説明

被覆食品組成物及び関連製造方法

保護的食品コーティング方法であって、食品成分基体を準備し、少なくとも一部の前記基体を、ポリマー成分、乳化剤、粒子成分及びこれらの組み合わせの少なくとも1つに接触させ、各前記成分は、前記基体及び他の前記成分の少なくとも1つと相互作用親和が可能である保護的食品コーティング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出願第60/721280号(2005年9月28日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)の優先権を享有する。
米国政府は、農務省からマサチューセッツユニバーシティーへの許可番号2002−35503−12296に準じてこの発明に対する特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
製品品質の維持について、食糧生産者、プロセッサー、食物供給における小売業者及びその他ならびに流通網によって、長い間、関心がもたれている。輸送、保存及び保存寿命は、それぞれ、結果として、最終的な劣化プロセス及び栄養価の全体的な損失を招く。廃棄され又は売り物にならない食材の損失は何億ドルにも計算され、消費者コスト全体の増大をもたらす。
【0003】
種々の技術が品質を維持するために開発されているが、各々は特定の生産者、プロセッサー及び/又は消費者に関係する1以上の問題を伴う。例えば、多数の酸化防止剤及び安定化成分が利用されているが、それにともなって健康及び安全に対する懸念が認められている。同様に、種々のコーティング材料が考案されたが、特定の用途、局面及び均一性の懸念をもたらすかもしれない。さらに、食用に適さない又は天然でないと認められる場合、そのようなコーティング又はそれらの除去が、需要及び最終的な販売を減少するかもしれない。
【0004】
発明の要旨
上記の観点から、本発明の目的は、多成分被覆食品組成物及び製造方法を提供することであり、それによって、上述したことを含む当該分野における種々の懸念を解消することができる。本発明の1以上の観点は、所定の目的に合致し、一方、1以上の他の観点は、所定の他の目的に合致することは当業者に理解されるであろう。各目的は、本発明のその全ての観点において、あらゆる局面に等しく適用されなくてもよい。そのように、この発明のいずれの1つの面に関しても、以下の目的は、択一的に捕らえることができる。
【0005】
本発明の目的は、可食性食品等級成分のある実施形態を用いて、被覆組成物に対する分子又はコロイドベースの取り組みを提供することである。
【0006】
本発明の関連する目的は、分子又はコロイドの取り組みを利用し、用途制御を助長することである。
本発明の他の目的は、1以上の分子又はコロイド系成分から選択的に被覆組成物を設計し、1以上の品質基準を維持することである。
本発明の他の目的は、ナノ(又はミクロ)寸法の食品組成物、それらの多成分コーティングを提供することであり、そのようなコーティングは食品品質、味又は栄養を含むことのない可食性である。
【0007】
本発明の他の目的、特徴、利益及び利点が要旨及び以下の記載から明らかであり、食品等級のエマルジョン、特にポリマー成分及び関連食品組成物及び製品、関連製造技術の知識を有する当業者にとって容易に理解できるであろう。そのような目的、特徴、利益及び利点は実施例、データ、図面及びこれらから引き出される全ての合理的な推論の単独またはここに組み込まれた参考文献の検討を一緒に考慮することにより明らかであろう。
【0008】
したがって、本発明は、特定の食品成分上に又は周囲に、直接種々のコーティング成分を調製又は適用することができ、そのような適用は、従来のテクノロジーの使用と比較してよりコントロール可能である。特に、成分組成物、被覆寸法及び種々のコーティング成分の数及び/又は順序を選択することによって、レオロジー、透過性、安定性及び他のコーティングパラメータをコントロールすることができる。さらに、そのような方法は、そのような被覆に、抗菌物質、抗褐色剤、酸化防止剤、酵素及び当該分野公知のそのような活性成分によって与えられるユニークな機能的特性を、設計する又は組み込む機会を提供する。
【0009】
一部には、本発明は、それらに又はそれらの周りに多成分コーティングを含む食品又は組成物の保護的コーティング及び/又は製造のための方法を提供することができる。概して、本発明の方法は、コーティング成分と、それらに又はそれらに付随して適用される食品成分基体及び/又は他の成分との相互親和性を利用することができる。例えば、1又は複数のコーティング成分は、食品成分基体又は予め塗布/吸着したコーティング材料の表面に、結合、塗布又は吸着させることができ、基体表面及び/又はコーティング材料の物理的又は化学的特性に応じたそのような相互親和性を、基体を劣化に対して安定させるために用いることができる。そのような相互作用は、本発明を認識する当業者にとって明らかであり、それは、限定されることなく、静電的、水素結合及び疎水性/親水性相互作用ならびにファンデアワールス相互作用から選択される。従って、限定されることなく、そのような保護方法は、食品成分基体を準備し、食品成分を食品等級のポリマー成分、食品等級の乳化剤成分及び/又は食品等級の粒子成分の1つに接触させ(その少なくとも一部は実効荷電を有し)、及びそれらを、1以上の食品等級乳化剤成分、ポリマー成分及び/又は粒子成分に接触又は取り込ませ(少なくともそれぞれの一部は、先に組み込まれ又は接触した成分に対して反対の実効電荷を有する)ることを含むことができる。
【0010】
あるいは、機能的な又は活性な粒子成分は、上述した乳化剤及び/又はポリマー成分の1以上に接触又組み込み、あるいはエマルジョンの一部としてそれらに導入することができる。例えば、油脂又は疎水性材料(例えば、限定されず、香油、酸化防止剤、抗菌物質など)の水性エマルジョンは、先に適用した乳化剤又はポリマー成分に接触させることができ、任意に、対応する粒子材料を提供するために、乾燥し、次いで、多成分コーティング組成物の一部として使用するために再構成する。係属中の出願「カプセル化エマルジョン及び製造方法」及び「安定化された抗菌性組成物及び関連方法」(全趣旨を参照することによりここに取り込む)参照。しかし、ここの他のいずれかに記載されているように、そのような乳化剤、ポリマー成分及び粒子成分は、可食性とすることができ、選択又は組み合わせに応じて機能させることができ、粒子食品組成物に照らして良好に性能を発揮させることができる。
【0011】
従って、特定の実施形態において、そのような方法は、反対に荷電された乳化剤及び食品等級ポリマー成分に交互の接触又は組み込みを含み、そのようなそれぞれの接触及び組み込みは、先に接触又は組み込まれた乳化剤又はポリマー成分と静電的に相互作用させることを含む。あるいは、本発明の広範な観点によれば、他のコーティング成分は、食品成分基材に接触させることができ、続いて、限定されないが、水素結合ならびに種々の親水性/疎水性相互作用に基づく親和性を含む他の物理的又は化学的相互作用によってそれらに適用することができる。
【0012】
一部には、また、本発明は、層形成のための代替の方法を含む。上記に関連して、ポリマー成分、乳化剤又は粒子成分は、それらとの十分な静電的相互作用をもたらさない条件下又はpHで、他成分又は食品成分と接触させることができる。よって、ポリマー成分、乳化剤又は粒子成分との静電的相互作用及びこれら成分の組み込みを促進するために十分な基体又はコーティングの実効電荷を変化させるために、pHを変化させることができる。限定されることなく、食品基体は、その等電点より低いpHでタンパク質(例えば、限定されず、カゼイン、ホエイ、大豆、卵又はゼラチン)と接触させることができ、カチオン性又は正の実効荷電コーティング又はフィルムを形成することができ、その後にカチオン性又は負の実効荷電多糖類(例えば、限定されず、ペクチン、カラゲナン、アルギナート又はアラビアゴム)コーティングを、初めのコーティング/フィルムとの静電的相互作用のために適用することができる。
【0013】
本発明の食品又は成分は、限定されないが、生又は加工の動物及び植物生成物及びそれらの成分を含み、そのような生成物は、限定されないが、全果物及び野菜、果物及び野菜の小片、ハーブ、スパイス、ナッツ及び穀物を含む。他の実施形態では、本発明の食品成分は、限定されないが、パスタ、穀類、パン類商品、キャンディ、冷凍食料、カン詰製品、菓子類及び肉製品のような加工食品を含むことができる。
【0014】
乳化剤成分は、その上の食品成分又はポリマー成分に少なくとも吸着し、静電的相互作用し及び/又は結合することができる当該分野で公知のいずれかの食物等級の表面活性成分、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含むことができる。一実施形態では、乳化剤は、食品成分基体又は基体上若しくはその周りのポリマー成分(少なくともそれらの一部は実効電荷を有する)に接触させることができる。乳化剤成分は、小分子界面活性剤、脂肪酸、リン脂質、タンパク質及び多糖類を含むことができる。そのような乳化剤は、限定されないが、レシチン、キトサン、改変デンプン、ペクチン、ガム(例えば、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム等)、アルギン酸、アルギナート及びそれらの誘導体ならびにセルロース及びその誘導体の1以上をさらに含んでいてもよい。タンパク質乳化剤は、酪農タンパク質(例えば、ホエイ及びカゼイン)、植物タンパク(例えば、大豆)、食肉タンパク質、魚タンパク質、植物タンパク質、卵タンパク質、オバルブミン、糖タンパク質、ムコタンパク質、リンタンパク質、血清アルブミン、コラーゲン及びそれらの組み合わせのいずれか1つを含むことができる。タンパク質乳化剤は、それらのアミノ酸残基(例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)に基づいて、コーティングの全体の実効電荷を最適化するために選択することができる。
【0015】
実際、乳化剤成分は、例えば、モノグリセライドの酢酸エステル(ACTEM)、モノグリセリドの乳酸エステル(LACTEM)、モノグリセライドのクエン酸エステル(CITREM)、モノグリセライドのジアセチル酸エステル(DATEM)、モノグリセライドのコハク酸エステル、ポリグリセロールポリリシノール酸エステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、脂肪酸の蔗糖エステル、モノ及びジグリセリド、果物酸エステル、ステアロイルラクチラート塩、ポリソルベート、澱粉、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び/又はそれらの組合せを含む広範な乳化剤を含むことができる。種々の他の乳化剤成分及び可能性のあるコロイドアセンブリは、所定の具体例、例えば、ミセル、バイレイヤー、ビークルとともに以下に記載されたものを含むことができる。
【0016】
上述したように、ポリマー成分は、吸着、静電気相互作用及び/又は食品成分及び/又は関連乳化剤成分への結合が可能ないずれかの食品等級のポリマー材料を含むことができる。従って、食品等級のポリマー成分は、限定されないが、タンパク質(例えば、ホエイ、カゼイン、大豆、卵、植物、肉及び魚タンパク質)、イオン性又はイオン化可能な多糖類(例えば、キトサン及び/又はキトサン硫酸塩)、セルロース、ペクチン、アルギナート、核酸、グリコーゲン、アミロース、キチン、ポリヌクレオチド、アラビアゴム、アカシアガム、ガラギーナン、キサンタン、寒天、グアーゴム、ゲランガム、トラガカントゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、リグニン及び/又はそれらの組み合わせから選択されるバイオポリマー材料であってもよい。上述したように、そのようなタンパク質成分は、それらのアミノ酸残基に基づいて、全体の実効電荷、乳化剤成分との相互作用及び/又は結果として生じるエマルジョン安定性を最適化するために選択することができる。食品等級のポリマー成分は、改変ポリマー(例えば、改変デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン又はリグニンスルホン酸塩)から、代わりになるべきものとして選択することができる。本発明とともに有用な他のポリマー成分を以下に記載する。
【0017】
本発明は、特定の食品成分に適用できる環境又は最終用途状況の下で十分に安定な多層コーティング又はフィルムの形成をもたらす乳化剤、粒子成分及び/又はポリマー成分のいずれかの組み合わせを意図する。従って、食品成分を、pH、イオン強度、塩濃度、温度及び加工条件によって、広範な乳化剤/ポリマー成分/粒子成分で、全体又は部分的にカプセル化及び/又はコーティングすることができる。そのような乳化剤/ポリマー成分/粒子成分の組み合わせは、他との相互作用及び対応多成分コーティング組成物の形成によってのみ制限される。そのようなエマルジョン/ポリマー成分/粒子成分は、出願中の特許出願第11/078,216号(2005年3月11日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)で記載又は示されたものから選択することができる。
【0018】
上記によれば、粒子成分は、限定されることなく、食品成分表面、乳化剤又はポリマーに吸着可能であり、疎水性であるか又は水性媒体に少なくとも部分的に不溶とすることができ及び/又は水性媒体中でエマルジョンを形成することができる。特定の実施形態において、粒子成分は、限定されないが、当業者に公知のいずれかの可食植物油(例えば、コーン、大豆、キャノーラ、菜種、オリーブ、ピーナツ、藻類、パーム、ココナッツ、ナッツ及び/又は植物油、魚油又はその組合せ)を含む脂肪又は油成分を含むことができる。粒子成分は、水素化又は部分的に水素化された脂肪及び油から選択することができ、例えば、酪農脂肪を含むいずれかの乳業又は動物性脂肪又は油を含むことができる。さらに、粒子成分は、香料、酸化防止剤、防腐剤及び/又は栄養成分(例えば、脂溶性ビタミン)、所望の機能作用(例えば、限定されることなく、劣化に対する安定性)のために少なくとも部分的に(ある程度)十分な量のいずれかをさらに含むことができる。
【0019】
本発明のより幅広い観点と一致して、粒子成分は、限定されないが、所定の食品又はエンドユーザ用途で必要かもしれない、脂肪酸(飽和又は不飽和)、グリセロール、グリセリド及びそれらの各誘導体、リン脂質及びそれらの各誘導体、糖脂質、フィトステロール及び/又はステロールエステル(例えば、コレステロールエステル、フィトステロールエステル及びそれらの誘導体)、カロテノイド、テルペン、酸化防止剤、着色剤及び/又は香料オイル(例えば、ペパーミント、柑橘類、ココナッツ又はバニラ及びその抽出物(例えば、柑橘類油からのテルペン))を含むいずれかの天然及び/又は合成脂質成分をさらに含有することができることは容易に理解される。そのような成分の他は、限定されないが、臭素化植物油、エステルガム、蔗糖アセテートイソ酪酸塩、ダマールガム等が挙げられる。従って、本発明は、広範囲で、種々の分子量の可食油脂、ワックス及び/又は脂質成分を意図しており、炭化水素類(芳香族、飽和、不飽和)、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸性及び/又はアミン部位又は官能基を含む。
【0020】
限定されることなく、被覆食品成分は、食品等級の乳化剤、粒子及び/又はポリマー成分及び標準的な製造方法(例えば、ジョモジナイズ及び混合)を用いて製造することができる。まず、実効的に荷電された乳化剤成分を含む一次コーティングを、乳化剤媒体と接触(例えば、ディッピング又はスプレー)させることによって、食品成分に適用することができる。任意に、取り込まれていない乳化剤成分のいずれかを除去するために、すすぎ又は洗浄を行うことができる。二次コーティングは、一次コーティングと、適当な媒体中で、ポリマー成分または粒子成分に接触させることによって製造することができる。ポリマー成分は、一次コーティングの少なくとも一部とは反対の実効電荷を有することができる。任意に、すすぎ又は洗浄によって、取り込まれていない乳化剤成分のいずれかを除去することができる。上述したように、エマルジョンの特徴は、粒子乳化剤及びポリマー成分のいずれかの間の静電的相互作用を促進又は高めるために、pH調整によって変化させることができる。
【0021】
従って、本発明は、少なくとも一部には、食品成分基体、乳化剤成分及びポリマー成分を含む食品又は組成物に関する。本発明の広範な観点に一致して、そのような組成物は、食品成分基材上又はその周りのいずれかの食品等級の複数の成分層を含みことができ、各層は、隣接する又は先に適用された材料の少なくとも一部と相互的親和性(例えば、限定されることなく、反対の実効電化)を含む。あるいは、粒子エマルジョン又は懸濁剤を、乳化剤又はポリマー成分とともに適用することができ、または乾燥し、その後の適用のために再構成することができる。
【0022】
発明の詳細な説明
ここでの他の部分に説明したように、本発明は、被覆食品組成物及び製造方法に指向することができる。本発明の乳化剤及び/又はポリマー成分は、一実施形態では、さらなる試験又は規制承認なしに、現行の製造技術を用いて経済的に製造することができるように、食品等級成分を含むことができる。さらに、1以上の組み込んだ文献に十分記載されているように、そのような乳化剤及びポリマー成分は、また、食品成分の劣化(例えば、酸化等)に対する安定性を高めるために用いることができる。
【0023】
例えば、多段プロセスは、食品成分を2又は3成分層(例えば、乳化剤−バイオポリマー1−(任意に)バイオポリマー2)で被覆するために用いることができる。最初に、一次コーティング又はフィルムは、食品成分をイオン性又は両親媒性乳化剤を含む水相と接触させることによって製造することができる。必要に応じて、すすぎ又は洗浄により、いずれかの吸着されなかった乳化剤を除去することができる。第2に、乳化剤−バイオポリマー1の多成分組成物を含むコーティングは、バイオポリマー1と一次コーティングとを接触することによって形成することができる。バイオポリマー1は、一次コーティングの少なくとも一部の実効荷電と反対の実効電荷を有することができる。必要に応じて、機械的動揺又は超音波処理を、形成されたいずれかの浮塊を崩壊させるために、二次コーティングに適用することができ、洗浄することにより、いずれかの吸着されていないバイオポリマーを除去することができる。第3に、乳化剤−バイオポリマー1−バイオポリマー2の多成分組成物を含む三次コーティングを、バイオポリマー2と二次コーティングとを接触させることによって形成することができる。バイオポリマー2は、二次コーティングの少なくとも一部の実効荷電と反対の実効電荷を有することができる。必要に応じて、すすぎ又は洗浄により、いずれかの吸着されていないバイオポリマーを除去することができる。この工程は、より多くの成分をコーティング組成物に添加するために連続して行うことができる。
【0024】
例えば、三層被覆生成物又は食品を含むコーティングを、食品等級の成分(例えば、レシチン、キトサン、ペクチン)及び標準製造方法(ホモジナイズ、ミキシング)を利用することにより、製造することができる。最初に、アニオン性コーティングを含む一次組成物を、生成物をレシチンの水性浴にディッピングすることによって製造することができる。カチオン性コーティングを含む二次組成物を、キトサン溶液と一次組成物とを接触させることによって形成することができ、機械的動揺を、形成されたいずれかの浮塊を崩壊させるために適用することができる。次いで、他のアニオン性コーティングを含む三次組成物を、ペクチン溶液と二次組成物とを接触させることによって製造することができる。
【0025】
ここで記載したように、食品組成物は、食品成分と1以上の乳化剤及び/又はポリマー成分とを連続的に接触させることによって製造することができる。組成物は、エンドユーズ条件下で安定で、それによって、乳化剤及び/又はポリマー成分を温度、pH、塩濃度及びイオン強度に基づいて、特定の食品成分の製造及びエンドユーズ用途のために選択することができる。さらに、食品成分についてそれぞれの層成分のために、広範な成分選択ができ、それによって、被覆食品基体の栄養価、物理化学的又は感覚的特性を変化させることなく成分材料を選択することができ、そのような組成物を食品成分の味、外観、テクスチャ又は安定性に悪影響を与えることなく、容易に使用することができる。
【0026】
例えば、例示として、被覆対象を、対象表面に吸着するであろう成分を含有する一連の溶液に浸漬することができる(図1)。あるいは、対象表面に、吸着成分を含む溶液をスプレーしてもよい。各浸漬工程の間に、洗浄及び/又は乾燥工程を行って、次の浸漬溶液中の対象に予め導入された表面に付着した過剰の溶液を除去することができる。対象の周りに形成される多成分コーティングの組成、厚み、構造、特性を、(i)浸漬溶液中の吸着成分の種類を変える、(ii)使用する浸漬工程の総数を変える、(iii)種々の浸漬溶液へ対象を導入する順序を変える、(iv)pH、イオン強度、誘電率、温度等の用いられる溶液及び環境条件を変えることを含む種々の方法で制御することができる。
図2に示すように、種々の異なる吸着可能成分及びそれらの組み合わせは、多コーティング層を形成するために使用することができる。
【0027】
上述したことについて、
バイオポリマー
対象の露出した表面に吸着することができるいずれかの食品等級のバイオポリマーとして、タンパク質(例えば、ホエイ、カゼイン、大豆、卵、植物、肉、魚タンパク質又は酵素)、多糖類(例えば、ペクチン、キトサン、澱粉、化工デンプン、セルロース、化工セルロース、アラビアゴム、アルギナート、グアーゴム、キサンタン、ガム、カラギナン、寒天、シードガム、木ガム抽出物、ジェランガム)及びそれらの組み合わせを用いることができる。
【0028】
表面活性脂質
対象の露出した表面に吸着することができるいずれかの食品等級の表面活性脂質(例えば、リン脂質(レシチン)、小分子界面活性剤(トゥイーン、ポリソルベート、スパン、SLS、DATEM、CITREM)、脂肪酸及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらの表面活性脂質は、表面で一層、二層、複数層、ミセル、小胞体又は他の会合コロイドを形成することができた(例えば、図2参照)。
【0029】
エマルジョン滴
対象の露出した表面に吸着することができるいずれかの食品等級のエマルジョン滴。エマルジョン滴は、食品等級の乳化剤によって被覆された液油滴を含むことができるが、また、一部又は全部が結晶化された油滴又は水滴を含む油滴であってもよい。
【0030】
粒子物質
マスタード粒子、ハーブ、スパイス、卵顆粒、脂質結晶、気泡、生物の細胞等のような、対象の露出した表面に吸着することができるいずれかの食品等級の粒子を用いることができる。
【0031】
各コーティング層を形成するために用いられる吸着成分の種類、全体のコーティング/フィルムに取り込まれる層の総数、異なる層の順序及び各層を形成するために用いられる製造条件の選択は、得られる多成分組成物の機能(例えば、それらの透過性(例えば、ガス、有機物質、鉱物又は水に対する)、流動学(例えば、それらの堅さ、柔軟性、もろさ)、膨張及び濡れ特性を決定するであろう。さらに、本発明の方法は、コロイド構造(例えば、ミセル又は小胞体)と関連してそれらを組み込むことによって、フィルム内で、例えば、種々の親水性、両親媒性又は親油性粒子のカプセル化を可能にする。このように、抗菌物質、抗褐色化剤、酸化防止剤、酵素等の活性機能剤をコーティングに組み込むことが可能であり、保存寿命及び食品成分の品質を増大させる。そのような多成分コーティング組成物(食品成分基材の上又は周りに)の具体例を、図3に示す。
【0032】
製造方法に関係なく、粒子成分のエマルジョンは、極性脂質、タンパク質及び/又は炭水化物から選択された壁材料に接触させることができる。種々の壁材料が当業者に公知であり、本発明を認識するであろう。そのようなエマルジョンは、1以上の壁成分と共に、材料を、噴霧乾燥器からの供給材として用いることができる。従って、対応するエマルジョンは、粒子(例えば、乳化された油脂成分)の周りの壁材料を含む滴の分散液に加工することができる。分散液は、分散滴から水相の少なくとも部分的な蒸発を促進させるために、加熱乾燥媒体に取り込まれ、接触させることができ、壁成分マトリクス内の油脂、乳化剤及びポリマー組成物を含む固体又は固体様粒子を提供する。該当する場合、エマルジョンを、ここで記載された種類の多成分コーティング組成物とともに、適用(例えば、食品成分基体又は予め適用された成分へのディップコート)するために再構成することができる(図2及び3参照)。
【0033】
実施例
以下の非限定的な例とデータは、ここで記載された形態学によって入手可能なものとして種々の食品被覆組成物のアセンブリを含む、本発明の製品、組成物及び/又は方法に関する種々の観点及び特徴を示す。従来例と比較して、本発明の方法、組成物及び/又は製品は、意外で、予想外で、対照的な結果及びデータを提供する。本発明の有用性は、ここで用いることができる種々の組成物及び分子成分によって例示されているが、それらは、当業者に理解され、比較の結果は、種々の他の組成物、成分、コーティング及び/又は層が本発明の観点に見合うものとして得ることができる。
【0034】
実施例1
多層コーティングの形成を、寒天−カラギナン表面(代表的なカチオン性バイオポリマー)に代表的な正荷電タンパク質コート滴を吸着させることによって示す。そのような方法及び結果として生じる複合物/製品は、本発明の種々の方法、組成物及び製品を示し、明示するものとして、当業者によって理解されるであろう。
3重量%の寒天、0.5重量%のカラゲナン、96.5重量%の水の混合物(20mL)を、透明プレートに注ぎ、放置してゲルを形成する。
タンパク質(0.5重量%ホエイタンパク質分離株又は1重量%のカゼインナトリウム)によって被覆された10重量%の水中トウモロコシ油型エマルジョンの小脂質滴を、ブレンダー及び/又は高圧力弁ホモジナイザーを使用して形成する。pH3、4、5、6、7及び8のエマルジョンを調製した。場合によって、1%のスーダンIIIを、顕微鏡検査によるエマルジョンの観察を容易にするための染料として、トウモロコシ油に加えた。
エマルジョン(5mL)を、5分間、バイオポリマー被覆プレート上に注ぎ、洗い流した。次に、プレートを、いずれかの吸着されていない脂質滴を除去するために、適当なpHの緩衝液で洗浄した。
【0035】
実施例2
バイオポリマー被覆プレートに対するタンパク質被覆脂質滴の吸着におけるpHの影響を、光学顕微鏡検査によって観察し、UV−可視分光光度法を用いたプレートの汚濁(500nmで)を測定することによって観察した。
滴層の形成の明確な証拠が、バイオポリマー被覆表面において認められた(図4)。pH3及び4で、負荷電バイオポリマー被覆プレートへの正荷電タンパク質被覆滴の吸着のために、プレートが濁った。高いpH値で(電荷がより類似している)、プレートは、生じたタンパク質被覆滴が吸着していないことを明確に示した。また、光学顕微鏡検査は、滴の吸着が低pH値で生じたことを示した(図5A及び図5B)。吸着が、pH8.1(電荷が類似している)でより、pH3.2(タンパク質被覆滴及びアルギナート−カラギナン表面上の電荷が反対)で、一層明確に生じた。
【0036】
本発明の原理は特定の実施形態で示され、これらの説明が例証として加えられて、どのような方法であれ、本発明の範囲を制限することを目的とするものでないことは明確に理解されていなければならない。例えば、本発明は、種々の医薬、化学製品、健康管理及び個人のケア成分に多成分コーティングの製造により特別に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による、それらの周りの多成分被覆を含む食品組成物の製造のための方法の限定されない概略図である。そのような方法は、任意に、連続的なディッピング及び洗浄工程を用いる。各ディッピング溶液は、食品成分基体又は予め適用されたコーティング成分の表面に吸着することができる成分を含むことができる。
【図2】多成分コーティング及び対応食品組成物の製造において、食品成分基体上に、本発明で用いることができるものとして、種々の乳化剤、ポリマー成分、粒子、エマルジョン及びコロイド成分の限定されない概略図である。
【図3】図1及び2に関して、食品成分基体上の多成分コーティング組成物の限定されない概略図である。
【図4】異なるpH値で、ホエイタンパク質被覆滴と接触したアルギナート−カラギナンプレートについての濁度対pHプロフィールである。
【図5】異なるpH値で、カゼイン被覆滴と接触させたアルギナート−カラギナンプレートの表面のデジタル画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護的食品コーティング方法であって、
食品成分基体を準備し、
少なくとも一部の前記基体を、ポリマー成分、乳化剤、粒子成分及びこれらの組み合わせの少なくとも1つに接触させ、各前記成分は、前記基体及び他の前記成分の少なくとも1つと相互作用親和が可能である保護的食品コーティング方法。
【請求項2】
相互作用親和の一つが静電相互作用を含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記基体、ポリマー成分、乳化剤成分及び粒子成分の少なくとも1つのpHを調整し、該調整は、それらの少なくとも一部において実効電荷を荷電するのに十分である請求項2の方法。
【請求項4】
接触は、ポリマー成分の一つ及び乳化剤成分の一つの連続的な基材への適用を含む請求項2の方法。
【請求項5】
ポリマー成分の少なくとも一部が実効荷電を有し、乳化剤成分の少なくとも一部が前記ポリマー成分の実効荷電と反対の実効荷電を有する請求項4の方法。
【請求項6】
基体、ポリマー成分及び乳化剤成分の少なくとも1つのpHを調整し、該調整は、それらの少なくとも一部に実効電荷を荷電するのに十分である請求項5の方法。
【請求項7】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆植物タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項5の方法。
【請求項8】
乳化剤成分は、油、脂質、抗酸化剤、抗生物質、酵素及びそれらの組み合わせから選択される粒子成分を含む請求項7の方法。
【請求項9】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項5の方法。
【請求項10】
基材は、果物、野菜、肉、ナッツ、穀物及びそれらから製造された食品から選択される請求項1の方法。
【請求項11】
食品基体を安定化するためのコーティング成分の使用方法であって、
食品基体成分を準備し、
該基体を、ポリマー成分及び乳化剤成分から選択される少なくとも1つのコーティング成分と接触させ、該コーティング成分は、基体を劣化に対する安定に少なくとも部分的に十分な量で少なくとも1つの機能的粒子成分を含む、食品基体を安定化するコーティング成分を使用する方法。
【請求項12】
機能的粒子は、油、脂質、抗酸化剤、抗生物質、酵素及びそれらの組み合わせから選択される請求項11の方法。
【請求項13】
機能的粒子は乳化剤である請求項12の方法。
【請求項14】
エマルジョンはスプレードライエマルジョンから再構成される請求項13の方法。
【請求項15】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆植物タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項13の方法。
【請求項16】
食品成分基体及び
ポリマー成分、乳化成分及び粒子成分の少なくとも1つを含み、
該成分は前記基体の少なくとも一部に結合し、各前記成分は、前記基体及び他の前記成分の少なくとも1つと静電的相互作用が可能である分解に対して安定化した食品。
【請求項17】
前記基体に結合したポリマー成分と乳化剤成分とを含み、ポリマー成分の少なくとも一部は実効電荷を有し、前記乳化剤成分の少なくとも一部は、前記ポリマーの実効電荷と反対の実効電荷を有する請求項16の食品。
【請求項18】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆植物タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項17の食品。
【請求項19】
前記乳化剤成分は、基体を分解安定化するのに少なくとも部分的に十分な量で存在する少なくとも1つの機能的粒子を含む請求項18の食品。
【請求項20】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項17の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−509536(P2009−509536A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533576(P2008−533576)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/037716
【国際公開番号】WO2007/038621
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(399093869)ユニバーシティー オブ マサチューセッツ (19)
【Fターム(参考)】