説明

被覆酸化マグネシウム粒子、その製造方法、放熱性フィラー及び樹脂組成物

【課題】耐酸性、耐水性を改善し、電気・電子分野における放熱性の材料として好適に使用することができる被覆酸化マグネシウム粒子を提供する。
【解決手段】酸化マグネシウム粒子、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有するスラリーを噴霧乾燥させる事により、エポキシ樹脂を硬化させて得られた表面被膜を有する酸化マグネシウム粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆酸化マグネシウム粒子、その製造方法、放熱性フィラー及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化マグネシウムは、耐熱性、熱伝導性、電気絶縁性に優れた化合物であり、ゴムの加硫促進剤、塗料・インキ用顔料、医薬品、様々な産業分野において広く使用されている。このような酸化マグネシウムの種々の用途の一つとして、放熱性フィラーが提案されている(特許文献1、2等)。
【0003】
このような放熱性フィラーとしては、現在、アルミナや窒化アルミニウム等が一般的に使用されている。しかしながら、アルミナはモース硬度が高く、放熱シート等の製造過程において、混練機の磨耗が激しいという欠点があった。また、窒化アルミニウムは充填性が悪く、樹脂中への高充填が難しいという欠点がある。また、窒化アルミニウムは高価であり、放熱部材が高価になってしまうという欠点もあった。よって、これらの原料とは異なる新たな放熱性フィラーが要求されている。
【0004】
一方、酸化マグネシウム粒子は、モース硬度が低く、比重が軽い化合物であるため、取扱いに優れるという利点もある。更に、電気抵抗値が高い素材であることから、電気・電子分野において使用することにも適している。しかしながら、酸化マグネシウムは耐水性・耐酸性に劣るものであるという欠点を有する。このため、水と接触するような使用条件においては、水酸化マグネシウムに変質してしまい、水に対する耐久性が得られないという問題がある。更に、吸水して水酸化マグネシウムになると、膨張してしまうという問題もある。
【0005】
他方、無機粉体の表面をエポキシ樹脂で被覆する方法としては特許文献3,4等が知られている。しかし、これらの文献に記載されたエポキシ樹脂による被覆は、水性媒体中に分散させて被覆したものである。このため、酸化マグネシウムに対してこのような処理を行うとすると、酸化マグネシウムが水和によって変質し、水酸化マグネシウムになってしまうという問題がある。したがって、このような方法によってエポキシ樹脂で被覆された酸化マグネシウムを得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−7215号公報
【特許文献2】国際公開第2011/007638号
【特許文献3】特開昭60−188419号公報
【特許文献4】特開平4−11624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐酸性、耐水性を改善し、電気・電子分野における放熱性の材料として好適に使用することができる被覆酸化マグネシウム粒子を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エポキシ樹脂を硬化させて得られた表面被膜を有することを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子である。
上記被覆酸化マグネシウム粒子は、(メジアン径)/(比表面積から求められる比表面積径)の比が2以下、Dmax/(比表面積から求められる比表面積径)が4以下であることが好ましい。
【0009】
上記表面被膜は、酸化マグネシウム粒子、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有するスラリーを噴霧乾燥させることによって得られたものであることが好ましい。
上記スラリーは、更に、ポリカルボン酸のアンモニウム塩を含むことが好ましい。
上記スラリーは、その分散媒が、水が90重量%以下、残部が水混和性溶媒であることが好ましい。
上記被覆酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム100重量部に対して、エポキシ樹脂の被覆量が0.01重量部以上、50重量部以下であることが好ましい。
上記被覆酸化マグネシウム粒子は、更に表面処理をすることによって得られたものであることが好ましい。
【0010】
本発明は、酸化マグネシウム粒子、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含むスラリーを調製する工程(1)、上記工程(1)によって得られたスラリーを噴霧乾燥する工程(2)を有することを特徴とする上述した被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法でもある。
【0011】
上記スラリーは、更に、ポリカルボン酸のアンモニウム塩を含むことが好ましい。
上記スラリーは、その分散媒が、水が90重量%以下、残りが水混和性溶媒であることが好ましい。
上記酸化マグネシウム粒子は、(メジアン径)/(比表面積から求められる比表面積径)の比が2以下、Dmax/(比表面積から求められる比表面積径)が4以下であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記被覆酸化マグネシウム粒子からなることを特徴とする放熱性フィラーでもある。
本発明は、上記被覆酸化マグネシウム粒子を含有することを特徴とする樹脂組成物でもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、耐酸性・耐水性が著しく改善されたものである。このような性質を有するものであることから、電気・電子分野において放熱性フィラーとして好適に使用することができる。更にこのような被覆酸化マグネシウム粒子は、これまで使用されてきたアルミナや窒化アルミニウム等の放熱性フィラーに比べても取り扱い性がよく、優れた性質を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1の被覆酸化マグネシウム粒子のIRチャートを示す図である。
【図2】本発明の実施例2の被覆酸化マグネシウム粒子のIRチャートを示す図である。
【図3】実施例及び比較例におけるプレッシャークッカー試験を行う前のサンプルの外観を示す写真である。
【図4】実施例及び比較例におけるプレッシャークッカー試験を行った後のサンプルの外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明はエポキシ樹脂を硬化させて得られた表面被膜を有することを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子である。ここで重要なのは、核となる無機粒子が酸化マグネシウムであることである。酸化マグネシウムは水と接触したときに、水酸化マグネシウムに変換されやすいという性質を有する。したがって、酸化マグネシウムを原料として特許文献3,4に記載されたような水系での長時間の反応による公知の方法で表面被覆したとしても、得られた粒子において水酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウムと酸化マグネシウムが混合した状態の粒子となってしまう。
【0016】
本発明においては、核となる粒子を酸化マグネシウムとし、これにエポキシ樹脂による強固な被覆を形成したものである。これによって、耐酸性・耐水性に優れ、放熱性フィラー等として好適に使用することができる被覆酸化マグネシウム粒子を得ることができるものである。
【0017】
なお、本発明の被覆酸化マグネシウム粒子において、核となる粒子が酸化マグネシウムであって水酸化マグネシウムでないことは、例えば、赤外分光法(IR法)による3700cm−1付近の吸収の有無等の公知の任意の分析方法によって確認することができる。
【0018】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、エポキシ樹脂を硬化させることによって得られた樹脂被覆を有するものである。エポキシ樹脂を硬化させて得られた樹脂被覆は、酸化マグネシウム粒子表面と強固に密着し、化学的にも安定性が高いものであることから、耐酸性・耐水性を顕著に向上させることができる。このため、例えば、放熱性フィラー等の目的で樹脂に添加して使用する場合にも、高い耐酸性・耐水性を維持することができるため、例えば、高温多湿および/または酸性ガス雰囲気下条件でも利用できるという利点を有する。
【0019】
本発明におけるエポキシ樹脂を硬化させることによって得られた樹脂被覆としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂を硬化剤及び必要に応じて併用する硬化助剤等と混合して反応させることで得られた樹脂被覆を挙げることができる。ここで使用することができるエポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂並びにエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル及びポリグリセリンポリグリシジルエーテル等の脂肪族型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0020】
上記エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「jER827」、「jER828」、「jER828EL」、「jER828XA」、「jER834」(以上、三菱化学社製)、「EPICLON840」、「EPICLON840−S」、「EPICLON850」、「EPICLON850−S」、「EPICLON850−CRP」、「EPICLON850−LC」(以上、DIC社製)、「エポトートYD−127」、「エポトートYD−128」(以上、東都化成社製)、「リカレジンBPO−20E」及び「リカレジンBEO−60E」(以上、新日本理化社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、「jER806」、「jER807」(以上、三菱化学製)、「EPICLON830」、「EPICLON830−S」、「EPICLON835」(以上、DIC社製)及び「エポトートYDF−170」(東都化成社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;「jER152」(三菱化学社製)等のノボラック型エポキシ樹脂、「jERYX8000」、「jERYX8034」(以上、三菱化学社製)、「エポトートST−3000」(東都化成社製)、「リカレジンHBE−100」(新日本理化社製)「デナコールEX−252」(以上、ナガセケムテックス社製)及び「SR−HBA」(阪元薬品工業社製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂並びに「YED205」、「YED216M」、「YED216D」(以上、三菱化学社製)、「エポトートYH−300」、「エポトートYH−301」、「エポトートYH−315」、「エポトートYH−324」、「エポトートYH−325」(以上、東都化成社製)、「デナコールEX−211」、「デナコールEX−212」、「デナコールEX−212L」、「デナコールEX−214L」、「デナコールEX−216L」、「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」、「デナコールEX−321」、「デナコールEX−321L」、「デナコールEX−411」、「デナコールEX−421」、「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」、「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」、「デナコールEX−810」、「デナコールEX−811」、「デナコールEX−850」、「デナコールEX−850L」、「デナコールEX−851」、「デナコールEX−821」、「デナコールEX−830」、「デナコールEX−832」、「デナコールEX−841」、「デナコールEX−861」「デナコールEX−911」、「デナコールEX−941」、「デナコールEX−920」、「デナコールEX−931」(以上、ナガセケムテックス社製)、「SR−NPG」、「SR−16H」、「SR−16HL」、「SR−TMP」、「SR−PG」、「SR−TPG」、「SR−4PG」、「SR−2EG」、「SR−8EG」、「SR−8EGS」、「SR−GLG」、「SR−DGE」、「SR−DGE」、「SR−4GL」、「SR−4GLS」及び「SR−SEP」(以上、阪元薬品工業社製)等の脂肪族型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
また、上記エポキシ樹脂は、形成される樹脂被覆の耐水性及び平滑性の観点から、エポキシ当量が110〜500の範囲内であることが好ましく、115〜350の範囲内であることがより好ましく、125〜250の範囲内であることがさらに好ましい。
【0022】
また、上記エポキシ樹脂は、形成される樹脂被覆の耐水性の観点から、数平均分子量が170〜2,800の範囲内であることが好ましく、200〜800の範囲内であることがより好ましく、300〜500の範囲内であることがさらに好ましい。
【0023】
上記硬化剤としては、特に限定されず、酸無水物、2以上のアミノ基を有するポリアミン化合物、フェノール樹脂、チオール化合物、シラノール化合物等、エポキシ樹脂の硬化剤として使用される公知の化合物を挙げることができる。
【0024】
上記酸無水物としては、具体的にはスチレン無水マレイン酸共重合体、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。これらのうち2種以上を併用して使用するものであってもよい。
【0025】
上記2以上のアミノ基を有するポリアミン化合物としては、具体的には、脂肪族アミン類、脂環式及び複素環式アミン類、芳香族アミン類、変性アミン類、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、アミド系化合物等を挙げることができる。
【0026】
脂肪族アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、アルキル−t−モノアミン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール等が挙げられる。
【0027】
脂環式及び複素環式アミン類としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N−アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[4.5.0]ウンデセン−7等が挙げられる。
【0028】
芳香族アミン類としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、N−ベンジルメチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、m−キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン、α−メチルベンジルメチルアミン等が挙げられる。
【0029】
変性アミン類としては、例えば、エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体等が挙げられる。
【0030】
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、3−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、5−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、3−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、5−エチルイミダゾール、1−n−プロピルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、2−n−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,3−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられる。
【0031】
イミダゾリン系化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等が挙げられる。
【0032】
アミド系化合物としては、例えば、ダイマー酸とポリアミンとの縮合により得られるポリアミド等が挙げられる。
【0033】
フェノール樹脂は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールS等の硫黄原子含有型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用しても差し支えない。
【0034】
チオール系化合物としては特に限定されず、例えば、一般式(1);
【化1】

(式中、R1、R2はそれぞれ独立に芳香族炭化水素基を示し、nは2〜4の整数である。)
で表わされるチオール化合物等を挙げることができる。
【0035】
シラノール化合物としては特に限定されず、下記一般式(2)であらわされるアルコキシシラン及び/又はエポキシシランカップリング剤を挙げることができる。
【0036】
【化2】

【0037】
(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又は少なくとも一部の水素原子がフッ素に置換されたフッ化アルキル基を表す。Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表す。nは、2、3又は4を表す。)
【0038】
上記一般式(2)であらわされるアルコキシシランとしては特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0039】
上記エポキシシランカップリング剤は、アルコキシシリル基とエポキシ基とを同一の分子中に有する化合物であり、このような構造を有する化合物であれば特に限定されず、市販のものを使用することができる。このような化合物として具体的には、下記一般式(3)
【0040】
【化3】

【0041】
(式中、nは1〜3のいずれかの整数である。mは、0〜2の整数であり、n+m=3である。R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素基を表わす。Rは、炭素数1〜5のアルキレン基を表わす。Xは、グリシジル基又はエポキシシクロヘキシル基を表わす)
で表わされる化合物等を挙げることができる。
【0042】
上記一般式(2)で表わされる化合物として具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。これらのシラノール化合物は、単独又は2種以上を併用して使用することができる。
【0043】
上記エポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は、(エポキシ樹脂のエポキシ当量)/(硬化剤の当量)=0.9〜1.1(当量比)であることが好ましい。上記範囲内のものとすることで、硬化不良に起因する物性低下が無いという観点から好ましい。
【0044】
必要に応じて使用することができる硬化助剤としては、特に限定されず、エポキシ樹脂の硬化において一般的に使用できるものを挙げることができる。例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ビス(
ジフェニルホスフィノ) メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等の有機ホスフィン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0045】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子の形状、大きさ等は特に限定されるものではなく、用途や目的に応じて任意のものとすることができる。例えば、(メジアン径)/(比表面積から求められる比表面積径(以下、SSA径と表す))の比が2以下であり、Dmax/(比表面積から求められる比表面積径)が4以下であることが好ましい。このような被覆酸化マグネシウム粒子は、放熱性フィラーとして特に好適に使用することができる点で好ましい。
【0046】
酸化マグネシウム粒子を放熱材として使用する場合、高い放熱性を得るためには、組成物中での粒子の充填率を高くすることが望まれている。高い充填率を得るためには、凝集状態や粒径分布をコントロールすることが重要である。このため、凝集状態や形状が高レベルでコントロールされた酸化マグネシウム粒子が要求されている。このような目的を達成する上では、上述したような特定のパラメータを満たす被覆酸化マグネシウム粒子を使用することが好ましい。
【0047】
更に、上述したような粒子径や形状がコントロールされた被覆酸化マグネシウム粒子は、粒子径が異なるものを複数組み合わせて使用すると、より高い充填率を得ることができ、優れた放熱性能を得ることができる点でも好ましい。
【0048】
上記(メジアン径)/(SSA径)の比は、粒子の凝集度を示す値である。メジアン径は、2次粒子径を反映した粒子径であり、SSA径は1次粒子径を反映した粒子径である。よって、上記比は、2次粒子を構成する1次粒子の数を示すパラメータとなる。本発明において使用する原料酸化マグネシウム粒子は、比較的少数の1次粒子が凝集して形成された2次粒子を有する酸化マグネシウム粒子である。このような粒子を使用して得られた被覆酸化マグネシウム粒子は、樹脂やオイル等への分散性に優れるという点で有利であり、特に放熱材料に適したものである。
本発明で使用する原料酸化マグネシウム粒子は、上記メジアン径/SSA径が2以下となることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることが更に好ましい。
【0049】
上記メジアン径は、D50ともいわれ、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径をいう。D50は、粒子径の分布を測定することによって得られる値であるが、本発明において、粒子径の分布はレーザー回折粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック MT 3300 EX)によって測定された値である。
【0050】
上記SSA径は、通常の方法によって測定されたBET比表面積から粒子が真球であるとの前提に基づいて求められた値である。
【0051】
上記原料酸化マグネシウム粒子は、Dmax/(SSA径)が4以下であることが好ましい。上記Dmax/(SSA径)は、1次粒子が多数、強固に凝集した粗大2次粒子の頻度を表わすパラメータであり、この値が4以下であると、粗大な凝集2次粒子が少なく、樹脂への分散性や加工性が優れるという点で好ましいものである。Dmax/(SSA径)は、3.9以下であることがより好ましく、3.8以下であることが更に好ましい。
【0052】
なお、本明細書において、Dmaxはレーザー回折粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック MT 3300 EX)によって測定された粒度分布図に示される、最大粒径の値を指すものである。
【0053】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、粒子径を特に限定するものではないが、メジアン径が0.1〜25μmであることが好ましい。すなわち、上述したような幅広い粒子径の範囲内のものが放熱材として使用可能であり、高い充填率を得る上で必要とされる任意の大きさのものとすることができる。
【0054】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、粒子径を特に限定するものではないが、SSA径が0.1〜15μmであることが好ましい。すなわち、上述したような幅広い粒子径の範囲内のものが放熱材として使用可能であり、高い充填率を得る上で必要とされる任意の大きさのものとすることができる。
【0055】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、粒子径を特に限定するものではないが、Dmaxが0.3〜50μmであることが好ましい。すなわち、上述したような幅広い粒子径の範囲内のものが放熱材として使用可能であり、高い充填率を得る上で必要とされる任意の大きさのものとすることができる。
【0056】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子の粒子形状は特に限定されず、針状、棒状、板状、球状等を挙げることができ、より球状に近い形状であることが好ましい。なお粒子の形状は走査型電子顕微鏡(JEOL製JSM840F)によって観察することができる。
【0057】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム100重量部に対して、エポキシ樹脂の被覆量が0.01重量部以上、50重量部以下であることが好ましい。0.01重量部未満であると、充分な耐酸性・耐水性を得ることができない点で好ましくない。50重量部を超えると、酸化マグネシウムが有する物性を充分に発揮できない点で好ましくない。上記被覆量は、0.02重量部以上であることがより好ましく、0.05重量部以上であることが更に好ましい。上記被覆量は、40重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることが更に好ましい。
【0058】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、エポキシ樹脂の被覆上に更に、表面処理を施したものであってもよい。表面処理を施すことによって、更に耐酸性・耐水性を向上させることができる点で好ましい。また、表面に疎水性・親水性等の性能を付与することによって、樹脂やグリース等との親和性を高めることができる点でも好ましい。
【0059】
上記表面処理は、疎水性を向上させるとともに、電気伝導度が低い状態を維持することが好ましい。すなわち、表面処理によって形成された被膜が高い導電性を有するものであると、これによって酸化マグネシウムの低い電気伝導度を維持することができないため、特に電気・電子材料用途において使用する場合は、更に表面処理を行うことが好ましい。
【0060】
上記表面処理は、上述した観点から上記一般式(2)であらわされるアルコキシシラン及び/又はエポキシシランカップリング剤によって行われたものであることが好ましい。このような化合物の具体的なものとしては、上記硬化剤としてのシラノール化合物として例示したものと同様のものを使用することができる。
【0061】
上記表面処理は、表面処理後の被覆酸化マグネシウム粒子に対して被覆層が0.1〜20質量%となる割合で形成することが好ましい。このような量の被覆とすることで、低い電気伝導度を維持したままで更に耐水性、耐酸性等を向上させることができる。
【0062】
上述した本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、その製造方法を特に限定されるものではないが、例えば、酸化マグネシウム粒子、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含むスラリーを調製する工程(1)、上記工程(1)によって得られたスラリーを噴霧乾燥する工程(2)を有する製造方法によって製造することができる。このような製造方法は、従来の粉体の樹脂被覆方法に比べると、酸化マグネシウム粒子が水と接触する時間が短くなるため、酸化マグネシウムの水酸化マグネシウムへの変換が抑制される点で好ましい方法である。
このような被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法も本発明の一つである。
【0063】
原料として使用する酸化マグネシウム粒子(以下、原料酸化マグネシウム粒子と記す)は、その形状や粒子径等を特に限定するものではなく、任意のものを使用することができる。但し、放熱性フィラーとしての使用に適した、(メジアン径)/(SSA径)の比が2以下、Dmax/(SSA径)が4以下である被覆酸化マグネシウム粒子を得るためには、原料酸化マグネシウム粒子は、(メジアン径)/(SSA径)の比が2以下、Dmax/(SSA径)が4以下であることが好ましい。
【0064】
このような原料酸化マグネシウム粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、国際公開2011/007638号に詳細に記載された方法によって製造することができる。このような方法によって得られた原料酸化マグネシウム粒子を必要に応じて粉砕、篩による分級等を行ってもよい。篩による分級方法としては、湿式分級、乾式分級等を挙げることができる。
【0065】
上記工程(1)におけるスラリーの調製は、上記原料酸化マグネシウム粒子、エポキシ樹脂及び硬化剤を液体媒体中に分散してスラリーを調製する工程である。
【0066】
スラリーの調製方法は特に限定されず、例えば、上記成分を液体媒体に添加し、18〜30℃で10〜30分間、攪拌して分散及び/又は溶解させることによって、原料マグネシウム粒子の濃度500〜1000g/lの均一なスラリーとすることができる。
【0067】
上記スラリーにおいて、液体媒体は特に限定されるものではないが、水が90重量%以下、残部が水混和性溶媒であることが好ましい。このような水の含有量が低い液体媒体を使用することで、酸化マグネシウムの水酸化マグネシウムへの変換を抑制できる点で好ましい。上記水混和性溶媒としては、水と任意の割合で混合できる溶媒であれば特に限定されず、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、エチレングリコール等を挙げることができる。これらの2種以上を同時に使用するものであってもよい。なかでも、コスト面などから、低級アルコールが好ましい。上記水の含有量は、液体媒体全体に対して85重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることが更に好ましい。水の含有量の下限は特に限定されず、水を含有しない水混和性有機溶媒のみを溶媒とするものであってもよい。
【0068】
上記工程(1)において、スラリーとする場合は、分散剤を使用してもよい。分散剤として好適に使用することができるものとしては、特に限定されるものではないが、ポリカルボン酸アンモニウム塩を使用することが好ましい。ポリカルボン酸アンモニウム塩は、エポキシ樹脂の硬化助剤としての作用も有するため、これを分散剤として使用すると、硬化助剤の添加が不要となる点で好ましいものである。ポリカルボン酸アンモニウム塩としては、ディスペックス A40(チバスペシャリティーケミカル製)、ポイズ532A(花王社製)等を挙げることができる。
【0069】
上記工程(1)において、エポキシ樹脂と硬化剤との反応がそれだけで進行しにくいものである場合には、上述した硬化助剤を更に含有するものであってもよい。
【0070】
上述した被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法においては、上記工程(1)によって得られたスラリーを噴霧乾燥する工程(2)を有するものである。
【0071】
上記噴霧乾燥の方法としては特に限定されず、例えば、上記スラリーを好ましくは150〜300℃程度の気流中に、2流体ノズル又は回転ディスク等により噴霧し、20〜100μm程度の造粒粒子を作る方法が挙げられる。この際、スラリーの粘度が50〜3500cpsとなるようにスラリーの濃度を制御することが好ましい。スラリーの粘度はB型粘度計(東京計器社製)で60rpmのシェアで測定した値である。この気流中にて乾燥された造粒粒子をサブミクロンオーダーのフィルター(バグフィルター)にて捕集する。スラリーの粘度、乾燥温度、気流速度が望ましい範囲にないと、造粒粒子は中空もしくはくぼんだ形状になってしまうおそれがある。
【0072】
上記方法によって製造された被覆酸化マグネシウム粒子は、必要に応じて、粉砕・篩による分級を行うものであってもよい。粉砕方法は特に限定されず、例えば、アトマイザー等を挙げることができる。また篩による分級方法としては、湿式分級、乾式分級を挙げることができる。
【0073】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子はその用途を特に限定するものではないが、例えば、放熱性フィラーの用途において好適に使用することができる。このような放熱性フィラーも本発明の一部である。
【0074】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子からなる放熱性フィラーは、通常、放熱性樹脂組成物や放熱性グリース、放熱性塗料等において使用することができる。このような用途については、多くの公知文献が存在しており、本発明の放熱性フィラーは、このような公知の放熱性樹脂組成物や放熱性グリース、放熱性塗料において使用することができる。
【0075】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子を放熱性フィラーとして使用する場合、いずれも本発明の要件を満たし、粒子径が異なる複数の被覆酸化マグネシウム粒子を混合して使用してもよい。より具体的には、上述した電子顕微鏡写真撮影装置にて撮影した画像を用いる測定方法によって求められた1次粒子径が1〜15μmの被覆酸化マグネシウム(a)と、0.05〜4μmの被覆酸化マグネシウム(b)をその粒径比が4≦(a)/(b)≦20となる割合で選択し、(a):(b)が5:5〜9:1の重量比率で混合することによって得られた被覆酸化マグネシウム粒子を挙げることができる。
【0076】
また、3種以上の被覆酸化マグネシウム粒子を組み合わせることもできる。3種類の被覆酸化マグネシウム粒子を組み合わせる場合は、上述した電子顕微鏡写真撮影装置にて撮影した画像を用いる測定方法によって求められた1次粒子径が1〜15μmの被覆酸化マグネシウム粒子(a)、0.05〜4μmの被覆酸化マグネシウム粒子(b)、0.01〜1μmの被覆酸化マグネシウム粒子(c)を組み合わせて使用するものであり、その粒径比が4≦(a)/(b)≦20、4≦(b)/(c)≦20となる割合の粒子を選択し、被覆酸化マグネシウム粒子全量に対して、(a):((b)+(c))=5:5〜9:1、(b):(c)=5:5〜9:1の重量比率で混合することによって得られた被覆酸化マグネシウム粒子を挙げることができる。
【0077】
上述のように、粒子径が異なる複数の被覆酸化マグネシウム粒子を充填率が高くなる組み合わせを選択して混合することにより高い充填率を得ることができ、優れた放熱性能を得ることができる点でも好ましい。
【0078】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、放熱性フィラーとして使用する場合、その他の成分を併用して使用することもできる。併用して使用することができるその他の成分としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、金属シリコン、ダイヤモンド等の酸化マグネシウム以外の放熱性フィラー、本発明の被覆酸化マグネシウム粒子とは異なる酸化マグネシウム粒子、樹脂、界面活性剤等を挙げることができる。
【0079】
上記被覆酸化マグネシウム粒子を放熱性フィラーとして使用する場合、樹脂と混合した樹脂組成物として使用することができる。このような樹脂組成物も本発明の一つである。この場合、使用する樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、液晶樹脂(LCP)、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を挙げることができる。
【0080】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と上記被覆酸化マグネシウム粒子とを溶融状態で混練することによって得られた熱成型用の樹脂組成物;熱硬化性樹脂と上記被覆酸化マグネシウム粒子とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物;等のいずれの形態であってもよい。
【0081】
本発明の樹脂組成物中の上記被覆酸化マグネシウム粒子の配合量は、目的とする熱伝導率や樹脂組成物の硬度等、樹脂組成物の性能に合わせて任意に決定することができる。上記被覆酸化マグネシウム粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、樹脂組成物中の固形分全量に対して10〜90体積%含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
【0082】
本発明の樹脂組成物は、用途によって樹脂成分を自由に選択することができる。例えば、熱源と放熱板の間に装着し密着させる場合には、シリコーン樹脂やアクリル樹脂のような接着性が高く硬度の低い樹脂を選択すればよい。
【0083】
本発明の樹脂組成物が熱成型用の樹脂組成物である場合、熱可塑性樹脂と上記被覆酸化マグネシウム粒子を、例えば、スクリュー型二軸押出機を用いた溶融混練によって、樹脂組成物をペレット化し、その後射出成型等の任意の成形方法によって所望の形状に成型する方法等によって製造することができる。
【0084】
本発明の樹脂組成物が熱硬化性樹脂と上記被覆酸化マグネシウム粒子とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物である場合、例えば、加圧成形等によって成形するものであることが好ましい。このような樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物をトランスファー成型により成型し、製造することができる。
【0085】
本発明の樹脂組成物の用途は、電子部品の放熱部材、熱伝導性充填剤、温度測定用等の絶縁性充填剤等がある。例えば、本発明の樹脂組成物は、MPU、パワートランジスタ、トランス等の発熱性電子部品からの熱を放熱フィンや放熱ファン等の放熱部品に伝熱させるために使用することができ、発熱性電子部品と放熱部品の間に挟み込まれて使用することができる。これによって、発熱性電子部品と放熱部品間の伝熱が良好となり、長期的に発熱性電子部品の誤作動を軽減させることができる。ヒートパイプとヒートシンクの接続や、種々の発熱体の組込まれたモジュールとヒートシンクとの接続に好適に用いることもできる。
【0086】
上記被覆酸化マグネシウム粒子を放熱性フィラーとして使用する場合、鉱油又は合成油を含有する基油と混合した放熱性グリースとして使用することもできる。
【0087】
本発明の放熱性グリース中の上記被覆マグネシウム粒子の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定する事ができる。上記被覆酸化マグネシウム粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、放熱性グリース全量に対して10〜90体積%以上含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
【0088】
上記基油は、鉱油、合成油、シリコーンオイル、フッ素系炭化水素油等の各種油性材料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。合成油としては特に炭化水素油がよい。合成油としてα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテルなどが使用できる。
【0089】
本発明の放熱性グリースは、必要に応じて界面活性剤を含有するものであってもよい。上記界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤の配合により、高熱伝導率化を図り、ちょう度を好適に制御することができる。
【0090】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエチレンジアミン、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ペンタエリトリットモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステルが挙げられる。
【0091】
非イオン系界面活性剤の添加の効果は、放熱性フィラーの種類、配合量、及び親水性と親油性のバランスを示すHLB(親水親油バランス)によって異なる。本実施の形態で使用される非イオン系界面活性剤には、室温においても良好なちょう度を得るにはHLBが9以下の液状界面活性剤が好ましい。また、高放熱性グリース等の電気絶縁性や電気抵抗の低下を重視しない用途では、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができる。
【0092】
本発明の放熱性グリースは、前述した成分をドウミキサー(ニーダー)、ゲートミキサー、プラネタリーミキサー、3本ロールミルなどの混合機器を用いて混合することによって調製することができる。
【0093】
本発明の放熱性グリースは、発熱体や放熱体に塗布することによって使用される。発熱体としては、例えば、一般の電源;電源用パワートランジスタ、パワーモジュール、サーミスタ、熱電対、温度センサなどの電子機器;LSI、CPU等の集積回路素子などの発熱性電子部品などが挙げられる。放熱体としては、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク等の放熱部品;ヒートパイプ、放熱板などが挙げられる。塗布は、例えば、スクリーンプリントによって行うことができる。スクリーンプリントは、例えば、メタルマスクもしくはスクリーンメッシュを用いて行うことができる。本発明の放熱性グリースを発熱体及び放熱体の間に介在させて塗布することにより、上記発熱体から上記放熱体へ効率よく熱を伝導させることができるので、上記発熱体から効果的に熱を取り除くことができる。
【0094】
上記被覆酸化マグネシウム粒子を放熱性フィラーとして使用する場合、樹脂溶液又は分散液中に分散させた塗料組成物として使用することもできる。この場合、使用する樹脂は硬化性を有するものであっても、硬化性を有さないものであってもよい。上記樹脂として具体的には、上述した樹脂組成物において使用することができる樹脂として例示した樹脂を挙げることができる。塗料は、有機溶剤を含有する溶剤系のものであっても、水中に樹脂が溶解又は分散した水系のものであってもよい。
【0095】
上記塗料組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ディスパーやビーズミル等を使用し、必要とする原料及び溶剤を混合・分散することによって製造することができる。
【0096】
上記放熱性塗料組成物中の上記被覆酸化マグネシウム粒子の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定する事ができる。上記被覆酸化マグネシウム粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、塗料組成物全量に対して10〜90体積%以上含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、30体積%以上含有することが好ましく、50体積%以上とすることが更に好ましい。
【0097】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、上述した放熱性フィラーの他に、ゴムの加硫促進剤、塗料・インキ用顔料、医薬品等の分野においても使用することができる。
【実施例】
【0098】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例において特に断りのない限り、「%」は質量%を意味する。
【0099】
実施例1(酸化マグネシウム粒子−a)
水8Lにイソプロピルアルコール2Lを加え、強撹拌下、エポキシ樹脂(三菱化学製 jER 828;ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を55.5g、硬化剤(新日本理化製 リカシッドMH−700;4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30)を44.5g、ディスペックス A40(チバスペシャリティーケミカル製)を30g加える。その後、メジアン径が1.9μmのMgO粒子を10000g加え10分強撹拌し、スラリーを得る。このスラリーを、噴霧乾燥機(大川原化工機製 L−12)にて、入口温風温度230℃、出口温度105℃の条件で、1時間で処理を行い、120℃で12時間乾燥し粉砕後、エポキシ樹脂で処理された酸化マグネシウム粒子−aを得た。
【0100】
実施例2(酸化マグネシウム粒子−b)
エポキシ樹脂(三菱化学製 jER 828)を5.55g、硬化剤(新日本理化製 リカシッドMH−700)を4.45g、ディスペックス A40(チバスペシャリティーケミカル製)3.0g、メジアン径が12μmのMgO粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、酸化マグネシウム粒子−bを得た。
【0101】
実施例3(酸化マグネシウム粒子−c)
エポキシ樹脂(三菱化学製 jER 828)を555g、硬化剤(新日本理化製 リカシッドMH−700)を445g、ディスペックス A40(チバスペシャリティーケミカル製)300g、メジアン径が0.18μmのMgO粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、酸化マグネシウム粒子−cを得た。
【0102】
実施例4(酸化マグネシウム粒子−d)
水800mlにイソプロピルアルコール200ml加え、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学製 KBM−3063)を10g、酢酸(和光純薬)0.2g加え、約30分撹拌後、実施例1で得られた酸化マグネシウム粒子−a1000gを添加し30分撹拌し、濾過、水洗、乾燥、粉砕を行い、エポキシ樹脂で処理された酸化マグネシウム粒子の表面を、ヘキシルトリメトキシシランで処理した酸化マグネシウム粒子−dを得た。
【0103】
実施例5(酸化マグネシウム粒子−e)
水800mlにイソプロピルアルコール200ml加え、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製 KBM−403)を10g加え、約30分撹拌後、実施例1で得られた酸化マグネシウム粒子−a1000gを添加し30分撹拌し、濾過、水洗、乾燥、粉砕を行い、エポキシ樹脂で処理された酸化マグネシウム粒子の表面を、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで処理した酸化マグネシウム粒子−eを得た。
【0104】
比較例1(酸化マグネシウム粒子−f)
実施例1において、ディスペックス A40を用いない以外は、全て同様な操作を行い、酸化マグネシウム粒子−fを得た。なお、このような処理条件ではエポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応が充分進行しないため、硬化したエポキシ樹脂による被覆を行うことができなかった。
【0105】
比較例2(酸化マグネシウム粒子−g)
実施例1において、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、ディスペックス A40を用いない以外は、全て同様な操作を行い、酸化マグネシウム粒子−gを得た。
【0106】
比較例3(酸化マグネシウム粒子−h)
実施例1において、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、ディスペックス A40を用いず、シリカゾル(日産化学工業製 スノーテックスN−30G SiO分 30w%)を334g加えた以外は、全て同様な操作を行い、650℃で3時間焼成し、SiO分1%で処理された酸化マグネシウム粒子−hを得た。
【0107】
比較例4(酸化マグネシウム粒子−i)
実施例1において、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、ディスペックス A40を用いず、シリカゾル(日産化学工業製 スノーテックスN−30G SiO分 30w%)を1000g加えた以外は、全て同様な操作を行い、650℃で3時間焼成し、SiO分3%で処理された酸化マグネシウム粒子−iを得た。
【0108】
実施例1〜5、比較例1〜4の処理前の酸化マグネシウム粒子の物性について、表1に示す。
実施例1〜5、比較例1〜4の処理後の酸化マグネシウム粒子の物性について、表2に示す。なお、表1、表2に記載した各値は本明細書中に記載した測定方法によって測定した値である。更に、図1、図2に実施例1及び2の酸化マグネシウム粒子のIRチャートを示した。この測定結果においては、3700cm−1の吸収が見られないことから、コアとなる粒子が酸化マグネシウム粒子であることが明らかである。なお、IRの測定は、Thermo ELECTRON CORPORATION製NICOLET 4700FT-IRによって行った。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
実施例6(酸化マグネシウム粒子-j)
水8Lにイソプロピルアルコール2L加え、強撹拌下、エポキシ樹脂(三菱化学製 jER 828)を82.3g、硬化剤(和光純薬工業製 イソホロンジアミン)を17.7g、ディスペックス A40(チバスペシャリティーケミカル製)30g加える。その後、実施例1と同様にメジアン径が1.9μmのMgO粒子を10000g加え10分強撹拌する。このスラリーを、噴霧乾燥機(大川原化工機製 L−12)にて、入口温風温度230℃、出口温度105℃の条件で、1時間で処理を行い、120℃で12時間乾燥し粉砕後、エポキシ樹脂で処理された酸化マグネシウム粒子−jを得た。
【0112】
実施例7(酸化マグネシウム粒子-k)
エポキシ樹脂(三菱化学製 jER 828)を90g、硬化剤(住友精化製 ジエチレントリアミン)を10g用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、酸化マグネシウム粒子−kを得た。
【0113】
実施例8(酸化マグネシウム粒子-l)
エポキシ樹脂(日本化薬製 RE-303S-L;ビスフェノールF型)を80.4g、硬化剤(和光純薬工業製 イソホロンジアミン)を19.6g用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、酸化マグネシウム粒子−lを得た。
【0114】
実施例9(酸化マグネシウム粒子-m)
エポキシ樹脂(日本化薬製 RE-303S-L;ビスフェノールF型)を89.0g、硬化剤(住友精化製 ジエチレントリアミン)を11.0g用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、酸化マグネシウム粒子−mを得た。
【0115】
実施例10(酸化マグネシウム粒子-n)
エポキシ樹脂(株式会社ダイセル製 セロキサイド2021P;脂肪族環状型)を76.6g、硬化剤(和光純薬工業製 イソホロンジアミン)を23.4g用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、酸化マグネシウム粒子−nを得た。
【0116】
実施例11(酸化マグネシウム粒子-o)
エポキシ樹脂(株式会社ダイセル製 セロキサイド2021P;脂肪族環状型)を86.5g、硬化剤(住友精化製 ジエチレントリアミン)を13.5g用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、酸化マグネシウム粒子−oを得た。
【0117】
実施例1および6〜11の処理後の酸化マグネシウム粒子の物性について、表3に示す。
【0118】
【表3】

【0119】
実施例12〜16
表4に示す配合で、3本ロールミル(EXAKT社製 M-80S)を用いて混練し、110℃-12時間で処理し、直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂組成物成型体を作成した。その成型体を用い、熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率は、熱流計法により、25℃で行った。結果を表4に示す。
【0120】
比較例5
表4に示す配合で、酸化マグネシウムの無い系で3本ロールミル(EXAKT社製 M−80S)を用いて混練し、110℃、12時間で処理し、直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂成型体を作成した。その成型体を用い、熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率は、熱流計法により、25℃で行った。結果を表4に示す。
【0121】
比較例6〜9
表4に示す配合で、3本ロールミル(EXAKT社製 M−80S)を用いて混練し、110℃−12時間で処理し、直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂組成物成型体を作成した。その成型体を用い、熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率は、熱流計法により、25℃で行った。結果を表4に示す。
【0122】
【表4】

【0123】
表4の結果から、本発明の被覆酸化マグネシウム粒子を含有する樹脂組成物は優れた放熱性能を有することが明らかである。
【0124】
実施例17〜21
実施例12〜16で作成した直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂組成物成型体を用い、プレッシャークッカーテスト装置(平山製作所製 PC−242HSR2)を用いて温度121℃、湿度100%、20時間の劣化試験を行った。この試験は、試験前後の重量を測定し、重量増が少ないほうがより良い評価となる。結果を表5に示す。
【0125】
比較例10〜14
比較例5および比較例6〜9で作成した直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂成型体を用い、実施例16〜20と同様にプレッシャークッカーテストを行った。結果を表5に示す。
【0126】
【表5】

【0127】
実施例17、比較例10〜14の評価結果写真を図3、4に示す。表5及び図3,4の結果から、本発明の被覆酸化マグネシウム粒子を含有する樹脂組成物は、比較例の酸化マグネシウム粒子に比べて、顕著に耐水性に優れることが明らかである。
【0128】
実施例22〜26
実施例12〜16で作成した直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂組成物成型体を用い、各々の重量を測定後、70℃の4規定塩酸に20分間浸漬し、その後、塩酸を十分に洗い流し、乾燥後、再度重量を測定し重量減を算出することで、耐酸性を評価した。この試験は重量減が少ないほうがより良い評価となる。結果を表6に示す。
【0129】
比較例15〜19
比較例5および比較例6〜9で作成した直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂成型体を用い、実施例22〜26と同様に耐酸性を評価した。結果を表6に示す。
【0130】
【表6】

【0131】
表6に示した実施例及び比較例の結果から、本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、耐酸性に優れたものであることが明らかである。また、表1〜6及び図3,4に示した結果から、本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、放熱性、耐水性、耐酸性のすべてにおいて優れた性能を示すが、比較例の酸化マグネシウム粒子は、これらのうちのいずれかにおいて、劣った性能のものとなっている。
【0132】
(実施例27〜32)
実施例6〜11の酸化マグネシウム粒子についても、下記表7に示す配合で実施例12〜16と同様の方法でエポキシ樹脂成形体を作成し、熱伝導率を測定した。結果を表7に示す。
【0133】
【表7】

【0134】
(実施例33〜38)
実施例6〜11の酸化マグネシウム粒子についても、実施例27〜32で作成した直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂組成物成形体を用い、実施例17〜21同様の方法でプレッシャークッカーテスト装置を用いた劣化試験を行った。結果を表8に示す。
【0135】
【表8】

【0136】
(実施例39〜44)
実施例6〜11の酸化マグネシウム粒子についても、実施例27〜32で作成した直径40mm厚み7mmのエポキシ樹脂組成物成形体を用い、実施例22〜26と同様の方法で耐酸性を評価した。結果を表9に示す。
【0137】
【表9】

【0138】
実施例6〜11の酸化マグネシウム粒子についても、実施例1〜5の酸化マグネシウム粒子と同様に、放熱性、耐水性、耐酸性のすべてにおいて優れた性能を示すことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の被覆酸化マグネシウム粒子は、耐酸性・耐水性が要求される分野において特に好適に使用することができ、例えば放熱性フィラーとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂を硬化させて得られた表面被膜を有することを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子。
【請求項2】
(メジアン径)/(比表面積から求められる比表面積径)の比が2以下、Dmax/(比表面積から求められる比表面積径)が4以下である請求項1記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
【請求項3】
表面被膜は、酸化マグネシウム粒子、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有するスラリーを噴霧乾燥させることによって得られた請求項1又は2記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
【請求項4】
スラリーは、更に、ポリカルボン酸のアンモニウム塩を含む請求項3記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
【請求項5】
スラリーは、その分散媒が、水が90重量%以下、残部が水混和性溶媒である請求項3記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
【請求項6】
酸化マグネシウム100重量部に対して、エポキシ樹脂の被覆量が0.01重量部以上、50重量部以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
【請求項7】
更に表面処理をすることによって得られた請求項1〜6のいずれかに記載の被覆酸化マグネシウム粒子。
【請求項8】
酸化マグネシウム粒子、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含むスラリーを調製する工程(1)、上記工程(1)によって得られたスラリーを噴霧乾燥する工程(2)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
【請求項9】
スラリーは、更に、ポリカルボン酸のアンモニウム塩を含む請求項8記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
【請求項10】
スラリーは、その分散媒が、水が90重量%以下、残りが水混和性溶媒である請求項5記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
【請求項11】
酸化マグネシウム粒子は、(メジアン径)/(比表面積から求められる比表面積径)の比が2以下、Dmax/(比表面積から求められる比表面積径)が4以下である請求項8、9又は10記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7いずれかに記載の被覆酸化マグネシウム粒子からなることを特徴とする放熱性フィラー。
【請求項13】
請求項1〜7いずれかに記載の被覆酸化マグネシウム粒子を含有することを特徴とする樹脂組成物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−56816(P2013−56816A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8793(P2012−8793)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【特許番号】特許第5163821号(P5163821)
【特許公報発行日】平成25年3月13日(2013.3.13)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】