説明

被記録媒体

【課題】高解像度での印刷が可能な被記録媒体上に、筆記データを認識可能な所定のパターンを形成することで、所定のパターンの再形成を可能にすること。
【解決手段】耐水性を有する基質10と、基質の少なくとも一方の面に、水又は水性液により溶解又は膨潤する未硬化水溶性高分子材料を含む中間層20と、基質側の面とは異なる前記中間層の面に、水又は水性液に対する通過性を有し、かつ、中間層の溶解又は膨潤により、崩壊又は中間層との接着状態が弛緩される受容層30とを備え、筆記データを認識可能とする所定のパターンが、親水性を有する画像形成材料により、少なくとも受容層に形成可能である被記録媒体1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な被記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピュータの高度化やネットワークの高速化に伴い、様々な書類の処理が電子化されている。一方で、ペンなどを使用して紙などへ筆記する方法は、キーボードやマウスを使ってコンピュータへ電子書類を入力する方法よりも安易であるという利点がある。また、ペンなどで筆記した情報を電子化する技術がある。
【0003】
例えば、被記録媒体に格子模様などのパターンを印刷し、ペン先に設けた光学装置を用いて該パターンを計測することで、このペンの動きを読み取ることができる。
【0004】
そこで、電子化された書類と、電子化された筆記情報との関連付けが重要になってくる。例えば、特許文献1には、文書を特定する文書情報が磁気的に記録された磁気記録層と、筆記された情報が記録される熱可逆性記録層とを有する被記録媒体を用いて、筆記された情報の電子データと文書情報とを入力するデータ入力システムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ICタグを有するリライタブルペーパーにクリーニングを行って再印字される仕組みが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、筆記された情報を読み取るために、専用の光学特性を有するインクを被記録媒体に印刷する必要があり、汎用性に欠ける。また、特許文献1,2では、書き換え可能な熱可逆性記録層は、感熱式などでプリントされるため、高解像度を望むことができない。一方で、筆記データを認識可能なパターンは、高解像度を必要とすることが多い。よって、感熱式のプリンタでは、高解像度を必要とするパターンを印刷することができない。そのため、この筆記データを認識可能なパターンは、再形成するのが困難な印刷手段を用いて印刷するため、再形成することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高解像度での印刷が可能な被記録媒体上に、筆記データを認識可能な所定のパターンを形成することで、所定のパターンの再形成を可能にすることができる被記録媒体を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様における被記録媒体は、耐水性を有する基質と、前記基質の少なくとも一方の面に、水又は水性液により溶解又は膨潤する未硬化水溶性高分子材料を含む中間層と、前記基質側の面とは異なる前記中間層の面に、前記水又は水性液に対する通過性を有し、かつ、前記中間層の溶解又は膨潤により、崩壊又は前記中間層との接着状態が弛緩される受容層とを備え、筆記データを認識可能とする所定のパターンが、親水性を有する画像形成材料により、少なくとも前記受容層に形成可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高解像度での印刷が可能な被記録媒体上に、筆記データを認識可能な所定のパターンを形成することで、所定のパターンの再形成を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態における被記録媒体の一例を示す断面図。
【図2】実施例における被記録媒体の一例を示す図。
【図3】実施例におけるドットパターンの一例を示す図。
【図4】ドットパターンのずれを示す図。
【図5】図2の被記録媒体を用いて工程管理を行うシステムの一例を示す図。
【図6】筆記装置の構成の一例を示すブロック図。
【図7】画像消去装置の一例を示す図。
【図8】再生コーティング装置の一例を示す図。
【図9】画像形成、画像消去、再生の一連の動作の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態]
実施の形態では、種々の記録方式により、例えば、親水性を有する画像形成材料で形成された画像及び/又は所定のパターンを有する被記録媒体に対し、この画像形成材料の除去及び被記録媒体の再生に適用できる。
【0012】
また、実施の形態は、例えば、インクジェット記録方式による記録された画像及び/又は所定のパターンを有する被記録媒体に対し、この画像形成材料の除去及び被記録媒体の再生に適している。よって、以下、記録方式として、インクジェット記録方式を例にして実施の形態を説明する。まず、被記録媒体1の構成について説明する。
【0013】
<被記録媒体>
図1は、実施の形態における被記録媒体1の一例を示す断面図である。図1に示す被記録媒体1は、耐水性を有する基質(支持体)10の一方の面上に中間層20が設けられ、基質10側の面とは異なる中間層20の面上には画像形成材料40を受容するための受容層30が設けられる。画像形成材料40は、親水性を有する。
【0014】
(基質)
実施の形態における基質(支持体)10は、後述する画像形成材料の除去液(以下、単に除去液ともいう)の供給により変質しない耐水性があるものが好ましい。また、基質10は、記憶媒体50を含んでもよい。記憶媒体50は、例えば、RFID(Radio Frequency IDentification)タグなどの無線ICチップである。以下、記憶媒体50は、RFIDタグを例にして説明する。
【0015】
基質10にRFIDタグ50が埋め込まれている場合は、除去液の供給によっても、RFIDタグ50の性能が損なわれない基質10が好ましい。
【0016】
また、基質10としては、高級印刷用紙、電子写真用記録用紙、及び感熱記録紙等を用いることができる。特に可逆性感熱記録紙は記録層がサーマルヘッドによる繰返し画像形成と画像消去に耐えられるように表面に硬化樹脂層を有するものが多く、このような可逆性感熱記録紙は、基質10として好ましく用いることができる。
【0017】
基質10としては、透明支持体、不透明支持体のいずれも使用することができる。また、基質10は、所望により下塗層等、その余の層を有していてもよい。
【0018】
基質10の厚さは、使途等によっても異なるが、30μm〜1000μmであることが好ましく、60μm〜800μmであることがより好ましい。厚さは使途やシートサイズ、材質等によっても異なる。例えば、基質10にRFIDタグ50を埋め込む場合は、通常600μm〜800μmと比較的厚くなる。
【0019】
なお、基質10は、上記の通り、感熱記録媒体や熱転写記録媒体などを用いることもでき、この種の基質10のうち典型例としての可逆性感熱記録媒体は、同出願人の特願2010−197395号を参照されたい。
【0020】
(中間層)
インクジェット用の被記録媒体1の場合、基質10に中間層20を設けるとすると、例えば、ラテックスと称する親水性高分子材料又は本来疎水性高分子材料の水系エマルジョン塗工液が用いられてきた。多量の強力な乳化剤として、界面活性による本来水不溶性樹脂の強制的な乳化物がある。
【0021】
これにより、基質10表面および受容層30の双方との強固な接着性を得て、また、印字されたインクによるビーデイング防止、ブリーデイング防止を図ることができる。一方で、多量の強力な乳化剤の使用による弊害は既に知られている。水溶性樹脂塗工液を稀に用いたときには、構成する樹脂と化学結合可能な官能基を有する架橋剤で架橋反応処理されてきた。従来技術においては、主に、強固な接着性出現が考慮され、水又は水系液体を付与することによる中間層の削除を志向したものでないから当然ではある。
【0022】
これに対し、実施の形態における中間層20は、除去液の供給により溶解又は膨潤する未硬化水溶性高分子材料を主成分として含有するものである。ここで、「主成分」とは、乾燥重量で60%以上であることを意味する。実施の形態における被記録媒体1の中間層20は、本発明の目的を損なわない範囲で、無機微粒子、有機微粒子、少量の界面活性剤、酸化防止剤、レベリング剤等々の各種副成分を所望により含有することができる。
【0023】
実施の形態における被記録媒体1の中間層20に用いる水溶性高分子材料は、それ自体成膜性があり、基質10及び受容層30の接着性に優れるが、除去液の供給により、溶解又は膨潤して基質10との接着性を減少するものである。受容層30との接着性も著しく減少するが、これは本発明においては不可欠ではない。中間層20に用いられる水溶性樹脂については、同出願人の特願2010−197395号を参照されたい。
【0024】
また、中間層20は、受容層30が収容しきれなかったインク(画像形成材料)を受容してもよい。そのため、中間層20は、さらなる画像のチリ防止、滲み防止のため、かつ乾燥時の皮膜硬度を保持させるためにシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等の無機微粒子やアクリル、スチレン等の樹脂微粒子を添加してもよい。かかる無機微粒子を添加する場合、水溶性樹脂100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部添加することができる。
【0025】
また中間層20は、通水性を上げるために必要に応じてカチオン性界面活性剤等の帯電防止処理を施してもよい。帯電防止剤は、受容層30を形成する材料に添加してもよいし、受容層30を形成した後に、適当な溶媒に溶解・分散させたものを塗布するようにしてもよい。さらに、中間層20の劣化防止のため、紫外線吸収剤や酸価防止剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤や酸価防止剤の添加量は、5重量%以下であることが好ましい。
【0026】
(受容層)
実施の形態における受容層30は、インクジェット記録ヘッドから送られてきたインク滴を、ビーデイング、ブリーデイングなしに好適に受容し画像形成するためのものである。この点では、通常のインクジェットにおける光沢記録紙のインク受容層と本質的に大きな差異はない。しかし、従来は通常、そのためのインク着色料を吸収する多量の無機微粒子、有機微粒子とこれらを固定するための少量のバインダー樹脂を含む塗工液を塗工、乾燥することにより形成していた。
【0027】
これに対し、実施の形態における受容層30は、後述する画像形成材料の除去処理過程で、下層である中間層20への充分な通水性(通過性)をも有するものである。画像形成材料は、例えば、インクジェットインクの着色料である。また、受容層30は、中間層20の除去液による溶解又は膨潤により、崩壊又は中間層20との接着状態が弛緩される。
【0028】
また、通常のインクジェットにおける光沢記録紙のインク受容層の場合よりも、無機微粒子、有機微粒子添加量は零または非常に少なく、材料のほとんどは樹脂であることが好ましい点で、受容層30と従来のインク受容層とは技術思想を異にする。
【0029】
インク吸収のためのBET表面積の比較的大きい微粒子の添加量は、控え目であることが好ましく、その分、層厚は若干厚くてよい。添加量は、例えば、バインダー樹脂100部当たり、50部以下、好ましくは30部以下、より好ましくは25部以下とする。
【0030】
受容層30中に浸透し、受容層30から漏れたインク液は、実施の形態の場合、下の中間層20が受け止めてくれる。
【0031】
実施の形態における受容層30は、着色料を含むインクジェット記録用インク液を吸収、受容するための微粒子を含んでいてもよい樹脂材料を含む。また、更に所望により、安定剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、耐水化剤等の各種の助剤を配合した水溶液あるいは水系のエマルジョンからなる塗工剤の塗工層として受容層30は形成されてもよい。なお、受容層30の詳細な成分などについては、同出願人の特願2010−197395号を参照されたい。
【0032】
受容層30の厚さは、受容層30によるインク吸収作用が十分であり、受容層30の形成作業が良好に行えるように、1〜120μm、好ましくは2〜60μm程度である。厚さが1μmに満たない場合は、皮膜化したときの耐水性、耐摩傷性、耐候性などの耐環境性か向上の効果が十分でないおそれがあるので好ましくない。
【0033】
<画像形成材料>
実施の形態における画像形成材料40は、親水性液媒体中に着色料及び所望により添加される他の補助材料を含むものである。着色料は、例えば、通常のインクジェットインクに含まれる各種染料及び顔料である。なお、使用されるインク組成物については、同出願人の特願2010−197395号を参照されたい。
【0034】
[実施例]
以下、上述した被記録媒体1を、工程管理用に用いる場合の実施例について説明する。図2は、実施例における被記録媒体1の一例を示す図である。図2に示す被記録媒体1は、画像形成材料40により、画像70や所定のパターン60が形成されている。画像70は、工場名「AAA」を示す。画像は、他にも生産機種や工程、組立チェックシートなどが形成されているが、工場名「AAA」70を例にして説明する。
【0035】
図2に示す被記録媒体1の例では、RFIDタグ50が被記録媒体1に埋め込まれている。RFIDタグ50は、データを記録、消去可能な構成になっている。なお、RFIDタグ50は、必ずしも被記録媒体1に必要なものではない。
【0036】
図2に示す被記録媒体1は、所定のパターン60が形成されている。所定のパターンは、筆記データを認識可能なパターンであり、例えば、アノト(Anoto)社のドットパターン(アノトパターン)である。筆記データは、手書きで書かれた文字や画像などであり、筆跡データ等とも呼ばれる。
【0037】
図3は、実施例におけるドットパターン60の一例を示す図である。このドットパターン60は、縦横0.3mm間隔に点が並ぶ特殊なドットパターン(いわゆるアノトパターン)である。ドットパターン60は、図3に示すように、0.3mm間隔の格子状の上に配置された縦横6×6ドットの計36ドットの組み合わせで構成されている。
【0038】
図4は、ドットパターン60のずれを示す図である。図4に示すように、各ドットは、直交する点から上下左右のいずれかの方向にごくわずかにずれている。36のドットがそれぞれ4通りの位置を持つため、4の36乗という、膨大な数のパターンを作ることができる。
【0039】
このドットパターン60を形成するためには、高解像度のプリンタで形成することが必要となるが、上述した被記録媒体1は、高解像度のプリンタで印刷可能である。よって、被記録媒体1は、高解像度を必要とする所定のパターン60であっても形成することができる。なお、所定のパターン60としては、アノトパターンに限定されるものではなく、筆記データを認識可能とするパターンであればよい。
【0040】
<システム>
図5は、図2の被記録媒体1を用いて工程管理を行うシステムの一例を示す図である。図5に示す例では、工程管理システムは、情報処理装置(例えば、ホストコンピュータ)100、プリンタ(例えば、インクジェットプリンタ)200、被記録媒体1、筆記装置300、RFIDリーダーライター400を有する。RFIDリーダーライター400は、作業現場に設置される。RFIDリーダーライター400は、RFIDアンテナを有する。
【0041】
情報処理装置100と、プリンタ200と、筆記装置300と、RFIDリーダーライター400とは、それぞれネットワークを介してデータの送受信が可能となっている。また、プリンタ200は、RFIDタグへのデータの書き込み及び読み込みが可能なRFIDリーダーライター201が内蔵されている。RFIDリーダーライター201は、RFIDアンテナを有する。
【0042】
図5に示す実施例における工程管理システムでは、被記録媒体1は、「GX3300」という機種の工程「A−1」という工程管理用に使用される。以下、この工程「A−1」を作業する人が、「XXX」さんの場合について説明する。
【0043】
RFIDタグ50には、例えば、固有の識別情報(固有ID)と、組み立てる機種「GX3300」を認識するデータと、「XXX」さんが作業する工程「A−1」を認識するデータとが記憶される。これらのデータは、情報処理装置100からプリンタ200に送られ、プリンタ200は、被記録媒体1のRFIDタグ50に、RFIDリーダーライター201を用いて書き込む。
【0044】
プリンタ200は、情報処理装置100から被記録媒体1に印刷するデータを取得すると、図2に示すように、作業工程を表す文字、写真等の画像等を印刷する。なお、画像は、バーコードなどであってもよい。また、プリンタ200は、記録ヘッドからインク(画像形成材料)を吐出して、所定のパターン60などを被記録媒体1の表面の一部に印刷する。
【0045】
(作業内容)
ここで、作業内容について説明する。「XXX」さんが、作業「GX3300」という機種の工程「A−1」の作業をする場合、被記録媒体1をRFIDリーダーライター400にかざす。RFIDリーダーライター400は、被記録媒体1のRFIDタグ50に記憶された組み立てる機種「GX3300」を認識するデータを読み取る。
【0046】
読み取られたデータは、情報処理装置100に送信され、情報処理装置100は、「GX3300」に対応する作業指示を、表示画面に表示する。
【0047】
「XXX」さんは、表示画面に表示された作業指示に従い組立を行い、作業を終えると、被記録媒体1上のチェックシートに従い、作業を確認する。「XXX」さんは、チェックシートの確認が終わると、所定のパターン60が印刷された作業者サインの欄に手書きで作業者名をサインする。上述した作業が作業標準になっている。
【0048】
このため、「XXX」さんが作業を終えると、被記録媒体1上の所定のパターン60が印刷された作業者サインの欄に、筆記装置300で作業者名がサインされる。筆記装置300は、筆記データを画像データとして認識することが可能である。次に、筆記装置300について説明する。
【0049】
<筆記装置>
図6は、筆記装置300の構成の一例を示すブロック図である。図6に示す筆記装置300は、ペン型であり、読取部301、RFIDリーダーライター302、ペンダウン検出部303、データ記録部304、データ転送部305、転送スイッチ306、クリアスイッチ307、データ処理部308を備える。
【0050】
また、読取部301、RFIDリーダーライター302、ペンダウン検出部303、データ記録部304、データ転送部305、転送スイッチ306、クリアスイッチ307及びデータ処理部308は、それぞれデータバス309に接続される。データ転送部305は、無線又は有線の回線によって情報処理装置100に接続される。
【0051】
読取部301は、筆記装置300の先端に設けられ、被記録媒体1上の所定のパターン60を光学的に読み取り、その軌跡を正確に計測して筆記データを画像データとして得ることができる。読取部301は、ペンダウン検出部303により、ペン先が被記録媒体1に接触していると判断されているときに読取処理を行う。
【0052】
読取部301は、例えば、小型カメラであり、文字を書く際に、1.8mm角の範囲のドットパターン60(上述の通り縦横6×6ドット=計36ドット)を1秒間に例えば75枚の高速撮影を行う。読取部301は、筆記装置300が通過したドットパターン60上の位置情報を刻々と捕捉していくことで、イメージスキャンしたような画像データとして筆記データを再現する。
【0053】
RFIDリーダーライター302は、被記録媒体1に内蔵されたRFIDタグ50に対し、データの書き込み及び読み出しを行う。なお、RFIDリーダーライター302は、必ずしも必要な構成ではない。
【0054】
ペンダウン検出部303は、筆記装置300のペン先が被記録媒体1に接触しているか否かを検出する。ペンダウン検出部303は、例えば、筆圧センサであり、ペン先における筆圧を計測することにより、ペン先と被記録媒体1との接触の有無を検出する。
【0055】
なお、ペンダウン検出部303は、ペン先と被記録媒体1との接触を検出すればよいため、ペン先がペン軸に沿った方向にわずかなストロークを持ち、その終端にマイクロスイッチを備えることでも実現できる。
【0056】
データ記録部304は、得られた筆記データの画像データを記録する。データ記録部304は、画像データを記録するのに十分な所定の容量を有するメモリである。また、データ記録部304は、記録したデータを消去することもできる。消去するトリガは、クリアスイッチ307がONになり、消去のための信号を取得したときである。
【0057】
データ転送部305は、データ記録部304に記録された筆記データの画像データを、情報処理装置100に転送する。転送するトリガは、転送スイッチ306がONになり、転送のための信号を取得したときである。
【0058】
転送スイッチ306は、ON/OFFを制御するスイッチである。転送スイッチ306がONになったときに、データ処理部308は、データ転送部305に対して、転送するための信号を出力する。
【0059】
クリアスイッチ307は、ON/OFFを制御するスイッチである。クリアスイッチ307がONになったときに、データ処理部308は、データ記録部304に対して、消去するための信号を出力する。
【0060】
転送スイッチ306、クリアスイッチ307は、押下可能にして筆記装置300に設けられ、例えば、ユーザがON/OFFを切り替えるものである。データ処理部308は、上記各部を制御する。
【0061】
また、筆記装置300は、ボールペンやマジックなどと同様に被記録媒体1への筆記を可能とするペン先を有する筒型の筐体に収納され、図示しない電源から供給される電力により動作する。
【0062】
ここで、筆記装置300の具体例として、アノト(Anoto)社のアノトペンがある。アノトペンは、手書き情報のデジタル化を実現し、書き順や書く速度、筆圧、ペンの傾き、書いた日時などもあわせて記録可能である。
【0063】
なお、情報処理装置100は、筆記装置300内に記録された筆記データの画像データを利用して種々の文書処理又は文書管理を実行する。
【0064】
<画像消去>
被記録媒体1を初期化する場合、被記録媒体1に印刷された画像、所定のパターン60、筆記データなどを消去する必要がある。また、RFIDデータ50に書き込まれたデータ情報を一度消去し、初期化する必要がある。
【0065】
次に、実施例における被記録媒体1の画像、所定のパターン60及びRFIDタグ50のデータを消去するのに適した画像消去装置について説明する。図7は、画像消去装置500の一例を示す図である。
【0066】
実施例における被記録媒体1の画像消去方法は、被記録媒体1の画像保持面に水又は水性液を有する除去液(画像形成材料の除去液)を供給する除去液供給処理と、被記録媒体1の画像保持面を擦掃する擦掃処理を含む。これらの処理は同時に進行してもよいが、図7に示す例の画像消去装置500においては逐次遂行される。
【0067】
図7に示される画像消去装置500において、被記録媒体1は、搬送ローラ対501により装置内に搬送され、除去液の付与箇所で画像材料除去液槽502内の除去液が加圧され液噴射ノズル503から被記録媒体1表面に噴射される。
【0068】
液噴射ノズル503は、複数のノズルヘッドからなるノズルアレイであってもよく、また、スリット式の噴射ヘッドであってもよい。除去液が画像形成材料を有する受容層30面に付与され、中間層20が膨潤される。
【0069】
次に被記録媒体1は、擦掃処理に導かれ、保持ローラ対506と保持ローラ対507で保持された状態で、ブラシローラ508によりブラッシングされる。これにより、膨潤した中間層20が除去される。
【0070】
しかし、実施例においては、ブラッシングに代え、織布等による拭払であってもよい。図7に示すブラシクリーニングベルト509は、ブラシローラ508に付いたペースト状の屑を除去する。
【0071】
その後、図7に示す例では、被記録媒体1は、残った中間層20材料をより完全に除去するため、バックアップローラ510の助けのもとで、表面掃掻ブレ−ド511により屑材料が掻き取られる。その後、被記録媒体1は、トレー513上に排出されるが、このような表面掃掻ブレ−ド511は、実施例において必ずしも必要なものではない。
【0072】
さらに、画像消去装置500内には、RFIDタグ50へのデータの書き込みが可能なリーダーライター512が内蔵されている。
【0073】
RFIDリーダーライター512は、画像消去装置500により画像や所定パターンなどが消去された被記録媒体1内のRFIDタグのデータを消去する。この場合、被記録媒体1は、画像や所定のパターン60及びRFIDタグ50のデータが無い状態でトレー6513に排出される。このように、画像除去処理後の被記録媒体1は、基質10のみになっている。基質10には、必要に応じてRFIDタグ50が内蔵される。
【0074】
<被記録媒体の再生>
次に、被記録媒体1の再生について説明する。図8は、再生コーティング装置600の一例を示す図である。再生コーティング装置600は、被記録媒体1を再生することができる。
【0075】
図8に示すように、画像消去処理によって基質10のみになった被記録媒体1は、再生コーティング装置600により、耐水性を有する基質10上に中間層20がコーティングされ、中間層20が乾燥される。
【0076】
中間層20の乾燥後、再生コーティング装置600は、中間層20の基質10側とは逆の面上に、画像形成材料40のための受容層30をコーティングし、乾燥させる。これにより、被記録媒体1の再生が完了する。
【0077】
<具体例>
ここで、被記録媒体1の画像形成、画像消去、再生の一連の動作の具体例について説明する。生産する機種や各工程により、作業工程を表す文字、バーコード、写真等の画像等が代わり、被記録媒体1は、書き換えられる。
【0078】
また、作業者も異なるため、作業者サインの欄のボールペンやマジックなどで書かれた筆記データも消去が必要となる。また、被記録媒体1に印刷されるレイアウトも機種や各工程により変更されるため、所定のパターン60の位置や大きさも、必要に応じて変更される。
【0079】
図9は、画像形成、画像消去、再生の一連の動作の具体例を示す図である。図9に示すように、被記録媒体1は、(1)〜(6)の状態に変化する。なお、各状態は、被記録媒体1の表面と、被記録媒体1の断面とを用いて説明する。
【0080】
(1)の状態は、例えば、工場出荷時の状態を示す。(1)の状態の被記録媒体1は、基質10、基質10の上に中間層20、中間層20の上に受容層30を有する。図7に示す例では、基質10にRFIDタグ50を内蔵するが、必ずしも必要ではない。このときのRFIDタグ50には、例えば、RFIDタグの固有の識別情報(ID)が記憶されている。
【0081】
(2)の状態は、プリンタ200により画像(画像70を含む)、所定のパターン60を画像形成材料40により形成された状態を示す。例えば、インクジェットのインクにより、画像70、所定のパターン60などが被記録媒体1に印刷される。このとき、プリンタ200のRFIDリーダーライター201は、RFIDタグ50のIDに対応する、組み立てる機種を認識するデータと、作業する工程「A−1」を認識するデータとを、印刷時などにRFIDタグ50に書き込む。(2)の被記録媒体1は、工程「A−1」の場合の画像70や所定パターンなどが印刷される。
【0082】
(3)の状態は、工程「A−1」の作業が終わり、作業者により、所定のパターン60上に作業者の名前を筆記された状態を示す。ここでは、作業者の名前は「XXX」とする。このとき、作業者は、上述した筆記装置300を用いて、自分の名前を筆記する。
【0083】
この後、例えば、筆記装置300は、読み取って電子化した「XXX」の画像データと、読み取ったRFIDタグ50のIDや工程を認識するデータとを、情報処理装置100に転送する。これにより、情報処理装置100は、RFIDタグ50のID、工程、この筆記データの画像データをそれぞれ関連付けて管理することができるようになる。
【0084】
(4)の状態は、(3)の状態の被記録媒体1に対して、画像消去処理を施した後の状態を示す。(3)の状態の被記録媒体1で、作業が終了し、その用途を終えた場合には、被記録媒体1を再利用するための画像消去が行われる。被記録媒体1は、画像消去装置500により画像消去処理が行われ、画像70、所定のパターン60などが消去される。
【0085】
また、被記録媒体1内のRFIDタグ50のデータは、例えば固有ID以外がRFIDリーダーライター512により消去される。なお、必要に応じて、固有IDも消去してもよい。このとき、被記録媒体1は、基質10のみである。
【0086】
(5)の状態は、画像消去後に、再生コーティング処理を施した状態を示す。(5)の状態の被記録媒体1は、再生コーティング処理により、基質10の上に、中間層20、受容層30が再生されている。これにより、被記録媒体1は、(1)の状態に戻り、再生初期化され、再利用される。
【0087】
(6)の状態は、(2)の状態とは異なる画像、所定のパターンが印刷された状態を示す。(6)の被記録媒体1は、工程「A−2」の場合の画像70や所定のパターン60などが印刷されている。(6)の被記録媒体1は、所定のパターン60のサイズ、位置、画像70の位置が(2)の状態の被記録媒体1とは異なる。これにより、被記録媒体1は、機種や工程内容などに応じて、形成される画像を変更したり、形成される所定パターンの位置、サイズを変更したりすることができる。
【0088】
なお、(6)の記録媒体1には、作業者「YYY」が所定のパターン60に、筆記装置300で名前を筆記すると、前述した「XXX」の処理と同様の処理が行われる。
【0089】
以上、実施の形態によれば、高解像度での印刷が可能な被記録媒体上に、筆記データを認識可能な所定のパターンを形成することで、所定のパターンの再形成を可能にすることができる。
【0090】
また、実施の形態における被記録媒体は、所定のパターンを必要最小限のサイズで任意の位置に形成することができる。つまり、所定のパターンは、被記録媒体の所定位置に所定サイズで形成されうる。また、実施の形態における被記録媒体は、所定のパターン上に手書きで筆記されたとしても、この筆記データを消去することができる。
【0091】
また、実施の形態における被記録媒体は、高解像度が可能なインクジェットプリンタによる印刷が可能であり、例えば、アノトパターンのような微小なドットも形成できるようになる。また、所定のパターンは、特殊なインクである必要はなく、一般的なインクジェットプリンタのインクで形成できるため、汎用性が向上する。
【0092】
また、実施の形態における被記録媒体は、無線ICチップなどの記憶媒体を有することで、所定パターン上に筆記されたデータの画像データと、記憶媒体に記憶された情報とを関連付けさせることができるようになる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 被記録媒体
10 基質
20 中間層
30 受容層
40 画像形成材料
50 RFIDタグ
60 所定のパターン
70 画像
100 情報処理装置
200 プリンタ
300 筆記装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開2002−82764号公報
【特許文献2】特開2006−99559号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水性を有する基質と、
前記基質の少なくとも一方の面に、水又は水性液により溶解又は膨潤する未硬化水溶性高分子材料を含む中間層と、
前記基質側の面とは異なる前記中間層の面に、前記水又は水性液に対する通過性を有し、かつ、前記中間層の溶解又は膨潤により、崩壊又は前記中間層との接着状態が弛緩される受容層とを備え、
筆記データを認識可能とする所定のパターンが、親水性を有する画像形成材料により、少なくとも前記受容層に形成可能である被記録媒体。
【請求項2】
前記所定のパターンは、記録ヘッドから吐出された前記画像形成材料により形成される請求項1記載の被記録媒体。
【請求項3】
前記基質は、
記憶されるデータの書き換えが可能な記憶媒体を含む請求項1又は2記載の被記録媒体。
【請求項4】
前記記憶媒体は、RFIDタグである請求項3記載の被記録媒体。
【請求項5】
前記所定のパターンは、前記被記録媒体に対して、所定位置に所定サイズで形成される請求項1乃至4いずれか一項に記載の被記録媒体。
【請求項6】
前記所定のパターンは、所定間隔の格子状の上に配置された各ドットであり、各ドットは、格子状の交点から上下左右のいずれかの方向にずれている請求項1乃至5いずれか一項に記載の被記録媒体。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−232425(P2012−232425A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100706(P2011−100706)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000115751)リコーユニテクノ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】