説明

装填装置における針構造、装填装置及び液体噴射装置

【課題】液体収容体の非装填時において、衝撃等に起因する針部の針孔からの液漏れを抑制できるとともに装填装置の小型化を図りやすい装填装置における針構造、装填装置及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ホルダ20に突設された供給針23の先端部には導入孔51が形成され、供給針23内において導入孔51と連通する流路52内には弁機構53が収容されている。弁機構53は、弁体56と、該弁体56を供給針23の先端側方向へ付勢する圧縮バネ57とを有している。弁体56の先端部には閉弁状態において導入孔51から突出する軸状の突出部56bを有している。同図に示す閉弁状態では、弁体56の軸部56aの先端面に固着されたシール部材58が流路52の端面に当接することで導入孔51が閉じるようになっている。突出部56bが押圧されると弁体56が移動して導入孔51が開く構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジ等の液体収容体が液体噴射装置に挿抜可能に装填されたときに該液体収容体の連結部に差し込まれる針部を有する装填装置に係り、詳しくは液体収容体の非装填時における針部の針孔からの液漏れを防止する装填装置における針構造、装填装置及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置の1つとして、インクジェット式記録装置が広く知られている。インクジェット式記録装置は、液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッド(記録ヘッド)を備え、該液体噴射ヘッドにインクを供給するために液体収容体としてのインクカートリッジが挿抜可能に装填される構成となっている。
【0003】
インクカートリッジの装填方式には、記録装置に移動可能に設けられたキャリッジの上部にインクカートリッジが装填されるオンキャリッジタイプ(例えば特許文献1)と、記録装置本体に設けられた収容部内にインクカートリッジを装填するオフキャリッジタイプ(例えば特許文献2)とが知られている。
【0004】
オンキャリッジタイプでは、キャリッジの上部に装填装置の供給針(針部)が突設され、装填されたインクカートリッジ内のインクはその供給部に差し込まれた供給針の針孔を通じてキャリッジ側の流路へ送られてキャリッジ下部に設けられた記録ヘッドに供給される。また、オフキャリッジタイプの場合、記録装置本体の収容部内奥方位置に供給針を有するカートリッジホルダが配置され、装填されたインクカートリッジ内のインクはその供給部に差し込まれた供給針の針孔を通じてカートリッジホルダへ送られてさらにチューブ及びサブタンク等を介して記録ヘッドに供給される構成となっている。
【0005】
ところで、従来、インクカートリッジを取り外した非装填状態で記録装置が搬送などされる場合があり、この場合、搬送時に伝達される振動や大きな揺れなどに起因する落下衝撃を受けた際に、供給針内の流路にあるインクに圧力が加わって、針孔よりインクが漏れ出すという問題があった。従来、この種のインク漏出対策として、漏れたインクを吸収材で吸収する構造(例えば特許文献3)と、シール弁(バルブ)を用いて供給針内の流路を閉じる構造(例えば特許文献4)とが知られている。
【0006】
例えば特許文献3における技術では、供給針の下方位置に吸収材を配置して、供給針の針孔から漏れ落ちたインクを吸収材で吸収する構造となっていた。また、特許文献4における技術では、供給針の基端側延長上の位置に内蔵されたシール弁及び開閉機構と、供給針から離れた位置に移動可能に突設されたロッドと、ロッドと開閉機構との間に介装されてインクカートリッジの挿抜動作に連動してロッドの移動を介して開閉機構を動作させる連動手段としての開閉レバーとを備えている。インクカートリッジが装填されてロッドが押し込まれると、開閉レバーを介してシール弁が閉弁位置に配置されて流路が閉じられる構成となっていた。
【特許文献1】特開2004−358980号公報(第1図等)
【特許文献2】特開2005−53212号公報(第1図等)
【特許文献3】特開2004−237495号公報(明細書段落[0040]、第7図等)
【特許文献4】特開2004−268543号公報(明細書段落[0037]〜[0044]、第15図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3に開示されている吸収材を供給針の下方に配置した構成では、真下に垂れてきたインクは保持することができるが、プリンタの落下等により他方向に飛び散るインクについては保持することができないという問題があった。もちろん、供給針の周囲を吸収材で囲む構成も考えられるが、供給針と吸収材との間に隙間を完全に無くすことはできないので、針孔から漏れ出たインクがその開いた隙間から垂れてしまう虞があった。また、吸収材を設ける構成は、その設置スペースを確保する必要があり、吸収材を含めた装填装置の小型化を図りにくかった。
【0008】
また、特許文献4に開示されている構造では、シール弁及び開閉機構以外に、ロッドや開閉レバーなど連動手段のための設置スペースを必要とするため、装填装置の小型化を図りにくいという問題があった。なお、シール弁は供給針の基端側延長上位置に内蔵されていると、記録装置の落下等により流路内のインクに圧力が加わると、シール弁は閉じていても、シール弁と針孔との間の流路上のインクが針孔から漏れ出してしまう問題もある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、液体収容体の非装填時において、衝撃等に起因する針部の針孔からの液漏れを抑制できるとともに装填装置の小型化を図りやすい装填装置における針構造、装填装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、液体噴射装置に挿抜可能に装填される液体収容体の連結部に差し込み可能に突設された針部を有するとともに該針部が前記連結部に差し込まれた状態で前記連結部内の流路と前記針部内の流路とを連通可能な針孔が前記針部に設けられた装填装置における針構造であって、前記液体収容体の挿抜動作に連動して前記針部内の流路を開閉する弁機構を備え、前記弁機構は、前記針部の外周面上に露出するとともに前記連結部に前記針部が差し込まれるときに該連結部に押圧される被押圧部と、前記針部内の流路を閉じる方向に付勢されるとともに前記連結部に前記針部が差し込まれるときに前記被押圧部が前記連結部に押圧されて変位することにより該被押圧部と共に前記付勢に抗して変位して前記針部の流路を開く弁体とを備えたことを要旨とする。
【0011】
これによれば、液体収容体の非装填時においては、被押圧部が連結部から押圧されず、針部に設けられた弁体が針部内の流路を閉じる方向に付勢されて閉弁位置に配置される。このため、液体噴射装置が振動や落下による衝撃を受けても針孔からの液漏れを抑制できる。従来装置において採用されていた吸収材、および液体収容体の挿抜動作に連動して弁の開閉機構を動作させるために針部以外の場所に設けられた連動手段が不要になる。よって、この針構造によれば、液漏れを効果的に抑制できるうえ、装填装置の小型化を図りやすくなる。一方、液体収容体の装填時においては、液体収容体の連結部に押圧されて弁体が閉弁位置に配置されることにより、針孔は開く。この結果、液体収容体の連結部内の流路と針部内の流路とが針孔を通じて連通し、針孔を通じて液体収容体から装填装置への液体の供給、又は装填装置から液体収容体への液体の排出が行われる。
【0012】
また、本発明の針構造では、前記弁機構は、前記針部内の前記流路を前記針孔との間の位置で開閉することが好ましい。
これによれば、弁体による開閉位置は、針部内の流路上の基端部側ではなく、針部の先端側位置でしかも針孔を直接開閉するように位置設定されているので、弁体による開閉位置と針孔との間の流路上に溜まる液体の量が極めて少なく済む。これにより、振動や落下による衝撃が加わって仮に開閉位置と針孔との間に溜まる液体が漏れ出たとしても、その液漏れ量を少なく抑えることが可能となる。
【0013】
また、本発明の針構造では、前記弁体の一部が前記針孔の内周面の一部の面を形成しており、該弁体が前記連結部に押圧される方向に変位することにより前記針孔の内周面のうち前記一部の面が他の面に対して相対移動することが好ましい。
【0014】
これによれば、液体収容体が装填される際は、弁体が連結部に押圧されて変位することにより針孔の内周面のうち該弁体の一部により形成される一部の面が他の面に対して相対移動する。例えば液体収容体が取り外された非装填状態で長期放置されて針孔の部分でインク等の液体が増粘又は固化しても、次回装填時には、針孔の内周面のうち弁体の一部により形成される一部の面が他の面と相対移動することにより、増粘膜又は固化膜などが破壊されるので、装填後に針孔の目詰まりに起因する液体供給不良が発生しにくくなる。
【0015】
また、本発明の針構造においては、前記針孔を閉じる方向に前記弁体を付勢する付勢手段をさらに備えたことが好ましい。これによれば、弁体は付勢手段により付勢されるので、弁体の付勢力を適切な値に設定することができ、液体収容体の非装填時には針孔をより確実に閉じることができる。
【0016】
さらに本発明の針構造において、前記液体収容体の前記連結部は、前記針部が差し込まれたときに該針部に押されることで開弁する弁体を備えており、前記付勢手段の付勢力は前記連結部側の前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段の付勢力より小さく設定されていることが好ましい。
【0017】
これによれば、液体収容体が装填されてその連結部に針部が差し込まれたときに針部側の弁体が連結部側の弁体に当たった際、付勢力の弱い針部側の弁体がより変位し易いので、針孔をより確実に開くことができる。
【0018】
また、本発明の針構造では、前記弁体は、前記針部内に組み込まれるとともに少なくとも閉弁状態にあるときに前記針孔から突出する突出部を前記被押圧部として有していることが好ましい。
【0019】
これによれば、針部内に組み込まれた弁体はその突出部を針孔から突出させた状態に付勢されているので、液体収容体を装填した際は、連結部に針部が差し込まれた際に該連結部により突出部が押されて弁体は付勢力に抗して開弁位置に変位し、針孔が開く。弁体は針部内に組み込まれているので、針部の針形状をほぼ保持でき、しかも突出部が押されることで弁体を閉弁位置に変位させて針孔を開くことができる。また、針孔を利用して突出部を突出させているので、突出部を針部から突出させるための孔を別途設ける必要がない。
【0020】
また、本発明の針構造では、前記弁体は、前記針部内に組み込まれるとともに少なくとも閉弁状態にあるときに前記針部の先端部の錐状部分に形成された孔部から突出する突出部を前記被押圧部として有していることが好ましい。
【0021】
これによれば、針部内に組み込まれた弁体はその突出部を錘状部分に形成された孔部から突出させた状態に付勢されているので、液体収容体を装填した際は、連結部に針部が差し込まれた際に該連結部により突出部が押されて弁体は付勢力に抗して開弁位置に変位し、針孔が開く。弁体は針部内に組み込まれているので、針部の針形状をほぼ保持でき、しかも突出部が押されることで弁体を閉弁位置に変位させて針孔を開くことができる。
【0022】
さらに本発明の針構造において、前記孔部は前記針孔であることが好ましい。これによれば、針孔を利用して被押圧部である突出部を突出させているので、突出部を針部から突出させるための孔を別途設ける必要がない。また、被押圧部である突出部は、針部の先端部の錘状部分に設けられた針孔(孔部)から突出しているので、針部の外周面から突出する構成に比べ、連結部に差し込まれる際の差込抵抗を小さくすることができる。
【0023】
また、本発明の針構造では、前記弁体は針部の軸方向に移動可能に設けられていることが好ましい。これによれば、連結部に針部が差し込まれるときに連結部から受ける力の方向にそのまま弁体が移動できるので、連結部から受けた力を弁体の移動方向へ変換する変換手段を不要に済ませられる。
【0024】
また、本発明の針構造では、前記針部は前記装填装置の本体から突設された基部と、該基部に対し同軸上にスライド可能に設けられたキャップ部とを有し、該キャップ部は前記弁体を兼ねるとともに前記針部の軸方向先端側へ付勢されていることが好ましい。
【0025】
これによれば、液体収容体が装填されて連結部に針部が差し込まれると、キャップ部が基部に対して付勢方向と反対側へ押されて移動することで、針孔が開く。キャップ部が弁体を兼ねているので、針部から突出部を無くせられ、例えば針部の針形状を確保し易くなる。このため、針部を連結部に円滑に差し込み易くなる。
【0026】
本発明は、液体噴射手段を有する液体噴射装置に取り付けられて使用され、前記液体噴射手段に液体を供給する液体収容体が前記液体噴射装置に挿抜可能に装填される装填装置であって、前記液体収容体が装填された際に該液体収容体の連結部に差し込まれるとともに該連結部が差し込まれた状態で該連結部内の流路と内部の流路とを連通させる針孔を有する針部と、該針部が突設されるとともに前記針部内の前記流路と連通する流路が形成された本体とを備え、前記発明の装填装置における針構造を備えたことを要旨とする。これによれば、装填装置は上記発明の針構造を備えていることから、上記針構造の発明と同様の効果が得られる。
【0027】
本発明は、液体噴射装置であって、前記発明の装填装置と、前記装填装置の前記針部が液体収容体の連結部に差し込まれた装填状態で、前記液体収容体から前記装填装置を介して供給された液体を噴射する液体噴射手段とを備えたことを要旨とする。これによれば、液体噴射装置は上記発明の装填装置を備えていることから、上記装填装置の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1は、本実施形態のインクジェット式記録装置を背面側から見た斜視図である。同図に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置(以下、「プリンタ10」という)は略箱状の本体ケース11を備えている。本体ケース11内には、キャリッジ12がキャリッジモータ13の駆動力によって図示しないガイド軸に沿って主走査方向(同図におけるX方向)に往復移動可能に設けられている。
【0029】
キャリッジ12の下面側には、液体としてのインクを噴射する複数の噴射ノズル(図示省略)を有する液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド14が設けられている。一方、キャリッジ12は、サブタンク(図示せず)と、記録ヘッド14に対して圧力調整されたインクを供給するためのバルブユニット(図示せず)とを備え、バルブユニットにより圧力調整された4色のインク(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)が記録ヘッド14に供給可能に構成されている。
【0030】
本体ケース11内にはキャリッジ12の移動経路より下方の位置に、主走査方向Xと平行を延びる平板状又は円柱状のプラテン(図示省略)が配置され、給送されたターゲットとしての記録用紙はプラテン上を通って副走査方向(同図におけるY方向)に搬送される。そして、記録ヘッド14のノズルからインク滴を吐出しながら主走査方向Xに移動するキャリッジ12の走査と、副走査方向Yへの記録用紙の所定量の搬送とが交互に行われることにより記録用紙に印刷が施される。
【0031】
本実施形態のプリンタ10は、キャリッジ12上にインクカートリッジを搭載しないオフキャリッジタイプの機種である。本体ケース11の背面側下部にはカートリッジ収容部(以下、「収容部15」)という)が凹設されている。本体ケース11内において収容部15の奥側の位置には、装填装置としてのカートリッジホルダ(以下、「ホルダ20」という)が配置されている。そして、液体収容体としてのインクカートリッジ30は、収容口15aからプリンタ10に装填される。インクカートリッジ30の装填時には、収容口15aの左右方向一端側に突出しているレバーハンドル29を回動操作してインクカートリッジ30を収容部15内へ押し込むことにより、減速機構(図示せず)を介した比較的軽い操作力で、インクカートリッジ30をホルダ20側の供給針23等に差し込むことができる。収容部15に装填されたインクカートリッジ30は、図示しない係止機構により装填位置に固定される。なお、本実施形態のインクカートリッジ30は、後述するように4色分のインクパックを内装した多色対応型カートリッジである。
【0032】
図1に示すように、本体ケース11内の前側(同図では上側)端部にはポンプ16(吸引ポンプ)が配設されている。また、本体ケース11内において、ホルダ20とキャリッジ12との間は4本の可撓性材料からなる供給流路18が集束された帯状の集束流路17によって接続されており、ホルダ20に装填されたインクカートリッジ30から各供給流路18を通じてキャリッジ12内の各々対応するサブタンク(図示せず)に各色のインクが供給されるようになっている。ポンプ16の吸引側はメンテナンス装置(図示せず)に接続されており、メンテナンス(クリーニング)時に記録ヘッド14のノズルから吸引された廃インクは、ポンプ16から流路19及びホルダ20を経由してインクカートリッジ30内に回収される。このように本実施形態のインクカートリッジ30は、廃液回収機能を有している。
【0033】
図1および図2に示すように、ホルダ20は、インクカートリッジ30と略同じ横幅(X方向幅)でX方向(図1参照)を長手方向とする略四角板状の本体20aを有しており、その本体20aの収容口15aに対向する面が、インクカートリッジ30が連結される連結面20b(被装填面)となっている。ホルダ20の連結面20bには、その長手方向両端付近に位置する一対の位置決め突起21,22と、その間に略等間隔に配置された複数本(本例では4本)のインク供給針(以下「供給針23」と称す)と、一方の位置決め突起21の外側近傍に位置する廃インク導出針(以下「導出針24」と称す)とが突設されている。
【0034】
また、ホルダ20は、複数本の供給針23等が一体成形されて連結面20b側の外装をなすホルダ部材27(針形成部材)と、ホルダ部材27の背面側に連結された流路形成部材28(図4参照)と、流路形成部材28の背面に溝状の流路が凹設された開口面を覆うように熱溶着されたガスバリア性を有する図示しないフィルム材等から構成されている。
【0035】
図2に示すように、インクカートリッジ30の収容ケース31の底面端部に凹設された基板収容凹部31cには、接続端子32aが表面に形成された回路基板32が取着されている。接続端子32aは、回路基板32に実装された不揮発性メモリ等からなる半導体記憶装置(図示せず)と電気的に接続されている。半導体記憶装置は、収容ケース31に収容される各インクパック38(図3参照)のインクの種類、インク残量、シリアル番号や有効期限等のデータを記憶する。
【0036】
インクカートリッジ30が装填された状態においては、回路基板32の接続端子32aが、ホルダ20の連結面20b側の一端下縁部から略垂直に突設された端子部25に接続されるようになっている。端子部25と接続端子32aが接続された状態では、プリンタ10の制御部(図示省略)がインクカートリッジ30側の半導体記憶装置に対しインク残量等のデータの読出し及び書き込みが可能になる。
【0037】
図3は、インクカートリッジの一部破断した斜視図を示す。同図に示すように、四角板形状を有するインクカートリッジ30の前面(装填面)には、ホルダ20側の一対の位置決め突起21,22と対応する位置に一対の位置決め穴33,34が形成されている。また、インクカートリッジ30の前面おいて、ホルダ20側の複数の供給針23及び1つの導出針24とそれぞれ対応する位置には、複数の支持口部35及び1つの廃インク導入口部(以下「導入口部36」という)がそれぞれ形成されている。
【0038】
インクカートリッジ30は、各位置決め穴33,34に各位置決め突起21,22が嵌入することでインクカートリッジ30の装填方向(図1ではY方向)と交差する方向への移動が規制された状態に位置決めされる。そして、この位置決めされた状態で、各支持口部35及び導入口部36に各供給針23及び導出針24がそれぞれ差し込まれることでホルダ20に連結されるようになっている。
【0039】
ケース本体31aと蓋部31bよりなる収容ケース31内には、複数のインクパック38が収容されている。インクパック38は、図3に示すように、袋部41と、該袋部41の一端部に外側へ突出する状態に固着されたインク導出部材42とを備える。袋部41は、ガスバリア性の向上のために、例えば外側をナイロンフィルム、内側をポリエチレンフィルムにより挟み込んだ構成のアルミニウムラミネートフィルムから形成されている。各袋部41の内部にはそれぞれ異なる色のインクが貯留されている。
【0040】
例えばプラスチックにより形成されるインク導出部材42は、正面視(支持口部35側からの視方向)で両端側ほど幅が狭くなる船型形状の基部42bと基部42bから突出した略円筒形状の供給部42aとが一体形成されており、袋部41のアルミニウムラミネートフィルムは基部42bの側周面に熱圧着されている。供給部42aは先端部にインク供給口(以下「供給口42c」という)を有している。
【0041】
図3に示すように、収容ケース31内に収容されている複数のインクパック38は、供給部42aの鍔部42dが支持口部35の内周面上に凹設された環状溝35aに挿入されることにより複数の支持口部35にそれぞれ位置決めされるとともに、各袋部41が一部重なる状態に配置されている。各供給口42cは各支持口部35の開口と相対し、カートリッジ装填時には支持口部35に挿入された供給針23が供給口42cに差し込まれるようになっている。なお、インク導出部材42には、供給口42cに供給針23が差し込まれたインク供給時の状態で開弁される後述の弁機構64(図6に示す)が内蔵されており、装填される前においては袋部41内のインクが漏れ出ないようになっている。また、収容ケース31の内部においてインクパック38が占める部分以外の隙間部分が、導入口部36から導入された廃インクが収容される回収領域となっている。
【0042】
図4は、供給針を有するホルダの部分断面図である。また、図5は、供給針を示し、同図(a)は供給針における図4におけるA−A線断面図、同図(b)及び(c)は供給針の先端部分の拡大図であり、同図(b)は閉弁状態を示し、同図(c)は開弁状態を示す。図4に示すように、ホルダ20の連結面20bに突設された供給針23は、先端部に円錐状のテーパ部23aを有する中空の柱状に形成された針本体20cを有し、該針本体20cの先端部中央には針孔としての導入孔51が一つ形成されている。
【0043】
ホルダ20を構成するとともにそれぞれ合成樹脂よりなるホルダ部材27と流路形成部材28は、各々の流路52,55の接続箇所を囲む状態に設けられたシール部材54を介して接合され、各流路52,55はシール部材54の存在により液密状態を保った状態で連通されている。両流路52,55はそれぞれの軸線を一致させた状態で連通されるとともに、流路52の基端側部分における内周面が基端にゆくに連れて内周径が徐々に大きくなるテーパ状をなし、流路52の基端には流路形成部材28における流路55の開口周辺域をなす壁面(側壁面)が露出している。ホルダ部材27側の流路52は針本体20cの内部を通って導入孔51と連通している。
【0044】
流路52内には、導入孔51を開閉する弁機構53が組み込まれている。弁機構53は、流路52のうち針本体20c内における先端側に配置された弁体56と、流路52のうち基端側に配置されて弁体56を先端側方向に付勢する付勢手段としての圧縮バネ57(コイルバネ)とを有している。
【0045】
弁体56は、該弁体56が挿通されている部分における流路52の内径よりも小さな外径を有する軸部56aと、導入孔51の内径よりも若干小さな外径を有するとともに軸部56aの先端部から突出する円柱状の突出部56bと、軸部56aの外周面から放射状に延出する複数のガイド部56cとを有している。圧縮バネ57は、軸部56aの基端面(図4における右端面)中央部から突出している軸部56dが挿通された状態でその一端部(図4における左端部)が弁体56の基端面(同図における右端面)に当接するとともに、その他端部(同図における右端部)が流路形成部材28の側壁面に当接する状態で圧縮状態に配設されている。圧縮バネ57は流路52の基端部分におけるテーパ形状に対応するように、基端側ほど径が徐々に大径になっている。
【0046】
図4及び図5(b),(c)に示す断面図から分かるように、導入孔51は供給針23の軸線上先端部に位置し、その孔方向は供給針23の軸線方向に一致している。弁体56は、図5(a)に示すように、その軸線方向と直交する方向に切った断面が十字形状をなし、4つの板状のガイド部56cは軸部56aの周方向において等角度間隔の位置からそれぞれ径方向外側へ延出するとともに軸部56aの軸線方向に沿って所定長さ延びている。4つのガイド部56cから決まる外周径は、流路52の内径と略一致している。4つのガイド部56cが流路52の内周面に当接することにより、弁体56は、軸部56a及び突出部56bの軸線が流路52の軸線に一致する状態に位置決めされて、流路52のうち先端側で内径が一定となる部分に移動可能に収容されている。
【0047】
図5(b)に示すように、流路52の先端部分は、軸心側ほど先端側へより長く延びる段差が形成されており、流路52のうち弁体56のガイド部56cが摺接する内周面の径よりも小さな径を有する流路部分の端面52aに囲まれるように導入孔51が開口している。弁体56の軸部56aの先端面上には突出部56bを囲むようにリング状のシール部材58(例えばOリング)が固着されている。弁体56が圧縮バネ57の弾性力により付勢されて軸状の突出部56bを導入孔51から突出させた図5(b)に示す状態では、シール部材58が端面52aに密接し、導入孔51と流路52との間の位置でインク流路が閉じられるようになっている。このときの弁体56の位置が導入孔51を閉じる閉弁位置となる。
【0048】
突出部56bの軸長は導入孔51の孔長より十分長く、弁体56が閉弁位置に配置された状態(閉弁状態)において、突出部56bは導入孔51から所定長さ突出するようになっている。つまり、カートリッジ非装填時には、供給針23の先端部から突出部56bが所定長さ突出している。後述するが、インクカートリッジ30を収容口15aから装填して供給部42aに供給針23が差し込まれた際は、図5(c)に示すように、突出部56bがインク導出部材42に内蔵された弁体65に当たり、該弁体65によって押されることにより供給針23内へ退避(没入)するようになっている。これにより弁体56が圧縮バネ57の付勢力に抗して供給針23の流路52上を基端側へ移動する構成となっている。
【0049】
弁体56が図5(b)に示す閉弁位置から基端側に移動することにより、シール部材58が端面52aから離間して図5(c)に示すように開弁し、導入孔51が流路52と連通する構成となっている。この図5(c)に示す弁体56の位置が導入孔51を開く開弁位置となる。ここで、本実施形態では、導入孔51と突出部56bとの間にできる円筒状の隙間領域が、液体としてのインクが供給される針孔となっており、該針孔の内周面のうち、突出部56bの外周面が一部の面、導入孔51の内周面が他の面となっている。なお、ホルダ20に備えられた導出針24についても、基本的に供給針23と同様の針構造を有しており、同様の弁機構53が組み込まれるとともに、その先端部の導出孔からは圧縮バネ57により先端側に付勢された弁体56の突出部56bが同様に突出している。
【0050】
図6は、インク導出部材42と供給針23の断面図である。図6に示すように、インク導出部材42の供給部42aには、ゴム製のパッキン61が嵌入されている。供給部42aの内部は貫通孔が形成されて流路63となっており、流路63上においてパッキン61の奥方位置には、弁機構64が配置されている。弁機構64は、弁体65と、弁体65を供給口42c側(外側)へ付勢するコイルバネ66とを有する。弁体65は、コイルバネ66の弾性力により付勢されてパッキン61に当接することで流路63を塞ぐように閉弁する。カートリッジ装填時においては、供給口42cに差し込まれた供給針23は、供給部42aの端面に貼られたフィルム62及びパッキン61を貫通して弁体65を押し込んで流路63を開く構成となっている。流路63は、その内周面上における対向する位置に、一対の溝63aを有しており、インクパック38内のインクは流路63の溝63aを経由して弁体65の下流側へ流出する。
【0051】
次に、上記のように構成されたインクカートリッジの装填装置及びこれを備えたプリンタ10の作用を説明する。
図6に示すように、インクカートリッジ30が装填される際は、まずインクカートリッジ30の支持口部35に供給針23が差し込まれて、フィルム62が破られ、さらに供給針23がパッキン61を貫通して弁体65を押し込む。このとき、図6及び図5(c)に示すように、供給針23の先端部分から突出している突出部56bが弁体65から押されて導入孔51内に没入する方向へ退避することにより、弁体56が圧縮バネ57の付勢力に抗して閉弁位置から開弁位置に移動する。よって、このインクカートリッジ30の装填により、インクカートリッジ30側の弁機構64が開弁してインクパック38内から流路63へ流れたインクが、供給針23側の弁機構53の開弁により開いた導入孔51を通って流路52内へ供給される。つまり、供給針23側では、図5(c)に示すように突出部56bが弁体65に押されることによって、弁体56のシール部材58が端面52aから離間し、同図に矢印で示すようにインクが導入孔51から供給針23内の流路52へ流入する。そして、供給針23に供給されたインクはホルダ20から供給流路18を通じてキャリッジ12に送られてサブタンクに一時貯留され、バルブユニットにより所定インク圧に調圧されたインクがキャリッジ12内の流路を経由してその下部に設けられた記録ヘッド14に供給される。
【0052】
本実施形態におけるプリンタ10は、例えば携帯可能な小型の機種であり、持ち運びされるときには、例えばインクカートリッジ30を取り外す。インクカートリッジ30が取り外されると、供給針23内の弁機構53を構成する弁体56が圧縮バネ57の付勢力により先端側に移動するので、図5(b)に示す弁体56が閉弁位置に配置される。この結果、シール部材58が端面52aに密接し、導入孔51は閉じられる。このとき、プリンタ10に運搬中の振動が伝わったり、揺れによって落下した際の衝撃がプリンタ10に加わったりしても、弁機構53の閉弁によって閉じた導入孔51からはインクが漏れ出ることがない。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)供給針23内に弁体56を軸線方向に移動可能かつ圧縮バネ57により先端側へ付勢された状態に内蔵するとともに、供給針23の先端部に形成された導入孔51から弁体56の突出部56b(被押圧部)を突出させた供給針構造を採用した。よって、カートリッジ非装填時には、振動や落下による衝撃が加わった際に供給針23の導入孔51からインクが漏れ出ることを防止できる。また、従来装置において採用されていた漏れたインクを吸収可能な吸収材や、インクカートリッジの挿抜動作に連動して弁の開閉機構を動作させるロッドや開閉レバー等の連動手段が不要になることから、ホルダ20を小型に構成することができる。
【0054】
(2)さらに、供給針23内に組み込まれた弁体56は、針本体20cの流路52の内壁面において導入孔51が開口する開口周囲の端面52aにシール部材58を当接・離間させることにより、導入孔51を流路52との間で開閉する構成である。よって、弁機構53が流路を閉じた閉弁箇所より先端側に溜まるインク量が導入孔51に溜まる少量で済むので、振動や落下の衝撃によって閉弁箇所より先端側に溜まったインクが仮に漏出したとしても、その漏れ量は極めて少量で済む。また、閉弁箇所より先端側に溜まるインク量(インク質量)が少ないことから、振動や落下の衝撃によってインクに加わる圧力がその質量に応じて小さく済むので、この点からもインク漏れを効果的に抑制できる。さらに、閉弁箇所より先端側に溜まったインク量が極めて少なくインクが溜まる流路断面積が極めて狭いことから、インクに比較的大きな毛管力が作用し、この点からも衝撃を受けた際のインク漏れを効果的に抑制できる。このとき、導入孔51に挿通された突出部56bの周囲にインクは円筒状に溜まるので、インクが円柱状に溜まる場合に比べ、インクに一層高い毛管力が作用し易くなる。また、流路52の端面に導入孔51を開口することによりその開口周囲にできる端面52aは弁座として利用できるので、シール部材58を介在させて弁体56を当接させれば比較的簡単に開閉弁を構成できる。
【0055】
(3)カートリッジ非装填状態のまま仮に長期放置されても、導入孔51はシール部材58によりシールされるので、流路52内のインク蒸発を最小限に抑えることができる。つまり、閉弁箇所より先端側に溜まるインク量が極めて少量であることから、供給針23内のインク中の溶媒又は分散媒等が導入孔51から蒸発する蒸発量を最小限に抑えることができる。また、次回のカートリッジ装填時には、突出部56bが導入孔51内を没入方向へ移動するので、仮に導入孔51の開口付近でインクが増粘又は固化等して目詰まりが発生しても、突出部56bの移動によって目詰まりの原因となるインク増粘層又はインク固化膜等が破壊される。これにより導入孔51の目詰まりが解消され易くなる。プリンタ10を次回使用する際には、記録ヘッド14のノズルからインクを強制的に吸引してインク吐出性能を回復するクリーニングが実施されるが、事前に導入孔51付近のインク増粘層又はインク固化膜が前述のように破壊されることから、このクリーニング時に導入孔51の目詰まり等を回避又は解消し易くなるので、クリーニングによる回復性能を向上できる。
【0056】
(4)針本体20c内の流路52上に軸線方向に移動可能に配置した弁体56を、供給針23の先端側へ付勢する付勢手段としての圧縮バネ57を設けた。よって、弁体56の先端部に突設された軸状の突出部56bを針本体20cの先端部に形成された導入孔51から突出させることができるうえ、導入孔51を閉じた閉弁位置に弁体56を配置することができる。また、圧縮バネ57のバネ定数を適宜選択することによりn適切な付勢力で弁体を付勢することができる。
【0057】
(5)供給針23の先端部から突出部56bを突出させているので、例えば供給部42aに供給針23が差し込まれるときの差し込みストロークが比較的短くても、カートリッジ装填時には弁体56を閉弁位置に配置させて導入孔51を確実に開くことができる。
【0058】
(6)突出部56bは供給針23の軸線上先端部から突出させているので、インクカートリッジ30の装填時に供給部42aに供給針23が差し込まれた際は、突出部56bが弁体65に最初に当たって確実に押圧され、導入孔51を開くことができる。また、突出部56bが供給針23の先端部軸線上から軸状に突出していることから、突出部56bを設けた割に供給針23の先端部を比較的尖った針形状に保持できる。このため、カートリッジ装填時に供給針23によって円滑にフィルム62を突き破り、供給針23をパッキン61に円滑に差し込むことができる。このとき、突出部56bは導入孔51内に多少没入するように退避するが、圧縮バネ57により先端側方向に押されているので、圧縮バネ57の付勢力に応じた力でフィルム62等を突き破ることができる。
【0059】
(7)供給部42aに内蔵された弁機構64を構成する弁体65を付勢するコイルバネ66の付勢力よりも、供給針23内において弁体56を付勢する圧縮バネ57の付勢力を弱く設定した。これにより、カートリッジ装填時に弁体56を開弁位置に確実に配置して、導入孔51を確実に開くことができる。
【0060】
(8)弁体56の外周面上に放射状に延出する複数のガイド部56cを軸線方向に沿って延びるように設けた。よって、導入孔51から流入したインクを弁体56の下流側(ホルダ本体側)へ送るインク流路を流路52内に確保できる。また、複数のガイド部56cが流路52の内周面に摺接することにより、弁体56を流路52内においてその軸線が供給針23の軸線に一致する状態に位置決めしたまま軸線方向に移動させることができる。これにより、弁体56の移動時などにおいて比較的細い軸状の突出部56bが導入孔51の内周面に衝突するなどの事態を回避でき、突出部56bの破損などを招きにくくすることができる。
【0061】
(9)弁体56を供給針23の軸方向に移動可能に設けたので、供給部42aに供給針23が差し込まれるときに供給部42aから受ける力の方向にそのまま弁体56が移動できる。よって、供給部42aから受けた力と弁体の移動方向が異なるときに必要となる力の方向を変換する変換手段が不要になる。
【0062】
(10)導出針24においても供給針23と同様の針構造を採用したので、導出針24からの液漏れを抑制できるうえ、吸収材や連動手段を不要にできることから、ホルダ20の小型化を一層図り易くなる。
【0063】
なお、発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されず、以下の構成も採用できる。
(変形例1)前記実施形態では、被押圧部としての突出部が導入孔から突出する構造としたが、被押圧部が導入孔(針孔)から突出する構成に限定されない。例えば図7に示す供給針構造を採用することができる。同図では、供給針23の外周面(側壁面)に導入孔71が設けられ、被押圧部としての突出部72bは供給針23の先端部から突出している。弁体72は、供給針23の流路52内に軸線方向に移動可能に設けられるとともに、圧縮バネ57により先端側へ付勢された状態で収容されている。弁体72には基端面で開口するとともに軸線に沿って先端側へ延び先端部外周面上に開口する孔部73aを有する流路73が形成されている。供給針23の外周面上に形成された導入孔71は、弁体72が同図に示す閉弁位置に配置された状態では孔部73aと連通しない。この閉弁位置の状態では弁体72の先端部に形成された軸状の突出部72bが、供給針23の先端部に形成された孔部74から所定長さだけ突出した状態にある。弁体72は、図7に示す閉弁位置の状態から、突出部72bがカートリッジ側の弁体65(図6参照)に押圧されると、突出部72bを供給針23内に没入させる方向(図7における右方向)に移動(退避)して、孔部73aと導入孔71とが連通する閉弁位置に配置される構成となっている。弁体72において突出部72bより基端側の軸部72aの外周面上にはシールリング75が嵌着されており、弁体72が閉弁位置と開弁位置との間を移動する過程において、供給針23の先端部の孔部74からのインクの漏出および流入は阻止される構成となっている。この構成のように、導入孔71以外の孔部74から被押圧部としての突出部72bが突出する構成においても、カートリッジ非装填時に振動や落下による衝撃を受けた際に供給針23からのインク漏出を防止できるうえ、ホルダ20(装填装置)の小型化を図りやすい。
【0064】
(変形例2)前記実施形態では、被押圧部としての突出部56bが供給針23の先端部から突出する構成としたが、これに限定されない。例えば図8に示すように、被押圧部としての突出部82bが供給針23の外周面(側壁面)上に形成された導入孔81から突出する供給針構造を採用することができる。同図において、供給針23の中空路83内に収容された有底円筒状の支持部材84にはその先端部外周面上に凹部84aが形成され、この凹部84aには被押圧部としての被押圧部材82が供給針23の径方向に移動可能、かつ圧縮バネ85の弾性力により供給針23の径方向外側へ付勢された状態で収容されている。被押圧部材82の基部82aにおいて突出部82bが突設された面上には突出部82bを囲むように環状のシール部材86が固着されており、シール部材86が針本体20cの内壁面において導入孔81の開口周囲の面と密接する同図の状態(閉弁状態)では、導入孔81はインク漏出不能な状態に閉弁されている。突出部82bにはインクカートリッジ30側の供給部42aの内壁部が当接する部位に斜面82cが形成され、カートリッジ装填過程に前記内壁部が斜面82cに当たることにより、被押圧部材82は導入孔81に没入する方向(供給針23の径方向内側)へ押圧される。突出部82bが導入孔81内に没入する方向に移動すると、シール部材86が針本体20cの内壁面から離間することで開弁し、導入孔81はインク流入が可能な状態に開く。導入孔81から流入したインクは、支持部材84の外周面上に設けられた図示しない溝部および支持部材84の軸線に沿って形成された流路84bを通じて本体20a側の流路55へ供給される。このような突出部82bが供給針23の外周面から突出する構成であっても、カートリッジ非装填時に振動や落下による衝撃を受けた際に、供給針23からのインク漏出を防止できるうえ、ホルダ20(装填装置)の小型化を図りやすい。
【0065】
(変形例3)前記実施形態では、被押圧部としての突出部56bを供給針23から突出させたが、被押圧部が供給針から突出していることに限定されない。例えば図9に示す供給針構造を採用することができる。同図に示す供給針構造は、供給針23を構成するとともにホルダ部材27の連結面20bに突設された円筒状の基部91と、該基部91の先端部に軸線方向にスライド可能に設けられたキャップ92と、前記基部91の内部中央部に螺着された軸部93とを備える。キャップ92は、基部91の外周面上に形成された案内溝91aに沿って軸方向にスライド可能に設けられている。軸部93は先端部が膨出する頭部93aを有し、キャップ92の先端部に形成された孔部から、キャップ92内に挿通されてその基端部が例えばネジ部を、基部91の中央部に形成された例えばネジ穴に螺着することにより固定されている。キャップ92はその内側に配置された圧縮バネ94により軸方向先端側に付勢されており、キャップ92の先端部の孔部の内周面のうち先端側ほど拡開するテーパ面上に固着されたリング状のシール部材95が、軸部93の頭部93aにおいて前記シール部材95と相対する円環状の面に密接している。また、基部91において軸部93の基端部の固定位置周囲には周方向に等間隔位置に複数の流路97が形成され、キャップ92の内部は該複数の流路97を通じて基部91の基部側に形成された流路98と連通されている。一方、インクカートリッジ30側の弁体65の前面中央には同図に示すように凹部65aが凹設され、カートリッジ装填時には、凹部65a内に軸部93の頭部93aが位置することで、弁体65のうち凹部65aを囲む環状の突起部65bがキャップ92に当接する構成となっている。
【0066】
弁体65がキャップ92を押圧することで、キャップ92が基部91に対して軸線方向基端側へスライドし、これによりキャップ92の先端部に固着されたシール部材95が軸部93の頭部93aから離間して隙間ができることから、この隙間が導入孔96として開く。よって、カートリッジ非装填時にはインクが漏出せず、しかもホルダ20(装填装置)の小型化を図ることができる。また、キャップ92が弁体および被押圧部を兼ねているので、供給針23から突出部を無くせられ、例えば供給針23の針形状を確保し易くなる。このため、供給針23を供給部42aに円滑に差し込むことが可能になる。また、閉弁箇所の先端側にはインクが全く溜まらないので、導入孔96の目詰まりが、前記実施形態に比べ起きにくくなっている。なお、導入孔96の内周面のうち弁体を構成するシール部材95の外側面が一部の面、頭部93aにおけるシール部材と相対する環状の面が他の面となっており、弁体の開弁時には一部の面が他の面に対して相対移動する構成となっている。
【0067】
(変形例4)前記実施形態では、前記実施形態及び図7〜図9に示した各変形例では、付勢手段としてのバネを設けたが、バネは廃止することもできる。例えば、弁体をゴムやエラストマ等の弾性体で構成し、自身の弾性力により閉弁方向へ付勢する構成を採用することもできる。この場合、弾性体で構成される弁体がシール機能を果たす場合は、シール部材を廃止することもできる。
【0068】
(変形例5)図7に示す変形例において、シールリング75に替え、図4に示したようなシール部材58を採用し、孔部74を針孔としての導入孔とする構成を採用できる。この場合、導入孔71と孔部74との二箇所を通じてインクが供給されるので、インクを円滑に供給することができる。
【0069】
(変形例6)前記実施形態では、インクカートリッジがプリンタの本体に設けられた収容部に装填される、いわゆるオフキャリッジタイプに適用したが、インクカートリッジがキャリッジの上部に装填される、いわゆるオンキャリッジタイプに適用することもできる。つまり、キャリッジの上部には供給針を有する装填装置が設けられ、インクカートリッジはその供給部に供給針が差し込まれる状態に装填される。この供給針は、前記実施形態における図4等に示す供給針構造、あるいは図7〜図9のいずれかに示された供給針構造を有している。
【0070】
(変形例7)前記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体を含む)を噴射する液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に設けられる装填装置における供給針や導出針などの針部の構造に、本発明を適用することができる。
【0071】
以下、前記実施形態および各変形例から把握される技術的思想を記載する。
(1)請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の装填装置における針構造において、記被押圧部は、前記針部の先端部に位置することを特徴とする。これによれば、針部の先端部に位置する被押圧部は連結部に確実に差し込まれ該連結部に押圧される。例えば針部が連結部に差し込まれるときの差込みストロークが比較的短い場合でも、弁体を開弁位置に配置して針孔を確実に開くことが可能となる。
【0072】
(2)請求項1乃至請求項10及び前記技術的思想(1)のいずれか一項において、前記被押圧部は前記弁体の一部であることを特徴とする装填装置における針構造。
(3)請求項2乃至請求項10、前記技術的思想(1)、(2)のいずれか一項に記載の針構造において、前記弁体は前記針部の内壁面上における前記針孔の開口周囲の面とシール部材を介して当接することで閉弁することを特徴とする。なお、針孔の径はその軸線方向に連続的又は段階的に変化してしてもよい。これによれば、弁体が閉じた閉弁箇所より先端側に溜まる液体の量が針孔分の少量に抑えられるので、仮に加わった衝撃により閉弁箇所より先端側に溜まった液体が漏れても、その液漏れ量を極少量に抑えることができる。また、針孔の開口周囲の面は弁座として利用できるので、シール部材を介在させて弁体を当接させれば開閉弁を構成できる。
【0073】
(4)請求項12において、前記装填装置は、前記液体噴射手段と流路を介して接続された状態で液体噴射装置の本体内に組み付けられており、本体に設けられた収容口に液体収容体が装填されることにより該液体収容体と連結可能に配設されているオフキャリッジタイプの構成であることを特徴とする液体噴射装置。
【0074】
(5)請求項11に記載の前記装填装置と、前記装填装置の前記針部が差し込まれる前記連結部を有する液体収容体とを備えたことを特徴とする液体供給装置。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】一実施形態におけるプリンタの概略構成を示す斜視図。
【図2】インクカートリッジ及びカートリッジホルダを示す斜視図。
【図3】インクカートリッジの一部破断斜視図。
【図4】供給針構造を示す側断面図。
【図5】(a)供給針の図4におけるA−A線断面図、(b)閉弁状態、(c)開弁状態をそれぞれ示す供給針の先端部分の側断面図。
【図6】カートリッジ装填時における供給針の動作を説明する側断面図。
【図7】変形例を示す供給針の部分側断面図。
【図8】図7と異なる他の変形例を示す供給針の部分側断面図。
【図9】図8と異なる他の変形例を示す供給針の部分側断面図。
【符号の説明】
【0076】
10…液体噴射装置としてのプリンタ、12…移動体としてのキャリッジ、13…駆動手段としてのキャリッジモータ、16…ポンプ、14…液体噴射手段(液体噴射ヘッド)としての記録ヘッド、15…収容部、18…供給流路、20…装填装置としてのカートリッジホルダ、20a…本体(カートリッジホルダ)、20c…針部としての針本体、21,22…位置決め突起、23…針構造を有する供給針、23a…錘状の先端部としてのテーパ部、24…針構造を有する導出針、27…ホルダ部材、28…流路形成部材、30…液体供給装置を構成するとともに液体収容体としてのインクカートリッジ、31…収容ケース、38…液体パックとしてのインクパック、41…袋部、42…連結部としてのインク導出部材、42a…連結部を構成する供給部、51,71,81,96…針孔としての導入孔、52…針部内の流路としての流路、53…弁機構、55…本体側の流路、56…針部側の弁体、56b…被押圧部としての突出部、56c…ガイド部、57,85、94…針部側弁体用の付勢手段としての圧縮バネ、58,86,95…シール部材、61…パッキン、63…供給部の流路としての流路、64…弁機構、65…弁体(液体収容体側(連結部側))、65a…凹部、66…液体収容体側(連結部側)弁体用の付勢手段としてのコイルバネ、72…弁体、72b…被押圧部としての突出部、73…流路、74…孔部、82…弁体としての被押圧部材、82b…被押圧部としての突出部、82c…斜面、83…中空路、84b…流路、91…基部、92…弁体及び被押圧部、キャップ部としてのキャップ、93…軸部、93a…頭部、97,98…流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置に挿抜可能に装填される液体収容体の連結部に差し込み可能に突設された針部を有するとともに該針部が前記連結部に差し込まれた状態で前記連結部内の流路と前記針部内の流路とを連通可能な針孔が前記針部に設けられた装填装置における針構造であって、
前記液体収容体の挿抜動作に連動して前記針部内の流路を開閉する弁機構を備え、
前記弁機構は、前記針部の外周面上に露出するとともに前記連結部に前記針部が差し込まれるときに該連結部に押圧される被押圧部と、
前記針部内の流路を閉じる方向に付勢されるとともに前記連結部に前記針部が差し込まれるときに前記被押圧部が前記連結部に押圧されて変位することにより該被押圧部と共に前記付勢に抗して変位して前記針部の流路を開く弁体と
を備えたことを特徴とする装填装置における針構造。
【請求項2】
前記弁機構は、前記針部内の前記流路を前記針孔との間の位置で開閉することを特徴とする請求項1に記載の装填装置における針構造。
【請求項3】
前記弁体の一部が前記針孔の内周面の一部の面を形成しており、該弁体が前記連結部に押圧される方向に変位することにより前記針孔の内周面のうち前記一部の面が他の面に対して相対移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装填装置における針構造。
【請求項4】
前記針孔を閉じる方向に前記弁体を付勢する付勢手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の装填装置における針構造。
【請求項5】
前記液体収容体の前記連結部は、前記針部が差し込まれたときに該針部に押されることで開弁する弁体を備えており、前記付勢手段の付勢力は前記連結部側の前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段の付勢力より小さく設定されていることを特徴とする請求項4に記載の装填装置における針構造。
【請求項6】
前記弁体は、前記針部内に組み込まれるとともに少なくとも閉弁状態にあるときに前記針孔から突出する突出部を前記被押圧部として有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の装填装置における針構造。
【請求項7】
前記弁体は、前記針部内に組み込まれるとともに少なくとも閉弁状態にあるときに前記針部の先端部の錐状部分に形成された孔部から突出する突出部を前記被押圧部として有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の装填装置における針構造。
【請求項8】
前記孔部は前記針孔であることを特徴とする請求項7に記載の装填装置における針構造。
【請求項9】
前記弁体は針部の軸方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の装填装置における針構造。
【請求項10】
前記針部は前記装填装置の本体から突設された基部と、該基部に対し同軸上にスライド可能に設けられたキャップ部とを有し、該キャップ部は前記弁体を兼ねるとともに前記針部の軸方向先端側へ付勢されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の装填装置における針構造。
【請求項11】
液体噴射手段を有する液体噴射装置に取り付けられて使用され、前記液体噴射手段に液体を供給する液体収容体が前記液体噴射装置に挿抜可能に装填される装填装置であって、
前記液体収容体が装填された際に該液体収容体の連結部に差し込まれるとともに該連結部が差し込まれた状態で該連結部内の流路と内部の流路とを連通させる針孔を有する針部と、該針部が突設されるとともに前記針部内の前記流路と連通する流路が形成された本体とを備え、
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の針構造を備えたことを特徴とする装填装置。
【請求項12】
請求項11に記載の前記装填装置と、
前記装填装置の前記針部が液体収容体の連結部に差し込まれた装填状態で、前記液体収容体から前記装填装置を介して供給された液体を噴射する液体噴射手段と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−313785(P2007−313785A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146897(P2006−146897)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】