説明

装着式動作補助装置

【課題】本発明は駆動部の駆動力を動作補助手袋に効率良く伝達することを課題とする。
【解決手段】装着式動作補助装置10は、装着者の指に装着される動作補助手袋20からなり、通常の動作補助手袋と同様に装着される。動作補助手袋20には、被駆動部30と、駆動部40と、線状部材50と、生体信号検出部60と、制御ユニット70とが設けられている。動作補助手袋20は、装着者の手に密着するように手のサイズに合わせた立体的な形状に形成されている。動作補助手袋20の手甲側には、複数の線状部材50が各指の延在方向に沿うように配されている。複数の線状部材50が、伸展方向または屈曲方向に動作すると共に、動作補助手袋20の各指も線状部材50と一体に伸展方向または屈曲方向に動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装着式動作補助装置に係り、特に指関節の動きを補助または代行するように構成された装着式動作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、病気または怪我などにより脳からの神経伝達信号が伝わりにくくなったり、あるいは筋力の低下あるいは関節に設けられた腱や靭帯の損傷などにより手の指関節が本人の思い通りに動かなくなることがある。このような指関節の動作を補助する装着式動作補助装置としては、各指に装着される可動部と、各可動部を駆動するアクチュエータとを有する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−345861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の装着式動作補助装置では、人間の手と同様に各指の関節に対応する回動機構が設けられ、各アクチュエータの駆動力を機械的に各可動部に伝達する構成であるので、部品点数が多く、複雑な構成であるので、かなりの重量を有し、装着者の負担が大きいという問題がある。
【0005】
また、上記従来の装着式動作補助装置では、アクチュエータを小型化して装置の重量を軽量化することが考えられるが、多数の部品からなる可動部の重量に対するトルクが不足するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、駆動部の駆動力を動作補助手袋に効率良く伝達する装着式動作補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、装着者の指が挿入される指挿入部を有する動作補助手袋と、
前記動作補助手袋の甲側に配置され、前記指挿入部を駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動力を前記指挿入部に伝達するように前記指挿入部の延在方向に沿うように配された線状部材と、
前記装着者の指を動作させるための生体信号を検出する生体信号検出部と、
該生体信号検出部により生成された生体信号に基づいて前記駆動部へ駆動制御信号を出力する制御部と、
を備え、
前記駆動部は、前記制御部からの駆動制御信号に基づいて前記線状部材を前記指挿入部の伸展方向または屈曲方向に動作させることを特徴とする。
(2)本発明は、(1)に記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の前記指挿入部の側部または甲側に沿うように固定され、前記指挿入部に駆動力を伝達することを特徴とする。
(3)本発明は、(1)または(2)に記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の前記指挿入部に沿うように複数本ずつ配され、
前記複数の線状部材の夫々が伸縮して各指の関節の動作方向に駆動力を伝達することを特徴とする。
(4)本発明は、(1)乃至(3)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、可撓性を有する筒状の筒状体と、該筒状体の中空部に挿通されたワイヤとを有し、
前記ワイヤの一端が前記駆動部に連結され、前記ワイヤの他端を前記指挿入部に連結するように構成されたことを特徴とする。
(5)本発明は、(1)乃至(3)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、可撓性を有する筒状体と、該筒状体の中空部に充填され温度に応じて体積を変化させる流動体と、を有し、
前記筒状体に前記流動体を加熱または冷却する温度調整手段を設け、
前記温度調整手段は、前記流動体を加熱または冷却することにより前記流動体の体積を増減させて駆動力を発生させることを特徴とする。
(6)本発明は、(1)乃至(3)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、平行に配された電極層間に印加された電圧に応じて変形する駆動層を介在させてなり、
前記駆動層は、前記電極層に印加される電圧に応じて直線状態から屈曲状態に駆動する駆動力、または屈曲状態から直線状態に駆動する駆動力を発生することを特徴とする。
(7)本発明は、(1)乃至(6)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の外側に設けられたことを特徴とする。
(8)本発明は、(1)乃至(6)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の内側に埋め込まれ、且つ少なくとも指接触部分の内側には、内側カバー部材が設けられたことを特徴とする。
(9)本発明は、(1)乃至(6)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の外側補助手袋と内側補助手袋との間に埋め込まれたことを特徴とする。
(10)本発明は、(1)乃至(9)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記指挿入部を曲げた状態から真っ直ぐな状態に戻すように、または前記指挿入部を真っ直ぐな状態から曲げた状態に戻すように、前記指挿入部を付勢する付勢部材を設けたことを特徴とする。
(11)本発明は、(1)乃至(10)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記動作補助手袋は、前記指挿入部に被把持部材の存在を検出する検出手段を有することを特徴とする。
(12)本発明は、(1)乃至(11)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記動作補助手袋は、前記指挿入部の先端に装着者の指先の一部を露出させる開口を有することを特徴とする。
(13)本発明は、(1)乃至(12)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記動作補助手袋は、前記指挿入部に装着者の指関節の曲げ角度を検出する指関節角度センサを有することを特徴とする。
(14)本発明は、(1)乃至(13)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
前記装着者の指を動作させるための信号を、前記生体信号検出部により検出された生体信号から取得する生体信号処理手段と、
前記生体信号処理手段により取得された信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動部に発生させるための随意的制御信号を生成する随意的制御手段と、
前記随意的制御手段により生成された随意的制御信号に基づいて、前記生体信号の信号に応じた電流を生成し、前記駆動部に供給する駆動電流生成手段と、
を備えることを特徴とする。
(15)本発明は、(14)に記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
タスクとして分類した装着者の指の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースと、
前記指関節角度センサにより検出された指曲げ角度と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者の指のタスク及びフェーズを推定し、当該フェーズに応じた動力を前記駆動部に発生させるための自律的制御信号を生成する自律的制御手段と、
前記自律的制御信号に応じた電流を生成し、前記駆動部に供給する駆動電流生成手段と、
を備えることを特徴とする。
(16)本発明は、(15)に記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
前記生体信号検出部により検出された生体信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動部に発生させるための随意的制御信号を生成する随意的制御手段と、
タスクとして分類した装着者の指の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースと、
前記指関節角度センサにより検出された指曲げ角度と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者の手のタスク及びフェーズを推定し、当該フェーズに応じた動力を前記駆動部に発生させるための自律的制御信号を生成する自律的制御手段と、
前記随意的制御手段からの随意的制御信号および前記自律的制御手段からの自律的制御信号を合成する制御信号合成手段と、
前記制御信号合成手段により合成された総制御信号に応じた総電流を生成し、前記駆動部に供給する駆動電流生成手段と、
を備えることを特徴とする。
(17)本発明は、(15)に記載の装着式動作補助装置であって、
前記データベースは、前記随意的制御信号と前記自律的制御信号との比(ハイブリッド比)を、前記フェーズの基準パラメータと所要の対応関係となるように格納し、
前記制御信号合成手段は、前記自律的制御手段により推定されたタスク及びフェーズに応じ、前記対応関係に基づいて規定されるハイブリッド比となるように、前記随意的制御信号および前記自律的制御信号を合成することを特徴とする。
(18)本発明は、(1)、(14)乃至(17)の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
前記駆動部から付与された負荷としての駆動力に対する生体信号を前記生体信号検出部によって検出し、当該生体信号に基づいて補正値を設定するキャリブレーション手段を備えたことを特徴とする。
(19)本発明は、(18)に記載の装着式動作補助装置であって、
キャリブレーション手段は、
前記動作補助ユニットが前記装着者に装着された状態で前記駆動源からの所定の駆動力を外的負荷として付与する負荷発生手段と、
該負荷発生手段により付与された駆動力に抗して発生した生体信号を前記生体信号検出部によって検出し、当該検出信号に基づいて前記駆動電流生成手段が行う演算処理のパラメータを生成し、当該パラメータを当該装着者固有の補正値として設定する補正値設定手段と、
を備えたことを特徴とする。
(20)本発明は、(19)に記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
前記生体信号検出部により検出された前記生体信号と前記指関節角度センサにより検出された指曲げ角度との対応関係のデータが格納されたキャリブレーションデータベースを有し、
前記補正値設定手段は、前記キャリブレーションデータベースに格納された前記データに基づき前記パラメータを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御部からの駆動制御信号に基づいて線状部材を指の関節の動作方向に伸展または屈曲させることにより、装着者の指の関節を動作させるように駆動部の駆動力を伝達することができるので、軽量化を図ることができると共に、駆動部の駆動力を動作補助手袋に効率良く伝達して装着者の負担を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による装着式動作補助装置の実施例1を示す平面図である。
【図2A】実施例1の装着式動作補助装置10を側方からみた外観図である。
【図2B】実施例1の装着式動作補助装置10を用いて物体を把持した動作状態を示す外観図である。
【図3A】線状部材50及び駆動部40の構成を模式的に示す図である。
【図3B】図3A中A−A線に沿う縦断面図である。
【図3C】線状部材50が屈曲動作した状態を示す図である。
【図4】制御ユニット70を含む制御系及び充電システムの概略構成を模式的に示す図である。
【図5】実施例1の制御部100Aのシステム系統図である。
【図6】生体電位信号から各制御信号を生成する過程を示す図である。
【図7】制御部100Aが実行する制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】実施例2の制御部100Bの信号処理を模式的に示すシステム系統図である。
【図9】各指の基本動作として、指を伸ばす(タスクA)、物を把持(タスクB)、指を曲げる(タスクC)、および握手(タスクD)を模式的に例示する図である。
【図10A】データベース300に格納されている各タスク及び各フェーズを模式的に示す図である。
【図10B】物理量を基準パラメータと比較することにより装着者が行おうとしているタスク、およびその中のフェーズを推定するプロセスを模式的に示す図である。
【図11】実施例2の制御部100Bが実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図12】実施例3の制御部100Cの制御系の信号処理を模式的に示すシステム系統図である。
【図13】実施例3の制御部100Cが実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図14】実施例4の制御部100Dの制御系の信号処理を模式的に示すシステム系統図である。
【図15】実施例4の制御部100Dが実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図16】実施例5の制御部100Eの制御系の信号処理を模式的に示すシステム系統図である。
【図17】実施例5の制御部100Eが実行する制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図18】実施例6の制御部100Fの制御系の信号処理を模式的に示すシステム系統図である。
【図19】実施例6の制御部100Fが実行する制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図20】初期設定を行う初回キャリブレーションの制御手順を示すフローチャートである。
【図21】ワンモーション(1回の動作)による再設定キャリブレーションの制御手順を示すフローチャートである。
【図22】再設定モード2のキャリブレーション制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図23】装着式動作補助装置10の変形例1を示す斜視図である。
【図24A】変形例1の装着式動作補助装置10Aを側方からみた外観図である。
【図24B】変形例1の装着式動作補助装置10Aを用いて物体を把持した動作状態を示す外観図である。
【図25A】アクチュエータ510の内部構造を示す横断面図である。
【図25B】図25A中D−D線に沿う縦断面図である。
【図26】変形例2の装着式動作補助装置10Bを示す斜視図である。
【図27A】変形例2の装着式動作補助装置10Bを側方からみた外観図である。
【図27B】変形例2の装着式動作補助装置10Bを用いて物体を把持した動作状態を示す外観図である。
【図28】変形例3の装着式動作補助装置10Cを示す平面図である。
【図29A】変形例3の装着式動作補助装置10Cを側方からみた外観図である。
【図29B】変形例3の装着式動作補助装置10Cを用いて物体を把持した動作状態を示す外観図である。
【図30】変形例4の装着式動作補助装置10Dを示す斜視図である。
【図31A】変形例4の装着式動作補助装置10Dの指挿入部の一部を断面にして示す図である。
【図31B】変形例4の装着式動作補助装置10Dの指挿入部が曲げられた動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明による装着式動作補助装置の実施例1を示す平面図である。図2Aは実施例1の装着式動作補助装置10を側方からみた外観図である。図2Bは実施例1の装着式動作補助装置10を用いて物体Xを把持した動作状態を示す外観図である。図1及び図2Aに示されるように、装着式動作補助装置10は、装着者の各指が挿入される指挿入部21を有する動作補助手袋20からなり、通常の手袋と同様に装着される。動作補助手袋20には、被駆動部30と、駆動部40(40a〜40j)と、線状部材50(50a〜50j)と、生体信号検出部60と、制御ユニット70とが設けられている。
【0012】
装着式動作補助装置10は、例えば、操作者が手を動作させるための神経系統が麻痺している場合でも、生体信号検出部60によって検出された生体信号に応じて動作補助手袋20の各指挿入部21が駆動されるため、制御ユニット70からの制御信号により各指が伸展方向または屈曲方向に動作するように補助することができる。また、装着式動作補助装置10は、手の指の動作訓練を行なうリハビリ(機能回復訓練)にも用いることができる。
【0013】
動作補助手袋20は、装着者の手に密着するように手のサイズに合わせた立体的な形状に形成されている。また、動作補助手袋20は、外側動作補助手袋と内側動作補助手袋とを一体に縫い込んだ2重構造になっており、例えば、外側動作補助手袋が牛革あるいは合成皮革などの柔軟性と耐久性を有する材質によって形成され、内側動作補助手袋が手の表面(皮膚)に密着するように薄いゴム材により形成されている。
【0014】
また、動作補助手袋20の各指挿入部21の指先部分には、装着者の指先を露出させる開口22が設けられている。図2Aに示されるように、装着者は、指先の皮膚を把持する物体に直接触れさせることができるので、指先の感触によって把持する物体Xを認識することが可能になる。
【0015】
動作補助手袋20の手甲側には、複数の線状部材50(50a〜50j)が各指挿入部21の延在方向に沿うように配されている。複数の線状部材50は、一端が動作補助手袋20の各指挿入部21の先端に設けられた被駆動部30に連結されている。複数の線状部材50は、駆動力を伝達する部材であるが、金属部材などに比べて大幅に軽量化されており、装着者の負担も軽減することができる。
【0016】
被駆動部30は、リング状に形成されており、各指挿入部21の先端の外周に密着するように開口22の外側に配されている。また、複数の線状部材50は、指関節に巻き付けられた締結リング32、34、36によって動作補助手袋20の各指挿入部21の外側に締結される。締結リング32、34、36には、各指関節の角度を検出する角度センサ96が保持されている。角度センサ96は、各指関節の角度が変化した場合に、角度変化に応じた検出信号を制御ユニット70に出力する。
【0017】
さらに、複数の線状部材50は、動作補助手袋20の各指挿入部21の外側または外側動作補助手袋の内側に縫合される。そのため、複数の線状部材50が、伸展方向または屈曲方向に動作すると共に、動作補助手袋20の各指も線状部材50と一体に伸展方向または屈曲方向に動作する。
【0018】
図2A及び図2Bに示されるように、各指挿入部21の各指関節の外側に位置する部分には、付勢部材90が設けられている。付勢部材90としては、例えば、コイルバネまたはゴム材などの弾性部材からなり、一端が指関節に対して手首側に連結され、他端が指関節に対して指先側に連結されている。そのため、動作補助手袋20の各指挿入部21の指関節を覆う表面には、指挿入部21を伸展させようとする付勢部材90の付勢力が付与されており、付勢力が各指関節の伸展動作(図2Bに示す把持状態から図2Aに示す開放状態への動作)の補助力として作用する。
【0019】
尚、付勢部材90は、各指関節を曲げる方向に付勢するように取り付けても良い。このように付勢部材90を取り付ける場合は、付勢部材90が手の平側に配されることになるので、例えば、手の平側に接触した物体の感触が伝わるようにゴム材を扁平状に加工した弾性部材を用いることが望ましい。
【0020】
また、付勢部材90の連結部分には、応力センサ130が設けられている。応力センサ130は、例えば、歪みゲージ等からなり、付勢部材90が指関節の動作に応じて伸縮する際の応力変化に応じた検出信号を制御ユニット70に出力する。
【0021】
駆動部40は、動作補助手袋20の甲側に配置されており、線状部材50を指の関節の動作方向に伸展動作または屈曲動作させる駆動手段であり、例えば、線状部材50の内部に挿通されたワイヤを伸展方向または屈曲方向に移動させる駆動機構40a〜40jを有する。本実施例では、各指挿入部21の甲側または側部の両側に線状部材50a〜50jが2本ずつ配されており、且つ各指挿入部21毎に駆動機構40a〜40jが一対ずつ並列に設けられている。
【0022】
生体信号検出部60は、複数の生体電位センサ61〜65を有し、動作補助手袋20の手首部24の内側に配されている。生体電位センサ61〜65は、夫々手の各指を動作させる生体信号(例えば、筋電位信号や神経伝達信号、脳波など)を検出する電極からなる。また、動作補助手袋20の手首部24の両側には、外側から巻き付けて装着者の手に密着させるベルト80、82が設けられている。ベルト80、82には、重なり部分に互いに係止するための面ファスナ84が設けられている。従って、ベルト80、82を動作補助手袋20の手首部24の外側で重ね合わす部分の長さを調整した後、ベルト80、82の面ファスナ84を対向させて生体電位センサ61〜65を装着者の皮膚に密着させることができる。生体電位センサ61〜65は、装着者が指を動作させようとすることで生体信号を検出し、生体信号に応じた検出信号を出力する。
【0023】
制御ユニット70は、生体信号検出部60の生体電位センサ61〜65により検出された生体信号に基づいて演算処理(詳細は後述する)を行なって駆動機構40a〜40jへ駆動制御信号を出力する。また、制御ユニット70は、後述するように演算処理を行なう制御部と、メモリと、充電式バッテリと有する。
【0024】
ここで、線状部材50及び駆動部40の構成について説明する。図3Aは線状部材50及び駆動部40の構成を模式的に示す図である。図3Aに示されるように、線状部材50は、筒状体51と、ワイヤ52、53と、キャップ54と有する。筒状体51は、可撓性を有する樹脂材により筒状に成形されている。また、筒状体51は、内側にワイヤ52、53が挿通される中空部55が形成され、外側には伸展動作または屈曲動作に応じて伸縮する凹部と凸部とが交互に連続する蛇腹状部56が形成されている。
【0025】
さらに、筒状体51の先端で中空部55に連通された開口は、キャップ54による閉塞されている。キャップ54は、金属材により形成されており、壁部54aには各ワイヤ52、53の一端が挿通され、且つ溶着により一体的に結合されている。また、キャップ54の周縁部54bは、筒状体51の端部と接着または溶着されて一体化されている。
【0026】
図3Bは図3A中A−A線に沿う縦断面図である。図3Bに示されるように、筒状体51の断面形状は、四角形からなる矩形であり、中空部55に横架された複数の横架部材55aにより、上部空間57と、下部空間58と、中部空間59とに仕切られている。
【0027】
上部空間57には、2本のワイヤ52が装架されており、下部空間58には、2本のワイヤ53が装架されている。本実施例では、合計4本のワイヤ52、53が筒状体51に上下対称となるように配置されている。また、筒状体51の外観形状が四角形であるので、下面を動作補助手袋20の外面に当接させることにより、動作方向に合わせて位置決めすることが可能になる。
【0028】
図3Aに示されるように、各ワイヤ52、53の他端は、駆動部40の回動部材42に連結されている。本実施例の回動部材42は、楕円形状に形成されており、長径部の周縁部の最も離間した位置に各ワイヤ52、53の他端が連結されている。尚、2本ずつ配された各ワイヤ52、53は、一つの回動部材42の両面に連結されているので、回動部材42の回動角度に応じて同時に動作する。さらに、回動部材42の中心部を貫通する軸は、電動モータ44の出力軸に連結されている。そのため、駆動部40は、回動部材42の回動方向を切替えるように回動させることで、ワイヤ52とワイヤ53とを逆方向に移動させることで駆動力を動作補助手袋20の各指挿入部21に効率良く伝達することができる。ワイヤ52、53のうち引張り力が作用する方が指挿入部21を動作させる駆動力を伝達する伝達部材として動作する。尚、モータ44の出力軸の他端には、モータトルクを検出するトルクセンサ94が設けられている。
【0029】
例えば、回動部材42が時計方向(B方向)に回動した場合は、上側のワイヤ52が引張り方向に動作し、下側のワイヤ53が戻し方向に動作する。これにより、線状部材50は、筒状体51が直線状に戻るように動作する。そのため、線状部材50の伸展動作は、動作補助手袋20の各指挿入部21に伝達され、装着者の各指を開いた状態(図1及び図2A参照)に動作させることができる。
【0030】
また、図3A中、一点鎖線で示すように、回動部材42が反時計方向(C方向)に回動した場合は、上側のワイヤ52が戻り方向に動作し、下側のワイヤ53が引張り方向に動作する。これにより、図3Cに示されるように、線状部材50の筒状体51は、屈曲した状態に動作する。そのため、線状部材50の屈曲動作は、動作補助手袋20の各指挿入部21に伝達され、装着者の各指を把持状態(図2B参照)に動作させることができる。
【0031】
本実施例においては、上記ワイヤ52、53を伸展方向または屈曲方向に駆動する際のストローク(動作距離)は、楕円形に形成された回動部材42の長径寸法によって決まるので、回動部材42の長径寸法を大きくすることにより、線状部材50の屈曲動作から伸展動作までのストロークを大きく設定することも可能である。また、回動部材42の代わりにギヤ機構及びワイヤ52、53を巻き取るプーリ等の駆動機構を設けて、プーリの回転量を調整することにより線状部材50の動作ストロークを適宜調整することも可能である。
【0032】
このように、装着式動作補助装置10は、制御ユニット70からの駆動制御信号に基づいて線状部材50を指挿入部21の関節の動作方向に伸展または屈曲させることにより、装着者の指の関節を動作させるように駆動部40の駆動力を伝達することができるので、軽量化を図ることができると共に、装着者の負担を軽減することが可能になる。
【0033】
図4は制御ユニット70を含む制御系及び充電システムの概略構成を模式的に示す図である。図4に示されるように、制御ユニット70は、制御部100と、メモリ102と、表示器104と、充電式バッテリ124とを有する。
【0034】
制御部100には、生体電位センサ61〜65により検出された生体信号、トルクセンサ94により検出された電動モータ44のトルク検出信号、及び角度センサ96により検出された各指関節の角度検出信号、及び応力センサ130により検出された応力検出信号が入力される。制御部100は、メモリ102に格納された各制御プログラム及び各パラメータを読み込むと共に、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130からの検出信号に基づいて演算処理を行なって動作補助手袋20の動作状態を表示器104に表示する。充電式バッテリ124は、充電ユニット122の2次コイル126に接続されており、充電器140により定期的に充電される。
【0035】
充電器140は、2次コイル126に電磁誘導電流を発生させる1次コイル142を有する。そのため、1次コイル142を動作補助手袋20に近接させることにより、電磁誘導により充電ユニット122の2次コイル126に2次電流を発生させる。これにより、動作補助手袋20の充電式バッテリ124は、装着状態のまま充電することが可能になっており、装着者が使用していても充電可能である。
【0036】
図5は実施例1の制御部100のシステム系統図である。図5に示されるように、制御部100Aは、図4に示す制御部100の一例であり、メモリ102から制御プログラムを読み込むことにより後述する各制御処理を実行するコンピュータからなる。
【0037】
本実施例において、制御部100Aは、生体電位センサ61〜65により検出された生体電位から指令信号を取得する生体電位処理手段(生体信号処理手段)200と、神経伝達信号bおよび筋電位信号cに基づいて電動モータ44の駆動を制御する随意的制御手段212と、随意的制御手段212から出力された制御信号に応じた駆動電流を電動モータ44に供給する駆動電流生成手段220とを有する。
【0038】
随意的制御手段212は、後述するように、装着者の意思により各指を動作させる際に生じる生体電位信号aから神経伝達信号bおよび筋電位信号cを生成する生体電位処理手段200からの指令信号に基づいて制御信号を駆動電流生成手段220に出力する。駆動電流生成手段220は、随意的制御手段212からの制御信号に応じた駆動電流を生成して電動モータ44に出力する。
【0039】
生体電位センサ61〜65は、上腕の内部で発生する生体電位信号aを検出して生体電位処理手段200に入力する。生体電位処理手段200は、生体電位信号aから神経伝達信号bおよび筋電位信号cを抽出して随意的制御手段212に入力する。随意的制御手段212は、装着者の意思で動作補助手袋20が装着された手の各指を動作させる際に生じる生体電位信号aから得られた神経伝達信号bおよび筋電位信号cに基づいて随意的制御信号d1を生成する。
【0040】
すなわち、随意的制御手段212は、生体電位信号aに含まれる神経伝達信号bおよび筋電位信号cを用い、装着者の意思に従った動力を電動モータ44に発生させるための随意的制御信号d1を生成する。随意的制御手段212での制御則としては、比例制御を適用することができる。比例制御により随意的制御信号d1と駆動電流eとが比例関係になる。さらに、電動モータ44の特性により駆動電流値と電動モータ44の発生トルク値とが比例関係になる。尚、随意的制御手段212での制御則としては、比例制御と微分制御および/または積分制御とを組み合わせたものを適用しても良い。
【0041】
例えば、装着者が関節20を動作させようとすると、生体電位センサ61〜65は指を動作させる生体電位を直接的に検出し、検出された生体電位に応じた生体電位aを生体電位処理手段200に出力する。このように、生体電位センサ61〜65は、生体電位信号aを動作補助手袋22の手首部24がベルト80、82の締付けにより密着する装着者の手首から直接検出するため、検出精度が高く、微弱な信号でも正確に検出することが可能である。
【0042】
生体電位処理手段200から神経伝達信号bと筋電位信号cとからなる指令信号を入力された随意的制御手段212は、神経伝達信号bと筋電位信号cから制御信号d1を生成して駆動電流生成手段220に出力する。
【0043】
駆動電流生成手段220は、随意的制御手段212からの制御信号dに基づいてモータ駆動電流eを生成して電動モータ44に供給する。これにより、電動モータ44は、モータ駆動電流eの供給により回動部材42を伸展方向または屈曲方向に回動させる。そのため、動作補助手袋20の線状部材50が伸展動作または屈曲動作するように筒状体51の中空部55に装架されたワイヤ52、53を移動させる。
【0044】
図6は生体電位信号から各制御信号を生成する過程を示す図である。図6に示されるように、生体電位センサ61〜65により検出された生体電位信号aは、神経伝達信号bおよび筋電位信号cを有する。神経伝達信号bは意思伝達信号とも言えるもので、筋電位信号の先頭領域と重なっている。神経伝達信号bの周波数は、一般に筋電位信号cの周波数より高いので、異なるバンドパスフィルタを用いることにより分離することができる。
【0045】
神経伝達信号bは、生体電位信号aを増幅器202により増幅した後、例えば33Hz〜数KHzの高帯域バンドパスフィルタ204により取り出すことができる。また、筋電位信号cは、生体電位信号aを増幅器202により増幅した後、例えば33Hz〜500Hzの中帯域バンドパスフィルタ206により取り出すことができる。尚、図5において、各フィルタ204、206は並列に接続されているがこれに限定されず、両フィルタ204、206が直列に接続されていても良い。
【0046】
また、神経伝達信号bは、筋電位信号cの先頭領域のみならず、先頭領域以降についても重なる場合が有り得る。この場合には、神経伝達信号bの先頭領域のみを後述するパルス電流の生成に利用するようにすれば良い。
【0047】
神経伝達信号bおよび筋電位信号cには、スムージング処理(ノイズを除去する平滑処理)を行う。各電流は、生体信号処理手段200からの信号をスムージングして得た制御信号を入力とし、駆動電流生成手段220によって生成される。
【0048】
神経伝達信号bは、時間軸上の幅が狭いので、スムージング処理だけでもパルス状となり、当該神経伝達信号bに基づいて駆動電流生成手段220によって生成される電流もパルス状となる。尚、神経伝達信号bに基づいて得られる電流(パルス電流)e1は、矩形波状となる。一方、筋電位信号cは、時間軸上の幅が広いので、スムージング処理することにより実質的に筋電位に比例する山状となり、当該筋電位信号cに基づいて駆動電流生成手段220によって生成される電流e2も山状となる。
【0049】
神経伝達信号bに基づいて生成されるパルス電流e1と、筋電位信号cに基づいて比例的に生成される電流e2との総電流(随意的制御信号)eが電動モータ44に供給されると、当該総電流eに比例する大きさのトルクを電動モータ44が発生する。電動モータ44に入力される各電流e、e1、e2の大きさは、装着者の動作時の感覚により適宜設定される。
【0050】
ここで、総電流eは十分に大きな電流に設定してあるので、装着者の動作意思に遅れなく電動モータ44が駆動され、装着者は自分の意思に従った各指関節の動作を違和感なく行うことができる。尚、パルス電流e1を特に大きく示しているが、これはその役割を強調するためで、実際のパルス電流と筋電位信号から得られた駆動電流e2との関係を示すものではない。
【0051】
ここで、図5に示す上記制御システムにおける制御部100Aが実行する制御処理の手順について図7のフローチャートを参照して説明する。制御部100Aは、メモリ102に格納された制御プログラムを読み込んで図7の制御処理を実行する。
【0052】
図7のSA11において、制御ユニット70の電源スイッチがオンに操作されると、SA12に進み、生体電位センサ61〜65によって検出された生体電位信号aが受信されたか否かをチェックする。ここで、装着者が自らの意思で各指関節を動作させようとすると、生体電位センサ61〜65により生体電位信号aが検出されるため、SA13の処理に進む。
【0053】
SA13では、生体電位センサ61〜65により検出した生体電位信号aから神経伝達信号bおよび筋電位信号cを取得する(生体電位処理手段)。続いて、SA14に進み、神経伝達信号bに基づいてパルス電流e1を生成し、且つ筋電位信号cに基づいて電流e2を生成する(駆動電流生成手段)。
【0054】
次のSA15では、神経伝達信号bに応じたパルス電流e1が電動モータ44の駆動開始可能電流の下限値It以上か否かをチェックする。当該SA15において、パルス電流e1が電動モータ44の駆動開始可能電流の下限値It以上でない場合(NOの場合)、SA16に進み、パルス電流e1が駆動開始可能電流の下限値It以上になるように、パルス電流e1を増幅する。
【0055】
また、SA15において、パルス電流e1が電動モータ44の駆動開始可能電流の下限値It以上の場合(YESの場合)、SA17に進み、パルス電流e1に応じた指令信号を生成する。続いて、SA18では、筋電位信号cに基づく駆動電流e2を電動モータ44に出力する。これで、動作補助手袋20の各線状部材50は、伸展動作または屈曲動作を行なう。
【0056】
次のSA19では、動作補助手袋20の各線状部材50の動作に伴って各指関節が動作すると共に、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130(物理量センサ)のセンサ信号fを受信したか否かをチェックする。
【0057】
続いて、SA20に進み、電動モータ44の駆動力による各指関節の動作に伴って応力センサ130により検出された検出応力が予め設定された許容値以下か否かをチェックする。当該許容値は、付勢部材90の付勢力の強さに応じて選択的に設定されている。これにより、電動モータ44の駆動力が指関節を無理に動作させないように制御しており、電動モータ44の駆動力による指関節の損傷を防止する。
【0058】
従って、SA20において、応力センサ130により検出された各指関節の検出応力が予め設定された許容値以下の場合(YESの場合)、SA21に進み、各物理量センサ(トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130)の検出値(物理情報)及び生体電位信号を表示器104に表示させる。これにより、装着者は、表示器104の表示から各指関節の動作状態(各線状部材50による駆動力及び駆動方向)を認識することが可能になる。
【0059】
また、上記SA20において、応力センサ130により検出された各指関節の検出応力が予め設定された許容値以上の場合(YESの場合)、SA22に進み、電動モータ44に供給される駆動電流eを例えば、10%下げる。尚、駆動電流eの下げ幅は、任意の値に設定することが可能であり、例えば、1〜10%の範囲内で設定変更することができる。
【0060】
そして、SA23では、上記のように制限された駆動電流を電動モータ44に出力する。これにより、電動モータ44は各指関節の強度を超えないように制限されたトルク、回転角を発生させるように制御される。
【0061】
続いて、SA24に進み、制限された駆動電流のデータを表示器104に表示させる。この後は、上記SA19に戻り、各指関節の動作に伴って各物理量センサ(トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130)のセンサ信号fを受信したか否かをチェックしてSA19以降の処理を行なう。
【0062】
SA19、SA20、SA22〜SA24の制御処理を繰り返すことにより、電動モータ44の駆動力が許容値以下となるように制御して過剰なトルクが伝達されることを防止する。
【0063】
当該SA11〜SA24の処理は、制御ユニット70の電源スイッチがオフになるまで繰り返し実行される。これにより、電動モータ44は、装着者の意思に応じた動作を行なうように駆動制御される。
【実施例2】
【0064】
図8は実施例2の制御部100Bの信号処理を模式的に示すシステム系統図である。尚、図8において、前述した実施例1の図4と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図8に示す実施例2の制御部100Bは、生体電位処理手段200、随意的制御手段212、データベース300、駆動電流生成手段220を有する。尚、動作補助手袋20は、前述した実施例1と同じ構成であるので、その説明を省略する。また、図8の制御部100Bは、図3の制御部100の一例である。
【0066】
制御部100Bのデータベース300は、装着者の各指関節の回転角及び角速度等を、全タスクの全フェーズについて経験的に求め、それらの基準パラメータ(基準の回転角及び角速度等)を格納している。そして、随意的制御手段212は、動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)の電動モータ44の随意的制御を行う際、装着者の各指関節の動作に関する物理量からデータベース300からタスク及びフェーズを推定し、推定したフェーズに対応するパワーアシスト率となるように駆動力を電動モータ44に発生させる。
【0067】
ここで、上記タスク(Task)およびそのフェーズ(Phase)について説明する。タスクとは装着者の各指関節の動作パターンを分類したもので、フェーズは各タスクを構成する一連の最小動作単位である。
【0068】
図9は、各指の基本動作として、指を伸ばす(タスクA)、物を把持(タスクB)、指を曲げる(タスクC)、および握手(タスクD)を模式的に例示する図である。尚、本実施例では図1〜3に示されるように、装着者に動作補助手袋20を実装した場合について説明しているが、ここでは、説明の便宜上、上記各指の動作を例に挙げて説明する。
【0069】
図9において、各タスクは上記フェーズからなり、例えば物を把持するタスクBは、各指が揃ったフェーズB1と、各指の第1関節が曲げられたフェーズB2と、各指の第1、第2関節が曲げられたフェーズB3と、各指の第1、第2、第3関節が曲げられたフェーズB4からなる。
【0070】
このような一連のフェーズB1〜B4をフェーズ・シークエンス(Phase Sequence)という。装着者の各指関節動作を補助するのに適切な動力はフェーズ毎に異なる。そのため、各フェーズによって異なるパワーアシスト率PAR1、PAR2、PAR3、PAR4を付与することにより、フェーズ毎に最適な動作補助を行うことができる。
【0071】
装着者の各指関節の動きを分析すると、各フェーズにおける各指関節の回転角及び角速度、動作速度及び加速度等が決まっていることが分かる。例えば、装着者の典型的な指動作パターンは決まっており、その動作パターンで動作補助手袋20を動作させるときに最も自然に感じる。従って、装着者の各指関節の回転角及び角速度等を、全タスクの全フェーズについて経験的に求め、それらを基準パラメータ(基準の回転角及び角速度等)としてデータベース300に格納しておけば良い。
【0072】
図10Aはデータベース300に格納されている各タスク及び各フェーズを模式的に示す図である。図10Bは、物理量を基準パラメータと比較することにより装着者が行おうとしているタスク、およびその中のフェーズを推定するプロセスを模式的に示す図である。図10A、図10Bに示すタスクおよびフェーズは、図9に示すものである。例示したタスクA、タスクB、タスクC・・・は、それぞれ、一連のフェーズ(フェーズA1、フェーズA2、フェーズA3・・・、フェーズB1、フェーズB2、フェーズB3・・・等)により構成されている。
【0073】
装着者が各指関節の動作を開始すると、物理量センサとしての角度センサ96、応力センサ130で検出されたセンサ信号により得られた各種の物理量の実測値をデータベース300に格納された基準パラメータと比較する。当該比較は、図10B中のグラフで概略的に示す。当該グラフでは、各指の第1関節の回転角θ1および角速度θ1’、 各指の第2関節の回転角θ2および角速度θ2’、および各指の第3関節の回転角θ3および角速度θ3’を示しているが、勿論比較する物理量はこれらに限定されない。
【0074】
一定の短い時間間隔で実測の物理量と基準パラメータとを比較する。当該比較処理は、全てのタスク(A、B、C・・・)における一連のフェーズについて行う。つまり、図9Aの上部表に示す全てのフェーズ(A1、A2、A3・・・、B1、B2、B3・・・、C1、C2、C3・・・)をマトリックス状に取り出し、実測の物理量と比較することになる。
【0075】
図10Bのグラフに示すように、例えば時間t1、t2、t3・・・ごとに比較していくと、実測の物理量が全て一致する基準パラメータを有するフェーズを同定することができる。一致の誤差を排除するために、複数の時間で一致することを確認した後で、フェーズの同定を行えば良い。例えば図示の例で、実測値が複数の時間でフェーズA1の基準パラメータと一致したとすると、現在の動作はフェーズA1の動作であることが分かる。勿論、実測値と一致する基準パラメータを有するフェーズは、タスクの最初のフェーズ(A1、B1、C1等)とは限らない。
【0076】
図11は実施例2の制御部100Bが実行する制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。制御部100Bは、メモリ102に格納された制御プログラムを読み込んで図11の制御処理を実行する。
【0077】
尚、図11のSB11、SB12およびSB14〜SB17、SB24〜SB29は、実質的に図7のSA11〜SA16、SA19〜SA24と同じ処理であるので、それらの説明は省略し、ここではSB13、SB18〜SB23の処理について主に説明する。
【0078】
図11に示すSB13では、各指関節の動作に伴って発生する各物理量(トルク、回転角、応力)を検出したトルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130の検出信号の無線信号が受信されたか否かをチェックする。SB13において、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130の検出信号が受信されると、SB14に進む。
【0079】
SB18では、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130により検出された物理量(実測値)とデータベース300に格納された各フェーズの基準パラメータと順次比較する。図10A、図10Bを参照して説明したように、全てのタスクおよび各タスク毎のフェーズは、マトリックス状に存在するので、物理量の実測値と各フェーズの基準パラメータとを、例えばA1、A2、A3・・・、B1、B2、B3・・・、C1、C2、C3・・・との順番で順次比較する。データベース300に格納された基準パラメータは、全てのタスク及びフェーズ(以下では、単に「タスク/フェーズ」という)の間で重複しないように設定されているので、全てのタスク及びフェーズの基準パラメータとの比較を行うと、物理量の実測値と一致する基準パラメータを有するタスク及びフェーズを抽出することができる。
【0080】
次のSB19では、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130により検出された物理量(実測値)とデータベース300に格納された各フェーズの基準パラメータとが一致したか否かをチェックしており、不一致の場合は上記SB18の処理に戻り、SB18、SB19の処理を繰り返す。また、SB19において、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130により検出された物理量(実測値)とデータベース300に格納された各フェーズの基準パラメータとが一致した場合は、SB20に進み、センサにより検出された物理量(実測値)とデータベース300に格納された各フェーズの基準パラメータとが一致した回数が予め設定された所定回数に達したか否かをチェックする。
【0081】
上記SB20において、一致した回数が予め設定された所定回数に達しない場合は、上記SB18の処理に戻り、SB18〜SB20の処理を繰り返す。また、上記SB20において、一致した回数が予め設定された所定回数に達した場合は、SB21に進み、物理量の実測値に一致した基準パラメータに対応するタスク及びフェーズを選択し、装着者の動作を選択したタスク及びフェーズと推定する。
【0082】
次のSB22は、データベース300を参照することにより、補助すべき動作に対応するフェーズに割り付けたパワーアシスト率を選択し、当該パワーアシスト率となる動力を電動モータ44に発生させるように上記随意的制御信号を調整する(随意的制御手段)。
【0083】
続いて、SB23に進み、調整後の随意的制御信号に応じた電流(総電流e)を生成し、当該総電流を電動モータ44に出力する。この後は、前述したSA19〜SA24と同じ処理をSB24〜SB29で行なう。
【0084】
このように、実施例2の制御処理によれば、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130から得られた物理量に基づいて装着者の動作及び関節20の動作を推定し、当該推定されたフェーズ毎に最適化されたパワーアシスト率となるように随意的制御信号を生成するため、電動モータ44が当該随意的制御信号に応じた動力付与を行うことにより、正常な人の指動作と同じように各指関節の動作がスムーズな動作となる。よって、装着者は、動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)を装着した状態で各指の動作をスムーズに行なうことができる。
【実施例3】
【0085】
図12は実施例3の制御部100Cの制御系の信号処理を模式的に示すシステム系統図である。尚、図12において、前述した図5及び図8と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0086】
図12に示す実施例3の制御部100Cは、生体電位処理手段200、随意的制御手段212、データベース300、自律的制御手段310、制御信号合成手段320、駆動電流生成手段220を有する。尚、動作補助手袋20は、前述した実施例1と同じ構成であるので、その説明を省略する。また、図12の制御部100Cは、図3の制御部100の一例である。
【0087】
制御部100Cの自律的制御手段310は、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130により検出されたセンサ信号f(物理情報信号)が受信されると、受信したトルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130の検出値(物理量)とデータベース300に格納された基準パラメータとを比較することにより、装着者のタスク及びフェーズを推定し、推定したフェーズに応じた駆動力を電動モータ44に発生させるための自律的制御信号d2を生成する。また、制御信号合成手段320は、随意的制御手段212からの随意的制御信号d1と自律的制御手段310からの自律的制御信号d2とを合成して制御信号dを生成する。
【0088】
自律的制御手段310は、図9および図10A、図10Bに示すように、動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)を装着した装着者が腕を動作する際、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130により検出されたトルク、回転角、応力の物理量が受信されると、受信したトルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130の検出信号とデータベース300に格納された各タスクの各フェーズの基準パラメータとを比較することにより、装着者のタスク及びフェーズを推定し、当該フェーズに応じた動力を電動モータ44に発生させるための自律的制御信号d2を生成する。
【0089】
制御信号合成手段320は、随意的制御手段212からの随意的制御信号d1と自律的制御手段310からの自律的制御信号d2とを合成する。自律的制御では、例えばフェーズ毎に一定の動力を付与する。従って、制御信号合成手段320で合成された制御信号dは、動作の開始から終了まで変化する随意的制御による動力と、フェーズ毎に一定の自律的制御による動力とを加算した動力とを電動モータ44に発生させるように形成されている。
【0090】
図13は実施例3の制御部100Cが実行する制御処理を示すフローチャートである。制御部100Cは、メモリ102に格納された制御プログラムを読み込んで図13の制御処理を実行する。
【0091】
尚、図13のSC11〜SC13、SC15〜SC17、SC22〜SC27は、実質的に図7のSB11〜SB13、SB18〜SB20、SB24〜SB29と同じ処理であるので、それらの説明は省略し、ここではSC14、SC18〜SB21の処理について主に説明する。
【0092】
図13に示すSC14では、生体電位センサ61〜65により検出された生体電位信号aを用い、装着者の意思に従った駆動力を電動モータ44に発生させるための随意的制御信号d1を生成する(随意的制御手段)。尚、随意的制御信号d1は、前述した第1、2実施例と同様に、神経伝達信号に応じたパルス電流および筋電位信号に応じた駆動電流を生成するためのものとする。
【0093】
SC18では、物理量の実測値に一致した基準パラメータに対応するタスク及びフェーズを選択し、装着者の指関節の動作を選択したタスク及びフェーズと推定すると共に、当該タスク及びフェーズに対応するハイブリッド比(随意的制御信号/自律的制御信号)を規定する。また、ハイブリッド比は、各タスク及びフェーズ毎に、装着者の動作を違和感なくアシストできるように予め設定され、データベース300に格納される。当該ハイブリッド比は、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130による実測の物理量とデータベース300に格納された基準パラメータとの比較によりフェーズが推定されると、上述したように制御部100Cによって自動的に規定される。
【0094】
続いて、SC19に進み、推定したフェーズに応じた駆動力を電動モータ44に発生させるための自律的制御信号を生成する(自律的制御手段)。
【0095】
次のSC20では、規定したハイブリッド比となるように随意的制御信号d1および自律的制御信号d2を合成して総制御信号dを生成する(制御信号合成手段)。
【0096】
さらに、SC21に進み、当該総制御信号dに応じて生成した駆動電流eに対応する指令信号を出力する。総制御信号dは、随意的制御信号/自律的制御信号の割合から得られる所要のハイブリッド比となるように生成される。そのため、動作補助手袋20の電動モータ44は、総制御信号に応じた駆動電流eを供給されることにより、随意的制御信号及び自律的制御信号に応じた駆動力を発生することができ、各指関節の動作が正常な腕の動作と同じようにスムーズな動作となる。よって、装着者は、動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)を装着した状態でスムーズな動作を行うことができる。
【実施例4】
【0097】
図14は実施例4の制御部100Dの制御系の信号処理を模式的に示すシステム系統図である。尚、図14において、前述した図5及び図8及び図12と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0098】
図14に示す実施例4の制御部100Dは、生体電位処理手段200、随意的制御手段212、データベース300、自律的制御手段310、制御信号合成手段320、駆動電流生成手段220を有する。尚、動作補助手袋20は、前述した実施例1と同じ構成であるので、その説明を省略する。また、図14の制御部100Dは、図3の制御部100の一例である。
【0099】
制御部100Dの随意的制御手段212および自律的制御手段310は、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130の検出値(物理量)とデータベース300に格納された基準パラメータとを比較することにより、装着者が行おうとしている指関節動作のタスク及びフェーズを推定し、推定された当該フェーズに応じたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように、随意的制御信号d1および自律的制御信号d2を生成する機能を有する。
【0100】
従って、随意的制御手段212は、神経伝達信号および筋電位信号に基づいて動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)の電動モータ44の駆動を制御する制御信号と、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130により検出された装着者の動作に関する物理量からデータベース300からタスク及びフェーズを推定し、推定したフェーズに対応するパワーアシスト率となるように駆動力を電動モータ44に発生させる制御信号とを生成する。
【0101】
図15は実施例4の制御部100Dが実行する制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。制御部100Dは、メモリ102に格納された制御プログラムを読み込んで図15の制御処理を実行する。
【0102】
尚、図15のSD11〜SD17、SD21〜SD27は、実質的に図13のSC11〜SC17、SC21〜SC27と同じ処理であるので、それらの説明は省略し、ここではSD18〜SD20の処理について主に説明する。
【0103】
図15に示すSD18では、物理量の実測値に一致した基準パラメータに対応するタスク及びフェーズを選択し、装着者の動作を選択したタスク及びフェーズと推定すると共に、推定された当該タスク及びフェーズに対応するハイブリッド比(随意的制御信号/自律的制御信号)を規定する。さらに、データベース300を参照することにより、補助すべき動作に対応するフェーズに割り付けたパワーアシスト率を規定する。
【0104】
次のSD19では、推定したフェーズに応じた動力で電動モータ44を駆動するための自律的制御信号を生成する。
【0105】
続いて、SD20に進み、上記のように規定されたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように随意的制御信号d1および自律的制御信号d2を合成して総制御信号dを生成する。これにより、SC21では、規定されたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように随意的制御信号d1および自律的制御信号d2を合成した総制御信号dに応じて生成した駆動電流eに対応する指令信号を生成する。
【0106】
そのため、動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)の電動モータ44は、上記のように規定されたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように総制御信号に応じた駆動電流eを供給されることにより、随意的制御信号及び自律的制御信号に応じた駆動力を発生することができ、各指関節の動作が正常な腕の動作と同じようにスムーズな動作となる。よって、装着者は、動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)を装着した状態で各指関節をスムーズに動作させることができる。
【実施例5】
【0107】
図16は実施例5の制御部100Eの制御系の信号処理を模式的に示すシステム系統図である。尚、図16において、前述した図5、図8、図12、図14と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0108】
図16に示す実施例5では、装着者の手首から生体電位信号aが得られない場合の制御システムであり、生体電位センサ61〜65を用いない制御方法で動作補助手袋20(図1乃至、図3を参照)の電動モータ44の駆動力を制御する。尚、動作補助手袋20は、前述した実施例1と同じ構成であるので、その説明を省略する。また、図16の制御部100Eは、図3の制御部100の一例である。
【0109】
実施例5の制御部100Eは、データベース300、自律的制御手段310、駆動電流生成手段220を有する。制御部100Eは、装着者から生体電位信号aが得られないため、随意的制御手段212が設けられてなく、自律的制御手段310によって生成される自律制御信号d2が駆動電流生成手段220に供給される。
【0110】
自律的制御手段310は、トルクセンサ94、角度センサ96、応力センサ130の検出値(物理量)とデータベース300に格納された基準パラメータとを比較することにより、装着者が行おうとしている各指関節のタスク及びフェーズを推定し、推定された当該フェーズに応じたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように、自律的制御信号d2を生成する。そのため、駆動電流生成手段220は、自律的制御信号d2に応じた電流を生成し、電動モータ44に供給する。
【0111】
図17は実施例5の制御部100Eが実行する制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。制御部100Eは、メモリ102に格納された制御プログラムを読み込んで図17の制御処理を実行する。
【0112】
尚、図17のSE11〜SE25は、実質的に図14のSD12、SD14を除いた処理手順であり、SD11、SD12、SD13〜SD17、AD19〜SD27と同じ処理であるので、それらの説明は省略する。ここでは、SE18の処理について説明する。
【0113】
SE18では、規定されたハイブリッド比およびパワーアシスト率となるように自律的制御信号d2を生成する。これにより、規定されたハイブリッド比及びパワーアシスト率となる動力を電動モータ44に発生させることが可能になる。
【0114】
このように、実施例5の制御部100Eは、装着者の手首から生体電位信号aが得られない場合には、自律的制御手段310によって生成される自律制御信号d2に応じて動作補助手袋20の電動モータ44から駆動力が得られるので、各指関節の動作がスムーズな動作となる。よって、装着者は、動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)を装着した状態で各指関節をスムーズに動作させることができる。
【実施例6】
【0115】
図18は実施例6の制御部100Fの制御系の信号処理を模式的に示すシステム系統図である。尚、図18において、前述した図5、図8、図12、図14、図16と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0116】
制御部100Fは、前述した駆動電流生成手段220、感覚フィードバック信号生成手段230の他に、キャリブレーションデータベース400、フェーズ特定手段410、差分導出手段420、パラメータ補正手段430、キャリブレーション制御手段440、負荷発生手段450を有する。尚、動作補助手袋20は、前述した実施例1と同じ構成であるので、その説明を省略する。また、図18の制御部100Fは、図3の制御部100の一例である。
【0117】
キャリブレーションデータベース400は、装着者が発生する筋力に対する筋電位(生体電位)の検出感度に応じて制御信号のパラメータを補正するためのデータ記憶手段である。
【0118】
すなわち、キャリブレーションデータベース400は、動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)を手に装着した装着者が発する筋力および筋電位信号(生体電位信号)の第1の対応関係を予め格納した第1記憶領域と、装着者が各指関節の基本動作を行う過程で関節角度の変化とともに発する筋力および筋電位信号(生体電位信号)の第2の対応関係を予め格納した第2記憶領域とを有する。
【0119】
各物理量センサによって検出された関節角度及び生体電位センサ61〜65によって検出された筋電位信号は、キャリブレーションデータベース400に入力される。
【0120】
そして、キャリブレーション制御手段440は、動作補助手袋20が装着者の関節20に装着された後、装着者による各指関節の基本動作において発生する生体信号と第2の対応関係とに基づいて、第1の対応関係を満たすように生体電位信号に応じた電動モータ44(図1乃至図3を参照)による補助動力の補正を行う。
【0121】
すなわち、キャリブレーション制御手段440は、装着者が動作補助手袋20が装着されて電源スイッチがオンに操作されたときに、キャリブレーション制御処理を実行して負荷発生手段450により駆動電流生成手段220に対して電動モータ44からの駆動力を負荷(入力トルク)として装着者の各指関節に段階的に付与させ、駆動力と拮抗するように装着者は各指関節の筋力を発生させる。
【0122】
その後、電動モータ44からの駆動力を付与された各指関節は、予め決められた所定のキャリブレーション動作(例えば、タスクA:指を伸ばす)を行って筋力を発生させる。これにより、上記キャリブレーション動作に伴って角度センサ96(図1参照)が関節角度を検出すると共に、生体電位センサ61〜65が手首の筋電位信号を検出する。
【0123】
そして、フェーズ特定手段410では、角度センサ96により検出した関節角度をキャリブレーションデータベース400に格納された関節角度と比較することにより、装着者のキャリブレーション動作パターンのフェーズを特定する。
【0124】
また、差分導出手段420では、キャリブレーション制御処理の開始により、負荷発生手段450により付与された電動モータ44の負荷(入力トルク)と、生体電位センサ61〜65により検出された上腕の筋電位信号(実測値)に対応する筋力(推定トルク)とを比較し、両者の差分を求め上記第2の対応関係を求める。
【0125】
また、パラメータ補正手段430では、フェーズ特定手段410によって特定されたフェーズにおける差分導出手段420によって算出された負荷(入力トルク)と筋力(推定トルク)との差に基づいて、上記第1の対応関係を満足するようにパラメータKを補正する。負荷発生手段450により付与された電動モータ44からの入力トルクと、生体電位センサ61〜65により検出された筋電位信号(実測値)に対応する筋力との差がないときは、基準パラメータを補正しない。
【0126】
しかし、負荷発生手段450により付与された電動モータ44からの入力トルクと、生体電位センサ61〜65により検出された筋電位信号(実測値)に対応する筋力との差があるときは、両者が一致するようにパラメータKを補正する。その際、補正パラメータK’は、入力トルクと推定トルクとが等しくなるように設定される。
【0127】
そして、キャリブレーション制御手段440は、パラメータ補正手段430によって補正されたパラメータを当該装着者のパラメータとして設定し、次のフェーズに対するキャリブレーションを行う。
【0128】
このように、キャリブレーションによって設定されたパラメータを用いて生体電位センサ61〜65によって検出された生体電位信号に応じたアシスト力を発生するように電動モータ44を制御するため、装着者のその日の状態(皮膚の抵抗値や生体電位の状態など)や生体電位センサ61〜65の取付位置のずれなどに拘り無くパワーアシスト率が所定値を保つように制御することが可能になる。
【0129】
また、制御部100Fには、角度センサ96によって検出された関節角度及び生体電位センサ61〜65によって検出された筋電位信号が供給されており、関節角度及び筋電位信号に応じた各フェーズ毎の電動モータ44からの駆動力をキャリブレーション制御手段440によって設定された補正パラメータK’を用いて演算し、その演算結果から得られた制御信号を駆動電流生成手段220に供給する。
【0130】
また、キャリブレーション制御手段440は、リモートコントローラ40の電源スイッチ150がオンに操作される度にキャリブレーション制御処理を実行するようにしても良いし、あるいは、専用のキャリブレーションスイッチ460を設けることで、操作者が自らの操作でキャリブレーション制御処理を実行するようにしても良い。また、タイマスイッチ470を設けることで、予め設定された任意の時間(例えば、毎朝8時、あるいは月曜の8時といった具合)になるとキャリブレーション制御処理を自動的に実行することも可能である。
【0131】
キャリブレーション制御処理は、装着者が動作補助手袋20の動作を練習する過程で動力補正を行なうために頻繁に実行されることが望ましいが、練習開始から1週間以上経過した場合には、任意の時間毎に実行するように切替えることができる。そのため、電源スイッチ150やキャリブレーションスイッチ460やタイマスイッチ470を使用回数(練習回数)に応じて使い分けるようにしても良いし、あるいはキャリブレーションスイッチ460またはタイマスイッチ470を適宜操作するようにしても良い。
【0132】
ここで、実施例6の制御部100Fが実行する制御処理の手順について図19に示すフローチャートを参照して説明する。
【0133】
図19に示されるように、制御部100Fは、S111で動作補助手袋20(図1乃至図3を参照)が装着者の手に装着された後に電源スイッチがオンに操作されると、S112に進み、電源オン操作が初回かどうかをチェックする。S112において、初回である場合には、S113に進み、初期設定モードに移行し、S114で初期設定キャリブレーション処理(キャリブレーション手段)を実行する。
【0134】
すなわち、S114では、動作補助手袋20の電動モータ44から付与された負荷としての駆動力に対する生体電位センサ61〜65によって検出された生体電位を受信し、当該生体電位信号に基づいて補正値を求める。S115において、電動モータ44への印加電圧を1ランク上げて負荷を増大させる。続いて、S116に進み、負荷が予め設定された上限値に達したかどうかを確認する。S116において、負荷が予め設定された上限値でないときは、上記S114に戻り、S114〜S116の処理を繰り返す。
【0135】
そして、S116において、負荷が予め設定された上限値に達したときは、S117に進み、上記キャリブレーションで得られたパラメータK’を設定する。
【0136】
次のS117では、動作補助手袋20を装着された装着者が静止状態でのキャリブレーションによって得られた装着者の筋力に応じた補正値(パラメータK’)を設定する(補正値設定手段)。すなわち、S115では、例えば、装着者が各指関節を伸ばした状態で静止したまま1Nmの力を出したときの表面筋電位の値が1になるようにパラメータKを求める。初回のキャリブレーションでは、電動モータ44の駆動力(トルクτm)を負荷(入力トルク)として装着者の各指関節に段階的に付与させるのに対して、装着者は駆動力と拮抗するように各指関節に筋力を発生させる。
【0137】
このように、電動モータ44から付与された駆動力に抗して発生した生体電位信号を生体電位センサ61〜65によって検出し、当該検出信号に基づいて演算処理のパラメータを生成し、当該パラメータを当該装着者固有の補正値としてキャリブレーションデータベース400に格納する。
【0138】
これにより、動作補助手袋20が装着者に装着された直後に、装着者が所定の基本動作(キャリブレーション動作)を行う過程で発する動力および生体電位信号の対応関係とに基づいて、装着者が発する動力および生体電位信号の対応関係を満たすように生体信号に応じた電動モータ44の駆動力の補正を行うことが可能になる。
【0139】
その後は、S118に進み、通常の制御処理を実行する制御モードに移行する。そして、S119において、電源スイッチがオフに操作されるまで、通常の制御モードが継続される。
【0140】
また、上記S112において、電源オン操作が2回目以降である場合には、S120に進み、前述した再設定モードに移行する。そして、S121では、装着者がワンモーション(1回の動作)での補正値設定キャリブレーション(キャリブレーション手段)を実行し、所定のキャリブレーション動作(例えば、指を伸ばした状態から指を曲げて手を握る動作パターン)を行うのに伴って得られた装着者の筋力に応じた補正値(パラメータK’)を設定する(補正値設定手段)。その後は、上記S117〜S119の処理を実行する。
【0141】
尚、本実施例では、2回目以降ワンモーションによるキャリブレーションを行うものとしたが、これに限らず、2回目以降も初回と同様に静止状態のまま補正値設定キャリブレーションを行うようにしても良い。
【0142】
次に、各補正値設定モード毎の制御処理について図20乃至図22を参照して説明する。
図20は初期設定を行う初回キャリブレーションの制御手順を示すフローチャートである。尚、初回キャリブレーションの場合、前述したように、装着者がモータ負荷に対して関節20の静止状態を保つように筋力を発生させることにより補正値を設定する。
【0143】
図20に示されるように、制御部100Fは、S131において、装着者が各指関節を静止状態に保った状態で電動モータ44に所定駆動電流を供給して駆動力(入力トルク)を負荷として付与する。そのため、装着者は、例えば、各指関節を伸ばした状態のまま電動モータ44の駆動力に拮抗するように筋力を発生させることになる。
【0144】
次のS132では、生体電位センサ61〜65によって検出された装着者の手首の筋電位信号(生体電位信号)を取得する。次のS133では、実測された筋電位信号に基づいて仮想トルクを演算により推定する。
【0145】
その後、S134に進み、負荷として付与された入力トルクと上記仮想トルクとを比較する。そして、S135において、入力トルクと仮想トルクとの比率を求める。次のS136では、キャリブレーションデータベース400に格納された各フェーズ毎の負荷に対するパラメータを読み出し、当該パラメータに上記比率をかけて駆動電流生成手段220に供給される制御信号の補正値(補正パラメータ)を求める。続いて、S137に進み、補正パラメータを自律的制御のパラメータとして設定する(補正値設定手段)。
【0146】
このように、関節20に動作補助手袋20が装着された装着者は、静止した状態のままその日の状態に応じた生体信号のキャリブレーションを自動的に行うことができる。そのため、キャリブレーションに要する労力と時間を大幅に削減することが可能になる。
【0147】
さらに、筋力が衰えた装着者に対してキャリブレーションを行うために余計な負担を強いることがなく、当該装着者の状態に応じた補正値を設定し、装着者の筋電位信号に基づく駆動力を装着者の動作に連動して正確に付与することが可能になる。
【0148】
よって、キャリブレーションを行う際に装着者の意思に沿ったアシスト力が電動モータ44から付与され、アシスト力が過大になったり、過小になったりせず、装着者の動作を安定的にアシストして動作補助手袋20の信頼性をより高めることができる。
【0149】
特に装着者が初心者の場合のように、装着された動作補助手袋20を思うように使うことが難しいと思われる状況においても、装着者は安心してキャリブレーションを行うことができる。
【0150】
次に前述した再設定モード1(図19のS120参照)のキャリブレーション制御処理について図21を参照して説明する。
【0151】
図21はワンモーション(1回の動作)による再設定キャリブレーションの制御手順を示すフローチャートである。尚、ワンモーションによるキャリブレーションを行う場合、装着者は、指を伸ばした状態から指を曲げた状態に1回だけ動かすことになる。また、メモリ102には、キャリブレーションの動作に対応する基準筋電位が予め格納されている。
【0152】
図21に示されるように、制御部100Fは、S141において、関節20の角度センサ96からの検出信号の有無を確認する。そして、装着者が各指関節を動作させるのに伴う各指関節の角度の動きが角度センサ96によって検出されると、S142に進み、角度センサ96からの検出信号に基づいて各指関節の動作角度を設定する。
【0153】
続いて、S143に進み、各指関節の動作角度に応じた基準筋電位をメモリ102から読み込む。次の、S144では、装着者の手首の筋電位の実測値を生体電位センサ61〜65から読み込む。そして、S145では、基準筋電位と筋電位の実測値とを比較する。
【0154】
次の、S146では、基準筋電位と筋電位の実測値との比率を求める。そして、S147では、前述したキャリブレーションデータベース400に格納された各指関節の動作角度に応じたパラメータを読み出し、当該パラメータに上記比率をかけて駆動電流生成手段220に供給される制御信号の補正値(補正パラメータ)を求める。続いて、S148に進み、補正パラメータを随意的制御のパラメータとして設定する(補正値設定手段)。
【0155】
このように、所定の動作に伴う関節角度の変化に応じて基準筋電位と生体電位センサを介して検出される生体電位信号(筋電位信号)との関係を補正するように補正値を求めることで、様々な関節角度の状態に適した制御を行うように補正値を設定することができる。また、2回目以降のキャリブレーションは、モータ駆動力を負荷として使わずに各指を伸ばした状態から各指関節曲げた状態に1回だけ回動させる動作(ワンモーション)によってパラメータK’を補正することができるので、装着者の体力的な負担を大幅に軽減できると共に、動作補助手袋20を装着されてからキャリブレーションに要する準備時間を短縮することが可能になる。そのため、2回目以降のキャリブレーションでは、動作開始が速やかに行えることになる。更に、動作中にキャリブレーションを行うことができるので、装着者が特に意識することなく、普段の動作の中で各指関節を曲げることで頻繁にキャリブレーションを行うことが可能になり、常に最適な制御を行うことができる。
【0156】
次に前述した再設定モード2のキャリブレーション制御処理について図22を参照して説明する。再設定モード2では、装着者が各指関節を伸展方向または屈曲方向に動作させ、例えば、指を伸ばした状態から指を曲げた状態に動作を行うものとする。
【0157】
図22に示されるように、制御部100Fは、S151において、角度センサ96からの検出信号の有無を確認する。そして、装着者が各指関節を動作させるのに伴って各指関節の動きを角度センサ96からの検出信号によって検出すると、S152に進み、角度センサ96からの検出信号に基づいてキャリブレーションデータベース400に格納されたタスクを選択し、装着者の基準動作を設定する。
【0158】
次のS153では、各指関節の動作に応じた基準筋電位をメモリ102から読み込む。続いて、S154に進み、装着者の手首の筋電位の実測値を生体電位センサ61〜65から読み込む。そして、S155では、基準筋電位と筋電位の実測値とを比較する。
【0159】
次の、S156では、基準筋電位と筋電位の実測値との比率を求める。そして、S157では、前述したキャリブレーションデータベース400に格納された関節20の動作角度に応じたパラメータを読み出し、当該パラメータに上記比率をかけて駆動電流生成手段220に供給される制御信号の補正値(補正パラメータ)を求める。続いて、S158に進み、補正パラメータを随意的制御のパラメータとして設定する(補正値設定手段)。
【0160】
次のS159では、キャリブレーション動作のタスクが終了したかどうかを確認する。S159において、まだキャリブレーション動作のフェーズが残っている場合は、S160に進み、次のフェーズに更新して上記S153以降の処理を再度実行する。
【0161】
また、上記S159において、キャリブレーション動作のタスクが終了した場合は、今回のキャリブレーション処理を終了する。
【0162】
このように、2回目以降のキャリブレーションは、動作補助手袋20の電動モータ44の駆動力を使わずにパラメータK’を補正することができるので、装着者の体力的な負担を大幅に軽減できると共に、動作補助手袋20を装着してからキャリブレーションに要する準備時間を短縮することが可能になる。
【0163】
従って、キャリブレーションの動作は、装着者が各指関節の動作を組み合わせて行うことで表面筋電位のキャリブレーションを行っても良いし、その個人に合った動作によるキャリブレーションを行うことができるので、装着者が身体障害者の場合には動作可能な任意の動作でキャリブレーションを行うことも可能であり、他の動作(タスク)を基準動作とすることも可能である。
【0164】
尚、実施例6においては、前述した実施例1の制御回路にキャリブレーション制御処理を付加した構成について説明したが、キャリブレーション制御処理は、他の実施例2〜5においても同様に実行することができるように組み合わせることも可能であるが、その制御処理は上記図19〜図22に示す制御処理と同様であるので、他の実施例2〜5に係るキャリブレーション制御処理の説明は省略する。
【0165】
ここで、装着式動作補助装置10の変形例について説明する。
(変形例1)
図23は装着式動作補助装置10の変形例1を示す斜視図である。尚、図23において、前述した図1と同じ部分については、同一符合を付してその説明を省略する。図23に示されるように、変形例1の装着式動作補助装置10Aは、動作補助手袋20Aと、複数の線状部材500と、駆動部510と、生体信号検出部60と、制御ユニット70Aと、充電式バッテリ610が設けられている。充電式バッテリ610は、表面に太陽電池612が配されており、室内の照明光または太陽光を受光して発電を行なう太陽電池612により常時充電されている。
【0166】
動作補助手袋20Aは、前述した実施例1の動作補助手袋20と同様に、装着者の手に密着するように手のサイズに合わせた立体的な形状に形成されている。
【0167】
また、動作補助手袋20Aには、装着者の指が挿入される被駆動部としての指挿入部21Aが設けられている。図24Aに示されるように、指挿入部21Aの先端下側には、物体Xを検出する物体検出センサ600が設けられている。
【0168】
物体検出センサ600は、薄くて可撓性を有するメンブレンスイッチなどからなり、物体Xに接触すると、制御ユニット70Aに検出信号を出力する。制御ユニット70Aは、物体検出センサ600からの検出信号が入力された場合には、各指挿入部21Aが把持動作を行なうように駆動力を発生させる演算処理を行なう。
【0169】
また、動作補助手袋20Aの各指挿入部21Aの先端に物体検出センサ600を設けると共に、例えば、プッシュ式のマイクロスイッチを手首や手の側部などの物体Xに接触しない非把持部分に配し、例えば、マイクロスイッチがテーブルや椅子などに接触してオンに操作されると線状部材500が駆動させて各指挿入部21Aが把持動作を行なうように制御することも可能である。
【0170】
また、物体検出センサ600としては、上記メンブレンスイッチ、マイクロスイッチに限らず、例えば、物体Xあるいは物体Xが載置されたテーブルを非接触で検出する反射型光センサまたは近接センサ(誘導型近接センサ、静電容量型近接センサ、磁気型近接センサ)を用いても良い。
【0171】
動作補助手袋20Aの手甲側及び各指挿入部21Aの両側には、複数の線状部材500が各指挿入部21Aの延在方向に沿うように配されている。複数の線状部材500は、一端が動作補助手袋20Aの各指挿入部21Aに連結されている。尚、本変形例では、線状部材500の動作によって得られる補助動力を確保するため、1本の指挿入部21Aに4本の線状部材500を配しており、装着者の手の不具合に応じて線状部材500の本数を適宜増減することができる。
【0172】
指挿入部21Aは、動作補助手袋20Aと一体に形成されており、各指全体を覆うようにキャップ状に形成されている。また、複数の線状部材500は、指関節に巻き付けられた締結リング32、34、36によって動作補助手袋20Aの外側に締結される。そのため、駆動部510は、各線状部材500を介して駆動力を動作補助手袋20Aの各指挿入部21Aに効率良く伝達することができる。
【0173】
さらに、複数の線状部材500は、動作補助手袋20Aの外側に縫合される。そのため、複数の線状部材500が、伸展方向または屈曲方向に動作すると共に、動作補助手袋20Aの各指挿入部21Aも線状部材500と一体に伸展方向または屈曲方向に動作する。本変形例1の線状部材500は、中空形状の樹脂チューブ(筒状体)からなり、内部に流動体が充填される中空系路が長手方向に延在形成されている。また、複数の線状部材500は、駆動力を伝達する部材であるが、金属部材などに比べて大幅に軽量化されており、装着者の負担も軽減することができる。
【0174】
図24A及び図24Bに示されるように、各指挿入部21Aの関節部分の外側には、前述した付勢部材90が設けられている。そのため、動作補助手袋20Aの指関節を覆う指挿入部21Aの表面には、各指挿入部21Aを伸展させようとする付勢部材90の付勢力が付与されており、付勢力が各指関節の伸展動作(図24Bに示す把持状態から図24Aに示す開放状態への動作)の補助力として作用する。
【0175】
図25A及び図25Bに示されるように、駆動部510は、線状部材500の中空系路502に充填された流動体520(梨地模様で示す)を加圧または減圧するアクチュエータ510a〜510jを有する。アクチュエータ510a〜510jは、扁平形状のハウジング530の内部に一対のペルチェ素子(Peltier device)540が収納されている。ペルチェ素子540は、電流の流れ方向によって発熱による加熱または熱の吸収による冷却を行なって流動体520の温度を調整する温度調整手段である。
【0176】
また、流動体520は、高温で体積が小さくなり、低温で体積が大きくなる性質を有するゲルからなる。流動体520に用いられるゲルは、例えば、高分子の3次元網目構造の中に液体が入り込むことで体積を10倍に増大させる特性を有するポリベンジルメタクリレートと呼ばれる高分子と、イミダゾリウム系のイオン液体とから形成されている。
【0177】
流動体520は、一対のペルチェ素子540の隙間で上下方向から同時に加熱または冷却されるため、短時間で体積が縮小または増大することが可能となるようにハウジング530内に充填されている。また、アクチュエータ510a〜510jは、扁平形状の空間内に流動体520が充填された状態で一対のペルチェ素子540により加熱または冷却されると、出口550に接続された線状部材500の中空系路502に流動体520に対して体積変化に応じた圧力(減圧または加圧)を付与する。
【0178】
中空系路502の内径は、ハウジング530内の空間に比してかなり小さい寸法に形成されているので、ハウジング530内での加熱または冷却に伴う流動体520の体積変化量が中空系路502に流動体520に対して増幅されて加圧または減圧することが可能になる。また、各線状部材500は、内部に中空系路502を有する樹脂製細管により形成されており、且つ樹脂製細管の内側及び外側には、前述した図3Aに示されるように蛇腹状(ベローズ状)の微細な凹凸形状に形成されている。そのため、各線状部材500は、中空系路502に充填された流動体520の圧力の増減に応じて長手方向(軸方向)に伸縮可能に設けられている。
【0179】
各線状部材500は、締結リング32、34、36によって動作補助手袋20Aの外側に締結されている。各線状部材500は、動作補助手袋20Aの甲側が減圧されて長手方向に縮むと共に、動作補助手袋20Aの手の平側が加圧されて長手方向に伸びると、各指挿入部21Aを伸ばすように駆動力を各指挿入部21Aに付与する。また、各線状部材500は、動作補助手袋20Aの甲側が加圧されて長手方向に伸びると共に、動作補助手袋20Aの手の平側が減圧されて長手方向に縮むと、各指挿入部21A部分を曲げるように駆動力を付与する。
【0180】
線状部材500には、低温から高温に変化する流動体520を密封した中空系路502に充填された状態を維持する耐熱性を有する樹脂材が使用される。さらに、アクチュエータ510a〜510jの各ペルチェ素子540には、充電式バッテリ610に充電された電力が供給される。充電式バッテリ610は、各ペルチェ素子540による消費電力をまかなうため、太陽電池612による充電が常時行なわれる。
【0181】
本変形例1では、各指挿入部21Aの片側に線状部材500が2本ずつ配されており、且つ各指挿入部21A毎にアクチュエータ510a〜510jが並列に設けられている。すなわち、1本の指挿入部21Aの両側に4本の線状部材500が配されており、手のひら側と手の甲側でそれぞれ異なる駆動部に接続されている。従って、各線状部材500は、例えば、手のひら側が加圧され、手の甲側が減圧されることにより各指挿入部21Aを伸ばした状態に駆動することができる。逆に、各線状部材500の手のひら側を減圧し、手の甲側を加圧することにより各指挿入部21Aを把持状態に駆動することができる。
【0182】
制御ユニット70Aは、生体信号検出部60の生体電位センサ61〜65により検出された生体信号に基づいて演算処理を行なってアクチュエータ510a〜510jへ駆動制御信号を出力する。制御ユニット70Aにおける制御処理は、前述した実施例1〜6の制御部100及び100A〜100Fが実行する制御処理と同様に行なわれるので、ここでは制御処理の説明は省略する。
【0183】
このように、変形例1の動作補助手袋20Aを用いた場合も、実施例1と同様に、制御ユニット70Aからの駆動制御信号に基づいて線状部材500を指挿入部21Aの関節の動作方向に伸展または屈曲させることにより、装着者の指の関節を動作させるように駆動部510の駆動力を伝達することができるので、軽量化を図ることができると共に、装着者の負担を軽減することが可能になる。
【0184】
また、流動体520の温度調節をする温度調節手段は、前記のペルチェ素子には限られず、例えば、中空経路502の中に電熱線を配置して通電して加熱するようにしてもよい。この様な構成によれば、中空経路502内の流動体520を全体的に加熱することができるので素早く温度を変化させることができ、駆動部510の応答性が向上する。流動体520の冷却は、中空経路502が細線状に形成されているので、中空経路502の表面からの放熱で十分早く冷却される。
【0185】
また、流動体520には、繊維状導電体が混入されたゲルを用いてもよい。この種のゲルでは、ゲルに電圧を印加すると、当該繊維状導電体がクーロン力によりゲル内で移動して整列し、導電路を形成することで、この導電路に電流が流れて発熱しゲル内部温度が変化するのに伴ってゲル自体が体積変化を起こす性質を有する。この繊維状導電体が混入されたゲルを用いた場合には、一対のペルチェ素子540が配置されている位置に、ペルチェ素子の代わりに電圧印加用の電極を配置し、この電極間のゲルに電界を印加して駆動部510を駆動することができる。
(変形例2)
図26は変形例2の装着式動作補助装置10Bを示す斜視図である。尚、図26において、前述した図23と同じ部分については、同一符合を付してその説明を省略する。図26に示されるように、装着式動作補助装置10Bは、動作補助手袋20Bと、上記変形例1の複数の線状部材500と、駆動部510と、生体信号検出部60と、制御ユニット70Aとが外側動作補助手袋と内側動作補助手袋との間に収容されている。そのため、駆動部510は、各線状部材500を介して駆動力を動作補助手袋20Bの各指挿入部21Bに効率良く伝達することができる。
【0186】
充電式バッテリ610は、表面に太陽電池612が配されているので、太陽電池612が動作補助手袋20Bの外側手袋から露出するように設けられている。
【0187】
図27A及び図27Bに示されるように、動作補助手袋20Bは、外観的には複数の線状部材500、駆動部510、生体信号検出部60、制御ユニット70Aが隠れて見えないので、通常の手袋のようなデザインとすることができる。よって、装着者が動作補助手袋20Cを装着したまま外出する場合でも第三者の目を気にせずに指関節を動作させることが可能になる。
【0188】
また、上記動作補助手袋20Bにおいて、外側動作補助手袋の内側に複数の線状部材500、駆動部510、生体信号検出部60、制御ユニット70Aを配し、複数の線状部材500、駆動部510、生体信号検出部60、制御ユニット70A少なくとも指挿入により接触する部分には、布製または革製、合成革のカバー部材を部分的に縫合しても良い。
【0189】
このように、変形例2の動作補助手袋20Bを用いた場合も、実施例1と同様に、制御ユニット70Aからの駆動制御信号に基づいて線状部材500を指挿入部21Bの関節の動作方向に伸展または屈曲させることにより、装着者の指の関節を動作させるように駆動部510の駆動力を伝達することができるので、軽量化を図ることができると共に、装着者の負担を軽減することが可能になる。
(変形例3)
図28は変形例3の装着式動作補助装置10Cを示す斜視図である。尚、図28において、前述した図23と同じ部分については、同一符合を付してその説明を省略する。図28に示されるように、装着式動作補助装置10Cは、動作補助手袋20Cと、複数の線状部材700と、駆動部710と、生体信号検出部60と、制御ユニット70Cと、充電式バッテリ610が設けられている。
【0190】
複数の線状部材700は、例えば、ピアノ線などのワイヤである。駆動部710は、リニアモータ710a〜710jを有する。複数の線状部材700は、駆動力を伝達する部材であるが、ロッド状の金属部材などに比べて大幅に軽量化されており、装着者の負担も軽減することができる。
【0191】
リニアモータ710a〜710jの可動子(マグネット)には、線状部材700の一端が連結されている。また、線状部材700の他端は、動作補助手袋20Cの指挿入部21Cに連結されている。尚、動作補助手袋20Cには、リニアモータ710a〜710jの可動子の移動量を測定するリニアスケールが設けられている。リニアスケールの取付位置としては、例えば、可動子の移動量を測定するように設けても良いし、あるいは可動子に連結された線状部材700に沿って配置しても良い。
【0192】
さらに、複数の線状部材700は、動作補助手袋20Cの外側に縫合される。そのため、複数の線状部材700が、伸展方向または屈曲方向に動作すると共に、動作補助手袋20Cの各指挿入部21Cも線状部材700と一体に伸展方向または屈曲方向に動作する。よって、駆動部710は、各線状部材700を介してリニアモータ710a〜710jの駆動力を動作補助手袋20Cの各指挿入部21Cに効率良く伝達することができる。
【0193】
リニアモータ710a〜710jは、制御ユニット70Cからの制御信号により固定子を構成する複数のコイルに通電が行なわれて励磁されると共に、可動子に対する推力を発生する。図29A及び図29Bに示されるように、動作補助手袋20Cの各指挿入部21Cに沿うように延在された複数の線状部材700は、リニアモータ710a〜710jの推力によって伸展方向または屈曲方向に直接駆動される。
【0194】
本変形例3の制御ユニット70Cは、上記各実施例の場合と同様に、生体信号検出部60の生体電位センサ61〜65により検出された生体信号に基づいて演算処理(詳細は後述する)を行なってリニアモータ710a〜710jへ駆動制御信号を出力する。制御ユニット70Cにおける制御処理は、前述した実施例1〜6の制御部100及び100A〜100Fが実行する制御処理と同様に行なわれるので、ここでは制御処理の説明は省略する。
【0195】
このように、変形例3の動作補助手袋20Cを用いた場合も、実施例1と同様に、制御ユニット70Cからの駆動制御信号に基づいて線状部材700を指の関節の動作方向に伸展または屈曲させることにより、装着者の指の関節を動作させるように駆動部510の駆動力を伝達することができるので、軽量化を図ることができると共に、装着者の負担を軽減することが可能になる。
(変形例4)
図30は変形例4の装着式動作補助装置10Dを示す斜視図である。図30に示されるように、装着式動作補助装置10Dは、動作補助手袋20Dと、複数の線状部材800と、印加電圧切替回路810と、生体信号検出部60と、制御ユニット70Dと、充電式バッテリ610が設けられている。
【0196】
各線状部材800は、締結リング32、34、36によって各指挿入部21Dに締結される。よって、線状部材800で発生した駆動力は、直接的に各指挿入部21Dに伝達され、各指挿入部21Dを直線状態(各指を伸ばした状態)または屈曲状態(各指を曲げた状態)に駆動するように作用する。
【0197】
複数の線状部材800は、例えば、印加電圧の大きさまたは印加電圧の正負によって体積変化を生じて駆動力を発生する可撓性の合成樹脂基板からなる。すなわち、各線状部材800は、印加電圧切替回路810により電極層に印加される電圧に応じて各指挿入部21Dを直線状態から屈曲状態に駆動する駆動力、または屈曲状態から直線状態に駆動させる駆動力を発生する。
【0198】
また、各線状部材800は、それ自体が駆動力を発生する駆動手段であるので、他のモータ等からなるアクチュエータが不要となり、アクチュエータが別個に設けるものよりも大幅に軽量化されており、装着者の負担を軽減することができる。
【0199】
尚、本変形例4の図29においては、各指挿入部21Dの裏側(手の甲側)に線状部材800を2本ずつ配した構成例を一例として示しているが、これに限らず、線状部材800を3本以上配する構成としても良い。
【0200】
図31Aは変形例4の装着式動作補助装置10Dの指挿入部の一部を断面にして示す図である。図31Bは変形例4の装着式動作補助装置10Dの指挿入部が曲げられた動作状態を示す図である。
【0201】
図31Aに示されるように、動作補助手袋20Dの各指挿入部21Dの表側(手の平側)と裏側(手の甲側)には、線状部材800が各指挿入部21Dの指延在方向に延在するように取り付けられている。
【0202】
各線状部材800の電極層801,802は、夫々電圧制御用電線804を介して印加電圧切替回路810(810a〜810j)の出力端子に接続されている。印加電圧切替回路810(810a〜810j)は、夫々充電式バッテリ610が電圧供給源として接続されており、且つ制御ユニット70Dからの制御信号により各線状部材800の電極層801,802に印加する電圧の極性及び電圧の大きさを制御する。
【0203】
線状部材800は、平行に配され一対の電極層801,802の間に駆動層803が介在するように積層されている。駆動層803としては、例えば、印加される電圧の極性(正負)によって駆動力の発生方向が切り替わるイオン交換樹脂により形成されている。このイオン交換樹脂の上下面に電極層801,802を積層してなるイオン伝導アクチュエータは、電圧を印加しない状態では、直線状に延在した静止状態(非駆動状態)にある。また、イオン交換樹脂の内部では、一対の電極層801,802の正負を切替えることで高分子電解質内の正側(陽極側)の陽イオンが負側(陰極側)に移動することにより、イオン交換樹脂の正負によって膨潤に差が生じて負側(陰極側)に反るように変形する。駆動層803は、表裏側の膨潤の差によって生じた力を各指挿入部21Dを動作させる駆動力として作用させる。
【0204】
従って、印加電圧切替回路810によって一対の電極層801,802の極性を正または負に切替えることで、駆動層803の変形方向を切替えることができ、印加する電圧の大きさによって変形量を制御することが可能になる。
【0205】
ここで、各線状部材800の駆動力の発生動作について説明する。
【0206】
例えば、各線状部材800の電極層801,802のうち上側の電極層801を負(陰極)、下側の電極層802を正(陽極)となるように印加電圧の極性を印加電圧切替回路810によって切替えると、駆動層803において、上側の膨潤が下側より大きくなるため、各指挿入部21Dを下方に曲げようとする駆動力Faが発生する。
【0207】
図31Bに示されるように、各指挿入部21Dは、屈曲方向に駆動され、破線で示す直線状態XAから各指関節を曲げた屈曲状態XBに動作する。また、各線状部材800の電極層801,802への電圧をオフ(ゼロ)にすると、各指挿入部21Dは、伸展方向に駆動され、実線で示す屈曲状態XBから直線状態XAにゆっくりとした速度で復帰する。
【0208】
さらに、屈曲状態XBにおいて、各線状部材800の電極層801,802のうち上側の電極層801を正(陽極)、下側の電極層802を負(陰極)となるように印加電圧の極性を印加電圧切替回路810によって切替えると、各指挿入部21Dを上方に反らそうとする駆動力Fbが発生する。このように、各線状部材800の電極層801,802に印加される電圧の極性を切替えることで、各指挿入部21Dを実線で示す屈曲状態XBから直線状態XAに素早く復帰させることができる。この復帰動作速度は、リハビリを行なう場合に有効であるとともに、指を曲げた状態から伸ばす方向への大きなトルクを指に与えることができる。
【0209】
このように、変形例4の動作補助手袋20Dを用いた場合も、実施例1と同様に、制御ユニット70Dからの駆動制御信号により、各線状部材800の電極層801,802に印加する電圧の極性を切替えることで、各指挿入部21Dを伸展または屈曲させる方向に駆動力Fa,Fbを発生させることが可能になり、軽量化を図ることができると共に、装着者の負担を軽減することが可能になる。
【0210】
また、上記駆動層803としては、イオン交換樹脂に限らず、例えば、電圧を印加することで体積膨張による変形または変位を生じる圧電ポリマー、導電性ポリマー、電歪ポリマーなどの高分子材料を用いても良いのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0211】
上記実施例では、動作補助手袋20を装着することにより、装着者の各指関節の動作を補助する場合について説明したが、これに限らず、本発明は、上記動作補助手袋20を用いて指関節の動作のリハビリ訓練(機能回復訓練)を行なうことも可能であるので、リハビリ用手袋として使用することも可能である。
【0212】
上記変形例1〜4において、動作補助手袋20A〜20Dの指先部分を実施例1の動作補助手袋20と同様にカットして装着者の指先が露出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0213】
10、10A〜10D 装着式動作補助装置
20、20A〜20D 動作補助手袋
21、21A〜21D 指挿入部
22 開口
24 手首部
30 被駆動部
32、34、36 締結リング
40、510、710 駆動部
40a〜40j 駆動機構
42 回動部材
44 電動モータ
50、50a〜50j、500、700、800 線状部材
51 筒状体
52、53 ワイヤ
54 キャップ
55 中空部
57 上部空間
58 下部空間
59 中部空間
60 生体信号検出部
61〜65 生体電位センサ
70、70A、70C、70D 制御ユニット
80、82 ベルト
84 面ファスナ
90 付勢部材
94 トルクセンサ
96 角度センサ
100、100A〜100F 制御部
102 メモリ
104 表示器
124、610 充電式バッテリ
130 応力センサ
140 充電器
200 生体電位処理手段(生体信号処理手段)
202 増幅器
204 高帯域バンドパスフィルタ
206 中帯域バンドパスフィルタ
212 随意的制御手段
220 駆動電流生成手段
300 データベース
310 自律的制御手段
320 制御信号合成手段
400 キャリブレーションデータベース
410 フェーズ特定手段
420 差分導出手段
430 パラメータ補正手段
440 キャリブレーション制御手段
450 負荷発生手段
502 中空系路
510a〜510j アクチュエータ
520 流動体
530 ハウジング
540 ペルチェ素子
612 太陽電池
600 物体検出センサ
710a〜710j リニアモータ
810 印加電圧切替回路
801,802 電極層
803 駆動層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の指が挿入される指挿入部を有する動作補助手袋と、
前記動作補助手袋の甲側に配置され、前記指挿入部を駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動力を前記指挿入部に伝達するように前記指挿入部の延在方向に沿うように配された線状部材と、
前記装着者の指を動作させるための生体信号を検出する生体信号検出部と、
該生体信号検出部により生成された生体信号に基づいて前記駆動部へ駆動制御信号を出力する制御部と、
を備え、
前記駆動部は、前記制御部からの駆動制御信号に基づいて前記線状部材を前記指挿入部の伸展方向または屈曲方向に動作させることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の前記指挿入部の側部または甲側に沿うように固定され、前記指挿入部に駆動力を伝達することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の前記指挿入部に沿うように複数本ずつ配され、
前記複数の線状部材の夫々が伸縮して各指の関節の動作方向に駆動力を伝達することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、可撓性を有する筒状の筒状体と、該筒状体の中空部に挿通されたワイヤとを有し、
前記ワイヤの一端が前記駆動部に連結され、前記ワイヤの他端を前記指挿入部に連結するように構成されたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、可撓性を有する筒状体と、該筒状体の中空部に充填され温度に応じて体積を変化させる流動体と、を有し、
前記筒状体に前記流動体を加熱または冷却する温度調整手段を設け、
前記温度調整手段は、前記流動体を加熱または冷却することにより前記流動体の体積を増減させて駆動力を発生させることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、平行に配された電極層間に印加された電圧に応じて変形する駆動層を介在させてなり、
前記駆動層は、前記電極層に印加される電圧に応じて直線状態から屈曲状態に駆動する駆動力、または屈曲状態から直線状態に駆動する駆動力を発生することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の外側に設けられたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の内側に埋め込まれ、且つ少なくとも指接触部分の内側には、内側カバー部材が設けられたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記線状部材は、前記動作補助手袋の外側補助手袋と内側補助手袋との間に埋め込まれたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記装着者の指の関節を曲げた状態から真っ直ぐな状態に戻すように、または前記装着者の指の関節を真っ直ぐな状態から曲げた状態に戻すように、前記各指挿入部を付勢する付勢部材を設けたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記動作補助手袋は、前記指挿入部に被把持部材の存在を検出する検出手段を有することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記動作補助手袋は、前記指挿入部に装着者の指先の一部を露出させる開口を有することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記動作補助手袋は、前記指挿入部に装着者の指関節の曲げ角度を検出する指関節角度センサを有することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
前記装着者の指を動作させるための信号を、前記生体信号検出部により検出された生体信号から取得する生体信号処理手段と、
前記生体信号処理手段により取得された信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動部に発生させるための随意的制御信号を生成する随意的制御手段と、
前記随意的制御手段により生成された随意的制御信号に基づいて、前記生体信号の信号に応じた電流を生成し、前記駆動部に供給する駆動電流生成手段と、
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
タスクとして分類した装着者の指の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースと、
前記指関節角度センサにより検出された指曲げ角度と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者の指のタスク及びフェーズを推定し、当該フェーズに応じた動力を前記駆動部に発生させるための自律的制御信号を生成する自律的制御手段と、
前記自律的制御信号に応じた電流を生成し、前記駆動部に供給する駆動電流生成手段と、
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
前記生体信号検出部により検出された生体信号を用い、前記装着者の意思に従った動力を前記駆動部に発生させるための随意的制御信号を生成する随意的制御手段と、
タスクとして分類した装着者の指の動作パターンを構成する一連の最小動作単位(フェーズ)の各々の基準パラメータを格納したデータベースと、
前記指関節角度センサにより検出された指曲げ角度と前記データベースに格納された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者の手のタスク及びフェーズを推定し、当該フェーズに応じた動力を前記駆動部に発生させるための自律的制御信号を生成する自律的制御手段と、
前記随意的制御手段からの随意的制御信号および前記自律的制御手段からの自律的制御信号を合成する制御信号合成手段と、
前記制御信号合成手段により合成された総制御信号に応じた総電流を生成し、前記駆動部に供給する駆動電流生成手段と、
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項17】
請求項15に記載の装着式動作補助装置であって、
前記データベースは、前記随意的制御信号と前記自律的制御信号との比(ハイブリッド比)を、前記フェーズの基準パラメータと所要の対応関係となるように格納し、
前記制御信号合成手段は、前記自律的制御手段により推定されたタスク及びフェーズに応じ、前記対応関係に基づいて規定されるハイブリッド比となるように、前記随意的制御信号および前記自律的制御信号を合成することを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項18】
請求項1、14乃至17の何れかに記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
前記駆動部から付与された負荷としての駆動力に対する生体信号を前記生体信号検出部によって検出し、当該生体信号に基づいて補正値を設定するキャリブレーション手段を備えたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装着式動作補助装置であって、
キャリブレーション手段は、
前記動作補助ユニットが前記装着者に装着された状態で前記駆動源からの所定の駆動力を外的負荷として付与する負荷発生手段と、
該負荷発生手段により付与された駆動力に抗して発生した生体信号を前記生体信号検出部によって検出し、当該検出信号に基づいて前記駆動電流生成手段が行う演算処理のパラメータを生成し、当該パラメータを当該装着者固有の補正値として設定する補正値設定手段と、
を備えたことを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装着式動作補助装置であって、
前記制御部は、
前記生体信号検出部により検出された前記生体信号と前記指関節角度センサにより検出された指曲げ角度との対応関係のデータが格納されたキャリブレーションデータベースを有し、
前記補正値設定手段は、前記キャリブレーションデータベースに格納された前記データに基づき前記パラメータを補正することを特徴とする装着式動作補助装置。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【公開番号】特開2010−240285(P2010−240285A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94695(P2009−94695)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】