説明

被覆酸化亜鉛粒子、水系組成物及び化粧料

【課題】粒径が同程度の未処理酸化亜鉛粒子よりも顕著に優れた紫外線遮蔽効果を有し、可視光透過性は高いため着色を生じにくく、かつ、亜鉛の溶出が抑制されており、化粧料、塗料組成物、樹脂組成物等において好適に使用することができる酸化亜鉛粒子を提供する。
【解決手段】架橋させたものであるカルボキシビニルポリマーと2価又は3価の金属イオンとを反応させて得られた沈降性物質からなる被覆層を有することを特徴とする被覆酸化亜鉛粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の被覆層を有し、紫外線防御剤として使用することができる被覆酸化亜鉛粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン層が一部、破壊されていることによって、地表に到達する紫外線量の増加が問題にされており、効果の高い紫外線防御剤が要望されている。このような紫外線防御剤は、化粧料、塗料組成物、樹脂組成物等の分野において汎用されている。従来、紫外線吸収剤としては、例えば、化粧品分野においてはベンゾフェノン系、安息香酸系、メトキシケイ皮酸系等の有機化合物が用いられているが、これら有機化合物では、広い範囲の波長域の紫外線を吸収することができないことや、皮膚への刺激性の問題を生じるおそれがあること等から、より安全な紫外線遮蔽剤が求められている。
【0003】
このような紫外線遮蔽剤として、380nm付近に吸収端を有し、長波長(A領域)の紫外線に対する遮蔽効果の高い酸化亜鉛粒子が好適に使用されている。このような酸化亜鉛粒子について、より高い水準での紫外線遮蔽剤としての性能を得ることができれば好ましい。同時に、可視光領域においては透過率が高いことが、着色の問題を生じにくい点から好ましい。また、酸化亜鉛粒子の紫外線遮蔽効果を向上させることができると、使用する粉体量を減らすことができるため好ましい。
【0004】
更に、酸化亜鉛粒子は、亜鉛イオンの溶出を生じやすいため、亜鉛イオンの溶出による種々の問題を抑制することが望まれている。例えば、化粧料の分野においては、増粘剤として汎用されるカルボキシビニルポリマーと酸化亜鉛粒子との併用は困難とされている。ポリアクリル酸の一種であるカルボキシビニルポリマーは、水に湿潤し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリで中和すると、ポリアクリル酸の分子鎖中のCOOH基がCOO−解離し、分子鎖中のCOO−電荷が互いに反発することにより、分子鎖がよく拡がる結果、急速に増粘するものである。
【0005】
このようなカルボキシビニルポリマーのカルボン酸部と亜鉛イオンとが反応すると、カルボキシビニルポリマーのゲル構造が破壊され、粘性を保つことができなくなる。このために、化粧料分野において酸化亜鉛粒子とカルボキシビニルポリマーとを併用することは困難であった。
【0006】
特許文献1〜4には、酸化亜鉛粒子表面をシリカ等で処理する方法が提案されている。しかしこれらの文献は水系中で紫外線遮蔽性能を向上させることを目的とするものではない。更に、化粧料分野においては、シリカで粒子表面を覆うために粉体感触が悪くなる欠点もあった。
【0007】
また、特許文献5では、酸化亜鉛粒子表面を第1層としてシリカで被覆し、かつその外側を第2層としてポリマーで被覆する方法が提案されているが、この方法は工程が長い為にコストが高くなるといった問題がある。更に、紫外線遮蔽性能の向上についての記載は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−302015号公報
【特許文献2】WO01/093812号公報
【特許文献3】特開2004−339326号公報
【特許文献4】特開2005−1999号公報
【特許文献5】特開2008−266283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑み、粒径が同程度の未処理酸化亜鉛粒子よりも顕著に優れた紫外線遮蔽効果を有し、可視光透過性は高いため着色を生じにくく、かつ、亜鉛の溶出が抑制されており、化粧料、塗料組成物、樹脂組成物等において好適に使用することができる酸化亜鉛粒子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、架橋させたものであるカルボキシビニルポリマーと2価又は3価の金属イオンとを反応させて得られた沈降性物質からなる被覆層を有することを特徴とする被覆酸化亜鉛粒子である。
【0011】
上記2価又は3価の金属イオンは、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Zn、Al及びGaからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオンであることが好ましい。
上記被覆層は、被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましい。
被覆層に含まれる金属イオンは、被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対して0.005〜20質量部であることが好ましい。
上記被覆酸化亜鉛粒子は、さらに、アルキルシラン又はシリコーンオイルで処理したものであってもよい。
上記アルキルシラン又はシリコーンオイルの処理量は、被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対して0.1〜3質量部であることが好ましい。
上記アルキルシラン又はシリコーンオイルで処理した被覆酸化亜鉛粒子は、ミリスチン酸イソプロピルを用いた吸油量が29以下であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上述した被覆酸化亜鉛粒子を含むことを特徴とする水系組成物でもある。
上記水系組成物は、更に、カルボキシビニルポリマーを含むことが好ましい。
【0013】
本発明は、上記被覆酸化亜鉛粒子を含むことを特徴とする化粧料でもある。
上記化粧料はさらに、カルボキシビニルポリマーを含むことが好ましい。
上記化粧料は、水中油型エマルションであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1〜3の酸化亜鉛粒子を含む水分散体の紫外線領域の透過率を示す図である。
【図2】実施例4,6の酸化亜鉛粒子を含む水分散体の紫外線領域の透過率を示す図である。
【図3】比較例1〜3の酸化亜鉛粒子を含む水分散体の紫外線領域の透過率を示す図である。
【図4】実施例1〜3の酸化亜鉛粒子を含む水分散体の可視光領域の透過率を示す図である。
【図5】実施例4,6の酸化亜鉛粒子を含む水分散体の可視光領域の透過率を示す図である。
【図6】比較例1〜3の酸化亜鉛粒子を含む水分散体の可視光領域の透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、特定の被覆を有する酸化亜鉛粒子からなるものである。すなわち、本発明の特定の被覆を有する酸化亜鉛粒子は、亜鉛イオンの溶出を効率よく低減することができる。更に、上記酸化亜鉛粒子は、水、樹脂等のマトリックス中に分散させた場合に、未処理の酸化亜鉛粒子に比べて顕著に紫外線遮蔽性能が高い。このような顕著に優れた紫外線遮蔽性能が得られる作用は明らかではないが、分散性能が高くなることによって、粒子間の凝集が抑制され、これによってマトリックス中で粒子が微粒子状態を維持していることによって、紫外線遮蔽性能が得られると推測される。
【0016】
更に、亜鉛イオンの溶出が抑制されることによって、カルボキシビニルポリマーと併用して使用した場合の保存安定性が良好なものとなる。これは、酸化亜鉛粒子への被覆が、柔軟なものであることから、粉体分散時の分散力を加えても剥がれにくいこと、細孔構造を生じにくいために亜鉛の溶出を生じにくいこと、等によると推測される。
【0017】
上記カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸に基づく構造単位を主鎖に有する樹脂を、例えば、アリルショ糖、ペンタエリスリトール、ペンタエリスチルアリルエーテル、スクロースアリルエーテル、プロピレンアリルエーテル、ポリアルケニルポリエーテルなどの物質で架橋させたアクリル系ポリマーである。上記カルボキシビニルポリマーの主鎖としては、上記アクリル酸以外の不飽和カルボン酸をモノマーとして用いたり、付加重合させたものであっても良い。更に、例えばメタクリル酸アルキル共重合体など、その他の不飽和モノマーとの共重合体であってもよい。
【0018】
上記カルボキシビニルポリマーに含まれるカルボン酸量(すなわち樹脂中のカルボン酸基含有モノマーに由来する構成単位の樹脂中の含有量)は特に規定しないが、化粧品に使用する場合は、カルボキシビニルポリマー全量に対して56〜68質量%であることが好ましい。日本の医薬部外品原料規格に適合したものを使用することが、コストや安全性、販売面で有利であるからである。上記カルボキシビニルポリマーは、カルボン酸部がナトリウムやカリウムといったアルカリ金属塩やアンモニウム塩、アミン塩などの水溶性塩の形になったものを原料として使用して沈降性物質を得るものであってもよい。
【0019】
上記カルボキシビニルポリマーとしては市販のものを使用することもできる。市販のカルボキシビニルポリマーとしては特に限定されず、例えば、カーボポール940、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール934、(いずれもLUBRIZOL
ADVANCED MATERIALS社製)、ハイビスワコー103、ハイビスワコー104、ハイビスワコー105(いずれも和光純薬工業株式会社製)等、市販のアクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体としては例えばPemulen TR−1、Pemulen TR−2、カーボポールETD2020(いずれもLUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)等の市販の製品を使用することができる。
【0020】
上記2価又は3価の金属イオンとしては特に限定されず、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、鉄イオン、ストロンチウムイオン、ガリウムイオン等を挙げることができる。上記金属イオンとしては、これらのうち、一種あるいは複数を使用することができる。金属イオンの供給源としては、例えば、酢酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩などの水溶性塩が挙げられ、これらを水に溶かして使用することができる。また、酸化亜鉛粒子は、水中に分散させた場合には亜鉛イオンを溶出するものであることから、酸化亜鉛粒子そのものから溶出する金属イオンを利用することもできる。
【0021】
沈降性物質の原料となるカルボキシビニルポリマーと金属イオンの組み合わせは、得られる沈降性物質の難水溶性が高いこと、カルボキシビニルポリマーと金属イオンとが早く強く結び付くことを重視して選択することが好ましい。特に、亜鉛イオン、アルミニウムイオンを用いることが好ましく、塩化亜鉛、塩化アルミニウムを供給源として使用することができる。上記被覆層は、物性を損なわない範囲で上記沈降性物質以外の物質を含むものであってもよい。
【0022】
上記酸化亜鉛粒子の粒子サイズや粒子形状には制約がなく、それぞれの粉体の用途に適したもので良いが、特に微細な粒子径を有する酸化亜鉛粒子に対して凝集を抑制することができる、という点で好適に適用することができる。より具体的には、数平均粒子径が0.001〜0.1μmであるような被覆酸化亜鉛粒子であることがより好ましい。なお、上記粒子径はTEM観察または粒度分布測定装置という方法によって測定したものである。
【0023】
本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、表面がシリカやアルミナ、酸化鉄、酸化チタン、硫酸バリウム、シリコーン、アルキルシラン、金属石鹸などで処理されたものに対して、上述した沈降性物質による被覆を施したものであってもよい。
【0024】
本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、カルボキシビニルポリマーと多価金属イオンとからなる沈降性物質によって酸化亜鉛粒子を被覆したものである。このような表面処理方法としては特に限定されず、湿式であっても、乾式であってもよいが、湿式が好ましい。また、表面処理を行う前に、被処理粉体を水中で分散処理することがより好ましい。上記分散処理の方法としては、例えば、pH調整による電荷反発法、物理的な力を加える方法等を挙げることができ、凝集粒子をほぐす、又は、粒子自体を粉砕できる方法であればよい。
【0025】
湿式での表面処理方法について具体的に説明する。湿式での表面処理方法としては、例えば、酸化亜鉛粒子が分散した液中で沈降性物質を合成する方法、沈降物質を別の容器で作ってから酸化亜鉛粒子が分散した液に沈降性物質を添加し、ビーズミルで均一に処理する方法等を挙げることができる。前者の方法が効率的であるため好ましい。このような表面処理の方法としては、例えば、酸化亜鉛粒子が分散した溶液にカルボキシビニルポリマーを溶解させた液と多価金属イオンを含む水とを同時に添加してもよく、また、各々の液を順に添加してもよい。多価金属イオンとして亜鉛イオンを使用するときは、亜鉛イオンが残存しないように、添加終了後に水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液でpH10以上に調整して、水酸化亜鉛/酸化亜鉛にすることが好ましい。また、その他の金属イオンを用いる際にも酸側、アルカリ側を問わず必要なpH調整を行ってもよい。金属イオンの残存量を低減することによって、金属イオンの溶出を低減することができる点で好ましい。
【0026】
上記酸化亜鉛粒子を分散させた液中でカルボキシビニルポリマーと多価金属イオンとを反応させる場合、上記カルボキシビニルポリマーの添加量は、酸化亜鉛粒子100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部がより好ましい。添加量が1質量部未満であると、酸化亜鉛粒子表面をすべて被覆することが困難であるため充分な効果が得られないおそれがある。また、添加量が30質量部を超えると、コストが上昇するだけでなく、効果も頭打ちとなる場合がある。
【0027】
上記多価金属イオンの添加量は、酸化亜鉛粒子100質量部に対してイオン質量として0.05〜20質量部であることが好ましく、更にこの範囲で添加したカルボキシビニルポリマー100質量部に対して0.1〜300質量部であることが好ましい。添加量が少なければ得られる沈降性物質が少なくなるため効果が少ない場合がある。また、添加量が多ければ、金属イオンが酸化亜鉛粒子に吸着して残存してしまい、カルボキシビニルポリマーと併用した場合に粘度低下を引き起こすおそれがある。
【0028】
上記表面処理における反応温度、反応圧力等は特に限定されず、反応系の溶媒である水が液体として存在できる条件範囲であればよい。
【0029】
また、乾式での表面処理方法としては、沈降性物質を乾燥させてからミキサーなどで酸化亜鉛粒子と混合してもよいが、乾燥前の沈降性物質を添加してもよい。
【0030】
上記表面処理は、表面処理を行った後でさらに適当な方法で濾過・水洗を行ない、余分な塩類の除去を行ってもよい。濾過・水洗後に得られたケーキはそのまま、もしくは希釈して水分散体としても使用することができるし、また乾燥させ粉体として使用することもできる。水分散体、粉体どちらの状態であっても粉砕処理を行ない、凝集をある程度ほぐして微粒子化させることが好ましい。
【0031】
上述のようにして得られた本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、更に適当な既知の方法で任意の他の有機物や無機物で表面処理を施すこともできる。なかでも、化粧品に配合して使用した際に好感触を得ることができることから、アルキルシラン又はシリコーンオイルで処理することが好ましい。但し、水系に分散して使用する場合は水になじまなければ不適なため、撥水性が発現することは好ましくない。本発明の被覆酸化亜鉛粒子にアルキルシランまたはシリコーンオイルで処理すると、未被覆の酸化亜鉛粒子では撥水性が付与されるアルキルシランまたはシリコーンオイル処理量であっても、撥水性が発現せずに感触のみ改善されることが見出されている。よって、上記アルキルシラン又はシリコーンオイルによる処理は、撥水性を発現しない程度とすることが好ましい。なお、撥水性が発現しないとは、実施例における親水性評価で○となることをいう。さらに、実施例における水分散評価で◎となることが好ましい。
【0032】
上記アルキルシラン又はシリコーンオイルとしては特に限定されず、例えば、トリエトキシカプリリルシラン(例えば信越化学工業(株)製AES−3083)メチルハイドロジェンポリシロキサン(例えば信越化学工業(株)製KF−99P、東レダウコーニング社(株)製SH1107C)、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(例えば信越化学工業(株)製KF−9901)、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン(例えば信越化学工業(株)製KF−9908)、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(例えば信越化学工業(株)製KF−9909)、アクリルシリコーン樹脂(例えば信越化学工業(株)製KP−574)等を挙げることができる。なかでも、トリエトキシカプリリルシラン、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコンのうち少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0033】
上記アルキルシラン又はシリコーンオイルによる処理方法としては特に限定されず、例えば、被覆酸化亜鉛粒子をイソプロピルアルコール等の溶媒に分散させた後、上記アルキルシラン又はシリコーンオイルを添加する方法や、乾式でミキサーで混合する方法などを挙げることができる。
【0034】
上記アルキルシラン又はシリコーンオイルによる処理において、処理量は被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対して0.1〜3質量部であることが好ましい。さらに、得られた被覆酸化亜鉛粒子を水系で用いる場合、0.2〜2質量部であることが特に好ましい。0.1質量部未満であると、感触向上の効果が少ないため好ましくない。また、3質量部を超えると、撥水性が発現してしまう。
【0035】
上記アルキルシラン又はシリコーンオイルにより処理された被覆酸化亜鉛粒子は、ミリスチン酸イソプロピルを用いた吸油量を29以下とすることができる。上記吸油量が29以下であると、特に化粧料に配合した場合、塗布後長時間が経過して皮脂等を吸収した場合にもさらさらとした感触を保持することができる。なお、上記吸油量は、JIS K5101に準拠した方法により測定した値であり、具体的には以下の方法で測定することができる。試料約0.5gを薬包紙に精秤し、ガラス板の中央、10cmのスリガラス部分に試料を乗せる。ミクロビュレットにミリスチン酸イソプロピル(以下、IPMとする)を入れ、0.2mLを試料に滴加し、金ベラで練る。その後、IPMを1〜2滴ずつ加え、滴加の都度、全体を金ベラで練る。全体が初めて硬いパテ状の塊になったときを終点とする。吸油量は次式によって算出した。
吸油量(ml/100g)= {V(mL)÷ 試料重量(g)}× 100
V:滴加したIPMの量(mL)
【0036】
上記被覆酸化亜鉛粒子は、例えば、水系組成物において好適に使用することができる。本発明の被覆酸化亜鉛粒子はカルボキシビニルポリマーと金属イオンとを反応させて得られた沈降性物質からなる被覆層を有するため、水系媒体に安定に分散することができ、これによって優れた紫外線遮蔽性能を有する水系組成物を得ることができる。上記水系媒体としては特に限定されず、例えば、水、アルコール等の親水性有機溶剤を含む水系媒体を挙げることができる。
【0037】
上記水系組成物において、上記被覆酸化亜鉛粒子は、配合量が水系組成物全体に対して5〜40質量部であることが好ましく、10〜25質量部であることがより好ましい。配合量が5質量部未満であると、濃度が薄いため使用しにくく、処方が限定されてしまうため好ましくない。また、40質量部を超えると、ケーキ状になり使用が困難になるおそれがある。
【0038】
上記水系組成物は、さらに、カルボキシビニルポリマーを併用したものであってもよい。上記被覆酸化亜鉛粒子は、上述のように、表面活性、イオン溶出が抑えられ、分散力を加えても剥がれにくい被覆層を有するものであるため、カルボキシビニルポリマーと併用しても粘度低下を引き起こすことはない。上記水系組成物において、上記カルボキシビニルポリマーの含有量は、下限0.01質量%、上限10質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が0.01質量%未満であると、増粘効果が得られないおそれがある。上記含有量が10質量%を超えると、使用性の観点から好ましくない。上記下限は、0.03質量%がより好ましく、上記上限は、3質量%がより好ましい。
上記水系組成物は、用途に応じて任意の成分を添加してもよい。
【0039】
本発明の水系組成物のpHは、カルボキシビニルポリマーを併用する場合、下限5、上限10の範囲内であることが好ましい。上記pHが5未満であると、カルボキシビニルポリマーの安定性の面で好ましくない。一方、上記pHが10を超えると安全性の面で悪影響を与えるおそれがある。
【0040】
本発明の水系組成物は、促進条件(60℃)で保管したカルボキシビニルポリマー・被覆酸化亜鉛含有水系組成物の、7日目の粘度を0日目の粘度で割った比率が80〜120%であることが好ましい。本発明の水系組成物は、上述したように、カルボキシビニルポリマーと被覆酸化亜鉛を併用したものでありながら、安定した組成物を得ることができるものである。具体的には上述した範囲内のような粘度保持率を有するものであることが特に好ましい。上記値における粘度は、本明細書の実施例における測定方法によって測定された値である。
【0041】
上記被覆酸化亜鉛粒子は、化粧料分野において特に好適に使用することができる。上記被覆酸化亜鉛粒子を配合した化粧料としては特に限定されず、例えば、化粧水、乳液、クリーム等の基礎化粧品、ファンデーション、化粧下地等のメイク用品、日焼け止め化粧料、ヘアケア用品等を挙げることができる。なかでも、紫外線遮蔽効果に優れていることから日焼け止め化粧料として使用した時、特に優れた効果を発揮することができる。
【0042】
上記被覆酸化亜鉛粒子を配合した化粧料の剤形としては特に限定されず、均一相からなる水性液体組成物であっても、水中油型(O/W型)エマルションであってもよい。一般的な水中油型エマルションは、カルボキシビニルポリマーを増粘剤として使用したものであり、外相が水であるためべたつきの少ない軽い使用感を得ることができる。従来の被覆酸化亜鉛粒子は、カルボキシビニルポリマーの粘度低下を引き起こすため、水中油型エマルションに配合することは困難であった。しかしながら、本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、カルボキシビニルポリマーと併用することができるため、水中油型エマルションに配合することもできる。これによって、従来にない、使用感に優れた酸化亜鉛粒子含有水中油型エマルションを得ることができる。
【0043】
本発明の化粧料において、上記被覆酸化亜鉛粒子は、配合量が化粧料全体に対して1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。配合量が1質量部未満であると、紫外線遮蔽効果が弱くなるため好ましくない。また、50質量部を超えると、粉っぽくなり感触が悪くなるおそれがある。
【0044】
上記化粧料は、化粧品分野において使用することができる任意の水性成分、油性成分を併用するものであってもよい。上記水性成分及び油性成分としては特に限定されず、例えば、油分、界面活性剤、保湿剤、高級アルコール、金属イオン封鎖剤、天然及び合成高分子、水溶性及び油溶性高分子、紫外線吸収剤、各種抽出液、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等の成分を含有するものであってもよい。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0046】
[実施例1]
比表面積50m2/gの未処理酸化亜鉛(堺化学工業(株)製FINEX−50)70gを水700gにリパルプしてビーズミルで湿式粉砕した。この酸化亜鉛スラリー550gを攪拌下、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 934)水溶液(カルボキシビニルポリマー2g〔酸化亜鉛に対して4部〕、水400g)と塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛9g〔亜鉛イオンとして4.3g、酸化亜鉛に対して8.6部、表面処理に用いたカルボキシビニルポリマーに対して215部〕、水100g)を同時添加した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム8g、水100g)を4.5ml/min.で添加し、pH=12とした。20min.攪拌後、濾過、水洗を行うことで、酸化亜鉛1の含水ケーキを得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体1を得た。
【0047】
[実施例2]
酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50)400gを水2000gにリパルプしてビーズミルで湿式粉砕した。この酸化亜鉛スラリー1450gを攪拌下、塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛43.5g〔亜鉛イオンとして20.9g、酸化亜鉛に対して8.6部、表面処理に用いたカルボキシビニルポリマーに対して144部〕、水100g)を添加した後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 934)水溶液(カルボキシビニルポリマー14.5g〔酸化亜鉛に対して6部〕、水1000g)を16ml/min.で添加した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム40g、水500g)を4.5ml/min.で添加し、pH=12とした。20min.攪拌後、濾過、水洗を行うことで、酸化亜鉛2の含水ケーキを得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体2を得た。
【0048】
[実施例3]
酸化亜鉛2の含水ケーキを120℃で20時間、乾燥機中で乾燥させ、エアミル粉砕を行うことで酸化亜鉛3を得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体3を得た。
【0049】
[実施例4]
酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50)70gを水700gにリパルプしてビーズミルで湿式粉砕した。この酸化亜鉛スラリー550gを攪拌下、塩化アルミニウム水溶液(塩化アルミニウム0.1g[アルミニウムイオンとして0.02g,酸化亜鉛に対して0.04部,表面処理に用いたカルボキシビニルポリマーに対して0.67部〕水9.9g)を加え、次いでカルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)水溶液(カルボキシビニルポリマー3g〔酸化亜鉛に対して6部〕、水600g)を8ml/min.で添加した。さらに水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム8g、水100g)を4.5ml/min.で添加し、pH=12とした。20min.攪拌後、濾過、水洗を行うことで、酸化亜鉛4の含水ケーキを得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体4を得た。
【0050】
[実施例5]
酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50)70gを水700gにリパルプしてビーズミルで湿式粉砕した。この酸化亜鉛スラリー550gを攪拌下、塩化アルミニウム水溶液(塩化アルミニウム0.25g[アルミニウムイオンとして0.05g,酸化亜鉛に対して0.1部,表面処理に用いたカルボキシビニルポリマーに対して2.5部〕水9.9g)を加え、次いでカルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)水溶液(カルボキシビニルポリマー2g〔酸化亜鉛に対して4部〕、水600g)を8ml/min.で添加した。さらに水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム8g、水100g)を4.5ml/min.で添加し、pH=12とした。20min.攪拌後、濾過、水洗を行うことで、酸化亜鉛5の含水ケーキを得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体5を得た。
【0051】
[実施例6]
酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50)70gを水700gにリパルプしてビーズミルで湿式粉砕した。このスラリーを550g分取したところ、原子吸光で測定したスラリー中の溶出亜鉛イオンの量は0.04gであり、酸化亜鉛粒子に対して0.08部、表面処理に用いたカルボキシビニルポリマーに対して2部であった。この酸化亜鉛スラリー550gを攪拌下、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 934)水溶液(カルボキシビニルポリマー2g〔酸化亜鉛に対して4部〕、水400g)を8ml/min.で添加した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム8g、水100g)を4.5ml/min.で添加し、pH=12とした。20min.攪拌後、濾過、水洗を行うことで、酸化亜鉛6の含水ケーキを得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体6を得た。
【0052】
[実施例7]
酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50)70gを水700gにリパルプしてビーズミルで湿式粉砕した。この酸化亜鉛スラリー550gを攪拌下、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)水溶液(カルボキシビニルポリマー2g〔酸化亜鉛に対して4部〕、水400g)と塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛9g〔亜鉛イオンとして4.3g、酸化亜鉛に対して8.6部、表面処理に用いたカルボキシビニルポリマーに対して215部〕、水100g)を同時添加した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム8g、水100g)を4.5ml/min.で添加し、pH=12とした。20min.攪拌後、濾過、水洗し、120℃で乾燥をした。これをエアミルで粉砕することで酸化亜鉛7を得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体7を得た。
【0053】
[実施例8]
実施例7において、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)に代えて、カルボキシビニルポリマー(和光純薬(株)製 ハイビスワコー104)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、酸化亜鉛8を得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体8を得た。
【0054】
[実施例9]
実施例7において、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)に代えて、カルボキシビニルポリマー(和光純薬(株)製 ハイビスワコー105)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、酸化亜鉛9を得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体9を得た。
【0055】
[実施例10]
酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50)70gを水700gにリパルプしてビーズミルで湿式粉砕した。この酸化亜鉛スラリー550gを攪拌下、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Pemulen TR−2)水溶液(アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体2g〔酸化亜鉛に対して4部〕、水400g)と塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛9g〔亜鉛イオンとして4.3g、酸化亜鉛に対して8.6部、表面処理に用いたアクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体に対して215部〕、水100g)を同時添加した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム8g、水100g)を4.5ml/min.で添加し、pH=12とした。20min.攪拌後、濾過、水洗し、120℃で乾燥することで酸化亜鉛10を得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体10を得た。
【0056】
[実施例11]
実施例10において、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Pemulen TR−2)に代えて、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol ETD 2020)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして、酸化亜鉛11を得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体11を得た。
【0057】
[実施例12]
酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50)20kgを水200kgにリパルプしてビーズミルで湿式粉砕した。この酸化亜鉛スラリー150kgを攪拌下、塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛2.7kg〔亜鉛イオンとして1.29kg、酸化亜鉛に対して8.6部、表面処理に用いたカルボキシビルポリマーに対して215部〕、水10kg)を添加し、その後カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 934)水溶液(カルボキシビニルポリマー0.6kg〔酸化亜鉛に対して4部〕、水60kg)を添加した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム2.1kg、水26kg)を1.4L/min.で添加し、pH=12とした。20min.攪拌後、濾過、水洗し、120℃で乾燥させた。これをエアミルで粉砕することで、被覆酸化亜鉛微粒子を得た。
上記で得た被覆酸化亜鉛微粒子100gにジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業(株)製KF−9901)を0.25g添加し、これにイソプロピルアルコールを100g添加して混合した。これを風乾後、熱風乾燥機で熱処理(120℃)することで、酸化亜鉛12を得た。
これを200mlマヨネーズ瓶に入れ、粉体濃度10質量%となるよう水を添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体12を得た。
【0058】
[実施例13]
実施例12において、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業(株)製KF−9901)の添加量を0.5gとしたこと以外は、実施例12と同様にして、酸化亜鉛13及び酸化亜鉛分散体13を得た。
【0059】
[実施例14]
実施例12において、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業(株)製KF−9901)に代えて、トリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業(株)製AES−3083)を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、酸化亜鉛14及び酸化亜鉛分散体14を得た。
【0060】
[実施例15]
実施例14において、トリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業(株)製AES−3083)の添加量を0.5gとしたこと以外は、実施例14と同様にして、酸化亜鉛15及び酸化亜鉛分散体15を得た。
【0061】
[実施例16]
実施例12において、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業(株)製KF−9901)に代えて、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(信越化学工業(株)製KF−9909)を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、酸化亜鉛16及び酸化亜鉛分散体16を得た。
【0062】
[実施例17]
実施例16において、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(信越化学工業(株)製KF−9909)の添加量を0.5gとしたこと以外は、実施例16と同様にして、酸化亜鉛17及び酸化亜鉛分散体17を得た。
【0063】
[実施例18]
実施例16において、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(信越化学工業(株)製KF−9909)の添加量を1gとしたこと以外は、実施例16と同様にして、酸化亜鉛18及び酸化亜鉛分散体18を得た。
【0064】
[比較例1]
200mlマヨネーズ瓶に、酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50:酸化亜鉛19)を10g入れ、水を90g添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体19を得た。
【0065】
[比較例2]
200mlマヨネーズ瓶に、シリカとアルミナで表面処理を施した酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50A:酸化亜鉛20)を10g入れ、水を90g添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体20を得た。
【0066】
[比較例3]
200mlマヨネーズ瓶に、シリカで表面処理を施した酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50W:酸化亜鉛21)を10g入れ、水を90g添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体21を得た。
【0067】
[比較例4]
200mlマヨネーズ瓶に、酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50:酸化亜鉛22)を10g入れ、水を90g添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を、分散体中の総カルボキシビニルポリマー量が実施例1と同じである0.65質量部となるように添加し、ホモディスパーで攪拌することで、酸化亜鉛分散体22を得た。
【0068】
[比較例5]
酸化亜鉛微粒子(堺化学工業(株)製FINEX−50)100gにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(信越化学工業(株)製KF−9909)を1g添加し、これにイソプロピルアルコールを100g添加して混合した。これを風乾後、熱風乾燥機で熱処理(120℃)することで、酸化亜鉛23を得た。
【0069】
[参考例1]
実施例12において、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業(株)製KF−9901)の添加量を2gとしたこと以外は、実施例12と同様にして、酸化亜鉛24及び酸化亜鉛分散体24を得た。
【0070】
[ブランク]
200mlマヨネーズ瓶に水100gを入れ、カルボキシビニルポリマー(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製 Carbopol 940)を0.25質量部となるよう添加し、ホモディスパーで分散後、水酸化ナトリウムを用いて中和することでブランクを得た。
【0071】
〈粘度経時変化〉
50mlスクリュー瓶に分散体を入れ、B型粘度計で粘度を測定した。サンプルの保管は60℃の乾燥機中で行い、促進条件での分散体の粘度の経時変化を測定した。促進条件では1日がおよそ常温での1週間に相当することを確認した。測定サンプルを測定した日を0日、その翌日を1日として、データ(ロータNo.3、60rpmで測定)を表1に示す。また、測定サンプルの7日目の粘度を0日目の粘度で割った比率と、粘度(7日)における測定サンプルの粘度を粘度(7日)におけるブランクの粘度で割った比率も併記した。なお、粘度の単位は、mPa.sとする。結果より、本発明の酸化亜鉛をカルボキシビニルポリマーと併用しても粘度変化が少ないことが示された。一方、未処理の酸化亜鉛や、シリカやアルミナで処理した酸化亜鉛はカルボキシビニルポリマーを添加した直後に粘度が低減していることが分かる。また、実施例1と比較例4の結果から、カルボキシビニルポリマーと亜鉛イオンによる共沈物質で表面処理を行なう有効性が示された。
【0072】
【表1】



【0073】
<親水性評価>
ビーカーに水100mLを取り、そこに酸化亜鉛微粒子1gを添加し攪拌後、粉の状態を観察し、全ての粉が水になじんで分散した状態を○、粉が撥水して水面に浮かんだ状態を×とした。結果を表2に示す。本発明の酸化亜鉛は親水性の良いことが示された。一方未処理酸化亜鉛粒子にシリコーンオイルで1%処理した比較例5や被覆酸化亜鉛微粒子にシリコーンオイルを2%処理した参考例1の粉体は水に浮き、撥水性を示した。
【0074】
【表2】

【0075】
〈水分散性〉
70mlマヨネーズ瓶に、酸化亜鉛と水を、粉体濃度5%となるように入れ、さらにφ0.5ジルコニアビーズを40g入れ、ペイントシェーカーで30分間分散した。ビーズを分離後、室温で2日放置し、水分散体の上澄みを観察した。結果を表3に示す。本発明の処理粉体の水分散体には上澄みは観察されず、水分散性が良いことが示された。
【0076】

【表3】



◎:上澄みは見られない
○:少し上澄みが見られる △:かなり上澄みが見られる ×:完全に分離している
【0077】
[評価試験]
実施例1、2、4及び6で得た酸化亜鉛の含水ケーキを乾燥機中で乾燥させ、酸化亜鉛粉体を得た。次に、得られた酸化亜鉛粉体と、酸化亜鉛3(実施例3)、酸化亜鉛19〜21(比較例1〜3)の各粉体を140mlマヨネーズ瓶に入れ、これに水を添加した。φ0.5ジルコニアビーズを50g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。この水分散体を希釈し、ガラスセルに入れて分光光度計(V−570:日本分光製)で透過率を測定した。そのデータを図1〜6に示す。
【0078】
図1〜3の結果より、カルボキシビニルポリマーと多価金属イオンによる沈降性物質で表面処理を施した実施例の被覆酸化亜鉛粒子の紫外線透過率は、比較例よりも低く、より紫外線をカットしている。また図4〜6の結果より、可視光透過率は、比較例よりも高く、透明性が高いことがわかった。これは、表面処理に用いた沈降性物質により水分散性も付与されて、酸化亜鉛粒子がより分散しているためだと考えられる。
【0079】
<吸油量評価>
JIS K5101 に準拠した以下の方法で、ミリスチン酸イソプロピルを用い吸油量を測定した。試料約0.5gを薬包紙に精秤し、ガラス板の中央、10cmのスリガラス部分に試料を乗せる。ミクロビュレットにミリスチン酸イソプロピル(以下、IPMとする)を入れ、0.2mLを試料に滴加し、金ベラで練る。その後、IPMを1〜2滴ずつ加え、滴加の都度、全体を金ベラで練る。全体が初めて硬いパテ状の塊になったときを終点とする。吸油量は次式によって算出した。データを表4に示す。
吸油量(ml/100g)= {V(mL)÷ 試料重量(g)}× 100
V:滴加したIPMの量(mL)
【0080】
また、5名のパネラーに粉体を肌に塗布して感触評価をしてもらい、その結果も併記した。結果より、本発明の酸化亜鉛は、吸油量が29以下であり、感触が良いことが示された。
感触評価:◎:非常に良い、○:良い、△:普通、×:悪い
【0081】
【表4】



【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明により、従来よりも優れた紫外線遮蔽性能を有する紫外線遮蔽剤を得ることができる。このような紫外線遮蔽剤は、化粧料、塗料組成物、樹脂組成物等の分野において好適に使用することができる


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋させたものであるカルボキシビニルポリマーと2価又は3価の金属イオンとを反応させて得られた沈降性物質からなる被覆層を有することを特徴とする被覆酸化亜鉛粒子。
【請求項2】
2価又は3価の金属イオンは、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Zn、Al及びGaからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオンである請求項1記載の被覆酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
被覆層は、被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対して1〜40質量部である請求項1又は2記載の被覆酸化亜鉛粒子。
【請求項4】
被覆層に含まれる金属イオンは、被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対して0.005〜20質量部である請求項1、2又は3記載の被覆酸化亜鉛粒子。
【請求項5】
さらに、アルキルシラン又はシリコーンオイルで表面処理したものである請求項1、2、3又は4記載の被覆酸化亜鉛粒子。
【請求項6】
アルキルシラン又はシリコーンオイルの処理量は、被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対して0.1〜3質量部である請求項5記載の被覆酸化亜鉛粒子。
【請求項7】
ミリスチン酸イソプロピルを用いた吸油量が29以下である請求項5又は6記載の被覆酸化亜鉛粒子。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の被覆酸化亜鉛粒子を含むことを特徴とする水系組成物。
【請求項9】
更に、カルボキシビニルポリマーを含む請求項8記載の水系組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の被覆酸化亜鉛粒子を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項11】
さらに、カルボキシビニルポリマーを含む請求項10記載の化粧料。
【請求項12】
水中油型エマルションである請求項10又は11記載の化粧料。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−207039(P2012−207039A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162101(P2012−162101)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2010−226773(P2010−226773)の分割
【原出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】