説明

装填用拡張器

【課題】装填用拡張器と気管切開管との間の移行部分を最小にする構造とされている装填用拡張器の提供。
【解決手段】医療装置を、患者の体壁を貫通して形成されている穴を横断するように位置決めする装填用拡張器20であり、該装填用拡張器は、比較的剛性の高い近位部分23と遠位部分27とを備えている管状本体22を備えている。遠位部分は、比較的可撓性の高い第一の区分32と比較的剛性の高い第二の区分34とを備えている。第一の区分は、第二の区分より直径が大きい第一の長さから、第二の区分の直径を実質的に超えない直径を有している第二の長さまで軸線方向に伸長可能である。スタイレット50が、管状本体の通路内で、第一の区分が第一の長さを有している第一の位置と、スタイレットの遠位端が第二の区分に軸線方向の変位力をかけて第一の区分が第一の長さから第二の長さまで動くことができるようにする第二の位置との間を動くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、患者の体内の穴を拡げるための医療用の装填用拡張器に関する。更に特定すると、本発明は、気管切開管のような医療器具を体内の穴を横断させて位置決めする際に使用するために、その遠位部分に直径が可変の移行部分を有している装填用拡張器に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な気道の形成は、重篤な患者又は負傷している患者の呼吸機能を維持する際の又は呼吸できない患者に対して人工蘇生術を施す際の重要なステップである。気管内挿管(管を鼻孔又は口を介して気管自体の中に配置すること)は気道を確保するために広く使用されている方法である。しかしながら、気管内挿管のための最適な気道を確保するためには、気管、鼻孔、及び/又は口は、通常は、閉塞が無いか又は少なくとも実質的に無い状態でなければならない。閉塞がある場合には、気管内挿管は一般的に可能ではなく、空気の流れのための代替的な通路が確保されなければならない。
【0003】
このような状況下で空気の通路を設ける最も直接的な方法は、穴又は気孔を気管の壁を貫通して形成する方法である。ひとたび穴が形成されると、気管切開管が穴に挿入される。従来の気管切開管は、開口している遠位の穴と外周が拡張可能なカフとを備えている。該カフは、遠位の穴の近位側の位置において気管の壁と気管切開管との間にシールを提供する。該シールは、下方気管、気管支、及び肺の中への血液、組織、又は異物の侵入を阻止する一方で、正圧の通気を行いながら、気管切開管を介して形成される空気の流れの完全な制御及び監視を可能にしている。該開口している遠位の穴は、患者の肺内への空気の通路を提供している。
【0004】
気管の壁に穴を形成するか該穴を広げるための幾つかの方法及び器具が知られている。このような方法の一つでは、気管の壁に小さな穴を形成するためにメスが使用される。この小さな穴内に針が挿入され、該針の先端が気管の内部空間内に位置するようにされる。次いで、ガイドワイヤが針の穴を介して気管内へ通され、その後に該針は抜き取られる。次いで、大きさが連続的に変化している拡張器がガイドワイヤの外周に沿って進められて、気管入口を適当なサイズまで次第に拡張させるようにされる。
【0005】
最近、米国インディアナ州ブルーミントンにあるCook IncorporatedによってBLUDE RHINO(登録商標)の名前で販売されている単一の湾曲した拡張器が開発され、該拡張器によって多数の拡張器を使用する必要性がなくなった。その形状が、サイの角に似ていることからそのように呼ばれているBLUE RHINO(登録商標)拡張器は、実質的に連続した形態で湾曲している遠位端部を備えており、該拡張器の次第に大きくなる直径部分が気管内に挿入され、その結果、後部の気管の壁の隙間の形成が補助される。BLUE RHINO(登録商標)拡張器の更なる説明は米国特許第6,637,435号に提供されている。該米国特許は、これに言及することによって本明細書に参考として組み入れられている。
【0006】
気管切開管を導入するために、気管の壁に穴を形成し又は該穴を拡げるための別の方法が、本明細書に参考として組み入れられている米国特許第5,653,230号に記載されている。この方法は、カテーテルの遠位端に拡張可能なバルーンを備えているバルーンカテーテルを採用している。該カテーテルは、経皮的に挿入されたガイドワイヤの外周に沿って挿入され、カテーテルはバルーンが気管の壁を横断して位置するまでガイドワイヤに沿って進められる。次いで、バルーンが拡張されて気管の壁の一部分が径方向に拡張し、その結果、バルーンの拡張した直径に対応した穴が壁に形成される。
【0007】
公知の方法のいずれかによる穴の形成に続いて、導入管/装填用拡張器には気管切開管が予め装填され、該装置の遠位端は、予め挿入されているガイドワイヤの外周に沿って穴の中を通される。装填用拡張器から管への概ね滑らかな移行部分を有していて管の遠位部分すなわち先端部分が穴の中に入るのを容易にする装填用拡張器と気管切開管との組み合わせを提供することが望ましい。しかしながら、多数の異なる気管切開管のサイズ及び多数の異なる製造者が存在するので、装填用拡張器と気管切開管の遠位端との間の移行部分に著しく大きなサイズのリップ部(装填用拡張器と気管切開管との間での各々の直径の違いによって生じる)が存在する可能性がある。ここではリップ部の一つの例が図1に示されている。直径が比較的小さい装填用拡張器と直径が比較的大きい気管切開管との間の結合部分にリップ部が存在することにより、気管切開管が穴の中に挿入されるのが妨げられて管を挿入したときに患者が受ける外傷が多くなる。
【特許文献1】米国特許第6,637,435号
【特許文献2】米国特許第5,653,230号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ある範囲の直径の気管切開管を収容できる大きさとされており、且つ拡張器/気管切開管装置を挿入したときに、装填用拡張器と気管切開管との間の移行部分を最小にする構造とされている装填用拡張器を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の問題点が本発明の特徴によって解決されている。本発明は、一つの形態においては、管状の医療装置を患者の体壁を貫通して形成されている穴を横断させて位置決めするための装填用拡張器からなり、該管状の医療装置は、該医療装置の位置決め中に装填用拡張器の一部分の外周に嵌まる大きさとされている。装填用拡張器は細長い本体からなり、該細長い本体は、近位端と、遠位端と、前記近位端から遠位方向に延びている比較的剛性の高い近位部分と、前記遠位端から近位方向に延びている遠位部分と、前記近位端と遠位端との間の通路とを備えている。前記遠位部分は、比較的可撓性の高い第一の区分と、比較的剛性の高い第二の区分とを備えている。該第二の区分は、湾曲部分とテーパー部分とのうちの少なくとも一つを備えている。該第一の区分は、細長い本体の長さに沿った前記近位部分と前記第二の区分との中間に位置決めされている。前記第一の区分は、該第一の区分が前記第二の区分の直径よりも大きい直径を有する第一の長さから、前記第一の区分が前記第二の区分の直径を実質的に超えない直径を有する第二の長さまで軸線方向に延びることができる。
【0010】
本発明は、もう一つ別の形態においては、患者の気管の壁の穴を通る患者への通気を提供する際に使用するためのアセンブリを備えている。該アセンブリは、細長い本体を備えている装填用拡張器からなり、前記細長い本体は、近位端と、遠位端と、前記近位端から遠位方向に延びている比較的剛性の高い近位部分と、前記遠位端から近位方向に延びている遠位部分と、前記近位端と遠位端との間の通路とを備えている。前記遠位部分は、比較的可撓性の高い第一の区分と、比較的剛性の高い第二の区分とを備えている。該第二の区分は、湾曲した部分とテーパー部分とのうちの少なくとも一方を備えている。前記第一の区分は、前記細長い本体の長さに沿って前記近位部分と前記第二の区分との中間に位置決めされており、前記第一の区分の直径が前記第二の区分の直径よりも大きい第一の長さと、前記第一の区分の直径が前記第二の区分の直径を実質的に超えない第二の長さとの間を選択的に動くことができる。前記通路内にはスタイレットが収容されている。スタイレットは、前記細長い本体の近位端の近位側に延びている近位端と、遠位端とを備えている。該スタイレットは、前記通路内を、前記細長い本体に対して、前記第一の区分が第一の長さを有している第一の位置と、前記スタイレットの遠位端が前記第二の区分に軸線方向の変位力をかける第二の位置との間を動いて前記第一の区分が前記第一の長さから前記第二の長さまで動くことができるようになされている。
【0011】
本発明の更に別の形態においては、本発明は、医療器具を患者の体壁に形成されている穴内に位置決めする方法からなる。装填拡張器アセンブリは、その上に医療装置を受け入れるように位置決めされる。該装填拡張器アセンブリは細長い本体を備えており、該細長い本体は、近位端と、遠位端と、前記近位端から遠位方向に延びている比較的剛性の高い近位部分と、前記遠位端から近位方向に延びている遠位部分と、前記近位端と遠位端との間に設けられている通路とを備えている。前記遠位部分は、比較的可撓性の高い第一の区分と比較的剛性の高い第二の区分とを備えている。該第二の区分は、湾曲した部分とテーパーが付けられている端部とのうちの少なくとも一方を備えている。前記第一の区分は、前記細長い本体の長さに沿って前記近位部分と前記第二の区分との中間に位置決めされており且つ前記第一の区分の直径が前記第二の区分の直径よりも大きい第一の長さと前記第一の区分の直径が前記第二の区分の直径を実質的に超えない第二の長さとの間を選択的に動くことができる。スタイレットが、前記細長い本体の通路内に配置されている。該スタイレットは、前記細長い本体の近位端の近位側に延びている近位端と、前記通路に沿って延びている遠位端とを備えている。該スタイレットは、前記通路内を遠位方向に、前記第一の区分が第一の長さを有している第一の位置から、前記スタイレットの端部が前記第二の区分に対して軸線方向に変位させる力をかける第二の位置まで進められ、その結果、前記第一の区分は前記第二の長さまで動く。前記医療装置は、前記細長い本体の外面に沿って進められて、前記医療装置の先端が前記第一の区分の周りに位置決めされる。スタイレットが引き抜かれて軸線方向の変位力が解放され、その結果、前記第一の区分は、前記第二の位置から後退し且つ前記医療装置の先端の位置に合致し、その結果、前記細長い本体の遠位端と前記医療装置の先端との間の実質的に非外傷性の移行部分が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、気管切開管が拡張器上に装填されている状態の従来技術による装填用拡張器の側面図である。
【0013】
【図2】図2は、本発明の一実施形態による装填用拡張器及びスタイレットの側面図である。
【0014】
【図2A】図2Aは図2の装填用拡張器の一部分の拡大図である。
【0015】
【図3】図3は、図2の装填用拡張器とスタイレットとの近位端面図である。
【0016】
【図4】図4は、スタイレットの近位端に力がかけられたた後の図2の装填用拡張器とスタイレットとの側面図である。
【0017】
【図5】図5は、本発明の一実施形態による装填用拡張器の側面図であり、装填用拡張器の表面に装填されている気管切開管を示している。
【0018】
【図6】図6は、先端が丸味を帯びている気管切開管を備えている図5の装填用拡張器アセンブリの側面図である。
【0019】
【図7】図7は、気管切開管を気管の壁を横断するように位置決めする際における本発明による装填用拡張器アセンブリの使用方法を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の理解を促進する目的で、図面に示されている実施形態には参照符号が付されており且つ該実施形態を説明するために特別な用語が使用されている。しかしながら、これらによって本発明の範囲を限定することは意図されておらず、図示されている器具のこのような変更及び更なる改造並びにここに図示されている本発明の原理の更に別の用途が想定され且つ本発明に関連する技術の当業者は通常思い付くことができることは理解されるべきである。
【0021】
以下の説明において、“近位“及び“遠位”という用語は、該装填用拡張器の軸線方向の端部及び関連する構成部品の軸線方向の端部を説明するために使用されている。“近位”端という用語は、装填用拡張器の使用中にオペレータに最も近い拡張器(又は構成部品)の端部を指すために一般的な用法で使用されている。“遠位”端という用語は、最初に患者の体内に挿入されるか又は患者に最も近い装填用拡張器(又は構成部品)の端部を指している。
【0022】
図1は、従来技術における装填用拡張器100の側面図である。図面において、拡張可能なカフ122(未拡張状態で示されている)と遠位端124とを備えている気管切開管120が、患者の気管の壁を横断させて配置するために装填用拡張器の外面に装填されている。
【0023】
従来の装填用拡張器100は、遠位部分104を備えている細長い本体102を備えており、遠位部分104は、気管の壁に予め形成されている拡張された穴内へ容易に入るようにテーパーが付けられている。装填用拡張器100内には通路(図示せず)が延びていてガイドワイヤ(図示せず)がその中を通過できるようになされている。典型的には、細長い拡張器本体102は、遠位端部分において緩やかに湾曲していて、気管切開管が気管の壁を通して進めるのを容易にし且つ気管空洞内の解剖学的構造と概ね合致するようになされている。
【0024】
種々の大きさの患者に適合させるために、装填用拡張器及び気管切開管は種々の異なる直径で提供される。理想的には、装填用拡張器及び気管切開管の各々の直径は概ね一致していて、装填用拡張器と気管切開管の遠位端との間に最小の直径移行部分だけがあるようにする。この結果、気管切開管を気管の壁を貫通させて挿入する際に患者が受ける外傷が最小化される。しかしながら、医師が手術室内で常時使用できる装填用拡張器と気管切開管との間の直径の広範囲の変動により、医師が使用できる対応する装填用拡張器及び/又は気管切開管の直径によく適合させることが出来ない可能性がある。場合によっては、利用可能な装填用拡張器及び気管切開管の選択によって、リップ部すなわち直径移行部分における装填用拡張器と気管切開管の遠位端との間の著しい直径の差が生じる虞がある。
【0025】
リップ部“L”を有している装填用拡張器と気管切開管との組み合わせが、図1の従来技術による組み合わせに示されている。図1に示されているリップ部Lは、典型的に予期されるものより幾分誇張されており、図面においては、ここで言及されている直径移行部分の位置の特定を容易にするように示されている。拡張器100と気管切開管120の遠位端124との移行部分に何らかの大きさのリップ部が存在することにより、気管切開管を気管の壁を貫通して導入する際の少なくとも幾分の挿入の難しさ及び/又は患者に対する外傷が生じる虞がある。比較的大きなリップ部の存在は、挿入を著しく困難にさせ且つ/又は患者に対する外傷を生じさせる虞がある。
【0026】
図2は、本発明の実施形態による装填用拡張器アセンブリ10の側面図である。装填用拡張器アセンブリ10は、装填用拡張器20とスタイレット50のような細長い部材とを備えており、該細長い部材は該装填用拡張器内を延びている通路内に摺動可能な形態で収容されている。
【0027】
図示されている実施形態においては、装填用拡張器20は細長い本体22を備えており、細長い本体22は近位部分23と遠位部分27とを有している。近位部分23は近位端24まで延びており、遠位部分27は遠位端28まで延びている。遠位部分27は、以下に更に説明するように、第一の区分32と第二の区分34とを備えている。指用グリップ21のような指用の把持部材が装填用拡張器の近位端24には固定されている。
【0028】
拡張器本体の近位部分23は、装填用拡張器を形成する際に使用される当該技術において知られている比較的剛性の高い医療等級合成材料によって作られている。PVC及びポリウレタンは、適切な材料の2つの非限定的な例である。近位部分23は、長さが約12〜18cmであるが、この長さは所望ならば変えても良いことが当業者にはわかるであろう。
【0029】
上記したように、遠位部分27は第一及び第二の区分32,34を有している。図2,2A及び4に示されているように、第一の区分32は、細長い本体22の長さに沿って近位部分23と第二の区分34との中間に配置されている。第二の区分34もまた、比較的剛性の高い医療用等級の合成材料によって作られている。必須ではないけれども、近位部分23と第二の区分34とは、同じか又は類似している組成物によって作られるのが好ましく且つ実質的に類似した剛性であるのが好ましい。第二の区分34は概ね湾曲した又は(近位部分23に対する)オフセット部分30と、遠位端28まで延びているテーパー部分29とを備えているのが好ましい。湾曲した又はオフセット部分30(以下“湾曲した”と称する)とテーパーが付けられている部分29とは、装填用拡張器の公知の特徴であり、当業者は、これらの特徴のいずれか又は両方を有している特別な装填用拡張器についての湾曲、ずれ、及びテーパーの適切な度合いを容易に決めることができる。
【0030】
第一の区分32は、近位部分23及び第二の区分34の材料よりも剛性が低い(すなわち、可撓性が高い)例えばシリコーンのような材料によって形成されている。第一の区分32は、力がかけられると軸線方向に伸びることができるようにするのに十分な弾性を有している。第一の区分32用の適切な材料の他の非限定的な例としては、低硬度ポリウレタン並びにここに記載されるように伸長するための十分な機能を有している種々の熱可塑性エラストマがある。当業者は、ここに記載されている撓むことができ且つ伸長することができる他の生体適合性材料をシリコーンの代わりに使用しても良いことがわかるであろう。
【0031】
第一の区分32が図2に示されている弛緩状態にあるときに、該第一の区分32の外径は隣接している湾曲部分30の外径よりも大きく、例えば湾曲部分30の外径よりも約2〜5mm典型的には約3mm大きい。従って、例えば一つの好ましい実施形態においては、図面に示されている弛緩状態で、湾曲部分30の外径は約7mmであり、第一の区分32の外径は約10mmである。近位部分23と湾曲部分30とは、同じか又は概ね類似している外径を有しているのが好ましい。この場合には、第一の区分32の外径は、図2及び2Aに示されているように近位区分23及び部分30の両方よりも(約3mm)大きい。典型的には、第一の区分32は弛緩長さが約3〜5cm好ましくは約4cmであるように作られており、第二の区分34は全長が約1〜3cm好ましくは約2cmである。当業者は、上記した寸法は適切な長さの単なる例示であり、特定の場合には他の寸法が適している可能性があることがわかるであろう。
【0032】
図示されているように、近位部分23と、第一の区分32と、第二の区分34とを連結させるために、可撓性の第一の区分32の対応する近位端と遠位端とが、近位部分23と第二の区分34の対応する軸線方向の端部に固定されている。当業者は、安全なやり方でこれらの結合を達成するための多くの適切な方法が存在することがわかるであろう。このような方法の一つでは、カニューレ40,44(図2A)のような小径の柔軟な管が、各々、近位部分23及び第二の区分34内に延びている対応する通路(図示せず)内にきちんとはまって収容される。一つの好ましい形態においては、該柔軟な管すなわちカニューレは、拡張器の近位部分23及び/又は遠位の第二区分34と同じ材料又は類似した材料によって作られている。別の方法として、カニューレ40,44は、他の概ね剛性のある生体適合性材料、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)のような熱可塑性樹脂によって作ることができる。カニューレ40は、該カニューレの遠位部分41が近位部分23から外方へ(遠位方向へ)延びるように近位部分23内に固定されている。カニューレ44は、該カニューレの近位部分45がこの区分から外方へ(近位方向へ)延びるようにして第二の区分34に固定されている。カニューレ40,44は、公知の手段、例えば接着剤を使用して、又は機械的接合によって、又は適当な物理的結合、例えばねじ結合によって、装填用拡張器の対応する部分に確実に固定されている。
【0033】
貫通して延びている通路を備えているシリコーン又はその他の可撓性材料からなる適切な大きさの第一の区分32が、近位部分23と第二の区分34との間に嵌合されている。第一の区分32の対応する端部はカニューレの端部41,45を確実に収容している。第一の区分の対応する端部は、次いで、近位部分23及び第二の区分34の対応する端部並びに対応するカニューレの端部41,45に、例えば接着又は機械的接合のような公知の手段によって固定される。第一の区分32の軸線方向外側の端部の各々(各端部のおよそ0.5cm)は、組み立て前にテーパーが付けられるか面取りされて、図2,2Aに示されているように、第一の区分32の端部とこれに対応する近位部分23及び遠位の第二の区分34との間に滑らかな移行部分が設けられている。第一の区分32の端部を対応するカニューレ端部41,45を覆うように嵌合させることによって、各々、第一の区分32の端部及び近位部分23及び第二の区分34間の確実な結合を確保するための付加的な面領域が付与されている。
【0034】
上記したように、スタイレット50のような細長い概して剛性の高い部材が、細長い本体22の内側に沿って延びている通路内に摺動可能に収容されている。図2及び4に示されているように、スタイレット50の近位部分52が、装填用拡張器の近位端24の近位側にまで延びている。スタイレット50は、以下において更に説明するように該スタイレットの近位端の先端に親指又は手のひら用のボタン53を備えている。図3に示されているように、スタイレット50(ボタン53を含む)は、ガイドワイヤを受け入れるために貫通して延びている通路を備えている。ボタン53にはまた、スタイレットの作動中にガイドワイヤを再度整合することができるようにするために通路54と連通しているすり割り55も設けられている。スタイレット50は、スタイレットの遠位部分56が装填用拡張器20の通路内を伸長してスタイレットの遠位端の先端57が例えばテーパーが付けられている部分29(図2A)において第二の区分34の内壁に当接するような大きさとされている。該スタイレットには、拡張器の遠位先端部分との係合を補助するための僅かに湾曲した遠位部分が設けられている。
【0035】
最初は、図2に示されているように、スタイレットの近位端(例えばボタン53)は、装填用拡張器の近位端24の近位側約4〜5cmの距離のところまで延びている。このとき、スタイレットの遠位端57は、上記し且つ図2Aに示されているように、第二の区分34において該装填用拡張器の細長い本体の内壁に接触するか又は内壁の近くに隔置される。オペレータは、指用のグリップ21を反力として使用して、自分の親指/手のひらをスタイレットのボタン53上に置き且つボタン53に遠位方向を向いた軸線方向の力Fをかける(図4)。このとき、スタイレット50は装填用拡張器の細長い本体22の通路内を遠位方向に押され、その結果、スタイレットの遠位端57が区分34に押し込み力をかける。この力の結果として、装填用拡張器の第二の区分34が遠位方向に押されて、第一の区分32が、図2,2Aに示されている弛緩状態から図4に示されている小径の伸長状態へと移動もしくは伸長する。
【0036】
上記したように、装填用拡張器アセンブリ10は、管状の医療装置を患者の体壁を貫通して形成されている穴を横断するように挿入するために使用される。このような、使用方法の一つの例は気管切開管80を気管の壁を貫通して形成されている穴を横断するように挿入することである。気管切開管は医療分野においてよく知られており、気管切開管80は当該技術において通常使用される大きさ及び形状とされている。図5に示されている実施形態おいては、気管切開管80は、遠位すなわち先端84まで延びているテーパーが付けられている遠位部分82を備えている。気管切開管80は、概ね湾曲した本体と、拡張可能なカフ81(図5においては非拡張状態で示されている)とを備えている。カフ81は、一般的な方法例えばカフ拡張用チューブ87内に拡張用流体を流すことによって拡張する。気管内に適正に位置決めされると、該拡張カフは、気管の壁と気管切開管との間をシールし、血液、組織、及びその他の異物が、下方気管、気管支、及び肺内に侵入するのを阻止する。開口している遠位端84は、患者の肺内への空気の通路を提供する。気管切開管80が気管の穴内に位置決めされるときに患者の皮膚に当接する一般的なフランジ88が、気管切開管の近位端には設けられている。
【0037】
装填用拡張器アセンブリ10と組み合わせて使用されるときに、第一の区分32が、図4に示されている伸長状態すなわち引き伸ばされた状態にあるときに、最初に気管切開管80(図5)が装填用拡張器アセンブリの外周に沿って進められる。潤滑性ゼリーが、気管切開管の内側及び/又は拡張器の外側に、既存の器具に塗布される方法と同じ方法で塗布される。該気管切開管は、先端84が引き伸ばされた第一の区分32の外周に沿って好ましくは該区分の長さに沿った中ほどの位置あたりに位置決めされるように、装填用拡張器に対して進められる。スタイレット50が近位方向に引き抜かれると、第二の区分34の湾曲部分にかけられた軸線方向の変位力Fが解放される。力Fが解放されると、第一の区分32は図2,2Aに示されている弛緩位置へと戻ろうとする。気管切開管の存在及び特に先端84の存在により、第一の区分32は元の直径にまで完全には戻らない。このとき、可撓性の第一の区分32は、図5に示されているように、気管切開管の先端84に対して幾分球根状に膨れた形状を呈する。この形状により、図1に示されているリップ部Lの存在によって惹き起こされる急激な直径の移行部分がなくなり、その代わりに、気管の壁の穴を介して入るときの気管切開管の先端の概ねスムーズな移行部分が付与される。このようにして、気管の壁の穴内への気管切開管の比較的スムーズで且つ外傷性が比較的少ない挿入が達成される。
【0038】
以下の例は、装填用拡張器アセンブリを気管切開管と組み合わせて使用する方法の更なる詳細を提供している。当業者は、上記したプロセスのステップに多少の変更を施せば、該装填用拡張器アセンブリは、他の管状の医療装置を体壁に形成された他の穴を横断させて挿入するために使用できることがわかるであろう。
【0039】
気管切開管を気管の壁の穴に挿入することは公知の技術であり、従って、当業者は、気管の壁を貫通して適切な穴を形成するのに適当な手段を決定することができる。一つの公知の技術においては、ガイドワイヤ90(図7)が、経皮的に気管の壁を貫通して、例えば予め挿入されている中空針(図示せず)の内部を通して挿入される。針を取り出した後、ガイドワイヤの遠位端は気管の壁89を横断した定位置に残ったままとなる。次いで、穴94は、例えば、参考として組み入れられている米国特許第6,637,435号に記載されている湾曲したBLUE RHINO(登録商標)拡張器のような拡張器又は参考として組み入れられている米国特許第5,653,230号に記載されているバルーン拡張器を使用して拡張される。
【0040】
上記した装填用拡張器アセンブリ10が、気管の壁を貫通して形成されている穴94に挿入できるように配置されている。スタイレット50は、力Fによって軸線方向に進められ、装填用拡張器の第一の区分32を、図2,2Aに示されている弛緩位置から図4に示されている伸長位置まで軸線方向へ変位させる。次いで、気管切開管80は、上記したように、装填用拡張器10の外面上に装填され且つ装填用拡張器に対して進められて、上記したように先端84が第一の区分32の外周に位置決めされる。スタイレット50が引き抜かれ、その結果、区分32は後退して図5に示されている球根状に膨れた形状となる。
【0041】
この時点で、気管切開管80がかぶせられているアセンブリ10が気管の穴94内へ進められるように位置決めされる。ガイドワイヤ90の近位端は、装填用拡張器の遠位端28内へと戻されてアセンブリ内を通される。該アセンブリと気管切開管とは、気管切開管が図7に示されているように気管の壁に沿って適正に位置決めされるまで、公知のやり方でガイドワイヤの外周に沿って進められる。第一の区分32が図示されている形態にある状態で、装填用拡張器20と気管切開管80の遠位先端84との間に概ね非外傷性の直径の移行部分が形成される。
【0042】
挿入が完了して気管切開管が適正に位置決めされると、該装填用拡張器アセンブリは取り外される。再度、軸線方向の力Fがボタン53にかけられ、その結果、スタイレット50は再度遠位方向へ付勢され、第一の区分32が図4に示されている引き延ばされた状態へと変位する。この結果、区分32の外径が縮径して、装填用拡張器アセンブリ10(装填用拡張器及びスタイレット)は気管壁80の内部から引き抜かれ、気管切開管は気管の壁を横断した定位置に残される。次いで、気管切開管用カフ81が拡張されて、気管切開管は公知の手段によって定位置に固定される。
【0043】
上記したように、気管切開管は、医療分野においてよく知られており且つ多くの異なるサイズ及び形状で提供される。図5に図示され且つ上で説明した実施形態においては、気管切開管80は、先端84まで延びているテーパーが付けられている遠位部分82を備えている。このテーパー部分を備えている管は、典型的には上記した経皮的挿入において使用される。
【0044】
図6には、もう一つ別の一般的な気管切開管構造が示されている。気管切開管70は、気管切開管80と概ね同様であり、概ね湾曲した本体とカフ71とフランジ78とを備えている。しかしながら、図5に示されているようなテーパーが付けられている遠位端が設けられているのではなく、気管切開管70には丸味を帯びた先端74が設けられている。丸味を帯びている先端を備えている気管切開管は、典型的には外科的挿入において使用される。図6に示されている気管切開管70上の丸味が帯びた先端の存在に関わらず、装填用拡張器の第一の区分32は、引き延ばされ且つ弛緩されて図5に示されている気管切開管80と同じ方法で概ねテーパーが付けられている球根状の先端を形成している。このように、ここに記載した装填用拡張器は、経皮的及び外科的の両方により挿入される気管切開管における用途を有している。
【0045】
当業者は、上記の詳細な説明は限定的なものではなく例示とみなされるべきものであり且つ本発明の精神及び範囲を規定するように意図されているのは全ての等価物を含む特許請求の範囲であることが理解されるべきであることがわかるであろう。
【符号の説明】
【0046】
10 装填用拡張器アセンブリ、 20 装填用拡張器、
21 指用グリップ、 22 細長い本体、
23 細長い本体の近位部分、 24 近位端、
27 細長い本体の遠位部分、 28 遠位端、
29 テーパー部分、 30 湾曲部分、
32 第一の区分、 34 第二の区分、
40 カニューレ、 41 カニューレの端部、
44 カニューレ、 45 近位部分、
50 スタイレット、 52 スタイレットの近位部分、
53 ボタン、 54 通路、
55 すり割り、 56 スタイレットの遠位部分、
57 スタイレットの遠位端の先端、 70 気管切開管、
71 カフ、 74 先端、
78 フランジ、 80 気管切開管、
81 カフ、 82 気管切開管の遠位部分、
84 先端、 88 フランジ、
89 気管の壁、 90 ガイドワイヤ、
94 穴、 100 装填用拡張器、
102 細長い本体、 104 拡張器の遠位部分、
120 気管切開管、 122 カフ、
124 遠位端、 L リップ部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の医療装置を患者の体壁を貫通して形成されている穴を横断するように位置決めするための装填用拡張器であって、前記管状の医療装置が該医療装置の前記位置決め中に当該装填用拡張器の一部分の外周に嵌合するサイズである、装填用拡張器において、
近位端と、遠位端と、前記近位端から遠位方向に延びている比較的剛性の高い近位部分と、前記遠位端から近位方向に延びている遠位部分と、前記近位端と前記遠位端との間に設けられている通路と、を有する細長い本体を備えており、前記遠位部分は比較的可撓性の高い第一の区分と比較的剛性の高い第二の区分とを備えており、該第二の区分は湾曲部分とテーパー部分とのうちの少なくとも一方を備えており、前記第一の区分は前記細長い本体の長さに沿って前記近位部分と前記第二区分との中間にあり、前記第一の区分は、該第一の区分の直径が前記第二の区分の直径よりも大きい第一の長さから、該第一の区分の直径が前記第二の区分の直径を実質的に超えない直径を有している第二の長さまで軸線方向で伸長可能とされている、ことを特徴とする装填用拡張器。
【請求項2】
前記近位部分、前記第一の区分、及び前記第二の区分の各々が、対応する軸線方向の端部を備えており、前記近位部分と前記第一の区分とが、それらの隣接している軸線方向端部において固く固定されており、前記第一の区分と前記第二の区分とが、それらの隣接している軸線方向端部において固く固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装填用拡張器。
【請求項3】
前記第一の区分が前記第一の長さを有しているときに、前記第一の区分の遠位端部分が前記第二の区分に向かって傾斜している、ことを特徴とする請求項2に記載の装填用拡張器。
【請求項4】
前記第一の区分が前記第一の長さを有しているときに、前記第一の区分の近位端部分が前記近位部分に向かって傾斜している、ことを特徴とする請求項3に記載の装填用拡張器。
【請求項5】
前記細長い本体の近位端に指用グリップを更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の装填用拡張器。
【請求項6】
前記通路内に収納されているスタイレットを更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の装填用拡張器。
【請求項7】
前記第一の区分が前記第一の長さにあるときに、該第一の区分が、前記第二の区分の外径より約2〜5mm大きい外径を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の装填用拡張器。
【請求項8】
前記第一の区分の近位端が前記近位部分の遠位端に固定されており、該第一の区分の遠位端が前記第二の区分の近位端に固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装填用拡張器。
【請求項9】
前記近位部分と前記第一の区分との結合部において前記通路内に位置決めされている第一のカニューレと、前記第一の区分と前記第二の区分との結合部において前記通路内に位置決めされている第二のカニューレとを更に備えている、ことを特徴とする請求項8に記載の装填用拡張器。
【請求項10】
前記近位部分と前記第二の区分とが、実質的に同様な組成で形成されており且つ実質的に同様な外径を有しており、前記第一の区分がシリコーンによって形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装填用拡張器。
【請求項11】
患者の気管の壁の穴を介して患者に通気を提供する際に使用するためのアセンブリであって、
近位端と、遠位端と、前記近位端から遠位方向に延びている比較的剛性の高い近位部分と、前記遠位端から近位方向に延びている遠位部分と、前記近位端と前記遠位端との間の通路と、を有する細長い本体を備えている装填用拡張器であって、前記遠位部分は、比較的可撓性の高い第一の区分と比較的剛性の高い第二の区分とを有しており、該第二の区分は湾曲部分とテーパー部分とのうちの少なくとも一方を有しており、前記第一の区分は、前記近位部分と前記第二の区分との中間に前記細長い本体の長さに沿って配置されており且つ該第一の区分が前記第二の区分の直径よりも大きい直径を有している第一の長さと該第一の区分が前記第二の区分の直径を実質的に超えない直径を有している第二の長さとの間を選択的に動くことができるようになされている、装填用拡張器と、
前記通路内に収容されているスタイレットであって、前記細長い本体の近位端の近位側に延びている近位端と、遠位端とを備えており、前記第一の区分が前記第一の長さを有している第一の位置と、該スタイレットの前記遠位端が前記第二の区分に軸線方向に変位させる力をかけて前記第一の区分が前記第一の長さから前記第二の長さへと動くことができるようにさせる第二の位置との間を、前記通路内で前記細長い本体に対して動くことができる、スタイレットと、
を備えていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項12】
前記装填用拡張器の外面上に支持されている気管切開管を更に備えており、該気管切開管は、前記気管の壁の穴内に収容される大きさとされている、ことを特徴とする請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記第二の区分が前記装填用拡張器の前記遠位端に向かう方向にテーパーが付けられており、前記第一の区分が、前記細長い本体の第二の区分と前記気管切開管の先端との間に概ね非外傷性の移行部分を画成している、ことを特徴とする請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記気管切開管がテーパー部分を備えており、前記スタイレットが該テーパー部分に前記力をかけるようになされている、ことを特徴とする請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記スタイレットが貫通している通路を備えており、前記スタイレット内を伸長しているガイドワイヤを更に備えている、ことを特徴とする請求項11に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−27704(P2013−27704A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−164488(P2012−164488)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】