮については、液量が重量百分率で処理開始前の元の重量に対して80〜70%となるまで濃縮することが好ましく、80〜75%まで濃縮することが更に好ましい。揮発量が少なく、重量減少が充分ではない場合には、得られた第1被覆液(b)で形成する第1被覆膜の緻密性が向上しない。一方、揮発させすぎると液粘度が急激に上昇してしまい、被覆液として使用できなくなるので注意を要する。
【0049】
上記の濃縮後、好ましくは真空度0.05〜0.1MPaにて真空濾過分離することにより第1被覆液(b)を得る。この第1被覆液(b)中のシラン有機金属化合物の加水分解縮合物は、重量平均分子量5,000〜20,000であることが好ましく、7,000〜12,000が更に好ましい。重量平均分子量が5,000よりも小さいと、加熱処理時の飛散量が多くなるため緻密質の被覆膜が得られない。また、重量平均分子量が20,000よりも大きくなると、下地層への吸着性が低下して被覆性が劣る結果となる。
【0050】
「第4工程」
第4工程は、上記第2工程で得た珪酸塩蛍光体粒子(A)と、上記第3工程で得た第1被覆液(b)と、希釈のための有機溶媒を混合し、真空濾過分離した後、大気雰囲気下に110〜350℃の温度で加熱処理して、表面に第1被覆膜を形成した珪酸塩蛍光体粒子(B)を得る工程である。
【0051】
まず、第2工程で得た下地層を有する珪酸塩蛍光体粒子(A)を、予め有機溶媒中に十分に分散させる。即ち、下地層を有する蛍光体粒子(A)が凝集したままの状態で第1被覆液(b)による被覆処理を行うと、粒子全面を被覆することができず、耐湿性及び耐水性が向上しないからである。希釈するための有機溶媒を加えることで、濃縮により粘度が上がった第1被覆液(b)の粘度を下げ、凝集体の分散性を高めることができる。
【0052】
他の希釈効果として液粘度の低下により撹拌性が向上し、得られる被覆膜の均一性を高めることができる。例えば、第1被覆液(b)を希釈しないで下地層を有する珪酸塩蛍光体粒子(A)と混合すると、第1被覆液には水分が含まれているので蛍光体粒子から成分が溶出し、10分程度の短時間の撹拌で液がゲル化することがあるが、予め有機溶媒で希釈しておくと60分経過後でもゲル化せず良好に被覆処理を行うことができる。
【0053】
希釈用の有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般式:ROH(Rは炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で表されるアルコール溶媒が好ましく、特にエタノールが好ましい。高級アルコールを用いて希釈すると、第1被覆液(b)の分子構造を壊す恐れがあるためである。また、有機溶媒の希釈量は重量比で、珪酸塩蛍光体粒子(A)に対して2〜50倍量を加えることが好ましい。
【0054】
また、有機溶媒に添加した珪酸塩蛍光体粒子(A)を十分に分散させるため、有機溶媒に添加した後に再分散処理することが望ましい。再分散処理は長時間では珪酸塩蛍光体粒子(A)から下地層が剥離して効果が低下するため、例えば48kHzで5分間程度の短時間で行うことが好ましい。
【0055】
珪酸塩蛍光体粒子(A)と第1被覆液(b)の配合割合は、重量比で、珪酸塩蛍光体粒子(A)に対して被覆液(c)1〜6倍量が好ましく、3〜6倍量が更に好ましい。第1被覆液(b)の添加量が1倍量より少ないと、濾過量が多くなるだけで無駄が多くなり、添加量が6倍量よりも多くなると撹拌が不十分となりやすく、良好な被覆膜が形成でき難くなるため好ましくない。
【0056】
珪酸塩蛍光体粒子(A)と第1被覆液(b)の撹拌混合は、気密状態下で行っても良いが、過剰の有機溶媒を揮発させるべく開放状態で行うこともでき、特に得られる膜質に差はない。撹拌温度は18〜40℃が好ましく、18℃〜30℃がより好ましく、20〜25℃が特に好ましい。また、撹拌時間は0.2〜2時間が好ましく、0.5〜1時間が更に好ましい。撹拌時間が短いと被覆が十分でなく、逆に2時間以上撹拌しても被覆性に更なる改善はみられない。
【0057】
尚、上記撹拌混合の手段としては、特に限定されるものではなく、公知の撹拌羽、スターラ等の撹拌機による方法、或いは超音波ホモジナイザー等を用いる方法で行うことができる。撹拌混合に際しては、珪酸塩蛍光体粒子(A)が沈殿しないように撹拌を強めておくことが、均一な被覆をするために有効である。
【0058】
上記撹拌混合が終了した後、真空濾過により固液分離する。その際の真空度としては0.05〜0.1MPaの範囲が好ましい。回収した蛍光体粒子は大気雰囲気下に110〜350℃の温度で加熱処理し、第1被覆膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子(B)を得る。加熱処理の時間は特に限定されないが、0.5〜18時間程度が好ましい。この加熱処理によって第1被覆膜中の有機物が熱分解され、AlとSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜からなる第1被覆層が珪酸塩蛍光体粒子表面に形成される。
【0059】
第4工程で形成される第1被覆層の膜厚は、50nm程度であることが好ましい。第1被覆層の膜厚が50nmよりも薄すぎる場合には、耐湿性及び耐水性が十分に得られない。また、膜厚を50nmよりも厚く形成するには、第1被覆液(b)の割合を大きくするか、若しくは処理時間を長くし又は処理温度を上げることが必要となる。しかし、第1被覆液(b)の割合を大きくすると濾過後の加熱処理時に珪酸塩蛍光体粒子(B)が凝集固化してしまい、また被覆処理時間を長くするとコスト面で問題を生じ、被覆処理温度を上げると蛍光体粒子が劣化するため好ましくない。
【0060】
濾過後の加熱処理時に珪酸塩蛍光体粒子(B)が凝集固化するのを回避するためには、濾過の際に洗浄することが有効である。洗浄を怠ると、粒子間に第1被覆液が溜まった状態で加熱乾燥されるため、凝集が著しくなる。特に粒子径が小さいほど、その傾向は強くなる。このような凝集固化を緩和するためには、濾過した蛍光体粒子を有機溶媒で洗浄することにより、遊離した状態の被覆液を除去しておくとが望ましい。
【0061】
尚、第4工程で得られた第1被覆膜を備える珪酸塩蛍光体粒子(B)は、ある程度良好な耐湿性及び耐水性を有するが、第1被膜膜中には僅かな欠陥を残していることが多い。この欠陥は加熱処理時に有機物が熱分解して生じたものや、粒子表面の凹凸や表面状態に起因するものである。このような欠陥が僅かでも残っていると、その欠陥から水分が浸入して蛍光体の緩やかな劣化が進み、長期的な信頼性に問題を生ずる恐れがある。
【0062】
「第5工程」
第5工程は、上記第4工程で形成した第1被覆膜の上に更に第2被覆膜を形成する工程であって、上記第4工程で得られた第1被覆膜を有する珪酸塩蛍光体粒子(B)と、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンと、希釈のための有機溶媒を混合し、撹拌混合した後、真空濾過分離した蛍光体粒子を大気雰囲気下に250〜300℃の温度で加熱処理して、被覆膜付き蛍光体粒子(C)を得る。
【0063】
上記したように第4工程で得られた珪酸塩蛍光体粒子(B)の第1被覆膜には欠陥が存在することが多いため、この第5工程において第1被覆膜の上に更に第2被覆膜を形成して二重被覆することによって、欠陥を不連続にすることができるため、更なる耐湿性及び耐水性の向上を図ることができる。
【0064】
この第5工程では、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを用いる点が重要である。その理由は、第4工程では第1被覆膜の形成の際に110℃以上の温度で加熱処理を行うため第1被覆膜表面の水酸基がある程度失われる。この第1被覆膜に対して第2被覆膜を強固に密着させるためには、第2被覆膜として活性の高い被覆材を用いる必要があり、この目的達成のために末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを選択したものである。
【0065】
即ち、発明者らによる被覆材の検討によれば、市販の変性シロキサンの多くは200℃付近から熱分解を生じるものが多く、これらは耐湿試験で評価すると被覆効果が全く期待できないことが分かった。一方、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンは、第1被覆膜の表面のSi−O基と極めて早く反応して強固に結合できることが分かった。尚、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンの具体例としては、例えば、信越化学製のKPN3504などを好適に使用することができる。
【0066】
ここで、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを用いて第2被覆膜を形成する場合、以下の点に注意する必要がある。即ち、ジメチルシロキサンのSi−OH基は第1被覆膜のSi−Oと反応して強固に結合するが、珪酸塩蛍光体粒子表面もSi−Oを有しているため、第1被覆膜の形成が不完全であるとジメチルシロキサンのSi−OH基と珪酸塩蛍光体粒子表面のSi−Oが直接反応して発光特性が劣化してしまう。これを避けるためには、先の第4工程で最終的に110〜350℃で加熱処理して第1被覆膜を緻密化且つ無機化しておくことが必要であり、これによりジメチルシロキサンのSi−OH基は第1被覆膜とのみ結合することができる。
【0067】
末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンの配合量は、重量比で、上記第4工程で得た珪酸塩蛍光体粒子(B)に対して0.05〜1倍量とすることが好ましい。ジメチルシロキサンの配合量が珪酸塩蛍光体粒子(B)に対して重量比で0.05倍未満では、第2被覆膜として被覆が不十分となる。また、ジメチルシロキサンの上記配合量が1倍量を超えると、乾燥後の粒子の凝集が強まり、樹脂練り込み時に沈殿を生じるため好ましくない。
【0068】
また、上記のジメチルシロキサンと珪酸塩蛍光体粒子(B)には、希釈のために珪酸塩蛍光体粒子(B)に対して重量比で2〜20倍量の有機溶媒を添加混合し、得られた混合物に超音波振動を与えて再分散させておくことが好ましい。希釈用の有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般式:ROH(Rは炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で表されるアルコール溶媒が好ましく、特にエタノールやイソプロピルアルコールが好ましい。
【0069】
上記のごとく有機溶媒中に添加混合したジメチルシロキサンと珪酸塩蛍光体粒子(B)は、好ましくは気密状態下において撹拌混合した後、真空濾過により固液分離して珪酸塩蛍光体粒子を回収する。撹拌混合の条件は特に限定されるものではないが、18〜40℃の温度で0.2〜2時間とすることが好ましい。
【0070】
上記撹拌混合が終了した後、真空濾過により固液分離して珪酸塩蛍光体粒子を回収する。回収した珪酸塩蛍光体粒子は、大気雰囲気下において250〜300℃の温度で加熱処理することにより、蛍光体粒子の第1被覆膜の上に第2被覆膜を形成することができる。加熱処理の温度が250℃未満では第2被覆膜中に有機残渣が残るため良質な膜質が得られず、300℃を超えると第2被覆膜が熱分解を起こすためである。また、加熱処理の時間は、0.5〜2時間とすることが好ましい。
【0071】
また、蛍光体はLEDから受ける発熱温度により最高200℃程度に晒されると言われている。そのため、被覆膜中に有機物が混在した状態の蛍光体をLED封止剤中に練り込み、LED青色素子上で硬化させて組み込まれると、200℃程度の温度に達した際に有機物の分解ガスが生じてLED素子が汚染され、同時に被覆膜の性能も低下してしまう。このような事態を避けるためにも、第5工程では最終的に250〜300℃の温度で加熱処理した後、得られた本発明の被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子を封止剤中に練り込んで使用する。
【0072】
上記第1〜第5工程を経て形成された第1被覆膜と第2被覆膜からなる被覆膜は、AlとSiとOを主成分とする非晶質の無機酸化物からなり、その最終膜厚は150〜250nmの範囲であることが好ましい。この二重被覆した被覆膜により耐湿性及び耐水性は大幅に向上し、機械的強度も十分に得られるため樹脂練り込み時にも被覆膜の剥離や膜割れが生じることはない。
【0073】
本発明に係る被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子は、表面にAlとSiとOを主成分とする非晶質の無機化合物膜からなる被覆膜を備えている。本発明の被覆膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子は、最適化された各工程で被覆処理されているため蛍光強度が低下することがなく、高耐湿性及び高耐水性を有している。
【実施例】
【0074】
まず、珪酸塩蛍光体粒子として、SrSiO:Euを製造した。即ち、金属元素化合物として硝酸ストロンチウムを用いて3Mの水溶液とし、この溶液を1Mの珪素に相当する水溶性珪素水溶液と混合して透明な混合液を得た。この混合液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の水熱内容器(内容積100ml)に入れて蓋をし、この内容器を更にステンレス製外容器に入れ、トルクレンチを用いて18Nmのトルクで締めて蓋を閉じた。これを200℃の乾燥機に入れて24時間静置した後、室温まで放冷してから蓋を開けて内容器を取り出し、固化した含水ゲルを得た。
【0075】
次に、この固化した含水ゲルをビーカーに移し、100℃で10時間程乾燥して溶媒を完全に除去し、乾燥状態のゲルを得た。この乾燥状態のゲルをビーカーに入れ換え、300Paの真空中において800℃で12時間の熱処理することにより、残留炭素分を完全に除去して前駆体を得た。この前駆体を10mlサイズのアルミナ坩堝に入れ、その坩堝を黒鉛粉末で満たした50mlサイズのアルミナ坩堝に埋め込んで蓋をし、電気炉で1500℃の熱処理温度で12時間の熱処理を行って、組成式SrSiO:Euの珪酸塩蛍光体を製造した。
【0076】
上記SrSiO:Euの珪酸塩蛍光体粒子を用い、以下の各実施例及び比較例により被覆膜を形成した。実施例及び比較例で用いた有機溶媒は、予め乾燥したモレキュラーシーブ(3A)500gを有機溶媒10リットル中に入れて水分を除去した後に使用した。また、使用したエタノールとイソプロピルアルコール(IPA)中の水分量は、カールフィッシャ水分計で0.1g/lであった。尚、実施例及び比較例での評価に用いた被覆膜の膜厚と密着性、導電率、耐水性(誘電率変化)、耐湿性(耐湿試験前後での発光強度変化)、及び被覆膜形成前後での発光強度変化の測定方法は、それぞれ以下の通りである。
【0077】
(1)膜厚:珪酸塩蛍光体粒子をエポキシ樹脂中に埋め込み、硬化後に断面を加工した試料を用い、SEM又はTEM観察により被覆膜(n=5)の膜厚を測定し、平均膜厚を求めた。被覆膜は組成差によるコントラストに濃淡ができるため、2次電子像及び反射電子像で鮮明に観察できる。尚、実施例で得た粒子の被覆膜をSEM−EDXで分析を行うと、SiとO元素が検出されたため、濃淡によって観察される膜が被覆によるものであると確認された。
【0078】
(2)被覆膜の密着性:シリコーン樹脂(東レダウ社製、JCR6175A/B)中に珪酸塩被覆蛍光体を10重量%加え、撹拌混合機(シンキー社製、ARV310−LED)を用いて1200rpmで10分間の真空撹拌を行った。得られた樹脂混合試料を150℃×2時間で硬化させ、TEM断面観察を行った。TEM断面観察による被覆膜の密着性の評価は、粒子と被覆膜の界面に剥離や空隙が観察されないものを○、粒子と被覆膜の界面に剥離や空隙の観察されたものを×とした。
【0079】
(3)導電率の変化:珪酸塩蛍光体粒子を水中に投入して導電率変化を求めた。即ち、耐水性に劣る蛍光体粒子であると、粒子表面から成分が水中に溶出されるため、導電率が浸漬時間と共に上昇する。従って、25℃の温水100ml中に蛍光体粒子0.1gを投入して10分間撹拌した後の導電率を測定し、投入前の誘電率との差を求めた。
【0080】
(4)発光強度の変化:珪酸塩蛍光体粒子の被覆膜形成前後におけるPL(Photo Luminescence)発光強度と、被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子の耐湿試験前後におけるPL発光強度を測定した。PL発光強度は、日本分光株式会社製の分光蛍光光度計FP6500により、450nmの励起光での発光スペクトルの強度から求めた。尚、耐湿試験の条件は85℃×85%RH×250時間とした。
【0081】
[実施例1]
下記の第1〜第5工程を実施して被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)を製造した。即ち、まず第1工程において、IPA(関東化学社製、試薬特級)80gに、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75重量%)95g、テトラエトキシシラン(TEOS:関東化学社製、試薬)5gを添加して混合した。この混合液中にIPA(関東化学社製、試薬特級)10gに純水を10g混合した液を添加し、密閉容器内において23℃で2時間混合して、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を得た。
【0082】
次に、第2工程において、上記の一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を用いて蛍光体粒子表面に下地層を形成した。即ち、IPA(関東化学社製、試薬特級)100gに、上記SrSiO:Eu珪酸塩蛍光体粒子(D50=11μm)20gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間処理して分散させた。この分散液に、上記第1工程で得た一部加水分解アルミニウム有機金属化合物(a)40gを添加し、密閉容器内において23℃で2時間撹拌混合した。その後、真空濾過により固液分離して、下地層としてアルミニウム有機金属化合物を吸着させた蛍光体粒子(A)を得た。
【0083】
第3工程では、第1被覆液(b)を作製した。具体的には、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6366)1000gに、エタノール(関東化学社製、試薬特級)680gと、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75重量%)25gと、イオン交換水320gとを添加し、23℃の温度に保持しながらスターラで強撹拌して撹拌混合に付した。
【0084】
上記撹拌混合を72時間続け、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物を得た。このときの加水分解縮合物の粘度は6mPa・Sであった。この加水分解縮合物100gを取り出し、開放容器内においてスターラで強撹拌することにより液量が元の重量に対して75%になるまで濃縮し、第1被覆液(b)を得た。
【0085】
次の第4工程では、上記第1被覆液(b)を用いて上記下地層付きのSrSiO:Eu珪酸塩蛍光体粒子(B)の表面に第1被覆膜を形成した。即ち、第2工程で得た下地層付き蛍光体粒子(A)20gと、第3工程で得た第1被覆液(b)70gと、エタノール40gを混合し、48kHzの超音波洗浄器で5分間再分散させた。次に、密封容器内にて23℃で1時間撹拌混合した後、真空濾過して固液分離し、得られた蛍光体粒子にIPAのみを30g通水して洗浄し、再度真空濾過した。真空濾過の条件は、いずれも0.05〜0.1MPaの真空度とした。その後、回収した蛍光体粒子10gを300℃の温度で1時間加熱処理して乾燥させ、第1被覆膜を備えた蛍光体粒子(B)を得た。
【0086】
最後に、第5工程で二重被覆することにより、被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)を作製した。即ち、上記第5工程で作製した蛍光体粒子(B)5gに、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサン(信越化学社製、KPN3504)1.5gと希釈用のエタノール30gを加え、密封容器内において23℃で1時間撹拌混合した後、真空濾過により固液分離した。得られた蛍光体粒子を110℃で1時間乾燥させた後、250℃で0.5時間加熱焼成して第2被覆膜を形成した。
【0087】
このようにして得られた被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)について、上記した各方法により、被覆膜の膜厚、被覆膜の密着性、及び珪酸塩蛍光体粒子の耐水性と耐湿性、及び被覆膜形成前後での発光強度の変化を測定し、得られた評価結果を下記表1に示した。
【0088】
[実施例2]
珪酸塩蛍光体粒子として上記実施例1のSrSiO:Euの代わりに、市販の(Sr0.95、Ba0.05SiO:Eu(東京化学研究所社製、D50=25μm)を使用し、以下の第1〜第5工程を実施して被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)を製造した。
【0089】
第1工程は上記実施例1と同様にして一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を作製した。次の第2工程では、IPA(関東化学社製、試薬特級)100gに(Sr0.95、Ba0.05SiO:Eu珪酸塩蛍光体粒子20gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間処理して再分散させた。この分散液に第1工程で得た一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物40gを添加して、23℃で4時間撹拌混合した。その後、真空濾過により固液分離し、下地層として一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物を吸着させた蛍光体粒子(A)を回収した。
【0090】
第3工程は上記実施例1と同様にして第1被覆液(b)を作製した。次の第4工程では、第2工程で得た下地層付きの蛍光体粒子(A)20gに、第3工程で得た第1被覆液(b)70gとエタノール80gを混合し、その混合物を48kHzの超音波洗浄器で10分間処理して再分散させた後、密封容器内で23℃にて1時間撹拌混合した。次に、真空濾過により固液分離して、得られた蛍光体粒子を洗浄し、更にIPA30gを通水した後、0.05〜0.1MPaの真空度で真空濾過した。得られた蛍光体粒子を300℃で1時間加熱処理して、第1被覆膜を有する蛍光体粒子(B)を得た。
【0091】
第5工程では、第4工程で作製した第1被覆膜を有する蛍光体粒子(B)5gに、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサン(信越化学社製、KPN3504)1.5gと希釈用のエタノール30gを加え、密封容器内にて23℃で2時間撹拌混合した後、真空濾過により固液分離した。得られた蛍光体粒子を110℃で1時間乾燥させた後、250℃で0.5時間加熱焼成して第2被覆膜を形成した。
【0092】
このようにして得られた被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)について、上記した各方法により、被覆膜の膜厚、被覆膜の密着性、及び珪酸塩蛍光体粒子の耐水性と耐湿性、及び被覆膜形成前後での発光強度の変化を測定し、得られた評価結果を下記表1に示した。
【0093】
[実施例3]
珪酸塩蛍光体粒子として市販品のSrSiO:Eu(東京化学研究所社製、D50=19μm)を使用し、上記実施例2と同じ条件で第1〜第5工程を実施して、被覆膜付き蛍光体粒子(C)を得た。
【0094】
得られた被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)について、上記した各方法により、被覆膜の膜厚、被覆膜の密着性、及び珪酸塩蛍光体粒子の耐水性と耐湿性、及び被覆膜形成前後での発光強度の変化を測定し、得られた評価結果を下記表1に示した。
【0095】
[比較例1]
上記実施例1で使用した珪酸塩蛍光体SrSiO:Eu(D50=11μm)について、第1〜第5工程を実施せずそのままの状態で、上記した各方法により、被覆膜の膜厚、被覆膜の密着性、及び珪酸塩蛍光体粒子の耐水性と耐湿性を測定し、得られた評価結果を下記表1に示した。
【0096】
[比較例2]
上記実施例2で使用した珪酸塩蛍光体(Sr0.95、Ba0.05SiO:Eu(D50=25μm)について、第1〜第5工程を実施せずそのままの状態で、上記した各方法により、被覆膜の膜厚、被覆膜の密着性、及び珪酸塩蛍光体粒子の耐水性と耐湿性を測定し、得られた評価結果を下記表1に示した。
【0097】
[比較例3]
珪酸塩蛍光体粒子として上記実施例1で使用したSrSiO:Eu(D50=11μm)を用い、第3工程の第1被覆液の成分であるエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75重量%)の代わりにアンモニア水6mlを配合した以外は上記実施例1と同様にして、被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)を作製した。
【0098】
得られた被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)について、上記した各方法により、被覆膜の膜厚、被覆膜の密着性、及び珪酸塩蛍光体粒子の耐水性と耐湿性、及び被覆膜形成前後での発光強度の変化を測定し、得られた評価結果を下記表1に示した。
【0099】
【表1】

【0100】
以上の結果から分かるように、本発明による実施例1〜3の2重被覆した各被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子は、いずれも被覆膜が160〜250nmと均一且つ十分な膜厚であって、密着性、耐水性及び耐湿性が極めて高かった。また、被覆膜形成による発光特性の変化もほとんど無く、被覆処理中の水分の影響によるPL発光強度の低下などは認められなかった。
【0101】
一方、比較例1と2では、本発明の被覆処理を施していないため、珪酸塩蛍光体の耐水性及び耐湿性が非常に低いことが分かる。また、比較例3は第1被覆液の調整に触媒として必要なアルミニウム有機金属化合物を含まないため、被覆膜を形成できても耐水性及び耐湿性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子の製造方法。
第1工程:有機溶媒中にアルミニウム有機金属化合物とテトラエトキシシランと加水分解用の水を添加混合して、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を得る。
第2工程:有機溶媒中に珪酸塩蛍光体粒子と上記第1工程で得た一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物(a)を添加混合し、真空濾過分離して乾燥することにより、一部加水分解したアルミニウム有機金属化合物を下地層として吸着させた珪酸塩蛍光体粒子(A)を得る。
第3工程:有機溶媒中にシラン有機金属化合物とアルミニウム有機金属化合物と加水分解用の水を添加し、撹拌混合してシラン有機金属化合物の加水分解縮合物を得た後、この加水分解縮合物を濃縮して第1被覆液(b)を得る。
第4工程:有機溶媒中に上記第2工程で得た下地層付き珪酸塩蛍光体粒子(A)と上記第3工程で得た第1被覆液(b)を添加混合し、真空濾過分離した後、大気雰囲気下に110〜350℃で加熱処理して第1被覆膜を形成することにより、第1被覆膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子(B)を得る。
第5工程:有機溶媒中に上記第4工程で得た第1被覆膜を備えた蛍光体粒子(B)と末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンを添加混合し、真空濾過分離した後、大気雰囲気下に250〜300℃で加熱処理して第2被覆膜を形成することにより、被覆膜付き珪酸塩蛍光体粒子(C)を得る。
【請求項2】
前記第5工程において、末端にSi−OH基を有するジメチルシロキサンの配合量を、重量比で、前記第4工程で得た珪酸塩蛍光体粒子(B)に対して0.05〜1倍量とすることを特徴とする、請求項1に記載の非晶質の無機化合物膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第5工程において、第1被覆膜と第2被覆膜からなる被覆膜の最終膜厚が150〜250nmの範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の非晶質の無機化合物膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程において、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物の重量平均分子量が5,000〜20,000であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の非晶質の無機化合物膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第1及び第3工程におけるアルミニウム有機金属化合物が、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)から選ばれた少なくとも1種のアルキル基を含有するアルミニウムキレート化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の非晶質の無機化合物膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記珪酸塩蛍光体が、SrSiO:Eu又は(Sr、Ba)SiO:Euであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の非晶質の無機化合物膜を備えた珪酸塩蛍光体粒子の製造方法。