説明

被覆防食テープおよびそれを用いた防食施工方法

【課題】施工後の防食テープの表面に塗料を塗装することができ、もって色彩を施すことができる被覆防食テープを提供する。
【解決手段】被覆防食テープ12は、多孔質基材に防食剤を含浸させてなるものであって、該防食剤は、ワックス100質量部に対し、油成分50〜300質量部と、無機充填剤50〜500質量部を含み、油成分は、乾性油20質量%以上を含む。内部が中空の鋼管11の表面に被覆防食テープ12を巻き付けられ、被覆防食テープ12は、その表面に乾性油由来の被膜が形成されているため、その上に塗料を塗布してもはじくことがなく、均一に塗膜13を施すことができ、意匠性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄製品の防食に用いられる被覆防食テープに関し、特に、屋外鋼構造物の防食に用いられる被覆防食テープおよびそれを用いた防食施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外鋼構造物等の防食には、長期に亘る防食性能を発揮するペトロラタム系防食テープがよく用いられている。たとえば特許文献1では、ペトロラタムを主成分として含み、さらに酸化亜鉛を含むペトロラタム系防食テープが提案されている。かかるペトロラタム系防食テープは、従来の防食材と同等の性能を発揮し、さらに耐久性にも優れるという利点を有する。
【0003】
このような特許文献1のペトロラタム系防食テープは、性能面の観点から問題視されることが少ないが、外観が褐色であって、しかもペトロラタム系防食テープ上に塗料を塗布して色彩を施すことが困難である。このため、かかるペトロラタム系防食テープは、化学プラントの配管や、石油精製所の配管等のように、移送物ごとに色分けして管理しなければならないような部位へは適用されにくかった。
【0004】
また、特許文献2には、ペトロラタムを主成分として、さらにプロセスオイルを含むペトロラタム系防食テープが開示されている。かかるペトロラタム系防食テープは、低温時においても展開力が軽く、冬場の施工作業性に優れたものである。しかしながら、かかるペトロラタム系防食テープは、表面が乾きにくくベタ付いた状態が長く続くため、その表面にホコリ等を吸着して黒ずんだりするという問題があった。
【0005】
このように従来のペトロラタム系防食テープは、防食性能が高いことは評価されていたが、その美観において決定的な課題を有するため、適用箇所が非常に限られていた。このような課題を解決するための試みとして、ペトロラタム系防食テープの表面にガラスクロスのような中間層を設け、その上に塗装するという工法もあるが、そのプロセスが煩雑であり、製造コストが大幅に高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−045233号公報
【特許文献2】特開平07−252422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、防食性を低下させることなく、施工後の防食テープの表面に塗料を塗装することができ、もって色彩を施すことができる被覆防食テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の被覆防食テープは、基材に防食剤を含浸させてなるものであって、該防食剤は、ワックス100質量部に対し、油成分50〜300質量部と、無機充填剤50〜500質量部とを含み、該油成分は、乾性油20質量%以上を含むことを特徴とする。上記の基材は、多孔質基材であることが好ましい。
【0009】
本発明は、上記で得られた被覆防食テープを構造物に巻きつけるステップと、該被覆防食テープを塗装するステップとを含む、防食施工方法でもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記の構成を有することにより、防食テープの防食性を低下させることなく、施工後の防食テープの表面に塗料を塗装することができ、もって色彩を施すことができる被覆防食テープを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の被覆防食テープを鋼管に適用したときの断面図である。
【図2】多孔質基材に防食剤を含浸させるときの工程を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<被覆防食テープ>
本発明の被覆防食テープは、基材に防食剤を含浸させてなるものであって、該防食剤は、ワックス100質量部に対し、油成分50〜300質量部と、無機充填剤50〜500質量部とを含み、油成分は、乾性油20質量%以上を含むことを特徴とする。このように防食テープの防食剤として乾性油を含むことにより、該防食テープの施工後から2週間程度の短期間に、乾性油が防食テープの表面に配置されて被膜が形成される。かかる被膜は、耐溶剤性を有するため、その上に油性塗料を塗布することができ、もって安価で簡便に着色(意匠)を施すことができる。
【0013】
このような被覆防食テープは、ロール状に巻いた形状のものを用いてもよいし、複数の枚葉のものであってもよい。ロール状に巻いた形状のものを用いる場合は、たとえば必要に応じて幅50〜300mmであって、長さ5mまたは10mのものを用いることができる。かかる被覆防食テープは、0.5mm以上5mm以下の厚みのものを一般的に用いる。また、被覆防食テープの表面に形成される初期被膜(3日〜1ヶ月程度)は、5μm以上100μm以下の厚みを有する。以下、本発明の被覆防食テープを構成する各部を説明する。
【0014】
<基材>
本発明において、基材としては、防食剤を含浸させることができるものであればどのようなものでもよいが、防食剤を含浸させやすいという観点から、多孔質基材を用いることが好ましい。このような多孔質基材としては、たとえば織布、不織布等を挙げることができる。
【0015】
<防食剤>
本発明において、防食剤は、ワックス100質量部に対し、油成分50〜300質量部と、無機充填剤50〜500質量部とを少なくとも含み、油成分が、乾性油20質量%以上を含むものである。このような割合で乾性油を含むことにより、上述したように乾性油が、被覆防食テープの表面に被膜を形成し、もって被覆防食テープの表面に直接塗料を塗布することができる。
【0016】
かかる防食剤に対し、ワックス、油成分、無機充填剤以外に、可塑剤、老化防止剤、防カビ剤、酸化防止剤、顔料、増粘剤等を所望の目的に応じて添加しても差し支えないことは言うまでもない。
【0017】
<ワックス>
本発明において、防食剤はワックスを含むことを特徴とする。ワックスとしては、たとえば合成ワックス、石油ワックス、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス等を用いることができ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、石油ワックスおよび合成ワックスを組み合わせて用いることが好ましい。ワックスとして石油ワックスを用いる場合、かかる石油ワックスは、後述する鉱物油に溶融した状態で供給されることもある。
【0018】
<油成分>
本発明において、防食剤は、ワックス100質量部に対し、油成分を50〜300質量部含み、該油成分は、乾性油20質量%以上を含むことを特徴とする。油成分の含有量が50質量部未満であると、防食テープの表面に油成分の被膜が形成されにくくなり、その上に油性塗料を塗布しにくくなる。一方、油成分の含有量が300質量部を超えると、施工性および被着物との密着性が悪化するため好ましくない。このような油成分の含有量は、ワックス100質量部に対し、50〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは50〜100質量部である。
【0019】
<乾性油>
本発明において、油成分は20質量%以上の乾性油を含むことを特徴とする。このように鉱物油の一部または全部を乾性油で代替することにより、被覆防食テープを所望の部位に施工したときに、乾性油に由来する被膜が被覆防食テープの表面に形成される。かかる被膜が、空気、光、金属塩、および熱の影響によって複雑な3次元構造を形成し、油性塗料に含まれる溶剤にも不溶となり、油性塗料を塗布することが可能となる。このようにして、被覆防食テープの表面に塗料を塗布できることにより、その表面に塗料を用いて意匠性を付与することができる。
【0020】
上記の乾性油は、植物の果実および種子等から採取される油脂であって、かつヨウ素化が130以上のものを意味する。このような乾性油は、薄膜に塗布して空気中で放置することにより、比較的短時間で固化乾燥する性質を有するものである。このような乾性油としては、たとえば亜麻仁油、桐油、芥子油、くるみ油、ベニバナ油等を挙げることができる。中でも、硬化性およびコストの観点から、亜麻仁油を用いることが好ましい。
【0021】
油成分において、乾性油は、20質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。これにより被覆防食テープの表面に被膜がより容易に形成されて、その表面に意匠性を付与することができる。20質量%未満の乾性油であると、被膜形成が必ずしも十分とは言えず、塗料を塗布しにくくなる場合があるため好ましくない。
【0022】
<鉱物油>
本発明において、油成分は、上記の乾性油以外にさらに鉱物油を含むことが好ましい。鉱物油は、石油ワックスの導入に際して不可避的に導入されるものであるが、もちろん意図的に鉱物油を添加してもよい。このような鉱物油としては、ミネラルオイル、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタルンワックス、ワセリン、セレシン等の石油由来の成分の他、石炭由来のモンタンロウ等を用いることもできる。
【0023】
防食剤に含まれる鉱物油は、乾性油100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。鉱物油は防食剤中で可塑剤としての役割を果たすため、鉱物油の含有量が100質量部を超えると、被膜形成までの時間が長くなったり、被膜を形成しにくくなったりする。
【0024】
<無機充填剤>
本発明において、防食剤はワックス100質量部に対して、50〜500質量部の無機充填剤を含むことを特徴とする。このような含有量の無機充填剤を含むことにより、防食剤の施工性と防食性とを硬度に両立させることができる。無機充填剤の含有量が50質量部未満であると、防食剤の硬化前の稠度が高くなり、施工性が悪化するため好ましくない。一方、500質量部を超えると、防食剤の防錆効果および被着物との密着性が悪化するため好ましくない。このような無機充填剤は、ワックス100質量部に対して、100〜300質量部を含むことが好ましい。
【0025】
かかる無機充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、クレー、ゼオライト、シリカ、ベントナイト等を挙げることができ、これらの1種類のみを用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、クレー、ゼオライト、およびベントナイトを組み合わせて用いることが好ましい。
【0026】
<粘着剤>
本発明において、防食剤は、被着物との接着性を向上させるための粘着剤を含んでいてもよい。かかる粘着剤としては、たとえばポリブテン、水添テルペン樹脂、テルペン樹脂、水添ロジンエステル等を挙げることができ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
防食剤に含まれる粘着剤は、ワックス100質量部に対し、1〜15質量部を含むことが好ましい。1質量部未満であると、粘着剤の効果を十分に発揮することができず、15質量部を超えると、配合単価が高くなるだけで効果が向上せず好ましくない。粘着剤は、ワックス100質量部に対し、5〜10質量部含むことがより好ましい。
【0028】
<防錆剤>
本発明において、防食剤は、その防錆効果を向上させるための防錆剤を含むことが好ましい。かかる防錆剤としては、たとえば脂肪酸、脂肪族アミン、有機リン酸エステル、有機スルホン酸塩、ラノリン誘導体、石油酸化物、ソルビタン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、アミド誘導体などを挙げることができ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
防食剤に含まれる防錆剤は、ワックス100質量部に対し、1〜15質量部を含むことが好ましい。1質量部未満であると、防錆性能を十分に付与することができず、15質量部を超えると、防食剤の材料単価が高くなるだけで効果の上昇が伴わないため好ましくない。防錆剤は、ワックス100質量部に対し、5〜10質量部を含むことがより好ましい。
【0030】
<ドライヤー>
本発明において、防食剤は、大気中における乾性油の酸化を促進し、乾燥時間を短縮する触媒作用を有するドライヤーを含むことが好ましい。かかるドライヤーを添加することにより、防食剤の硬化時間を短縮するとともに、乾性油からなる被膜の形成時間を短縮することができる。
【0031】
このようなドライヤーとしては、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、鉄、錫、ニッケル、セリウム、カリウムなどの金属の有機金属化合物を用いることができ、たとえばナフテン酸コバルト、ヘキソエートバリウム、ヘキソエートカルシウム等の金属石鹸を好適な材料として挙げることができる。これらのドライヤーは、1種類を用いても良いし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
防食剤におけるドライヤーは、ワックス100質量部に対し、1〜10質量部を含むことが好ましく、より好ましくは2〜8質量部である。ドライヤーの含有量が1質量部未満であると、ドライヤーとしての性能を十分に発揮することができず、10質量部を超えると、配合単価が高くなるだけで効果の上昇が伴わないため好ましくない。
【0033】
<被覆防食テープの製造方法>
本発明の被覆防食テープは、以下のようにして製造する。まず、乾性油とワックスとをプラネタリーミキサーで均一になるまで攪拌する。次に、無機充填剤と、必要に応じて各種配合剤(ドライヤーを除く)とをプラネタリーミキサーに徐々に投入し、せん断力をかけながら均一になるまで混練りする。この時、無機充填剤の分散が十分ではない場合は、3本ロールを用いてさらに混合してもよい。ドライヤーを配合する場合は、無機充填剤が完全に分散した後に最後に投入する。このようにして均一に混合することにより、防食剤を得る。
【0034】
次に、上記で作製した防食剤を多孔質基材に含浸させる。図2は、多孔質基材に防食剤を含浸させるときの工程を示す模式的な断面図である。図2に示されるように、上記で作製した防食剤15を加熱して溶融させた状態にする。そして、この防食剤15に対し、ロールトゥーロールで多孔質基材14を浸漬させて、多孔質基材14に防食剤15を含浸させたものを冷却しながら巻き取る。上述のように多孔質基材14に防食剤が浸漬されるためには、防食剤に流動性を付与することが必須であるが、そのために防食剤の油成分および無機充填剤の含有量を調整する。
【0035】
そして、巻取り指定の幅に切断することにより、防食剤が含浸された被覆防食テープを作製する。このようにして切断した被覆防食テープを真空包装して空気との接触を避けて保存する。
【0036】
<被覆防食テープの施工方法>
上記の製造方法によって作製された被覆防食テープを構造物に被覆防食テープを貼り付ける。そして、被覆防食テープの表面を撫で付けて滑らかにし、外気に接触させて放置する。被覆防食テープを巻きつけてから、約1日〜14日経過後に、防食剤の表面に被膜が形成され、約30日〜60日経過後には、防食剤の内部まで完全に硬化する。そして、この被覆防食テープを塗料等によって塗装することにより、その被覆防食テープに意匠性を付与することができる。なお、構造物の表面にゴミや汚れがある場合は、それらを除去した後に構造物に被覆防食テープを巻き付けなければならないことは言うまでもない。
【0037】
ここで、被覆防食テープを適用する構造物としては、ガス、水道などの配管、電線などを敷設する電線管、あるいは、原料や半製品の搬送に用いられる配管、さらには、各種貯留槽などといった常時海水に接触しているタンカーや屋外で用いられる鉄製の構造物などにおいて、その腐食の防止が必要である場所であれば特に限定されない。
【0038】
以下において、本発明の被覆防食テープを鋼管に施工した場合について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表わすものではない。
【0039】
図1は、本発明の被覆防食テープを鋼管に適用したときの断面図である。図1に示されるように、内部が中空の鋼管11の表面に被覆防食テープ12を巻き付けられている。本発明の被覆防食テープ12は、その表面に乾性油由来の被膜が形成されているため、その上に塗料を塗布してもはじくことがなく、均一に塗膜13を施すことができ、意匠性を付与することができる。
【0040】
これにより鋼管11は、被覆防食テープ12によって完全に被覆されているため、たとえばタンカーのような常に海水飛沫に接触する場所に配置されていても、鋼管11の腐蝕を防止することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
<実施例1〜9、比較例1〜3>
各実施例および各比較例において、表1に準じて、乾性油およびワックスを配合し、プラネタリーミキサーを用いて均一になるまで攪拌した。ここで、ワックスとしては、石油ワックス:合成ワックス=10:1〜10:1.5の配合比で配合したものを用いた。なお、石油ワックスは、表1に記載された量の鉱物油に溶融された状態のものを使用した。
【0043】
次に、上記の攪拌を終えた後の乾性油およびワックスに対し、表1の配合に準じて、無機充填剤、粘着材、防錆剤、ドライヤーを徐々に投入して、せん断力をかけながら均一になるまで攪拌して各配合の防食剤を得た。
【0044】
そして、図2に示されるように、上記の防食剤15を120℃まで加熱して攪拌し溶融させた。この状態の防食剤15に不織布の多孔質基材14をロールトゥーロールで浸漬させて、冷却しながら巻取り指定の幅に切断して被覆防食テープを作製した。ここで、多孔質基材14としては、幅1100mm×長さ1,000mの不織布(製品名:アラフノン TRS−100(高安株式会社製))を用いた。上記で得られた被覆防食テープを必要に応じて切断した後に、真空包装することにより、空気との接触を避けるようにした。また、上記のようにして作製された被覆防食テープは、1.1mmの厚みであった。
【0045】
上記で得られた被覆防食テープが、被膜を形成するまでの日数(被膜形成日数)を評価するとともに、該被覆防食テープの塗装の可否、および防錆性を評価した。以下に評価基準を示し、表1にその結果を示す。
【0046】
(被膜形成日数)
上記で作製した被覆防食テープを、温度23±2℃、湿度(50±10)%で放置して、1〜2日ごとに防食剤の表面の状態を目視と指触にて確認した。表面の粘着が消失したときまでの時間を被膜形成日数とした。なお、被膜形成日数が長いほど、被膜を形成しにくいことを示している。
【0047】
(防錆性)
上記の被覆防食テープを温度23±2℃、湿度(50±10)%の条件下で放置して、被膜形成後の被覆防食テープの防錆性をJIS Z 1902の規定に準じて評価した。具体的には、鋼板上に硬化前の防食剤を塗布し、上記条件に放置した鋼板で中性塩噴霧試験を実施し、その結果を以下の基準で評価した。
A: 2,000Hr以上でも錆の発生が無い。
B: 1,000Hr以上で錆の発生が無い。
【0048】
(塗装の可否)
上記の被覆防食テープに対し、油性塗料(製品名:STAコートV2(熱研化学工業株式会社製))を塗布したときに塗料がはじいたときを「不可」と評価し、塗料がはじかずに塗布できたときを「可」と評価した。
【0049】
【表1】

【0050】
(注1)ワックス:石油ワックス(安藤パラケミー株式会社製):合成ワックス(安藤パラケミー株式会社製)=10:1〜1.5の割合で配合したもの。
(注2)乾性油:東新油脂株式会社製のアマニ油。
(注3)鉱物油:石油ワックスに由来の成分。
(注4)無機充填剤:白石カルシウム株式会社製のハードトップクレーS。
(注5)粘着剤:出光興産株式会社製のポリブテンHV1900。
(注6)防錆剤:日本乳化剤株式会社製のニューコール80。
(注7)ドライヤー:日本化学産業株式会社製のナフテックコバルト6%(T)。
【0051】
<評価結果>
表1に示される結果からも明らかなように、実施例1〜9の被覆防食テープは、基材に防食剤を含浸させてなるものであって、該防食剤は、ワックス100質量部に対し、油成分を50〜300質量部と、無機充填剤を50〜500質量部を含み、油成分は、乾性油20質量%以上を含むものである。このため、いずれの実施例も、14日以内の短時間で被膜を形成することができ、かつ防錆性に優れたものであった。しかも、かかる被覆防食テープの表面に被膜が形成されてから、その上に塗料を塗装しても、塗料がはじくことなく均一に塗布することができた。
【0052】
これに対し、比較例1〜3の被覆防食テープはいずれも、油成分が20質量%以上の乾性油を含まないものであるため、被膜形成に1年以上を要し、しかも塗料を塗布しても均一に塗布することができなかった。また、実施例4と実施例8との対比からも明らかなように、ナフテン酸コバルトからなるドライヤーを含むことにより、被膜の形成日数が短縮されることが明らかとなった。
【0053】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0054】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
10 構造物、11 鋼管、12 被覆防食テープ、13 塗膜、14 多孔質基材、15 防食剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に防食剤を含浸させてなる被覆防食テープであって、
前記防食剤は、ワックス100質量部に対し、油成分50〜300質量部と、無機充填剤50〜500質量部とを含み、
前記油成分は、乾性油20質量%以上を含む、被覆防食テープ。
【請求項2】
前記基材は、多孔質基材である、請求項1に記載の被覆防食テープ。
【請求項3】
請求項1または2に記載された被覆防食テープを構造物に巻きつけるステップと、
前記被覆防食テープを塗装するステップとを含む、防食施工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−117112(P2012−117112A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268255(P2010−268255)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】