被較正疑似品
【課題】関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品を提供する。
【解決手段】座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品100であって、前記関節プローブヘッドを前記座標位置決め機械の前記アームに対し関節動作させることによりスキャンされることが可能な、異なる寸法の複数の輪郭102、104、106と、前記複数の輪郭102、104、106を、前記座標位置決め機械の異なる方向に沿って向けることができるよう、前記複数の輪郭102、104、106の向きを変えるための割り出し装置と、を備える被較正疑似品100。
【解決手段】座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品100であって、前記関節プローブヘッドを前記座標位置決め機械の前記アームに対し関節動作させることによりスキャンされることが可能な、異なる寸法の複数の輪郭102、104、106と、前記複数の輪郭102、104、106を、前記座標位置決め機械の異なる方向に沿って向けることができるよう、前記複数の輪郭102、104、106の向きを変えるための割り出し装置と、を備える被較正疑似品100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標位置決め装置(三次元位置決め装置;coordinate positioning apparatus)に取り付けられた関節プローブヘッドを用いるワークピースの寸法の測定に関する。
座標位置決め装置は、例えば、座標測定機(三次元測定機;coordinate measuring machine)(CMM)、工作機械、手動座標測定アーム及び検査ロボットを含む。
【背景技術】
【0002】
ワークピースが製造された後、それをクイル(中空シャフト、クイルシャフト;quill)を有する座標測定機上で検査することが一般的に行われている。座標測定機にはプローブが取り付けられ、プローブは、直交する三方向X,Y,Zに、機械の作動容積内で駆動されることができる。
【0003】
CMMは、例えばレーザ干渉計を用いて、誤差マップを生成されてもよく、これによりCMMが一部を低速で正確に測定できるようになる。
【0004】
ワークピースを高速で測定するとき、機械の加速度が動的誤差を生じさせる。我々の従前の特許文献1は、これら動的誤差を修正する方法を開示する。この方法において、座標測定機テーブル上に最初のワークピースが置かれ、ワークピースの表面上の一組の点が低速で測定され、正確な読み取り値が得られることを許容している。その後最初のワークピースの測定が高速で繰り返される。低速読み取り値と高速読み取り値との差が計算され、記憶される。各測定点の記憶された誤差値は、高速時における機械構造の動的たわみを考慮に入れている。
【0005】
測定される次のワークピースがCMMテーブル上にセットされ、読み取りが高速でなされる。この速度では読み取り値は不正確だが、反復可能である。各高速読み取り値が、対応する記憶された誤差値を加算することにより、調節され、これにより高速読み取りによって生じた誤差が補正される。この方法は、たった一つのワークピースから動的誤差マップを作成することにより、全数の名目上同一のワークピースを高速で測定することができるという利点を有する。
【0006】
この方法の使用は、ワークピースがCMMを用いて高速で測定されることを許容するが、上限を有し、その上では不十分となる。これは、CMMが高加速度で一貫せず及び/又は不安定になること、又は機械が、要求される加速度を達成し得ないことによるかもしれない。
【0007】
上述の限界は、座標測定機に取り付けられた高帯域幅装置を用いることにより克服できる。このような高帯域幅装置は特許文献2に開示されており、特許文献2は、プローブがワークピースの表面をスキャンする作動に用いられることができるように、二自由度を持つプローブを指向させることができる関節プローブヘッドを記載する。概してこのようなプローブヘッドは二つの回転駆動機構を有し、これら回転駆動機構は、実質的に直交する二つの回転軸の回りでプローブを指向させることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4991304号明細書
【特許文献2】米国特許第5189806号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような関節プローブヘッドは速く反復可能なスキャニングを可能にする。しかしながら、この関節プローブヘッドの使用は、較正に時間を消費するという欠点がある。さらに、通常の座標測定機に取り付けられた関節プローブヘッドの測定系は、5軸系であり、このことが較正をより一層複雑にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は、関節プローブヘッドを較正する方法であって、前記関節プローブヘッドが座標位置決め装置のアームに取り付けられ、前記関節プローブヘッドに取り付けられた表面検出装置が、疑似品との位置検出関係及び読み取りされる位置に動かされる方法であり、以下のステップを任意の適当な順序で備える方法を提供する。
a)真の測定値が決定されている疑似品を測定するステップ。これにおいて、前記表面検出装置と前記座標位置決め装置の前記アームとの間の相対移動が存在する。
b)ステップaで取得された前記測定値と前記疑似品の真の測定値との差に応じた誤差関数又はマップを発生させるステップ。
c)以降のワークピースを測定するステップ。これにおいて、前記表面検出装置と前記座標測定機の前記アームとの間の相対移動が存在する。
d)ステップbで発生された前記誤差関数又はマップを用いて、ステップcで取得された以降のワークピースの測定値を修正するステップ。
【0011】
前記疑似品の真の測定値は、前記疑似品を測定することによって決定されてもよく、これにおいて、前記表面検出装置と前記座標位置決め装置の前記アームとの間の相対移動は存在しない。好ましくは、これは、動的誤差を除くために低速で行われる。
【0012】
前記疑似品の真の測定値は、被較正疑似品を用いることによって決定されてもよい。
【0013】
好ましくは、前記被較正疑似品が少なくとも一つの円形輪郭を備える。
【0014】
前記表面検出装置は、例えばワークピース検出プローブ又はスタイラスを備えてもよい。
【0015】
前記疑似品は、一連のワークピースにおける一つのワークピースからなってもよい。或いは、前記疑似品は、前記ワークピースと近似する寸法及び位置を有した構成要素を有してもよい。前記疑似品は、前記ワークピースと同じ表面仕上げを有していてもよく、或いは、前記ワークピースの表面仕上げを模擬していてもよい。
【0016】
ステップaにおいて、前記座標測定機の前記アームは静止していてもよい。或いは、前記座標測定機の前記アームは一定速度で移動していてもよい。これは、座標測定機からの動的な力を除去する。
【0017】
取得された測定値は、不連続の測定値であってもよく(即ち、タッチトリガプローブを用いる)、或いは、連続の測定値であってもよい(即ち、スキャニングプローブを用いる)。
【0018】
前記表面検出装置は、アナログ(スキャニング)プローブ又はタッチトリガプローブのような接触プローブであってもよい。或いは、前記表面検出装置は、容量、誘導若しくは光学プローブのような非接触プローブであってもよい。
【0019】
本発明の第二の態様は、支持体(サポート;support)に取り付くための第1のマウントと、表面検出装置が取り付け可能な第2のマウントとを備え、前記第2のマウントが、前記第1のマウントに対し一以上の軸回りに回転可能である関節プローブヘッドにおいて、前記第1のマウントに対する前記第2のマウントの前記一以上の軸回りの位置をロックするための少なくとも一以上の機械式ブレーキが設けられ、これにより、少なくとも一つの位置測定装置が、前記第1のマウントに対する前記第2のマウントの前記一以上の軸回りの位置を決定すべく設けられることを特徴とする関節プローブヘッドを提供する。
【0020】
好ましくは、前記関節プローブヘッドが、少なくとも一つの軸回りを回転可能な回転部材を含み、これにおいて、前記ロック手段(the lock)が、前記第1及び第2位置の間を移動するロック部材を有し、その第1位置において、それは前記回転部材に係合して前記回転部材を定位置にロックし、その第2位置において、それは前記回転部材から離脱し、前記回転部材の回転を許容する。
【0021】
前記回転部材は、駆動ベルト又は従動ホイールからなってもよい。
【0022】
前記回転部材に歯状の輪郭が設けられてもよく、これにおいて、歯状ロックアッセンブリが前記ロック手段に設けられ、これにより、前記第1位置において、前記ロックアッセンブリの前記歯と前記回転部材とが噛合する。
【0023】
前記ロック手段には、前記ロック部材をその第1位置及び第2位置の間で移動させるためのアクチュエータが設けられてもよい。
【0024】
前記アクチュエータと前記ロック部材との間の接触点は、前記ロック部材と前記回転部材との間の接触点から横断方向に(transversely)離間されてもよい。前記ロック部材は、旋回点回りに旋回可能なレバーアッセンブリを備えてもよく、これにおいて、前記ロック部材と前記回転部材との間の接触点は、前記旋回接続点(the pivot joint)と、前記アクチュエータ及び前記ロック部材の間の接触点との間に位置される。前記ロック部材はレバーアッセンブリを備えてもよい。前記ロック部材がその第1位置にあるときに前記ロック部材を前記回転部材へと付勢する付勢手段が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、前記課題を解決することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、関節プローブヘッドが設けられた座標測定機(CMM)の斜視図である。
【図2】図2は、関節プローブヘッドの断面図を示す。
【図3】図3は、本方法のフローチャートである。
【図4】図4は、ロックされた関節プローブヘッドによって測定されるボアを示す。
【図5】図5は、アンロックされた関節プローブヘッドによって測定されるボアを示す。
【図6】図6は、上部位置にある機械式ブレーキを示す。
【図7】図7は、下部位置にある図6の機械式ブレーキを示す。
【図8】図8は、較正疑似品の第一実施形態の斜視図である。
【図9】図9は、図8の較正疑似品の断面図である。
【図10】図10は、較正疑似品の第二実施形態の側面図である。
【図11】図11は、ロック位置にある機械式ブレーキの第二実施形態の側面図である。
【図12】図12は、アンロック位置にある機械式ブレーキの第二実施形態の側面図である。
【図13】図13は、ロック位置にある機械式ブレーキの第三実施形態の側面図である。
【図14】図14は、アンロック位置にある機械式ブレーキの第三実施形態の側面図である。
【図15】図15は、ロック位置にある機械式ブレーキの第四実施形態の側面図である。
【図16】図16は、アンロック位置にある機械式ブレーキの第四実施形態の側面図である。
【図17】図17は、ロック位置にある機械式ブレーキの第五実施形態の側面図である。
【図18】図18は、三つの回転軸を有する関節プローブヘッドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適実施形態が添付図面の参照と共に例示的に説明される。
【0028】
図1は、座標測定機に取り付けられた関節プローブヘッドを示す。座標測定機10は、ワークピースが載置されることができるテーブル12と、テーブル12に対しX,Y,Z方向に移動することができるアーム14とを備える。関節プローブヘッド16は、CMMのアーム14に取り付けられている。関節プローブヘッド16は、これに取り付けられたワークピース測定プローブ18が、実質的に直交する二つの軸A1,A2回りに回転することを許容する。
【0029】
機械アーム14はそれ故、座標測定機のX,Y,Z駆動装置(図示せず)の動作に伴ってX,Y,Z方向に移動されることができる。X,Y,Zスケール(図示せず)が、アーム14の位置の瞬間の座標を示す。関節プローブヘッドの回転駆動手段(図示せず)が、二つの回転軸A1,A2回りのプローブの動作を可能にする。この動作は、関節プローブヘッド16内の回転スケール(図示せず)によって測定される。プローブスタイラスの偏位(deflection)を示すプローブ18からの信号が、CMMのX,Y,Zスケール及び関節プローブヘッドの回転スケールからの測定値と組み合わされ、スタイラス先端(スタイラスチップ)ひいてはワークピース表面の位置が計算される。
【0030】
図2に示されるように、関節プローブヘッド16は、基部又はハウジング20によって形成される固定部を備える。固定部は可動部を支持し、可動部は、モータM1によって、ハウジング20に対し軸A1回りに回転可能なシャフト22の形態を有する。シャフト22は別のハウジング24に固定され、そしてこの別のハウジング26はシャフト26を支持する。シャフト26は、モータM2によって、ハウジング24に対し、軸A1に垂直な軸A2回りを回転可能である。
【0031】
ワークピース接触チップ30を有するスタイラス28を備えるプローブ18は、関節プローブヘッド16に取り付けられる。装置は以下のようなものである。即ち、ヘッドのモータM1,M2が、ワークピース接触チップ30を軸A1又はA2に対し傾斜して位置づけることができ、CMMのモータが、関節プローブヘッド16を、CMMの三次元座標枠組内のあらゆる位置に直線的に(リニアに)位置づけることができ、これによりスタイラスチップ30が、スキャン(走査)される表面と所定の関係を持つように導かれる。
【0032】
関節プローブヘッド16の直線変位を測定するため直線位置変換器(図示せず)がCMMに設けられ、各軸A1,A2回りのスタイラス38の角度変位を測定するため角度位置変換器T1,T2が関節プローブヘッド16に設けられる。
【0033】
図3を参照して、次の手順が本検査方法で用いられる。測定される複数の一連のワークピースからの一つのワークピースが座標測定機のテーブル12上に置かれる(40)。或いは、ワークピースに近似する疑似品(artifact)を用いることができる。疑似品は、特に、ワークピースの構成要素と符合する寸法及び/又は位置の構成要素を有する。
【0034】
関節プローブヘッドの回転軸は、プローブ18が回転軸A1,A2回りに移動できぬようにロックされ、或いは静止保持される。こうして、系は、事実上、座標測定機上に置かれたプローブである。関節プローブヘッドがそのようにロックされた状態で、ワークピース又は疑似品がスキャンされ、又は測定される(42)。
【0035】
図4は、ロックされた関節プローブヘッド16によってスキャンされているボア(穴)56を示す。この場合、CMMのアーム14が、矢印Aで示されるように動かなければならず、これによりプローブ18のワークピース接触チップ30がボアの内面を測定することが許容される。
【0036】
本方法の次のステップにおいて、関節プローブヘッド16はアンロックされ、これによりプローブ18が回転軸A1,A2回りを移動できるようになる。そしてワークピースは、アンロックされた関節プローブヘッドによってスキャンされ、又は測定される(44)。
【0037】
図5は、アンロックされた関節プローブヘッド16によってスキャンされているボア56を示す。機械アーム14は、それがボア56の対称軸57に整列されて静止保持され、他方プローブ18が関節プローブヘッド16の回転軸回りに移動されるように、位置されることができる。或いは、プローブ18が、関節プローブヘッド18の回転軸回りに回転されるに従って、CMMのアームが、ボア56の対称軸57に沿って一定速度で移動してもよい。この場合、ボアの内面は螺旋状にスキャンされる。両方の場合、即ちアーム14が静止され又は一定速度で移動されるとき、機械には動的な力が付与されない。
【0038】
次のステップにおいて、ロックされた関節プローブヘッドによるスキャン中に取得された測定データが、アンロックされた関節プローブヘッドによるスキャンから取得された測定データと比較される。これは、誤差関数又はマップを生成するために使用される(46)。この誤差関数又はマップは、ワークピースの表面上の各点における関節プローブヘッドに起因する誤差が決定されることを許容する。
【0039】
一連のワークピースにおける次のワークピース群が座標測定機上にセットされる(48)。好ましくは自動手段(図示せず)が、生産操業のため、連続した実質的に同一のワークピースの各々を、CMMテーブル上の少なくとも名目上同じ位置及び向きに配置する。
次のワークピース群のうちの一つが、アンロックされた関節プローブヘッドによってスキャンされる。このスキャン中に取得された測定データが、以前作成された誤差関数又はマップを用いて補正される(52)。
【0040】
最良の結果のため、アンロックされたプローブヘッドによる最初の測定(44、図3)のときと実質的に同一の測定経路が、次のワークピースの測定(50、図3)のために用いられる。
【0041】
この方法は、CMMの精度と関節プローブヘッドの反復性との優位性を獲得し、関節プローブヘッドを較正する必要なしに、早くて正確なワークピースの測定がなされることを可能にする。
【0042】
本方法は、関節ヘッドにおける幾何学的誤差を補正する。動的誤差をも補正するため本方法を用いることが可能である。動的誤差は、例えば、関節ヘッドの曲がりや、CMMのクイルの捩れによって生じる可能性がある。動的誤差を補正するため、ステップ42において、ワークピースは低速でスキャンされる。これによって動的誤差を含まない測定データが取得される。この後ワークピースはステップ44で高速でスキャンされ、これにより、ステップ46で生成される誤差関数又はマップが、幾何学的誤差と、高速スキャンによって生じる動的誤差との両方を含むようになる。ステップ50における次の測定は高速で行われる。このスキャン中に生成された動的誤差はステップ52において誤差マップ又は関数によって修正(補正)される。
【0043】
しかしながら、関節ヘッドが良い機械的デザインを有している場合、無視し得る動的誤差しかなく、よってワークピースは各ケースにおいて任意の速度でスキャンされることができる。
【0044】
前述の説明はスキャニングプローブ(走査プローブ)の使用に向けられたが、それはタッチトリガープローブ(touch trigger probe)による測定にも適している。この測定においてはワークピースの表面上の各点で不連続(個別)の測定がなされる。さらに本方法は、例えば容量式、誘導式又は光学式プローブといった非接触プローブを用いる使用にも適している。関節プローブヘッドの回転軸は様々な手段によってロックされることができる。例えば、関節プローブヘッドがサーボモータ上で静止保持されてもよく、或いは別個のロック装置が使用されてもよい。
【0045】
図6及び図7は、関節プローブヘッドの回転軸をロックするのに用いられる機械式ブレーキを示す。ブレーキ60はブレーキパッド84を備え、ブレーキパッド84は、従動ホイールのプーリベルト86に押し付けられ、動作をロックする。ブレーキ84は、高い摩擦係数を有するゴムから作られることができる。ブレーキパッドは後に詳述されるレバー機構によってプーリベルトに押し付けられる。ピン62が、切替ソレノイドの動作によって、上部位置と下部位置との間を移動可能である。図6は上部位置にあるピン62を示し、図7は下部位置にあるピン62を示す。ピンの下端が旋回軸64によって第1及び第2アーム66,68に接続される。第1アーム66は旋回軸64によって一端がピン62に接続され、第1アーム66は、第一端において旋回軸64によりピン62に接続され、第二端において他の旋回軸70により第3アーム74に接続される。第3アーム74は、その一端に旋回軸78が設けられ、その旋回軸78回りに、固定面88に対し回転することができる。
【0046】
第2アーム68は、第一端において旋回軸62によりピン62に接続され、第二端において他の旋回軸72により第4アーム76に接続される。第4アーム76は、その他端において、旋回軸80により固定面82に取り付けられる。第4アーム76には、プーリベルト86に隣接した面上にブレーキパッド84が設けられる。
【0047】
図6は、上部位置にあるピン62を示し、ブレーキパッド84が非係合位置に位置されている。電流が切替ソレノイドに流され、これによってピン62が図7に示される下部位置に押される。かかるピン62及びその旋回軸64の下方への動作は、第1及び第2アーム66,68を旋回軸64回りに旋回させ、外側に移動させ、水平位置に近づける。この第1及び第2アーム66,68の動作は、第3及び第4アーム74,76を、それらの各旋回軸78,80回りに回転させ、これにより第1及び第2アーム66,68に隣接する各端部がピン62から押し離される。これによりブレーキパッド84はプーリベルト86に押し付けられ、ブレーキとして作用する。固定ブロック88に位置されたネジ90は、第3アーム74さらには第4アーム76の最大移動量を規定するストッパとして作用する。
【0048】
図11及び図12は機械式ブレーキの第2実施形態を示す。図11は駆動ホイール144を示し、駆動ホイール144は駆動ベルト140を介して従動ホイール142を駆動する。ブレーキはピンチブレーキ(挟みブレーキ;pinch brake)であり、これにおいては、ブレーキシューがロック位置で駆動ベルトに押し付けられ、アンロック位置で駆動ベルトから離間保持される。駆動シュー149が、旋回軸150回りに、図11に示されるそのロック位置と図12に示されるそのアンロック位置との間を回転する。旋回軸150は、ブレーキシュー149の位置の微調節を可能にする例えばカムのような調節手段を含む。
【0049】
ブレーキシューの位置はソレノイド146によって作動される。図11に示されるロック位置において、ソレノイド146はピン148をブレーキシュー149に押し付け、それを旋回軸150回りに、ロック位置へと回転させる。アンロック位置において、ソレノイド146はピン148を上方に押し、ブレーキシュー149との接触を解除させる。リターンスプリング152がブレーキシューをそのアンロック位置へと付勢する。
【0050】
図13及び図14は本発明の第3実施形態を示す。この実施形態は図11及び図12に示された実施形態に類似しており、類似の構成要素は同一の参照符号を用いる。
【0051】
レバーアッセンブリ154が設けられ、これは固定面158から延びて駆動ホイール140に隣接して位置する。屈曲部156が、レバーアッセンブリの旋回を可能とし、レバーを駆動ベルトから離すよう付勢する。
【0052】
ブレーキが図13に示されるようなロック位置にあるとき、ブレーキシュー149がレバー154を押し、次いでレバー154が駆動ベルト140を押す。ブレーキがアンロック位置にあるとき、ブレーキシュー149はリターンスプリング152によって静止位置に付勢され、レバーアッセンブリ154が屈曲部156によって静止位置に付勢される。
レバーアッセンブリは分離部材として作用し、レバーと駆動ベルトとの接触点を、ブレーキシューとレバーとの接触点から分離させる。レバーアッセンブリは、従動部材のいずれの回転方向においても、ブレーキが過剰ロック状態になること、又は詰まり状態(jamming)になることを防止する。これらの状態は、駆動ベルトの厚さと従動ホイールの真円度との変化によって生じる可能性がある。
【0053】
レバーアッセンブリ154の脆弱部155はそれをスプリングレバーとして機能させることを可能にする。結局、ブレーキシュー149がレバーアッセンブリに対する力Fを発生するとき、レバーは、長さLに亘って曲がることができ、よって駆動ベルトの厚さ又は従動ホイールの真円度のいかなる誤差にも順応する。
【0054】
図6、7、11〜14で説明されたブレーキシステムは増分するものではなく(non-incremental)、よって従動ホイールがあらゆる位置でロックされることを許す。
図15及び図16は機械式ブレーキの第4実施形態を示す。この実施形態は幾つかの構成要素を図13及び図14と共通に有し、類似の構成要素は同一の参照符号を用いる。
【0055】
図15及び図16において、ブレーキは、駆動ベルトではなく駆動ホイール142に作用する。ブレーキは駆動ホイールの一側に位置されている。駆動ホイール142には、その周縁に歯状面160が設けられている。これは例えば、歯の輪郭を持つ外表面を有するリングによって提供されることができる。相補的な歯アッセンブリ162がレバーアッセンブリ154に設けられている。結局、図15に示されるロック位置において、従動ホイールの歯状面160と、レバーの歯アッセンブリ162との歯が、係合して、駆動ホイール142を定位置にロックさせる。この実施形態は互いに噛み合う歯を有しているので、ブレーキは、例えば1°の増分位置(incremental position)で、駆動ホイールを保持するであろう。この実施形態は、駆動ベルトの厚さ及び/又はホイールの真円度に誤差があっても有効であるという利点を有する。一旦歯が係合してしまえば、レバーアッセンブリの可撓性が、ブレーキシューがより多くの力Fを作用させてレバーをブレーキ位置に付勢することを可能にし、これによりブレーキが働き続けることを保証する。
【0056】
これらの実施形態のいずれにおいても、ロータリエンコーダシステムが設けられてもよい。それは例えば駆動ホイールに位置される。図13及び図14に示されるように、これは、駆動ホイールに取り付けられたロータリスケールリングと、当該ホイールに隣接する相対的に固定された表面に位置された読み取りヘッドとを備えてもよい。ブレーキ位置における僅かな動作がエンコーダによって読み取られることができ、補正が、測定データに適用される。
【0057】
ブレーキシステムのさらなる実施形態において、ブレーキは、反復可能な位置(repeatable position)に関節プローブヘッドを保持するのに用いられることができる。図17は、マウント182に旋回可能に取り付けられたブレーキパッド184を示す。マウントはさらにピエゾ積層体(piezo stack)188に取り付けられる。前述の実施形態のように、関節プローブは、従動ホイール186のような回転部にブレーキパッドを押し付けることによってロックされる。関節プローブヘッドの位置は、エンコーダ190から位置を読み取ることにより決定される。関節プローブヘッドが望まれない位置にある場合、本実施形態は位置が調節されることを可能にする。ブレーキパッド184は回転部186に接触し続け、他方、電圧がピエゾ積層体188に印加されてその高さhを調節する。これは、ブレーキパッド184の位置を動かし、これにより、ブレーキパッドに接触している従動ホイール186を回転させるという効果を有する。従動ホイール186の位置は、それ故、エンコーダ190の出力が望まれる位置を与えるまで、調節されることができる。ピエゾ積層体188は、多量の熱を放散しないという利点を有する。さらにそれは、小動作(数100ミクロン)とともに高い力を発生し、このことが微調節を可能にする。例えば油圧ラムのような他のアクチュエータが使用されてもよい。
【0058】
この機械式ブレーキは、他の部分に対して回転する一部を有するあらゆるタイプの関節プローブヘッドに適している。例えば、ブレーキは、米国特許第RE35510号明細書にて開示されたプローブヘッドに適しており、これにおいて、関節プローブヘッドは、割り出しされた(indexed)複数の角度位置の間を移動する。関節プローブヘッドが二軸又は三軸の回りを回転する場合、機械式ブレーキはそれぞれの軸に対して設けられることができる。
【0059】
表面検出装置は、例えば、表面検出プローブ、スタイラス又はカメラを備えることができる。
【0060】
図18は、カメラ198が取り付けられた関節プローブヘッド18を示す。カメラは三つの軸192,194,196の回りを回転可能である。
【0061】
以上の実施形態は、駆動ベルト又は従動ホイールに作用するブレーキを説明するが、ブレーキは、シャフトやモータピニオンなどのいかなる回転部にも作用することができる。
【0062】
全ての前記の実施形態において、機械式ロック手段(mechanical lock)は、関節ヘッドをロックするために摩擦を用いる。前記実施形態ではロック手段がソレノイドによって作動されるが、他の手段、例えば油圧、空圧、モータ、ピエゾ又は重力が、用いられることができる。機械式ロック手段は、係合位置又は非係合位置に向けて作動されるが、一旦定位置に位置してしまえば動力は不要である。
【0063】
ディスクブレーキなどの他のタイプのブレーキも使用可能である。
【0064】
ブレーキ部材と回転部との接触がないブレーキを有することも可能である。磁気ブレーキは、鉄の回転部に極く接近された一以上の電磁石を備えることができる。ブレーキは電磁石をオンすることにより作動され、これは回転部が回転することを阻止する。
【0065】
関節プローブヘッドの軸をロックする機械式ロック手段の使用は、関節プローブヘッドのモータを検知してそれを定位置に保持することに関して幾つかの利点を有する。機械式ロック手段の使用により、関節プローブヘッドのモータが停止することができ、これによりシステムの温度が減少する。減少された熱の効果は、システムの度量衡(metrology)を向上する。さらに、機械式ロック手段は、モータをサーボ機構で制御することに比べ、固定された系を提供し、これによりシステムの度量衡を向上する。
【0066】
本発明の第2実施形態において、関節プローブヘッドは、被較正疑似品(calibrated artefact)をスキャンすることによって較正される。図8は、異なる直径を有する円形輪郭102,104,106を備える疑似品100を示す。これら円形輪郭102,104,106は、例えば測定装置を作ることによって、較正され、これにより既知の寸法を持つものとされる。
【0067】
円形輪郭は中心線110を有し、この中心線は、第1及び第2割り出し装置112,114により、例えば機械軸X,Y,Zのような所望の方向に向けられることができる。
【0068】
被較正疑似品100は、その中心線110が第1軸、例えば機械のX軸に整列するように方向付けられる。機械アームが静止保持される一方、関節プローブヘッドの軸A1,A2回りの回転により、プローブによって、円形輪郭がスキャンされることができるように、機械アームが、関節プローブヘッド及びプローブを、当該軸に整列された位置に動かす。
【0069】
円形輪郭102,104,106は、好ましくは高速度、即ちその後の測定に使用される速度で、スキャンされる。
【0070】
円形輪郭の測定値は、円形輪郭の既知の原形(form)と比較され、これにより測定の方向と速度とに関連した誤差マップが作成される。そして被較正疑似品100は、割り出し装置を用いて、その中心線110が新たな方向に整列するように方向付けられ、この新たな方向に関連した新たな誤差マップを作成すべく本方法が繰り返される。
【0071】
被較正疑似品100が例えば7.5°増分の異なる向きで測定されると、データが補間され、これらの向きの間における被較正疑似品の位置のための誤差データが導き出される。同様に、異なる直径の円形輪郭に関連したデータが補間され、測定された値の間の直径を有する円形輪郭のための誤差データが生成される。補間は、例えば一次最適又は多項最適のような手法を備えてよい。
【0072】
高速で被較正疑似品を測定することによって、誤差マップは動的誤差を修正する。しかしながら前述したように、関節ヘッドが良好な機械的デザインを有する場合はこれを不要とすることができる。
【0073】
関節プローブヘッドに取り付けられたプローブを用いて測定される以降のワークピースは、対応方向に関する誤差マップを用いて修正される。
【0074】
図10は、他のタイプの較正疑似品120を示し、これにおいては、異なる直径の円形輪郭122,124,126が複数のコーン130,132,134に設けられる。これらコーン130,132,134は、異なる機械軸に沿って整列され、これにより割り出し装置の必要性が取り除かれる。
【0075】
以上の記載はCMMに取り付けられた関節プローブヘッドを説明する。しかしながら、本発明は、一以上の移動軸を有するあらゆるタイプの座標位置決め装置に適している。例えば関節プローブヘッドは一軸システムに取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0076】
16 関節プローブヘッド
100,120 疑似品
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標位置決め装置(三次元位置決め装置;coordinate positioning apparatus)に取り付けられた関節プローブヘッドを用いるワークピースの寸法の測定に関する。
座標位置決め装置は、例えば、座標測定機(三次元測定機;coordinate measuring machine)(CMM)、工作機械、手動座標測定アーム及び検査ロボットを含む。
【背景技術】
【0002】
ワークピースが製造された後、それをクイル(中空シャフト、クイルシャフト;quill)を有する座標測定機上で検査することが一般的に行われている。座標測定機にはプローブが取り付けられ、プローブは、直交する三方向X,Y,Zに、機械の作動容積内で駆動されることができる。
【0003】
CMMは、例えばレーザ干渉計を用いて、誤差マップを生成されてもよく、これによりCMMが一部を低速で正確に測定できるようになる。
【0004】
ワークピースを高速で測定するとき、機械の加速度が動的誤差を生じさせる。我々の従前の特許文献1は、これら動的誤差を修正する方法を開示する。この方法において、座標測定機テーブル上に最初のワークピースが置かれ、ワークピースの表面上の一組の点が低速で測定され、正確な読み取り値が得られることを許容している。その後最初のワークピースの測定が高速で繰り返される。低速読み取り値と高速読み取り値との差が計算され、記憶される。各測定点の記憶された誤差値は、高速時における機械構造の動的たわみを考慮に入れている。
【0005】
測定される次のワークピースがCMMテーブル上にセットされ、読み取りが高速でなされる。この速度では読み取り値は不正確だが、反復可能である。各高速読み取り値が、対応する記憶された誤差値を加算することにより、調節され、これにより高速読み取りによって生じた誤差が補正される。この方法は、たった一つのワークピースから動的誤差マップを作成することにより、全数の名目上同一のワークピースを高速で測定することができるという利点を有する。
【0006】
この方法の使用は、ワークピースがCMMを用いて高速で測定されることを許容するが、上限を有し、その上では不十分となる。これは、CMMが高加速度で一貫せず及び/又は不安定になること、又は機械が、要求される加速度を達成し得ないことによるかもしれない。
【0007】
上述の限界は、座標測定機に取り付けられた高帯域幅装置を用いることにより克服できる。このような高帯域幅装置は特許文献2に開示されており、特許文献2は、プローブがワークピースの表面をスキャンする作動に用いられることができるように、二自由度を持つプローブを指向させることができる関節プローブヘッドを記載する。概してこのようなプローブヘッドは二つの回転駆動機構を有し、これら回転駆動機構は、実質的に直交する二つの回転軸の回りでプローブを指向させることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4991304号明細書
【特許文献2】米国特許第5189806号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような関節プローブヘッドは速く反復可能なスキャニングを可能にする。しかしながら、この関節プローブヘッドの使用は、較正に時間を消費するという欠点がある。さらに、通常の座標測定機に取り付けられた関節プローブヘッドの測定系は、5軸系であり、このことが較正をより一層複雑にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は、関節プローブヘッドを較正する方法であって、前記関節プローブヘッドが座標位置決め装置のアームに取り付けられ、前記関節プローブヘッドに取り付けられた表面検出装置が、疑似品との位置検出関係及び読み取りされる位置に動かされる方法であり、以下のステップを任意の適当な順序で備える方法を提供する。
a)真の測定値が決定されている疑似品を測定するステップ。これにおいて、前記表面検出装置と前記座標位置決め装置の前記アームとの間の相対移動が存在する。
b)ステップaで取得された前記測定値と前記疑似品の真の測定値との差に応じた誤差関数又はマップを発生させるステップ。
c)以降のワークピースを測定するステップ。これにおいて、前記表面検出装置と前記座標測定機の前記アームとの間の相対移動が存在する。
d)ステップbで発生された前記誤差関数又はマップを用いて、ステップcで取得された以降のワークピースの測定値を修正するステップ。
【0011】
前記疑似品の真の測定値は、前記疑似品を測定することによって決定されてもよく、これにおいて、前記表面検出装置と前記座標位置決め装置の前記アームとの間の相対移動は存在しない。好ましくは、これは、動的誤差を除くために低速で行われる。
【0012】
前記疑似品の真の測定値は、被較正疑似品を用いることによって決定されてもよい。
【0013】
好ましくは、前記被較正疑似品が少なくとも一つの円形輪郭を備える。
【0014】
前記表面検出装置は、例えばワークピース検出プローブ又はスタイラスを備えてもよい。
【0015】
前記疑似品は、一連のワークピースにおける一つのワークピースからなってもよい。或いは、前記疑似品は、前記ワークピースと近似する寸法及び位置を有した構成要素を有してもよい。前記疑似品は、前記ワークピースと同じ表面仕上げを有していてもよく、或いは、前記ワークピースの表面仕上げを模擬していてもよい。
【0016】
ステップaにおいて、前記座標測定機の前記アームは静止していてもよい。或いは、前記座標測定機の前記アームは一定速度で移動していてもよい。これは、座標測定機からの動的な力を除去する。
【0017】
取得された測定値は、不連続の測定値であってもよく(即ち、タッチトリガプローブを用いる)、或いは、連続の測定値であってもよい(即ち、スキャニングプローブを用いる)。
【0018】
前記表面検出装置は、アナログ(スキャニング)プローブ又はタッチトリガプローブのような接触プローブであってもよい。或いは、前記表面検出装置は、容量、誘導若しくは光学プローブのような非接触プローブであってもよい。
【0019】
本発明の第二の態様は、支持体(サポート;support)に取り付くための第1のマウントと、表面検出装置が取り付け可能な第2のマウントとを備え、前記第2のマウントが、前記第1のマウントに対し一以上の軸回りに回転可能である関節プローブヘッドにおいて、前記第1のマウントに対する前記第2のマウントの前記一以上の軸回りの位置をロックするための少なくとも一以上の機械式ブレーキが設けられ、これにより、少なくとも一つの位置測定装置が、前記第1のマウントに対する前記第2のマウントの前記一以上の軸回りの位置を決定すべく設けられることを特徴とする関節プローブヘッドを提供する。
【0020】
好ましくは、前記関節プローブヘッドが、少なくとも一つの軸回りを回転可能な回転部材を含み、これにおいて、前記ロック手段(the lock)が、前記第1及び第2位置の間を移動するロック部材を有し、その第1位置において、それは前記回転部材に係合して前記回転部材を定位置にロックし、その第2位置において、それは前記回転部材から離脱し、前記回転部材の回転を許容する。
【0021】
前記回転部材は、駆動ベルト又は従動ホイールからなってもよい。
【0022】
前記回転部材に歯状の輪郭が設けられてもよく、これにおいて、歯状ロックアッセンブリが前記ロック手段に設けられ、これにより、前記第1位置において、前記ロックアッセンブリの前記歯と前記回転部材とが噛合する。
【0023】
前記ロック手段には、前記ロック部材をその第1位置及び第2位置の間で移動させるためのアクチュエータが設けられてもよい。
【0024】
前記アクチュエータと前記ロック部材との間の接触点は、前記ロック部材と前記回転部材との間の接触点から横断方向に(transversely)離間されてもよい。前記ロック部材は、旋回点回りに旋回可能なレバーアッセンブリを備えてもよく、これにおいて、前記ロック部材と前記回転部材との間の接触点は、前記旋回接続点(the pivot joint)と、前記アクチュエータ及び前記ロック部材の間の接触点との間に位置される。前記ロック部材はレバーアッセンブリを備えてもよい。前記ロック部材がその第1位置にあるときに前記ロック部材を前記回転部材へと付勢する付勢手段が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、前記課題を解決することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、関節プローブヘッドが設けられた座標測定機(CMM)の斜視図である。
【図2】図2は、関節プローブヘッドの断面図を示す。
【図3】図3は、本方法のフローチャートである。
【図4】図4は、ロックされた関節プローブヘッドによって測定されるボアを示す。
【図5】図5は、アンロックされた関節プローブヘッドによって測定されるボアを示す。
【図6】図6は、上部位置にある機械式ブレーキを示す。
【図7】図7は、下部位置にある図6の機械式ブレーキを示す。
【図8】図8は、較正疑似品の第一実施形態の斜視図である。
【図9】図9は、図8の較正疑似品の断面図である。
【図10】図10は、較正疑似品の第二実施形態の側面図である。
【図11】図11は、ロック位置にある機械式ブレーキの第二実施形態の側面図である。
【図12】図12は、アンロック位置にある機械式ブレーキの第二実施形態の側面図である。
【図13】図13は、ロック位置にある機械式ブレーキの第三実施形態の側面図である。
【図14】図14は、アンロック位置にある機械式ブレーキの第三実施形態の側面図である。
【図15】図15は、ロック位置にある機械式ブレーキの第四実施形態の側面図である。
【図16】図16は、アンロック位置にある機械式ブレーキの第四実施形態の側面図である。
【図17】図17は、ロック位置にある機械式ブレーキの第五実施形態の側面図である。
【図18】図18は、三つの回転軸を有する関節プローブヘッドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適実施形態が添付図面の参照と共に例示的に説明される。
【0028】
図1は、座標測定機に取り付けられた関節プローブヘッドを示す。座標測定機10は、ワークピースが載置されることができるテーブル12と、テーブル12に対しX,Y,Z方向に移動することができるアーム14とを備える。関節プローブヘッド16は、CMMのアーム14に取り付けられている。関節プローブヘッド16は、これに取り付けられたワークピース測定プローブ18が、実質的に直交する二つの軸A1,A2回りに回転することを許容する。
【0029】
機械アーム14はそれ故、座標測定機のX,Y,Z駆動装置(図示せず)の動作に伴ってX,Y,Z方向に移動されることができる。X,Y,Zスケール(図示せず)が、アーム14の位置の瞬間の座標を示す。関節プローブヘッドの回転駆動手段(図示せず)が、二つの回転軸A1,A2回りのプローブの動作を可能にする。この動作は、関節プローブヘッド16内の回転スケール(図示せず)によって測定される。プローブスタイラスの偏位(deflection)を示すプローブ18からの信号が、CMMのX,Y,Zスケール及び関節プローブヘッドの回転スケールからの測定値と組み合わされ、スタイラス先端(スタイラスチップ)ひいてはワークピース表面の位置が計算される。
【0030】
図2に示されるように、関節プローブヘッド16は、基部又はハウジング20によって形成される固定部を備える。固定部は可動部を支持し、可動部は、モータM1によって、ハウジング20に対し軸A1回りに回転可能なシャフト22の形態を有する。シャフト22は別のハウジング24に固定され、そしてこの別のハウジング26はシャフト26を支持する。シャフト26は、モータM2によって、ハウジング24に対し、軸A1に垂直な軸A2回りを回転可能である。
【0031】
ワークピース接触チップ30を有するスタイラス28を備えるプローブ18は、関節プローブヘッド16に取り付けられる。装置は以下のようなものである。即ち、ヘッドのモータM1,M2が、ワークピース接触チップ30を軸A1又はA2に対し傾斜して位置づけることができ、CMMのモータが、関節プローブヘッド16を、CMMの三次元座標枠組内のあらゆる位置に直線的に(リニアに)位置づけることができ、これによりスタイラスチップ30が、スキャン(走査)される表面と所定の関係を持つように導かれる。
【0032】
関節プローブヘッド16の直線変位を測定するため直線位置変換器(図示せず)がCMMに設けられ、各軸A1,A2回りのスタイラス38の角度変位を測定するため角度位置変換器T1,T2が関節プローブヘッド16に設けられる。
【0033】
図3を参照して、次の手順が本検査方法で用いられる。測定される複数の一連のワークピースからの一つのワークピースが座標測定機のテーブル12上に置かれる(40)。或いは、ワークピースに近似する疑似品(artifact)を用いることができる。疑似品は、特に、ワークピースの構成要素と符合する寸法及び/又は位置の構成要素を有する。
【0034】
関節プローブヘッドの回転軸は、プローブ18が回転軸A1,A2回りに移動できぬようにロックされ、或いは静止保持される。こうして、系は、事実上、座標測定機上に置かれたプローブである。関節プローブヘッドがそのようにロックされた状態で、ワークピース又は疑似品がスキャンされ、又は測定される(42)。
【0035】
図4は、ロックされた関節プローブヘッド16によってスキャンされているボア(穴)56を示す。この場合、CMMのアーム14が、矢印Aで示されるように動かなければならず、これによりプローブ18のワークピース接触チップ30がボアの内面を測定することが許容される。
【0036】
本方法の次のステップにおいて、関節プローブヘッド16はアンロックされ、これによりプローブ18が回転軸A1,A2回りを移動できるようになる。そしてワークピースは、アンロックされた関節プローブヘッドによってスキャンされ、又は測定される(44)。
【0037】
図5は、アンロックされた関節プローブヘッド16によってスキャンされているボア56を示す。機械アーム14は、それがボア56の対称軸57に整列されて静止保持され、他方プローブ18が関節プローブヘッド16の回転軸回りに移動されるように、位置されることができる。或いは、プローブ18が、関節プローブヘッド18の回転軸回りに回転されるに従って、CMMのアームが、ボア56の対称軸57に沿って一定速度で移動してもよい。この場合、ボアの内面は螺旋状にスキャンされる。両方の場合、即ちアーム14が静止され又は一定速度で移動されるとき、機械には動的な力が付与されない。
【0038】
次のステップにおいて、ロックされた関節プローブヘッドによるスキャン中に取得された測定データが、アンロックされた関節プローブヘッドによるスキャンから取得された測定データと比較される。これは、誤差関数又はマップを生成するために使用される(46)。この誤差関数又はマップは、ワークピースの表面上の各点における関節プローブヘッドに起因する誤差が決定されることを許容する。
【0039】
一連のワークピースにおける次のワークピース群が座標測定機上にセットされる(48)。好ましくは自動手段(図示せず)が、生産操業のため、連続した実質的に同一のワークピースの各々を、CMMテーブル上の少なくとも名目上同じ位置及び向きに配置する。
次のワークピース群のうちの一つが、アンロックされた関節プローブヘッドによってスキャンされる。このスキャン中に取得された測定データが、以前作成された誤差関数又はマップを用いて補正される(52)。
【0040】
最良の結果のため、アンロックされたプローブヘッドによる最初の測定(44、図3)のときと実質的に同一の測定経路が、次のワークピースの測定(50、図3)のために用いられる。
【0041】
この方法は、CMMの精度と関節プローブヘッドの反復性との優位性を獲得し、関節プローブヘッドを較正する必要なしに、早くて正確なワークピースの測定がなされることを可能にする。
【0042】
本方法は、関節ヘッドにおける幾何学的誤差を補正する。動的誤差をも補正するため本方法を用いることが可能である。動的誤差は、例えば、関節ヘッドの曲がりや、CMMのクイルの捩れによって生じる可能性がある。動的誤差を補正するため、ステップ42において、ワークピースは低速でスキャンされる。これによって動的誤差を含まない測定データが取得される。この後ワークピースはステップ44で高速でスキャンされ、これにより、ステップ46で生成される誤差関数又はマップが、幾何学的誤差と、高速スキャンによって生じる動的誤差との両方を含むようになる。ステップ50における次の測定は高速で行われる。このスキャン中に生成された動的誤差はステップ52において誤差マップ又は関数によって修正(補正)される。
【0043】
しかしながら、関節ヘッドが良い機械的デザインを有している場合、無視し得る動的誤差しかなく、よってワークピースは各ケースにおいて任意の速度でスキャンされることができる。
【0044】
前述の説明はスキャニングプローブ(走査プローブ)の使用に向けられたが、それはタッチトリガープローブ(touch trigger probe)による測定にも適している。この測定においてはワークピースの表面上の各点で不連続(個別)の測定がなされる。さらに本方法は、例えば容量式、誘導式又は光学式プローブといった非接触プローブを用いる使用にも適している。関節プローブヘッドの回転軸は様々な手段によってロックされることができる。例えば、関節プローブヘッドがサーボモータ上で静止保持されてもよく、或いは別個のロック装置が使用されてもよい。
【0045】
図6及び図7は、関節プローブヘッドの回転軸をロックするのに用いられる機械式ブレーキを示す。ブレーキ60はブレーキパッド84を備え、ブレーキパッド84は、従動ホイールのプーリベルト86に押し付けられ、動作をロックする。ブレーキ84は、高い摩擦係数を有するゴムから作られることができる。ブレーキパッドは後に詳述されるレバー機構によってプーリベルトに押し付けられる。ピン62が、切替ソレノイドの動作によって、上部位置と下部位置との間を移動可能である。図6は上部位置にあるピン62を示し、図7は下部位置にあるピン62を示す。ピンの下端が旋回軸64によって第1及び第2アーム66,68に接続される。第1アーム66は旋回軸64によって一端がピン62に接続され、第1アーム66は、第一端において旋回軸64によりピン62に接続され、第二端において他の旋回軸70により第3アーム74に接続される。第3アーム74は、その一端に旋回軸78が設けられ、その旋回軸78回りに、固定面88に対し回転することができる。
【0046】
第2アーム68は、第一端において旋回軸62によりピン62に接続され、第二端において他の旋回軸72により第4アーム76に接続される。第4アーム76は、その他端において、旋回軸80により固定面82に取り付けられる。第4アーム76には、プーリベルト86に隣接した面上にブレーキパッド84が設けられる。
【0047】
図6は、上部位置にあるピン62を示し、ブレーキパッド84が非係合位置に位置されている。電流が切替ソレノイドに流され、これによってピン62が図7に示される下部位置に押される。かかるピン62及びその旋回軸64の下方への動作は、第1及び第2アーム66,68を旋回軸64回りに旋回させ、外側に移動させ、水平位置に近づける。この第1及び第2アーム66,68の動作は、第3及び第4アーム74,76を、それらの各旋回軸78,80回りに回転させ、これにより第1及び第2アーム66,68に隣接する各端部がピン62から押し離される。これによりブレーキパッド84はプーリベルト86に押し付けられ、ブレーキとして作用する。固定ブロック88に位置されたネジ90は、第3アーム74さらには第4アーム76の最大移動量を規定するストッパとして作用する。
【0048】
図11及び図12は機械式ブレーキの第2実施形態を示す。図11は駆動ホイール144を示し、駆動ホイール144は駆動ベルト140を介して従動ホイール142を駆動する。ブレーキはピンチブレーキ(挟みブレーキ;pinch brake)であり、これにおいては、ブレーキシューがロック位置で駆動ベルトに押し付けられ、アンロック位置で駆動ベルトから離間保持される。駆動シュー149が、旋回軸150回りに、図11に示されるそのロック位置と図12に示されるそのアンロック位置との間を回転する。旋回軸150は、ブレーキシュー149の位置の微調節を可能にする例えばカムのような調節手段を含む。
【0049】
ブレーキシューの位置はソレノイド146によって作動される。図11に示されるロック位置において、ソレノイド146はピン148をブレーキシュー149に押し付け、それを旋回軸150回りに、ロック位置へと回転させる。アンロック位置において、ソレノイド146はピン148を上方に押し、ブレーキシュー149との接触を解除させる。リターンスプリング152がブレーキシューをそのアンロック位置へと付勢する。
【0050】
図13及び図14は本発明の第3実施形態を示す。この実施形態は図11及び図12に示された実施形態に類似しており、類似の構成要素は同一の参照符号を用いる。
【0051】
レバーアッセンブリ154が設けられ、これは固定面158から延びて駆動ホイール140に隣接して位置する。屈曲部156が、レバーアッセンブリの旋回を可能とし、レバーを駆動ベルトから離すよう付勢する。
【0052】
ブレーキが図13に示されるようなロック位置にあるとき、ブレーキシュー149がレバー154を押し、次いでレバー154が駆動ベルト140を押す。ブレーキがアンロック位置にあるとき、ブレーキシュー149はリターンスプリング152によって静止位置に付勢され、レバーアッセンブリ154が屈曲部156によって静止位置に付勢される。
レバーアッセンブリは分離部材として作用し、レバーと駆動ベルトとの接触点を、ブレーキシューとレバーとの接触点から分離させる。レバーアッセンブリは、従動部材のいずれの回転方向においても、ブレーキが過剰ロック状態になること、又は詰まり状態(jamming)になることを防止する。これらの状態は、駆動ベルトの厚さと従動ホイールの真円度との変化によって生じる可能性がある。
【0053】
レバーアッセンブリ154の脆弱部155はそれをスプリングレバーとして機能させることを可能にする。結局、ブレーキシュー149がレバーアッセンブリに対する力Fを発生するとき、レバーは、長さLに亘って曲がることができ、よって駆動ベルトの厚さ又は従動ホイールの真円度のいかなる誤差にも順応する。
【0054】
図6、7、11〜14で説明されたブレーキシステムは増分するものではなく(non-incremental)、よって従動ホイールがあらゆる位置でロックされることを許す。
図15及び図16は機械式ブレーキの第4実施形態を示す。この実施形態は幾つかの構成要素を図13及び図14と共通に有し、類似の構成要素は同一の参照符号を用いる。
【0055】
図15及び図16において、ブレーキは、駆動ベルトではなく駆動ホイール142に作用する。ブレーキは駆動ホイールの一側に位置されている。駆動ホイール142には、その周縁に歯状面160が設けられている。これは例えば、歯の輪郭を持つ外表面を有するリングによって提供されることができる。相補的な歯アッセンブリ162がレバーアッセンブリ154に設けられている。結局、図15に示されるロック位置において、従動ホイールの歯状面160と、レバーの歯アッセンブリ162との歯が、係合して、駆動ホイール142を定位置にロックさせる。この実施形態は互いに噛み合う歯を有しているので、ブレーキは、例えば1°の増分位置(incremental position)で、駆動ホイールを保持するであろう。この実施形態は、駆動ベルトの厚さ及び/又はホイールの真円度に誤差があっても有効であるという利点を有する。一旦歯が係合してしまえば、レバーアッセンブリの可撓性が、ブレーキシューがより多くの力Fを作用させてレバーをブレーキ位置に付勢することを可能にし、これによりブレーキが働き続けることを保証する。
【0056】
これらの実施形態のいずれにおいても、ロータリエンコーダシステムが設けられてもよい。それは例えば駆動ホイールに位置される。図13及び図14に示されるように、これは、駆動ホイールに取り付けられたロータリスケールリングと、当該ホイールに隣接する相対的に固定された表面に位置された読み取りヘッドとを備えてもよい。ブレーキ位置における僅かな動作がエンコーダによって読み取られることができ、補正が、測定データに適用される。
【0057】
ブレーキシステムのさらなる実施形態において、ブレーキは、反復可能な位置(repeatable position)に関節プローブヘッドを保持するのに用いられることができる。図17は、マウント182に旋回可能に取り付けられたブレーキパッド184を示す。マウントはさらにピエゾ積層体(piezo stack)188に取り付けられる。前述の実施形態のように、関節プローブは、従動ホイール186のような回転部にブレーキパッドを押し付けることによってロックされる。関節プローブヘッドの位置は、エンコーダ190から位置を読み取ることにより決定される。関節プローブヘッドが望まれない位置にある場合、本実施形態は位置が調節されることを可能にする。ブレーキパッド184は回転部186に接触し続け、他方、電圧がピエゾ積層体188に印加されてその高さhを調節する。これは、ブレーキパッド184の位置を動かし、これにより、ブレーキパッドに接触している従動ホイール186を回転させるという効果を有する。従動ホイール186の位置は、それ故、エンコーダ190の出力が望まれる位置を与えるまで、調節されることができる。ピエゾ積層体188は、多量の熱を放散しないという利点を有する。さらにそれは、小動作(数100ミクロン)とともに高い力を発生し、このことが微調節を可能にする。例えば油圧ラムのような他のアクチュエータが使用されてもよい。
【0058】
この機械式ブレーキは、他の部分に対して回転する一部を有するあらゆるタイプの関節プローブヘッドに適している。例えば、ブレーキは、米国特許第RE35510号明細書にて開示されたプローブヘッドに適しており、これにおいて、関節プローブヘッドは、割り出しされた(indexed)複数の角度位置の間を移動する。関節プローブヘッドが二軸又は三軸の回りを回転する場合、機械式ブレーキはそれぞれの軸に対して設けられることができる。
【0059】
表面検出装置は、例えば、表面検出プローブ、スタイラス又はカメラを備えることができる。
【0060】
図18は、カメラ198が取り付けられた関節プローブヘッド18を示す。カメラは三つの軸192,194,196の回りを回転可能である。
【0061】
以上の実施形態は、駆動ベルト又は従動ホイールに作用するブレーキを説明するが、ブレーキは、シャフトやモータピニオンなどのいかなる回転部にも作用することができる。
【0062】
全ての前記の実施形態において、機械式ロック手段(mechanical lock)は、関節ヘッドをロックするために摩擦を用いる。前記実施形態ではロック手段がソレノイドによって作動されるが、他の手段、例えば油圧、空圧、モータ、ピエゾ又は重力が、用いられることができる。機械式ロック手段は、係合位置又は非係合位置に向けて作動されるが、一旦定位置に位置してしまえば動力は不要である。
【0063】
ディスクブレーキなどの他のタイプのブレーキも使用可能である。
【0064】
ブレーキ部材と回転部との接触がないブレーキを有することも可能である。磁気ブレーキは、鉄の回転部に極く接近された一以上の電磁石を備えることができる。ブレーキは電磁石をオンすることにより作動され、これは回転部が回転することを阻止する。
【0065】
関節プローブヘッドの軸をロックする機械式ロック手段の使用は、関節プローブヘッドのモータを検知してそれを定位置に保持することに関して幾つかの利点を有する。機械式ロック手段の使用により、関節プローブヘッドのモータが停止することができ、これによりシステムの温度が減少する。減少された熱の効果は、システムの度量衡(metrology)を向上する。さらに、機械式ロック手段は、モータをサーボ機構で制御することに比べ、固定された系を提供し、これによりシステムの度量衡を向上する。
【0066】
本発明の第2実施形態において、関節プローブヘッドは、被較正疑似品(calibrated artefact)をスキャンすることによって較正される。図8は、異なる直径を有する円形輪郭102,104,106を備える疑似品100を示す。これら円形輪郭102,104,106は、例えば測定装置を作ることによって、較正され、これにより既知の寸法を持つものとされる。
【0067】
円形輪郭は中心線110を有し、この中心線は、第1及び第2割り出し装置112,114により、例えば機械軸X,Y,Zのような所望の方向に向けられることができる。
【0068】
被較正疑似品100は、その中心線110が第1軸、例えば機械のX軸に整列するように方向付けられる。機械アームが静止保持される一方、関節プローブヘッドの軸A1,A2回りの回転により、プローブによって、円形輪郭がスキャンされることができるように、機械アームが、関節プローブヘッド及びプローブを、当該軸に整列された位置に動かす。
【0069】
円形輪郭102,104,106は、好ましくは高速度、即ちその後の測定に使用される速度で、スキャンされる。
【0070】
円形輪郭の測定値は、円形輪郭の既知の原形(form)と比較され、これにより測定の方向と速度とに関連した誤差マップが作成される。そして被較正疑似品100は、割り出し装置を用いて、その中心線110が新たな方向に整列するように方向付けられ、この新たな方向に関連した新たな誤差マップを作成すべく本方法が繰り返される。
【0071】
被較正疑似品100が例えば7.5°増分の異なる向きで測定されると、データが補間され、これらの向きの間における被較正疑似品の位置のための誤差データが導き出される。同様に、異なる直径の円形輪郭に関連したデータが補間され、測定された値の間の直径を有する円形輪郭のための誤差データが生成される。補間は、例えば一次最適又は多項最適のような手法を備えてよい。
【0072】
高速で被較正疑似品を測定することによって、誤差マップは動的誤差を修正する。しかしながら前述したように、関節ヘッドが良好な機械的デザインを有する場合はこれを不要とすることができる。
【0073】
関節プローブヘッドに取り付けられたプローブを用いて測定される以降のワークピースは、対応方向に関する誤差マップを用いて修正される。
【0074】
図10は、他のタイプの較正疑似品120を示し、これにおいては、異なる直径の円形輪郭122,124,126が複数のコーン130,132,134に設けられる。これらコーン130,132,134は、異なる機械軸に沿って整列され、これにより割り出し装置の必要性が取り除かれる。
【0075】
以上の記載はCMMに取り付けられた関節プローブヘッドを説明する。しかしながら、本発明は、一以上の移動軸を有するあらゆるタイプの座標位置決め装置に適している。例えば関節プローブヘッドは一軸システムに取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0076】
16 関節プローブヘッド
100,120 疑似品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品であって、
前記関節プローブヘッドを前記座標位置決め機械の前記アームに対し関節動作させることによりスキャンされることが可能な、異なる寸法の複数の輪郭と、
前記複数の輪郭を、前記座標位置決め機械の異なる方向に沿って向けることができるよう、前記複数の輪郭の向きを変えるための割り出し装置と、
を備える被較正疑似品。
【請求項2】
二つの割り出し装置を備え、それぞれは、前記複数の輪郭を異なる軸の回りに向ける、請求項1に記載の被較正疑似品。
【請求項3】
前記異なる軸は直交する、請求項2に記載の被較正疑似品。
【請求項4】
前記複数の輪郭は、異なる直径を有する複数の円形輪郭である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項5】
前記複数の円形輪郭は共通の中心線を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項6】
前記複数の輪郭は、ステップ状の輪郭である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項7】
前記座標位置決め機械の前記アームを静止保持させ、前記プローブヘッドを前記プローブヘッドの複数の軸回りに回転させることにより、前記輪郭がスキャンされることが可能な、請求項1〜6のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項8】
前記輪郭を画成する表面を有する部材と、前記部材を支持するためのフレームとを備え、前記割り出し装置が、前記輪郭を方向付けるため前記フレームと前記部材との間の相対移動を許容する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項9】
前記フレームを支持するためのベースと、前記輪郭を方向付けるため前記フレームと前記ベースとの間の相対移動を許容するよう配置された第2の割り出し装置とを備える、請求項8に記載の被較正疑似品。
【請求項10】
座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品であって、
中心支持部と、第1の複数の別個の輪郭と、第2の複数の別個の輪郭とを備え、
前記第1の複数の別個の輪郭が、前記第2の複数の別個の輪郭とは異なる方向に前記中心支持部から延びる、被較正疑似品。
【請求項11】
前記別個の輪郭は、異なる直径を有する複数の円形輪郭である、請求項10に記載の被較正疑似品。
【請求項12】
前記第1の複数の別個の輪郭を画成するステップ状の表面を有する第1のコーンと、前記第2の複数の別個の輪郭を画成するステップ状の表面を有する第2のコーンとを備え、前記第1のコーンが、前記第2のコーンとは異なる方向に前記支持部から延びる、請求項10または11に記載の被較正疑似品。
【請求項13】
前記第1の複数の輪郭は共通の中心軸を有し、該共通の中心軸は、前記第2の複数の輪郭の共通の中心線とは異なる軸に沿って整列される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項14】
座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品であって、
第1の複数の円形輪郭を画成する表面を有する第1のコーンと、第2の複数の円形輪郭を画成する表面を有する第2のコーンとを備え、
これらコーンが異なる軸に沿って整列されている、被較正疑似品。
【請求項15】
座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品であって、
異なる寸法の複数の別個の輪郭を画成する表面を有する単体の部材を備える、被較正疑似品。
【請求項16】
前記別個の輪郭が、異なる直径を有する複数の円形輪郭である、請求項15に記載の被較正疑似品。
【請求項17】
前記円形輪郭が共通の中心線を有する、請求項16に記載の被較正疑似品。
【請求項1】
座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品であって、
前記関節プローブヘッドを前記座標位置決め機械の前記アームに対し関節動作させることによりスキャンされることが可能な、異なる寸法の複数の輪郭と、
前記複数の輪郭を、前記座標位置決め機械の異なる方向に沿って向けることができるよう、前記複数の輪郭の向きを変えるための割り出し装置と、
を備える被較正疑似品。
【請求項2】
二つの割り出し装置を備え、それぞれは、前記複数の輪郭を異なる軸の回りに向ける、請求項1に記載の被較正疑似品。
【請求項3】
前記異なる軸は直交する、請求項2に記載の被較正疑似品。
【請求項4】
前記複数の輪郭は、異なる直径を有する複数の円形輪郭である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項5】
前記複数の円形輪郭は共通の中心線を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項6】
前記複数の輪郭は、ステップ状の輪郭である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項7】
前記座標位置決め機械の前記アームを静止保持させ、前記プローブヘッドを前記プローブヘッドの複数の軸回りに回転させることにより、前記輪郭がスキャンされることが可能な、請求項1〜6のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項8】
前記輪郭を画成する表面を有する部材と、前記部材を支持するためのフレームとを備え、前記割り出し装置が、前記輪郭を方向付けるため前記フレームと前記部材との間の相対移動を許容する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項9】
前記フレームを支持するためのベースと、前記輪郭を方向付けるため前記フレームと前記ベースとの間の相対移動を許容するよう配置された第2の割り出し装置とを備える、請求項8に記載の被較正疑似品。
【請求項10】
座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品であって、
中心支持部と、第1の複数の別個の輪郭と、第2の複数の別個の輪郭とを備え、
前記第1の複数の別個の輪郭が、前記第2の複数の別個の輪郭とは異なる方向に前記中心支持部から延びる、被較正疑似品。
【請求項11】
前記別個の輪郭は、異なる直径を有する複数の円形輪郭である、請求項10に記載の被較正疑似品。
【請求項12】
前記第1の複数の別個の輪郭を画成するステップ状の表面を有する第1のコーンと、前記第2の複数の別個の輪郭を画成するステップ状の表面を有する第2のコーンとを備え、前記第1のコーンが、前記第2のコーンとは異なる方向に前記支持部から延びる、請求項10または11に記載の被較正疑似品。
【請求項13】
前記第1の複数の輪郭は共通の中心軸を有し、該共通の中心軸は、前記第2の複数の輪郭の共通の中心線とは異なる軸に沿って整列される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の被較正疑似品。
【請求項14】
座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品であって、
第1の複数の円形輪郭を画成する表面を有する第1のコーンと、第2の複数の円形輪郭を画成する表面を有する第2のコーンとを備え、
これらコーンが異なる軸に沿って整列されている、被較正疑似品。
【請求項15】
座標位置決め機械のアームに関節プローブヘッドが取り付けられたときに前記関節プローブヘッドを較正するための被較正疑似品であって、
異なる寸法の複数の別個の輪郭を画成する表面を有する単体の部材を備える、被較正疑似品。
【請求項16】
前記別個の輪郭が、異なる直径を有する複数の円形輪郭である、請求項15に記載の被較正疑似品。
【請求項17】
前記円形輪郭が共通の中心線を有する、請求項16に記載の被較正疑似品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−50451(P2013−50451A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209973(P2012−209973)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2010−207015(P2010−207015)の分割
【原出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2010−207015(P2010−207015)の分割
【原出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
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