説明

装着補助具

【課題】本発明は、装着式動作補助装置の駆動部からの補助動力が装着者に締結される締結部材を介して伝達される際に締結部材が装着者の服に対して滑ることを防止することを課題とする。
【解決手段】装着補助具200は、密着層210と、弾性層220と、動力伝達層230と、摩擦層240とを一体的に積層したものである。各層間は、縫合または接着または溶着などの接合方法を用いて結合される。弾性層220は、密着層210を装着者の被駆動部位に締付けると共に、装着式動作補助装置の補助動力が増大した場合には密着層210と動力伝達層230との間の補助動力の伝達を緩衝するように弾性変形する。これにより、装着式動作補助装置の補助動力(モータトルク)が過大になった場合には、弾性層220の緩衝により装着者12が被着した服の表面に対して密着層210が滑らないように伝達トルクが緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装着補助具に係り、特に装着式動作補助装置の駆動部からの補助動力が伝達される装着者の被駆動部位に装着される装着補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、歩行動作を行えない身体障害者(以下「装着者」という)の脚にモータ等の駆動部からの補助動力を付与する装着式動作補助装置の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
装着式動作補助装置では、装着者の歩行動作を補助する場合、装着者の腰関節、膝関節に対応する位置で回動動作を行うように構成されたフレームと、フレームの各部を装着者の腿、脛に締結される締結部材とを有する。そして、装着式動作補助装置の制御部では、装着者が歩行動作を行なうように思考するのに伴って生体信号(脳からの神経伝達信号及び筋肉動作による筋電位信号を含む)が生体信号検出センサにより検出されると、生体信号検出センサから出力された検出信号に基づいてモータの駆動力(トルク)、速度、加速度を演算する。これにより、装着式動作補助装置では、制御部の演算結果により生成された制御信号により各関節に対応する位置に設けられたモータの駆動力を補助動力として骨格を形成するフレーム及びフレームを装着者に締結する締結部材を介して装着者に伝達している。
【0004】
また、締結部材は、内側にフィッティング部として例えばフエルト材等が設けられており、フエルト材を装着者が被着した服の表面に巻き付けるようにして締結される。尚、締結部材は、装着者の腿、脛の太さに応じた所定長さに調整されてベルト又は面ファスナなどの係止部材により係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−204426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、締結部材を装着者の服の上から巻き付けた場合には、締結部材の内側に配されたフエルト材が服表面に対して滑ることにより装着式動作補助装置の駆動部からの駆動力の伝達に損失が発生するという問題があった。
【0007】
また、締結部材による補助動力の伝達に損失が生じた場合、制御部によって演算された駆動力を装着者に対して十分に補助動力として伝達することができなくなるおそれが生じる。一方、制御部では、トルクセンサ、角度センサ、床反力センサなどのセンサ信号がフィードバックされているので、駆動力の伝達損失分を補正するように制御信号の演算処理を行なうことになるが、駆動力の伝達損失が常に変動する場合には、変動幅を予測することが難しく、装着者に伝達される実質的な補助動力のばらつきを招くおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した装着補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、装着式動作補助装置の駆動部からの補助動力が装着者に締結される締結部材を介して伝達される装着者の被駆動部位の外周に装着され、前記締結部材と前記被駆動部位との間に配されて前記補助動力を前記装着者に伝達するための装着補助具であって、
内面に前記装着者の被駆動部位の外周に密着される第1の摩擦面が形成され、
外面に前記締結部材の接触面に接触される第2の摩擦面が形成され、
前記第1の摩擦面と前記第2の摩擦面との間には、弾性層が形成されたことを特徴とする。
(2)本発明は、装着式動作補助装置の駆動部からの補助動力が装着者に締結される締結部材及び前記装着者に密着するフィッティング部を介して伝達される装着者の被駆動部位の外周に装着され、前記フィッティング部と前記被駆動部位との間に介在して前記補助動力を前記装着者の被駆動部位に伝達するための装着補助具であって、
前記装着者の被駆動部位の外周に密着する第1の摩擦面を有する密着層と、
該密着層の外側に形成され、前記補助動力が伝達される動力伝達層と、
前記密着層と前記動力伝達層との間を弾力的に結合し、前記密着層を前記装着者の被駆動部位に締付ける弾性層と、
前記動力伝達層の外側に形成され、前記フィッティング部の接触面に接触される第2の摩擦面を有する摩擦層と、
を備えたことを特徴とする。
(3)本発明の前記密着層は、摩擦係数の高い繊維材を伸縮可能に織ったことを特徴とする。
(4)本発明の前記弾性層は、熱可塑性エラストマにより形成され、前記密着層と前記動力伝達層との間の前記補助動力の伝達を緩衝することを特徴とする。
(5)本発明の前記動力伝達層は、前記弾性層の弾性変形に応じて伸縮するように繊維材を伸縮可能に織ったことを特徴とする。
(6)本発明の前記摩擦層は、前記動力伝達層の外側に形成され、前記フィッティング部に対する摩擦を高めるようにゴム材をコーティングしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動部からの補助動力を装着者の被駆動部位に確実に伝達することができ、密着層を装着者の被駆動部位に締付けると共に、動力伝達層の外周に形成された摩擦層がフィッティング部に密着することで、駆動部からの補助動力を確実に装着者に伝達することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】装着式動作補助装置の一実施例が装着者に装着された状態を前側からみた斜視図である。
【図2】装着式動作補助装置の一実施例が装着者に装着された状態を後側からみた斜視図である。
【図3】動作補助装着フレーム18の装着前の状態を示す斜視図である。
【図4】腰締結部材30の装着状態を模式的に示す横断面図である。
【図5】本発明による装着補助具200の一実施例を上方からみた断面を模式的に示す横断面図である。
【図6】装着補助具200の変形例1を模式的に示す横断面図である。
【図7】装着補助具200の変形例2を模式的に示す斜視図である。
【図8】装着補助具200の変形例3を模式的に示す横断面図である。
【図9】装着補助具200の変形例4を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は装着式動作補助装置の一実施例が装着者に装着された状態を前側からみた斜視図である。図2は装着式動作補助装置の一実施例が装着者に装着された状態を後側からみた斜視図である。
【0014】
図1及び図2に示されるように、装着式動作補助装置(以下「動作補助装置」と称する)10は、例えば、骨格筋の筋力低下により歩行が不自由な下肢運動機能障害者、あるいは、歩行運動のリハビリを行う患者などのように自力歩行が困難な人の歩行動作を補助(アシスト)する装置である。また、動作補助装置10は、脳からの信号により筋力を発生させる際に生じる生体信号(表面筋電位)を検出し、生体信号に基づいてアクチュエータからの駆動力を付与するように作動する。
【0015】
動作補助装置10を装着した装着者12は、自らの意思で歩行動作を行う際に発生した生体信号に応じた駆動トルクが補助動力として動作補助装置10から付与され、例えば、通常歩行で必要とされる筋力の半分の力で歩行することが可能になる。従って、装着者12は、自身の筋力と駆動部(本実施例では、電動式の駆動モータを用いる)からの駆動トルクとの合力によって全体重を支えながら歩行することができる。
【0016】
動作補助装置10は、装着者12の歩行動作に伴う重心の移動に応じて付与されるアシスト力(モータトルク)が装着者12の意思を反映するように制御している。そのため、動作補助装置10の駆動部は、装着者12の意思に反するような負荷を与え無いように制御されており、装着者12の動作を妨げないように制御される。
【0017】
また、動作補助装置10は、歩行動作以外にも、例えば、装着者12が椅子に座った状態から立ち上がる際の動作、あるいは立った状態から椅子に腰掛ける際の動作も補助することができる。さらには、装着者12が階段を上がったり、階段を下りる場合にもパワーアシストすることができる。特に筋力が弱っている場合には、階段の上がり動作や、椅子から立ち上がる動作を行うことが難しいが、動作補助装置10を装着した装着者12は、自らの意思に応じて駆動トルクを付与されて筋力の低下を気にせずに動作することが可能になる。
【0018】
ここで、動作補助装置10の構成の一例について説明する。動作補助装置10は、図1及び図2に示されるように、装着者12に装着される動作補助装着フレーム18に駆動部を設けたものである。駆動部としては、装着者12の右側股関節に位置する右腿駆動モータ20と、装着者12の左側股関節に位置する左腿駆動モータ22と、装着者12の右膝関節に位置する右膝駆動モータ24と、装着者12の左膝関節に位置する左膝駆動モータ26とを有する。これらの駆動モータ20,22,24,26は、制御部からの制御信号により駆動トルクを制御されるDCモータまたはACモータなどの電動モータからなる。また、各駆動モータ20,22,24,26は、モータ回転を所定の減速比で減速する減速機構(駆動部に内蔵)を有しており、小型ではあるが十分な駆動力を付与することができる。また、駆動モータとしては、設置スペースが小さく済むように薄型化された超音波モータを用いても良いのは勿論である。
【0019】
また、装着者12の腰の周囲に装着される腰締結部材30には、駆動モータ20,22,24,26を駆動させるための電源として機能するバッテリ32,34が取り付けられている。バッテリ32、34は、充電式バッテリであり、装着者12の歩行動作を妨げないように左右に分散配置されている。
【0020】
また、装着者12の背面側となる腰締結部材30の後側には、制御ユニット(制御部)36が取り付けられている。
【0021】
そして、動作補助装置10は、装着者12の右腿の動きに伴う生体電位を検出する生体信号検出センサ38a,38bと、装着者12の左腿の動きに伴う生体電位を検出する生体信号検出センサ40a,40bと、右膝の動きに伴う生体電位を検出する生体信号検出センサ42a,42bと、左膝の動きに伴う生体電位を検出する生体信号検出センサ44a,44bとを有する。
【0022】
これらの各生体信号検出センサ38a,38b,40a,40b,42a,42b,44a,44bは、筋電位信号や神経伝達信号などの生体電位信号を検出する生体信号検出手段であり、微弱電位を検出するための電極(図示せず)を有する。尚、本実施例では、各生体信号検出センサ38a,38b,40a,40b,42a,42b,44a,44bは、電極の周囲を覆う粘着シールにより装着者12の皮膚表面に貼着するように取り付けられる。
【0023】
人体においては、脳からの指令によって骨格筋を形成する筋肉の表面にシナプス伝達物質のアセチルコリンが放出される結果、筋線維膜のイオン透過性が変化して活動電位が発生する。そして、活動電位によって筋線維の収縮が発生し、筋力を発生させる。そのため、骨格筋の電位を検出することにより、歩行動作の際に生じる筋力を推測することが可能になり、推測された筋力に基づく仮想トルクから歩行動作に必要な補助動力を求めることが可能になる。
【0024】
従って、動作補助装置10では、制御ユニット(制御部)36により生体信号検出センサ38a,38b,40a,40b,42a,42b,44a,44bによって検出された生体信号に基づいて4個の駆動モータ20,22,24,26に供給する駆動電流を求め、演算された駆動電流の供給により駆動モータ20,22,24,26を駆動制御する。これにより、動作補助装着フレーム18は、各駆動モータ20,22,24,26のトルクが伝達されて装着者12の歩行動作を補助するように駆動される。
【0025】
また、歩行動作による重心移動をスムーズに行うため、足の裏にかかる荷重を検出する必要がある。そのため、装着者12の左右足の裏に対応する位置には、床反力センサ50a,50b,52a,52b(図1及び図2中、破線で示す)が設けられている。
【0026】
また、床反力センサ50aは、右足前側の荷重に対する反力を検出し、床反力センサ50bは、右足後側の荷重に対する反力を検出する。床反力センサ52aは、左足前側の荷重に対する反力を検出し、床反力センサ52bは、左足後側の荷重に対する反力を検出する。各床反力センサ50a,50b,52a,52bは、例えば、印加された荷重に応じた電圧を出力する圧電素子などからなり、体重移動に伴う荷重変化、及び装着者12の脚と地面との接地の有無を夫々検出することができる。
【0027】
図3は動作補助装着フレーム18の装着前の状態を示す斜視図である。図3に示されるように、動作補助装着フレーム18は、装着者12の腰に装着される腰締結部材30と、腰締結部材30の右側部から下方に設けられた右脚補助部54と、腰締結部材30の左側部から下方に設けられた左脚補助部55とを有する。腰締結部材30の背面側には、装着者12の腰背面側との隙間をなくして密着するフィッティング部31が取り付けられている。
【0028】
右脚補助部54と左脚補助部55とは、左右対称に配置されており、腰締結部材30に固定されたブラケット56と、ブラケット56より下方に延在し装着者12の腿外側に沿うように形成された第1フレーム58と、第1フレーム58より下方に延在し装着者12の脛外側に沿うように形成された第2フレーム60と、装着者12の脚の裏(靴を履く場合には、靴底)が載置される第3フレーム62とを有する。
【0029】
ブラケット56の下端と第1フレーム58の上端との間には、軸受構造とされた第1関節64が介在しており、ブラケット56と第1フレーム58とを回動可能に連結している。第1関節64は、装着者12の股関節と一致する高さ位置に設けられており、ブラケット56が第1関節64の支持側に締結され、第1フレーム58が第1関節64の回動側に締結されている。また、第1関節64には、駆動モータ20,22が内蔵されており、第1関節64と駆動モータ20,22とは外観上一体化されている。
【0030】
また、第1フレーム58の下端と第2フレーム60の上端との間には、軸受構造とされた第2関節66が介在しており、第1フレーム58と第3フレーム62とを回動可能に連結している。第2関節66は、膝関節と一致する高さ位置に設けられており、第1フレーム58が第2関節66の支持側に連結され、第2フレーム60が第2関節66の回動側に連結されている。また、第2関節66には、駆動モータ24,26が内蔵されており、第2関節66と駆動モータ24,26とは外観上一体化されている。
【0031】
また、第2フレーム60の下端と第3フレーム62の上端との間には、軸受構造とされた第3関節68が介在しており、第2フレーム60と第3フレーム62とを回動可能に連結している。そして、第3フレーム62の内側には、装着者12の足を装着する靴84が固定されている。
【0032】
従って、第1フレーム58及び第2フレーム60は、腰締結部材30に固定されたブラケット56に対して第1関節64及び第2関節66を回動支点とする歩行動作を行えるように取り付けられている。すなわち、第1フレーム58及び第2フレーム60は、装着者12の脚と同じ動作を行えるように構成されている。また、第3関節68は、装着者12の足首の側方に位置するように設けられている。そのため、靴84は、第3関節68の回動動作により歩行動作に応じて装着者12の足首と同じように床面(または地面)に対する角度が変化する。
【0033】
また、第1関節64及び第2関節66は、駆動モータ20,22,24,26の回転軸が、ギヤを介して被駆動側となる第1フレーム58、第2フレーム60に駆動トルクを伝達するように構成されている。
【0034】
さらに、駆動モータ20,22,24,26は、関節角度を検出する角度センサを有する。角度センサは、例えば、第1関節64及び第2関節66の関節角度に比例したパルス数をカウントするロータリエンコーダなどからなり、関節角度に応じたパルス数に対応した電気信号をセンサ出力として出力する。
【0035】
第1関節64の角度センサは、装着者12の股関節の関節角度に相当するブラケット56と第1フレーム58との間の回動角度を検出する。また、第2関節66の角度センサは、装着者12の膝関節の関節角度に相当する第1フレーム58の下端と第2フレーム60との間の回動角度を検出する。
【0036】
また、第1フレーム58の長手方向の中間位置には、装着者12の腿に締結されるベルト状の腿締結部材78が取り付けられている。腿締結部材78の内面側には、装着者12の腿との隙間をなくして密着するフィッティング部79が取り付けられている。
【0037】
また、第2フレーム60の長手方向の中間位置には、装着者12の膝下の脛に締結されるベルト状の脛締結部材80が取り付けられている。脛締結部材80の内面側には、装着者12の脛との隙間をなくして密着するフィッティング部81が取り付けられている。
【0038】
従って、駆動モータ20,22,24,26で発生された駆動トルクは、ギヤを介して第1フレーム58、第2フレーム60に伝達され、さらに腿締結部材78、脛締結部材80を介して装着者12の脚に補助動力として伝達される。
【0039】
また、第2フレーム60の下端には、第3関節68を介して靴84が回動可能に連結されている。尚、第1フレーム58及び第2フレーム60は、装着者12の脚の長さに応じた長さに調整されている。
【0040】
各フレーム58,60,62は、夫々ジュラルミン等の軽量化された金属材の周囲を弾性を有する樹脂材で覆うように構成されており、腰締結部材30に取り付けられたバッテリ32,34、制御ユニット36等の動作補助装着フレーム18の重量を支えることができる。すなわち、動作補助装置10は、動作補助装着フレーム18などの重量が装着者12に作用しないように構成されており、装着者12に余計な荷重を与えないように取り付けられる。
【0041】
腰締結部材30は、ヒンジ110を介して連結されたベルト120,130と、一方のベルト120の端部に取り付けられたバックル140と、他方のベルト130の端部に取り付けられた係止用金具142とを有する(図4を参照)。
【0042】
腰締結部材30を装着者12に装着する際は、補強部100に腰の背面側を当接させた状態でバックル140の挿入口に係止用金具142を挿入して係止させる。そして、ベルト120,130の長さを装着者12のお腹の出っ張り具合に応じた長さに調整する。これにより、腰締結部材30は、装着者12の腰回りの外周にほぼ密着した状態となる。尚、バックル140は、自動車のシートベルトと同様な構成になっており、係止解除部を操作することにより係止用金具142の係止を解除することができるように構成されている。
【0043】
ここで、腰締結部材30及び腿締結部材78、脛締結部材80の内側に設けられたフィッティング部31,79,81について説明する。尚、各フィッティング部31,79,81は、夫々同一構成であるので、以下の説明ではフィッティング部31の構成について説明する。
【0044】
図4は腰締結部材30の装着状態を模式的に示す横断面図である。図4に示されるように、腰締結部材30は、装着者12の腰の背面側を覆うように上方からみてC字状に形成された補強部100と、補強部100の内側に沿って設けられたフィッティング部31とを有する。補強部100は、剛性を有する樹脂材、または金属材、または金属材の表面を樹脂材で覆うように構成された強度の高い材料により形成されている。また、フィッティング部31は、装着者12の腰背面側との隙間をなくして密着させるための部材であって、例えば、緩衝材のような発泡形成されたウレタンなどの合成樹脂材料により形成されている。これにより、フィッティング部31は、腰締結部材30を装着者12の腰部に固定する際に、装着者12の腰部の形状に合わせて弾性変形し、補強部100と装着者12との間を隙間無く結合するとともに、駆動モータ20,22,24,26で発生された駆動トルクを装着者12に伝達することが可能になる。
【0045】
装着者12の腰回り(被駆動部位)には、駆動モータ20,22の補助動力を装着者12に伝達するための装着補助具200が装着されている。装着者12は、装着補助具200を介して駆動モータ20,22の補助動力を受ける動作補助装着フレーム18の腰締結部材30を支えることにより、第1フレーム58に駆動モータ20,22の駆動力を伝達させる。
【0046】
装着補助具200は、内側の内周面に装着者12の被駆動部位の外周に密着した状態に保持される第1の摩擦面が形成され、外側の外周面に腰締結部材30のフィッティング部31に接触した状態に保持される第2の摩擦面が形成され、内周面と外周面との間に弾性変形可能な弾性層が形成されている。
【0047】
装着補助具200は、装着者12の腰回りに装着されることにより、外側に広げられると共に、内側の装着者12に対して締付け力を発生させる伸縮性及び高摩擦性を有する繊維素材等により織られている。また、装着補助具200は、表面が多数の凹凸を有してゴム材のように摩擦係数が高くなっており、装着者12の服とフィッティング部31との間の摩擦を高める滑り止めとしても作用する。すなわち、装着補助具200は、内周面が装着者12の腰回り密着すると共に、外周面がフィッティング部31の表面に密着する。
【0048】
さらに、伸縮性及び表面に高摩擦性を有する装着補助具200により、装着者12が歩行動作を行なう際にフィッティング部31が滑りにくくなり、モータ駆動力発生時の装着者12とフィッティング部31との間のがたつきが防止される。
【0049】
尚、上記装着補助具200は、前述した腿締結部材78のフィッティング部79が装着される腿、及び脛締結部材80のフィッティング部81が装着される脛にも装着可能なサイズが用意されており、装着者12の意思によって適宜装着される。
【0050】
ここで、装着補助具200の構成について説明する。
【0051】
図5は本発明による装着補助具200の一実施例を上方からみた断面を模式的に示す横断面図である。尚、図5において、断面を分かりやすくするため寸法比を誇張して示しており、実際には、径方向の寸法に対して各層の厚さは薄く形成されている。
【0052】
図5に示されるように、装着補助具200は、横断面形状が円形または楕円形に形成されており、密着層210と、弾性層220と、動力伝達層230と、摩擦層240とを径方向に一体的に積層したものである。各層間は、縫合または接着または溶着などの接合方法を用いて結合される。また、装着補助具200の外周面と、フィッティング部31の接触面との間に、例えば、面ファスナのような締結部材を介在させて装着補助具200と腰締結部材30とを結合することにより、腰締結部材30をより堅固に固定することができるとともに、位置決めが容易になる。
【0053】
密着層210は、摩擦係数の高い繊維材を伸縮可能に織った布地からなる。密着層210の内周面は、装着者12が被着した服の表面(装着者12の被駆動部位(例えば、腿、脛)の外周に対応する)に密着する。摩擦係数の高い繊維材としては、例えば、線径が0.5mmの比較的太い弾性を有する糸で織った布地からなり、表面の凹凸が粗いラバー繊維等がある。
【0054】
また、密着層210は、伸縮性と共に、装着者12の皮膚からの汗を発散させるように通気性も有している。
【0055】
弾性層220は、密着層210と動力伝達層230との間を弾力的に結合し、密着層210を装着者210の被駆動部位に締付けるように作用する。また、弾性層220は、熱可塑性エラストマ(TPE:Thermoplastic Elastomers)により形成されている。熱可塑性エラストマは、常温では、ゴムとして機能し、高温では、軟化して圧縮、押し出し、射出などプラスチック加工機で、容易に成形することが可能である。また、熱可塑性エラストマの種類としては、例えば、スチレン系(SBC)、オレフィン系(TPO)、塩ビ系(TPVC)、ウレタン系(PU)、エステル系(TPEE)、アミド系(TPAE)などがある。また、弾性層220としては、これらの樹脂を含んだ繊維からなり、密着層210よりも硬めに織り込まれた布状の部材でも良い。この布状部材を弾性層220に用いた場合は、通気性が保たれる。
【0056】
弾性層220は、補助動力が増大した場合には密着層210と動力伝達層230との間の補助動力の伝達を緩衝するように弾性変形する。これにより、補助動力(モータトルク)が過大になった場合には、弾性層220の緩衝により装着者12が被着した服の表面に対して密着層210が滑らないように伝達トルクが緩和される。
【0057】
動力伝達層230は、密着層210及び弾性層220の外側に形成され、例えば、外周面がフィッティング部31に密着して補助動力の反力を伝達される。また、動力伝達層230は、伸縮可能な繊維材で織った生地からなり、動作補助装着フレーム18からの補助動力が付加されると共に、補助動力の反力に応じて伸縮する。
【0058】
動力伝達層230の外周面は、フィッティング部31の接触面に接触するため、摩擦層240が形成されている。摩擦層240は、フィッティング部31の接触面に対する摩擦を高めるようにゴム材をコーティングしてなる。尚、ゴム材をコーティングする場合、摩擦層240は、ゴム膜として動力伝達層230の外周面全体を覆うように形成しても良いし、あるいは、動力伝達層230の外周面に所定パターン(例えば、格子状または市松模様など)で部分的に形成しても良い。
【0059】
次に装着補助具200の変形例の構成について説明する。
【0060】
図6は装着補助具200の変形例1を模式的に示す横断面図である。図6に示されるように、変形例1の装着補助具200Aは、横断面形状が円形または楕円形に形成されており、密着層210Aと、弾性層220Aと、動力伝達層230Aと、摩擦層240Aとを径方向に一体的に積層したものである。
【0061】
変形例1の密着層210A、動力伝達層230A、摩擦層240Aは、前述した装着補助具200の密着層210、動力伝達層230、摩擦層240と同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0062】
弾性層220Aは、熱可塑性エラストマにより線状に形成された複数の弾性部材250Aからなる。複数の弾性部材250Aは、上下方向に延在する向きで周方向の所定間隔毎に配されており、密着層210Aと動力伝達層230Aとの間に形成された環状空間の隙間Sに介在する。
【0063】
また、複数の弾性部材250Aは、密着層210Aの外周面と動力伝達層230Aの内周面に溶着されている。また、複数の弾性部材250Aは、横断面形状が楕円形に形成されており、半径方向に弾性変形しやすく、周方向の力に対して抵抗力を発生するように設けられている。
【0064】
従って、通常の補助動力が動力伝達層230Aに伝達された場合には、弾性層220Aを介して密着層210Aに補助動力が伝達される。また、補助動力が増大した場合には、弾性層220Aの複数の弾性部材250Aが弾性変形して緩衝しながら密着層210Aに補助動力が伝達される。その際、複数の弾性部材250Aは、弾性変形の方向に応じた緩衝動作を行なうことにより、装着者12が被着した服の表面に対して密着層210Aが滑らないように伝達トルクを緩和する。
【0065】
図7は装着補助具200の変形例2を模式的に示す斜視図である。図7に示されるように、変形例2の装着補助具200Bは、横断面形状が円形または楕円形に形成されており、密着層210Bと、弾性層220Bと、動力伝達層230Bと、摩擦層240Bとを径方向に一体的に積層したものである。
【0066】
変形例2の密着層210B、動力伝達層230B、摩擦層240Bは、前述した装着補助具200の密着層210、動力伝達層230、摩擦層240と同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0067】
弾性層220Bは、熱可塑性エラストマにより形成された各線状弾性部材252Bを水平方向に対して2方向に45°の角度で傾斜させた網状(ネット状)のパターンに成型された弾性体250B(図7中、動力伝達層230B、摩擦層240Bの一部を切り取って露出させて示す)からなる。弾性体250Bは、複数の線状弾性部材252Bが網状に交差しており、且つ密着層210Bの外周面と動力伝達層230Bの内周面に溶着されている。
【0068】
このように、複数の線状弾性部材250Bの成型パターンが網状に交差させたパターンである場合、弾性層220Bには、菱形の空気室260Bが多数形成される。各空気室260Bは、夫々が弾性体250B及び密着層210Bの外周面と動力伝達層230Bの内周面に囲まれた空間であるため、保温及び保湿を行なう空気溜まりとして作用する。
【0069】
また、補助動力が増大した場合には、弾性体250Bに周方向のトルクが伝達されて複数の弾性部材252Bが弾性変形すると共に、密着層210Bと動力伝達層230Bとの間の補助動力の伝達を緩衝する。これにより、補助動力(モータトルク)が過大になった場合には、複数の弾性部材252Bの弾性変形により装着者12が被着した服の表面に対して密着層210Bが滑らないように伝達トルクが緩和される。
【0070】
尚、変形例2では、水平方向に傾斜させた線状弾性部材252Bを交差させた弾性体250Bを一例として挙げたが、これに限らず、複数の線状弾性部材252Bを上下方向に延在する向きで格子状に交差させた弾性体を用いても良い。
【0071】
図8は装着補助具200の変形例3を模式的に示す横断面図である。図8に示されるように、変形例3の装着補助具200Cは、横断面形状が円形または楕円形に形成されており、密着層210Cと、弾性層220Cと、動力伝達層230Cと、摩擦層240Cとを径方向に一体的に積層したものである。
【0072】
変形例3の密着層210C、動力伝達層230C、摩擦層240Cは、前述した装着補助具200の密着層210、動力伝達層230、摩擦層240と同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0073】
弾性層220Cは、熱可塑性エラストマにより形成されるため、樹脂材のように成型可能である。そのため、弾性層220Cは水平方向に対して2方向に45°の角度で傾斜する各幅広弾性部材を交差させた網状(ネット状)のパターンに成型された弾性体250Cからなる。弾性体250Cは、断面が四角形状とされた複数の弾性部材が網状に交差している。弾性体250Cの各線状弾性部材252Cは、周方向の幅寸法B1が両側の隙間Sの幅寸法B2よりも大となるように形成されている。
【0074】
そして、弾性体250Cの外周面は、密着層210Cの外周面に溶着され、弾性体250Cの内周面は、動力伝達層230Cの内周面に溶着されている。弾性体250Cの各線状弾性部材252Cは、横断面が幅広であるので、密着層210C及び動力伝達層230Cに結合される面積が上記変形例2のものよりも大きく設定されている。そのため、弾性体250Cと密着層210C、動力伝達層230Cとの結合強度が高められている。
【0075】
また、弾性層220Cには、上記隙間Sにより保温及び保湿を行なう菱形の空気室(図8では隠れて見えない)が多数形成される。
【0076】
また、補助動力が増大した場合には、弾性体250Cに周方向のトルクが伝達されて複数の線状弾性部材252Cが弾性変形すると共に、密着層210Cと動力伝達層230Cとの間の補助動力の伝達を緩衝する。これにより、補助動力(モータトルク)が過大になった場合には、複数の線状弾性部材252Cの弾性変形により装着者12が被着した服の表面に対して密着層210Cが滑らないように伝達トルクが緩和される。
【0077】
図9は装着補助具200の変形例4を模式的に示す横断面図である。図9に示されるように、変形例4の装着補助具200Dは、横断面形状が円形または楕円形に形成されており、密着層210Dと、弾性層220Dと、動力伝達層230Dと、摩擦層240Dとを径方向に一体的に積層したものである。
【0078】
密着層210Dは、前述した密着層210と同様に、摩擦係数の高い繊維材を伸縮可能に織った布地からなる。
【0079】
動力伝達層230Dと摩擦層240Dとは、共にゴム材により形成された内周部分と外周部分とを形成しており、上部周縁と下部周縁とが互いに結合されて一つのチューブ状の空気ばね250Dを構成している。
【0080】
動力伝達層230Dと摩擦層240Dとの間は、環状のチューブ内の中空部を形成しており、内部に弾性層220Dを成形する空気が密封されている。すなわち、弾性層220Dと、動力伝達層230Dと、摩擦層240Dは、空気ばね250Dを構成しており、ゴム材よりもソフトな緩衝を行なうことができる。
【0081】
そのため、例えば、補強部100に腰の背面側を当接させた状態でバックル140の挿入口に係止用金具142を挿入して係止させて腰締結部材30を装着者12に装着する際は、空気ばね250Dに密閉された空気が圧縮されることにより、動力伝達層230Dと摩擦層240Dとの間隔が弾力的に変化する。
【0082】
また、補助動力が増大した場合には、空気ばね250Dの空気がより圧縮されて密着層210Dと動力伝達層230Dとの間の補助動力の伝達を緩衝する。これにより、補助動力(モータトルク)が過大になった場合には、空気ばね250Dの緩衝により装着者12が被着した服の表面に対して密着層210が滑らないように伝達トルクが緩和される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
上記実施例及び変形例1〜4では、装着補助具200が装着者12の腰に装着される場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、寸法の異なる装着補助具を用意することにより、腿締結部材78のフィッティング部79が装着される腿、及び脛締結部材80のフィッティング部81が装着される脛にも装着することが可能である。
【0084】
また、上記実施例では、各装着補助具200,200A〜200Dの横断面形状が円形または楕円形の筒状に形成された例を示したが、これに限らず、例えば、密着層210、弾性層220、動力伝達層230、摩擦層240がそれぞれ帯状に形成されて積層された装着補助具を用いても良い。この帯状の装着補助具は、装着する際に装着者の体に巻きつけ、両端部をフックまたは面ファスナなどの締結部材を介して結合することで上記各装着補助具200,200A〜200Dのような筒状を形成するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 動作補助装置
12 装着者
18 動作補助装着フレーム
20 右腿駆動モータ
22 左腿駆動モータ
24 右膝駆動モータ
26 左膝駆動モータ
30 腰締結部材
31,79,81 フィッティング部
32,34 バッテリ
36 制御ユニット
38a,38b,40a,40b,42a,42b,44a,44b 生体信号検出センサ
50a,50b,52a,52b 床反力センサ
54 右脚補助部
55 左脚補助部
56 ブラケット
58 第1フレーム
60 第2フレーム
62 第3フレーム
64 第1関節
66 第2関節
68 第3関節
78 腿締結部材
80 脛締結部材
100 補強部
200,200A〜200D 装着補助具
210,210A〜210D 密着層
220,220A〜220D 弾性層
230,230A〜230D 動力伝達層
240,240A〜240D 摩擦層
250A 弾性部材
250B,250C 弾性体
252B,252C 線状弾性部材
250D 空気ばね
260B 空気室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着式動作補助装置の駆動部からの補助動力が装着者に締結される締結部材を介して伝達される装着者の被駆動部位の外周に装着され、前記締結部材と前記被駆動部位との間に配されて前記補助動力を前記装着者に伝達するための装着補助具であって、
内面に前記装着者の被駆動部位の外周に密着される第1の摩擦面が形成され、
外面に前記締結部材の接触面に接触される第2の摩擦面が形成され、
前記第1の摩擦面と前記第2の摩擦面との間には、弾性層が形成されたことを特徴とする装着補助具。
【請求項2】
装着式動作補助装置の駆動部からの補助動力が装着者に締結される締結部材及び前記装着者に密着するフィッティング部を介して伝達される装着者の被駆動部位の外周に装着され、前記フィッティング部と前記被駆動部位との間に介在して前記補助動力を前記装着者の被駆動部位に伝達するための装着補助具であって、
前記装着者の被駆動部位の外周に密着する第1の摩擦面を有する密着層と、
該密着層の外側に形成され、前記補助動力が伝達される動力伝達層と、
前記密着層と前記動力伝達層との間を弾力的に結合し、前記密着層を前記装着者の被駆動部位に締付ける弾性層と、
前記動力伝達層の外側に形成され、前記フィッティング部の接触面に接触される第2の摩擦面を有する摩擦層と、
を備えたことを特徴とする装着補助具。
【請求項3】
前記密着層は、摩擦係数の高い繊維材を伸縮可能に織ったことを特徴とする請求項2に記載の装着補助具。
【請求項4】
前記弾性層は、熱可塑性エラストマにより形成され、前記密着層と前記動力伝達層との間の前記補助動力の伝達を緩衝することを特徴とする請求項2又は3に記載の装着補助具。
【請求項5】
前記動力伝達層は、前記弾性層の弾性変形に応じて伸縮するように繊維材を伸縮可能に織ったことを特徴とする請求項2又は4に記載の装着補助具。
【請求項6】
前記摩擦層は、前記動力伝達層の外側に形成され、前記フィッティング部に対する摩擦を高めるようにゴム材をコーティングしてなることを特徴とする請求項2に記載の装着補助具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−268978(P2010−268978A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123733(P2009−123733)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】