説明

装置の予熱を可能にする誘導加熱を用いて材料を成形する装置

本発明は、材料(40)を成形するための成型装置(1)に関するものであり、成型装置(1)は、
−導電性材料から作られて、成形される材料と接触することを目的とする成型ゾーン(14)を備える下部金型本体(10)またはダイと、
−導電性材料から作られて、成形される材料と接触することを目的とする成型ゾーン(16)を備える上部金型本体(12)またはパンチと、
−導電性材料から作られて、ダイ(10)とパンチ(12)の間に挿入されることを目的とする着脱可能な中間部分(18)またはコアと、
−ダイ(10)、パンチ(12)、および中間部分(18)を囲む磁界を発生できる誘導手段(30)であって、これらの3つの構成要素は対で電気的に絶縁され、そのため一方では中間部分(18)とダイ(10)の対面が、他方では中間部分(18)とパンチ(12)の対面が、ダイ(10)およびパンチ(12)の成型ゾーン(14、16)の表面で電流を誘導する磁界が流入する2つのエアギャップ(20、22)の境界を決め、インダクタの作用を成型ゾーン(14、16)の表面に局部化することを可能にする誘導手段(30)と
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料、特に熱可塑性または熱硬化性マトリックス複合材料の成形を、特に成型によって実施するために誘導加熱を用いる装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装置は例えば、特許文献1に記載されるように公知であり、金型/材料界面で加熱の境界を決めるように誘導加熱を局部化することを可能にする。
【0003】
この種の装置は、2つの導電性金型本体を囲み、且つ成形される材料と接触することを目的とする加熱ゾーンを含むインダクタを備え、金型本体はお互いから電気的に絶縁される。したがって、2つの金型本体間のこの電気的切断により、これらの後者の対面は、インダクタによって発生する磁場が流れるエアギャップの境界を決める。磁界はこのように金型本体の表面に、特に各金型本体の加熱ゾーンの表面に電流を誘導し、それによって加熱される材料に近い表面に加熱を局部化できる。
【0004】
インダクタによって発生するエネルギーが、非常に薄い層(通常、十分の数ミリメートル)において加熱ゾーンの表面に直接「注入される」ということを考えると、この種の装置は、加熱ゾーンの温度の非常に速くて非常に有意な上昇を可能にする。可能な限りエアギャップの効果から利益を得るために、その幅、すなわち、それが作動するときの装置の対面間の間隔は、できるだけ小さく、約数ミリメートルでなければならない。実際には、この幅は加熱される部分の厚みで決定されて、それは装置の2つの部分間の絶縁体として作用する。この部分が導電性であるときに、装置の2つの部分を絶縁する適切な厚みの絶縁シム、または当該部分と接触する表面の絶縁コーティングが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/094127号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/031660号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの材料は特別な成型技術を必要とする。これは、例えば、L.F.T(「長繊維熱可塑性プラスチック」)と呼ばれる、長い繊維を有する熱可塑性プラスチック材料のケースである。適切に成型するために、この種の材料は、それ自体すでに高温である金型に堆積されなければならない。しかしながら、周知の金型では、それらの熱慣性のため、商業的な面から見て興味深い時代であっても、理想的な温度で金型上に材料を堆積させ、次いでこの金型を冷却し凝固品を得られるくらい十分に急速な加熱/冷却サイクルにはならない。この課題を解決するために、現在の技術は一定の「中間」温度に維持される金型を利用しており、これは金型に材料を満足に流すことと適切に凝固させることとによる妥協である。その一方で、材料は劣化限界に近い、非常に高い温度で堆積される。例えば、250度で堆積されるL.F.T.材料の場合、使用する金型は80度〜100度の中間温度であり、これにより材料は無難に流れ、同時に材料の凝固点未満に冷却することが可能となる。
【0007】
この種の作業を実施するために、金型の外部で材料の予熱を、例えば赤外線オーブンで、またはホットプレート上で実施して、それから材料をツーピース金型に移動することは公知であり、材料が予熱される間、後者は必要な温度に保たれる。材料は、金型の2つの部分が及ぼす圧力の下で、成型するスペース全体を充填するために流れ始め完成品の形状となる柔らかくて可鍛性のペーストとして金型内に堆積される。この作業を行うために、金型の両部分が接触している状態のときに圧縮室を画定する、すなわち、材料が漏れずに流れるように必要な圧力を及ぼすために封止することが必要である。金型の温度により凝固点未満で材料を漸進的に冷却することが可能になるので、完成品を取り出すことができる。しかしながら、金型の温度は多くの場合最適に冷却するには高過ぎて、完成品が取り出されるときには多くの場合まだ柔らかく、そのため最終的な品質(ひずみ、残留応力など)に関する課題が生じる。
【0008】
要するに、現在行われている方法では、材料の満足な流れも、完成品の充分な冷却もどちらも達成することができないという妥協を物語っている。
【0009】
従って、より短い(加熱/冷却)サイクル時間を可能にする金型を実装して、「中間」温度よりかなり高い温度で材料を金型に堆積し(従って金型を満足に充填するために部品の流れを強化する)、そしてこの金型を中間温度未満の温度まで急速に冷却する(従って完成品の適当な冷却を促進する)ことを可能にすることが重要である。
【0010】
上記のような誘導加熱装置は非常に短い加熱/冷却サイクルを可能にするが、L.F.T.のような材料を成型するためにそれを使用するのは不適当なようである。実際、圧縮室を満足な封止を施す必要性と、金型の2つの側面が加熱されるように電気的に絶縁されることを必要な、この種の装置の技術とはほとんど互換性がない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、この種の装置を改良して、それを上記のタイプの材料を成型するのに適したものにすることを目的とする。特に、エアギャップの幅が10センチメートルを超えることがありえて、その効果が無視できるので、本発明は、この種の金型が開かれている場合はそれを予熱することが可能でないという観察から、でなければあまりに低い性能レベルで始まる。
【0012】
従って、本発明は材料を成形するための成型装置に関するものであり、該成型装置は、
−導電性材料から作られて、成形される材料と接触することを目的とする成型ゾーンを備える下部金型本体またはダイと、
−導電性材料から作られて、成形される材料と接触することを目的とする成型ゾーンを備える上部金型本体またはパンチと、
−導電性材料から作られて、ダイとパンチの間に挿入されることを目的とする着脱可能な中間部分またはコアと、
−ダイ、パンチ、および中間部分を囲む磁界を発生できる誘導手段であって、これらの3つの構成要素は対で電気的に絶縁されて、その結果、一方では中間部分とダイの対面が、他方では中間部分とパンチの対面が、ダイおよびパンチの成型ゾーンの表面に電流を誘導する磁界が流入する2つのエアギャップの境界を決めることにより、インダクタの作用を成型ゾーンの表面に局部化することを可能にする誘導手段と
を備える。
【0013】
一実施形態において、磁界を透過するシムは、一方ではダイと中間部分の間に、そして他方では中間部分とパンチの間に電気的絶縁を施す。
【0014】
一実施形態において、2つの金型本体の成型ゾーンは、閉室、例えば圧縮室として公知の室を形成できる。
【0015】
一実施形態において、2つの金型本体のうちの少なくとも1つの成型ゾーンを含む部分は、ニッケル、クロミウム、および/またはチタン系の鋼のような、好ましくはある程度の磁気透過率および高い電気抵抗率の磁気複合物から成る。
【0016】
一実施形態において、2つの金型本体のうちの少なくとも1つの部分は、成型ゾーン、特に非磁性または弱磁性の材料、例えばステンレス鋼を含む部分と異なる材料から成る。
【0017】
一実施形態において、2つの金型本体のうちの少なくとも1つは磁性材料から成り、成型ゾーンの表面以外の、誘導手段の反対側に位置する表面は、磁界が金型本体を透過するのを防止する非磁性材料でできている遮蔽層で覆われる。
【0018】
一実施形態において、中間部分は、アルミニウムのような、好ましくは低い電気抵抗率の非磁性材料から成る。
【0019】
一実施形態において、中間部分は、シリコーンのような接触コーティングから成る。
【0020】
一実施形態において、中間部材は、黒鉛のような、0.7を超える放射率によって特徴づけられる材料から成る。
【0021】
一実施形態において、2つの金型本体のうちの少なくとも1つは冷却チャンネルのネットワークを備える。
【0022】
一実施形態において、中間部分も冷却チャンネルのネットワークを含む。
【0023】
一実施形態において、誘導手段によって発生する磁界の周波数は10kHz以上で好ましくは100kHz以下である。
【0024】
一実施形態例において、誘導手段は、ダイおよび上部本体にそれぞれ固着する2つの分離可能な部分から成る。
【0025】
また、本発明は上記の成型装置を予熱する方法に関するものであり、該方法は、
−ダイとパンチの間に中間部分を挿入する工程と、
−中間部分と2つの金型本体を対で電気的に絶縁し、その結果、一方では中間部分とダイの対面が、そして他方では中間部分とパンチの対面が2つのエアギャップの境界を決める工程と、
−ダイ、パンチ、および中間部分を囲む磁界を発生するための誘導手段に給電する工程であって、
−その結果、磁界が2つのエアギャップに流入して、ダイおよびパンチの成型ゾーンの表面に電流を誘導し、それによって成型ゾーンの表面における予熱の局部化を可能にする工程と
を含む。
【0026】
また、本発明は材料を成型する方法にも関するものであり、該方法は、
−上記の成型装置の予熱を実施する工程と、
−成型装置から中間部分を取り出す工程と、
−金型本体のうちの1つに成型される材料を堆積させる工程と、
−加圧によって2つの金型本体の間に材料を成型する工程と、
−金型を冷却する工程と、
−凝固品を取り出す工程と
を含む。
【0027】
最後に、本発明は材料を成型する方法に関するものであり、該方法は、
−上記の成型装置の予熱を実施する工程であって、成形される材料はダイと中間部分の間に前もって配置されている工程と、
−成型装置から中間部分を取り出す工程と、
−加圧によって2つの金型本体の間に材料を成型する工程と、
−金型を冷却する工程と、
−凝固品を取り出す工程と
を含む。
【0028】
本発明の他の特徴および利点は以下の記述を読むことで明白になるが、これは以下の図を参照することによって実施例を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による装置を、1つの実施工程に対応する状態で示す。
【図2】本発明による装置を、他の1つの実施工程に対応する状態で示す。
【図3】本発明による装置を、別の1つの実施工程に対応する状態で示す。
【図4a】本発明による装置の下部金型本体の詳細を示す。
【図4b】本発明による装置の中間部分の詳細を示す。
【図5】本発明による装置の断面図を示す。
【図6】図5の装置を装備する電気接触器の実施形態の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1〜3に示される装置1は、2つの金型本体、下部金型本体またはダイ10、および上部金型本体またはパンチ12から成る。両方とも導電性材料から作られて、それらは各々、加熱ゾーンまたは成型ゾーン、それぞれダイ10に対して14、パンチ12に対して16を構成する部分を備える。2つの金型本体10、12は、部材の成型を達成するために互いに接触することが可能であり、成型ゾーン14、16は対面して配置されて、閉室、例えば圧縮室を形成する。
【0031】
並列または直列に電気的に接続されて、電力発生器に接続しているインダクタ30のネットワークは、ダイ10およびパンチ12により形成されるアセンブリ周辺に配置される。各インダクタ30は導電性巻回から成り、そして2つの分離可能な部分32、34を含む。上部34がパンチ12に固着するのに対して、下部32はダイ10に固着する。
【0032】
本発明に従って、装置1の予熱を可能にするために、中間部分またはコア18はダイ10とパンチ12の間に配置される。コア18は導電性材料から作られて、その形状はダイおよびパンチの成型ゾーンの形状に適合する。図1の実施例において、コア18の形状は成型ゾーンの形状を正確に補足するが、後述するように、他の構成も可能である。コア18は、電磁界が透過する、例えばセラミック製のシム24のおかげで、ダイ10およびパンチ12から電気的に絶縁される。絶縁はその他の手段によっても達成されることができ、例えば、適切な厚み(数ミリメートル)のシリコーンコーティングがダイおよびパンチに、またはコアの表面の各々に配置される。
【0033】
誘導手段30が交流電流Iiにより給電されるときに、電磁界は2つの金型本体とコア18の両方を囲む。一方ではダイとコアの間の、そして他方ではコアとパンチの間の電気的絶縁によって、電磁界がコアと2つの金型本体の各々とを切り離している2つの隙間を流れることができる。このようにして、2つのエアギャップ20および22、1つはコア18の対面とダイ10の間に、もう一方はコア18の対面とパンチ12の間に画定される。この効果を得るために、図1に示すように、コアが所定の位置にあるときに、ダイおよびパンチが互いから電気的に絶縁されることも必要である。
【0034】
誘導手段30によって発生する磁界は、エアギャップ20および22内、すなわちダイ10とコア18の間、そしてコア18とパンチ12の間を流れる。従ってそれは電流Iiの方向と反対方向の電流Ic1、Ic2、およびIc3を誘導する。2つのエアギャップ20、22の作用によって、これらの電流Ic1、Ic2、およびIc3は、それぞれダイ10、パンチ12、およびコア18において、独立して閉ループで流れる。より詳しくは、誘導電流Ic1、Ic2、およびIc3は、これらの3つの要素の表面の非常に薄い層(十分の数ミリメートル)を流れる。従ってこれらの電流は、これらの3つの本体の表面でだけ、そして特に成型ゾーン14、16の表面で(抵抗効果による)熱作用を有する。ゆえに、図1の構成はダイおよびパンチの成型ゾーンが効率的に加熱されることを可能にする。
【0035】
一旦成型ゾーン14、16が所望の温度に達すると、装置1は開かれて、コア18はそれから取り出されて、次に成型される材料40をダイ10に堆積することができる。図2の実施例において、材料は堆積される前に予熱されるが、予熱なしで堆積されることができる他の材料もあるものと理解される。それから、これらの2つの要素が接触するまで、パンチは、従来の方法でダイの方へ動かされて、成型(または圧縮)室は閉じられる。図3に示されるこの段階で、誘導手段はもはや利用されないので、ダイおよびパンチはもはや必ずしも電気的に絶縁されるというわけではない点に留意する必要がある。金型が所望の温度であるので、それは材料40を成型するためにもはや加熱される必要はない。
【0036】
ダイとパンチの間に挿入されるコアのおかげで、例えば上述した国際特許出願に記載されているように、エアギャップの存在のすべての利点、特に以下の利点が享受される。
−金型本体の全体を加熱しないために非常に速く加熱させる、表面における電流(したがって、加熱)の局部化、
−エネルギー節減、
−成型ゾーンのいくつかの部分に対して異なる材料を用いることによる加熱の非常に微細なレベルの適応性、
−急速冷却の結果となるように、成型ゾーンにできるだけ間近に冷却手段を有する可能性。
【0037】
本発明によるコアの存在なしではエアギャップ効果が発生することができないので、このような結果は得られることができない。実際に、ダイおよびパンチは、特に金型の平面と直角をなす閉じた表面を備える圧縮室との関連で、合わさるくらい十分に近づけることができない。成型ゾーンの形状がより複雑であるほど、これはより困難である。
【0038】
本発明により、L.F.Tのような材料を成型することと関連して、金型の加熱/冷却サイクルを実施することが可能になる。250℃の温度で堆積される材料について前の実施例に戻ると、金型は、例えば約200℃に非常に近い温度まで上げられることができて、その次に一旦材料が閉じた金型内で加圧されると、金型は周囲温度(現在達成されることができる80℃の値よりかなり低い)に近い温度まで急速に冷却される。したがって、完成品の完全な冷却と凝固結とが組み合わされた、材料の流れおよび金型の効果的な充填は、より短くまたは等価なサイクル時間で得られる。さらに、これにより、その劣化温度に関してより安全なマージンで、材料をより低い予熱温度で堆積させることが可能になる。これはまた、付加的なエネルギー節約をもたらして、さらにより急速な冷却をも可能にする。
【0039】
このように全て改善されたことにより、全ての基準(達成可能な最小限の厚み、表面状態の品質、例えば肋材、ボスなど細部の鮮鋭度および品質)に関し、得られた最終的な品質を有意に向上させることができる。
【0040】
本発明による装置は、2つのエアギャップ20および22の存在に磁気流をそれらの中に集中させる効果があるときはさらに効果的であり、これにより、成型ゾーンでの磁界の作用が更に増大するため、誘導エネルギーが成型ゾーンの表面にもたらされる。
【0041】
エアギャップ20、22にはインダクタからのエネルギーをより均一に分配する効果があるので、該エアギャップは、結果として生じる加熱におけるインダクタの形状および/または分配の影響を制限することも可能にする。したがって、金型に沿って所与の長さにわたり不規則に間隔を置いて配置される誘導巻回は、同じ長さにわたり規則的に分配された同じ数の誘導巻回と実際に同じ効果がある。対照的に、コイルインダクタおよびエアギャップのない導電性負荷を有する従来の構成は、不均等にエネルギーを分配し、この負荷によって受けるエネルギーは各誘導巻回に対して垂直な局所的最大値を示していることが留意される。本発明の主題である装置においては、誘導巻回が金型を囲み、多くの突出する要素、例えばライジング・スペーサ、エジェクタなどを備えることができるので、インダクタ巻回の不均等な分配を有するこの可能性は特に有利である。したがって、必要に応じて、より大きいクリアランスを、加熱の品質に影響を及ぼすことなく、2つの巻回の間に置くことができる。
【0042】
コア18は設計上あまり制約を課されず、装置の他の部分と比べて追加費用はごく僅かしか必要としない。実際、コア18は1つの部材で設計され、例えば成形または鍛造で生産することができ、特定の表面状態を必要としない(成型される材料と接触することを意図しない)ため、高コストの機械加工を必要としない。加えて、加熱段階中にコア18へ印加される機械力は小さく、これによりコア18は機械的強度においてほとんど制約を課されないため、作られる材料はかなり自由でよい。ほとんどの場合、コア18は2つの金型本体と比較して厚みが薄く、これによってもまたコア18の、本発明による装置全体としての製造コストがさらに削減する。コアのコストはまた、ダイおよびパンチが所望の封止を達成するのと同時に電気的に絶縁されることを可能にする圧縮室を製造するコストと比較してもごくわずかである。
【0043】
コアの主要な機能は装置1内で2つのエアギャップの境界を決めることであるので、その形状は成型ゾーンよりも制約されない。したがって、コアは、ダイおよびパンチの成型ゾーンの形状と厳密に相補的(図1に示すように)でなく、その代わりに、特定のエアギャップ形状を画定するように、あちらこちらでそれとかけ離れることが可能な形状であってもよい。また、2つのエアギャップを独立させて設計すること、特にパンチとダイの間にさまざまな加熱効果(例えば、パンチよりもダイをより加熱するなど)を得ることも可能である。
【0044】
エアギャップの形状に適合した設計の実施例を以下に述べる。成型ゾーン14、16の反対側に位置するコア18の表面181、182の形状は成型ゾーンの形状に比較的無関係であることが可能なので、誘導および抵抗現象を変化させることによって得られる加熱を微細に調整するためにこの可能性を利用することができる。特に、エアギャップの幅は、局部的な加熱不足および/または過熱現象を回避するために変えることができる。例えば、図4aおよび4bは、ダイ10およびコア18を示す装置1の細部、およびインダクタによって発生するエアギャップ20の磁界の流れを示す。図4aは一定の幅のエアギャップ20を示しており、これが線形でないときに、電磁流は最小の磁気抵抗の経路をとるので、流れ線は外側よりもエアギャップによって表わされる湾曲内により集中することが留意される。したがって、過熱および加熱不足は、これらの位置でそれぞれ湾曲の内外で発生する。図4bは同じエアギャップ20を示すが、幅は一定でなく、特にエアギャップが湾曲を描く所で局部的に変化する。状況に応じて、この厚みを増減することにより図4aに示す磁気流の偏在を修正することが可能である。このように、図4bにおいて流れ分布が一様であることが留意される。
【0045】
コア18を形成するために用いる材料は、好ましくは低い電気抵抗率を有する非磁性、例えば銅またはアルミニウムであることが有利である。使用時はほとんどコア18を加熱することは不必要なので、これによりエネルギー損失をできるだけ回避することができる。3つの磁界により誘導される電流は非磁性材料でできているコアを実際に横切りながらわずかに加熱するが、インダクタによって発生するほとんどすべてのエネルギーはダイおよびパンチに注入される。例えば、コア18がアルミニウムでできている場合、それが受け取るエネルギーは、ダイ10およびパンチ12に注入されるエネルギーの約5%である。状況に応じて、コアはその2つの面または単一面において、異なる材料から成ることができるため(例えば、挿入物により)、抵抗および誘導現象(従って、得られる温度も)を微細にかつ局部的に制御できる。
【0046】
ダイ10およびパンチ12のエネルギー損失を最小化するために、これらの2つの要素を2つの部分で作ることが可能である。第1部分(それぞれ、ダイに対して101、そしてパンチに対して121)は、関連する成型ゾーン14、16を含み、おそらくキュリー点を有する磁性材料から成る。第2部分(それぞれ、ダイに対して102、そしてパンチに対して122)は、非磁性または弱磁性の化合物から成る。成型ゾーン14、16を含む部分101、121を形成している磁性材料は、例えば、ニッケル、クロミウム、および/またはチタンを主成分とした鋼鉄合金のような、銅の電気抵抗率より高い電気抵抗率を有することが好ましい。成型ゾーンの高い電気抵抗率は、より効果的な誘導加熱を可能にするので有利である。しかしながら、材料の透磁率も誘導加熱の効率に影響を及ぼす点に留意する必要がある。成型ゾーンを含まない部分102、122は、機械的特徴と電磁的特性の間の良好な妥協を達成する材料から成る。実際のところ、成型ゾーンの背後に位置するこれらの2つの部分のエネルギー損失を制限して、すべての加熱作用を成型ゾーンの表面に焦中させるために、部分102、122を構成する材料は弱磁性でもあって、できるだけ低い抵抗も有さなければならず、その一方で、成型段階の大きくかつ繰り返される力に耐えるために必要な機械的強度も備えていなければならない。この目的を達成するために、ステンレス鋼および銅を興味深い選択肢として表す。
【0047】
変形において、ダイ10およびパンチ12は、特許文献2に記載されている方法に従って製作されることができる。このように、それぞれの成型ゾーンを含む、ダイ10およびパンチ12は全部磁性材料から製造されて、その一方で、誘導手段に対向して位置するダイおよびパンチの表面は、成型ゾーン14、16の表面を除いて、銅のような非磁性材料でできている遮蔽層で覆われる。この構成において、遮蔽はその厚みが電磁界の浸透深さより大きくなるようなものである。したがって、誘導電流は遮蔽層に流入するため、材料が誘導加熱に非常に反応する成型ゾーンの表面の位置以外は、ごくわずかな加熱およびエネルギー損失しか生じない。
【0048】
図1および2に示される装置は、加熱による部品の製造または成形を高速で可能にするために、冷却システムを備えている。この目的を達成するために、チャンネル(それぞれ26および28)のネットワークがダイ10およびパンチ内に設けられて、冷却剤が成型領域の表面の近くで循環することを可能にする。第1に、金属金型本体に非常に熱的に伝導力があるので、そして第2に、チャンネルが成型ゾーン14、16の表面にできるだけ近くに配置されることができるので、非常に良好な冷却がこのように得られる。急速かつ部品全体にわたり一様であるため、これにより非常に効果的な冷却が提供される。
【0049】
場合によっては、コアは、図5に見られる、チャンネル27の形でも、冷却システムを備えている。実際、あまり加熱されない場合であっても、特定のサイクル数の後で非常に高い温度に達することができる(冷却は指定されたサイクル数の後でのみ実施されてもよい)。
【0050】
上述の通り、インダクタ30は、ダイ10およびパンチ12にそれぞれ固着する2つの分離可能な部分32、34にあり、成型後に部品を迅速に取り出すことを可能にするため、高い生産速度が得られる。加熱段階の間、インダクタ・ネットワークの2つの部分32、34の間の電気的導通は、電気接触器36により提供される。これらの電気接触器は、2つの分離可能な部分の間に電気的導通を維持しながら、大きな変位を可能にする。実際、コア18がダイ10とパンチ12の間に挿入されるときにインダクタに給電するために、10センチメートルを超え得る変位が必要である。このように、図6の実施例では、各接触器36は下部32に固着する雄要素360を備え、この雄部材は上部34に固着する雌要素362に滑り込む。雄要素360と雌要素362の間の電気的接触は、例えば、雌要素362内に配置されて雄要素360を囲む弾性金属片364によって設けられる。実施例において、雌要素は、必要な変位を確保するために、上部34内の空腔により延長される。
【0051】
また本発明による装置によって、材料が元の位置で、すなわち直接金型内で予熱されることが可能となる。材料を元の位置で予熱することは、例えば、冷たいときは剛性プレートの形であり、そしてそれらの形状が適切に変えることができるように予熱する必要性のある特定の複合材料に有用である。このようにして、材料および成型装置は同時に予熱される。このために、材料はダイ10の上に配置され、そしてコア18は材料に対して配置される。この予熱段階の効率を向上させるために、シリコーンのような接触コーティングで材料と接触するコアの面を覆うことが有利である。ゆえに、熱いダイと材料との接触、したがって熱伝導を向上させるために、コア18は材料に圧力を及ぼすことができる(しかしながら、接触がない場合、ダイと部品の間の伝達は材料を加熱するのに十分に効果的である)。導電部品(例えば、炭素繊維を含んでいる材料)の場合、このコーティングによって、コアが電気的に絶縁されることができる。
【0052】
装置1のみの予熱と元の位置での予熱の両方を適用できる本発明の変形において、コア18は放射線による加熱が可能な材料で作られる。このために、この種の材料は、加熱されるときに高い熱放射を有する必要があり、例えば、黒鉛のような材料は0.7を超える放射率を有する。この種の材料は導電性であり、従って、本発明によるコアの主要な機能(すなわち、2つのエアギャップの境界を決めること)を常に確実にすることが可能であるが、温度が誘導電流の流れによって上昇するとき、放射線によってダイおよびパンチが加熱される。元の位置での予熱が放射コアにより実施される場合、コアは予熱される材料に近接して置かれるが、材料とは直接接触しない。
【0053】
別の変形において、金属コア18の使用が提供されており、熱伝達による加熱を利用している。従って、コアは、装置1だけが予熱される場合にはダイおよびパンチに近接して(しかし接触せずに)置かれるか、または材料が元の位置で予熱される場合には材料およびパンチに近接して置かれる。有利なことに、コア18は磁性であり、および/または高い電気抵抗率を有する材料から作られ、その結果、誘導手段の作用で著しく加熱される。
【符号の説明】
【0054】
1 (成型)装置
10 ダイ(下部金型本体)
12 パンチ(上部金型本体)
14、16 成型ゾーン
18 コア(中間部分)
20、22 エアギャップ
24 シム
26、27、28 チャンネル
30 インダクタ(誘導手段)
32 下部
34 上部
36 電気接触器
40 材料
101 (ダイに対する)第1部分
121 (パンチに対する)第1部分
102 (ダイに対する)第2部分
122 (パンチに対する)第2部分
181、182 コアの表面
360 雄要素
362 雌要素
364 弾性金属片
Ii 交流電流
c1、Ic2、Ic3 電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を成形するための成型装置であって、
−導電性材料から作られて、成形される材料と接触することを目的とする成型ゾーンを備える下部金型本体またはダイと、
−導電性材料から作られて、成形される材料と接触することを目的とする成型ゾーンを備える上部金型本体またはパンチと、
−導電性材料から作られて、前記ダイと前記パンチの間に挿入されることを目的とする着脱可能な中間部分またはコアと、
−前記ダイ、前記パンチ、および前記中間部分を囲む磁界を発生できる誘導手段であって、これらの3つの構成要素は対で電気的に絶縁され、一方では前記中間部分と前記ダイの対面が、他方では前記中間部分と前記パンチの対面が、前記ダイおよび前記パンチの前記成型ゾーンの表面で電流を誘導する磁界が流入する2つのエアギャップの境界を決めることにより、インダクタの作用を前記成型ゾーン(14、16)の表面に局部化することを可能にする誘導手段と
を備える成型装置。
【請求項2】
磁界を透過するシムが、一方では前記ダイと前記中間部分の間に、そして他方では前記中間部分と前記パンチの間に電気的絶縁を施す請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記2つの金型本体の前記成型ゾーンが、閉室、例えば圧縮室として公知の室を形成できる請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記2つの金型本体のうちの少なくとも1つの成型ゾーンを含む部分が、ニッケル、クロミウム、および/またはチタン系の鋼のような、好ましくはある程度の磁気透過率および高い電気抵抗率の磁気複合物から成る請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記2つの金型本体のうちの少なくとも1つの部分が、前記成型ゾーン、特に非磁性または弱磁性の材料、例えばステンレス鋼を含む部分と異なる材料から成る請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記2つの金型本体のうちの少なくとも1つが磁性材料から成り、成型ゾーンの表面以外の、前記誘導手段の反対側に位置する表面が、前記磁界が前記金型本体を透過するのを防止する非磁性材料でできている遮蔽層で覆われる請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記中間部分が、アルミニウムのような、好ましくは低い電気抵抗率の非磁性材料から成る請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記中間部分が接触コーティング、例えばシリコーンから成る請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記中間部材が、黒鉛のような0.7を超える放射率によって特徴づけられる材料から成る請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記2つの金型本体のうちの少なくとも1つが冷却チャンネルのネットワークを備える請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記中間部分が冷却チャンネルのネットワークを備える請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記誘導手段によって発生する前記磁界の周波数Fは10kHz以上で好ましくは100kHz以下である請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記誘導手段が、前記ダイおよび前記上部本体にそれぞれ固着する2つの分離可能な部分から成る請求項1に記載の装置。
【請求項14】
−前記ダイと前記パンチの間に前記中間部分を挿入する工程と、
−前記中間部分と前記2つの金型本体を対で電気的に絶縁し、その結果、一方では前記中間部分と前記ダイの対面が、他方では前記中間部分と前記パンチの対面が2つのエアギャップの境界を決める工程と、
−前記ダイ、前記パンチ、および前記中間部分を囲む磁界を発生するための誘導手段に給電する工程であって、
−その結果、前記磁界が前記2つのエアギャップに流入して、前記ダイおよび前記パンチの前記成型ゾーンの表面に電流を誘導し、それによって前記成型ゾーンの表面における予熱の局所化を可能にする工程と
を含む請求項1に記載の装置を予熱する方法。
【請求項15】
−請求項14の方法に従って成型装置の予熱を実施する工程と、
−前記成型装置から前記中間部分を取り出す工程と、
−成型される材料を前記金型本体のうちの1つに堆積させる工程と、
−前記2つの金型本体の間に加圧によって前記材料を成型する工程と、
−前記金型を冷却する工程と、
−前記凝固品を取り出す工程と
を含む成型方法。
【請求項16】
−請求項14の方法に従って成型装置の予熱を実施する工程であって、成型される材料が前記ダイと前記中間部分の間に前もって配置されている工程と、
−前記成型装置から前記中間部分を取り出す工程と、
−前記2つの金型本体の間に加圧によって前記材料を成型する工程と、
−前記金型を冷却する工程と、
−前記凝固品を取り出す工程と
を含む成型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−505777(P2012−505777A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531539(P2011−531539)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051960
【国際公開番号】WO2010/046582
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511096488)
【氏名又は名称原語表記】ROCTOOL
【住所又は居所原語表記】Savoie Technolac BP 341, Modul R, 34 allee du lac d’Aiguebelette, F−73375 Le Bourget du Lac Cedex (FR)
【Fターム(参考)】