説明

被覆電線の製造方法及び溝付き被覆電線

【課題】被覆電線を把持した状態の取り扱い性を向上させること。
【解決手段】導体芯線12を絶縁被覆した被覆電線の製造方法である。この製造方法は、導体芯線12を通過させてガイドするポイント治具40と、ポイント治具40の外周部に隙間をあけて設けられ、被覆電線の仕上がり径より大きい直径の吐出口部52を有するダイス50とを備える押出機30が用いられ、(a)導体芯線12をポイント治具40を通じて引き出す工程と、(b)ポイント治具40とダイス50との隙間に第1被覆材料115を供給する工程と、(c)ポイント治具40とダイス50との隙間で、ポイント治具40の周方向において、第1被覆材料115の少なくとも一箇所に外周側から第2被覆材料116を合流させる工程と、(d)第1被覆材料115及び第2被覆材料116を吐出口部52から吐出する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被覆電線の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆電線は、押出機により、導体芯線の外周側で被覆材料を押し出して製造される。押出機は、導体芯線が挿通されるポイント治具と、ポイント治具の外周側に設けられたダイスとを有し、ポイント治具の外周部とダイスの内周部との隙間を通じて被覆材料を押し出す。例えば、特許文献1には、押出機により、導線をダイスに挿通させながら導線の周囲に被覆材料を押出して被覆層を形成する工程を含む被覆電線の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−63737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような押出機には、ポイント治具の先端開口よりダイスの吐出口が前方に位置し、ダイスの吐出口が被覆電線の仕上がり径と同一に設定されている充実押出、ポイント治具の先端開口とダイスの吐出口とが略面一に設定され、ダイスの吐出口が被覆電線の仕上がり径より大きく設定されているルーズ押出等がある。
【0005】
充実押出では、ポイント治具の先端開口を通じて引き出された導体芯線に対して、ポイント治具の先端開口とダイスの吐出口との間で被覆材料の圧力がかかると共に、ダイスの吐出口が被覆電線の仕上がり径と同一に設定されているため、製造される被覆電線の表面は、滑らかな形状となる。
【0006】
ところで、被覆電線は、端部に端子が取り付けられ、該端子がコネクタ等に接続されることがある。この際、端子をコネクタのキャビティに挿入する作業者は、被覆電線における端子の後方の部位を持って、被覆電線を回転させつつ端子の姿勢を調整して接続作業を行う。
【0007】
しかしながら、充実押出で製造した被覆電線は表面が滑らかな形状であるため把持しても滑りやすく、端子挿入作業の際には、端子の姿勢を調整する際に回転させにくく、作業が面倒であった。
【0008】
そこで、本発明は、被覆電線を把持した状態の取り扱い性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、導体芯線を絶縁被覆した被覆電線の製造方法であって、前記導体芯線を通過させてガイドするポイント治具と、前記ポイント治具の外周部に隙間をあけて設けられ、前記被覆電線の仕上がり径より大きい直径の吐出口部を有するダイスと、を備える押出機が用いられ、(a)前記導体芯線を前記ポイント治具を通じて引き出す工程と、(b)前記ポイント治具と前記ダイスとの隙間に第1被覆材料を供給する工程と、(c)前記ポイント治具と前記ダイスとの隙間で、前記ポイント治具の周方向において、前記第1被覆材料の少なくとも一箇所に外周側から前記第2被覆材料を合流させる工程と、(d)前記第1被覆材料及び前記第2被覆材料を前記ダイスの前記吐出口部から吐出する工程と、を備える。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る被覆電線の製造方法であって、前記ダイスは、前記ポイント治具の先端部の前方に前記吐出口部が配置される位置に設けられている。
【0011】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る被覆電線の製造方法であって、前記工程(c)では、前記第2被覆材料を、前記ポイント治具の周方向において、前記第1被覆材料の二箇所に合流させる。
【0012】
第4の態様は、溝付き被覆電線であって、導体芯線と、前記導体芯線を周方向に亘って覆う第1被覆部と、前記第1被覆部の周方向において少なくとも一箇所に前記第1被覆部の外周側に重なって形成された第2被覆部とを含み、周方向において前記第2被覆部の側方に前記導体芯線の延在方向に沿って延在する溝部を有する被覆部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係る被覆電線の製造方法によると、導体芯線を通過させてガイドするポイント治具と、ポイント治具の外周部に隙間をあけて設けられ、ポイント治具の先端部の前方に被覆電線の仕上がり径より大きい直径の吐出口部を有するダイスとを備える押出機において、(a)導体芯線をポイント治具を通じて引き出す工程と、(b)ポイント治具とダイスとの隙間に第1被覆材料を供給する工程と、(c)ポイント治具とダイスとの隙間で、ポイント治具の周方向において、第1被覆材料の少なくとも一箇所に外周側から第2被覆材料を合流させる工程と、(d)第1被覆材料及び前記第2被覆材料を前記ダイスの前記吐出口部から吐出する工程とを備えるため、第1被覆材料に合流された第2被覆材料によって第1被覆材料が押し退けられることにより、導体芯線の周方向において第2被覆材料の側方に第1被覆材料の外周部が凹んだ溝部が形成された被覆電線を得ることができる。そして、溝部で被覆電線を把持することにより滑りが抑制され、被覆電線を把持した状態の取り扱い性を向上させることができる。
【0014】
第2の態様に係る被覆電線の製造方法によると、ダイスは、ポイント治具の先端部の前方に吐出口部が配置される位置に設けられているため、吐出口部の内側におけるポイント治具の先端部より下流側で第1被覆材料及び第2被覆材料が導体芯線に押し付けられることにより、導体芯線の延在方向においてより均一に整った被覆部を有する被覆電線を得ることができる。
【0015】
第3の態様に係る被覆電線の製造方法によると、工程(c)では、第2被覆材料を、ポイント治具の周方向において第1被覆材料の二箇所に合流させるため、二箇所の第2被覆材料の側方に溝部が形成される。そして、この二箇所の溝部を挟むように被覆電線を把持することにより、被覆電線の取り扱い性をより向上させることができる。
【0016】
第4の対応に係る溝付き被覆電線によると、導体芯線と、導体芯線を周方向に亘って覆う第1被覆部と、第1被覆部の周方向において少なくとも一箇所に第1被覆部の外周側に重なって形成された第2被覆部とを含み、周方向において第2被覆部の側方に導体芯線の延在方向に沿って延在する溝部を有する被覆部とを備えるため、溝部の位置で溝付き被覆電線を把持することにより、滑りが抑制されて取り扱い性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】溝付き被覆電線の斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】押出機30の平断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】図6の符号Aにおける部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係る溝付き被覆電線、溝付き被覆電線の製造方法について説明する。
【0019】
<溝付き被覆電線>
説明の便宜上、まず、被覆電線の用途について説明しておく。この被覆電線は、端部に端子が取り付けられて端子付き電線として用いられる電線である。そして、この端子付き電線は、コネクタ、ジャンクションボックス、リレーボックス等の接続対象に対して、端子部分が挿入されることにより接続される。この端子部分の挿入作業の際に、作業者は、被覆電線を把持して端子部分の姿勢を調整しつつ、該端子部分をキャビティ内に挿入する。しかしながら、被覆電線の表面が滑らかであると、手が滑って被覆電線を回転させ難く、取り扱いが煩わしい。そこで、この溝付き被覆電線は、表面に滑り止め部分を形成することにより、把持したときのすべりを抑制し、作業者による取り扱い性を向上するものである。
【0020】
溝付き被覆電線10は、導体芯線12と、被覆部14とを備えている(図1、図2参照)。
【0021】
導体芯線12は、一本又は複数本の素線によって構成される部分であり、複数本の素線によって構成される場合、その複数本の素線が撚られて形成されていることもある。この導体芯線12は、延在方向に直交する断面視において略円形に構成されている。導体芯線12を構成する素線は、銅(又は銅合金)、アルミニウム(アルミニウム合金)等で形成されている。
【0022】
被覆部14は、導体芯線12の外周部を覆う形状に形成され、導体芯線12について外部からの絶縁及び保護を行う部分である。この被覆部14は、第1被覆部15と、第2被覆部16とを含む。第1被覆部15は、導体芯線12を周方向に亘って覆う部分である(図2参照)。また、第2被覆部16は、第1被覆部15の周方向において少なくとも一箇所に第1被覆部15の外周側に重なって設けられた部分である。そして、被覆部14は、導体芯線12の延在方向に直交する断面視において、全体として円形の外部形状に形成されている。もっとも、断面視円形とは、完成形態において断面視円形を目指して製造した場合における製造上の誤差等の範囲を許容するものとする。ここでは、被覆部14は、導体芯線12の中心軸を挟んで一対の第2被覆部16を含んでいる。
【0023】
第1被覆部15及び第2被覆部16は、それぞれ、後述する溶融された第1被覆材料115又は第2被覆材料116が固まることにより形成される。ここでは、第1被覆部15と第2被覆部16とは、同一の組成物で異なる色の材料で形成された部分である。もっとも、第1被覆部15と第2被覆部16とは、色が同じ材料によって形成されていてもよい。この第1被覆部15及び第2被覆部16は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等で形成されているとよい。すなわち、第1被覆材料115及び第2被覆材料116は、上記材料が溶融されて固まる前の状態のものを言う。
【0024】
また、被覆部14は、周方向において少なくとも一箇所に導体芯線12の延在方向に沿って延在する溝部18を有する。この溝部18は、被覆部14の周方向における第2被覆部16の側方に形成されている。より具体的には、溝部18は、被覆部14の周方向において、一対の第2被覆部16の各一側方に一つずつ形成されている。ここでは、一対の溝部18は、一対の第2被覆部16の間の位置にそれぞれ位置している。
【0025】
実施形態に係る溝付き被覆電線10によると、導体芯線12を覆う被覆部14が、周方向に亘って導体芯線12を覆う第1被覆部15と、第1被覆部15の周方向において少なくとも一箇所に第1被覆部15の外周側に重なって形成された第2被覆部16とを含み、被覆部14の周方向において第2被覆部16の側方に導体芯線12の延在方向に沿って延在する溝部18を有する。このため、溝部18の位置で溝付き被覆電線10を把持することにより、溝部18が引っ掛かりとなって滑りが抑制され、取り扱い性が向上される。
【0026】
<押出機>
次に、溝付き被覆電線10を製造する際に使用する押出機30について説明する(図3参照)。押出機30は、ポイント治具40と、ダイス50と、第1供給部60と、第2供給部70とを備えている。
【0027】
ポイント治具40は、導体芯線12を通過させてガイドする部分である。このポイント治具40は、導体芯線12を通過可能なガイド孔部42を有している。ポイント治具40の先端部の開口を先端開口部44という。また、ポイント治具40の先端側部分は、円錐状に形成されて先端部に向けて徐々に小径になっている。そして、導体芯線12は、ガイド孔部42の先端開口部44を通じて引き出されることにより、直線状の経路にガイドされる。
【0028】
ダイス50は、ポイント治具40にガイドされて引き出される導体芯線12の外周部を覆うように、樹脂材料を吐出する部分である。このダイス50は、先端部に、樹脂材料を吐出する吐出口部52を有している。この吐出口部52は、溝付き被覆電線10の仕上がり径より大きい直径に設定されている。また、ダイス50は、先端側に円錐状の内部空間を有し、この内部空間が吐出口部52に向けて徐々に小径になっている。
【0029】
そして、ダイス50は、ポイント治具40の外周部に隙間をあけると共に、ポイント治具40の先端部の前方に吐出口部52が位置するように設けられる。ダイス50の正面視において、ポイント治具40の先端開口部44は、吐出口部52の中心に位置する。
【0030】
第1供給部60は、ポイント治具40とダイス50との隙間に、溶融した第1被覆材料115を供給する部分である(図3、図4参照)。例えば、第1供給部60は、加熱して溶融させた第1被覆材料115を、スクリューにより送り、ポイント治具40とダイス50との間の空間に連通する供給路62を通じてポイント治具40とダイス50との隙間に供給する構成を採用することができる。ここでは、第1供給部60の供給路62は、ポイント治具40の中心軸を挟んだ両側に一対設けられている。
【0031】
第2供給部70は、ポイント治具40とダイス50との隙間に、溶融した第2被覆材料116を供給する部分である(図3、図5参照)。この第2供給部70は、第1供給部60より下流側(ポイント治具40及びダイス50の先端側)に第2被覆材料116を供給するように構成されている。例えば、第2供給部70は、第1供給部60と同様に構成され、第1供給部60の供給路62より下流側で、ポイント治具40とダイス50との間の空間に連通する供給路72を有しているとよい。ここでは、第2供給部70の供給路72は、ポイント治具40の中心軸を挟んだ両側で、且つ、水平方向から供給する位置に一対設けられている。
【0032】
<溝付き被覆電線の製造方法>
次に、上記押出機30を使用した溝付き被覆電線10の製造方法について説明する(図3参照)。
【0033】
まず、導体芯線12を、ポイント治具40を通じて引き出す(工程(a))。ポイント治具40にガイドされる導体芯線12は、ダイス50の吐出口部52を通じて下流側に直線状に引き出される。導体芯線12の引き出しは、押出機30の下流側に配置される送給機構等により行われるとよい。
【0034】
また、ポイント治具40とダイス50との隙間に第1被覆材料115を供給する(工程(b))。すなわち、第1被覆材料115は、第1供給部60から一対の供給路62を通じて供給され、ポイント治具40とダイス50との隙間において周方向全体に行き亘って、下流側へと押し流されていく。
【0035】
さらに、ポイント治具40とダイス50との隙間で、ポイント治具40の周方向において第1被覆材料115の少なくとも一箇所に第2被覆材料116を合流させる(工程(c))。ここでは、第2被覆材料116を、第2供給部70における一対の供給路72を通じて、ポイント治具40の周方向において、第1被覆材料115の二箇所に合流させる。
【0036】
第2供給部70から供給路72を通じて供給される第2被覆材料116は、ダイス50の周方向二箇所で第1被覆材料115を押し退けて、該第1被覆材料115の外周側に重なった状態で下流へと押し流されていく。
【0037】
ここで、第2被覆材料116は、第2供給部70から供給される圧力が大きいほど、周方向に大きく広がる。すなわち、ポイント治具40とダイス50との隙間における第1被覆材料115のうち第2被覆材料116の側方に位置する部分は、周方向において、第2被覆材料116が拡がろうとする力により押し退けられる。
【0038】
また、ダイス50の吐出口部52は、溝付き被覆電線10の仕上がり径より大きい直径に設定されているため、吐出口部52の内側における圧力は、比較的(吐出口部が仕上がり径と同径に設定される充実押出と比較して)小さくなる。このため、第1被覆材料115および第2被覆材料116は、ポイント治具40とダイス50との隙間における吐出口部52付近でも僅かに変形可能である。しかも、吐出口部52付近まで押し流された第1被覆材料115及び第2被覆材料116は、溶融状態から徐々に温度低下しており、変形可能な軟らかい状態であるものの溶融状態に比べて粘度が高い状態になっている。このため、第1被覆材料115のうち、周方向において第2被覆材料116の側方の部位には、第2被覆材料116が周方向に広がろうとする力と、この力に対する反作用による力が向かい合って加わる。
【0039】
これにより、第1被覆材料115における第2被覆材料116の側方の部位は、その周方向両側から加わる力により内周側に逃げて凹んだ状態となる。この凹み部分は、第2被覆材料116の一方側だけにできることが多い。ここでは、第2供給部70の供給路72が水平方向からポイント治具40とダイス50との隙間に第2被覆材料116を供給するように構成されているため、供給された第2被覆材料116には、重力による下方に移動しようとする力も作用している。このため、第1被覆材料115における凹み部分は、周方向において第2被覆材料116の下方側の側方に形成される。
【0040】
そして、吐出口部52の内側において導体芯線12の外周部を覆う第1被覆材料115及び該第1被覆材料115の外周側に重なった第2被覆材料116を、吐出口部52から吐出する(工程(d))。吐出口部52から吐出された直後の第1被覆材料115及び第2被覆材料116は、仕上がり径より大きい直径である。その後、第1被覆材料115及び第2被覆材料116は、導体芯線12の外周部を覆った状態で下流側から引張られることにより引き伸ばされて、溝付き被覆電線10の仕上がり径に形成される。
【0041】
そして、第1被覆材料115及び第2被覆材料116が温度低下により硬くなると、第1被覆材量部15及び第2被覆材量部16を有する被覆部14が形成される。以上の工程により、溝付き被覆電線10が製造される。
【0042】
これまで、ダイス50の吐出口部52がポイント治具40の先端部の前方に位置する押出機30を用いて溝付き被覆電線10を製造する例で説明してきたが、これに限られるものではない。例えば、ダイス50の吐出口部52がポイント治具40の先端部と略面一になる位置に配置されている押出機を用いてもよい。すなわち、この構成に係る押出機を用いても、導体芯線12の引出速度、第1被覆材料115及び第2被覆材料116の供給量(圧力)等を調節することにより、溝付き被覆電線10を製造することが可能であると考えられる。もっとも、該押出機を用いる場合、第1被覆材料115及び第2被覆材料116は、吐出口部52の内側では導体芯線12に対して押し付けられず、吐出口部52から吐出された後に該導体芯線12の外周部に付着する。このため、被覆部14の溝部18は形成可能であるものの、溝部18を形成しつつ導体芯線12の延在方向に均一に整った被覆部14を形成することは難しい。
【0043】
そこで、出願人は、溝部18を形成しつつ導体芯線12の延在方向に均一に整った被覆部14を形成するためには、ダイス50の吐出口部52がポイント治具40の先端部の前方に位置する押出機30を用いて溝付き被覆電線10を製造するのがより好ましいことを見いだした。
【0044】
実施形態に係る溝付き被覆電線10の製造方法によると、第1被覆材料115に合流された第2被覆材料116によって第1被覆材料115が押し退けられることにより、導体芯線12の周方向において第2被覆材料116の側方に第1被覆材料115の外周部が凹む。これにより、第1被覆部15のうち、周方向における第2被覆材量部16の側方に溝部18が形成された溝付き被覆電線10を得ることができる。溝部18の位置で溝付き被覆電線10を把持することにより、該溝部18が引っ掛かりとなって滑りが抑制され、溝付き被覆電線10を把持した状態の取り扱い性を向上させることができる。
【0045】
また、ダイス50が、ポイント治具40の先端部の前方に吐出口部52が配置される位置に設けられている押出機30を用いた製造方法によると、吐出口部52の内側におけるポイント治具40の先端部より下流側で第1被覆材料115及び第2被覆材料116が導体芯線12に押し付けられることにより、導体芯線12の延在方向においてより均一に整った被覆部14を有する被覆電線10を得ることができる。
【0046】
また、第2被覆材料116を、ポイント治具40の周方向において第1被覆材料115の二箇所に合流させるため、二箇所の第2被覆材料116の側方で第1被覆材料115の外周部が凹む。このようにして、二箇所の第2被覆部16の側方に溝部18が形成された溝付き被覆電線10を、二箇所の溝部18を挟むように溝付き被覆電線10を把持することにより、より確実に滑りを抑制して溝付き被覆電線10の取り扱い性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 溝付き被覆電線
12 導体芯線
14 被覆部
15 第1被覆部
16 第2被覆部
18 溝部
30 押出機
40 ポイント治具
50 ダイス
52 吐出口部
60 第1供給部
70 第2供給部
115 第1被覆材料
116 第2被覆材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体芯線を絶縁被覆した被覆電線の製造方法であって、
前記導体芯線を通過させてガイドするポイント治具と、
前記ポイント治具の外周部に隙間をあけて設けられ、前記被覆電線の仕上がり径より大きい直径の吐出口部を有するダイスと、
を備える押出機が用いられ、
(a)前記導体芯線を前記ポイント治具を通じて引き出す工程と、
(b)前記ポイント治具と前記ダイスとの隙間に第1被覆材料を供給する工程と、
(c)前記ポイント治具と前記ダイスとの隙間で、前記ポイント治具の周方向において、前記第1被覆材料の少なくとも一箇所に外周側から前記第2被覆材料を合流させる工程と、
(d)前記第1被覆材料及び前記第2被覆材料を前記ダイスの前記吐出口部から吐出する工程と、
を備える、被覆電線の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の被覆電線の製造方法であって、
前記ダイスは、前記ポイント治具の先端部の前方に前記吐出口部が配置される位置に設けられている、被覆電線の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の被覆電線の製造方法であって、
前記工程(c)では、前記第2被覆材料を、前記ポイント治具の周方向において、前記第1被覆材料の二箇所に合流させる、被覆電線の製造方法。
【請求項4】
導体芯線と、
前記導体芯線を周方向に亘って覆う第1被覆部と、前記第1被覆部の周方向において少なくとも一箇所に前記第1被覆部の外周側に重なって形成された第2被覆部とを含み、周方向において前記第2被覆部の側方に前記導体芯線の延在方向に沿って延在する溝部を有する被覆部と、
を備える、溝付き被覆電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−41666(P2013−41666A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175829(P2011−175829)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】