説明

裁断システム制御プログラムおよび制御方法

【課題】裁断システム20における裁断動作の進捗状況を知ること。
【解決手段】裁断装置10と、裁断線情報に従って裁断装置10を制御して媒体170を裁断させる情報処理装置100と、情報処理装置100から出力された画像情報を表示する表示装置200とを備えた裁断システム20において、情報処理装置100で実行される裁断システム制御プログラムであって、裁断線情報に基づいた裁断線画像222を表示装置200に表示させる裁断線表示ステップと、裁断装置10の動作に従って媒体170上でカッタ132により既に切断された区間を示す既裁断区間情報を逐次生成して、既裁断区間情報に基づく既裁断区間画像224を表示装置200に逐次表示させる既裁断区間表示ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断システム制御プログラムおよび制御方法に関する。より詳細には、切刃を備えた裁断装置、裁断装置の動作を制御する制御装置、制御装置により画像を表示される表示装置を含む裁断システムにおいて、制御装置上で実行される裁断システム制御プログラムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、布、樹脂フィルム等のシート状の媒体に対して、所望の形状の裁断線情報に従って切片を切り出しあるいは切り込みをいれる裁断動作をするカッティング・マシンあるいはカッティング・プロッタ等と呼ばれる裁断装置がある。裁断装置は、切刃の方向および媒体に対する高さを変化させることができるカッタヘッドを備え、媒体に対してカッタヘッドを相対移動させることにより媒体に対する裁断動作をする。
【0003】
また、この種の裁断装置は、何らかの制御装置の制御により動作している。制御装置は、裁断装置に内蔵されている場合もあるが、多くは裁断装置の外部に接続された情報処理装置等を制御装置として利用する。また、このような用途で用いる情報処理装置は、裁断線情報の生成処理および編集処理にも用いられることが多く、そのような処理に利用するために画像を表示する表示装置を備えている。従って、これら裁断装置、制御装置および表示装置を組み合わせて裁断システムが構築される。
【0004】
特許文献1には、上記のような裁断システムで用い得る裁断装置が開示されている。この文献に記載された裁断装置は、X軸方向に走行するテーブルにより搬送される布地に対して、X軸と直交するY軸方向に往復移動する主軸頭を備えている。また、テーブルによるX方向への搬送と主軸頭のY方向の往復移動を組み合わせて、主軸頭により布地全体を走査することができる。従って、主軸頭にナイフ(カッタ)を装着して布地上で適切な形状を描かせることにより、布地から所望の形状の裁断片を切り出すことができる。
【0005】
また、特許文献2には、やはりシート状の媒体から所望の裁断片を切り出すことができる作画・カッティング両用プロッタが記載されている。この作画・カッティング両用プロッタも、往復移動する作画ヘッドと、作画ヘッドの往復移動方向に直交する方向に媒体を搬送するローラ群とを備え、媒体の全面に対して作画ヘッドを走査させることができる。従って、作画ヘッドに筆記用具を装着した場合は媒体上に所望の図形を記録することができ、作画ヘッドに刃物を装着した場合は媒体から所望の形状の裁断片を切り出すことができる。また、この特許文献2では、作画・カッティング両用プロッタをホストコンピュータに接続して裁断システムを形成することについても言及されている。
【特許文献1】特公平7−90511号公報
【特許文献2】特開2001−225297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、裁断システムにおける裁断装置の動作中に、裁断の進捗状況をユーザが知りたい場合がある。即ち、例えば、現在裁断中の処理について、動作の終了を予測するために進捗状況を知りたい場合がある。また、ひとつの媒体から複数の切片を切り出す裁断動作を中断させる場合は、ひとつの切片を裁断し終わった時点で裁断装置の動作を止めることが好都合である。そのためには、裁断装置の動作を監視して、ひとつの切片を裁断し終わったときをリアルタイムで検知しなければならない。
【0007】
しかしながら、多くの裁断装置では、安全性の見地から、切刃が装置の外側に露出しない構造になっている。このため、動作中の裁断装置において裁断動作の進捗状況を目視することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明の第1の形態として、媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部、媒体の表面に対向した位置で媒体の表面と平行に且つ搬送方向と交差する方向に往復移動する裁断キャリッジ、および、媒体に対して進退できるように裁断キャリッジに保持された切刃を有する裁断装置と、切刃により媒体を裁断する位置を指定する裁断線情報に従って裁断装置を制御して媒体を裁断させる制御装置と、制御装置から出力された画像情報を画像として表示する表示装置とを備えた裁断システムにおいて、制御装置で実行される裁断システム制御プログラムであって、裁断線情報に基づいた裁断線画像を表示装置に表示させる裁断線表示ステップと、裁断装置の動作に従って媒体上で切刃により既に切断された区間を示す既裁断区間情報を逐次生成して、既裁断区間情報に基づく既裁断区間画像を表示装置に逐次表示させる既裁断区間表示ステップとを含む裁断システム制御プログラムが提供される。これにより、裁断装置が裁断動作をしているときは、裁断線上ですでに裁断された区間が表示装置に表示される。また、この表示は裁断動作の進捗に従って逐次更新されるの。従って、ユーザは、裁断動作の進捗状況を容易に把握できる。
【0009】
また、ひとつの実施形態によると、上記裁断システムの制御プログラムは、裁断装置の動作を停止すべき旨を指示する停止指示を受け付ける停止指示オブジェクトを、裁断線画像および既裁断区間画像と共に表示装置に表示させ、停止指示オブジェクトに停止指示を受けたときに裁断装置の動作を停止させる停止指示受付ステップを更に含んでいてもよい。これにより、進捗状況を表示装置の画面上で監視しながら、適切な状態で裁断動作を中断あるいは終了させることができる。
【0010】
また、他の実施形態によると、上記裁断システムの制御プログラムは、停止指示を受け付けたときに、切刃を媒体から退避させ、次いで、裁断キャリッジを媒体に対向する領域から退避させる退避ステップを更に含んでいてもよい。これにより、裁断動作を中断させると、裁断中の媒体を安全かつ容易に取り出すことができる。
【0011】
また、他の実施形態によると、上記裁断システムの制御プログラムは、停止指示を受け付けたときに、そのときの媒体および切刃の停止位置を格納して、停止指示が解除されたときに、媒体および切刃を停止位置まで移動させた後に裁断装置の動作を再開させる一時停止ステップを更に含んでいてもよい。これにより、途中で中断させた裁断動作を、中断させた箇所から継続して再開させることができる。従って、中断以前に実行された裁断が無駄にならない。
【0012】
また、他の実施形態によると、上記裁断システムの制御プログラムにおいて、停止指示が解除されたときに媒体が裁断装置から取り除かれていた場合は、一時停止ステップが、裁断装置に媒体を装入すべき旨のメッセージと、媒体を装入する向きとを、表示装置に表示させてもよい。これにより、媒体無しに裁断動作が再開されることがない。また、誤って中断前と異なる向きに媒体を装入することが未然に防止される。
【0013】
更に、本発明の第2の形態として、媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部、媒体の表面に対向した位置で媒体の表面と平行に且つ搬送方向と交差する方向に往復移動する裁断キャリッジ、および、媒体に対して進退できるように裁断キャリッジに保持された切刃を有する裁断装置と、切刃により媒体を裁断する位置を指定する裁断線情報に従って裁断装置を制御して媒体を裁断させる制御装置と、制御装置から出力された画像情報を画像として表示する表示装置とを備えた裁断システムにおいて、制御装置により実行される裁断システム制御方法であって、裁断線情報に基づいた裁断線画像を表示装置に表示させる裁断線表示手順と、裁断装置の動作に従って媒体上で切刃により既に切断された区間を示す既裁断区間情報を逐次生成して、既裁断区間情報に基づく既裁断区間画像を表示装置に逐次表示させる既裁断区間表示手順とを含む裁断システムの制御方法が提供される。これにより、裁断システムを形成するハードウェアの構成にかかわらず、上記発明の効果を享受することができる。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、裁断システム制御プログラムの制御対象となる裁断システムで使用できる裁断装置10の全体形状を示す斜視図である。同図に示すように、この裁断装置10は、直接に媒体170の裁断にあたる機構を納めた筐体180と、筐体180の前方に装着された装入トレイ160と、筐体180の後方に装着された排出トレイ110とを備えている。この実施形態では、装入トレイ160から装入された媒体170に対して、筐体180の内部で裁断加工した後、裁断後の媒体170を排出トレイ110に送り出すものとするが、裁断後の媒体170を再び装入トレイ160に戻すように動作させることもできる。なお、ひとつの媒体170に対する裁断動作が終了するまでの間に、媒体170の搬送方向が反転する場合もある。
【0017】
筐体180の内部には、装入トレイ160から媒体170を取り込み、更に図中に矢印Yで示す搬送方向に搬送する裁断搬送部と、後述する裁断キャリッジ130の下方で媒体170を裁断する裁断部と、裁断部の後方に配置されて媒体170を排出トレイ110に送り出す排出部とを含む内部機構が収容されている。これら内部機構のうち、裁断搬送部の一部である搬送従動ローラ142と、裁断部とが図1上に見えている。
【0018】
搬送従動ローラ142は、媒体170の下に隠れている搬送ローラに対して媒体170を押し付けている。搬送ローラは回転駆動され、自身に押し付けられた媒体170を、後方の裁断プラテン150上に取り込む。裁断プラテン150は、水平で略平坦な上面を有し、載せられた媒体170を下方から支持して、その鉛直方向の位置決めを担う。
【0019】
裁断プラテン150の上方には裁断部が形成されている。裁断部は、媒体170の搬送方向と直交する方向に水平に配置された、互いに平行な案内レール120、122と、挿通された案内レール120、122に沿って往復移動する裁断キャリッジ130とを備えている。図中には、この往復移動方向が矢印Xにより示されている。
【0020】
裁断キャリッジ130は、図示されていない駆動機構により、案内レール120、122に沿って水平に往復移動する。裁断キャリッジ130の下面には、カッタ132が装着されている。カッタ132は、裁断キャリッジ130に対して相対的に上下に移動できる。従って、裁断プラテン150上に位置する媒体170に向かってカッタ132を降下させることにより、カッタ132下端を媒体170に貫入させることができる。更に、カッタ132を媒体170に貫入させた状態で、媒体170の搬送および裁断キャリッジ130の往復移動を組み合わせて、裁断キャリッジ130および媒体170を相対移動させることにより、任意の形状の裁断線に従って媒体170を裁断できる。
【0021】
なお、この実施形態では説明の便宜上、裁断装置10に対して媒体170を図中の手前側から装入し、裁断装置10後方の排出トレイ110に排出するように記載している。しかしながら、媒体170から裁断領域を切り出すには、少なくとも裁断領域の搬送方向の長さだけは媒体170を往復させなければならない。従って、裁断搬送部は、図中に矢印Yで示す方向に、媒体170を往復移動させることができる。このため、最終的に切断された媒体170は、前方の装入トレイ160に戻して排出することもできる。
【0022】
図2は、図1に示した裁断装置10を含む裁断システム20の構造を模式的に示す図である。同図に示すように、この裁断システム20は、裁断装置10に対して、制御装置としての情報処理装置100を接続して形成されている。また、情報処理装置100は、表示装置200共に、ユーザからの入力手段であるキーボード102およびマウス104と、ユーザに対して画像を表示する画面210を有する表示装置200を備えている。また、この情報処理装置100は、記録媒体に対して情報を読み書きするディスクドライブ106、外部と通信することにより情報をやりとりできる通信回線(不図示)も備えている。従って、ディスクドライブ106に装入した記録媒体、通信回線等を介して、裁断システム制御プログラムを情報処理装置100にインストールすることにより、情報処理装置100は、裁断システム20の制御装置として、システム全体を稼働させられるようになる。
【0023】
なお、ここで用いられている裁断装置10は、図1に示した裁断装置10であるが、図中に示すように、筐体180の上面および正面の中央部をカバー182により覆われており、裁断キャリッジ130等の内部機構は外部から見えなくなっている。また、安全性の見地から、このカバー182を開くと裁断装置10は動作を停止する。
【0024】
上記のような裁断システム20において、ユーザは、情報処理装置100を操作して、媒体170を裁断するときのカッタ132の軌跡である裁断線を作成して、また編集することができる。また、情報処理装置100を介して、裁断装置10に動作を指示することができる。
【0025】
図3は、図2に示した裁断システム20における情報処理装置100上で実行される処理を説明する流れ図F100である。同図に示すように、ユーザから裁断処理の実行が指示されると(開始)、情報処理装置100は裁断装置10に指示を出して、カッタ132が裁断開始位置上に位置するように、裁断キャリッジ130を裁断開始位置まで移動させる(S101)。続いて、カッタ132を降下させて、カッタ132の下端を媒体170に貫入させる(S102)。
【0026】
次に、裁断線情報の一部区間を裁断させる指示を裁断装置10に送り(S103)、この一部区間において媒体170を裁断させる。このとき、裁断装置10の裁断キャリッジ130を移動させることにより、カッタ132はX方向に移動して媒体170を裁断する。また、搬送部および排出部を動作させて媒体170を搬送方向に移動させることにより、カッタ132はY方向に媒体170を裁断できる。更に、これらの動作を組み合わせることにより、カッタ132は媒体170を任意の方向に裁断できる。
【0027】
裁断装置10は、情報処理装置100から指示された一部区間の裁断を終えると、裁断済みの応答を情報処理装置100に返す(S104)。応答を受けた情報処理装置100は、裁断線上で裁断が終わった区間の情報である既裁断区間情報を生成する(S105)。更に、情報処理装置100は、この既裁断区間情報を表示装置200の画面210上に表示させる(S106)。こさらステップS103〜S106までの一連の動作により、既に切断が終了した区間が表示装置200に表示されるので、ユーザは、裁断動作中に既に裁断された区間をリアルタイムで知ることができる。
【0028】
更に、情報処理装置100は、既裁断区間情報を表示させ終わると、裁断線情報に、まだ裁断されていない区間が残っているか否かを検査する(S107)。ここで、裁断線に未裁断の区間が残っている場合は(S107:YES)、再び、S103からS107までの動作を繰り返す。これにより、裁断動作の進行と共に既裁断区間情報は逐次更新されていく。なお、ステップS107:YESからステップS103に戻るときに、一時停止処理(S200)を間挿することができるが、このステップS200の内容については、図5に示すフローチャートF200を参照して後述する。
【0029】
一方、もはや未裁断区間が残っていない場合は(S107:NO)、カッタ132を上昇させて媒体170から先端を抜き取ると共に(S108)、媒体170に対して裁断すべき旨を指示する他の裁断線情報があるか否かを検査する(S109)。この検査により他の裁断線情報が検出された場合は、ステップS101からの動作を再び繰り返す(S109:YES)。一方、他の裁断線情報が存在しなかった場合は、裁断キャリッジ130をホームポジョンに復帰させ(S110)、裁断装置10の一連の裁断動作を終了させる(終了)。
【0030】
図4は、上記一連の動作のうち、ステップS106における画面210上の表示例を示す図である。画面210上には、裁断情報表示領域214および操作ボタン表示領域216を含むウインドウ212が表示されている。
【0031】
裁断情報表示領域214全体は、媒体170の全体に対応している。また、この実施形態では、媒体170上に記録された2つの切り抜き画像220、221も併せて表示されている。一方、操作ボタン表示領域216には、裁断動作の一時停止を指示するための「一時停止」ボタン217および裁断動作自体の取消を指示する「キャンセル」ボタン218が表示されている。
【0032】
以上のように表示されたウインドウ212において、裁断情報表示領域214には、各切り抜き画像220、221の周囲を一巡して裁断することが指示されている旨が裁断線画像222により表示されている。また、切り抜き画像220については、図中では点線により表示されている裁断線画像222上の一部区間が、太い実線である既裁断区間画像224に置き換わって表示されている。この既裁断区間画像224は、前記したステップS104で生成された既裁断区間情報に基づいて情報処理装置100が表示装置200に表示させている。これにより、この画面210を見たユーザは、媒体170上で、切り抜き画像220の周囲の裁断線画像222上で、その一部区間が既に切断されたことが判る。
【0033】
また、前述のように、既裁断区間画像224は、裁断装置10の動作に従って逐次更新される。図4に示した例では、画面210上の既裁断区間画像224は、図中に矢印Zで示す方向に伸びてゆく。従って、例えば、切り抜き画像220の周囲が切断されたときに「一時停止」ボタン217を押すことにより、切り抜き画像220は完全に切り抜かれている一方、切り抜き画像221の周囲は全く裁断されていない状態で裁断動作を中断させることができる。
【0034】
なお、画面210上において、裁断線画像222は表示させなければならないわけではない。また、表示させる場合も、点線に限られるわけではなく、彩度または明度をバックグラウンドと相違させたものを任意に選択できる。また、既裁断区間画像224も、バッググラウンドおよび表示されている場合の裁断線画像222と区別がつくものであれば、任意の表示形態を選択することができる。
【0035】
図5は、図3に示したフローチャートF100において、プロセスがステップS107:YESからステップS103に戻るときに間挿させることができる一時停止処理S200の内容を示すフローチャートF200である。同図に示すように、一時停止処理S200が実装されている場合は、裁断装置10において動作中の裁断動作を一時停止すべき旨の指示が入力されたか否かを監視するイベントループが有効になっている(S201:NO)。
【0036】
一方、情報処理装置100に対して一時停止すべき旨の指示が入力されたことが検知された場合(S201:YES)、情報処理装置100は、まず、裁断装置10に裁断を停止すべき旨の指示を出す(S202)。次に、情報処理装置100は、裁断装置10において裁断動作が停止したときのカッタ132の位置を、中断(再開)位置情報として格納する(S203)。また、裁断装置10の媒体170搬送路上の媒体170の位置も、中断(再開)位置情報として格納する(S204)。これらの、言わば再開準備処理をした後、情報処理装置100は、裁断装置10に対して、カッタ132を上昇させ(S205)、さらに、裁断キャリッジ130をホームポジションに復帰させる(S206)。このように、情報処理装置100は、裁断動作を一時停止すべき旨の指示を受けた場合は、来るべき裁断動作再開の指示に備える。
【0037】
上記のように裁断システム20における裁断動作が一時停止されると、情報処理装置100では、裁断動作を再開すべき旨の指示が入力されたか否かを監視するイベントループが有効になる(S207:NO)。ここで、情報処理装置100に対して裁断動作を再開すべき旨の指示が入力されると(S207:YES)、情報処理装置100は、裁断装置10に裁断すべき媒体170が存在しているかどうかを検査する(S208)。媒体170が存在していなかった場合(S208:NO)、情報処理装置100は、媒体170を装入すべき旨をメッセージにして表示装置200の画面210に表示して、媒体170が装入されることを待つ(S209)。
【0038】
一方、裁断装置10に媒体170が存在していた場合、情報処理装置100は、格納されていた中断(再開)位置情報を参照して、媒体170が裁断動作を一時停止したときの位置にあるか否かを検査する(S210)。媒体170が中断(再開)位置になかった場合は(S210:NO)、裁断装置10の搬送部および排出部を動作させて、媒体170を中断(再開)位置まで搬送させる(S211)。こうして、当初より媒体170が中断(再開)位置にあった場合(S210:YES)も含め、裁断装置10内において、ここまでの動作により媒体170は裁断動作が一時停止された時点での位置に存在するようになる。
【0039】
次に、情報処理装置100は、格納しておいた中断(再開)位置情報を参照して、裁断キャリッジ130を、中断(再開)位置に戻す(S212)。さらに、カッタ132を降下させる(S213)ことにより、裁断装置10では、裁断動作が中断されたときの状態を復元することができる。従って、一時停止されていた裁断動作を継続して実行することができる。
【0040】
なお、上記のような一連の一時停止処理S200が実装されていなくても、裁断装置10による裁断動作を実行することはできる。しかしながら、裁断動作を途中で中断させた場合に、継続した動作を再開できるように裁断システム20を形成することが、実用上は好ましい。
【0041】
また、図2では、個別の裁断装置10、情報処理装置100、表示装置200を組み合わせて裁断システム20を形成したが、裁断装置10、表示装置200および情報処理装置100から任意に選択した複数の要素の機能を一体化して、裁断システム20を形成することもできる。さらに、すべての要素を一体化して、スタンドアローンで動作する裁断装置にこの裁断システム制御プログラムを実装することもできる。
【0042】
図6は、裁断システム20において用いることができる他の形態の裁断装置である、裁断部34および記録部32を組み合わせた記録裁断複合装置30の構造を概観する斜視図である。同図に示すように、この記録裁断複合装置30は、下段の裁断部34と、上段の記録部32とを積層して配置して、単一の筐体380により一体とされている。また、上段の記録部32から下段の裁断部34に媒体170を搬送するリフトトレイ360を筐体380の前面に備えている。なお、同図の裁断部34において、図1に示した裁断装置10と共通の機能を有する部材には、図1と同じ参照符号を付して重複する説明を省いている。
【0043】
上段の記録部32では、筐体380の後方に装着された給紙トレイ310と、搬送ローラ340および搬送従動ローラ342を含む搬送部と、記録プラテン350と、排出従動ローラ372を含む排出部とが搬送系を形成している。即ち、媒体170としての記録用紙は給紙トレイ310に装入され、搬送部により1枚ずつ記録プラテン350上に送り込まれ、排出部により筐体380の前方に送り出される。
【0044】
また、記録プラテン350の上方には、媒体170の搬送方向と直交するように、互いに平行な一対の案内レール320、322が水平に配置されている。また、案内レール320、322を自身に挿通され、記録プラテン350上で水平に往復移動できる記録キャリッジ330が配置されている。なお、記録キャリッジ330は、図示されていない駆動手段により駆動される。また、記録キャリッジ330は、一対の案内レール320、322を挿通されているので、前方または後方に傾くことがない。
【0045】
記録キャリッジ330は、上方から搭載されたインクカートリッジ332と、下面に懸架された記録ヘッド334と共に往復移動する。従って、記録プラテン350上の媒体170に向かってインクを吐出できる。従って、前記した搬送部による媒体170の搬送方向への移動と、記録キャリッジ330の往復移動とを組み合わせることにより、媒体170の任意の領域にインクを吐出させて画像172を記録できる。
【0046】
上記のような記録部32で画像172を記録された媒体170は、排出従動ローラ372を含む排出部により、筐体380の前面に装着されたリフトトレイ360に送り出される。リフトトレイ360は、筐体380の前面で、筐体380に対する角度を一定に保ったまま、上下に昇降できる。これにより、記録部32において画像172を記録された媒体170は、下段の裁断部34の前方に移動される。即ち、リフトトレイ360は、記録部32に対しては排出トレイとして機能し、裁断部34に対しては装入トレイとして機能する。なお、リフトトレイ360を昇降させる機構は筐体380に収容されており、連結部362を介してリフトトレイ360を変位させる。この昇降機構については、図7を参照して後述する。
【0047】
下段の裁断部34の内部機構は、図1に示した裁断装置10の内部機構と略共通である。異なる点は、裁断装置10の装入トレイ160が取り除かれ、降下したリフトトレイ360がそれに替わる点である。
【0048】
図7は、図6に示した記録裁断複合装置30の動作を説明する模式図であり、図6と共通の構成要素には同じ参照符号を付して重複する説明を省いた。
【0049】
同図に示すように、リフトトレイ360は、その端部に形成されたねじ穴に挿通されたボールねじ366により支持されている。また、ボールねじ366の下端にはボールねじ駆動部364が結合されており、ボールねじ366を回転駆動できる。従って、ボールねじ駆動部364を適宜動作させることにより、リフトトレイ360を、図中に矢印Eで示すように、上昇または降下させることができる。
【0050】
上記のようなリフトトレイ360を備えた記録裁断複合装置30において、当初、給紙トレイ310に装入された媒体170は、搬送ローラ340および搬送従動ローラ342に挟まれて、記録プラテン350上に送り込まれる。この媒体170に対して、記録キャリッジ330の下面に装着された記録ヘッド334からインクが下方に向かって吐出され、媒体170の上面に画像172が形成される。
【0051】
やがて、上面に画像172を記録された媒体170の先端は排出部に到達し、排出ローラ370および排出従動ローラ372に挟まれて、排出トレイを兼ねたリフトトレイ360上に排出される。媒体170がリフトトレイ360上に完全に排出されると、ボールねじ駆動部364により駆動されたボールねじ366が回転して、リフトトレイ360が降下する。降下したリフトトレイ360が下部搬送部の高さまで降下すると、裁断部34の搬送ローラ140および搬送従動ローラ142に挟まれて、媒体170は再び筐体380内に取り込まれ、裁断プラテン150上に搬送される。
【0052】
こうして裁断部34に取り込まれた媒体170は、カッタ132により裁断され、排出ローラ390および排出従動ローラ392に挟まれて、排出トレイ110上に排出される。これらの記録および裁断を経て排出された媒体170は、画像172を記録され、且つ、裁断されている。
【0053】
なお、これら裁断部34における裁断動作は、図1に示した裁断装置10と同じ動作である。また、説明の便宜上、筐体380の前側を搬送部、後方を排出部として記載しているが、ひとつの裁断領域を切り出すためには、媒体170を少なくとも1往復させる必要がある。従って、媒体170は、筐体380の前方に向かっても、後方に向かっても搬送される。また、最終的に裁断を終えた媒体170は、筐体380の前方に排出させても、後方に排出させても差し支えない。
【0054】
また、図3の形態における一部区間は、情報処理装置100から設定された区間であるが、一部区間の設定はこれに限られない。他の例として、カッタ132が上昇している状態から下降して、その後にまた上昇するまでの区間でもよい。この場合には、カッタ132が下降した媒体170上の位置と上昇した位置とを裁断装置10が情報処理装置100に送ることにより、情報処理装置100が裁断された一部区間を割り出し、表示装置200に表示してもよい。この場合に媒体170上のカッタ132の位置は、搬送部および排出部による媒体170の搬送量と、カッタ132のX方向の位置とから算出されてもよい。また、当該一部区間は、裁断中の所定時間毎に裁断された区間でもよい。この場合には、所定時間におけるカッタ132の媒体170上の移動における始点と終点の位置を裁断装置10が情報処理装置100に送ることにより、情報処理装置100が裁断された一部区間を割り出し、表示装置200に表示してもよい。
【0055】
以上説明したように、この実施形態に係る裁断システム20は、裁断装置10または記録裁断複合装置30における裁断動作の進捗状況を、表示装置200に逐次表示する。従って、ユーザは、裁断動作の進捗をリアルタイムで把握することができ、安全且つ容易に、裁断装置10を操作できる。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることは当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態が本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】裁断装置10の全体の形状を示す斜視図。
【図2】裁断装置10を含む裁断システム20の構造を模式的に示す図。
【図3】裁断システム20の制御装置である情報処理装置100において実行されるプログラムの動作を示す流れ図F100。
【図4】裁断システム20の表示装置200の画面210に表示される表示画像の一例を示す図。
【図5】一時停止処理S200の内容を示すフローチャートF200。
【図6】図2に示した裁断システム20において裁断装置10に換えて用いることができる他の記録裁断複合装置30の外観を示す図。
【図7】図6に示す記録裁断複合装置30の動作を説明する模式図。
【符号の説明】
【0058】
10 裁断装置、20 裁断システム、30 記録裁断複合装置、32 記録部、34 裁断部、100 情報処理装置、102 キーボード、104 マウス、106 ディスクドライブ、110 排出トレイ、120、122、320、322 案内レール、130 裁断キャリッジ、132 カッタ、140、340 搬送ローラ、142、342 搬送従動ローラ、150 裁断プラテン、160 装入トレイ、170 媒体、180、380 筐体、182 カバー、200 表示装置、210 画面、212 ウインドウ、214 裁断情報表示領域、216 操作ボタン表示領域、217 「一時停止」ボタン、218 「キャンセル」ボタン、220、221 切り抜き画像、222 裁断線画像、224 既裁断区間画像、310 給紙トレイ、330 記録キャリッジ、332 インクカートリッジ、334 記録ヘッド、350 記録プラテン、360 リフトトレイ、362 連結部、364 ボールねじ駆動部、366 ボールねじ、370、390 排出ローラ、372、392 排出従動ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部、前記媒体の表面に対向した位置で前記媒体の表面と平行に且つ前記搬送方向と交差する方向に往復移動する裁断キャリッジ、および、前記媒体に対して進退できるように前記裁断キャリッジに保持された切刃を有する裁断装置と、
前記切刃により前記媒体を裁断する位置を指定する裁断線情報に従って前記裁断装置を制御して前記媒体を裁断させる制御装置と、
前記制御装置から出力された画像情報を画像として表示する表示装置と
を備えた裁断システムにおいて、前記制御装置で実行される裁断システム制御プログラムであって、
前記裁断線情報に基づいた裁断線画像を前記表示装置に表示させる裁断線表示ステップと、
前記裁断装置の動作に従って前記媒体の上で前記切刃により既に切断された区間を示す既裁断区間情報を逐次生成し、前記既裁断区間情報に基づく既裁断区間画像を前記表示装置に逐次表示させる既裁断区間表示ステップと
を含む裁断システム制御プログラム。
【請求項2】
前記裁断装置の動作を停止すべき旨を指示する停止指示を受け付ける停止指示オブジェクトを前記裁断線画像および前記既裁断区間画像と共に前記表示装置に表示させ、前記停止指示オブジェクトに前記停止指示を受けたときに前記裁断装置の動作を停止させる停止指示受付ステップを更に含む請求項1に記載の裁断システム制御プログラム。
【請求項3】
前記停止指示を受け付けたときに、前記切刃を前記媒体から退避させ、次いで、前記裁断キャリッジを前記媒体に対向する領域から退避させる退避ステップを更に含む請求項2に記載の裁断システム制御プログラム。
【請求項4】
前記停止指示を受け付けたときに、そのときの前記媒体および前記切刃の停止位置を格納し、前記停止指示が解除されたときに、前記媒体および前記切刃を前記停止位置まで移動させた後に前記裁断装置の動作を再開させる一時停止ステップを更に含む請求項2または請求項3に記載の裁断システム制御プログラム。
【請求項5】
前記停止指示が解除されたときに前記媒体が前記裁断装置から取り除かれていた場合は、前記一時停止ステップが、前記媒体を前記裁断装置に装入すべき旨のメッセージと、前記媒体を装入する向きとを、前記表示装置に表示させる請求項4に記載の裁断システム制御プログラム。
【請求項6】
媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部、前記媒体の表面に対向した位置で前記媒体の表面と平行に且つ前記搬送方向と交差する方向に往復移動する裁断キャリッジ、および、前記媒体に対して進退できるように前記裁断キャリッジに保持された切刃を有する裁断装置と、
前記切刃により前記媒体を裁断する位置を指定する裁断線情報に従って前記裁断装置を制御して前記媒体を裁断させる制御装置と、
前記制御装置から出力された画像情報を画像として表示する表示装置と
を備えた裁断システムにおいて、前記制御装置により実行される裁断システム制御方法であって、
前記裁断線情報に基づいた裁断線画像を前記表示装置に表示させる裁断線表示手順と、
前記裁断装置の動作に従って前記媒体の上で前記切刃により既に切断された区間を示す既裁断区間情報を逐次生成し、前記既裁断区間情報に基づく既裁断区間画像を前記表示装置に逐次表示させる既裁断区間表示手順と
を含む裁断システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−125627(P2007−125627A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318758(P2005−318758)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】