説明

装置またはその架台の下部構造

【課題】 後方にメンテナンススペースがなくても、簡易な構成で装置を引出し可能とすることで、メンテナンスを可能とする。また、キャスタの設置を低減して、コストの低減を図る。
【解決手段】 架台4には、下部四隅にそれぞれ脚部15が設けられると共に、架台4付き装置1の重心位置かそれよりも後方の下部に車輪13が設けられる。脚部15は、高さ調整可能なアジャスト脚16から構成される。装置の設置時には、車輪13を浮かした状態で、脚部15により装置が支持される。装置の移動時には、前方に配置された脚部15を縮めて車輪13を接地させ、後方に配置された脚部15を浮かせた前傾姿勢とする。その状態で、装置前方を起こしながら、車輪13のみで装置を支持しつつ、装置を前後へ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種装置またはそれを支持する架台の下部構造に関するものである。特に、装置後方のメンテナンスを行うために、装置を手前側へ引き出すことを容易にする構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
装置後方にメンテナンスを要する機器がある場合、メンテナンスに備えて装置後方にスペースを確保する必要がある。このスペースを確保しないまたは確保できない場合には、メンテナンス時に装置を手前側へ引き出す必要がある。また、メンテナンスを要する機器が装置の後方ではなく側方にある場合でも、装置の左右が壁や他の装置などで挟まれている場合には、メンテナンス時に装置を手前側へ引き出す必要がある。
【0003】
従来、装置を移動可能とする場合、装置自体またはそれを支持する架台の下部四隅に、それぞれキャスタを設けるのが通常である。但し、この場合でも、比較的重量のある装置においては、装置の設置時においてもキャスタのみで装置を支持するのは負担が大きい。そのため、キャスタに加えて脚部を別途設け、装置の設置時には、その脚部にて装置を支持することが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、必然的にキャスタが少なくとも四つ必要となる。従って、コストを要するだけでなく、キャスタの取付けにも手間と時間を要することになる。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、後方などにメンテナンススペースがなくても、簡易な構成で装置を引出し可能とすることで、メンテナンスを可能とすることにある。また、キャスタの設置を低減して、コストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、装置は、架台を有しない場合には、その装置の下部四隅にそれぞれ脚部が設けられると共に、その装置の重心位置かそれよりも後方の下部に車輪が設けられる一方、架台を有する場合には、その架台の下部四隅にそれぞれ脚部が設けられると共に、その架台付き装置の重心位置かそれよりも後方の下部に車輪が設けられており、前方二箇所に設けられる前記脚部は、高さ調整可能に構成されていることを特徴とする装置またはその架台の下部構造である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも前方左右の脚部は、高さ調整可能に構成されている。また、装置(架台に支持される場合には架台付き装置)の重心位置は、車輪の設置位置かそれよりも前方に配置される。このような構成であるから、前方左右の脚部を縮めると、後方左右の脚部が浮き上がるよう作用する。従って、装置の前方を起こしながら作業することで、車輪を用いて装置を前後へ容易に移動させることができる。これにより、後方などにメンテナンススペースがなくても、装置を引き出してメンテナンスを図ることができる。しかも、装置や架台の下部四隅にそれぞれキャスタを設置する訳ではないので、コストの低減を図ることもできる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、装置またはそれを支持する架台の下部には、車輪と、高さ調整可能な複数の脚部とが設けられており、前記装置の設置時には、前記車輪を浮かした状態で、前記脚部により前記装置が支持され、前記装置の移動時には、前方に配置された前記脚部を縮めて前記車輪を接地させ、この車輪を用いて前記装置の移動を可能とすることを特徴とする装置またはその架台の下部構造である。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、装置の設置時には、脚部で装置は支持されるが、装置の移動時には、手前側に配置された脚部を縮めて、車輪が接地される。従って、この車輪を用いて装置を前後へ容易に移動させることができる。これにより、後方などにメンテナンススペースがなくても、装置を引き出してメンテナンスを図ることができる。しかも、装置や架台の下部四隅にそれぞれキャスタを設置する訳ではないので、コストの低減を図ることもできる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、高さ調整可能な前記脚部は、床面に接地される受座と、この受座から上方へ延出すると共に前記受座に対し回転自在なネジ棒と、このネジ棒に進退可能にねじ込まれるロックナットとを備えるアジャスト脚から構成され、このアジャスト脚は、前記装置または前記架台の下部に、前記ネジ棒の上部がねじ込まれて設けられ、前記装置または前記架台の下部に前記ロックナットを締め付けることで、前記装置または前記架台から下方への前記ネジ棒の突出量を固定できる一方、そのロックナットを緩めて前記装置または前記架台に対し前記ネジ棒を回転させて前記突出量を調整できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置またはその架台の下部構造である。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、簡易な構成のアジャスト脚により、各脚部の長さ調整が容易で、しかもその固定はロックナットにより確実になされる。従って、装置の設置や移動の操作を容易に行うことができる。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記装置は、処理槽内に予め貯留しておいた水を電気ヒータにより加熱して、これにより生ずる蒸気で前記処理槽内の被加熱物の加熱を図る飽和蒸気加熱機とされ、前記処理槽は、横向き略円筒状でその一端面を前方へ向けて開口させる処理槽本体と、この処理槽本体の開口部を開閉する扉とを備え、前記処理槽本体は、前記開口部の下部領域が閉塞されて、内部空間の下部が貯水部とされ、前記電気ヒータは、前記処理槽本体の後方から前記貯水部内に差し込まれて設けられ、前記架台は、前記処理槽本体を支持すると共に、下部四隅にそれぞれ前記アジャスト脚が設けられ、前記架台の前後方向中途部には、前記架台付き装置の重心位置かそれよりも後方の左右二箇所にのみ、左右方向へ配置された車軸に回転自在に保持された前記車輪が設けられることを特徴とする請求項3に記載の装置またはその架台の下部構造である。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、貯水型の飽和蒸気加熱機において、貯留水を加熱するための電気ヒータが装置後方から前方へ向けて差し込まれていても、手前側左右二箇所のアジャスト脚を縮めて車輪を用いて装置を手前側へ引き出すことで、電気ヒータのメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の装置またはその架台の下部構造によれば、後方などにメンテナンススペースがなくても、簡易な構成で装置を引出し可能とすることで、メンテナンスが可能となる。また、キャスタの設置を低減して、コストの低減を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の下部構造は、各種装置またはそれを支持する架台の下部に適用される。架台を有しない場合には装置自体の下部、架台を有する場合には架台の下部に適用される。具体的には、装置または架台の下部には、複数の脚部と車輪とが設けられる。脚部は、通常、装置または架台の前方下部と後方下部とに分けて設けられる。典型的には、脚部は、装置または架台の下部四隅に設けられる。
【0016】
前方に配置される脚部は、高さ調整可能に構成される。たとえば、装置または架台の下部四隅にだけ脚部を設ける場合、前方左右に設けられる脚部は、高さ調整可能に構成される。好ましくは、下部四隅のすべての脚部が、高さ調整可能なアジャスト脚から構成される。
【0017】
アジャスト脚は、床面に接地される受座と、この受座から上方へ延出すると共に受座に対し回転自在なネジ棒と、このネジ棒に進退可能にねじ込まれるロックナットとを備える。そして、アジャスト脚は、装置または架台の下部に、ネジ棒の上部がねじ込まれて設けられる。このような構成であるから、装置または架台の下部にロックナットを締め付けることで、装置または架台から下方へのネジ棒の突出量を固定できる一方、そのロックナットを緩めて装置または架台に対しネジ棒を回転させて前記突出量を調整できる。このようなアジャスト脚を装置または架台の下部四隅に設けておけば、装置の高さ調整や水平設置を容易に行うことができる。
【0018】
装置は、脚部で支持された状態で据え付けられる。この際、車輪を浮かした状態とするのが好ましい。そして、メンテナンスなどのために装置を移動させたい場合には、前方に配置された脚部を縮めて車輪を接地させる。装置(架台に支持される場合には架台付き装置)の重心位置と、車輪の設置位置との前後関係により、前方の脚部を縮めた際には、後方の脚部が浮くように前方の脚部と車輪とで接地されるか、前方の脚部が浮くように後方の脚部と車輪とで接地される。前者の場合、装置の前方を押し上げて、装置を一時的に車輪のみで支持して、装置を移動させることができる。後者の場合、装置の前方を押し下げて、装置を一時的に車輪のみで支持して、装置を移動させることができる。
【0019】
たとえば、車輪は、装置または架台付き装置の重心位置かそれよりも後方に設けられる。逆にいうと、重心位置は、車輪の取付位置かそれよりも前方に配置される。この場合、前方の脚部を縮めると、後方の脚部が浮き上がるよう作用するので、装置の前方を起こしながら、車輪を用いて装置を前後へ容易に移動させることができる。これにより、後方などにメンテナンススペースがなくても、装置を引き出してメンテナンスを図ることができる。しかも、装置や架台の下部四隅にそれぞれキャスタを設置する訳ではないので、コストの低減を図ることもできる。
【0020】
ところで、車輪は、キャスタにより構成するのが簡易である。キャスタは、周知のとおり、二股分かれしたヨークの左右の支持片間に車軸が架け渡され、その車軸に車輪が回転自在に保持されて構成される。そして、そのヨークが装置または架台の下部に固定される。キャスタは、装置または架台に対し旋回可能に設けてもよいが、旋回不能に設けることで足りる。旋回不能に設ける場合、車軸は左右方向へ沿って配置される。
【0021】
本発明の下部構造が適用される装置は、特に問わないが、たとえば貯水型の飽和蒸気加熱機とされる。この飽和蒸気加熱機は、処理槽内に予め貯留しておいた水を電気ヒータにより加熱して、これにより生ずる蒸気(飽和蒸気)で処理槽内の被加熱物の加熱を図る装置である。処理槽内の圧力を調整することで、処理槽内の飽和蒸気温度を調整して、被加熱物の加熱温度を変更することができる。ここで、被加熱物は、特に問わないが、たとえば食材または食品などの被調理物とされる。この場合、飽和蒸気加熱機は、飽和蒸気調理機ということができる。あるいは、被加熱物は、手術用メスなどの被滅菌物とされる。この場合、飽和蒸気加熱機は、蒸気滅菌器ということができる。
【0022】
処理槽は、横向き略円筒状でその一端面を前方へ向けて開口させる処理槽本体と、この処理槽本体の開口部を開閉する扉とを備える。そして、処理槽本体は、その開口部の下部領域が閉塞されて、内部空間の下部が貯水部とされる。また、電気ヒータは、処理槽本体の後方から貯水部内に差し込まれて設けられる。
【0023】
このような構成の飽和蒸気加熱機は、処理槽を支持する架台の下部四隅にそれぞれアジャスト脚が設けられると共に、前後方向中途部の左右下部にそれぞれ車輪が設けられる。この際、車輪は、架台付き装置の重心位置かそれよりも後方において、左右に並んで配置される。従って、手前側左右二箇所のアジャスト脚を縮めて、車輪を用いて装置を前後へ移動させることができる。これにより、装置後方にメンテナンススペースを確保しなくても、装置を手前側へ引き出すことで、装置後方からの電気ヒータのメンテナンスが可能となる。
【実施例】
【0024】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の装置またはその架台の下部構造は、各種の装置に適用可能であるが、ここでは貯水型の飽和蒸気加熱機の架台に適用した例について説明する。貯水型の飽和蒸気加熱機は、処理槽内に予め貯留しておいた水を電気ヒータにより加熱して、これにより生ずる蒸気で処理槽内の被加熱物の加熱を図る装置である。
【0025】
図1から図3は、本発明の下部構造が適用された架台付き装置としての飽和蒸気加熱機の一実施例を示す概略図であり、図1は斜視図、図2は正面図、図3は側面図であり、扉を開いた状態を示している。
【0026】
本実施例では、飽和蒸気加熱機1を構成する装置本体2は、パネル3で覆われてボックス状とされる。そして、このボックス状の装置本体2が、架台4の上に設置される。架台4は、装置本体2の四隅を支える支柱5,5,…を備える。各支柱5は、同一断面形状の角パイプから構成される。具体的には、断面正方形状の角パイプが使用され、上下方向へ沿って配置される。
【0027】
架台4の左右両端部において、前後の支柱5,5同士は第一接続材6にて架け渡される。この第一接続材6は、支柱5と同様の角パイプから構成され、前後方向へ沿って配置される。この際、支柱5の下端部において、前後の支柱5,5同士を接続すると共に、パネル3により覆われて見えないが、ボックス状の装置本体2の下端部においても、前後の支柱5,5同士を接続している。また、同様にパネル3により覆われて見えないが、ボックス状の装置本体2の下端部においては、架台4の前後両端部において、左右の支柱5,5同士、または左右の第一接続材6,6同士は、第二接続材(図示省略)により接続されている。この第二接続材は、支柱5と同様の角パイプから構成され、左右方向へ沿って配置される。
【0028】
さらに、架台4の下部において、左右の第一接続材6,6同士は、第三接続材7により接続される。この第三接続材7は、断面略L字形状の形材から構成され、左右方向へ沿って配置される。その際、一片を水平に配置して、その水平片8の左右両端部が左右の第一接続材6,6の上面に重ね合わされて固定される。図3に示すように、本実施例では、第三接続材7は、架台4の前後方向中央部よりもやや前方に配置される。
【0029】
第三接続材7の左右両端部には、それぞれキャスタ9が設けられる。各キャスタ9は、同一の形状および大きさとされ、下方へ開放した断面略コ字形状のヨーク10と、このヨーク10の左右の支持片11,11間に架け渡される車軸12と、この車軸12に回転自在に保持される車輪13とを備えて構成される。このようなキャスタ9は、ヨーク10の中央片14が第三接続材7の水平片8に固定される。この際、キャスタ9は、その車軸12を左右方向へ沿って配置されて、第三接続材7の左右両端部に設けられる。このようにして、本実施例では、架台4付きの飽和蒸気加熱機1の重心位置か、それよりも後方に車軸12を配置して、車輪13が設けられる。
【0030】
図4は、架台4に設けられた各支柱5の下部構造を示す概略縦断面図である。各支柱5の下端部には、高さ調整可能な同一構成の脚部15が設けられる。本実施例の脚部15は、アジャスト脚16から構成される。このアジャスト脚16は、床面に設置される逆椀状の受座17と、この受座17から上方へ延出すると共に受座17に対し回転自在なネジ棒18と、このネジ棒18に進退可能にねじ込まれるロックナット19とを備える。
【0031】
受座17は、円板の中央部が略円錐台形状に上方へ凹んで形成される。これにより、受座17の中央部には、下方へ開口して略円錐台形状の凹部20が形成される。また、受座17の中央部には、凹部20の上壁21を上下に貫通してボルト挿通穴22が形成される。このボルト挿通穴22には、ネジ棒18の下端部が通される。そして、ネジ棒18は、受座17に対し回転自在であるが、脱落不能に保持される。
【0032】
ネジ棒18は、全ネジのスタッドボルトから形成され、下端部が受座17のボルト挿通穴22に通された状態で、凹部20の上壁21を挟み込むように、二つの保持ナット23,23が固定される。この際、上下の保持ナット23,23は、ネジ棒18に対して進退不能に固定される。すなわち、ネジ棒18と各保持ナット23とは、一体化される。また、下側の保持ナット23は、受座17の凹部20内に収容される。このようにして、上下の保持ナット23,23間には、凹部20の上壁21が回転自在で脱落不能に保持される。そして、ネジ棒18の中途に、ロックナット19が進退可能に設けられる。
【0033】
一方、各支柱5の下端部には、ナット状部品24が固定されている。ネジ棒18の上部は、ナット状部品24のネジ穴25に進退可能にねじ込まれて、支柱5の中空穴26に突入される。従って、支柱5のナット状部品24に対し、ネジ棒18を回転させることで、支柱5の下端部からのネジ棒18の突出量を調整することができる。そして、その突出量を固定したい場合には、支柱5の下端部のナット状部品24へロックナット19を締め込めばよい。
【0034】
実際の作業は、スパナなどを用いて、ロックナット19を緩めた後、上側の保持ナット23を回転させて、ネジ棒18を回転させて行われる。これにより、支柱5の下端部からのネジ棒18の突出量が調整され、所望の突出量において、ロックナット19を再び支柱5の下端部へ締め込めば、突出量を固定できる。
【0035】
図5は、本実施例の飽和蒸気加熱機1(装置本体2)の具体的構成を示す概略図であり、一部を断面にすると共に一部を省略して示している。本実施例の飽和蒸気加熱機1は、食材や食品などの被加熱物27が収容される中空構造の処理槽28と、この処理槽28内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段29と、減圧下の処理槽28内へ外気を導入する復圧手段30と、処理槽28内から蒸気を排出する排蒸手段31と、処理槽28内の貯水部32に貯留された水を加熱する電気ヒータ33と、貯水部32に水を供給する給水手段34と、貯水部32から水を排出する排水手段35と、処理槽28内の圧力を検出する圧力センサ36と、処理槽28内に収容された被加熱物27の温度を検出する品温センサ37と、貯水部32に貯留された水の温度を検出する水温センサ38と、これら各センサ36,37,38の検出信号や経過時間などに基づき前記各手段29,30,31,33,34,35を制御する制御手段(図示省略)とを備える。さらに、飽和蒸気加熱機1は、図1に示すように、ボックス状の装置本体2の手前側の右上部に操作パネル39を備える。
【0036】
図1に示すように、処理槽28は、架台4の上部において、手前側へ開口可能に設けられる。処理槽28は、手前側へ開口して中空部を有する処理槽本体40と、この処理槽本体40の開口部を開閉する扉41とを備える。処理槽本体40は、円筒状に形成され、その軸線を前後方向へ沿って水平に配置される。扉41は、処理槽本体40の開口部よりも大径の円板状に形成される。
【0037】
装置本体2の前面には、処理槽本体40の開口部の上下と対応した高さ位置に、左右方向へ沿うと共に処理槽本体40の右側へ延出して、ドアレール42,42が設けられる。上下のドアレール42,42は、互いに平行で水平に配置される。
【0038】
扉41は、円板状とされ、前面には円環状のハンドル43が固定されている。このような構成の扉41は、上下がドアレール42,42に保持され、左右に転がして移動させることができる。本実施例では、扉41を120度回転させることによって、処理槽本体40の開口部を全閉または全開することができる。
【0039】
処理槽本体40には、開口部側の外周面に、径方向外側へ延出して略正方形状のフランジ44が設けられる。フランジ44の前面には、処理槽本体40の開口部を取り囲むように連続的にパッキン45が設けられる。このパッキン45は、後方へ開口した略コ字形状断面に形成されており、処理槽本体40の開口部を取り巻くように形成されたパッキン溝46内に収容されている。パッキン溝46は、エアコンプレッサ(図示省略)または真空ポンプ47に択一的に接続される。
【0040】
処理槽本体40の開口部を扉41で封止するには、扉41をフランジ44と重ねるように全閉位置に配置した状態で、エアコンプレッサからの圧縮空気を利用して、パッキン溝46を加圧すればよい。これにより、パッキン45は、扉41側へ押し出され、扉41の後面に円環状に密着する。この際、扉41は、その上下両端部において、ドアレール42の前片にパッキン45にて押し付けられる。逆に、処理槽本体40と扉41との密着を解除するには、パッキン溝46に真空ポンプ47を接続すればよい。これにより、真空ポンプ47の吸引力を利用して、パッキン45をパッキン溝46内に戻して収容することができる。そして、扉41をドアレール42に沿って、右へ転がして開けることができる。
【0041】
横向き円筒状の処理槽本体40内の中空部は、上下方向中央部からやや下方位置に、板状の隔壁48が水平に設けられて、上下に仕切られる。この隔壁48は、たとえば薄いステンレス板から構成され、処理槽本体40に対し着脱可能に保持される。これにより、処理槽本体40内には、隔壁48より上部に第一領域49が形成され、隔壁48より下部に第二領域50が形成される。第一領域49と第二領域50とは、隔壁48に形成した連通穴51,51,…を介して、互いに連通される。
【0042】
第一領域49は、被加熱物27の収容部とされ、第二領域50は、貯水部32とされる。そのために、処理槽本体40の開口部は、第二領域50と対応する下部が、略半円形状の垂直な前壁52にて閉塞される。第一領域49への被加熱物27の収容は、処理槽本体40の隔壁48に載せて行えばよい。本実施例では、隔壁48に棚枠53が載せられ、食材や食品などの被加熱物27を収容したホテルパンなどの容器54が棚枠53に保持される。
【0043】
減圧手段29は、処理槽28内の空気や蒸気を外部へ吸引排出する手段である。具体的には、処理槽本体40の上部には排気路55が接続され、この排気路55には、処理槽28の側から順に、真空弁56、熱交換器57、逆止弁58および水封式真空ポンプ47が設けられる。熱交換器57は、冷却用水が給排水されることで、排気路55内の蒸気を冷却し凝縮を図るものである。
【0044】
復圧手段30は、減圧下の処理槽28内へ外気を導入して復圧する手段である。具体的には、処理槽本体40の上部には給気路59が接続され、この給気路59は、除菌フィルタ60を介して外気と連通可能とされる。この給気路59の中途には、除菌フィルタ60の側から順に、真空解除弁61と逆止弁62とが設けられる。真空解除弁61の開放により、処理槽28内は大気圧に開放可能とされる。
【0045】
排蒸手段31は、大気圧よりも高圧下の処理槽28内から蒸気を外部へ排出する手段である。具体的には、処理槽本体40の上部には排蒸路63が接続され、この排蒸路63には、処理槽28の側から順に、排蒸弁64と逆止弁65とが設けられる。排蒸弁64の開放により、処理槽28内の蒸気は外部へ排出可能とされる。
【0046】
電気ヒータ33は、処理槽28内の貯水部32に貯留される水を加熱する手段である。電気ヒータ33は、その種類を特に問わないが、たとえばシーズヒータまたはフランジヒータなどから構成される。本実施例の電気ヒータ33は、前後方向へ細長く形成されており、処理槽本体40の後壁66から前方へ発熱部67を差し込まれて設けられる。
【0047】
給水手段34は、貯水部32への給水を行う手段である。具体的には、処理槽本体40の後壁66には給水路68が接続され、この給水路68には、給水設備(図示省略)からの水が、給水弁69と逆止弁70とを介して供給可能とされる。給水弁69を開けて処理槽28内へ給水するが、貯水部32に所望水量が貯留されると給水弁69は閉じられる。
【0048】
排水手段35は、貯水部32の水を外部へ排出する手段である。具体的には、貯水部32の底部には排水路71が接続され、この排水路71には、処理槽28の側から排水弁72および逆止弁73が設けられる。排水弁72の開放により、貯水部32内の水は外部へ排水可能とされる。
【0049】
減圧手段29、復圧手段30、排蒸手段31、電気ヒータ33、給水手段34および排水手段35などは、制御手段(図示省略)により制御される。この制御手段は、それが把握する経過時間の他、圧力センサ36、品温センサ37、水温センサ38などからの検出信号などに基づいて、前記各構成29,30,31,33,34,35を制御する制御器である。具体的には、真空弁56、真空ポンプ47、真空解除弁61、排蒸弁64、電気ヒータ33、給水弁69、排水弁72の他、圧力センサ36、品温センサ37、水温センサ38、操作パネル39などは、制御器に接続されている。そして、制御器は、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽28内の被加熱物27の加熱を行う。
【0050】
たとえば、処理槽28内の貯水部32に所定量の給水を行った後、処理槽本体40と扉41との隙間をパッキン45で封止する。そして、処理槽28内を密閉した状態で、減圧手段29などを用いて処理槽28内からの空気排除を図る。その後、電気ヒータ33により、貯水部32内の水を蒸気化して、その蒸気により被加熱物27の加熱を図る。この際、処理槽28内の圧力を調整することで、処理槽28内の飽和蒸気温度を調整して、被加熱物27の加熱温度を調整することができる。このような加熱処理後には、処理槽28内を大気圧まで復圧し、貯留水を排水する。
【0051】
本実施例の場合、電気ヒータ33は、処理槽28の後壁66に、前方へ向けて設けられる。従って、電気ヒータ33のメンテナンスを行う際には、装置本体2の後方にメンテナンススペースが必要となる。しかしながら、後方にメンテナンススペースがなくても、必要時に飽和蒸気加熱機1を架台4ごと前方へ引き出すことで、後方からのメンテナンスが可能とされる。
【0052】
飽和蒸気加熱機1を前方へ引き出したい場合には、前方左右のアジャスト脚16を縮めればよい。これにより、架台4付きの飽和蒸気加熱機1の重心位置と、キャスタ9の設置位置との前後関係により、飽和蒸気加熱機1は僅かに前傾姿勢となる。すなわち、後方のアジャスト脚16が僅かに浮き上がり、前方のアジャスト脚16とそれよりやや後方の車輪13とで接地される。従って、装置本体2の前方を持ち上げることで、左右の車輪13のみで支持できるので、飽和蒸気加熱機1を前後に容易に移動させることができる。これにより、飽和蒸気加熱機1を手前へ引き出して、電気ヒータ33のメンテナンスなどを行った後、再び後方へ押し戻して、前方左右のアジャスト脚16により設置し直せばよい。
【0053】
本発明の装置またはその架台の下部構造は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、被調理物を加熱調理する飽和蒸気調理機に適用した例を示したが、被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌器に適用することもできる。その場合も、構成および制御は、前記各実施例と同様である。
【0054】
前記実施例では、上下のドアレール42,42に保持された扉41を転がして開閉する構成としたが、場合により、扉41はドアレール42に沿ってスライド可能な構成でもよい。その場合、扉41は、円板状ではなく矩形板状に形成してもよい。また、場合により、扉41は、処理槽本体40の側端部にヒンジで吊り下げて、開き戸形式としてもよい。
【0055】
前記実施例において、支柱5を構成する角パイプは、断面正方形状に限らず、長方形状としてもよい。また、四角形状に限らず、その他の多角形や円形状としてもよい。さらに、支柱5は、中空状としたが、場合により中実状であってもよい。
【0056】
さらに、前記実施例では、飽和蒸気加熱機1に適用した例について説明したが、本発明の下部構造は、飽和蒸気加熱機1以外の各種の装置に幅広く適用することができる。また、メンテナンスの対象は、電気ヒータ33に限らない。さらに、前記実施例では、装置本体2を架台4の上に設置し、架台4の下部に本発明を適用したが、場合により、架台4を有しない装置において、装置自体(装置本体2)の下部に直接にアジャスト脚16や車輪13を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の下部構造が適用された架台付き装置としての飽和蒸気加熱機の一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】図1の飽和蒸気加熱機の概略正面図である。
【図3】図1の飽和蒸気加熱機の概略側面図である。
【図4】図1の飽和蒸気加熱機の架台の支柱の下部構造を示す概略縦断面図である。
【図5】図1の飽和蒸気加熱機の具体的構成を示す概略図であり、一部を断面にすると共に一部を省略して示している。
【符号の説明】
【0058】
1 飽和蒸気加熱機(装置)
2 装置本体
4 架台
12 車軸
13 車輪
15 脚部
16 アジャスト脚
17 受座
18 ネジ棒
19 ロックナット
27 被加熱物
28 処理槽
32 貯水部
33 電気ヒータ
40 処理槽本体
41 扉
52 前壁
66 後壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置は、架台を有しない場合には、その装置の下部四隅にそれぞれ脚部が設けられると共に、その装置の重心位置かそれよりも後方の下部に車輪が設けられる一方、架台を有する場合には、その架台の下部四隅にそれぞれ脚部が設けられると共に、その架台付き装置の重心位置かそれよりも後方の下部に車輪が設けられており、
前方二箇所に設けられる前記脚部は、高さ調整可能に構成されている
ことを特徴とする装置またはその架台の下部構造。
【請求項2】
装置またはそれを支持する架台の下部には、車輪と、高さ調整可能な複数の脚部とが設けられており、
前記装置の設置時には、前記車輪を浮かした状態で、前記脚部により前記装置が支持され、
前記装置の移動時には、前方に配置された前記脚部を縮めて前記車輪を接地させ、この車輪を用いて前記装置の移動を可能とする
ことを特徴とする装置またはその架台の下部構造。
【請求項3】
高さ調整可能な前記脚部は、床面に接地される受座と、この受座から上方へ延出すると共に前記受座に対し回転自在なネジ棒と、このネジ棒に進退可能にねじ込まれるロックナットとを備えるアジャスト脚から構成され、
このアジャスト脚は、前記装置または前記架台の下部に、前記ネジ棒の上部がねじ込まれて設けられ、
前記装置または前記架台の下部に前記ロックナットを締め付けることで、前記装置または前記架台から下方への前記ネジ棒の突出量を固定できる一方、そのロックナットを緩めて前記装置または前記架台に対し前記ネジ棒を回転させて前記突出量を調整できる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置またはその架台の下部構造。
【請求項4】
前記装置は、処理槽内に予め貯留しておいた水を電気ヒータにより加熱して、これにより生ずる蒸気で前記処理槽内の被加熱物の加熱を図る飽和蒸気加熱機とされ、
前記処理槽は、横向き略円筒状でその一端面を前方へ向けて開口させる処理槽本体と、この処理槽本体の開口部を開閉する扉とを備え、
前記処理槽本体は、前記開口部の下部領域が閉塞されて、内部空間の下部が貯水部とされ、
前記電気ヒータは、前記処理槽本体の後方から前記貯水部内に差し込まれて設けられ、
前記架台は、前記処理槽本体を支持すると共に、下部四隅にそれぞれ前記アジャスト脚が設けられ、
前記架台の前後方向中途部には、前記架台付き装置の重心位置かそれよりも後方の左右二箇所にのみ、左右方向へ配置された車軸に回転自在に保持された前記車輪が設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の装置またはその架台の下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−52631(P2009−52631A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218917(P2007−218917)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】