説明

被覆

基板上に金属クラスター種の均一な被覆を提供する方法が記載され、この方法は、基板上に非晶質下塗り被覆を堆積する段階と、前記非晶質被覆に結合するための金属イオンの源を提供する段階と、そこに還元性条件を適用することによって前記下塗り被覆に金属クラスターを生成する段階と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材料の表面上に又は基板材料にわたった金属クラスター種の被覆を提供する方法に関連する。特に、排他的ではないが、本発明は、後続の金属層の堆積の前に基板上に下塗りを堆積する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
金属原子及びイオンの正確な空間分布は、金属及びイオン塩を含んで結晶固体に自然に生じる。これらの結晶配列の再生可能な性質は、例えば製剤処方、ハロゲン化銀写真乳剤、半導体及びLEDである、これらの特性に頼る技術の商業的な成功に貢献をもたらした。制御された結晶形態の単純なイオン塩の調製は、よく報告されている。このような化合物は、気相、液相またはプラズマ相堆積法を用いて調製される。これらの場合、その目的は、例えば二酸化珪素結晶である分離した化合物のよく画定されたモノリス、または、例えばアスピリンである分離した結晶のよく画定されたバッチを生成することである。これらの例では、この調製環境は、結晶成長またはサイズ分布における欠陥に影響を与えるように整えられる。金属または金属化合物の分離したナノ−、マイクロ−又は巨視的な結晶の成長と対照的に、基板の表面における均一な層またはこれらの種の堆積は、特に、表面堆積用に明確に調製されていない不均一の基板においてほとんど容易に行われない。
【0003】
金属またはイオン化合物が、材料の表面に気相、液相またはプラズマ相から堆積されるとき、個々の原子またはイオンは、基板に対する付着の前に解離状態にある。第1の原子またはイオンが表面に付着されると、それらは、更なる付着用の核形成部位として作用する。従って、結晶の成長は、表面を横切って起こる傾向にあり、金属またはイオンの化合物の、均一であるが不連続な被覆を生成する。表面被覆の不均質は、例えば触媒反応中において、受入不能に可変の物理化学挙動、または、例えば陽極金属において、受入不能な外観をもたらし得る。原子スケールで対象の操作によって用意された表面が、これらの欠点を解消することができる一方で、これらの方法は、大多数の用途において商用的に実行可能なものではない。
【0004】
しかしながら、市販の基板上に又は市販の基板にわたった金属クラスターの堆積は、視覚的に受入可能である十分に均一な方式で達成することが容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、基板の表面上に又は基板内に金属クラスター種の均一な被覆を提供する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、基板上に金属クラスター種の均一な被覆を提供する方法は、基板上に非晶質下塗り被覆を堆積する段階と、前記非晶質被覆に結合するための金属イオンの源を提供する段階と、そこに還元性条件を適用することによって前記下塗り被覆上に金属クラスターを生成する段階と、を備える。
【0007】
“金属クラスター種”は、ここでは互いの結合距離内の2つ又はそれを越える金属原子またはイオンの配列として定義される。一般的に、金属クラスター種は、定義されるように、通常の人間の視覚に色を認識させる。金属クラスターが終了し、バルク金属が開始する場所を画定するための明確な断面が適用されないが、金属クラスターが、100000又はより少ない金属原子またはイオンの配列、より好ましくは10000又はより少ない金属原子またはイオンの配列に限定されることが定義される。
【0008】
“均一”とは、ここでは、基板装置のスケールにわたって人間の目に見える色の差がない被覆として定義される。
【0009】
誤解を避けるために、基板“上”の金属クラスター種の被覆は、密度の高い非多孔性基板の表面における被覆、及び、多孔性基板の含浸も含む。
【0010】
従って、基板上に金属クラスター種の均一な被覆を生成するために本発明による方法は、3つの主たる段階を含む:
(1)金属イオンの結合に対する親和性を有する非晶質材料を用いた基板の被覆または含浸。
(2)下塗りされた基板に対する金属イオンの結合。
(3)還元性条件を用いた、金属イオンが被覆された又は含浸された基板の処理による金属クラスターの形成。
【0011】
基板の表面上に又は基板内に金属クラスター種の均一な被覆を提供するために本発明による方法は、第1段階として、金属イオンの堆積及び金属クラスターの生成前に非晶質下塗り種の堆積を有する。非晶質下塗りは、結晶性または非結晶性固体の場合のように、上記のように、核形成成長が可視的な不連続性を人間の目に観察させるので、基板上に核形成成長を生じさせてはいけない。非晶質下塗りは、気相、プラズマまたは液相移動によって単純な基板被覆を可能にするために、好ましくは有機種であり、一般的な溶媒に溶解可能であり得る。下塗りは、金属イオンのイオン結合または静電結合をできる種でありえ、従って、好ましくは、窒素、硫黄または酸素成分またはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせを含有する。
【0012】
この方法の第1段階において、基板は、基板上に晶子の顕著な成長をもたらさない非晶質材料で被覆される。この段階の目的は、結晶材料を堆積することによって達成することが困難である均一な表面密度の被覆を提供することである。非晶質材料の堆積は、例えば気相、液相またはプラズマ相などの、当業者に周知のあらゆる方法によって達成され得る。非晶質被覆は、最も一般的には、例えば水性またはアルコール溶媒の材料の溶液などの液相から付けられる。非晶質材料はまた、適切には、金属イオンの結合ができる材料であり、従って、上述のような窒素、硫黄または酸素原子などの求核部分を含有する材料である。より好ましくは、非晶質材料は、金属結合に対して高い親和性を有する配位子を含有する。非晶質材料に対する要求を考えると、この材料は、非晶質重合体種であると都合がよい。非晶質材料は、一般的な溶媒に溶解可能であることが好ましいが、基板の被覆後に水媒体には実質的に不溶性である。
【0013】
特定の特性要求に適合する適切な非晶質材料は、キトサン、ケラチン及びポリ(ヘキサメチレンビグアニド)を含むが、それに限定されない、合成及び天然の両方の高分子のアニオンを含む。非晶質材料の基板使用量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。多すぎる下塗りは無駄が多く、少なすぎる場合、基板の完全な被覆が達成され得ない。下塗り使用量の下限値は、多孔性材料の場合には非常に変化する、基板の表面積に依存し、従って、重量%で下限値を設定することは不可能である。
【0014】
非晶質下塗り材料としてキトサンを用いた場合、被覆された基板は、基板に対して下塗りを固定するために中性pH緩衝液に浸漬され得る。
【0015】
下塗りは、基板上に堆積され、その基板は、続いて例えば洗浄によって過剰な下塗りを除去するために洗われる。次いで、下塗りされた基板は、例えば気相、液相またはプラズマ相堆積である適切な技術によって金属イオンが載せられ又は被覆される。金属イオンを含有する溶液の液相からの金属イオンの堆積が好ましい。金属イオンは、下塗りの均一な被覆と調和する別個の方法で下塗りに結合される。この方法の工程中にほとんど又は全く核形成が起こらない。金属が載せられ、下塗りが被覆された基板は、例えば洗浄によって過剰な金属イオンを除去するために洗われる。次いで、金属が載せられ、下塗りが被覆された基板は、少なくとも一定量ずつ金属イオンの酸化状態を還元することができる還元剤にさらされる。下塗り被覆の表面において速やかに制御された方法で下塗りによって支持された金属イオンクラスターの均一な分布は、基板上に光学的に均一な金属クラスターの被覆を生成する。
【0016】
この方法の第2段階において、金属イオンは、被覆された基板に結合される。この段階の目的は、基板表面に粒子の顕著な核形成がない状態で、基板に被覆された非晶質配位種に対して金属イオンを結合することである。“この意味において粒子は、1000個の原子未満の大きさを一般に含み、電子顕微鏡技術によって直接観察し得る、以上に定義されるような“クラスター”は除外して、光に基づく顕微鏡観察または直接観察によって目に見えるイオンまたは原子の凝集体を意味する。非晶質被覆は、基板上に、または多孔性の場合、基板内に均一な密度で別個の金属イオンの堆積を可能にする。金属イオンは、以上に述べられたように、例えば気相、液相またはプラズマ相から、当業者に周知のあらゆる方法によって堆積され得る。金属イオンは、金属塩の前の溶解によって液相で付けられることが都合よい。基板は、好ましくは、金属イオンの載置を容易にするために金属イオンの溶液に浸漬され得る。過剰な金属イオンは、金属塩がない溶媒の浸漬によって基板から洗い落とされる。この方法の第2段階における適切な溶媒は、この方法の第1段階において堆積された非晶質被覆の顕著な溶解をもたらすべきではない。好ましくは、この溶媒は、水であり得る。金属塩濃度は、基板上における特定の金属イオン載置密度を達成するために考えられ得る。適切な金属塩は、控えめにそれらを含み、一般的な溶媒に顕著に溶解できる。好ましくは、この金属塩は、水性またはアルコール溶液に溶解可能であり得る。従って、適切な金属塩は、遷移金属テトラフルオロホウ酸塩及び過塩素酸塩、より好ましくは硝酸塩に限定されないが、それらを含む。好ましくは、金属塩は、金属イオンを非晶質被覆と激しく奪い合わないように、弱く配位する対イオンを有するものであり得る。望ましい対イオンは、テトラフルオロホウ酸塩及び過塩素酸塩、より好ましくは硝酸塩の対イオンに限定されないが、それらを含む。適切な金属イオンは、銀、銅、金、亜鉛、タングステン及びビスマスを含む、周知のものであり得る。
【0017】
如何なる特定の理論によって拘束されることは望まないが、下塗り被覆された基板に金属イオンを載せる金属イオンの程度は、非常に低いレベルから100%までであり得る。過載置の程度は、結果として得られる物品または装置の外観が損なわれない程度まで許容され得る。同様に、載置不足の程度は、続いて起こる還元段階においてクラスターを生成するために基板に存在する十分なイオンがあるという条件に対して許容され、又は、その条件に対して受入可能であり得る。
【0018】
この方法の第3段階において、還元性条件に対する露出によって金属クラスターを形成するために、基板に付着された非晶質被覆に結合される金属イオンが形成され得る。ここで使用される“還元性条件”は、電子が、例えば光照射または還元剤の適用によって、結合された金属イオンに提供される、あらゆる環境を意味するものである。還元剤が適用される場合、これは、好ましくは、還元剤の溶液における基板の浸漬によって達成され得る。適切な還元剤は、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、フェリシアン化カリウム及びヒドラジンに限定されないが、それらを含む。好ましくは、還元剤は、光または水素化ホウ素ナトリウムの溶液であり得る。還元剤の両方の形態は、同時に又は連続して使用することが可能である。還元性環境への十分な露出は、金属クラスターの所望の濃度及び大きさをもたらすように整えられる。十分な露出は、露出時間及び/又は還元剤濃度(溶液における)または強度(光)を制御することによって達成され得る。
【0019】
従って、金属クラスターの大きさ及び間隔は、下塗り、金属イオン及び還元剤の適切な濃度を適用することによって制御され得る。
【0020】
この方法の各々の段階の間に、過剰の試薬は、適用される2つ又はそれを超える試薬の共堆積を避けるために基板から洗浄され得る;これは、核酸分解堆積のために、有害な変色をもたらし得る。適切な洗浄溶媒は、各々の試薬を適用するために使用されるものを含む。
【0021】
本発明の第2の側面によれば、本発明の第1の側面の方法によってなされた場合の物品が提供される。
【0022】
開示された方法による金属クラスターの提供のための適切な基板には、天然及び合成の材料、特に高分子材料からなるものが含まれる。このような材料の例には、綿、セルロース、澱粉、コラーゲン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン及びシリコーンベースの高分子に限定されないが、これらが含まれる。普通に存在する天然及び合成高分子のリストは、それらの構造内に強い金属イオン配位基の欠乏を示す。従って、これらの材料は、本発明の第1の側面による方法における基板として良好な候補である。
【0023】
この基板は、固体または半固体のあらゆる形状のモノリス;例えば不織材料または織物材料である、繊維またはフィラメントを含む材料;あらゆる形態の泡状の物質;を含む、あらゆる材料の形態であり得る。この基板は、ナノスケールの安定な表面が被覆工程中に提供され得るという条件であらゆる物理特性を示し得る。好ましくは、基板材料は、ゲル、エラストマー、又は、非晶質又は結晶性固体である。
【0024】
医療用途において、この基板は、例えばステンレス鋼、綿のガーゼ、ポリエチレン及びポリウレタン、並びに、シリコーンベースの高分子などの、医療現場で一般的に適用されるものであることが好ましい。
【0025】
この基板は、当業者に周知の方法によって、安価な方式で実現される治療及び洗浄工程の各々を許容する一連の環境に提供され得る。
【0026】
本発明の第3の側面によれば、本発明の第1及び第2の側面からもたらされる医療用途の方法及び物品が提供される。
【0027】
適切な医療用途には、インプラント、留置器具及び局所装置を含む、金属クラスターが被覆され又は含浸された装置の使用が含まれる。埋め込み型装置には、ステント、ブレストインプラント、シャント、人工股関節、人工膝、人工骨装具、並びに、プレート、ねじ及び釘などの骨固定装置を含む、天然または合成のインプラントが含まれる。留置装置には、カテーテル、ドレーン管、IVライン、Kワイヤ及び栄養管が含まれる。局所装置には、経皮デリバリーパッチ、創傷管理装置及びサポート衣類が含まれる。様々なタイプ及びカテゴリーの医療用途に関して以上に与えられた例のリストの何れも排他的ではなく、本発明の用途の潜在的な分野を示すだけである。
【0028】
創傷管理装置の特定の場合には、これには、吸収性又は非吸収性のポリウレタン製の包帯、フォーム又はガーゼなどの充填材料、または、調合薬、あるいは、負傷した人間又は動物に由来する種を含む活性薬剤の配送用のこれらの材料又は基板のあらゆる配置が含まれる。局所負圧治療用の負傷包帯用の充填材料は、本発明によって作られる材料の使用の一例であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】濃度を変えた硝酸銀溶液中へのガーゼの浸漬、及び、後続の水素化ホウ素ナトリウム溶液との反応の後における、PHMBが染み込んだガーゼに生成した銀クラスターのUV光線(UV−bis)吸収スペクトルのグラフを示す。
【図2】実施例4に記載された調製中における硝酸銀溶液濃度に対する431nm(銀クラスターのプラズモン吸収波長)における吸収の増加のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明がより完全に理解され得るために、実施例が、添付の図面を参照して例示のみによって以下に記載される。
【0031】
図1は、濃度を変えた硝酸銀溶液(1.0重量%(最上部)、0.1重量%、0.01重量%、0.001重量%、0.0001重量%及び0重量%(最下部))中へのガーゼの浸漬、及び、後続の水素化ホウ素ナトリウム溶液との反応の後における、PHMBが浸み込んだガーゼに生成した銀クラスターのUV光線(UV−bis)吸収スペクトルのグラフを示す。実施例4を参照する。
【0032】
図2は、実施例4に記載された調製中における、硝酸銀溶液濃度に対する431nm(銀クラスターのプラズモン吸収波長)における吸収の増加のグラフを示す。
【0033】
(実施例1)
窒素リッチ非晶質高分子(キトサン)を用いた、綿のカーゼの含浸:
標準的な綿のカーゼのロールを、希酢酸に溶解したキトサンの0.1重量%溶液に浸漬した。ガーゼのロールは、完全に湿潤されるように操作し、その溶液から引き出した。過剰の液体は、穏やかな絞りでロールから取り除いた。キトサンをガーゼに固定するための中性pH緩衝液中に湿潤ロールを浸漬させた。ガーゼを、その中性pH溶液中で数回絞り、取り出した。過剰の溶液は、ロールから取り除き、40℃で夜通しロールを乾燥した。
【0034】
キトサンが含浸された綿のガーゼへの金イオンの載置:
上記のように用意されたガーゼを、塩化金(III)の0.01重量%の水溶液に浸漬した。ガーゼは、急速に黄色い金(III)イオンの色を呈し、その水溶液は、脱色した。ガーゼを、水溶液から取り出し、絞りながら蒸留水で繰り返し洗浄した。約40℃で夜通しガーゼを乾燥した。
【0035】
綿のガーゼ上における金クラスターの生成:
上記したように製造された金(III)イオンが載置されたキトサンが浸漬されたガーゼを、絞りながら、60秒間水素化ホウ素ナトリウムの0.01重量%水溶液に浸漬した。ガーゼのロールは、急速に黄色からピンクに変化し、金クラスターの形成を示した。ガーゼのロールを直ぐに絞りながら蒸留水で繰り返し洗浄した。ガーゼを40℃で夜通し乾燥した。
【0036】
(実施例2)
ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)が含浸されたガーゼへの銀イオンの載置:
市販のPHMB−含浸ガーゼ(Kerlix AMD, Kendall-Trade name)を、0.1重量%の硝酸銀の水溶液に15分間浸漬した。ガーゼを、その水溶液から取り出し、絞りながら蒸留水で繰り返し洗浄した。ガーゼを40℃で夜通し乾燥した。
【0037】
綿のガーゼにおける銀クラスターの生成:
上記のように製造された、銀イオンが配合されたPHMBが含浸されたゲージを、絞りながら0.01重量%の水素化ホウ素ナトリウムの水溶液に含浸した。ガーゼは、急速に白から黄褐色に変化し、銀クラスターの形成を示した。ガーゼのロールを、直ぐに絞りながら蒸留水で繰り返し洗浄した。ガーゼを40℃で夜通し乾燥した。
【0038】
(実施例3(本発明に従わない))
非晶質下塗り被覆がない状態で綿のガーゼにおける銀クラスターの計画された生成:
実施例2で採られた手順を標準的なガーゼで繰り返した。最終的な生成物は、色が灰色からピンク、次いで黄褐色に変化した。色の均一性は、極端に欠しく、単一色のパッチが数センチメートル延びた。
【0039】
(実施例4)
ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)が含浸されたガーゼにおける銀クラスター載置密度の変化:
上記実施例2で採られた手順を、硝酸銀の濃度:1.0重量%、0.1重量%、0.01重量%、0.001重量%、0.0001重量%及び0%を変化させながら繰り返した。各々の試料を、個々に実施例5に示されるように処理した。結果として得られる一連の材料は、色が白(0重量%の処理)から黄褐色(0.1重量%の処理)、次いで灰色黄褐色(1.0重量%の処理)に変化した。
【0040】
各々の試料は、その拡散反射UV光線吸収が記録された。銀クラスター吸収は、431nmで生じた。硝酸銀配合溶液の濃度に対するこの吸収の変化をプロットし、その結果は、図1及び図2に示す。
【0041】
図1は、1.0重量%(最上部)から0重量%(最下部)まで低下する銀クラスター載置ガーゼ紫外線光線吸収スペクトル(図1)、及び、硝酸銀配合溶液濃度に対するA431の傾向(図2)を示す。図1は、金属配合浴の濃度を増加することによって素子のクラスター密度の後続の増加がもたらされること、及び、431nmにおける吸収の強度がクラスター濃度に対して直線形的(ランベルト・ベールの法則)に変化することを示す。A431が金属配合浴濃度に対してプロットされる場合、クラスター飽和レベルが観察され得る(図2)。これから、この例において、クラスター密度の大幅な増加がこの点を超えて達成されるので、0.2重量%の硝酸銀の浴の濃度を超えて稼働中にほとんど値がないことを見ることができる。
【0042】
実施例4の変化する硝酸銀濃度を用いたこの一連の結果において、無視してよい銀クラスターの形成が0.001重量%以下の硝酸銀濃度で起こることが観察された。この濃度を超える濃度において、著しいクラスター形成が生じ、この被覆が、0.01重量%及び0.1重量%の配合溶液において視覚的に均一であった。これらの濃度を超える濃度、1重量%において、過堆積が生じ、これは、可視的な被覆の不均一性の結果となった。
【0043】
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲を通して、“含む”及び“含有する”という用語、並びに、例えば“含んでいる”または“含み”などの用語の変化物は、“含むがこれに限定されない”ことを意味し、他の部分、添加剤、要素、整数または段階を排除しようとするものではない(排除するものではない)。
【0044】
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数形に加えて複数形を意図するものと考えられる。
【0045】
本発明の特定の側面と関連した特徴、整数、特性、化合物、化学部分または群、実施形態あるいは実施例は、それと共に両立しない限り、ここに記載されたあらゆる他の側面、実施形態または実施例に適用可能であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に非晶質下塗り被覆を堆積する段階と、
前記非晶質被覆に結合するための金属イオンの源を提供する段階と、
そこに還元性条件を適用することによって前記下塗り被覆上に金属クラスターを生成する段階と、
を備える、基板上に金属クラスター種の均一な被覆を提供する方法。
【請求項2】
有機種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶質下塗りが、気相、プラズマ相及び液相移動から選択される技術によって堆積される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記下塗りが、窒素、硫黄または酸素成分のうち少なくとも1つを含有する、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非晶質下塗りが、水性及びアルコール溶媒の一方の材料の溶液から堆積される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記非晶質下塗りが、金属結合に対する高い親和性を有する配位子を有する、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非晶質下塗りの材料が、前記基板の被覆後に水媒体に実質的に不溶性である、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非晶質下塗りが、キトサン、ケラチン及びポリ(ヘキサメチレンビグアニド)を含む群から選択される、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非晶質の材料の使用量が、10重量%未満から0.1重量%以下の範囲である、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
その堆積後に、前記下塗り被覆された基板を洗浄する更なる段階を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記下塗り被覆された基板が、気相、液相及びプラズマ相堆積から選択される技術によって金属イオンで被覆される、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属イオンが、前記金属イオンを含有する金属塩の溶液における浸漬によって堆積される、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属イオンが、遷移金属テトラフルオロホウ酸塩、遷移金属過塩素酸塩及び遷移金属硝酸塩を含む材料の群から供給される、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記金属イオンが、銀、銅、金、亜鉛、タングステン及びビスマスを含む群から選択される、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属イオンが被覆された基板を洗浄する更なる段階を含む、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記金属イオンが被覆された基板が、少なくとも一定量ずつ前記金属イオンの酸化状態を還元する還元段階にさらされる、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記還元段階が、光照射及び還元剤の適用を含む群から選択される、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、フェリシアン化カリウム及びヒドラジンを含む群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基板が、綿、セルロース、澱粉、コラーゲン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン及びシリコーンベースの高分子を含む群から選択される、請求項1から18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記基板が、ゲル、エラストマー、非晶質固体及び結晶性固体の何れか1つである、請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から20の何れか一項に記載の方法によって製造される金属被覆を有する物品。
【請求項22】
哺乳動物の治療における、請求項1から20の何れか一項に記載の方法の使用。
【請求項23】
哺乳動物の治療における、請求項21に記載の物品の使用。
【請求項24】
添付の詳細な説明及び図面に関連して以上に実質的に記載されるような、基板上に金属クラスター種の均一な被覆を提供するための方法。
【請求項25】
局所陰圧療法処置における、請求項21に記載の物品の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−533794(P2010−533794A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516591(P2010−516591)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050514
【国際公開番号】WO2009/010781
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】