説明

装置および稼働時間制御方法

【課題】
装置や部品自体の稼働時間を調整し、期待される稼働時間を満たすように制御することを目的とする。
【解決手段】
装置を構成する部品の環境条件と累積稼働時間を基に装置を構成する部品の残り稼働時間の予測を行い、装置を構成する部品ごとの予測稼働時間が装置の期待稼働時間よりも短い場合には装置を構成する部品の環境条件(稼働環境)を制御することで、装置を期待する稼働時間動作させることを可能にする装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稼働時間を制御する装置や方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装置を構成する部品の稼働時間、および部品性能は、定格使用環境内で使用する場合を前提に規定されており、装置の稼働時間は、部品ごとに規定された稼働時間のうちもっとも短いものを基準として決定される。そのため、部品の稼働環境が定格使用環境を逸脱し、部品の稼働時間が予定よりも短くなってしまう場合には、同じく装置の稼働時間も短くなってしまう。このため、部品の稼働時間を正確に評価するための技術として、特許文献1などがある。特許文献1によれば、部品ごとの温度情報と累積稼働時間から、部品の稼働時間を測定することによって、部品の寿命を評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−265774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるように、部品ごとの温度情報と累積稼働時間から、部品の稼働時間を測定する方法では、ある程度正確な部品寿命を把握することは可能であるが、装置や部品自体の稼働時間を調整し、期待される稼働時間を満たすように制御することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、
所定の機能を実行する部品と、
前記部品の稼働環境を制御する環境制御部と、
前記部品の稼働環境毎の稼働時間と前記稼働環境で前記部品を動作させるために必要な前記環境制御部への設定値を保持する稼働情報管理部と、
前記稼働情報管理部が保持する前記部品の稼働環境毎の稼働時間に基づいて、期待される所定の稼働時間に達するまで前記部品を動作させるために必要な稼働環境を決定し、当該必要な稼働環境で前記部品を動作させるための環境制御部の設定値を前記稼働情報管理部から取得し、取得した設定値を前記環境制御部へ設定する稼働時間制御処理を実行する稼働時間制御部と、を備える装置や該装置の機能を実行する稼働時間制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、環境制御部が装置や部品の稼働環境を制御し、装置や部品の稼働時間を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】装置100の構成を示す図である。
【図2】稼働情報管理部200の構成を示す図である。
【図3】部品予測稼動時間230の例を示す図である。
【図4】部品稼動情報240の例を示す図である。
【図5】部品500の消耗稼働時間を算出する式である。
【図6】装置の期待稼働時間を満たす消耗係数閾値を算出する式である。
【図7】装置の稼働時間制御手順を示すフローチャートである。
【図8】パケット転送装置600の構成を示す図である。
【図9】稼働情報管理部610の構成を示す図である。
【図10】部品予測稼動時間613の例を示す図である。
【図11】部品稼動情報614の例を示す図である。
【図12】稼働時間制御部の動作を示すフローチャートである。
【図13】環境条件を「湿度」とした場合における部品稼働情報の例を示す図である。
【図14】環境条件を「消費電力」とした場合における部品稼働情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図を用いて本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における装置100の構成図である。装置100としては、例えばパソコンやサーバなどの情報処理装置や、ルータ、スイッチなどのパケット転送装置など、複数の部品から構成されるあらゆる装置が該当する。装置100はその機能を実現するための複数の部品500を備える。部品500は、情報処理装置であればハードディスクやメモリ、CPUなどに該当し、パケット転送装置であればパケット転送部やパケット解析部など、装置の機能を実現するための部品に該当する。
【0009】
装置100は、さらに、制御対象である部品500の稼動情報や装置100の情報を管理する稼動情報管理部200と、部品500の稼動環境を制御する環境制御部400と、部品500の稼動情報に基づいて環境制御部400へ設定値を指示する稼働時間制御部300を備える。
【0010】
図2は、稼動情報管理部200の構成図である。稼動情報管理部200は、装置100に期待する稼働時間である装置期待稼動時間210と、装置100が既に動作した時間の累積である装置累積稼働時間220を保持する。装置期待稼動時間210は、装置100の利用者が期待する装置100の稼動時間であり、利用者が値を設定・変更することが可能である。利用者は、装置100のリプレースや使用想定期間といった利用者の都合に応じた期間を設定することができる。稼動情報管理部200は、随時装置100の動作時間を計測し、装置累積稼動時間220の値を更新する。
【0011】
さらに、稼動情報管理部200は、装置100内の部品500毎に設定された予測稼働時間である部品予測稼動時間230と、稼働環境別の部品500の稼動情報などを記憶する部品稼動情報240を保持する。また、部品500の稼働時間制御を行うか否かを設定するための稼動時間制御モード250(設定値は有効/無効のいずれか)を備える。
【0012】
図3は、稼動情報管理部200が保持する部品予測稼動時間230の例を示す図である。部品予測稼働時間230では、部品500(部品A、部品B、・・・)毎に予測稼動時間と、予測稼働時間の誤差を考慮した予測誤差係数を保持する。予測稼動時間とは、部品500毎に所定の稼動環境において予測される稼動時間であり、部品毎に個別に値が設定されている。予測誤差係数も部品毎に個別に値が設定されている。
【0013】
図4は、稼動情報管理部200が保持する部品稼動情報240の例を示す図である。部品稼動情報240では、部品500(部品A、部品B、・・・)毎に、環境条件別の累積稼働時間と、各環境条件で動作した場合の部品の消耗度合いを示す消耗係数を保持している。また、各部品を各環境条件で動作させるために必要な環境制御部400の設定値も保持している。
【0014】
図4の例では、環境条件として温度が採用され、「T1度以下」、「T1度〜T2度」、・・・、「TX度以上」という環境条件で区分され、部品Aの場合、「T1度以下」の環境条件で累積で「Am1」時間稼動したことが記憶されている。また、「T1度以下」における部品Aの消耗係数は「At1」であるため、「T1度以下」における部品Aの消耗度合いを考慮した稼働時間は、「Am1×At1」時間と算出される。また、部品Aを「T1度以下」の環境条件で動作させるために必要な環境制御部400の設定値が「Av1」であることが記憶されている。
【0015】
稼動情報管理部200は、定期的に各部品500の情報収集を行い、各部品500がどの温度で何時間稼動したかの情報を収集し、部品稼動情報240の部品毎の環境条件別の累積稼働時間を更新する。なお、消耗係数および環境制御部の設定値には予め所定の値が設定されている。
【0016】
稼働時間制御部300は、稼動情報管理部200の部品稼動情報240が保持する部品500毎の稼働環境別の累積稼働時間と消耗係数の積和によって、部品500毎の消耗稼働時間を算出する。
図5は、この部品500毎の消耗稼働時間の算出式を示す図である。図5の式により、部品500毎に、稼働環境別の消耗度合いを考慮した稼働時間を算出することができる。
【0017】
また、稼働時間制御部300は、稼動情報管理部200の部品予測稼動時間230が保持する部品500毎の予測稼働時間から、図5の式で算出した部品500毎の消耗稼動時間を減算することによって、部品500毎の残り予測稼働時間を算出する。さらに、稼働時間制御部300は、稼動情報管理部200が保持する装置期待稼働時間210から装置累積稼働時間220を減算することによって装置100の残り期待稼働時間を算出し、部品500毎の残り予測稼働時間と比較することによって、装置100が装置期待稼働時間210に達するまで動作可能であるかを判断する。
【0018】
そして、稼働時間制御部300は、装置100の残り期待稼働時間と部品500毎の残り予測稼働時間とに基づいて、各部品500をどのような環境条件で動作させれば、装置100が装置期待稼働時間210に達するまで動作可能であるかを判断する。つまり、稼働時間制御部300は、装置100の残り期待稼働時間と部品500毎の残り予測稼働時間とに基づいて、各部品500を装置100の残り期待稼働時間分だけ動作させるために必要な環境制御部400の設定値を算出し、算出した設定値を環境制御部400に指示する。
【0019】
具体的には、稼働時間制御部300は、部品500毎の残り予測稼働時間を装置100の残り期待稼働時間で除算した値が、図4の部品稼動情報240の該当部品の消耗係数以下となる、環境制御部400の設定値を求める処理を、複数の部品500すべてに対し実施し、その論理積を取った結果、つまり、装置100の期待稼働時間210を満たしうる環境制御部400の設定値を算出し、その結果をもって、環境制御部400へ指示を行う。
【0020】
また、稼動時間制御モード250が「有効」と設定されている場合のみ、稼働時間制御部300は上述した稼働時間制御を行う。一般的に、各部品500は使用される環境によって性能が異なっているため、装置100の稼働時間制御のために環境を制御することで、本来発揮可能である性能を十分に発揮できない場合がある。そこで、利用者の目的に従った動作を可能とするために装置100では、稼働時間制御モード250を設けている。
【0021】
次に、図5〜図12を参照しながら本実施形態について、ルータ・スイッチなどのパケット転送装置を例に具体的に説明する。
図8は、本実施形態におけるパケット転送装置600の構成図である。パケット転送装置600は、受信したパケットを転送するためのパケット転送部640と、パケットの転送先を決定するためのパケット解析部650を備えている。パケット転送部640およびパケット解析部650は、図1の装置100における部品500に該当し、それぞれが温度センサを備えており、自身が稼働する際の温度を計測することができる。
【0022】
パケット転送装置600は、さらに、制御対象であるパケット転送部640およびパケット解析部650の稼動情報やパケット転送装置600自身の情報を管理する稼動情報管理部610と、パケット転送部640およびパケット解析部650の稼動環境であるパケット転送装置600の温度を制御するFAN630と、外気温を測定でき、パケット転送部640およびパケット解析部650の稼動情報に基づいてFAN630へ設定値を指示する稼働時間制御部620を備える。なお、FAN630は、図1の装置100における環境制御部400に該当する。
【0023】
図9は、稼動情報管理部610の構成図である。稼動情報管理部610は、パケット転送装置600に期待する稼働時間である装置期待稼動時間611と、現時点のパケット転送装置600が動作した時間の累積を示す装置累積稼働時間612を保持する。装置期待稼動時間611は、パケット転送装置600の利用者が期待するパケット転送装置100の稼動時間であり、利用者が値を設定・変更することが可能である。稼動情報管理部610は、随時パケット転送装置600の動作時間を計測し、装置累積稼動時間612の値を更新する。
【0024】
さらに、稼動情報管理部610は、パケット転送部640およびパケット解析部650の予測稼働時間613と、稼働環境別のパケット転送部640およびパケット解析部650の稼動情報などを記憶する部品稼動情報614を保持する。また、パケット転送装置600の稼働時間制御を行うか否かを設定するための稼動時間制御モード615(設定値は有効/無効のいずれか)を備える。
【0025】
図10は、稼動情報管理部610が保持する部品予測稼動時間613の例を示す図である。部品予測稼働時間613では、パケット転送部640およびパケット解析部650の予測稼動時間と、予測稼働時間の誤差を考慮した予測誤差係数が保持されている。
【0026】
図11は、稼動情報管理部610が保持する部品稼動情報614の例を示す図である。部品稼動情報614では、パケット転送部640およびパケット解析部650の環境条件別の累積稼働時間と、各環境条件で動作した場合のパケット転送部640およびパケット解析部650の消耗度合いを示す消耗係数を保持している。また、パケット転送部640およびパケット解析部650を各環境条件で動作させるために必要なFAN630の設定値も保持している。FAN630の機構上、パケット転送部640およびパケット解析部650の温度を制御するためには、FAN630の回転数と外気温を考慮する必要があるため、FAN設定値は外気温ごとに回転数を確定できる情報を持っている。
【0027】
図11の例では、環境条件として温度が採用され、「20度以下」、「20度〜25度」、「25度〜30度」、「30度以上」という環境条件で区分され、パケット転送部640の場合、「20度〜25度」の環境条件で累積で30,000時間稼動したことが記憶されている。また、「20度〜25度」におけるパケット転送部640の消耗係数は「0.9」であるため、「20度〜25度」におけるパケット転送部640の消耗度合いを考慮した稼働時間は、「30,000時間×0.9=27,000時間」時間と算出される。また、例えば外気温が20〜30度の場合、パケット転送部640を「20度〜25度」の環境条件で動作させるために必要なFAN630の設定値は「400回転/秒」であることが記憶されている。
【0028】
稼動情報管理部610は稼働時間制御モード615のモード(有効/無効)によらず、定期的に、パケット転送部640およびパケット解析部650の情報収集を行い、パケット転送部640とパケット解析部650が、どの温度で何時間、稼動したかの情報を収集し、部品稼動情報614内に保持しているパケット転送部640とパケット解析部650ごとの各温度帯別の累積稼働時間を更新する。パケット転送部640とパケット解析部650が温度帯別の稼働時間を計測しておき、定期的に稼動情報管理部610に通知してもよいし、パケット転送部640とパケット解析部650は定期的に温度情報のみを稼動情報管理部610に通知し稼動情報管理部610が温度帯別の累積稼働時間を算出してもよく、実現方式は問わない。なお、消耗係数およびFAN設定値は予め設定されている。
【0029】
次に、本実施形態における稼動時間制御部620について説明する。稼動情報管理部610は、図9に示すとおり、装置期待稼働時間611として、100,000時間を利用者から与えられており、現時点で60,000時間稼動しているため、装置累積稼働時間612は60,000時間が保持されている。
【0030】
部品予測稼動時間613は、図10に示すように、パケット転送部640の予測稼動時間は100,000時間であり、パケット解析部650の予測稼働時間は90,000時間である。なお、パケット転送装置600は外気温25度の環境で運用されているものとする。
【0031】
次に、稼動時間制御部620の動作について説明する。
図12は、稼働時間制御部620の動作を示すフローチャートである。稼動時間制御部620は、定期的に稼動情報管理部610の情報を元に以下に説明する動作を実施し、FAN630に対し、制御を行う。
【0032】
稼動時間制御部620は、まず、稼働時間制御モード615が有効か無効かをチェックする(S1000)。有効である場合は、稼働時間制御動作を継続し(S1000のYES)、無効である場合は、稼働時間制御を終了する(S1000のNO)。
【0033】
稼働時間制御モード615が有効である場合、FAN630の設定可能範囲の初期値を求めるため、部品稼動情報614内のFAN設定値の最大値である700回転/秒と、最小値である100回転/秒を取得し、100回転/秒〜700回転/秒をFAN630の設定可能範囲(FAN設定値の範囲)の初期値として保持する(S1001)。
【0034】
次に、装置の残り期待稼働時間を算出する(S1002)。
図6は、装置の残り期待稼働時間の算出式である。この算出式によって、装置期待稼働時間611の100,000時間から装置累積稼働時間612の60,000時間を減算し、装置の残り期待稼働時間を40,000時間と算出する。
【0035】
次にパケット転送部640の消耗稼働時間を、図5の式によって算出する(S1003)。具体的に部品稼動情報614内に保持しているパケット転送部640の情報を図5の式に割り当てた場合、以下の式となり、
(0時間 × 0.8) + (30,000時間 × 0.9) + (20,000時間 × 1.0) + (10,000時間 × 1.1) =58,000時間
パケット転送部640の消耗稼働時間は、58,000時間と算出される。
【0036】
次にパケット転送部640の残り予測稼働時間を算出する(S1004)。
図7は、部品の残り予測稼働時間の算出式である。この算出式を用い、部品予測稼動時間613に記憶されるパケット転送部640の予測稼働時間「100,000時間」および予測誤差係数「0.95」と、S1003で算出したパケット転送部640の消耗稼働時間から、パケット転送部640の残り予測稼働時間を計算すると以下の式となり、
((100,000時間 × 0.95 ) − 58,000時間) =37,000時間
パケット転送部640の残り予測稼働時間は、37,000時間となる(S1004)。
【0037】
続いて、S1005では、まずS1004で算出したパケット転送部640の残り予測稼働時間を、S1002で算出した装置の残り期待稼働時間で除算する。具体的には、37,000時間÷40,000時間=0.925となる。つまり、パケット転送部640が利用者に指定された装置の期待稼働時間を満たすために、残り時間を計算結果の0.925以下の消耗係数となるように温度制御を行えば、装置期待稼働時間611を満たせる(パケット転送部640が装置期待稼働時間611に達するまで動作可能である)と判断できる。
【0038】
外気温が25度であるため、部品稼動情報614に格納されているパケット転送部640の情報から、消耗係数が0.925以下で運用できる外気温が25度のFAN設定値は、消耗係数が0.9かつ外気温が20〜30度の場合である400回転/秒、または、消耗係数が0.8かつ外気温が20〜30度の場合である500回転/秒以上、つまり400回転/秒以上で動作する必要があるということが算出できる。このように、稼働時間制御部620は、パケット転送部640を装置の残り期待稼働時間分だけ動作させるために必要なFAN630の設定値(FAN設定値の範囲である400回転/秒以上)を算出する。
【0039】
次に、S1006では、保持しているFAN630の設定可能範囲(FAN設定値の範囲)と、S1005で算出したFAN設定可能範囲(FAN設定値の範囲である400回転/秒以上)の論理積を取り、保持しているFAN630の設定可能範囲を更新する。FAN630の設定可能範囲は、初期値のままである100回転/秒から700回転/秒が保持されており、S1005で算出したFAN設定可能範囲は400回転/秒以上であるから、その論理積は、400回転/秒〜700回転/秒となり、この値をFAN630の設定可能範囲として更新し保持する。
【0040】
以上で、パケット転送部640のチェックは終了であるが、制御対象である部品としてパケット解析部650のチェックが残っているため、パケット解析部650に対し、再度S1003の処理から算出を行う(S1007のNO)。
【0041】
S1003にて、パケット解析部650の消耗稼働時間を、図5に示す式を用い計算する。部品稼動情報614内に保持しているパケット解析部650の情報を図5の式に割り当てた場合、以下の式となり、
(15,000時間 × 0.8) + (30,000時間 × 0.9) + (10,000時間 × 1.0) + (5,000時間 × 1.1) =54,500時間
パケット解析部650の消耗稼働時間は、54,500時間となる。
【0042】
次に、S1004にて、パケット解析部650の残り予測稼働時間を、図7に示す式を用い算出する。部品予測稼動時間613に記憶されるパケット解析部650の予測稼働時間「90,000時間」および予測誤差係数「0.99」と、S1003で算出したパケット解析部650の消耗稼働時間から、パケット解析部650の残り予測稼働時間を計算すると以下の式となり、
((90,000時間 × 0.99) − 54,500時間) =34,600時間
パケット解析部650の残り予測稼働時間は、34,600時間となる。
【0043】
続いて、S1005では、まず、S1004で算出したパケット解析部650の残り予測稼働時間を、S1002で算出した装置の残り稼働時間で除算する。具体的には、34,600時間÷40,000時間=0.865となる。つまり、パケット解析部650が利用者に指定された装置の期待稼働時間を満たすために、残り時間を計算結果の0.865以下の消耗係数となるように温度制御を行えば、装置期待稼働時間611を満たせる(パケット解析部650が装置期待稼働時間611に達するまで動作可能である)と判断できる。
【0044】
部品稼動情報614に格納されているパケット解析部650の情報から、消耗係数が0.865以下で運用できる外気温が25度のFAN設定値は、消耗係数が0.8かつ外気温が20〜30度の場合である600回転/秒以上で動作する必要があるということが算出できる。 このように、稼働時間制御部620は、パケット解析部650を装置の残り期待稼働時間分だけ動作させるために必要なFAN630の設定値(FAN設定値の範囲である600回転/秒以上)を算出する。
【0045】
次に、S1006では、保持しているFAN630の設定可能範囲(FAN設定値の範囲)と、S1005で算出したFAN設定可能範囲(FAN設定値の範囲である600回転/秒以上)の論理積を取る。保持しているFAN630の設定可能範囲は、先に計算された400回転/秒〜700回転/秒であり、S1005で算出したパケット解析部650のFAN設定可能範囲は600回転/秒以上であるから、その論理積は、600回転/秒〜700回転/秒となり、この値をFAN630の設定可能範囲として更新し保持する。
【0046】
以上で、パケット転送部650のチェックは終了である。制御対象である部品をすべてチェックし終わったため(S1007のYES)、S1008に遷移する。
【0047】
S1008では、稼動時間制御部620は、算出されたFAN630の設定可能範囲である600回転/秒〜700回転/秒を満たす範囲のうち、最も残り予測稼働時間の短い部品を基準とし、その部品の消耗係数が最小となるようにFAN630の設定値を決定する。本例では、パケット解析部650の消耗係数が最小となるようFAN設定値を設定するが、600回転/秒と700回転/秒は同一の消耗係数であるが、現状の外気温度が25度であることから、より使用環境が近い設定値である、600回転/秒という設定値ををFAN630へ指示する。
【0048】
以上の制御により各部品は、利用者により設定された装置(本実施形態の場合はパケット転送装置600)の期待稼働時間に達するまでの動作が可能となるような環境(本実施形態の場合は温度)で動作することが出来る。したがって、装置は利用者の期待する稼働時間の動作が可能となる。
【0049】
また、装置の期待稼働時間611が変更された場合であっても、稼動時間制御部620は定期的に図7の処理を実施しており、設定された値に対応して、利用者の想定する期待稼働時間を満たせるよう制御することが可能である。
【0050】
以上に説明されるように本実施形態によって、各部品を、利用者が想定する装置の期待稼働時間の動作が可能となるような環境で動作するよう制御することで、装置を利用者の期待する期待稼働時間の動作が行えるよう制御出来る。
【0051】
なお、上述した実施の形態は本発明の好適な実施の形態である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0052】
例えば、本実施形態では、部品稼働情報614に設定する環境条件(稼働条件)を温度としたが、この環境条件を「湿度」や「消費電力」とすることも可能である。
【0053】
図13は、環境条件を「湿度」とした場合における部品稼働情報の例を示す図である。この場合は、環境制御部としてFANではなく湿度制御部を設け、部品稼働情報には所定の湿度範囲で区切った環境条件毎に累積時間を計測し、消耗係数を設定し、湿度制御部の設定値を設定する。稼働時間制御部620は、例えば消耗係数0.9以下の環境でパケット転送部640を動作させる必要があると判断した場合には、湿度制御部に対して「湿度:30%」を設定値として指示する。
【0054】
図14は、環境条件を「消費電力」とした場合における部品稼働情報の例を示す図である。この場合は、環境制御部としてFANではなく消費電力制御部を設け、部品稼働情報には所定の消費電力範囲で区切った環境条件毎に累積時間を計測し、消耗係数を設定し、消費電力制御部の設定値を設定する。環境条件の例として「1kW以下」、「1kW〜5kW」などを挙げたが、これらはパケット転送部640やパケット解析部650それぞれの消費電力を示しており、それぞれ異なる値を環境条件として設定してもよい。この場合、稼働時間制御部620は、例えば消耗係数0.9以下の環境でパケット転送部640を動作させる必要があると判断した場合には、消費電力制御部に対して「パケット処理量:50Mbps以下」を設定値として指示する。これにより、消費電力制御部がパケット転送部640に対して「パケット処理量:50Mbps以下」で動作するように指示する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、環境制御部が装置や部品の稼働環境を制御することによって、部品の稼働時間を調整し、装置や部品に期待される稼働時間に達するまで動作させるように制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
100 装置
200 稼働情報管理部
210 装置期待稼働時間
220 装置累積稼働時間
230 部品予想稼働時間
240 部品稼動情報
250 稼働時間制御モード
300 稼働時間制御部
400 環境制御部
500 部品
600 パケット転送装置
610 稼動情報管理部
611 装置期待稼働時間
612 装置累積稼働時間
613 部品予測稼働時間
614 部品稼動情報
615 稼働時間制御モード
620 稼働時間制御部
630 FAN
640 パケット転送部
650 パケット解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を実行する部品と、
前記部品の稼働環境を制御する環境制御部と、
前記部品の稼働環境毎の稼働時間と前記稼働環境で前記部品を動作させるために必要な前記環境制御部への設定値を保持する稼働情報管理部と、
前記稼働情報管理部が保持する前記部品の稼働環境毎の稼働時間に基づいて、期待される所定の稼働時間に達するまで前記部品を動作させるために必要な稼働環境を決定し、当該必要な稼働環境で前記部品を動作させるための環境制御部の設定値を前記稼働情報管理部から取得し、取得した設定値を前記環境制御部へ設定する稼働時間制御処理を実行する稼働時間制御部と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記稼働情報管理部は、前記稼働環境毎における前記部品の消耗度合いを示す消耗係数をさらに保持し、
前記稼働時間制御部は、前記部品の稼働環境毎の稼働時間と前記稼働環境毎の消耗係数の積和により前記部品の消耗稼働時間を算出し、該消耗稼働時間と前記部品の予測稼働時間を比較することによって、期待される所定の稼働時間に達するまで前記部品を動作させるために必要な稼働環境を決定することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の装置であって、
前記稼働時間制御部は、稼働時間制御処理を実行するか否かを動作モードにより選択できることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の装置であって、
前記期待される所定の稼働時間は前記装置の利用者により設定および変更されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の装置であって、
前記稼働環境とは、温度または湿度または消費電力のいずれかであることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の装置であって、
前記部品は、受信したパケットを転送するパケット転送部または受信したパケットの転送先を決定するパケット解析部の少なくともいずれか一方であり、
前記環境制御部は、FANであることを特徴とする装置。
【請求項7】
所定の機能を実行する部品と、前記部品の稼働環境を制御する環境制御部とを備える装置が実行する稼働時間制御方法であって、
前記部品の稼働環境毎の稼働時間と前記稼働環境で前記部品を動作させるために必要な前記環境制御部への設定値を保持し、
前記保持している部品の稼働環境毎の稼働時間に基づいて、期待される所定の稼働時間に達するまで前記部品を動作させるために必要な稼働環境を決定し、
当該必要な稼働環境で前記部品を動作させるための環境制御部の設定値を前記稼働情報管理部から取得し、
前記取得した設定値を前記環境制御部へ設定する、ことを特徴とする稼働時間制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate