説明

被覆薬物送達製剤

【課題】腸溶性又は非-腸溶性コーティングで被覆された新規な製剤、及びその製剤の製造法を提供すること。
【解決手段】本発明は、一般的に、生物剤を患者に送達するための製剤の製造法に関する。1つの局面では、医薬のプロリポソーム型薬物-送達システムを提供する。別の局面では、低水溶性の薬物のための被覆プロリポソーム型製剤、及びその製造法を提供する。本発明の特定の実施態様は、医薬製剤の増加した安定性及び生物学的利用性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、生物活性剤を含む製剤のための送達システムに関する。1つの実施態様では、低水溶性薬物のための被覆プロリポソーム型製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は、2001年8月16日に出願された米国出願第09/931,399号の一部継続出願、現在では、2001年4月25日に出願された米国仮出願第60/286,386号の利益を請求する米国特許第6,759,058号明細書である、2002年4月24に出願された同時係属中の米国出願第10/132,665号の一部継続出願である。これらの全ての教示は、本明細書に参照として引用される。
【0003】
発明の背景
関連技術の説明
医薬製剤は、様々な投与経路により投与することができる。例えば、薬物は、経口的に、静脈内で、皮下的に及びエアロゾルにより投与することができる。医薬のリポソームへのカプセル化は、特定の薬物の毒性を低減し、そして治療的有効性を改善する点で有用である。例えば、化合物、例えばインシュリン、第VIII因子、トリプトファン、フェニルアラニン、ヘパリン、ビタミンK等は、リポソームへのカプセル化の後に、経口的にその有用性が研究されてきた。それらは、先行技術の改善を示すが、経口リポソーム製剤は、胃液中でのその不安定性、漏出及び潜在的な分解のために悪い評価がなされてきた。
【0004】
プロリポソームの使用は、慣用的リポソーム製剤への代用を示す。プロリポソームは、水を加えた時に分散して、多層状のリポソーム懸濁液を形成する、乾燥した、顆粒が流出しない製品である。凝集、加水分解し易さ及び酸化を含む慣用的リポソームに関連した安定性の問題は、プロリポソームを用いて解決することができる。プロリポソームの使用は、医薬分野でよく知られている。
【0005】
薬物投与の様々な経路の中で、経口経路は、その万能性、安全性及び患者の安心のため、ある場合には、薬物によっては有利である。薬物の経口的摂取は、安全かつ多目的の薬物送達法を提供するが、多くの医薬は胃の酸性条件下では不安定又は不活性であるため、多くの薬物の治療効果は減少することがある。この欠点を解決するために、腸溶性コーティング材料が適用されてきた。非-腸溶性コーティングはまた、経口及び非-経口の投与経路にいくつかの利点を与える。従って、本発明は、ある実施態様では、腸溶性又は非-腸溶性コーティングで被覆された新規な製剤、及びその製剤の製造法を提供する。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
プロリポソームの使用、及び腸溶性及び非-腸溶性コーティングの使用は、それぞれ、当該分野では公知であるが、コーティングとプロリポソーム型製剤との組み合わせは開示されていなかった。驚くべきことに、本発明のいくつかの実施態様のコーティングが、本発明のいくつかの実施態様のプロリポソーム型製剤と組み合わされるときに、薬物送達は増加する。本発明の多くの実施態様では、この新規かつ予測できない増加は、コーティングとプロリポソーム型製剤との唯一の組み合わせから得られるものであり、増加した薬物吸収、安定性及び生物学的利用性に関する。
【0007】
本発明の多くの実施態様では、コーティングとプロリポソーム型製剤との組み合わせは、当該分野で公知の薬物送達システムの欠点を解消する。例えば、不安定な薬理学的物質を経口的に投与するための従来のシステムの有用性は、送達剤の毒性量を用いる必要性、システムの不安定性、活性成分を保護することの不可能性、水にほとんどよけない又は不安定な薬物を効率的に送達することの不可能性、システムの不十分な保存期間、活性剤の吸収を促進する薬物送達システムの欠陥、及びシステムを構築することに固有の困難性、により制限されていた。本発明のいくつかの実施態様は、1以上のこれらの欠点を解消する。
【0008】
ある実施態様では、生物活性剤を含む製剤は、1以上の腸溶性コーティングの適用により製造される。他の実施態様では、生物活性剤を含む製剤は、1以上の非-腸溶性コーティングの適用により製造される。
【0009】
本明細書で用いる用語「腸溶性コーティング」は、通常使用される意味であり、活性成分が腸に放出され吸収される経口摂取の際に、酸-不安定薬物を胃内で活性であり続けるようにする材料も含む。腸溶性コーティング材料は、医薬分野でよく知られ、アルギン酸塩、アルカリ-溶解性アクリル樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸セルロースフタレート等を含む。腸溶性コーティングは、非-経口投与経路に用いることができる。例えば、腸溶性コーティングは、経皮的適用及び他の非-経口経路に有用であり得る。
【0010】
本明細書で用いる用語「酸に不安定」は、通常使用される意味であり、酸性環境で分解し、酸性環境で溶解し、酸性環境で不安定であり、及び/又は酸性環境で不活性である、薬物、組成物又は材料(例えば、コーティング材料)も含む。
【0011】
本明細書で使用される用語「非-腸溶性コーティング」は、通常使用される意味であり、酸に不安定な材料、及び/又は胃又は他の酸性環境で分解する材料を含む。非-腸溶性コーティングは、経口及び非-経口の投与経路のために有用である。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様は、医薬及び他の薬剤の投与を促進するための単一かつ安価なシステムを与えるので、特に有利である。多くの実施態様では、本発明のいくつかの実施態様に従う薬物送達システムは、生物活性剤の安定性及び生物的利用性を増加する。
【0013】
本発明の1つの実施態様では、患者への投与のために好適な製剤の製造法を提供する。1つの実施態様では、本方法は、1以上のリン脂質を提供すること、1以上の生物活性剤を提供すること、生物活性剤の少なくとも1部分及びリン脂質の少なくとも1部分を同時に非-水性溶媒に曝露すること、非-水性溶媒を除くこと、これによって粉末を製造すること、を含む。粉末は、1以上のリン脂質及び1以上の生物活性剤を含む。ある実施態様では、本方法は、粉末を1以上のコーティングで被覆すること、それによって被覆粒子を製造すること、を更に含む。コーティングは、少なくとも粉末の1部分と接触する。コーティングは、酸に不安定、腸溶性もしくは非-腸陽性コーティング、又はこれらの2以上の組み合わせでよい。
【0014】
1つの実施態様では、酸に不安定なコーティングは、以下:セルロース-系剤、ポピドン及びポリエチレンの1以上からなる群より選ばれる材料である。1つの実施態様では、セルロース-系剤は、以下:メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの1以上からなる群より選ばれる。
【0015】
更なる実施態様では、被覆粒子は、患者への投与のために好適な投薬形態に形成される。1つの実施態様では、被覆粒子は、懸濁液、錠剤及び/又はカプセル剤に形成される。
【0016】
ある実施態様では、コーティング(例えば、腸溶性又は非-腸溶性、例えば酸に不安定なコーティング)は、以下:経口的、口内、舌下、鼻腔内、局所的、経皮的、眼科的、膣内、直腸的、膀胱腔内、肺、動脈内、静脈内、皮内、筋肉内、皮下的、腹腔内、鞘内及び眼内の1以上からなる群より選ばれる様々な経路による投与に適合する。
【0017】
1つの実施態様では、生物活性剤は、以下:テストステロン、ファモチジン、ハロファントリン及びグリブリドの1以上からなる群より選ばれる。当業者は、いくつかの薬剤が本発明の実施態様に従って使用することができる、ことを理解するだろう。本発明の1つの実施態様では、生物活性剤は、医薬活性剤である。1つの実施態様では、生物活性剤は、低水溶性薬物である。
【0018】
更に別の実施態様では、生物活性剤は、時間-放出型剤である。ある実施態様では、コーティングは、当該分野で公知の方法に従って、時間-放出機能を助けるように適合し得る。従って、ある実施態様では、コーティングは、時間依存型方式で生物活性剤の制御された放出を可能にする。
【0019】
ある実施態様では、1以上のリン脂質が使用される。1つの実施態様では、リン脂質は、ホスファチジルリン脂質である。リン脂質は、限定されないが、ジステアロイル ホスファチジルコリン、ジパルミトイル ホスファチジルコリン、ジミリストイル ホスファチジルコリン、卵PC、大豆PC、DMPG、DMPA、DPPG、DPPA、DSPG、DSPA、ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンを含む。
【0020】
本発明の1つの実施態様では、コーティング材料は、腸溶性コーティングである。別の実施態様では、コーティングは非-腸溶性コーティングである。1つの実施態様では、1つのコーティングが使用される。別の実施態様では、2以上のコーティングが使用される。ある実施態様では、数種類の異なったコーティングが使用されるが、それらは、全て、腸溶性又は非-腸溶性のいずれかである。ある実施態様では、被覆製剤は、腸溶性コーティング及び非-腸溶性コーティングを適用することにより製造される。従って、1つの実施態様では、様々なコーティングが生物活性剤を含む粉末に適用されるので、腸溶性コーティング及び非-腸溶性コーティング(例えば、酸に不安定なコーティング)の両方の利点が達成できる。コーティングの同一種類の層又はコーティングの異なった種類の層は、ある所望の結果、例えば、時間-放出、増加した吸収、減少した吸収、減少した胃腸への影響、増加した生物的利用可能性等を最大限にするために使用することができる。
【0021】
1つの実施態様では、腸溶性コーティングは、限定されないが、酢酸セルロースフタレート、アルギン酸塩、アルカリ-溶解性アクリル樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリレート-メタクリル酸共重合体、酢酸ポリビニルフタレート、スチロールマレイン酸共重合体、セラック、及び酢酸セルロースを含む。
【0022】
別の実施態様では、非-腸溶性コーティングは、限定されないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポピドン及びポリエチレンを含む。
【0023】
1つの実施態様では、コーティングは可塑剤を含む。可塑剤の1つの利点は、コーティングのフレキシビリティーを増加させることである。更に、ある実施態様では、可塑剤は、コーティング破裂及び孔形成の可能性を減少させる。
【0024】
更に別の実施態様では、コーティングは、フタル酸エステル、クエン酸エステル及びトリアセチンからなる群より選ばれるフィルム可塑剤である。
【0025】
本発明の別の実施態様では、製剤は、錠剤、カプセル剤及び/又は懸濁液に形成される。懸濁液は、非-固体、ゲル状形態及び液体を含む。代りの実施態様では、担体、希釈剤及び/又は滑剤も製剤中に含まれる。
【0026】
1つの実施態様では、非-水性溶媒の除去は、少なくとも一部の溶媒の蒸発を含む。
【0027】
1つの実施態様では、粉末は、1以上の酸に不安定なコーティングにより被覆される。ある実施態様では、コーティングは、粉末をコーティングでスプレイすることを含む。いくつかの実施態様では、粉末は、生物活性剤を水性溶媒に曝露することなく、1以上の酸に不安定なコーティングで被覆される。本明細書で使用される用語「粉末」はまた、通常使用される意味であり、細粒子(例えば、顆粒)、残渣及び濃縮材料を含む。
【0028】
更なる実施態様では、少なくとも1つの追加の成分は、生物活性剤と混合される。追加の成分は、活性又は不活性であり得る。追加の成分は、限定されないが、担体、希釈剤及び滑剤を含む。追加の成分はまた、限定されないが、微結晶性セルロース、デンプン、ラクトース、タルク、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリルベヘネート、デキストロース及びリン酸二カルシウムを含む。
【0029】
1つの実施態様では、1以上の界面活性剤が使用される。1つの実施態様では、界面活性剤は、薬物及びリン脂質と共に加えられる。界面活性剤は、限定されないが、ポリソルベート、胆汁酸塩及びアルキルグリコシドを含む。1つの実施態様では、約1%〜約50%、好ましくは約5%〜約20%の濃度の界面活性剤が使用される。従って、1つの実施態様では、本発明は、患者への投与のために好適な製剤の製造法であって、以下のステップ:(i) 少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの界面活性剤及び少なくとも1つの生物活性剤を提供し;(ii) 当該界面活性剤、当該生物活性剤及び当該リン脂質を、非-水性溶媒に曝露し;(iii) 当該非-水性溶媒を蒸発させ、それによって粉末を製造し;並びに (iv) 当該生物活性剤を水性溶媒に曝露することなく、1以上のコーティングにより当該粉末を被覆し、それによって被覆粒子を製造すること、ここで、当該1以上のコーティングは、当該粉末の少なくとも一部分と接触する、を含む、前記方法を含む。1つの実施態様では、本発明は、患者への投与のために好適な投薬形態に被覆粒子を調製することを更に含む。1つの実施態様では、生物活性剤は、溶解するための、約30超重量部の水性溶媒/1重量部の溶質を必要とする。別の実施態様では、生物活性剤は、不溶性又は低水溶性である。
【0030】
本発明の1つの実施態様では、化学薬品の送達のための組成物の製造法を提供する。1つの実施態様では、本方法は、1以上のリン脂質を提供し、1以上の化学薬品を提供することを含む。1つの実施態様では、化学薬品は、水性相に不安定である。次いで、化学薬品及びリン脂質は、非-水性溶媒に曝露されるか又は非-水性溶媒中で混合される。非-水性溶媒は除かれ(例えば、蒸発により)、それによって粉末を製造する。当業者は、溶媒が他の手段、例えば排水により除くこともできることを理解するだろう。粉末は、次いで、1以上のコーティングにより被覆又は覆われる。それにより、被覆粒子が製造される。コーティングは、少なくとも粉末の1部分と接触する。化学薬品は、コーティングの適用前に、水性相に曝露されない。被覆粒子は、次いで、化学薬品の送達のために好適な形態につくられる又は形成される。化学薬剤は、化学化合物、例えば核酸、酵素、食品加工剤等を含む。コーティングは、酸に不安定なコーティング、腸溶性コーティング、非-腸溶性コーティング又はそれらの組み合わせを含む。
【0031】
本発明の更なる実施態様は、上記の方法に従って製造される組成物及び製剤に関する。ある実施態様では、脂溶性剤、リン脂質及びコーティングを含むプロリポソーム型製剤を提供する。1つの実施態様では、哺乳動物への医薬製剤の投与による哺乳動物への医薬製剤の送達法を提供する。ある実施態様では、本発明は、本発明の薬物送達システムによる哺乳動物の疾患を予防、診断又は治療することに関する。
【0032】
1つの実施態様では、本発明は、哺乳動物のテストステロンレベルを増加させるための医薬の製造における、本明細書に記載の実施態様のいずれか1つに従う方法により得られる製剤の使用を含む。
【0033】
1つの実施態様では、本発明は、本明細書に記載の実施態様のいずれかに従う方法によって得られる製剤を含む。
【0034】
1つの実施態様では、本発明は、本明細書に記載の実施態様のいずれか1つに従う方法により得られるテストステロンを含む製剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、様々なプロリポソーム型製剤及び純水なテストステロンを用いる、テストステロンの溶解速度の比較を示す。
【図2】図2は、プロリポソーム型製剤(DSPC)及び純水なファモチジンを用いる。ファモチジンの溶解速度の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明のいくつかの実施態様は、生物活性(例えば、医薬活性)剤、リン脂質及びコーティング材料を含む、被覆プロリポソーム型製剤に関する。
【0037】
ある実施態様では、腸溶性コーティングが使用される。他の実施態様では、酸に不安定なコーティングが使用される。1つの実施態様では、被覆製剤は、薬物の分解及び生物的利用性を増加させる。この効果は、極度に低水溶性の薬物、例えば、ハロファントリン及びテストステロンにより顕著である。より高い水溶性を有する薬物、例えば、ファモチジンでは、低度の分解率が観察される。1つの実施態様では、本発明は、薬物単独の投与と比べて、より速い薬物作用の開始、より長期間の作用、及び高いCmaxを提供する薬物送達システムからなる。ある実施態様では、腸溶性被覆プロリポソーム型製剤を提供する(例えば、EnProLip(商標))。
【0038】
好ましい実施態様では、本製剤は以下を含む:
(a) 低水溶性薬物;
(b) ジステアロイル ホスファチジルコリン (DSPC)、ジパルミトイル ホスファチジルコリン (DPPC) 又はジミリストイル ホスファチジルコリン (DMPC); 及び
(c) 酢酸セルロースフタレート。
【0039】
1つの実施態様では、生物活性剤は、医薬活性剤である。1つの実施態様では、医薬活性剤は、低水溶性薬物である。本明細書で用いる低水溶性薬物は、通常使用される意味であり、溶解するための、約30超重量部の溶媒/1重量部の溶質を必要とする薬剤を含む。
【0040】
低水溶性薬物の例は、限定されないが、グリセオフルビン、ファモチジン、メクリジン、シクロスポリン、カルバマジピン、メットレキサート、イトラコナゾール、ジピリダモール、メルカプトプリン、ハロファントリン、アミオダロン、ロムスチン、テストステロン、ミソプロスティル、エトポシド、リファマイシン、アザチプリン、グリブリド、トルブタミド、アミノグルテチミド、タキソール、クロフィブレート、ニフェジピン、メチルドーパ、ラミプリル、ジクマロール等を含む。当業者は、本発明が低水溶性薬物に限定されず、種々の医薬活性及び不活性な薬物を含む、ことを理解するだろう。僅かに溶解性、低溶解性又は親水性である薬物は、本発明の様々な実施態様を用いて送達することもできる。1つの実施態様では、医薬製剤(及びその製造法)は、テストステロン(天然又は合成)、テストステロン前駆体、テストステロン誘導体、テストステロンを増加させる薬剤、テストステロン調節因子、又はこれらの化合物の2以上の組み合わせを含む。従って、1つの実施態様では、本発明は、哺乳動物のテストステロン欠乏を治療又は予防するための製剤、又は医薬の製造法を含む。別の実施態様では、本発明は、哺乳動物の通常のテストステロンレベルを増加させるための製剤、又は医薬の製造法を含む。
【0041】
好ましい実施態様では、リン脂質として、DSPC、DPPC又はDMPCが使用される。当業者は、限定されないが、卵PC、大豆PC、DMPG、DMPA、DPPG、DPPA、DSPG、DSPA、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン等を含む他のリン脂質が使用される、ことを理解するだろう。
【0042】
好ましい実施態様では、酢酸セルロースフタレートが腸溶性コーティングとして使用される。しかしながら、当業者は、アルギン酸塩、アルカリ-溶解性アクリル樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリレート-メタクリル酸共重合体、酢酸ポリビニルフタレート、スチロールメレイン酸共重合体、セラック、酢酸セルロース等も使用できる、ことを理解するだろう。当業者はまた、本発明の様々な実施態様で使用される腸溶性コーティング材料が、前記のコーティングの組み合わせを含む、ことを理解するだろう。
【0043】
1つの実施態様では、コーティング材料は、非-腸溶性コーティングである、1つの実施態様では、非-腸溶性コーティングは、酸に不安定な材料を含む。ある実施態様では、非-腸溶性コーティングは、セルロース-系材料である。非-腸溶性コーティングは、限定されないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポピドン及びポリエチレンを含む。当業者はまた、本発明の様々な実施態様で使用される非-腸溶性コーティング材料が、前記の腸溶性コーティングと非-腸溶性コーティングとの組み合わせを含むことがある、ことを理解するだろう。
【0044】
1つの実施態様では、コーティングは、可塑剤を含む。可塑剤の1つの利点は、コーティングのフレキシビリティーを増加させることである。更に、ある実施態様では、可塑剤は、コーティング破裂及び孔形成の可能性を減少させる。可塑剤は、限定されないが、フタル酸エステル、クエン酸エステル及びトリアセチンを含む。
【0045】
本発明の1つの実施態様では、腸溶性被覆プロリポソーム型送達システムは、胃での有毒な成分の放出を抑制することによって制吐的目的のために、それによって、嘔吐及び他の副作用を減少させるために使用されるだろう。
【0046】
本発明の別の実施態様では、腸溶性プロリポソーム型製剤は、腸管での分解を受ける薬物を送達するために使用される。
【0047】
別の実施態様では、本発明は、様々な経路により薬物を投与するために使用されるだろう。いくつかの実施態様は、酵素固定が食品加工の様々な局面に必須である食品工業における、薬物又は他の物質の送達を増加させるためにも使用されるだろう。従って、ある実施態様では、1以上の化学薬品の送達のための製剤の製造法を提供する。
【0048】
更なる実施態様では、生物活性剤、リン脂質及びコーティング材料を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療法を提供する。
【0049】
当業者は、本発明の実施態様が薬物又は生物的/医薬製剤の送達に限定されない、ことを理解するだろう。診断剤及び治療材料を含む多数の天然又は合成物質は、本発明に従って送達することができる。これらの物質は、限定されないが、食欲抑制剤、鎮痛薬、抗関節炎薬、アドレナリン遮断薬、ステロイド、ワクチン、ペプチド、タンパク質、ホルモン、抗体、抗生物質、抗菌剤; ビタミン、ヌクレオチド、栄養剤、酵素、遺伝子、遺伝子材料、細胞毒素、細菌、微生物、ウイルス剤等を含む。本発明の様々な実施態様を用いてプラシーボも投与することができる。限定されないが、微結晶性セルロース、デンプン、ラクトース、タルク、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、脂肪酸、脂肪酸塩、グルセリルベヘネート、デキストロース、リン酸二カルシウムを含む、希釈剤、担体、滑剤等も、本発明のいくつかの実施態様を用いて投与することができる。
【0050】
更に、当業者は、本発明のある実施態様で使用される活性医薬又は物質の量が、投与に必要とされる用量及び/又は所望の治療に依拠するだろう、ことを理解するだろう。当業者は、「治療」が、予防、管理、治療、健康の維持又は改善等を含む、医薬活性成分を投与するための任意の所望の目的を称する、ことを理解するだろう。成分の濃度や、錠剤、カプセル剤、懸濁液又は液体のサイズ、数及び/又は量を変更することによって、広い範囲の量は、経口的に投与することができる。同様に、生物活性剤の濃度を変えることにより、非-経口経路によって提供される用量を変更することができる。コーティングも、生物剤の薬物動力学に影響を与えるために適合させることができる。時間-放出型薬物も、本発明の様々な実施態様に従って投与することができる。コーティングも、製剤の時間放出性に影響を与えることがある。
【0051】
当業者はまた、本発明が、単一医薬製剤の送達に限定されない、ことを理解するだろう。実際に、1超の医薬製剤が、本発明の薬物送達システムを用いて同時に送達することができる。例えば、1「用量」では、レシピエントは、2以上の薬物、少なくとも1つの薬物及び担体等の組み合わせを与えられるかもしれない。
【0052】
本発明の1つの実施態様では、薬物送達システムは、以下の方法でつくられる:少なくとも1つの医薬活性剤及び少なくとも1つのリン脂質は、好適な割合及び濃度で溶媒中に溶解される。溶解に際して、溶媒は、乾燥粉末-様原料を付与するために蒸発させる。乾燥原料は、篩-様器具により通過する。乾燥原料は、次いで、好ましくは、溶媒中に存在し、乾燥原料上にスプレイされる、コーティング(腸溶性、非-腸溶性又はこれらの双方)で被覆される。被覆粒子は、次いで、哺乳動物への送達に好適な、錠剤、カプセル剤又は液体調製物に形成される。あるいは、被覆粒子は、非-経口投与経路に好適な形態に調製される(例えば、経皮的送達用のパッチ又は吸入用スプレイ)。
【0053】
本発明のいくつかの実施態様は、医薬活性剤及びリン脂質が混合された後に腸溶性コーティングを適用することができるので、特に有利である。このことは、錠剤、カプセル剤、懸濁液又は液体を含む製剤の異なった形態の調製を可能にする。更に、本発明の様々な実施態様は、様々なサイズの錠剤の容易な調製を可能にする。1つの実施態様において、錠剤のサイズは、好ましくは、メッシュ又は篩の孔サイズを調整することにより調節される。
【0054】
1つの実施態様では、1以上の界面活性剤が使用される。1つの実施態様では、界面活性剤は、薬物及びリン脂質と共に添加される。他の実施態様では、界面活性剤は、粉末をつくる前に、粉末を被覆する前に、又は粒子もしくは顆粒を投薬形態に形成する前に、添加される。本明細書で用いる界面活性剤は、通常使用される意味であり、液体の表面張力を減少させる物質も含む。ある実施態様では、界面活性剤は、疎水性基及び親水性基を含む有機化合物であり、従って、ある実施態様では、有機溶媒又は水性溶媒中に半-溶解性である。1つの実施態様では、界面活性剤は、いずれの相(水相又は有機相)にも存在することを好まないような、両親媒性化合物である。このような理由により、ある実施態様では、界面活性剤は、有機相と水相との境界相に存在する。ある実施態様では、界面活性剤はまた、凝集し、ミセルを形成することができる。
【0055】
界面活性剤は、限定されないが、ポリソルベート、胆汁酸塩及びアルキルグリコシドを含む。界面活性剤はまた、石鹸、スルホン酸塩、硫酸塩、脂肪酸イセチオン酸塩、脂肪酸サルコシン酸塩、脂肪酸サルコシン、N-アシルアミノ酸、脂肪酸アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルコキシ化トリグリセリド、タンパク質加水分解物、ポリオール脂肪酸エステル、糖類エステル、ソルビタンエステル、アミンオキシド、四級アンモニウム化合物、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノ-プロピオン酸塩、アミノグリシン酸塩、イミダゾリウムベタイン及びスルホベタインを含む。ある実施態様では、約1%〜約50%の濃度、好ましくは約5%〜約20%の濃度の界面活性剤が使用される。
【0056】
1以上の界面活性剤を使用する本発明のある実施態様は、ある利点を有する。例えば、界面活性剤は、(1) 混合ミセルを形成し、希釈すると、リポソームを形成することができる;(2) 製剤中で完全なタンパク質分子を維持することができる;(3) 疎水性分子のカプセル化を改善することができる;及び (4) リポソームをより変形可能にし、それによって吸収バリアを通過して薬物を送達させることができる。
【0057】
腸溶性コーティングで錠剤又はカプセル剤中の薬物を調製する方法を先に記載してきた。しかしながら、本発明の様々な実施態様の特定の利点は、製剤の懸濁形態又は液体形態を生成する能力である。懸濁形態又は液体形態は、カプセル剤又は錠剤と同程度には胃腸運動性に影響を与えないので、場合により好ましい。ほとんどの薬物については、医薬活性化合物が、局所効果を示す又は血流に入る機会を有する前に、胃腸管で除去されないことが重要である。製剤が懸濁形態又は液体形態にあるときには、典型的には、長期間、例えば、吸収がカプセル剤又は錠剤に比べて増加する期間、腸内に保持される。本発明の様々な局面はまた、製剤の表面積にフレキシビリティーを提供する。錠剤が、一般的に一定の表面積に限定されるが、本発明のいくつかの実施態様は、カプセル剤、懸濁液及び液体の使用を可能にし、より大きな表面性を提供し、よって増加した吸収及び生物的利用性に役立つことがある。
【0058】
薬物が水相に曝露されているその薬物を送達する方法を先に記載してきた。本発明のいくつかの実施態様によれば、液体及び薬物は、クロロホルム又は類似の溶媒に曝露される。水相への曝露はない。水に敏感な薬物及び水に不安定な薬物、例えば抗体に関して、最初の水相の存在は、これらの薬物の完全性を保持する。更に、水相への曝露はないため、リポソームは形成されない。従って、本発明のいくつかの実施態様は、非-リポソーム性医薬製剤に関する。本明細書に記載の「非-リポソーム性」は、水相へ曝露されない製剤と定義され、よって、腸溶性コーティングの適用前にリポソームを形成しない。
【0059】
以下の記載に拘束されるものではないが、本発明の1つの実施態様は以下のとおりである:プロリポソーム形成後に、製剤は、哺乳動物に経口投与される。プロリポソーム形成が約7.0以上のpHで水相に出くわすとき、リポソームが形成され、薬物分子は、胃腸膜により輸送される。
【0060】
特定の投与経路
本発明の1つの局面によれば、製剤は、限定されないが、経口的、口内、舌下、鼻腔内、局所的、経皮的、眼科的、膣内、直腸的、膀胱腔内、肺、動脈内、静脈内、皮内、筋肉内、皮下的、腹腔内、鞘内及び眼内を含む、様々な経路により投与される。
【0061】
経皮的経路に関しては、本発明のいくつかの実施態様は、薬物分子がこの種の送達に好適なpHで荷電されない場合に、薬物のイオントフォレシス経皮的送達が邪魔されるので、特に有利である。しかしながら、本発明の様々な実施態様従う腸溶性-被覆プロリポソーム型製剤は、経皮的送達にはうまく使用することができる。腸溶性コーティングは、薬物を酸性pHから保護する。非-腸溶性コーティングも使用することができる。リポソームに対する電荷は、イオントフォレシス経皮的送達により薬物送達を促進する。本発明のある実施態様は、水-不溶性薬物及び低水溶性薬物に特に有用である。典型的には、薬物をイオンフォトレシスに送達するために、薬物は最初に溶解される必要がある。そのため、水-不溶性薬物又は低水溶性薬物は、この方法で投与することが困難である。しかしながら、本発明のいくつかの実施態様に従って、水-不溶性薬物又は低水溶性薬物は、この経路により送達用のリポソーム中に取り込まれる。経皮的送達用の薬物の調製を促進するために、製剤は、水相に懸濁して、皮膚からの吸収を促進することができる。1つの実施態様では、溶液のpHは、コーティングの分解を促進するために、好ましくは中性である。
【0062】
本発明の1つの実施態様では、鼻腔内投与方法を提供する。薬物の局所作用が全身性効果の代わりに望ましい場合には、本明細書に記載のいくつかの実施態様のプロリポソーム型製剤は、粘膜に非-刺激性であるので、理想的である。製剤は、粘膜が、刺激性薬物と直接接触するよりも、主に脂質二重層と接触するので、非-刺激性であると考えられる。薬物のリポソームからの放出は、徐放性であり、これらの粘膜を覆う分泌物と容易に混和性である。
【0063】
本発明の別の実施態様では、肺投与法を提供する。プロリポソームは、肺内薬物送達には非常に有用でかつ効率的なシステムであることが明らかになっている。プロリポソーム型製剤は、乾燥粉末吸入器を用いて投与することができる。肺経路によるプロリポソーム型製剤の投与は、肺内の吸収を改善し、その結果、気道内の局所薬物作用、循環中の長期間の薬物保持及び全身性副作用の減少をもたらす。従って、毒性学的観点からは、プロリポソームは、特に肺への薬物送達のための好適なシステムであるように思われる。
【0064】
腸溶性及び/又は非-腸溶性コーティングは、本明細書に記載の投与経路に従って使用することができる。本明細書に記載の医薬製剤の投与が、環境が酸性である標的に送達される場合には、腸溶性コーティングは溶解しないことがあり、そのため薬物送達を抑制する。場合によっては、これは望ましいことがある。しかしながら、いくつかの実施態様では、非-腸溶性コーティングを提供する。非-腸溶性コーティングは、ある実施態様では、酸性、塩基性及び中性で溶解するポリマーを含む。薬物送達のための所望の標的組織に基づいて、当業者は、いずれの種類のコーティングが、本発明の実施態様に従って使用されるべきかを理解するだろう。
【0065】
当業者は、酢酸セルロースフタレートについての以下の説明を適合させることにより、本発明の非-リポソーム製剤を製造し、使用するための十分な情報を有するだろう。
【0066】
以下の実施例は、本発明の様々な実施態様を説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0067】
実施例1:
ハロファントリン及びジステアロイル ホスファチジルコリン(1:3比)を、クロロホルムに溶解し、窒素ガスを用いて溶媒を蒸発させた。乾燥粉末は、60番メッシュ篩を通過させた。酢酸セルロースフタレート(50 mg)をアセトン(6 ml)に溶解し、ハロファントリン及びジステアロイル ホスファチジルコリンの混合物上にスプレイした。
【0068】
II型USP溶解器を用いて、製剤の40 mgを用いて溶解を行った。溶解媒体(250 ml)は、リン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)であった。溶解媒体の温度は、37±0.5℃に維持し、パドルの回転を50 rpmに設定した。試料(5 ml)を5、10、15、30、45、60、90、120、180及び240分に採取した。同等の体積のリン酸緩衝生理食塩水は、溶解媒体の一定体積を維持するように加えた。
【0069】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により試料を分析した。移動層では、46.5:53.5 (0.025 M リン酸カルシウム/硫酸/トリエチルアミン溶液): アセトニトリルを合わせ、混合し、及びカンテス(Kontes)濾過器を用いて濾過した。ドデシル硫酸ナトリウム(1.1 g/移動層(L))を濾過溶液に加えた。
【0070】
アッセイ法のパラメータは以下のとおりであった。流速は、1.2 ml/分に設定した。温度は室温であった。操作時間は30分であった。紫外線検出器は、波長254 nmに設定した。(+)ハロファントリン及び (-)ハロファントリンの保持時間は、各々、25分、28分であった。
【0071】
ハロファントリンの腸溶性被覆プロリポソーム型製剤の薬物動力学的パラメータは、以下のようにして評価した。0.78%メチルセルロースの懸濁液として、プロリポソーム性生成物を製造した。非-腸溶性懸濁製剤(対照)は1%メチルセルロースにハロファントリン粉末を分散させることにより調製した。Sprague-Dawleyラットに、ハロタン麻酔下で、右静脈にカニューレを挿入した。一晩の休息の後で、ラットに、プロリポソーム型製剤(7ラット)又は対照製剤(6ラット)のいずれかの7 mg/kgのハロファントリン懸濁液を経口チューブにより与えた。48時間投与後までに段階的にカニューレから血液試料を得た。ハロファントリンエナンチオマーの血漿濃度を測定するために、立体特異的HPLCアッセイを使用した。AUC0-24、Cmax及びtmaxを決定するために、非部門別の薬物動態学的方法を使用した。有意差を評価するために、スチューデントアンペアt-検定を使用した。結果(平均±SD)を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
プロリポソーム型製剤は、両エナンチオマーについて対照製剤よりも高い生物的利用性を示した。ハロファントリンのAUC及びCmaxは、各々、40%超及び80%超、増加した。平均tmaxは、プロリポソーム型製剤では両エナンチオマーでより低かったが、対照との差は、統計的に有意でなかった。
【0074】
実施例2:
テストステロン及びリン脂質(DMPC、DPPC又はDSPC;1:1比)をクロロホルムに溶解した。クロロホルムは、窒素ガスを用いて蒸発させた。乾燥粉末は、60番メッシュ篩を用いて通過させた。酢酸セルロースフタレート(40 mg)をアセトン(5 ml)に溶解し、得られた溶液を、テストステロン及びリン脂質を含む固体分散体上にスプレイした。粉末を乾燥させるために窒素ガスを使用した。
【0075】
II型USP溶解器を用いて、製剤の45 mgを用いて溶解を行った。溶解媒体(300 ml)は、リン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)であった。溶解媒体の温度は、37±0.5℃に維持し、パドルの回転を50 rpmに設定した。試料(5 ml)を2、5、8、10、15、20、25、30、40、50、60、80、100及び120分に採取した。同等の体積のリン酸緩衝生理食塩水は、溶解媒体の一定体積を維持するように加えた。溶解試料を吸光度254 nmで測定することにより分析した。
【0076】
テストステロンの溶解速度及び溶解率は、図2に示すように、純粋なテストステロンに比べて、全てのプロリポソーム型製剤について、著しく高かった。溶解率は、DMPCを含むプロリポソーム型製剤について最も高く、次いでDSPCを含むプロリポソーム型製剤、DPPCを含むプロリポソーム型製剤の順であった。このことは、これらの脂質の相転移温度(Tc)により説明することができる。DPPCは、41℃のTcを有し、溶解試験の温度(37℃)に非常に近い。DMPC及びDSPCは、各々、23℃、56℃のTcを有する。37℃では、DMPCは液体で、DSPCはゲル状態で存在する。DPPCのTcは、溶解試験の温度に近いので、製剤は不安定であったかもしれず、そのため、テストステロンの溶解を抑制した。それにもかかわらず、このデータは、テストステロンの溶解速度及び溶解率が、腸溶性被覆プロリポソーム型製剤を用いることにより増加したことを示している。
【0077】
実施例3:
ファモチジン及びジステアロイル ホスファチジルコリン(DSPC;1:3比)をクロロホルムに溶解した。クロロホルムは、窒素ガスを用いて蒸発させた。乾燥粉末は、60番メッシュ篩を用いて通過させた。酢酸セルロースフタレート(50 mg)をアセトン(5 ml)に溶解し、得られた溶液を、テストステロン及びリン脂質を含む固体分散体上にスプレイした。粉末を乾燥させるために窒素ガスを使用した。
【0078】
II型USP溶解器を用いて、製剤の87 mgを用いて溶解を行った。溶解媒体(300 ml)は、リン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)であった。溶解媒体の温度は、37±0.5℃に維持し、パドルの回転を50 rpmに設定した。試料(5 ml)を2、5、8、10、15、20、25、30、40、50、60、80、100及び120分に採取した。同等の体積のリン酸緩衝生理食塩水は、溶解媒体の一定体積を維持するように加えた。溶解試料を吸光度285 nmで測定することにより分析した。
【0079】
ファモチジン製剤の溶解速度は、純粋なファモチジンよりも著しく高かった。しかしながら、PBS中のファモチジンの溶解度は、著しく増加しなかった。プロリポソーム型製剤は、より速い分解速度をもたらすので、ある実施態様では、薬物作用の開始はより速くなるだろう。
【0080】
実施例4:
本発明の1実施態様を、医薬製剤を製造するための対照法と比較した。以下の実施例で使用する対照法は、実施例1で、使用した水のパーセンテージが5%及び0%であったことを除いて、本明細書に参照として引用されている、Ganterの米国特許第5,635,206号明細書に開示されている。例として、低溶解性薬物を使用した:グリブリド及びベンゾカイン。
【0081】
以下の表は、使用したプロトコール及び結果を纏める。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
グリブリド及びベンゾカインの結果は、5%水及び0%水での対照法を超えて、本発明のいくつかの実施態様が予測不可能でかつ顕著な利点を有することを示した。例えば、本発明のある実施態様は、以下の結果をもたらすことができる:(1) 著しく高い収率;(2) 水相でのより低い吸光度値により示される、脂質によるより高いかつ効率的な取り込み; (3) コーティングの容易さ、及び胃腸管内の増加した安定性及び吸収に有利である、より大きな粒径;及び/又は (4) 乳状テクスチャよりも扱い易くかつ被覆し易い、粉末-用テクスチャ。本発明のある実施態様は、先述の1以上の利点を有する。1つの実施態様において、本方法は、被覆することができる生成物を製造するために、薬物を水相に曝露せず、非-水性溶媒を蒸発させるので、本製剤の品質及び量は、顕著に改善されている。
【0087】
本発明の多数の好ましい実施態様及びそれらの変更を詳細に記載してきたが、他の修飾及び使用方法は、当業者には容易に明らかにあろう。従って、様々な適用、修飾及び置換は、本発明の趣旨及び請求の範囲を逸脱することなく、均等物からなるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストステロン及びリン脂質の懸濁液を含むプロリポソーム性粉末、及び
腸溶性コーティング
を含む投薬形態。
【請求項2】
カプセル剤であり、プロリポソーム性粉末が該カプセル内に含まれる、請求項1記載の投薬形態。
【請求項3】
前記カプセルが腸溶性コーティングで被覆されている、請求項2記載の投薬形態。
【請求項4】
前記リン脂質が、ジステアロイル ホスファチジルコリン、ジパルミトイル ホスファチジルコリン、ジミリストイル ホスファチジルコリン、卵PC、大豆PC、DMPG、DMPA、DPPG、DPPA、DSPG、DSPA、ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンからなる群より選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載の投薬形態。
【請求項5】
界面活性剤を更に含む、請求項4記載の投薬形態。
【請求項6】
前記腸溶性コーティング材料が、酢酸セルロースフタレート、アルギン酸塩、アルカリ-溶解性アクリル樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリレート-メタクリル酸共重合体、酢酸ポリビニルフタレート、スチロールマレイン酸共重合体、セラック、及び酢酸セルロースからなる群より選ばれる、請求項4記載の投薬形態。
【請求項7】
前記リン脂質がジステアロイルホスファチジルコリンである、請求項4記載の投薬形態。
【請求項8】
担体、希釈剤、滑剤及びそれらの混合物からなる追加の成分を更に含む、請求項4記載の投薬形態。
【請求項9】
フタル酸エステル、クエン酸エステル及びトリアセチンからなる群より選ばれるフィルム可塑剤を更に含む、請求項8記載の投薬形態。
【請求項10】
前記追加の成分が、微結晶性セルロース、デンプン、ラクトース、タルク、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリルベヘネート、デキストロース及びリン酸二カルシウムからなる群より選ばれる、請求項8記載の投薬形態。
【請求項11】
錠剤である、請求項1記載の投薬形態。
【請求項12】
テストステロン及びリン脂質の分散液を含むプロリポソーム性粉末。
【請求項13】
前記リン脂質が、ジステアロイル ホスファチジルコリン、ジパルミトイル ホスファチジルコリン、ジミリストイル ホスファチジルコリン、卵PC、大豆PC、DMPG、DMPA、DPPG、DPPA、DSPG、DSPA、ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンからなる群より選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載のプロリポソーム性粉末。
【請求項14】
界面活性剤を更に含む、請求項13記載のプロリポソーム性粉末。
【請求項15】
前記腸溶性コーティングが、酢酸セルロースフタレート、アルギン酸塩、アルカリ-溶解性アクリル樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリレート-メタクリル酸共重合体、酢酸ポリビニルフタレート、スチロールマレイン酸共重合体、セラック、及び酢酸セルロースからなる群より選ばれる腸溶性コーティング材料で被覆されているものである、請求項12〜14のいずれか1項記載のプロリポソーム性粉末。
【請求項16】
前記リン脂質がジステアロイル ホスファチジルコリンである、請求項12〜14のいずれか1項記載のプロリポソーム性粉末。
【請求項17】
テストステロンを必要としている患者に投与される、当該患者を治療するための請求項1記載の投薬形態。
【請求項18】
テストステロンを必要としている患者に投与される、当該患者を治療するための請求項4記載の投薬形態。
【請求項19】
テストステロン及びリン脂質のプロリポソーム性分散剤の製造方法であって、
テストステロン及び少なくとも1つのリン脂質を、溶液を形成するための水性相に曝露することなく、非水性溶媒に溶解し;及び
テストステロン及び少なくとも1つのリン脂質を含む乾燥粉末分散剤を形成するために当該非水性溶媒を除去すること、
を含む、製造方法。
【請求項20】
前記リン脂質が、ジステアロイル ホスファチジルコリン、ジパルミトイル ホスファチジルコリン、ジミリストイル ホスファチジルコリン、卵PC、大豆PC、DMPG、DMPA、DPPG、DPPA、DSPG、DSPA、ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンからなる群より選ばれる、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−31200(P2012−31200A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239006(P2011−239006)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【分割の表示】特願2007−543575(P2007−543575)の分割
【原出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(507175267)ウエスタン ユニバーシティ オブ ヘルス サイエンシズ (2)
【Fターム(参考)】