説明

被覆蛍光体粒子、被覆蛍光体粒子の製造方法、蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置

【課題】 蛍光体が凝集することなく、ガスバリヤ性が良好で、半導体発光装置の耐久性を向上させうる被覆蛍光体粒子、および蛍光体含有組成物を提供する。
【解決手段】 (A)蛍光体粒子を(B)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択される1以上を含有するガラス組成物で被覆した被覆蛍光体粒子であって、前記ガラス組成物の屈伏点が800℃以下であること、および/または前記ガラス組成物が形成する被覆層の膜厚が、0.1μm以上10μm以下であること、を特徴とする被覆蛍光体粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆蛍光体粒子、および被覆蛍光体粒子の製造方法、並びに前記被覆蛍光体粒子を用いた蛍光体含有組成物、および発光装置、並びに前記発光装置を用いた画像表示装置および照明装置に関する。より詳しくは、蛍光体が凝集することなくその表面がガラスによって被覆され、ガスバリヤ性が良好な被覆蛍光体粒子、および被覆蛍光体粒子の製造方法、並びに前記被覆蛍光体粒子を用いた蛍光体含有組成物、および発光装置、並びに前記発光装置を用いた画像表示装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は従来からCRT、蛍光ランプなどに工業的に大量に使用されてきたが、これらの用途では蛍光体を塗布する際に水性スラリーとして使用する方法が工業的に確立されており、水分で劣化する蛍光体は使用できなかった。
一方、近年、半導体発光チップから発する光を蛍光体により波長変換し、白色発光装置を作製する技術が実用化されている。ここで使用される蛍光体は、前記のCRT、蛍光ランプとは異なり製造工程上水性スラリーとする必要がない。従って、発光特性に優れていれば、水分による劣化が多少認められても、封止剤により蛍光体を封入することにより、短期的な使用については問題にならない場合がある。
【0003】
しかしながら、長期的な使用については実用性に不十分な点が多く、かかる蛍光体の水分による劣化対策が求められていた。即ち半導体発光装置用の蛍光体の中には高温高湿条件で徐々に分解したり、高温高湿条件での点灯により劣化するという問題があった。
かかる技術背景にあって、蛍光体粒子の耐湿性等の向上を目的として、蛍光体粒子を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法(特許文献1〜3)、蛍光体粒子の表面を化学気相反応法によって被覆する方法(特許文献4)、金属化合物の粒子を付着させる方法(特許文献5)等の方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−223008号公報
【特許文献2】特開2004−250705号公報
【特許文献3】特開2002−173675号公報
【特許文献4】特開2005−82788号公報
【特許文献5】特開2006−28458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体発光装置に用いて長期的に使用できる実用レベルの被覆蛍光体粒子を得るにはさらなる検討が必要であった。
また、特許文献1〜3に記載されるようなガラス材料被覆の一般的方法、即ち蛍光体粒子上に形成されたゲル化層を乾燥・加熱して緻密化させて被覆蛍光体粒子を得る場合は、蛍光体粒子が凝集して被覆される場合があり、蛍光体粒子の均一性、分散性に問題が生じる場合があった。また、特許文献4の化学気相反応法は被覆するガラスが単一組成である場合には使用可能であるが、複数の成分からなるガラス組成物は各成分の蒸着条件が異なるため、緻密な被覆層を形成することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上述の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、半導体発光装置における前記被覆蛍光体の耐久性は、被覆蛍光体粒子の耐水性(水溶性)よりも、被覆層のガスバリヤ性に依存する傾向があることを見出した。従来の被覆層は、ある程度の緻密性を有するため、一定の粘度を有する液相の水をブロックすることはでき、耐水性付与という点ではある程度の効果があった。しかしながら、前記被覆層の緻密性は、ガスの進入をブロックするレベルに至っているとまではいえず、これが、実際に半導体発光装置に用いて長期的に使用できるレベルに至らない原因であることを見出した。また、上述の耐水性のみならず、酸素透過性も蛍光体の劣化に起因することがあるため、かかる点でもガスバリヤ性を有するほどの緻密性が必要であることを見出した。
【0006】
例えば蛍光体粒子上に形成されたゲル化層を乾燥・加熱して緻密化させて被覆蛍光体粒子を得る方法(前記特許文献1〜3)は、乾燥・加熱工程でゲル化層が大きく収縮し、最終的に蛍光体上に存在する皮膜は非連続部分がいくらか存在するため、ガスバリヤ性が不十分であることが推測される。また、蛍光体粒子の表面を化学気相反応法によって被覆する方法(特許文献4)でも、ガスバリヤ性の高い緻密な被覆層を形成することが困難であり、緻密化しようとして加熱すると縮合・収縮して亀裂が生じることが推測される。また、金属化合物の粒子を付着させる方法(前記特許文献5)は、粒子が付着されない部分が存在するため、十分なガスバリヤ性を担保できないことが推測される。
【0007】
そこで、発明者らは、蛍光体上に形成されたゲル化層を乾燥・加熱して緻密化するのではなく、蛍光体の種類に応じて選択される特定のガラス粉を蛍光体表面に付着させ、しかる後に加熱してガラス粉を溶融させることにより、蛍光体上に連続な皮膜を形成でき、これが上記問題を解決することを見出し本発明を完成した。 また、かかる方法によれば、
蛍光体粒子の凝集をも抑制し、蛍光体の種類によらず良好な連続被膜 を形成しうること
を見出した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は下記〔1〕〜〔11〕に存する。
〔1〕(A)蛍光体粒子を(B)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択される1以上を含有するガラス組成物で被覆した被覆蛍光体粒子であって、前記(B)ガラス組成物の屈伏点が700℃以下であることを特徴とする被覆蛍光体粒子(以下、「第一の本発明の被覆蛍光体粒子」と称することがある)。
〔2〕(A)蛍光体粒子を(B)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択される1以上を含有するガラス組成物、で被覆した被覆蛍光体粒子であって、前記(B)ガラス組成物が形成する被覆層の膜厚が、0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする被覆蛍光体粒子(以下、「第二の本発明の被覆蛍光体粒子」と称することがある)。〔3〕前記(A)蛍光体粒子が、窒化物および/または酸化物である前記〔1〕または〔2〕に記載の被覆蛍光体粒子。
〔4〕前記(B)ガラス組成物が、下記(I)および(II)の化合物を含有する前記〔1〕〜〔3〕の被覆蛍光体粒子。
(I)SiO、B、P、GeO、TeO、Al、Ga、およびBiから選択される1以上を含む、Zachariasenによるガラス形成酸化物
(II)アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、およびZnから選択される1以上を含む網目修飾酸化物
〔5〕前記(B)ガラス組成物における鉛の含有量が0.1重量%以下である前記〔1〕〜〔4〕に記載の被覆蛍光体粒子。
〔6〕前記(B)ガラス組成物が形成する被覆層が連続膜である前記〔1〕〜〔5〕に記載の被覆蛍光体粒子。
〔7〕(A)蛍光体粒子、および(B)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択される1以上を含有するガラス組成物を混合し、前記(B)ガラス組成物の屈伏点以上で加熱することを特徴とする被覆蛍光体粒子の製造方法。
〔8〕前記〔1〕〜〔6〕に記載の被覆蛍光体粒子を含むことを特徴とする蛍光体含有組成物。
〔9〕前記〔1〕〜〔6〕に記載の被覆蛍光体粒子を用いて形成された発光装置。
〔10〕前記〔9〕に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
〔11〕前記〔9〕に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蛍光体が凝集することなく、ガスバリヤ性が良好で、半導体発光装置の耐久性を向上させうる被覆蛍光体粒子、および蛍光体含有組成物を提供することが出来る。また、前記被覆蛍光体粒子を用いることにより、長期的に使用できる耐久性に優れた発光装置、並びに前記発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の各要素について詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
[1](A)蛍光体粒子
本発明の表面処理方法の対象となる蛍光体粒子(以下、適宜「蛍光体」と称することがある。)は、特に限定は無いが、発光特性が優れているが耐湿性が低い蛍光体粒子、酸素の暴露により劣化しやすい蛍光体粒子、イオンの溶出が起こりやすい蛍光体粒子、電気分解により劣化しやすい蛍光体粒子、臭気のある蛍光体粒子等は、本発明の表面処理方法により、発光装置等に好ましく利用することができるので好適である。即ち、本発明の表面処理によりガスバリヤ性が担保され、水蒸気、酸素、臭気原因物質がブロックされる。また、蛍光体由来のイオンの溶出によるパッケージ、封止材などの周辺部材の劣化が抑制される。また、漏れ電流による蛍光体の劣化を抑制することができる。以下、蛍光体の具体例を例示するが、例示の一般式においては、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
【0011】
[1−1]好ましい蛍光体粒子
本発明の被覆処理方法の対象として好ましい蛍光体としては、無機蛍光体と有機蛍光体が挙げられる。
無機蛍光体としては、例えば母体結晶としてMSiO、MS、MGa、MAlSiN、MSi、MSiからなる群(ただし、Mは、Ca,Sr,Baからなる群から選ばれる1種、または2種以上を表す)の少なくとも一つを含有し、かつ付活剤としてCr,Mn,Fe,Bi,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybの少なくとも一つを含有する蛍光体が挙げられる。
【0012】
上記蛍光体の具体例としては、たとえば、BaSiO:Eu、(Sr1-aBaSiO:Eu、SrSiO:Eu、CaS:Eu、SrS:Eu、BaS:Eu、CaS:Ce、SrS:Ce、BaS:Ce、CaGa:Eu、SrGa:Eu、BaGa:Eu、CaGa:Ce、SrGa:Ce、BaGa:Ce、CaAlSiN:Eu、SrAlSiN:Eu、(Ca1-aSr)AlSiN:Eu、CaAlSiN:Ce、SrAlSiN:Ce、(Ca1-aSr)AlSiN:Ce、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、(Ca1-aSr)Si:Eu、CaSi:Ce、SrSi:Ce、BaSi:Ce、(Ca1-aSr)Si:Ce、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、CaSi:Ce、SrSi:Ce、BaSi:Ce、(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu、BaSi:Eu、(以上に関し、aは0≦a≦1を満たす。)が挙げられる。
中でも、CaS、CaGa:Eu、SrGa:Eu、(Sr0.8Ca0.2)AlSiN:Eu、(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu、BaSi:Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Eu、を好ましいものとして挙げることが出来る。
【0013】
[1−2]その他の蛍光体粒子
また、上記蛍光体以外にも、耐久性向上、分散性向上等、目的に応じてその他の蛍光体を用いることもできる。
かかる蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体であるY、ZnSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(PO
)Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に
、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが好ましい。
【0014】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物、YS等の酸硫化物、(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,C
a)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119
、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩、YSiO、ZnSiO等の珪酸塩、SnO、Y等の酸化物、GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩、Ca10(PO)(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl等のハロリン酸塩、Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0015】
ただし、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。
【0016】
[1−2−1]橙色ないし赤色蛍光体
橙色ないし赤色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「橙色ないし赤色蛍光体」とい う。)としては、以下のものが挙げられる。橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常580nm以上、好ましくは585nm以上、また通常780nm以下、好ましくは700nm以下の波長範囲にあることが好適である。このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表わされるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。 更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本実施形態において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0017】
また、その他、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY(SiO:Eu、Ca(SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)SiNz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−x−yScCe(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0018】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0019】
また、赤色蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体の例としては、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Mg)(PO:Sn2+等のSn付活リン酸塩蛍光体等が挙げられる。
【0020】
以上例示した赤色蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
以上の例示の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce、(La,Y)S:Euが好ましく、(Sr,Ca)AlSiN:Eu、(La,Y)S:Euが特に好ましい。
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)SiO:Euが好ましい。
【0021】
[1−2−2]緑色蛍光体
緑色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という。)としては、以下のも
のが挙げられる。緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常490nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは515nm以上、また、通常560nm以下、好ましく
は540nm以下、より好ましくは535nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0022】
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0023】
また、その他、緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi:Eu、(Mg,Sr,Ba,Ca)Si:Eu、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu、MSi:Eu、MSi10:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
【0024】
[1−2−3]青色蛍光体
青色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「青色蛍光体」という。)としては以下の
ものが挙げられる。青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは470nm以下、より好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0025】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表わされるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)(POCl:Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0026】
また、その他、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0027】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。 以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Ca,Mg)SiO:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Euが好ましく、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
【0028】
[1−2−4]黄色蛍光体
黄色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「黄色蛍光体」という。)としては、以下のも
のが挙げられる。黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0029】
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やM12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0030】
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。 また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G(Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0031】
[1−4]蛍光体粒子の物性
本発明の蛍光体に使用する蛍光体の粒径には特に制限はないが、中央粒径(D50)で通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。D50が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう虞がある。一方、D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる虞がある。
【0032】
蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、蛍光体含有組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。また、蛍光体粒子の形状は、特に限定されない。
【0033】
なお、本発明において、中央粒径(D50)、粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から得ることが出来る。前記重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、例えば以下のように測定することが出来る。
気温25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールなどの溶媒に蛍光体を分散させる。
【0034】
レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所 LA−300)により、粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定する。
この重量基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を中央粒径D50と表記する。また、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDが小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
【0035】
[1−5]蛍光体の表面処理
本発明に使用する蛍光体粒子は、更に、耐水性を高める目的で、表面処理が行われていてもよい。
かかる表面処理の例としては、例えば特表2006−523245号公報に記載されるような、蛍光体粒子を熱処理などを行うことにより、蛍光体粒子の元来の成分を化学的に変性させることによって被覆物を形成させる等の公知の表面処理が挙げられる。
また、金属リン酸塩を被覆する表面処理も有効である。具体的には、例えば以下の(i)〜(iii)の手順で進められる表面処理方法が挙げられる。(i)所定量のリン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどの水溶性のリン酸塩と塩化カルシウム、硫酸ストロンチウム、塩化マンガン、硝酸亜鉛等のアルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の水溶性の金属塩化合物とを蛍光体懸濁液中に添加し、攪拌する。(ii)アルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の金属のリン酸塩を懸濁液中で生成させると共に、生成したこれらの金属リン酸塩を蛍光体表面に沈積させる。(iii)水分を除去する。
【0036】
[2](B)ガラス組成物
[2−1]好ましいガラス組成物
本発明に用いられるガラス組成物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択される1以上を含有する。好ましくは下記(I)および(II)の化合物を含有する。
(I)SiO、B、P、GeO、TeO、Al、Ga、およびBiから選択される1以上を含む、Zachariasenによるガラス形成酸化物
(II)アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、およびZnから選択される1以上を含む網目修飾酸化物
前記(I)成分における「Zachariasenによるガラス形成酸化物」とは、非特許文献W.H. Zachariasen, J. Am. Chem. Soc. , 54, 3841−3851(1932)において提唱された概念である、ガラスの基本骨格であるガラス形成酸化物をいう。これらの中では、SiO、B、P、Alを含むガラス形成酸化物が好ましく、Al、SiO、Pを含むガラス形成酸化物が特に好ましく、Al、Pをともに含むものが最も好ましい。
【0037】
前記(I)成分の配合量は、ガラス組成物全体に対して、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは33重量%以上であり、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。前記(I)成分の配合量が少なすぎると機械的強度が低下したり、耐水性が劣ったりする場合がある、多すぎると、屈伏点が高くなる場合がある。
【0038】
また、本発明において、(II)アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、およびZnから選択される1以上を含む網目修飾酸化物とは、屈伏点を低下させたり、耐久性を向上させるはたらきがある。これらの中ではBaO、SrO,ZnO、LiO,NaO,KO,MgOを含む網目修飾酸化物が好ましく、LiO,NaO,KO,ZnO,CaOを含む網目修飾酸化物が特に好ましい。
【0039】
前記(II)成分の配合量は、ガラス組成物全体に対して、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは67重量%以下である。前記(II)成分の配合量が多すぎると耐久性が低下する場合があり、少なすぎると、屈伏点が高くなる場合がある。
【0040】
(I)および(II)の組み合わせとしては、例えばPを含むガラス形成酸化物およびNaOを含む網目修飾酸化物の組み合わせを挙げることができる。
また、(I)および(II)の重量比としては、通常90:10〜20:80好ましくは80:20〜20:80である。
また、第一の本発明の被覆蛍光体粒子においては、ガラス組成物の屈伏点が700℃以下、好ましくは650℃以下、さらに好ましくは600℃以下である。また、通常100℃以上、好ましくは200℃以上、さらに好ましくは250℃以上である。屈伏点が大きすぎると溶融して被覆する際に高温になり過ぎ、蛍光体そのものの劣化あるいは、蛍光体とガラス組成物との反応により蛍光体の発光特性の低下が起こる場合があり、小さすぎると被覆の安定性が低下する。
【0041】
また、本発明の被覆蛍光体粒子における屈伏点の低い、いわゆる低融点ガラスはリン酸系(Pを含有する)ガラス組成物であることが好ましい。
また、ガラスの屈伏点を低下させ、耐久性を向上させる目的で、フッ素原子を含有していることが更に好ましい。前記フッ素原子はガラスに含有されていなくても、ガラス組成物被覆時(原料混合時および/または溶融時)にAlF,LiF、NaF,CaF、SrF,BaF,ZnF、MgFなどのフッ素化合物を添加してもよい。
【0042】
なお、フッ素原子は、ガラス組成物の屈伏点低下、耐久性向上の効果の他に、蛍光体表面との親和性を向上させる効果も併せて奏するものと推測される。すなわち、蛍光体とガラスとの膨張係数のマッチングと密着のための界面層形成機能があると推察される。蛍光体とガラス層の界面で、密着性が増していることから、ガラス成分の少なくとも一部が、蛍光体とガラスとの界面から浸透していると推測される。フッ化物イオンはこの浸透を促進すると推察される。蛍光体表面との親和性が増加する限りにおいては、添加物の種類に制限は無く、塩素、ヨウ素、臭素も使用できるが、安定性の点でフッ素が好ましい。
【0043】
また、本発明の被覆蛍光体粒子におけるガラス組成物は、鉛の含有量が通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下、さらに好ましくは0.001重量%以下である。鉛の含有量は少なすぎるほど好ましく、多すぎると廃棄時に有害元素による汚染の可能性がある。
本発明の被覆蛍光体粒子におけるガラス組成物の好ましい具体例としては、例えばPが34重量%以上50重量%以下、LiOが2重量%以上9重量%以下、NaOが7重量%以上28重量%以下、RO(但し、Rはアルカリ金属)が17重量%以上41重量%以下、Alが6.5重量%以上30重量%以下、ZnOが0重量%以上22重量%以下、BaOが0重量%以上21重量%以下、SrOが0重量%以上18重量%以下、CaOが0重量%以上16重量%以下、RO(但し、Rはアルカリ土類金属)が0重量%以上34重量%以下、Fが0重量%以上32重量%以下の組成であるガラス組成物を挙げることができる。ROは、好ましくは、KOが挙げられ、3重量%以上27重量%以下であることが好ましい。ROは、MgOが好ましく、0重量%以上14重量%以下であることが好ましい。Fは1.5−32%であることが好ましい。
【0044】
本発明に用いるガラス組成物は、公知のものを使用することができる。例えば国際公開2003/037813号パンフレット、特開2003−26439号公報、特開平5−193979号公報に記載の公知のガラス組成物を挙げることができる。
また、市販のガラス組成物を使用することができる。具体的には、OPTICAL GLASS DATA BOOK(Version 5.00 2005年4月28日発行、2005年7月5日改定)に記載の住田光学ガラス社製「K−PG325」、「K−PG375」、「K−PG395」、「K−PMK10」、「K−PMK10」、「K−PSKn2」、「K−BK7」、「K−BPG2」、「K−SKF6」、「K−LaK7」、「K−CaFK95」、「K−PFK85」、「K−PFK80」、「K−GFK70」、「K−GFK68」、「K−CD45」、「K−CD120」、「K−LaFK55」、「K−LaFK60」、「K−PSK200」、「K−PSFn1」、「K−PSFn2」、「K−PSFn3」、「K−PSFn4」、「K−PSFn5」、「K−PMK10」、「K−PSK100」、「K−VC80」、「K−VC81」、「K−VC82」、「K−VC89」、光ガラス社製「P−SK5S」、「P−SK12S」、「P−LAK13S」、「P−LAF010S」、「P−FKH2S」、「P−LASF03S」、「P−FK01S」、旭ファイバーガラス社製「ZP150」、旭テクノグラス社製「SK−231」、「SK−360」、「K801」、「K805」、「K806」、「K807」、「K808」、「LS−5」、「BS−7」、「FF201」、「FF209」、2007年旭硝子 エレクトロニクス用ASF粉末ガラス,ATG粉末ガラスカタログに記載の旭硝子社製「IWF−7574」、「FF201」、「FF209」、「K301」、「K303」、「K304」、「K805」、「K807」、「K808」、「K834」、「K835」、「K836」、「LS−5」、「KF9079」、「ASF1495」、「ASF1560」、「ASF1561」、「ASF1620B」、「ASF1620M」、「ASF1700」、「ASF1702」、「ASF1710」、「ASF1765B」、「ASF1768」、「ASF1771」、「ASF1800」、「ASF1891」、「ASF1891F」、「ASF1898」、「ASF1939」、「ASF1941」、「ASF1941B」、「開発品1991」等を挙げることができる。
【0045】
また、本発明のガラス被覆に用いることが出来るガラスとしては、例えば、ガラス軟化点が550℃前後であるBi−SiO−B系ガラス、ガラス転移点が約500〜700℃であるSiO−B−RO、SiO−B−RO−RO系ガラス(但し、Rはアルカリ金属、またはアルカリ土類金属を示す。)を用いた無鉛ガラスセラミックスが挙げられる。
【0046】
その他、従来使用されてきた用途に着目すると、ガラス、セラミックス、金属の接着、封着に用いられる粉末ガラス、各種セラミックス、金属粉末の焼結温度を低下させるための添加剤として使用されているBi−B−SiO、B−ZnO、SiO−B−RO、SiO−B−RO系などの粉末ガラス(但し、ROは、アルカリ金属酸化物、ROは、アルカリ土類金属酸化物を示す。)が挙げられる。
【0047】
以下、さらにガラスの構成元素に着目して詳しく例示する。
本発明で好ましく用いられるガラスは、非Pb含有低融点ガラスであり、このガラスは従来のPb含有低融点ガラスにおいて、 Pb をBi に置き換える、Zn あるいはSn
を採用する、 ガラスの基礎組成をリン酸塩系ガラスに変える、アルカリ・ホウ酸成分を増やす、フッ化物を導入する、などの方法により、非Pb化を実現したものである。
【0048】
ビスマス(Bi)導入ガラスの例としては、Bi−B系ガラス組成物が挙げられる。具体的には、37Bi−39.3B−7.2BaO−16.7CuO、 65Bi−25ZnO−7.5B−2.0Al、Bi
を27重量%以上55重量%以下含有するBi−ZnO−B 系ガラス組成
物、Bi−SiO系ベースの結晶化ガラス粉末(Bi含有量は50−62重量%)、SiO−B−Bi−ZnO 系ガラス組成物などが挙げられる。
【0049】
リン酸塩ガラスの例としては、リン酸塩ガラスは他成分に対する溶解度も大きく,低い溶融温度をもつため好ましく用いられる。具体例として、P:NaO: CaO
: BaO: Al:B=30〜40:10〜20:10〜20:10〜20:2〜8:1〜5のガラス組成物を挙げることができる。
アルミナの添加は化学的耐久性向上に効果的だが,低融点性にマイナスに影響する場合がある。リン酸塩ガラスをベースとして、SnO が加えられ、更に通常のガラス形成酸
化物であるBまたはSiO が添加される場合もある。P−SnO 系ガラス組成物、P−SnO−B 系ガラス組成物、P−SnO−SiO 系ガラス組成物を挙げることができる。 その他、CuO−P−RO系ガラス組成物(但し、Rは、Zn、Ba、Ca、Mg、Sr、Sn、Ni、Fe、Mnのいずれかを示す。)が挙げられる。その他、P−ZnO−SnO−RO−RO(但し、ROは、アルカリ金属酸化物、ROは、アルカリ土類金属酸化物を示す。)、SrO−ZnO−P、10SrO−50ZnO−40Pのガラス組成物が挙げられる。
【0050】
アルカリ・ホウケイ酸塩ガラスの例としては、RO−RO−B−SiO
ガラス組成物(但し、ROは、アルカリ金属酸化物、ROは、アルカリ土類金属酸化物を示す。)が挙げられる。具体的には、B−SiO−Al−ZrO系ガラス組成物、SiO−B−ZnO−RO−RO系ガラス組成物(但し、ROは、アルカリ金属酸化物、ROは、アルカリ土類金属酸化物を示す。)、SiO−B−Al−RO−RO 系ガラス組成物(但し、ROは、アルカリ金属酸化物、ROは、アルカリ土類金属酸化物を示す。)などが挙げられる。
【0051】
また、第二の本発明の被覆蛍光体粒子においては、前記ガラス組成物が形成する被覆層の膜厚が0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。被覆層の膜厚が大きすぎると、蛍光体の発光強度が低下する。小さすぎると耐湿性、ガスバリヤ性が不十分となる。被覆層の膜厚は、以下の(i)〜(iii)のいずれかの方法により測定することができる。
(i)走査型電子顕微鏡(SEM)で蛍光体粒子10個を任意に選択し、その膜厚を目視により測定し、平均値を求める。
(ii)SEM−EDX(エネルギー分散型X線分析)EPMA(エレクトロン・プローブ、マイクロ・アナリシス)、またはSEMとCL(電子線励起による発光)の組み合わせなどを用いて、任意に選択した蛍光体粒子10個の断面の元素分析を行い、得られる膜厚を測定し、平均値を求める。
(iii)被覆処理前後の中央粒径D50の差を求め、これを膜厚とする。但し、本発明の
被覆処理において凝集する蛍光体粒子の膜厚を測定する場合は、凝集を超音波等でほぐした後、測定するか、前記(i)又は(ii)を採用する。
本発明の被覆蛍光体粒子においては、前記ガラス組成物が形成する被覆層が連続膜であることが好ましい。ここで、連続膜とは、被覆蛍光体粒子を走査型電子顕微鏡で観察した際に、被覆層が蛍光体周囲を連続して被覆しており、実質的に断裂されていない状態をいう。
【0052】
[2−2]被覆性が良好な蛍光体粒子とガラス組成物の組み合わせ
前述の[1−1]および[1−2]に記載の蛍光体粒子の中でも、[3]で述する被覆蛍光体粒子の製造方法により被覆性が良好なものとしては、窒化物および/または酸化物蛍光体粒子が挙げられる。
被覆性が良好であるためには、蛍光体粒子とガラス組成物の組み合わせが重要である。即ち、蛍光体表面とガラス組成物の溶融液との濡れ性が良好であるのが好ましい。具体的には、以下の性質を有していることが好ましい。
(i)溶融状態におけるガラス組成物の蛍光体粒子平面上での接触角が、通常140度以下、好ましくは130度以下、さらに好ましくは120度以下であり、通常2度以上、好ましくは5度以上、さらに好ましくは10度以上であること。
(ii)ガラス組成物成分と蛍光体粒子の表面で化学反応が起こること。
(iii)上記化学反応の反応温度が蛍光体粒子の劣化に影響しないこと。即ち、反応温度が通常800℃以下、好ましくは600℃以下であること。
【0053】
接触角の測定は公知の方法が採用できる。接触角の計測にあたっては、被覆温度、被服雰囲気での蛍光体表面の平均的な接触角を計測することが好ましい。例えば、英弘精機社製「OCA 15 plus」などを用い、温度制御機構「TEC700」などにより加熱状態での動的接触角を計測し、前進角の平均値をもって蛍光体表面に対するガラス融液の接触角とすることが出来る。
【0054】
このような被覆性が良好な蛍光体粒子とガラス組成物の組み合わせとしては、例えば、以下の組み合わせを挙げることができる。
【0055】
【表1】

【0056】
また、蛍光体粒子とガラス組成物の親和性との観点から、蛍光体粒子の水中(pH5.6)でのゼータ電位(mV)は、通常−5以下、好ましくは−10以下、さらに好ましくは−20以下、特に好ましくは−21以下である。 一方、ガラス組成物の水中(pH5.6)でのゼータ電位(mV)は、通常−50以下、好ましくは−60以下、さらに好ましくは−50以下である。ガラス組成物のゼータ電位が大きすぎると蛍光体粒子との親和性が低くなる場合がある。
【0057】
[3]被覆蛍光体粒子の製造方法
本発明の被覆蛍光体粒子の製造方法としては、例えば、(A)蛍光体粒子、および(B)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択された1以上を含有するガラス組成物を混合し、前記(B)ガラス組成物の屈伏点以上で加熱する方法を挙げることができる。
[3−1](A)蛍光体粒子と(B)ガラス組成物の混合する工程
本発明に使用する(A)蛍光体の粒径は[1−4]に記載の通りであるが、(B)ガラス組成物の粒径に比較して大きいことが望ましい。本発明に使用するガラス組成物の形状について制限はないが通常、粒状、繊維状のものが使用できる。例えばガラス組成物として粒状のものを用いる場合は、中央粒径(D50)で、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、通常20μm以下、好ましくは10μm以下である。ガラス組成物を粒状あるいは粉末状に粉砕する方法に特に制限は無いが、乳鉢による粉砕、メディアを用いる振動ミル、ボールミル、ジェットミル、遊星ボールミルなどを用いることが出来る。
【0058】
蛍光体粒子を被覆する場合、被覆厚みは耐湿性を保ちながら、できるだけ薄いことが膜による光吸収を避ける意味で好ましい。この点から被覆層の膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。被覆層の膜厚は[2−1]で記載と同様の方法により測定できる。
以上の点から配合すべきガラス組成物の量は、蛍光体粒子の比表面積を求め、ガラス組成物の密度を用いて連続皮膜が形成されたときの所定の膜厚となる量として決定できる。
【0059】
蛍光体粒子とガラス組成物の混合法に制限はないが蛍光体が水分に対し劣化する場合には湿式混合法は避け、乾式混合法を採用することが好ましい。乾式混合法の例としては、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕、振動ミル、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機を用いる粉砕、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、を用いる粉砕、およびこれらを組み合わせた乾式混合法等を挙げることができる。組み合わせた乾式混合法としては、乾式粉砕機を用いる粉砕および乳鉢と乳棒を用いる混合の組み合わせ、混合機を用いる粉砕および乳鉢と乳棒を用いる混合の組み合わせ等を挙げることができる。
【0060】
混合に際し、蛍光体粒子の表面電荷とガラス組成物の表面電荷は、特に制約は無いが、同電荷であっても、少なくとも一方が小さい値であるか、ともに大きくない値であることが好ましい。互いに異なることがさらに好ましい。両者の電荷が異なると、静電引力により蛍光体粒子の表面にガラス組成物が容易に付着し、後段の加熱処理の際、良好な連続皮膜を得ることができる。粉体の表面電荷はブローオフ帯電測定器で容易に測定することができる。電荷が同一である場合には、必要に応じて蛍光体粒子を表面処理することにより電荷を変更する方法等を用いればよい。
【0061】
[3−2]加熱工程
(A)蛍光体粒子と(B)ガラス組成物の混合後の加熱は、(B)ガラス組成物の屈伏点以上で加熱する方法であれば特に限定はない。以下に、加熱方法の一例を挙げる。
蛍光体粒子とガラス組成物の混合物を反応性の低いルツボまたはトレーに充填する。容器材質に特に制限は無いが、石英、アルミナ、黒鉛、ステンレス、白金、モリブデン、タングステン、窒化ケイ素などを用いることが出来る。耐熱衝撃性、蛍光体への汚染の少なさ、価格の点で、石英が好ましい。加熱処理による被覆方法に特に制限は無いが、ガラスによる蛍光体粒子同士の付着を防ぐためには流動状態で加熱する方法を用いても良い。成膜性を向上させるため、ガラス粒子を予め蛍光体表面に均一に付着させても良い。具体的には、分散媒に分散させたガラス粒子と蛍光体粒子からなるスラリーを噴霧乾燥する方法、静電付着を利用して蛍光体表面にガラス粒子を付着させる方法、衝撃力による打ち込み、メカノケミカル反応を利用して蛍光体粒子表面にガラス粒子を固定化させる方法などが挙げられる。
【0062】
また、蛍光体とガラス粉末を加熱処理する際に、ガラス同士の付着を防ぐため、例えば、流動状態、転動状態で加熱しても良い。
加熱雰囲気は蛍光体粒子の種類によって異なる。大気中で加熱すると劣化する蛍光体にあっては劣化の起こらない雰囲気を採用することが好ましい。
加熱による劣化の原因としては結晶母体の変化及びまたは発光中心イオンの価数変化が挙げられる。発光中心イオンの価数が変化しない雰囲気であれば特に制限は無いが、Eu2+やCe3+など、最高酸化数より低い価数の発行中心イオンを含有する蛍光体に関しては、不活性雰囲気で加熱することが好ましい。雰囲気中の酸素濃度は通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。通常使用する蛍光体の製造時の雰囲気下で加熱してもよい。また、加熱雰囲気が蛍光体粒子とガラス組成物との親和性に影響を与える場合もあるため、被覆状態が良好となる加熱雰囲気を選択する。加熱雰囲気以外にも、ガラス粉末、蛍光体粉末の含水率などは被覆状態に影響を与える可能性があるため、乾燥して用いるなど適切な前処理を行うことが好ましい。
【0063】
ガラスで蛍光体表面を被覆し、緻密な膜を形成するため、加熱温度は使用するガラス組成の屈伏点以上で加熱することが必要である。
屈伏点とは伸びが停止し、収縮が始まる温度を言う。
屈伏点の測定方法は下記の通りである。
炉内温度精度が±1℃の示差熱膨張計を用いて、毎分5℃の昇温速度で試料(φ4×20mm)を加熱し、温度とガラスの伸びを測定して求める。
加熱時間は皮膜が形成されるに要する物質移動の時間であり、所定温度に到達後一定時間保持する。通常1分以上、好ましくは5分以上、通常2時間以下、好ましくは0.5時間以下である。
【0064】
[4]被覆蛍光体粒子の特性
本発明の被覆蛍光体粒子は、以下の特性を有する。以下の特性により、本発明の被覆蛍光体粒子は、従来の皮膜形成方法と比較して、ガラスによる連続皮膜がより十分に形成され、ガスバリヤ性が高いものと考えられる。
【0065】
[4−1]輝度、色度
本発明の被覆蛍光体粒子に形成される被覆層は、光透過性が高く、UV-可視光領域で透
明なので、被覆前の蛍光体粒子の輝度、色度はほとんど影響を受けない。具体的には、本発明の被覆前の蛍光体粒子に対する被覆蛍光体粒子の輝度維持率(被覆蛍光体粒子の輝度/被覆前の蛍光体粒子の輝度×100)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。色度の変化は、CIE座標の値で±0.05以下である。
【0066】
[4−2]粒度分布
本発明の被覆蛍光体粒子に形成される被覆層は、上述のように連続した薄膜であり、被覆処理前の蛍光体の粒度分布はほとんど影響を受けない。
[4−3]耐湿性
本発明の被覆蛍光体粒子は、ガスバリヤ性が高く、下記の高温高湿劣化試験で重量増加が認められない。
[4−3−A]高温高湿劣化試験
(i)試料となる被覆蛍光体粒子の重量を測定する。
(ii)前記被覆蛍光体粒子を雰囲気温度85℃/相対温度85%に保たれたチャンバーに静置する。
(iii)200時間後及び400時間後における前記被覆蛍光体粒子の重量をそれぞれ
測定し下記式によりそれぞれの重量増加率を算出する。
重量増加率(%)={(iii)における測定重量}/{(i)における測定重量}×100
本発明の被覆蛍光体粒子が上記高温高湿劣化試験で重量増加が認められない理由は次のように推察される。即ち、従来の被覆層構造では、水蒸気の透過を防ぐことができないのに対し、本発明の被覆層構造は水蒸気の侵入する空隙が存在しない。
【0067】
[5]蛍光体含有組成物
本発明の蛍光体含有組成物は、前記の本発明の被覆蛍光体粒子、液状媒体、およびその他任意成分を配合することにより得ることが出来る。以下、蛍光体含有組成物について説明する。
[5−1]液状媒体
使用される液状媒体としては無機系材料および/または有機系材料が使用できる。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
有機系材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。特に照明など大出力の発光装置が必要な場合、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用するのが好ましい。
【0068】
珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
【0069】
[5−1−1]シリコーン系材料
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば一般組成式で表される化合物及び/またはそれらの混合物が挙げられる。
(RSiO1/2M(RSiO2/2D(RSiO3/2T(SiO4/2Q
ここで、RからRは同じであっても異なってもよく、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。またM、D、T及びQは0から1未満であり、M+D+T+Q=1を
満足する数である。
シリコーン系材料を半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
【0070】
[5−1−2]シリコーン系材料の種類
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
【0071】
[5−1−2−1]付加型シリコーン系材料
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては、信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
【0072】
[5−1−2−2]縮合型シリコーン系材料
縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。
具体的には、下記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0073】
m+n1m-1 (1)
【0074】
(式(1)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を
表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
【0075】
(Ms+s−t−1 (2)
【0076】
(式(2)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を
表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし
、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
また、硬化触媒としては、例えば金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zrのいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましい。
【0077】
縮合型シリコーン系材料は公知のものを使用することができ、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、および国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
【0078】
シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが欠点とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〈1〉〜〈3〉のうち1つ以上を有するシリコーン系材料が好ましい。
〈1〉ケイ素含有率が20重量%以上である。
〈2〉後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
【0079】
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〈3〉シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
【0080】
本発明においては、上記の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、特徴〈1〉を有するシリコーン系材料が好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴〈1〉及び〈2〉を有するシリコーン系材料が好ましい。特に好ましくは、上記の特徴〈1〉〜〈3〉を全て有するシリコーン系材料が好ましい。また、上記の特徴を有するシリコーン系材料の中でも、縮合型シリコーン系材料が耐熱性、耐光性等の観点より好ましい。
【0081】
[5−1−3]液状媒体の含有量
液状媒体は、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。
液状媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で蛍光体を添加する必要がある。少なすぎると流動性がなく取り扱いにくい。
液状媒体は、前述の様に、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液状媒体は単独で用いてもよいが、複数を混合してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、通常、バインダーに対して25重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0082】
[5−2]その他の成分
本発明の蛍光体含有組成物は、上記成分の他に、本発明の被覆蛍光体粒子以外の蛍光体、フュームドシリカなどのチキソトロープ剤、色素、酸化防止剤、安定化剤(燐系加工安定化剤などの加工安定化剤、酸化安定化剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤などの耐光性安定化剤など)、光拡散材、フィラーなど、当該分野で公知の添加物のいずれをも用いることができる。
【0083】
[5−3]蛍光体含有組成物の製造方法
本発明の蛍光体含有組成物の製造法には特に制限はなく、本発明の被覆蛍光体粒子および必要に応じて添加するその他成分が液状媒体中に均一に分散する方法であれば良い。
例えば、チキソトロープ剤の配合量は液状媒体100重量部に対して通常0.1重量部以上、好ましくは0.3重量部以上である。また、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下、更に好ましくは5重量部以下である。チキソトロープ剤の配合量が少なすぎると、期待する蛍光体の沈降抑制効果が十分でなく、多すぎると分散が困難となる。
本発明の被覆蛍光体粒子を含む蛍光体の配合量は通常、液状媒体100重量部に対して通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上である。また、通常100重量部以下、好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。
【0084】
液状媒体としてシリコーン樹脂を使用する場合には、例えばシリコーン樹脂、本発明の被覆蛍光体粒子を含む蛍光体、チキソトロープ剤、ならびに架橋剤、硬化触媒、増量材、およびその他の添加剤を配合し、ミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、ニーダー等で混合する等、従来公知の方法で製造することができる。この場合、前記成分を全て混合して、1液の形態として液状シリコーン樹脂組成物を製造しても良いが、
(i)シリコーン樹脂と蛍光体及び増量材を主成分とするシリコーン樹脂液と、(ii)架橋剤と硬化触媒を主成分とする架橋剤液の2液を調製しておき、使用直前にシリコーン樹脂液と架橋剤液を混合して液状シリコーン樹脂組成物を製造しても良い。
【0085】
[5−4]蛍光体含有組成物の物性
[5−4−1]粘度
本発明の蛍光体含有組成物の粘度は、通常500mPa・s以上、好ましくは1000mPa・s以上、さらに好ましくは2000mPa・s以上であり、通常15000mPa・s以下、10000mPa・s以下、好ましくは8000mPa・s以下である。粘度が高すぎると注入時に配管の閉塞などトラブルの原因となりやすく、また気泡が抜けにくい、更には半導体素子のリードワイヤーの断線が起こりやすいなどの悪影響をもたらす。一方、粘度が低すぎると蛍光体粒子の沈降が起こるので好ましくない。
【0086】
なお本発明の蛍光体含有組成物は、発光装置内へ十分に充填(注入)させ得ること、また充填後液状媒体が硬化する前に蛍光体が沈降しないために、チキソトロープ性を示すものが好ましい。チキソトロープ性を示すことは、ローター回転数を1rpmおよび5rpmとした場合のB型粘度計における粘度が1rpmの粘度が5rpmの粘度より大きいことで確認することができる。
【0087】
[6]発光装置
本発明の発光装置は、通常[5]に記載の蛍光体含有組成物を用いて、公知の方法により形成される。以下、本発明の発光装置について説明する。なお、以下、本発明の被覆蛍光体粒子、およびそれ以外の蛍光体を、単に「蛍光体」と総称して説明する。
[6−1]光源
本発明の発光装置における光源は、前記蛍光体を励起する光を発光するものである。光源の発光波長は、蛍光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の蛍光体を使用することができる。通常は、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する蛍光体が使用され、具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下のピーク発光波長を有する発光体が使用される。この光源としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光ダイオード(LED)や半導体レーザーダイオード(LD)等が使用できる。
【0088】
中でも、光源としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、同じ電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlxGayN発光層、GaN発光層、又はInxGayN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInxGayN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InxGayN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0089】
なお、上記においてx+yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlxGayN層、GaN層、又はInxGayN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0090】
[6−2]蛍光体の選択
本発明の発光装置において、本発明の被覆蛍光体粒子以外の蛍光体の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、1種以上の蛍光体を適切に組み合わせればよい。光源として青色発光素子を使用する場合は蛍光体として青色の補色関係にある黄色蛍光体を、より演色性の高い白色を得るには赤、及び緑色蛍光体を使用することが好ましい。近紫外光を発する半導体発光素子を用いる場合は赤、緑、青の3色の蛍光体を使用するのが好ましい。
【0091】
具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、光源と、蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、以下の(i)〜(iii)の組み合わせ
が挙げられる。
(i)光源として青色発光体(青色LED等)を使用し、蛍光体として赤色蛍光体および緑色蛍光体を使用する。
(ii)光源として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、蛍光体として赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を併用する。
(iii)光源として青色発光体(青色LED等)を使用し、橙色蛍光体および緑色蛍光体
を使用する。
【0092】
[6−3]発光装置の構成
本発明の発光装置は、上述の光源および本発明の蛍光体含有組成物を備えていればよく、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の光源および蛍光体含有組成物を配置してなる。この際、光源の発光によって蛍光体が励起されて発光を生じ、且つ、この光源の発光および/または蛍光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、赤色蛍光体は、緑色蛍光体、青色蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、赤色蛍光体を含有する層の上に青色蛍光体と緑色蛍光体を含有する層が積層されていてもよい。
【0093】
[6−4]発光装置の実施形態
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0094】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の発光装置1は、フレーム2と、光源である青色LED3と、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し、それとは異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4からなる。
フレーム2は、青色LED3、蛍光体含有部4を保持するための金属または樹脂製の基部である。フレーム2の上面には、図1中上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)2Aが形成されている。これにより、フレーム2はカップ形状となっているため、発光装置1から放出される光に指向性をもたせることができ、放出する光を有効に利用できるようになっている。更に、フレーム2の凹部2A内面は、銀などの金属メッキにより、可視光域全般の光の反射率を高められており、これにより、フレーム2の凹部2A内面に当たった光も、発光装置1から所定方向に向けて放出できるようになっている。
【0095】
フレーム2の凹部2Aの底部には、光源として青色LED3が設置されている。青色LED3は、電力を供給されることにより青色の光を発するLEDである。この青色LED3から発せられた青色光の一部は、蛍光体含有部4内の発光物質(蛍光体)に励起光として吸収され、また別の一部は、発光装置1から所定方向に向けて放出されるようになっている。
【0096】
また、青色LED3は前記のようにフレーム2の凹部2Aの底部に設置されているが、ここではフレーム2と青色LED3との間は接着剤5によって接着され、これにより、青色LED3はフレーム2に設置されている。
更に、フレーム2には、青色LED3に電力を供給するための金製のワイヤ6が取り付けられている。つまり、青色LED3の上面に設けられた電極(図示省略)とは、ワイヤ6を用いてワイヤボンディングによって結線されていて、このワイヤ6を通電することによって青色LED3に電力が供給され、青色LED3が青色光を発するようになっている。なお、ワイヤ6は青色LED3の構造にあわせて1本又は複数本が取り付けられる。
【0097】
更に、フレーム2の凹部2Aには、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4が設けられている。蛍光体含有部4は、蛍光体と透明樹脂とで形成されている。蛍光体は、青色LED3が発する青色光により励起されて、青色光よりも長波長の光である光を発する物質である。蛍光体含有部4を構成する蛍光体は一種類であっても良いし、複数からなる混合物であってもよく、青色LED3の発する光と蛍光体発光部4の発する光の総和が所望の色になるように選べばよい。色は白色だけでなく、黄色、オレンジ、ピンク、紫、青緑等であっても良い。また、これらの色と白色との間の中間的な色であっても良い。また、透明樹脂は蛍光体含有部4の封止材料であり、ここでは、上述の封止材料を用いている。
【0098】
モールド部7は、青色LED3、蛍光体含有部4、ワイヤ6などを外部から保護するとともに、配光特性を制御するためのレンズとしての機能を持つ。モールド部7には主にエポキシ樹脂を用いることができる。
図2は、図1に示す発光装置1を組み込んだ面発光照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。図2において、8は面発光照明装置、9は拡散板、10は保持ケースである。
【0099】
この面発光照明装置8は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース10の底面に、多数の発光装置1を、その外側に発光装置1の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置したものである。発光の均一化のために、保持ケース10の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板9を固定している。
そして、面発光照明装置8を駆動して、発光装置1の青色LED3に電圧を印加することにより青色光等を発光させる。その発光の一部を、蛍光体含有部4において波長変換材料である本発明の蛍光体と必要に応じて添加した別の蛍光体が吸収し、より長波長の光に変換し、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により、高輝度の発光が得られる。この光が拡散板9を透過して、図面上方に出射され、保持ケース10の拡散板9面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0100】
また、本発明の発光装置において、特に励起光源として面発光型のものを使用する場合、蛍光体含有部を膜状とするのが好ましい。即ち、面発光型の発光体からの光は断面積が十分大きいので、蛍光体含有部をその断面の方向に膜状とすると、第1の発光体からの蛍光体への照射断面積が蛍光体単位量あたり大きくなるので、蛍光体からの発光の強度をより大きくすることができる。
【0101】
また、光源として面発光型のものを使用し、蛍光体含有部として膜状のものを用いる場合、光源の発光面に、直接膜状の蛍光体含有部を接触させた形状とするのが好ましい。ここでいう接触とは、光源と蛍光体含有部とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、光源からの光が蛍光体含有部の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0102】
図3は、このように、光源として面発光型のものを用い、蛍光体含有部として膜状のものを適用した発光装置の一例を示す模式的斜視図である。図3中、11は、前記蛍光体を有する膜状の蛍光体含有部、12は光源としての面発光型GaN系LD、13は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、光源12のLDと蛍光体含有部11とそれぞれ別個につくっておいてそれらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、光源12の発光面上に蛍光体含有部11を製膜(成型)させても良い。これらの結果、光源12と第2の蛍光体含有部11とを接触した状態とすることができる。
【0103】
[7]発光装置の用途
本発明の発光装置は使用する蛍光体の種類、量により各色の発光が可能であるが照明用途などは、白色光を発するもの発光装置が有用である。本発明の発光装置は、発光効率が通常20lm/W以上、好ましくは22lm/W以上、より好ましくは25lm/W以上であり、特に好ましくは28lm/W以上であり、平均演色評価指数Raが80以上、好ましくは85以上、より好ましくは88以上である。
【0104】
なお、上記平均演色評価指数Raは、JIS Z 8726により算出される。
また、発光効率は、量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積により以下のように算出する。
まず、測定対象となる蛍光体サンプル(例えば、粉末状など)を、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などがついた分光光度計に取り付ける。この分光光度計としては、例えば大塚電子株式会社製「MCPD2000」等が挙げられる。積分球などを用いるのは、サンプルで反射したフォトンおよびサンプルからフォトルミネッセンスで放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。
【0105】
この分光光度計に蛍光体を励起する発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が400nmとなるようにフィルター等を用いて調整がなされる。この400nmの波長ピークを持つように調整された発光源からの光を、測定しようとしているサンプルに照射し、その発光スペクトルを測定する。この測定スペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下、単に「励起光」と記す。)でフォトルミネッセンスによりサンプルから放出されたフォトンの他に、サンプルで反射された励起光の分のフォトンの寄与が重なっている。
【0106】
量子吸収効率αqは、サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
まず、後者の励起光の全フォトン数Nを、次のようにして求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere社製「Spectralon」(400nmの励起光に対して98%の反射率を持つ。)等の反射板を、測定対象として該分光光度計に取り付け、反射スペクトルIref(λ)を測定する。ここで
この反射スペクトルIref(λ)から下記(式1)で求められた数値は、Nに比例する。
【0107】
【数1】

【0108】
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったものでよ
い。 前者のサンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式2)で求
めら れる量に比例する。
【0109】
【数2】

【0110】
ここで、I(λ)は,吸収効率αqを求めようとしている対象サンプルを取り付けたと
きの、反射スペクトルである。(式2)の積分範囲は(式1)で定めた積分範囲と同じにする。このように積分範囲を限定することで、(式2)の第二項は,対象サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、対象サンプルから生ずる全フォトンのうち励起光によるフォトルミネッセンスで生じたフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式1)および(式2)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。
【0111】
以上より、αq=Nabs/N=(式2)/(式1)と求められる。
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、フォトルミネッセンスによって生じたフォトンの数NPLをサンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。 ここで、NPLは、下記(式3)で求められる量に比例する。
【0112】
∫λ・I(λ)dλ (式3)
【0113】
この時、積分区間は、サンプルからフォトルミネッセンスによって生じたフォトンが持つ波長域に限定する。サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためで
ある。具体的に(式3)の積分の下限は、(式1)の積分の上端を取り、フォトルミネッセンス由来のスペクトルを含むのに好適な範囲を上端とする。
【0114】
以上により、ηi=(式3)/(式2)と求められる。
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、αqを求めた場合と同様である。
そして、上記のようにして求めた量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積をとることで、本発明で定義される発光効率を求める。
【0115】
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。また、単独で、又は複数個を組み合わせて用いても良い。具体的には、例えば、照明ランプ、液晶パネル用等のバックライト、超薄型照明等の種々の照明装置、画像表示装置の光源として使用することができる。なお、本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、カラーフィルターと併用してもよい。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明の説明を目的とするものであって、本発明をこれらの態様に限定することを意図したものではない。
[1]赤色蛍光体Sr0.792Ca0.2AlSiN:Eu0.008の評価
[1−1]実施例1
赤色蛍光体粒子{化学組成Sr0.792Ca0.2AlSiN:Eu0.008(以下、「SCASN」と称することがある。)、D50=8μm}1重量部に対しガラス組成物(住田光学ガラス社製「PG325」、D50=8μm、組成P:40重量%、LiO:5重量%、LiF:2重量%、NaF:10重量%、KO:3重量%、AlF3:10重量%、ZnO:15重量%、SrO:10重量%、CaO:5重量%、屈伏点325℃)、0.53重量部を秤量し、両者をガラス容器を使用して振動を加えて十分混合した。得られた混合物を石英容器に充填し、電気炉を使用して酸素濃度が0.1ppm以下、水分が0.1ppm以下である窒素雰囲気中で、400℃に予熱した電気炉に石英容器を入れ、10分間加熱し、使用したガラス組成物のガラス転移温度である288℃まで30分かけて冷却し、288℃で1時間保持した。その後、室温まで冷却して粉末状である被覆蛍光体粒子を得た。被覆蛍光体粒子について、[1−1−1]および[1−1−2]に記載の方法により、その発行スペクトルおよび輝度を測定した。また、得られた被覆蛍光体粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、蛍光体粒子がガラス組成物層で連続被覆されていた。被覆層の膜厚は2μm程度であった。蛍光体粒子のないガラス組成物単独の粒子は殆ど観察されなかった。被覆蛍光体粒子の粒径分布を測定したところ、やはり粒子の凝集は確認されなかった。被覆の緻密さを評価するため、250℃で30分高純度窒素流通下で加熱した後、N吸着法によるBET表面積測定を行った。また、ガスバリア性を試験するため、雰囲気温度85℃/相対湿度85%に保たれたチャンバーに蛍光体粉末を暴露した。結果を表1に示す。
[1−1−1]発光スペクトル
室温(25℃)において、励起光源として150Wキセノンランプを、すべく取る測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて測定した。
具体的には、励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長450nm以上475nm以下の励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。
[1−1−2]輝度
相対輝度は、JIS Z8724に準拠して算出したXYZ表色系における刺激値Yから、化成オプトニクス株式会社製の青色蛍光体(Ba,Eu)MgAl10017(製品番号:LP−B4)の刺激値Yの値を100%とした相対値(以下、単に「輝度」と称する場合がある。)として算出した。
なお、輝度は、励起青色光をカットして測定した。
【0117】
得られた被覆蛍光体粒子を用い、以下の手順により発光装置を作製した。
東洋電波社製SMD LEDパッケージ「TY−SMD1202B」にCREE社製LEDチップ「C460−EZ290」(発光波長461nm)をボンディングした。
信越化学工業社製シリコーン樹脂「SCR−1011」および硬化剤を100重量部:100重量部の割合で混合し、該混合物100重量部に赤色蛍光体0.8重量部を添加し、シンキー社製撹拌装置「あわとり練太郎AR−100」で3分間混練して蛍光体含有組成物とした。
【0118】
この組成物を上記LEDチップ付きパッケージの最上面まで充填し、雰囲気温度70℃で1時間、次いで雰囲気温度150℃で5時間加熱硬化させた。
得られた発光装置を、室温(約25℃)において、20mAで駆動し、CIE色度座標xを測定した。
次に、上記発光装置を雰囲気温度85℃、85%RHの高温高湿条件で20mA,100時間および250時間通電試験を行った後、同様にCIE色度座標xを測定した。
そして、上記発光装置の製造直後の色度座標xに対する高温高湿曝露100時間、および250時間経過後の色度座標xの比率(x維持率:%)を算出し、結果を表1に示した。
【0119】
[1−2]実施例2
ガラス組成物の配合量を1.06重量部とした以外は実施例1と同様にして、被覆蛍光体粒子を製造し、比表面積測定およびx維持率以外の各評価を行った。被覆層の膜厚は数μm程度であった。結果を表1に示す。
[1−3]比較例1
SCASNをそのまま用いた以外は実施例1と同様にして、被膜形状観察以外の各評価を行った。結果を表1に示す。
[1−4]比較例2
SCASN3gを50mlのフラスコに入れ、エタノール20mLを添加して、攪拌した。次に、キシダ化学社製、特級純度28%アンモニア水6.7gを添加し、マグネチックスターラーにて1分間攪拌した。次に、マグネチックスターラーで激しく撹拌しながらテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」と表記する)20mLを2回に分けて徐々に添加し、引き続きマグネチックスターラーにて90分間攪拌した。得られた溶液を3分間静置した後、スポイト等により上澄みを除去した。
【0120】
その後、エタノール30mL添加、1分間攪拌、3分間静置した。上澄み除去を、上澄み液が無色透明になるまで繰り返した。得られた沈降物を、真空乾燥器で150℃にて、2時間減圧乾燥し、表面処理蛍光体を得た。この表面処理蛍光体には、蛍光体の重量に対して12重量%の酸化珪素被膜が付着していた。その被膜厚さは100nm程度であった。
上記で得られた被覆蛍光体粒子について、x維持率以外は実施例1と同様の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
[1−5]比較例3
ソーダライムガラス(SiO 70重量%,Al 2重量%、NaO 13重
量%、CaO 10重量%、MgO 4重量%、並びに KOおよびFe、SO
などの微量成分(<1重量%)を含む)をアルミナ乳鉢を用いて粉砕し、中央粒径D50
=約8μmとした。ガラス転移点は730℃付近、屈伏点は700℃から750℃の領域にある。このガラス粉末を用い、被覆温度を750℃とし、ガラス転移温度付近での保持を行わなかった以外は実施例1と同様にガラス被覆蛍光体を製造し、比表面積測定、重量増加率およびx維持率以外の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
実施例1の比表面積は、被覆しない比較例1のSCASNの比表面積よりも小さかった。一方、テトラエチルオルト珪酸を用いて被覆した比較例2のSCASNの比表面積は、被覆しない比較例1のSCASNの比表面積よりも大きかった。これは、実施例1の被覆層が、SCASNの表面において緻密性が非常に高いことを示している。それに対して比較例2の被覆層は、微粒子が堆積された緻密性の比較的低い形状であることを示している。これは、走査型電子顕微鏡の観察結果によっても確認された。即ち、実施例1および2の被覆層は、ガラス組成物が十分に溶融された平滑な連続膜として観察されたのに対し、比較例2の従来法では、シリカ微粒子の集合体である被覆層構造が観察された。
【0124】
また、比較例2のSCASNは重量が増加しており、XRD測定の結果、炭酸ストロンチウムが確認された。これは、SCASNが高温高湿条件で加水分解し、大気中の二酸化炭素と反応して炭酸ストロンチウムが生成したものと推察される。それに対し、実施例1および2の被覆蛍光体粒子は少なくとも400時間まで重量増加が観察されず、本発明の被覆蛍光体のガラス被覆膜は水、二酸化炭素などに対して極めて高いガスバリア性を持つことが示された。さらに、前記発光装置にて高温高湿条件での信頼性評価を行ったところ、実施例1のSCASN被覆蛍光体粒子を用いた発光装置では、発光色の色ずれ(Cx値の変化)が少なくとも250時間までは全く観測されなかった。それに対し、被覆を行わない比較例1の場合は、250時間で2%のCx値の低下が観測された。
なお、比較例3では、十分な被覆層が形成されず、また、SCASNの輝度が低下した。輝度の低下は高温で被覆処理をしたことが原因と推測された。
【0125】
[2]緑色蛍光体Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiOの評価
[2−1]実施例3
緑色蛍光体粒子{Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO(以下、「BSS」と称することがある。)、D50=21μm}1重量部に対しガラス組成物(住田光学ガラス社製「PG325」)0.75重量部を用いた以外は実施例1と同様の処理を行い、被覆蛍光体粒子を得た。被覆層の膜厚は数μm程度であった。実施例1と同様の各評価を行った。
また、室温にて被覆蛍光体粉末0.1gを純水50gに分散後、1時間放置した後の電気伝導度は26.7μS/cmであった。結果を表2に示す。
【0126】
[2−2]実施例4
ガラス組成物(住田光学ガラス社製「K−PG325」)1重量部を用いた以外は実施例3と同様の処理を行い、各評価を行った。被覆層の膜厚は数μm程度であった。結果を表2に示す。
[2−3]比較例4
BSSをそのまま用いた以外は実施例3と同様にして、被膜形状観察以外の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
[2−3]比較例5
500mLフラスコに東京化成社製、純度95%以上のTEOS50g およびキシダ化学社製、特級純度99.5%エタノール224g を入れて均一に混合して金属アルコキシド溶液を調製した。
ジャケット付きの1Lセパラブルフラスコにエタノール 310g 、キシダ化学社製、特級純度28%アンモニア水 1 00g を入れて均一に混合した後、BSS粉末を50
g 投入して基体蛍光体含有溶液を調製した。
【0128】
セパラブルフラスコのジャケットには温度調節された冷却水を流して反応溶液の温度を5℃で一定に保ち、BSS粉末が沈降しないように、モーター付きの撹拌羽根で基体蛍光体含有溶液を激しく撹拌してBSS粉末を舞い上げながら、そこに金属アルコキシド溶液を定量ポンプで約4時間かけて滴下した。
金属アルコキシド溶液の滴下が終了した後、反応溶液を静置して緑色蛍光体が沈降してから、シリカ微粒子で白濁した液相をデカンテーションで除去した。その後500mLのエタノールを加え、軽く撹拌した後静置して、白濁の残る液層をデカンテーションで除去した。このエタノール洗浄を、液層が無色透明になるまで4回繰り返し、セパラブルフラスコごと50℃、30分間の減圧乾燥を行い、その後150℃、2時間の減圧乾燥を行い、シリカ付着率24.0重量%で表面シリカコートされたBSS蛍光体粉末を得た。被膜厚さは150〜200nm程度であった。
上記で得られた被覆蛍光体粒子について、実施例3と同様の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
[2−4]比較例6
比較例3で得られたガラス粉末を用い、被覆温度を750℃とし、ガラス転移温度付近での保持を行わなかった以外は実施例3と同様にガラス被覆蛍光体を製造し、比表面積以外の各評価を行った。結果を表2に示す。
[2−5]比較例7
比較例3で得られたガラス粉末を用い、被覆温度を850℃とし、ガラス転移温度付近での保持を行わなかった以外は実施例3と同様にガラス被覆蛍光体を製造し、比表面積以外の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
【表3】

【0131】
緑色蛍光体BSSにおいても、総じて赤色蛍光体SCASNと同様の結果が得られた。また、実施例1、および2の電気伝導度が比較例4のそれよりも低いことから、BSS蛍光体由来のイオン溶出が抑制されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の被覆蛍光体粒子、および蛍光体含有組成物は、蛍光体が凝集することなく、ガスバリヤ性が良好で、半導体発光装置の耐久性を向上させることが出来る。また、本発明の発光装置、並びに前記発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置は、長期的に使用でき、耐久性に優れているため高性能である。
従って、本発明の被覆蛍光体粒子、被覆蛍光体粒子の製造方法、蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置は、当該各分野における産業上の利用可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の発光装置を用いた面発光照明装置の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の発光装置の他の実施の形態を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0134】
1 発光装置
2 フレーム
2A フレームの凹部
3 青色LED(第1の発光体)
4 蛍光体含有部(第2の発光体)
5 接着剤
6 ワイヤ
7 モールド部
8 面発光照明装置
9 拡散板
10 保持ケース
11 蛍光体含有部
12 光源
13 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)蛍光体粒子を(B)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択される1以上を含有するガラス組成物、で被覆した被覆蛍光体粒子であって、前記(B)ガラス組成物の屈伏点が700℃以下であることを特徴とする被覆蛍光体粒子。
【請求項2】
(A)蛍光体粒子を(B)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択される1以上を含有するガラス組成物、で被覆した被覆蛍光体粒子であって、前記(B)ガラス組成物が形成する被覆層の膜厚が、0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする被覆蛍光体粒子。
【請求項3】
前記(A)蛍光体粒子が、窒化物および/または酸化物である請求項1または2に記載の被覆蛍光体粒子。
【請求項4】
前記(B)ガラス組成物が、下記(I)および(II)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆蛍光体粒子。
(I)SiO、B、P、GeO、TeO、Al、Ga、およびBiから選択される1以上を含む、Zachariasenによるガラス形成酸化物
(II)アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、およびZnから選択される1以上を含む網目修飾酸化物
【請求項5】
前記(B)ガラス組成物における鉛の含有量が0.1重量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆蛍光体粒子。
【請求項6】
前記(B)ガラス組成物が形成する被覆層が連続膜である請求項1〜5のいずれか1項
に記載の被覆蛍光体粒子。
【請求項7】
(A)蛍光体粒子、および(B)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびZnから選択された1以上を含有するガラス組成物を混合し、前記(B)ガラス組成物の屈伏点以上で加熱することを特徴とする被覆蛍光体粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆蛍光体粒子を含むことを特徴とする蛍光体含有組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆蛍光体粒子を用いて形成された発光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項9に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−13186(P2009−13186A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172930(P2007−172930)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】