説明

裁断機

【課題】正確な位置合わせを可能とする裁断機を提供する。
【解決手段】載置台10と、シートを載置台の盤面12に押し付ける固定板20と、スライダ30と、レール40と、載置台の盤面の下に回動可能に取り付けられた定規部材60とを有する裁断機1において、定規部材60は、表面部62から窪んだ位置に段差面63が設けられており、その裏面が載置台の取付板16に摺接しながら回動するように取り付けられ、取付板16に設けられた傾斜部17bに、段差面63の裏面が摺接しながら相対移動することで、定規部材がレールに対して直角方向に位置した際に、定規部材の表面部が載置台の盤面と同一高さになるようにした。定規部材及び載置台の盤面上にシートを水平に載置することができるので、正確に位置合せを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙などのシート材を裁断する裁断機に関し、特に、正確に位置あわせをすることができる裁断機に関する。
【背景技術】
【0002】
紙などのシート材を裁断するための裁断機には、シートが載置される載置台と、載置されたシートを載置台上に押し付ける固定板と、裁断刃を取り付けたスライダと、スライダが移動するレールとを含んで構成されるが、かかる裁断機において、シートの裁断幅を正確に測ることができるようにするため、目盛りを設けたガイド部材を載置台の側部に回動可能に取り付けたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−177955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の裁断機は、載置台の盤面に、ガイド部材の厚みに相当する高さの段差を設け、一段低くなった段差面にガイド部材の回動支軸を設けているので、ガイド部材が側方に引き出された際に、載置台の盤面に凸凹が生じ、シートを載置台に載せて位置合せを行う際に誤差が生じることがあった。
そこで、本発明は、正確な位置あわせを可能とする裁断機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、シートが載置される載置台と、載置されたシートを盤面に押し付ける固定板と、裁断刃を取り付けたスライダと、スライダが移動するレールと、載置台の盤面の下に回動可能に取り付けられた定規部材と、を有し、前記スライダの移動によってシートが裁断される裁断機であって、前記定規部材は、表面部から前記載置台の盤面の厚みに相当する高さだけ窪んだ位置に段差面が設けられており、該段差面の裏面部が、前記載置台の盤面の下側に設けられた取付面に摺接しながら回動するように前記載置台に取り付けられ、前記裏面部又は前記取付面に設けられた傾斜部に、前記取付面又は前記裏面部が摺接しながら相対移動することで、前記定規部材が前記レールに対して直角方向に位置した際に、該定規部材の表面部が前記載置台の盤面と同一高さになるようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
この場合、前記定規部材に軸孔を設けると共に前記取付面に回動支軸を設け、該回動支軸の上端部に前記軸孔に係止可能なフランジ部を設け、該フランジ部の下面に前記傾斜部を突設してもよい。
また、前記定規部材が前記レールに対して直角方向に位置した際に、該定規部材の回動を停止させる係止部を設けてもよい。
【0007】
また、前記固定板は、アーム部を介して前記載置台に回動可能に取り付けられ、該固定板の側壁部の間に前記レールが架設されており、該レールの端から前記スライダを脱着するための開口部を設けたことを特徴とするものであってもよい。
また、前記スライダは、前記レールに係合されてスライドする基台部と、前記裁断刃を保持する本体部と、を含んで構成されており、前記基台部との間に介装された弾性部材によって上方に付勢された本体部を押し下げることで、前記スライダの下端部から前記裁断刃が突出するようにしたものであってもよい。
【0008】
また、前記固定板の前記レールに沿った一側縁部を、前記裁断刃の刃面が当接する位置に沿って配置すると共に、前記固定板の板面とは異なる色彩の端面としてもよい。
この場合、前記固定板は、表面から内部に入った光を端面の方向に伝播して発光させる性質の集光性樹脂によって構成されたものであってもよい。
【0009】
また、前記スライダは、前記裁断刃の刃先の延長上に位置する外周縁部が、他とは異なる色彩又は性状になるように構成されており、該外周縁部が前記固定板の側縁部に位置するように前記レールに取り付けられていてもよい。
また、前記定規部材の表面部に、該定規部材が前記レールに対して直角に位置させた際に前記固定板の前記一側縁部が基準となる目盛りを設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る裁断機は、載置台の盤面の下側に定規部材を回動可能に設けたので、定規部材を引き出した際、載置台の盤面に段差が生ずることがない。このため、シートの位置合せを正確に行なうことができる。
特に、定規部材の表面部から載置台の盤面の厚みに相当する高さだけ窪んだ位置に段差面を設け、その裏面部が載置台の盤面の下に設けられた取付面に摺接しながら回動するように構成すると共に、段差面の裏面部又は載置台の取付面に傾斜部を設け、その傾斜部に摺接しながら相対移動するようにしたので、定規部材が引き出された際に、定規部材の表面部が載置台の盤面と同一高さになるようにすることができる。
このため、定規部材及び載置台の盤面上にシートを水平に載置することができ、幅の広いシートであっても正確に位置合せを行うことが可能となる。
【0011】
請求項2に係る裁断機は、載置台の盤面の下側に設けられた取付面に、上端にフランジ部を有する回動支軸を設けたので、その回動支軸のフランジ部を介して、定規部材の軸孔に回動可能に取り付けることができる。
そして、フランジ部の下面に傾斜部を設け、その傾斜部に定規部材が摺接することで載置台の盤面と同一高さへと上昇するように構成したので、少ない部品数での製造が可能となり、製造コストを低減できる。
【0012】
請求項3に係る裁断機は、定規部材がレールに対して直角に位置した際に係止されるようにしたので、位置合わせの際に定規部材が動いてしまうのを防止できる。
請求項4に係る裁断機は、固定板を載置台に回動可能に取り付け、載置台の盤面に向けて回動させてシートを固定するようにしたので、載置台へのシートのセッティングと固定を迅速に行なうことができる。さらに、固定板の側壁部の間にレールを設け、レールの端からスライダを脱着できるようにしたので、スライダの脱着操作を迅速に行うことができ、尚且つコンパクトな構造の裁断機が実現可能となる。
【0013】
請求項5に係る裁断機は、スライダを、基台部と本体部を含んだ構成とし、基台部との間に介装された弾性部材によって本体部を上方に付勢させたので、スライダを押し下げたときのみ本体部が下降し、本体部の裁断刃によってシートが裁断されるようになる。このため、スライダを押し下げない限り裁断刃が下降しないようにできるので、スライダの位置に注意を払うことなく、固定板によるシートの固定、定規部材による位置合せ等を行なうことが可能となる。
【0014】
請求項6に係る裁断機は、固定板の一側縁部を、裁断刃の刃面が当接する位置に沿って配置し、固定板の板面とは異なる色彩の端面としたので、シートが裁断されるラインを容易に理解することができる。このため、裁断しようとする部位に固定板の端面を合わせることで、位置合せを行なうことができるようになるので、裁断ミスを低減できる。
請求項7に係る裁断機は、固定板を、表面から内部に入った光を端面の方向に伝播して発光させる性質の集光性樹脂によって構成することで、固定板の板面とは異なる色に端面が発光されるようにしたので、裁断位置の誤認を一層効果的に防止できる。また、固定板の端面を着色する必要がないので、製造工程が簡略化される。
【0015】
請求項8に係る裁断機は、スライダを、裁断刃の刃先の延長上に位置する外周縁部が他とは異なる色彩又は性状になるように構成し、その外周縁部が固定板の側縁部に位置するようにスライダを取り付けたので、シートが裁断される位置を直感的に理解することができるようになり、裁断位置の誤認を一層効果的に防止することができる。
請求項9に係る裁断機は、裁断方向に対して直角方向に定規部材を位置させた際、裁断線を基準とする目盛りが定規部材の表面に表れるので、その目盛りにシートの端部を合わせることによって、所望の幅に裁断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る裁断機を示す斜視図である。
【図2】上記裁断機のレールに取り付けられたスライダを示す側面図であり、(a)は初期状態、(b)はスライダを押し下げた状態を示す。
【図3】レールの構造を示す分解図である。
【図4】上記裁断機の固定板を示し、(a)は、シート挿入側から見た背面図、(b)は平面図、(c)は両側面図、(d)は正面図、(e)は底面図である。
【図5】定規部材を示す六面図であり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は右側面図、(f)は左側面図である。
【図6】定規部材が載置台の底板に取り付けられる状態を示す説明図であり、(a)は定規部材、(b)は取付板、(c)は定規部材が取付板に取り付けられた状態を示す。
【図7】定規部材が載置台の盤面と同一高さに上昇する状態を示す説明図であり、(a)は定規部材が載置台内に収納されている状態、(b)は定規部材が引き出された状態を示す。
【図8】本発明の第2実施例に係る裁断機を示す平面図である。
【図9】上記裁断機の正面図である。
【図10】上記裁断機の背面図である。
【図11】上記裁断機の側面図である。
【図12】上記裁断機の使用状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0017】
1、101・・裁断機
3、103・・・裁断刃
10、110・・・載置台10
11・・・紙当て部
12,112・・・盤面
13・・・カッターマット
14・・・底部
15・・・枢支軸
16・・・取付板
17・・・回動支軸
17a・・・フランジ部
17b・・・ガイド部
18・・・被係止部
20,120・・・固定板
21・・・板面
22・・・端面(一側縁部)
23・・・シート挿入部
30,130・・・スライダ
31・・・基台部
32・・・側壁面
33・・・本体部
34・・・蓋部
35・・・着脱操作部
40,140・・・レール
41・・・レール部材
42・・・アーム部材
43・・・リンクバー
44・・・水平部材
46・・・ガイド部
50・・・支持体
51・・・縦溝
52・・・バネ装着部
60,160・・・定規部材
61,161・・・目盛り
62・・・表面部
63・・・段差面
64・・・軸孔
65・・・摘み部
66・・・係止部
67・・・紙当て部
69・・・摺接部(裏面部)
150・・・アーム部
155・・・回動支軸
156・・・蓋部
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、実施形態は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の課題を解決しうるものであれば他の態様も実施可能である。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る裁断機1を示す斜視図である。
この裁断機1は、載置台10と、固定板20と、スライダ30と、レール40と、レールを支持する支持部材50と、定規部材60とによって構成されており、スライダ30をレール40に沿って移動させることによって、載置台上10のシートをスライダ30に取り付けられた円盤状の裁断刃3で裁断するものである。
【0020】
載置台10は、紙などのシート材が載置される台であり、両端部にはシートの端縁部を当接させための紙当て部11,11が設けられており、シートが載置される盤面12には升目状の目盛りや規格の用紙サイズに応じた目印が適宜設けられる。
載置台10のレール40が設けられている方の一側部には、ゴム製のカッターマット13が埋め込まれている。
【0021】
載置台10の一側部にはレール40が取り付けられている。このレール40は、図2に示すように、断面L字状の2本のレール部材41と、断面U字状のアーム部材42とからなり、下端部には固定板20が取り付けられ、上面部にはスライダ30が摺動可能に取り付けられている。
レール40は、載置台10の両端部に設けられた一対のリンクバー43を介して、載置台10表面から所定長離れた高さに架設されており、リンク機構によって、水平状態を維持しながら上下方向に移動可能となっている(図3を参照)。
【0022】
このリンク機構は、アーム部材42の断面U字型の内側天面に沿って配設される水平部材44と、その水平部材44の両端部44aに回動可能に取り付けられる一対のリンクバー43,43と、によって構成されるもので、夫々のリンクバー43の下端部は、載置台10の両端の底部14に設けられた枢支軸15に回動可能に取り付けられている。
【0023】
枢支軸15の設けられている部位には、レール40を支持するための支持体50が嵌め込まれており、この支持体50に設けられた縦溝51の中をリンクバー43が回動する。
一対のリンクバー43は同一長さに設計されているので、リンクバー43の回動によって、平行部材44は平行状態を維持しながら上下方向に移動する。
アーム部材42内部の天面部には2本のリブからなるガイド部46が設けられており、そのガイド部46内に平行部材44が収容されている。これによって、リンクバー43の回転運動が平行部材44の上下運動に変換され、平行部材44に支持されたレール40が水平状態を維持しながら昇降される。
【0024】
支持体50の内側の天面部には、筒状のバネ装着部52が設けられており、そこに装着されたバネによってレール40を上方に向けて付勢している。
レール40の下端部には、載置台10上に載置されたシートを固定するための固定板20が取り付けられている。
この固定板20は、板面21から内部に入った光を端面22の方向に伝播し、光を端面22に集中させることによって、端面22が特定の色に発光する特性を有する集光性樹脂を材料として製造されている(図4を参照)。
【0025】
集光性樹脂とは、集光面から内部に入った光を端面の方向に伝播し、光を端面に集中して端面が特定の色に発光する性質を有する樹脂であり、周囲からの光線を板面から吸収することで、吸収された光は樹脂内部で蛍光として放射され、その放射光が樹脂の端面の方向に伝播され、端面において蛍光するものである。
集光性樹脂は、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂、ポリメチルメタアクリレート等の透明樹脂に、集光性蛍光染料又は顔料を添加して製造されている。
【0026】
外部から樹脂内に入った入射光は集光性蛍光染料等に吸収されて蛍光されるが、捕捉領域を通り抜ける一部の入射光を除く残部は、平板内を全反射しながら端面へと伝播し、発光する。このような材料で固定板20を構成することで、端面22に着色を施すまでもなく、板面21とは異なる色彩の端面22を構成することができる。
この端面22とは反対側の端面は、上方に向けて僅かに湾曲しており、その湾曲部においてシート挿入口23を形成している。
【0027】
次に、レール40にスライド可能に取り付けられるスライダ30の構成を、図2を参照して説明する。
スライダ30は、レール40に係合されて摺動される基台部31と、側壁面32にて裁断刃3を回転可能に収容する本体部33と、側壁面32を覆って裁断刃3をカバーする蓋部34と、蓋部34を本体部33に着脱可能に固定するためのダイヤル状の着脱操作部35とからなる。
【0028】
裁断刃3が取り付けられる本体部33は、基台部31との間に介装された弾性部材36によって上方に付勢されている。
本体部33の側壁面32には、円盤状の裁断刃3を、刃面が壁面に接した状態で収容している。この側壁面32は、裁断刃3を収容する凹状の収容部と、着脱操作部35の回転軸に設けられた係止部と係合される被係止部とが設けられた側面部材の側壁面として構成されたものであるが、この側面部材は、本体部33及び蓋部34とは異なる色彩、及び異なる触感の表面性状に構成されている。
【0029】
このように、側面部材を他の部位とは異なる色の部材で構成することで、裁断刃3の刃先を延長した部位に、他の部位とは異なる色が付されることとなり、裁断刃3の位置を認識し易くなり、裁断位置の確認が容易にできる。
裁断刃3が収容される側壁面32は、蓋部34によって覆われた状態となっているので、スライダ30の外周面の裁断ラインに相当する位置に、着色されたライン(32)が表れる。
【0030】
蓋部34の中央には、貫通孔が設けられており、その貫通孔に着脱操作部35の回転軸が挿入されている。この回転軸の先端には側面部材に嵌合可能な嵌合部が設けられており、ダイヤル状の着脱操作部35を回転させることによって、蓋部34を、側面部材を介して本体部に着脱させることができるようになっている。
【0031】
裁断刃3の位置には、スライダ30の他の部位とは異なる色のライン(32)が表れており、その部位が固定板20の裁断側の側縁部(即ち、発光している端面22)に位置するようにスライダ30が配設されているので、固定板20の側縁に沿って裁断されることが認識されやすい。
これによって、裁断刃3の位置を誤認することによる裁断ミスを防止することができる。
【0032】
載置台10の裁断刃3が装着されている側の一側部には、定規部材60が回動可能に設けられている。
この定規部材60は、載置台10からレール40に対して直角になるように引き出して使用することで紙当て定規として機能するものであり、図5に示すように、目盛り61を有する表面部62と、表面部62から窪んだ位置に設けられた段差面63と、段差面63に設けられた軸孔64と、摘み部65とによって構成される。
【0033】
この定規部材60は、図6に示すように、軸孔64を介して、載置台10の取付板16に設けられた回動支軸17に回動可能に取り付けられており、図7(b)に示すように、載置台10から引き出された際に、先端に設けられた係止部66において、載置台10に設けられた被係止部18に係止されてロックされるようになっている。
定規部材60の表面部62の端縁部は僅かに立ち上がっており、シートを当接させるための紙当て部67を構成している(図5参照)。
【0034】
定規部材が引き出され、定規部材を裁断方向に対して直角方向に位置させた状態でロックされた際には、紙当て部67は、載置台10の基盤に設けられた紙当て部11の延長線上に位置するようになっている。
また、表面部62に設けられた目盛り61は、定規部材60がレール40に対して直角に位置された際に、固定板20の端面22が基準Pとなるように、載置台10の盤面に設けられた目盛りへと連続している。
【0035】
そして、定規部材60の表面部62から僅かに窪んだ位置に、段差面63が設けられている。この段差面63の窪みは、載置台10の盤面の厚みに相当する高さHに設定されている。
この定規部材60は、載置台10から引き出されるにつれて上昇し、レール40に直角な位置でロックされた際には、載置台10の盤面12と同一高さになるように構成されている。
【0036】
以下、載置台10から引き出されるにつれて定規部材60が上昇する機構について、図6及び図7を参照して説明する。
図6(a)は定規部材、図6(b)は載置台10の取付板16、図6(c)は定規部材60が取付板16に回動可能に取り付けられた状態を示すものであるが、これに示すように、載置台10の取付板16の上面16aには、定規部材60の軸孔64に挿通される回動支軸17が設けられている。
【0037】
この回動支軸17の上端にはフランジ部17aが設けられており、このフランジ部17aにおいて、定規部材60の軸孔64に係止されるようになっている。
フランジ部17aの下面(即ち、定規部材60に接する側の面)には、傾斜状のガイド部17bが突設されている。定規部材60の段差面63の裏面部(即ち、取付板16に摺接する側の面)には、取付板16のガイド部17bに摺接する摺接部69が突設されており、この摺接部69がガイド部17bの傾斜面上を移動することで、定規部材60が上下方向に移動しながら回動する。
【0038】
そして、定規部材60が90度回転して係止部66において取付板16に係止された際に、図7(b)に示すように、載置台10の盤面12と同一の高さにまで上昇される。この際、定規部材60の摺接部69は、ガイド部17bの基部に位置している。
定規部材60を回動させて載置台10の内部に収容した際には、図7(a)に示すように、摺接部69がガイド部17bの頂部で押され、載置台10の盤面12の下にて収容可能な高さにまで下降される。
【0039】
定規部材60の表面部62と段差面63との境界(即ち、段差の部位)は、定規部材60がレール40に対して直角に位置した際に、載置台10の盤面12に連続して面一になるような部位に設定されている。
定規部材60の表面部62に設けられた目盛り61は、固定板20の端面22を基準Pとして、載置台10の盤面12から連続的に付されている。
【0040】
上記構成の裁断機1の使用状態について、図6及び図7を参照して説明する。
定規部材60を引き出した状態で、載置台10の盤面にシートを載置する。
そして、定規部材60の目盛り61によって裁断幅を設定し、所望の裁断幅になるようにシートの端縁を合わせる。この際、固定板20の発光している端面22からシートの端縁まで長さを確認することで、裁断幅を確認できる。
【0041】
所望の裁断ライン上に固定板20の端面22が位置していないときには、シートの位置を微調整する。この際、スライダ30の本体部33が、基台部31との間に介装された弾性部材36によって上方に付勢されており、スライダ30を押し下げない限り裁断刃3は下降しないので、スライダ30の位置を気にすることなく、安心してシートを動かすことができる。
正確に位置合せを行った後、レール40に沿ってスライダ30を移動させる。この際、固定板20の端面22が裁断刃3の刃面が当接する位置に沿って配置されており、その端面22が、固定板20の板面21とは異なる色彩に発光しているので、裁断位置の確認をしながら裁断することが可能となる。
【0042】
本実施形態においては、載置台10の盤面12の下側に設けられた取付板16に、上端にフランジ部17aを有する回動支軸17を設けたので、その回動支軸17のフランジ部17aを介して、定規部材60を、その軸孔64を介して回動可能に取り付けることが可能となる。そして、フランジ部の下面に傾斜部を設け、その傾斜部に定規部材が摺接することで載置台の盤面と同一高さへと上昇するように構成したので、少ない部品数での製造が可能となり、製造コストを低減できる。
【0043】
なお、載置台10に定規部材60を回動可能に取り付ける構造は、上記の取付構造に限ることはなく、例えば、定規部材60に回動支軸を設け、そのフランジ部を介して、載置台10に設けられた軸孔に取り付けられるようにしてもよいし、双方に軸孔を設け、別体の回動支軸を介して取り付けてもよい。
また、固定板20も上記構成に限るものではなく、例えば、透明部材で構成し、端面22のみを着色してもよい。また、スライダ30の形状は如何なるものでもよいし、定規部材60の目盛り61、係止部67も必ずしも必要ではない。
【実施例2】
【0044】
図8〜図11は、本発明の第2実施形態に係る裁断機101を示す平面図、正面図、背面図、側面図であり、図12は、その使用状態を示す平面図である。
この裁断機1は、載置台110と、固定板120と、スライダ130と、レール140と、定規部材160とによって構成されたものである点で、第1実施形態に係る裁断機と共通するが、固定板120が載置台110に回動可能に取り付けられている点、載置台10の裁断側とは反対側に定規部材160が取り付けられている点で異なっている。
【0045】
以下、第1実施形態に係る裁断機と異なる構成のみ説明する。
本実施形態に係る裁断機の載置台110は、第1実施形態の載置台10よりも小さく、裁断方向に長い形状である。そして、固定板120は、アーム部150を介して載置台110に回動可能に取り付けられている。
即ち、図11に示すように、固定板120の側壁部から延長された部位がアーム部150となっており、このアーム部150の基部に設けられた回動支軸155を介して、固定板120が載置台110に回動可能に取り付けられている。
【0046】
この固定板120の側壁部の間にレール140が差し渡されており、側壁部の一方に、レール140の端からスライダ130を脱着するための開口部が設けられ、その開口部に蓋部156が装着されている。
また、定規部材160は、図12に示すように、裁断刃103が取り付けられている側とは反対側の載置台110の側部に取り付けられている。この場合、定規部材160の一端部には回動支軸(図示しない)が下方に向けて設けられており、その回動支軸の下端部に設けられたフランジ部(図示しない)において、載置台110の底板に設けられた軸孔に係止されている。
【0047】
フランジ部の上面には、傾斜状のガイド部が設けられており、そのガイド部が底板に摺接しながら定規部材が回動されることによって、レール140に直角方向に引き出された際に、定規部材160の表面部が載置台110の盤面と同一高さにまで上昇される。
基盤110には、固定板120の発光している端面122を基準Pとする目盛りが両側に向けて設けられている。このうち、裁断側とは反対側に向けて設けられた目盛りは、定規部材160の目盛り161へと連続している。
【0048】
本実施形態に関わる裁断機101では、固定板120を、載置台110に回動可能に取り付け、載置台110の盤面112に向けて回動させてシートを固定するようにしたので、載置台110へのシートのセッティングと固定を迅速に行なうことができる。
そして、固定板120の側壁部の間にレール140を設け、レール140の端からスライダ130を脱着するための開口部を設けたので、裁断刃103を取り替える際のスライダ130の脱着操作を迅速に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、事務用、家庭用、その他あらゆる産業分野で使用される裁断機に適用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが載置される載置台(10)と、載置されたシートを盤面(12)に押し付ける固定板(20)と、裁断刃(3)を取り付けたスライダ(30)と、スライダ(30)が移動するレール(40)と、載置台(10)の盤面(12)の下に回動可能に取り付けられた定規部材(60)と、を有し、前記スライダ(30)の移動によってシートが裁断される裁断機(1)であって、
前記定規部材(60)は、表面部(62)から前記載置台(10)の盤面(12)の厚みに相当する高さ(H)だけ窪んだ位置に段差面(63)が設けられており、該段差面(63)の裏面部(69)が、前記載置台(10)の盤面(12)の下側に設けられた取付面(16a)に摺接しながら回動するように前記載置台(10)に取り付けられ、
前記裏面部(69)又は前記取付面(16)に設けられた傾斜部(17b)に、前記取付面(16)又は前記裏面部(69)が摺接しながら相対移動することで、前記定規部材(60)が前記レール(40)に対して直角方向に位置した際に、該定規部材(60)の表面部(62)が前記載置台(10)の盤面(12)と同一高さになるようにしたことを特徴とする裁断機。
【請求項2】
前記定規部材(60)に軸孔(64)を設けると共に前記取付面(16a)に回動支軸(17)を設け、
該回動支軸(17)の上端部に前記軸孔(64)に係止可能なフランジ部(17a)を設け、該フランジ部(17a)の下面に前記傾斜部(17b)を突設したことを特徴とする請求項1に記載の裁断機。
【請求項3】
前記定規部材(60)が前記レール(40)に対して直角方向に位置した際に、該定規部材(60)の回動を停止させる係止部(66)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の裁断機。
【請求項4】
前記固定板(120)は、アーム部(150)を介して前記載置台(110)に回動可能に取り付けられると共に、前記固定板(120)の側壁部の間に前記レール(140)を設け、該レール(140)の端から前記スライダ(130)を脱着するための開口部(156)を前記側壁部に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つの請求項に記載の裁断機。
【請求項5】
前記スライダ(30)は、前記レール(40)に係合されてスライドする基台部(31)と、前記裁断刃(3)を保持する本体部(33)と、を含んで構成されており、前記基台部(31)との間に介装された弾性部材(36)によって上方に付勢された本体部(33)を押し下げることで、前記スライダ(30)の下端部から前記裁断刃(3)が突出するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの請求項に記載の裁断機。
【請求項6】
前記固定板(20)の前記レール(40)に沿った一側縁部(22)を、前記裁断刃(3)の刃面が当接する位置に沿って配置すると共に、前記固定板(20)の板面(21)とは異なる色彩の端面としたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つの請求項に記載の裁断機。
【請求項7】
前記固定板(20)は、表面から内部に入った光を端面の方向に伝播して発光させる性質の集光性樹脂によって構成されたことを特徴とする請求項6に記載の裁断機。
【請求項8】
前記スライダ(30)は、前記裁断刃(3)の刃先の延長上に位置する外周縁部(32)が、他とは異なる色彩又は性状になるように構成されており、該外周縁部(32)が前記固定板(20)の一側縁部(22)に位置するように前記レール(40)に取り付けられたことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の裁断機。
【請求項9】
前記定規部材(60)の表面部(62)に、該定規部材(60)が前記レール(40)に対して直角に位置させた際に前記固定板(20)の前記一側縁部(22)が基準(P)となる目盛り(61)を設けたことを特徴とする請求項6〜請求項8の何れか1つの請求項に記載の裁断機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−688(P2011−688A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147268(P2009−147268)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000104087)カール事務器株式会社 (63)
【Fターム(参考)】