説明

被験者の生物医学上のデータを測定するための装置及びリアルタイムに処理されたデータを用いて被験者を刺激するための方法

本発明は、被験者の生物医学上のデータを収集するための測定システムと、前記データを記録するための第1のハーウエアコンポーネントとを有する、前記データを測定するための装置に関する。本発明では、前記データを収集するための前記測定システムと前記データを記録するための第1のハーウエアコンポーネントとの間の接続線に、前記データを電気的に分離するための手段が配置されている。このようにすることで、少なくともデータ処理のためにデータを複製することが保証されている。こうして処理されたデータは、被験者のリアルタイム刺激を行うための方法に利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の生物医学上のデータを測定するための装置と、リアルタイムに処理されたデータを用いて被験者を刺激するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチチャネルレコーダとして被験者のニューロン活動の電磁的相関性を時間に即して記録する機器は、従来技術として何年も前から存在している。典型的なものとしては、脳波計(EEG)や脳磁計(MEG)が挙げられる。
【0003】
これらの機器は、複数の測定チャネルを有しており、信号検出だけでなく、データの保存及び評価にも適している。データの評価は、機器のオフラインモード、すなわち被験者からのデータ収集が行われていない時点に実施される。このために、機器によって収集されたデータは、ワークステーションに転送及び保存され、必要であればさらに処理される。
【0004】
ロンゲンら(非特許文献1)によって、148チャネルの脳磁計を用いてデータセットを収集し、脳の3D再構築のために保存し、処理し、可視化することが公知である。この場合、短所として、進行中の被験者のデータ測定に合わせてリアルタイムにデータの処理及び評価を行うことができないという点がある。
【非特許文献1】H. Rongen, V. Hadamschek, M. Schiek (2005). Real-Time Data Acquisition and Online Signal Processing for Magnetoencephalography. IEEE-NPSS Real Time Conference 2005 (June 4-10, Stockholm, Sweden)の会議録 P5-7 に所収
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、被験者の生物医学上のデータをリアルタイムに記録及び処理することを保証する、前記データを測定するための装置を提供することである。本発明のもう1つの課題は、前記のように処理されたデータを利用するための方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、主請求項に記載の装置及び別の独立請求項に記載の方法によって解決される。有利な実施態様については、それぞれ関連する各請求項で明らかにする。
【0007】
本装置は、主請求項の上位概念に従って、データを収集するための測定システムと、データを記録するための第1のハードウエアコンポーネントとを含む。測定システムと第1のハードウエアコンポーネントとの間に、データを伝送するための接続線が配置されている。本発明では、データを記録するための第1のハードウエアコンポーネントとデータを収集するための測定システムとの間の接続線に、データを電気的に分離するための手段が配置されている。
【0008】
電気的に分離するためのこの手段によって、有利には、被験者とデータを収集するための測定システムとが、下流側に位置する、データを記録及び処理するためのその他のハードウエアコンポーネントから電気的に切り離される。これは、医療機器法と、MDD93/94EECの基本要件とによって要求されている。
【0009】
これにより、下流側のハードウエアコンポーネントに電気的な障害が発生した場合にも、被験者が負傷することが防止される。データを収集するための測定システムも、当然ながら、障害に対して保護されている。
【0010】
データを収集するための測定システムは、脳波計又は脳磁計の場合には、電極、測定チャネル及びその他の機器固有の構成要素、例えばセンサなどを含む。これらは、機器の供給業者によって異なる可能性がある。
【0011】
被験者は、必ずしも人間である必要はない。各動物、特に哺乳動物が被験者であってもよい。当然、被験者の、生物学的に活動している脳断面あるいは組織断面を、本書で開示する方法によって検査、あるいは刺激することも可能である。
【0012】
データを分離するための手段によって、有利には、データセットのデータを支障なく分離することと、少なくとも2つの同じデータセットにコピーすることとが保証される。
【0013】
データを支障なく分離することによって、有利には、この分離工程が、データを収集するための測定システムに、従ってまた収集されたデータ自体にも影響を及ぼすことがなくなる。
【0014】
従って、データ自体を支障なく分離することによって、データも被験者も全く影響を受けないままである。
【0015】
測定システムにより収集されたデータが該手段によって3つ以上の同じデータセットに分離されるように、本発明に係る手段を具備する、本発明に係る装置を構成することが可能である。測定システムによって収集されたデータは、いずれにしろデータの分離によって変更されることはない。
【0016】
測定システムと第1のハードウエアコンポーネントとの間の接続線は、特に有利には光導波路によって形成され、この光導波路には、本発明に係る手段として光導波路カプラが配置されている。
【0017】
測定システムと第1のハードウエアコンポーネントとの間に光導波路の代わりに銅線を接続線として配置し、この接続線に、本発明に係る手段として電気絶縁増幅器を配置しておくことも可能である。
【0018】
第1のハーウエアコンポーネントは、例えばワークステーションによって形成される。このワークステーションは、従来技術に従って、データを収集するための測定システムの測定工程を規則的に制御する。この目的のために、第1のハードウエアコンポーネントとデータを収集するための測定システムとの間に別の接続線が設けられている。
【0019】
データを収集するための測定システム及び第1のハードウエアコンポーネント、ならびに該測定システムと該第1のハードウエアコンポーネントとの間の接続線は、脳波計(EEG)又は脳磁計(MEG)との関連において従来技術に含まれている。
【0020】
接続線においてデータを電気的に分離するための手段によってこの種の機器は拡張されることで、データを第1のハードウエアコンポーネントに保存するだけでなく、第2のハードウエアコンポーネントでリアルタイムにさらに処理することが可能となる。
【0021】
従って、有利には、測定システムによって収集されたデータを第1のハードウエアコンポーネントに記録し、長期的に保存する以外に、データを処理するための、さらに別の少なくとも1つの第2のハードウエアコンポーネントにリアルタイムに前記データを供給することができる。
【0022】
本発明に係る、データを記録するための手段は、有利には、受動的手段として構成されている。従って、データを処理及び保存するための第2のハードウエアコンポーネントは、第1のハードウエアコンポーネントへの既存のデータストリームに能動的に介入することはなく、ただこのデータストリームを「聴く」だけである。第2のハードウエアコンポーネントは、データストリームに対して受動的に働く。
【0023】
次に、データを分離するための手段は、データを収集するための測定システムからのデータストリームを2つの接続線に分離するように、データを被験者から収集するための測定システムから出る接続線に配置されている。本発明に係る手段から出るラインは、データを記録するための第1のハードウエアコンポーネントへデータストリームを転送する。さらに少なくとももう1つのデータストリームが、第2のデータコンポーネントへ転送される。
【0024】
また、このようにして、同じ完全なデータセットが少なくとも第2のハードウエアコンポーネントに供給される。
【0025】
第2のハードウエアコンポーネントは、リアルタイムでデータを処理し、受信データ及び処理されたデータを保存する。第2のハードウエアコンポーネントは、データを収集するための測定システムを制御することも可能である。
【0026】
第2のハードウエアコンポーネントでのリアルタイムデータ処理によって、特に有利には、処理されたデータを被験者にリアルタイムにフィードバックすること、あるいは転送することによって該データを用いて被験者を刺激するための方法が実現可能となる。
【0027】
本発明の1つの実施態様では、データを処理するための第2のハードウエアコンポーネントは、PCIマザーボードを含み、このボード上に、受信データと処理されたデータとをリアルタイムにデータ処理して保存するための構成要素が配置されている。このために、PCIマザーボードによってパーソナルコンピュータは拡張される。
【0028】
この目的のために、PCIマザーボードは、有利には、データ収集/処理ユニットの素子あるいは構成要素を含み、また特に被験者に対するフィードバック信号を生成するための素子あるいは構成要素を含む。このために、PCIマザーボードは、高性能のリアルタイムデータ収集/処理ユニットを有する。さらに、PCIマザーボードは、当然ながら、保存のための他の構成要素と、データを収集するための測定システムを必要に応じて制御するための構成要素とを有する。
【0029】
第2のハードウエアコンポーネントのPCIマザーボードは、特に有利には、リアルタイムにデータ処理するためのデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、例えばTexas Instruments社のTMS320c6713を含む。
【0030】
本発明の別の実施態様では、PCIマザーボードは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、例えばVirtex社のXCV300を含む。
【0031】
しかし、第2のハードウエアコンポーネントは、必ずしもフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む必要はない。
【0032】
ただし、第2のハードウエアコンポーネントは、受信データを取得できるように、かつ、フィードバック信号の生成に必要な計算を測定システムによるデータ収集に合わせて実施できるように十分な性能を有していなければならない。また、データを処理するための第2のハードウエアコンポーネントは、測定システムによって収集及び処理されたデータを被験者に転送するのに必要な出力部を含む。
【0033】
デジタルシグナルプロセッサ(DSP)に格納しておくことができる適切なアルゴリズムを用いて、測定システムによるデータの測定に合わせて、被験者を刺激するためのフィードバック信号が、処理されたデータから生成され、適切な接続線を介して被験者にフィードバックされる。
【0034】
PCIマザーボードは、有利には、PCIバスインタフェースと、必要な入出力コンポーネントとを含む。
【0035】
また、光導波路の場合には、光導波路インタフェースの他にアナログ及びデジタルの入出力部が含まれる。
【0036】
従って、このデータ収集/処理ユニットは、データを収集するための測定システム、例えば脳磁計又は脳波計に結合するのに必要な全てのインタフェースを提供する。
【0037】
第2のハードウエアコンポーネントを用いて、PCIマザーボード上のFPGA及びDSPに保存しておくことができるアルゴリズムによってデータは処理される。
【0038】
測定データに基づく、第2のハードウエアコンポーネントで処理されたデータは、第3のハードウエアコンポーネントを介して、フィードバック信号として刺激のために被験者に転送される。これは、特に有利には、測定システムのデータ収集と第2のハードウエアコンポーネントでのデータ処理とに合わせて行われる。
【0039】
その際、被験者への処理されたデータの転送は、固定的な既知の遅延時間、又は所定の可変的な既知の遅延時間だけ信号検出に対して遅らされており、その結果、現在時に収集され、処理された測定信号に基づいて被験者を刺激することができる。
【0040】
このために、第3のハードウエアコンポーネントは、特に有利な実施態様では、刺激用ゴーグルを含む。
【0041】
さらに、刺激用の第3のハードウエアコンポーネントは、例えば、視覚刺激を行うための光源の線形制御部を含む。
【0042】
しかしまた、被験者から収集され、処理されたデータを用いて被験者を聴覚刺激することも可能である。
【0043】
このために、第3のハードウエアコンポーネントは、有利には、第2のハードウエアコンポーネントのアナログ出力信号によって音量及び/又は周波数を制御できる音源を含む。聴覚信号は、スピーカ又はヘッドホンを介して被験者に供給されることで、被験者は刺激される。
【0044】
本発明に係る装置を用いることによって、有利には、既存の測定システム及び機器、例えば脳波計や脳磁計を支障なく拡張することができ、これにより、これらのシステム及び機器は、被験者を電気刺激及び磁気刺激できるように拡張される。
【0045】
これらの機器は、本発明では、リアルタイムでフィードバックを行うための構成要素を加えて拡張される。このために、市販のどのような測定システムでも、収集されたデータを電気的に分離するための、かつ、そのデータを処理するための本発明に係る手段を加えることによって拡張することができる。
【0046】
被験者を刺激するための本発明に係る方法は、以下のステップ、すなわち、
a)被験者のデータを測定システムによって収集するステップ、
b)収集したデータを電気的に分離し、データセットのコピーをリアルタイムデータ処理ユニットに供給するステップ、
c)データをリアルタイムに処理するステップ、
d)処理したデータを被験者に転送するステップ
を有する。
【0047】
d)における処理データは、アナログ信号の形式で被験者に転送される。
【0048】
ステップa)からd)は、複数回、例えば1秒間に1000回程度、繰り返される。
【0049】
本発明に係るこの方法によって、データは、線形変換又は非線形変換され、時間的に遅らせて被験者にフィードバックされる。その際、非線形変換によって、異なった時間のデータを互いに結び付けることができる。
【0050】
本方法を実施するためには、本発明に係る装置が特に適している。本発明においては、これらの機器は、通例、MEG又はEEGオンラインシステム、すなわち、データを収集し、電気的に分離し、処理し、被験者に転送するためのシステムである。
【0051】
市販のパーソナルコンピュータと組み合わせて、あるいは市販のパーソナルコンピュータを拡張して高性能のリアルタイムデータ収集/信号処理ユニットを用いることにより、必要な計算能力を実現でき、その結果、収集されたデータに基づいてフィードバック信号をリアルタイムに算出し、被験者を刺激するためにこれらの信号を再び出力することができる。
【0052】
さらに、本発明について、2つの実施例と添付した図面とを用いて詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
図面内の同一の符号は、同一の素子あるいは構成要素を示す。
【実施例1】
【0054】
図1には、左上部に、全部で148個の単位チャネルを具備するマルチチャネルMEG11が、データを収集するための測定システムとして示されている。マルチチャネルMEG11は、通常、光導波路11aを介して、第1のハードウエアコンポーネントであるワークステーション12に直接接続されており、このワークステーションとしては、例えば、4D-Neuroimaging社のモデルMagnis2500WHが入手可能である。ワークステーション12は、受信データを保存する機能を担う。オフラインモードでは、従来技術に従って、後の時点、すなわち測定システムによるデータ収集の後にデータが評価される。
【0055】
さらに、ワークステーション12は、測定システム11を、その測定工程に関して制御する機能を担う。このために、ワークステーション12と測定システム11との間には別の接続線が配置されている(図示されていない)。
【0056】
この市販の測定システム11は、本発明では、光導波路カプラ14を介して、リアルタイムデータ収集/信号処理ユニット13bを具備する第2のハードウエアコンポーネント13に接続されている。
【0057】
ワークステーション12を具備する既存のMEG測定システム11にこのように支障なく結合するために、光導波路カプラ14は、測定システム11から出る光導波路11aに配置されている。
【0058】
光導波路カプラ14、24における信号ルーティングと2つの出力部への入力光信号の分離とが、図2に示されている。
【0059】
用いられている光導波路カプラ14、24は、TEDIS社のマルチモードカプラ1×2−G62.5/125である。
【0060】
光導波路カプラ14、24は、ライン11aの光導波路ファイバとライン14b及び14cの光導波路ファイバとをつなぐ光パッシブ型カプラである。この光導波路カプラは、測定システム11から来る光導波路11aのための接続部と、第1のハードウエアコンポーネント12及び第2のハードウエアコンポーネント13へつながる光導波路14c及び14bのための2つの接続部とを有する。従って、光導波路カプラ14、24は、対応するケーブルのコネクタを差し込むことによって、既存の脳磁計に簡単に導入することができる。
【0061】
光導波路カプラ14、24は、測定システム11におけるMEGセンサ電子装置(図示されていない)から来るデータストリームを電気的に分離する。
【0062】
光導波路カプラ14、24は、測定システム11からのデータストリームを、ライン11aを介して2つの同一かつ完全なデータセットとして2つのライン14c及び14bに分割する。従って、データストリームは、2つの不変の互いに同一のデータセットにコピーされ、光信号の形で光導波路カプラ14、24の2つの出力部へ導かれる。
【0063】
両ハードウエアコンポーネント12及び13は、MEG測定システム11によって被験者から収集されたデータの完全セットを支障なく取得する。ライン14cは、ワークステーション12につながっており、このワークステーションにおいてデータが連続的に記録される。ライン14bは、第2のハードウエアコンポーネント13(図1の右下方)につながっており、このコンポーネントで、データは、リアルタイムに処理されて、被験者用の刺激信号を生成するために被験者へ転送される。
【0064】
図3は、個々の構成要素あるいは素子を本発明に従って構成したPCIマザーボード33の回路図である。
【0065】
リアルタイムにデータを処理するための第2のハードウエアコンポーネント13は、パーソナルコンピュータ(図1の右下方を参照)を含む。パーソナルコンピュータは、汎用PCIマザーボード33を加えて拡張されている。マザーボード33は、とりわけフィールドプログラマブルゲートアレイ33a(FPGA:Virtex社のXCV300)とデジタルシグナルプロセッサ35(DSP Dモジュール:Texas Instruments社のTMS320c6713)とを有する。自らの構成要素を具備するこのPCIマザーボード33は、第2のハードウエアコンポーネント13におけるリアルタイムデータ収集/処理ユニット13bである。
【0066】
被験者用にフィードバック信号を生成するためには、測定システム11によって測定されたデータをリアルタイムに処理する必要がある。
【0067】
データ収集/処理ユニット13b(図1を参照)は、パーソナルコンピュータのPCI又はコンパクトPCI(cPCI)拡張バス34を利用し、パーソナルコンピュータを拡張する。本発明に従って示された図3の実施形態は、PCIマザーボード33に基づいている。このマザーボード33は、PCIコントローラ33bを介して、PCIバス又はcPCIバス34とリアルタイムプロセッサユニット35、35aとの間に接続を確立する。
【0068】
プロセッサユニット35、35aは、十分に大きなメインメモリ35a、例えば少なくとも16メガバイトのメインメモリを有するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)35を具備するモジュールを含む。デジタルシグナルプロセッサDSP35は、自らのローカルデータバス35b(32ビットデータ/アドレス)を介して、PCIマザーボード33上の、プログラマブルハードウエアを有する素子、すなわちFPGA33aとデータを交換できる。
【0069】
入出力コンポーネントは、別のドーターボード上、すなわち入出力モジュール36上に格納されている。入出力モジュール36は、脳磁計の光導波路カプラ14、24(図1及び図2)に対する光導波路インタフェース37を有し、さらに、被験者刺激用のアナログ出力部38ならびにタイムスタンプ、いわゆるトリガ39の入出力用のデジタル入出力部を有する。
【0070】
フィールドプログラマブルゲートアレイ33aは、自らのハードウエア構成によってデータ収集/処理ユニット13b全体の入出力特性を決定し、JTAGインタフェース33cを介して設定される。
【0071】
フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)33aは、内部にレジスタのリストを用意する。所定のアドレスを指定することによって、これらのレジスタの書き込み及び読み取りを行うことができる。
【0072】
32ビット浮動小数点DSPであるTMS320c6713は、225MHzでクロック制御され、1秒間に1800MIPS(百万命令)あるいは1350MFLOPS(百万浮動小数点演算)という理論上の計算能力を有する。
【0073】
MEGオンラインシステムの第2のハードウエアコンポーネント13のパーソナルコンピュータにおいて、導体14bは、リアルタイムデータ収集ユニット13bの光導波路コネクタ37(SC/PCデュプレックスコネクタ)に差し込まれる(図1の右下方を参照)。これにより、MEG測定システム11に対する全ての接続が確立されたことになる。
【0074】
データ収集/処理ユニット13b用の入出力モジュール36は、図4に示されている。
【0075】
入出力モジュール36は、MEG測定システム11に対するインタフェースを有する。MEG測定システム11によって光パルスとして入って来るデータは、光導波路14bを介してモジュール36のコネクタ37に伝えられる。このモジュールは、ファイバオプティックトランシーバ41を有する。ファイバオプティックトランシーバは、光信号を電気信号に変換する。このシリアルデータストリームは、ホットリンク受信機42によってエラーの有無が検査され、パラレルデータバイトへと形成される。変換されたデータは、データバス46を介して、処理をさらに行うためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)33a(図3を参照)に引き渡される。具備されたホットリンク送信機42aは、データ出力のためには用いられないままである。このことは、バス46からホットリンク送信機42aへのデータストリームが中断されていることよって示されている。
【0076】
さらに、入出力モジュール36は、アナログ入力部、例えばコネクタ39を含み、この入力部を通じて、受信データが、増幅器43aを介してアナログデジタル変換器43(4チャネル、12ビットADC、+/−10ボルト)に伝えられる。
【0077】
デジタル変換後、データは、データバス46を介してFPGA33によって読み込まれる(図3を参照)。刺激のために出力される信号は、電気データとしてバス46を介してデジタルアナログ変換器44(4チャネル、12ビットADC、+/−10ボルト)に書き込まれる。生成されたアナログ信号は、増幅器44aで増幅された後、刺激のためにコネクタ38へ出力される(図3を参照)。データは、コネクタ38を介してオプティカルゴーグルを具備する第3のハードウエアコンポーネント15へ伝えられる。
【0078】
デジタル入出力部45(16ビットデジタル、入/出力)は、コネクタ39へつながっており、タイムスタンプ(トリガ)の出力あるいは読み込みに利用される。
【0079】
従って、MEG測定システム11から光刺激として入って来るデータは、光導波路素子37(図3を参照)における光検出器によって受信され、デジタル信号に変換される。このデジタル信号は、FPGA33aへ伝えられる。データは、調整可能なフィルタを用いてFPGA33aによって前処理され、適当な補正が行われた後、デジタルシグナルプロセッサ35へ送られる。デジタルシグナルプロセッサ35において、データは、被験者に利用できるように適合された適切なアルゴリズムによってリアルタイムに処理される。計算によって、刺激のための出力信号用のデータが用意される。これらのデータは、再びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)33aに書き込まれ、バス46を介して入出力モジュール36上のアナログ出力素子44に至る。この信号は、新たに増幅器44aで増幅され、コネクタ38を介して刺激信号として出力される。
【0080】
測定されたデータ及び算出されたデータは、さらに、PCIコントローラ33bとPCIバス34とを介してパーソナルコンピュータ(図示されていない)へ伝送される。第2のハードウエアコンポーネントのパーソナルコンピュータに実装されたソフトウエアは、データあるいは信号をオンラインで表示し、これらを保存して、次の評価を実施することができる。これと関連して強調しておくべきことは、本例では、第1のハードウエアコンポーネントであるワークステーション11が、データを収集するための測定システムを制御するという機能のみを担うという点である。
【0081】
別の測定機能のために、例えば幾つかのMEGチャネルの記録を行うために、12ビット分解能を有する4つのアナログ入力部が利用できる。さらに、4つのアナログ出力部及び16個のデジタル入出力チャネルが利用できる。アナログ出力部は、刺激実験用のアナログフィードバック信号を生成するために利用される。これにより、本方法によってリアルタイムに測定及び処理された脳活動に基づいて、被験者の刺激を行うことが可能となっている。このように本発明に係る方法によって、処理されたデータを線形変換又は非線形変換し、時間的に遅らせて被験者にフィードバックすることができる。その際、非線形変換は、異なった時間のデータを互いに結び付けることができる。
【0082】
フィードバック時、刺激のために被験者に対して、現在時に測定されたデータから算出されたデータが送られる。このために、データ収集/処理ユニット13bのリアルタイム性能が利用され、その際、各サンプリング時点に新しい刺激値を算出し、アナログインタフェースのチャネルに出力するという方法が用いられる。
【0083】
その際、フィードバック信号あるいは刺激信号は、MEGセンサ又は脳内領域の電流密度特性によって導出される。従って、これらの実験のために、各サンプル時点について脳領域の電流密度特性をリアルタイムに算出しなければならない。次に、信号は帯域幅制限され、フィードバック信号が算出される。これらの算出は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)35で行われる。
【実施例2】
【0084】
第2の実施例は、実施例1と同じ装置であるが、第1のハードウエアコンポーネント、すなわちワークステーション12を含まない構成である。
【0085】
ワークステーション12の代わりに、リアルタイムデータ収集/処理ユニット13bが測定システム11のデータの保存も行う。ユニット13bは、これらのデータをリアルタイムに処理する。リアルタイムデータ収集/処理ユニット13bは、収集され、処理されたデータを保存し、さらに、データを収集するための測定システム11の測定工程を制御する。次に、この装置には、ただ1つの接続線11aだけが設けられており、この接続線を介して、リアルタイムデータ収集/処理ユニット13bが、データを収集するための測定システム11から信号を取得する。データの分離は必要ではない。なぜなら、データの保存及び処理ならびに測定システムの制御という各機能は、リアルタイムデータ収集/処理ユニット13bのみによって引き受けられるからである。別のラインを介して、測定システムは、データ収集/処理ユニット13bによって制御される(図示されていない)。
【0086】
原則として、EEGオンラインシステムのデータを算出及びフィードバックするために、図に示された第2のハードウエアコンポーネントを利用することも、もちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係るMEGオンラインシステムの模式図である。
【図2】データを電気的に分離するための、本発明に係る手段としての光導波路カプラとその接続部とを示す。
【図3】種々の素子を具備する、第2のハードウエアコンポーネントのPCIマザーボードの回路図である。
【図4】PCIマザーボードの入出力モジュールの回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生物医学上のデータを収集するための測定システム(11)と、前記データを記録するための第1のハーウエアコンポーネント(12)と、前記データを前記測定システム(11)から前記第1のハードウエアコンポーネント(12)に伝送するための少なくとも1つの接続線(11a、14c)とを有する、前記データを測定するための装置において、
前記データを収集するための前記測定システム(11)と前記データを記録するための前記第1のハーウエアコンポーネント(12)との間における前記接続線(11a、14c)に、前記データを電気的に分離するための手段(14、24)が配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記データを記録するための受動的手段(14、24)を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記データを分離するための受動的手段として光導波路カプラ(14、24)又は電気絶縁増幅器を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記データをリアルタイムに処理するための第2のハードウエアコンポーネント(13、13b)を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2のハードウエアコンポーネント(13)が、リアルタイムデータ収集/処理ユニット(13b)を含むことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記リアルタイムデータ収集/処理ユニット(13b)の構成要素が、PCIマザーボード(33)上に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2のハードウエアコンポーネント(13)の前記リアルタイムデータ収集/処理ユニット(13b)が、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:33a)を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記第2のハードウエアコンポーネント(13)の前記リアルタイムデータ収集/処理ユニット(13b)が、デジタルシグナルプロセッサ(DSP:35)を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
処理されたデータを前記第2のハードウエアコンポーネント(13)から取得し、かつ、前記被験者に転送する第3のハードウエアコンポーネント(15)を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第3のハードウエアコンポーネント(15)が、刺激用ゴーグル及び/又は音源を含むことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置としての脳波計又は脳磁計。
【請求項12】
下記ステップ、すなわち、
a)被験者の生物医学上のデータを測定システム(11)によって収集するステップ、
b)前記収集したデータを電気的に前記測定システム(11)から分離し、コピーするステップ、
c)前記データのコピーを処理するステップ、
d)前記処理したデータをリアルタイムに前記被験者に転送するステップ
を有する、被験者から収集したデータによって該被験者のリアルタイム刺激を行うための方法。
【請求項13】
前記ステップa)からd)を繰り返すことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記収集及び処理されたデータのコピーをそれぞれ連続的に保存する請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記データを線形変換又は非線形変換し、時間的に遅らせて前記被験者にフィードバックすることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置を用いる、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−535071(P2009−535071A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504556(P2009−504556)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000539
【国際公開番号】WO2007/118443
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390035448)フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (100)
【Fターム(参考)】