説明

装置支持治具並びに装置支持治具の装着装置及び方法

【課題】装置支持治具並びに装置支持治具の装着装置及び方法において、各種の作業を行う装置を所定の位置に効率良く支持することで作業性の向上を可能とする。
【解決手段】原子炉容器本体42の注水管台74に所定間隔をあけて配置されて注水管台74の注水ノズル73の入口部に対向したアクセス孔102が形成される架台101と、アクセス孔102に挿入可能な筒形状をなす支持筒130と、架台101に対して支持筒130をその軸心方向に直交する方向に移動可能に支持する支持装置(第1固定ボルト140)と、架台101に対して支持筒130を所定の位置に固定する固定装置(第2固定ボルト150)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の原子炉容器内部にて、各種の装置を用いて保守点検作業などを行うとき、この装置を固定または案内するための装置支持治具並びに装置支持治具の装着装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電するものである。
【0003】
このような加圧水型原子炉に用いられる原子炉容器は、十分な安全性や信頼性を確保するために、管台や配管などを定期的に検査する必要がある。そして、検査の結果、この管台や配管などに経年劣化などによるクラックが見つかったときには、このクラックを含む必要箇所を補修している。
【0004】
このような原子炉容器の保守点検作業を行うものとしては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された原子炉容器の管台作業システムは、原子炉容器の上方から内部に延出して管台に連通するアクセス窓を有する架台と、この架台内部から管台内部へ進出した状態で作業を行う作業装置と、アクセス窓を開閉すると共に作業装置を駆動することで管台内部の作業を行う制御装置とを設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−017670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子炉容器の保守点検作業は、検査装置により管台や配管などを検査した後、必要に応じて所定の箇所を補修する必要がある。この場合、この点検作業や補修作業などの保守点検作業は、作業者が架台からアクセス窓を通して原子炉容器の管台にアクセスすることで行われる。そして、この保守点検作業としては、除染作業、遮蔽作業、検査作業、切削作業、溶接作業などがあり、多種類の装置を用いて行われる。
【0007】
各種の保守点検作業を行うとき、各装置は、架台に装着され、アクセス窓を通して原子炉容器の管台にアクセスし、各種の作業を行う。このとき、各種の装置は、管台の内面に対して作業を行うことから、管台に対する装置の径方向の位置が適性位置となるように位置調整する必要がある。ところが、上述したように、保守点検作業を行う装置は、多数あることから、装置ごとに位置調整を行う必要が生じ、作業時間が長時間となるだけでなく、作業者にかかる負担も大きく、その結果、作業効率が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、各種の作業を行う装置を所定の位置に効率良く支持することで作業性の向上を可能とする装置支持治具並びに装置支持治具の装着装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の装置支持治具は、構造体に所定間隔をあけて配置されて前記構造体に形成された処理孔の入口部に対向した作業孔が形成される架台と、前記作業孔に挿入可能な筒形状をなす支持筒と、前記架台に対して前記支持筒をその軸心方向に直交する方向に移動可能に支持する支持装置と、前記架台に対して前記支持筒を所定の位置に固定する固定装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
従って、支持筒が架台の作業孔に挿入され、支持装置により支持筒の軸心方向に直交する方向に移動可能であると共に、固定装置により所定の位置に固定可能であるため、支持筒を適正位置に容易に位置決めすることができることから、構造体の処理孔に対して各種の作業を行う装置をこの支持筒を介して所定の位置に効率良く支持することができ、作業性を向上することができる。
【0011】
本発明の装置支持治具では、前記作業孔に挿入して固定可能な筒形状をなす取付筒を有し、前記支持筒は、前記取付筒の内部に挿入可能であることを特徴としている。
【0012】
従って、取付筒が作業孔に固定され、この取付筒に支持筒が挿入されることから、支持装置により支持筒を容易に支持することができると共に、固定装置により容易に固定することができる。
【0013】
本発明の装置支持治具では、前記取付筒と前記支持筒は、軸心方向に重なるフランジ部をそれぞれ有し、前記支持装置と前記固定装置は、前記2つのフランジ部間に配置されることを特徴としている。
【0014】
従って、取付筒と支持筒の各フランジ部を用いて支持筒を容易に支持及び固定することができ、作業性を向上することができる。
【0015】
本発明の装置支持治具では、前記取付筒の先端部に前記構造体における前記入口部の周辺部に密着するシール部材が設けられることを特徴としている。
【0016】
従って、シール部材により取付筒の先端部と構造体の入口部とを隙間なく連通することができ、装置による処理孔への各種作業時に、流体などの漏洩を防止することができる。
【0017】
本発明の装置支持治具では、前記取付筒は、前記支持筒から落下する異物を受け止める異物受け部を有することを特徴としている。
【0018】
従って、取付筒に異物受け部が設けられることで、装置による処理孔への各種作業時に、支持筒から落下する異物を受け止めることが可能となり、作業の安全性を向上することができる。
【0019】
本発明の装置支持治具では、前記支持筒は、この支持筒を通して前記処理孔に挿入される作業装置を固定する固定具を有することを特徴としている。
【0020】
従って、固定具により各装置を支持筒に固定することができ、装置による処理孔へのアクセス性を向上することができる。
【0021】
本発明の装置支持治具の装着装置は、構造体に所定間隔をあけて架台が配置されると共に、前記構造体に形成された処理孔の入口部に対向して前記架台に作業孔が形成され、前記作業孔に支持筒を挿入して装置支持治具を装着する装置であって、前記架台に対して前記支持筒をその軸心方向に直交する方向に移動可能に支持する支持装置と、前記支持筒の内部に嵌入可能であると共に先端部が前記処理孔に挿通可能な支持ロッドと、前記支持ロッドの先端部に装着された押圧部を前記処理孔の内面に対して周方向にわたって均一に押圧可能な押圧装置と、前記架台に対して前記支持筒を固定する固定装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0022】
従って、架台の作業孔に挿入され支持筒は、支持装置により支持筒の軸心方向に直交する方向に移動可能に支持され、支持ロッドがこの支持筒の内部に嵌入され、先端部が処理孔に挿通された状態で、押圧装置により支持ロッドの押圧部を処理孔の内面に対して周方向にわたって均一に押圧すると、支持筒が支持ロッドを介して軸心方向に直交する方向に移動することで調心されることとなり、この位置で固定装置により支持筒を固定することで、支持筒を適正位置に容易に位置決めすることができることから、構造体の処理孔に対して各種の作業を行う装置をこの支持筒を介して所定の位置に効率良く支持することができ、作業性を向上することができる。
【0023】
本発明の装置支持治具の装着方法は、構造体に所定間隔をあけて架台が配置されると共に、前記構造体に形成された処理孔の入口部に対向して前記架台に作業孔が形成され、前記作業孔に支持筒を挿入して装置支持治具を装着する方法であって、前記支持筒を前記作業孔に挿入する工程と、支持ロッドを前記支持筒に嵌入すると共に先端部を前記処理孔に挿通する工程と、前記支持ロッドの先端部に装着された押圧部を前記処理孔の内面に対して周方向にわたって均一に押圧する工程と、前記押圧部を前記処理孔の内面に押圧した状態で前記支持筒を前記架台に固定する工程と、前記支持筒を前記架台に固定した後に前記押圧部による前記処理孔の内面への押圧を解除する工程と、前記押圧部の押圧を解除した後に支持ロッドを前記支持筒及び前記処理孔から抜き取る工程と、を有することを特徴とするものである。
【0024】
従って、支持筒を適正位置に容易に位置決めすることができることから、構造体の処理孔に対して各種の作業を行う装置をこの支持筒を介して所定の位置に効率良く支持することができ、作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の装置支持治具並びに装置支持治具の装着装置及び方法によれば、架台の作業孔に対して支持筒を軸心方向に直交する方向に移動可能に支持すると共に、固定装置により所定の位置に固定可能であるので、支持筒を適正位置に容易に位置決めすることができ、構造体の処理孔に対して各種の作業を行う装置をこの支持筒を介して所定の位置に効率良く支持することができ、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る装置支持治具並びにその装着装置を表す正面図である。
【図2】図2は、本実施例の装置支持治具並びにその装着装置を表す図1のII−II断面図である。
【図3】図3は、本実施例の装置支持治具並びにその装着装置を表す図1のIII−III断面図である。
【図4】図4は、原子炉容器を表す管台での水平断面図である。
【図5−1】図5−1は、図4のVA断面図である。
【図5−2】図5−2は、図4のVB断面図である。
【図6】図6は、原子炉容器の内部からの管台を表す正面図である。
【図7】図7は、原子炉容器の管台を表す図6のVII−VII断面図である。
【図8】図8は、本実施例の装置支持治具の装着方法を表すフローチャートである。
【図9】図9は、原子力発電プラントの概略構成図である。
【図10】図10は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る装置支持治具並びに装置支持治具の装着装置及び方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例】
【0028】
図1は、本発明の一実施例に係る装置支持治具並びにその装着装置を表す正面図、図2は、本実施例の装置支持治具並びにその装着装置を表す図1のII−II断面図、図3は、本実施例の装置支持治具並びにその装着装置を表す図1のIII−III断面図、図4は、原子炉容器を表す管台での水平断面図、図5−1は、図4のVA断面図、図5−2は、図4のVB断面図、図6は、原子炉容器の内部からの管台を表す正面図、図7は、原子炉容器の管台を表す図6のVII−VII断面図、図8は、本実施例の装置支持治具の装着方法を表すフローチャート、図9は、原子力発電プラントの概略構成図、図10は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
【0029】
本実施例の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0030】
本実施例の加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、図9に示すように、原子炉格納容器11内には、加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは冷却水配管14,15を介して連結されており、冷却水配管14に加圧器16が設けられ、冷却水配管15に冷却水ポンプ15aが設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150〜160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉12にて、燃料(原子燃料)として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で冷却水配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は冷却水配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0031】
蒸気発生器13は、蒸気タービン17と冷却水配管18を介して連結されており、この蒸気タービン17は高圧タービン19及び低圧タービン20を有すると共に、発電機21が接続されている。また、高圧タービン19と低圧タービン20との間には、湿分分離加熱器22が設けられており、冷却水配管18から分岐した冷却水分岐配管23が湿分分離加熱器22に連結される一方、高圧タービン19と湿分分離加熱器22は低温再熱管24により連結され、湿分分離加熱器22と低圧タービン20は高温再熱管25により連結されている。
【0032】
更に、蒸気タービン17の低圧タービン20は、復水器26を有しており、この復水器26には冷却水(例えば、海水)を給排する取水管27及び排水管28が連結されている。この取水管27は、循環水ポンプ29を有し、排水管28と共に他端部が海中に配置されている。そして、この復水器26は、冷却水配管30を介して脱気器31に連結されており、この冷却水配管30に復水ポンプ32及び低圧給水加熱器33が設けられている。また、脱気器31は、冷却水配管34を介して蒸気発生器13に連結されており、この冷却水配管34には給水ポンプ35及び高圧給水加熱器36が設けられている。
【0033】
従って、蒸気発生器13にて、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管18を通して蒸気タービン17(高圧タービン19から低圧タービン20)に送られ、この蒸気により蒸気タービン17を駆動して発電機21により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン19を駆動した後、湿分分離加熱器22で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン20を駆動する。そして、蒸気タービン17を駆動した蒸気は、復水器26で海水を用いて冷却されて復水となり、低圧給水加熱器33で、例えば、低圧タービン20から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器31で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、高圧給水加熱器36で、例えば、高圧タービン19から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器13に戻される。
【0034】
このように構成された原子力発電プラントに適用された加圧水型原子炉12において、図10に示すように、原子炉容器41は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体42とその上部に装着される原子炉容器蓋43により構成されており、この原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43が複数のスタッドボルト65及びナット66により開閉可能に固定されている。原子炉容器本体42は、上部が開口して下部が球面状に閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を給排する入口ノズル44及び出口ノズル45が形成されている。
【0035】
原子炉容器本体42内にて、入口ノズル44及び出口ノズル45より下方には、円筒形状をなす炉心槽46が原子炉容器本体42の内面と所定の隙間をもって配置されており、この炉心槽46の上部には、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板47が連結され、下部には、同じく円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板48が連結されている。そして、原子炉容器本体42内には、炉心槽46の上方に位置して円板形状をなす上部炉心支持板49が固定されており、この上部炉心支持板49から複数の炉心支持ロッド50を介して上部炉心板47、つまり、炉心槽46が吊下げ支持されている。一方、下部炉心板48、つまり、炉心槽46は、原子炉容器本体42の内面に対して複数のラジアルキー52により位置決め保持されている。
【0036】
炉心槽46と上部炉心板47と下部炉心板48により炉心53が形成されており、この炉心53には、多数の燃料集合体54が配置されている。この燃料集合体54は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。そして、複数の制御棒55は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ56となり、燃料集合体54内に挿入可能となっている。上部炉心支持板49には、この上部炉心支持板49を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管57が支持されており、下端部が燃料集合体54の制御棒クラスタ56まで延出されている。
【0037】
原子炉容器41を構成する原子炉容器蓋43の上部には、磁気式ジャッキの制御棒駆動装置58が設けられており、原子炉容器蓋43と一体をなすハウジング59内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管57の上端部は、制御棒駆動装置58まで延出され、この制御棒駆動装置58から延出されて制御棒クラスタ駆動軸60が、制御棒クラスタ案内管57内を通って燃料集合体54まで延出され、制御棒クラスタ56を把持可能となっている。また、図示しないが、上部炉心支持板49には、この上部炉心支持板49を貫通して多数の炉内計装案内管が支持されており、下端部が燃料集合体54まで延出されており、中性子束を計測できるセンサを挿入可能となっている。
【0038】
この制御棒駆動装置58は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ56に連結されると共に、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸60を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
【0039】
従って、制御棒駆動装置58により制御棒クラスタ駆動軸60を移動して燃料集合体54に制御棒55を挿入することで、炉心53内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器41内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル45から排出され、上述したように、蒸気発生器13に送られる。即ち、燃料集合体54を構成する燃料としてのウランまたはプルトニウムが核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。また、制御棒55を燃料集合体54に挿入することで、炉心53内で生成される中性子数を調整し、また、原子炉を緊急に停止するときには炉心53に急速に挿入される。
【0040】
また、原子炉容器41内には、炉心53に対して、その上方に出口ノズル45に連通する上部プレナム61が形成されると共に、下方に下部プレナム62が形成されている。そして、原子炉容器41と炉心槽46との間に入口ノズル44及び下部プレナム62に連通するダウンカマー部63が形成されている。従って、軽水は、4つの入口ノズル44から原子炉容器本体42内に流入し、ダウンカマー部63を下向きに流れ落ちて下部プレナム62に至り、この下部プレナム62の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心板48を通過した後、炉心53に流入する。この炉心53に流入した軽水は、炉心53を構成する燃料集合体54から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体54を冷却する一方、高温となって上部炉心板47を通過して上部プレナム61まで上昇し、出口ノズル45を通って排出される。
【0041】
このように構成された原子炉容器41は、上述したように、十分な安全性や信頼性を確保するために、定期的に検査する必要があり、この検査の結果、経年劣化などによるクラックが見つかったときには、このクラックを含む必要箇所を補修する。
【0042】
この原子炉容器41にて、原子炉容器本体42の各管台の保守点検作業としては、除染作業、遮蔽作業、検査作業、切削作業、溶接作業などがあり、多種類の作業装置を用いて行われる。そして、この管台の保守点検作業は、原子炉容器本体42から原子炉容器蓋43を取り外して上部を開口し、この上部開口から各種の作業装置を導入して行われる。この場合、各種の装置は、原子炉容器本体42の内側に配置された架台に固定され、この架台に固定された状態で、管台の内部へアクセスして各種の作業を行う。しかし、各保守点検作業に対応して異なる作業装置を架台の適正位置に固定する必要があり、各作業装置を架台に固定するときの位置調整作業が煩雑となり、各作業装置の固定作業に長時間を要してしまう。
【0043】
そこで、本実施例では、原子炉容器41の内側に架台を配置し、この架台に装置支持治具を固定し、この装置支持治具に保守点検作業を行う多種類の作業装置を支持(固定)した状態で、この作業装置により、原子炉容器41の管台に対して保守点検作業を行うようにしている。
【0044】
まず、原子炉容器41の管台について説明する。図4及び図10に示すように、原子炉容器本体42は、円筒形状をなし、入口ノズル44を構成する2つの入口管台71が周方向に沿って均等間隔で設けられると共に、出口ノズル45を構成する2つの出口管台72が周方向に沿って均等間隔で設けられている。また、原子炉容器本体42は、注水ノズル73を構成する2つの注水管台74が周方向に沿って均等間隔で設けられており、各注水管台74は、先端部に注水配管75がそれぞれ溶接により固定されている。この場合、入口管台71、出口管台72、注水管台74は、原子炉容器41の高さ方向において、ほぼ同位置に設けられている。
【0045】
次に、原子炉容器41(原子炉容器本体42)の内側に配置される架台について説明する。なお、原子炉容器41は、内部の水位が各管台71,72,74よりも下方となるように、予め排水されている。図4及び図5−1、図5−2に示すように、架台101は、有底の円筒形状をなし、上端部が原子炉容器本体42の上端部に支持されている。即ち、この架台101は、原子炉容器本体42の内径よりも小さい外径を有する円筒状をなす側壁部101aと、この側壁部101aの下端を閉塞する底部101bと、側壁部101aの上端から外周側に張り出して原子炉容器本体42の上縁に支持されるフランジ部101cとを有している。そして、この架台101は、原子炉容器本体42の内面に所定間隔をあけて配置されている。
【0046】
架台101は、側壁部101aに注水管台74に対応してアクセス孔102が形成されている。このアクセス孔102は、注水管台74の注水ノズル73の入口部に対向して形成されている。なお、図示しないが、架台101は、側壁部101aに各管台71,72に対応してアクセス孔も形成されている。
【0047】
このアクセス孔102は、原子炉容器本体42の内部と架台101の内部とを連通可能となっていると共に、内側から固定プラグ103が固定されることで、原子炉容器本体42の内部と架台101の内部とを遮断可能となっている。なお、各管台71,72,74は、先端部に図示しない固定プラグが固定されることで、原子炉容器本体42の内部と外部とを遮断可能となっている。また、アクセス孔102は、固定プラグ103に代えて装置支持治具111が装着されることで、この装置支持治具111に注水管台74や注水配管75の保守点検作業を行う多種類の作業装置(図示略)を固定することができ、原子炉容器本体42の内部にアクセス可能となっている。この場合、図4では、一方のアクセス孔102に固定プラグ103を固定して状態を表し、他方のアクセス孔102に置支持治具111を固定して状態を表している。
【0048】
なお、本実施例では、原子炉容器41(原子炉容器本体42)が本発明の構造体に該当し、注水管台74(注水ノズル73)が本発明の処理孔である。また、架台101に形成されたアクセス孔102が本発明の作業孔である。
【0049】
この固定プラグ103は、図6及び図7に示すように、矩形状をなす基板103aと、略正方形をなして基板103aと一体をなすフランジ部103bと、円柱形状をなしてフランジ部103bに設けられたプラグ本体103cと、プラグ本体103cの外周部に装着された複数のOリング(シール部材)103dを有している。
【0050】
そして、プラグ本体103cが架台101の内側からアクセス孔102に嵌合し、フランジ部103bが架台101の内面に密着し、複数の固定ボルト103eがフランジ部103bを貫通して架台101に螺合することで、固定プラグ103が架台101に固定される。その結果、固定プラグ103は、アクセス孔102を閉塞することができる。
【0051】
ここで、本実施例の装置支持治具111について詳細に説明する。この装置支持治具111は、図1乃至図3に示すように、前述した架台101と、取付筒120と、支持筒130と、複数の第1固定ボルト140と、複数の第2固定ボルト150とを有している。
【0052】
取付筒120は、円筒形状をなしてアクセス孔102に嵌合可能な取付筒本体121と、リング形状をなして取付筒本体121の基端部側に一体に形成される取付筒フランジ部122とから構成されている。そして、取付筒本体121は、外周部に軸心方向に所定間隔をあけて複数のOリング(シール部材)123が装着されている。また、取付筒フランジ部122は、周方向に所定間隔をあけて複数(本実施例では、4つ)の取付孔124が形成されると共に、周方向に所定間隔をあけて複数(本実施例では、4つ)のねじ孔125が形成されている。
【0053】
そして、取付筒120は、取付筒本体121が架台101の内側から嵌入され、取付筒フランジ部122が架台101の内面に密着した状態で、取付筒本体121の先端部が架台101の外面より外方、つまり、原子炉容器本体42の注水管台74側に突出している。この状態で、複数(本実施例では、4つ)の取付ボルト126が各取付孔124を貫通して架台101に螺合することで、取付筒120が架台101に固定されている。
【0054】
また、取付筒120は、取付筒本体121の先端部に注水管台74における入口部の周辺部、つまり、注水管台74における内側の端面に密着するシール部材127が装着されている。このシール部材127は、例えば、シリコン製のスポンジやゴム部材などにより構成され、円盤形状をなして取付筒本体121の先端部に固定されている。そして、シール部材127は、取付筒120が架台101に固定されたとき、注水管台74の端面に密着することで、注水管台74の内部(注水ノズル73)と取付筒121の内部とを隙間なく連通することができる。
【0055】
また、取付筒120は、落下する異物を受け止める異物受け部128が設けられている。取付筒120は、取付筒フランジ部122における鉛直方向の下部が下方に延出し、その下端部が架台101と反対側に折曲することで、桶状をなす異物受け部128が形成されている。この異物受け部128は、異物として、液体(例えば、水、洗浄液、切削油など)を貯留可能であると共に、工具や部品なども受け止めることで、下方への落下を防止することができる。この場合、異物受け部128は、下部に排出管128aが連結されている。
【0056】
支持筒130は、円筒形状をなして取付孔124に挿入可能な支持筒本体131と、リング形状をなして支持筒本体131の基端部側に一体に形成される支持筒フランジ部132とから構成されている。この場合、支持筒本体131は、外径が取付筒本体121の内径より小径に設定されており、支持筒本体131が取付筒本体121内に挿入された状態で、両者の間に隙間が確保されることで、支持筒本体131が取付筒本体121内で、軸心方向に直交する方向に移動可能となっている。
【0057】
また、支持筒フランジ部132は、周方向に所定間隔をあけて複数(本実施例では、4つ)の取付孔133が形成されると共に、周方向に所定間隔をあけて複数(本実施例では、4つ)のねじ孔134が形成されている。そして、支持筒130は、支持筒本体131が架台101の内側から取付筒120(取付筒本体121)に挿入された状態で、支持筒フランジ部132が取付筒フランジ部122に密着せず、支持筒本体131の先端部が取付筒本体121の先端部より原子炉容器本体42の注水管台74側に突出していない。この状態で、複数(本実施例では、4つ)の第1固定ボルト140が各取付孔133を貫通して取付筒フランジ部122の各ねじ孔125に螺合すると共に、複数(本実施例では、4つ)の第2固定ボルト150が各ねじ孔134に螺合して取付筒フランジ部122に当接することで、支持筒130が取付筒120を介して架台101に固定されている。
【0058】
この場合、支持筒フランジ部132に形成された各取付孔133は、円形孔であるが、その内径が第1固定ボルト140の外径より大きなものとなっている。そのため、第1固定ボルト140は、外径が取付孔133より大きな平面座金141及び球面座金142を介して取付孔133を貫通し、ねじ孔125に螺合している。一方、第2固定ボルト150は、ねじ孔134に螺合して先端部が取付筒フランジ部122に当接可能であるが、第2固定ボルト150にはナット151が螺合している。そのため、第2固定ボルト150がねじ孔134に螺合した状態で、ナット151を回転して取付筒フランジ部122に接触させることで、第2固定ボルト150の緩みを防止することができる。
【0059】
このように構成されていることから、支持筒130は、第1固定ボルト140が各座金141,142、取付孔133を貫通してねじ孔125に螺合し、第2固定ボルト150がねじ孔134に螺合して球面座金142を弾性変形させていない状態では、その軸心方向だけでなく、この軸心に直交する方向に移動することができる。なお、この支持筒130における軸心に直交する方向への移動範囲は、第1固定ボルト140に対する取付孔133の内径により設定される。そして、第2固定ボルト150を締めこんでいき、支持筒フランジ部132が取付筒フランジ部122から離間して球面座金142を弾性変形させると、その摩擦抵抗増大することで、支持筒130は、その軸心方向だけでなく、この軸心に直交する方向にも移動不能となる。
【0060】
この場合、取付孔133、第1固定ボルト140、平面座金141、球面座金142などにより本発明の支持装置が構成され、取付孔133、第1固定ボルト140、平面座金141、球面座金142に加えて、ねじ孔134、第2固定ボルト150、ナット151により本発明の固定装置が構成される。そして、この支持装置と固定装置は、取付筒フランジ部122と支持筒フランジ部132と間に配置されることとなる。
【0061】
また、支持筒130は、図示しない作業装置を固定する固定具135が設けられている。この固定具135は、2つのリンクと1つのスライダから構成されるトグル機構であって、支持筒フランジ部132に支持筒130の周方向に所定間隔をあけて複数(本実施例では3つ)配置されており、3つの固定具135により作業装置の支持部を固定することができる。
【0062】
ところで、上述した装置支持治具111は、本実施例の装置支持治具の装着装置161により架台101のアクセス孔102に装着可能となっている。この装置支持治具の装着装置161は、装置支持治具111をアクセス孔102における所定の位置、つまり、支持筒130の中心が、注水管台74(注水ノズル73)の中心と一致する位置に装着するものである。
【0063】
この装置支持治具の装着装置161は、前述した装置支持治具111における支持装置と固定装置に加えて、支持ロッド170と、押圧装置200とを有している。支持ロッド170は、架台101の内側から、支持筒130の内部に嵌入可能であると共に、先端部が注水管台74(注水ノズル73)に挿通可能となっている。また、押圧装置200は、支持ロッド170の先端部に装着された押圧部材(押圧部)を注水管台74(注水ノズル73)の内面に対して周方向にわたって均一に押圧可能となっている。
【0064】
即ち、支持ロッド170において、支持ロッド本体171は、取付筒130の内面に嵌合可能な第1フランジ172と第2フランジ173とが所定間隔をあけて一体に形成されており、中心部に支持軸174が軸方向に移動自在に支持されている。第1フランジ172は、中空箱型形状をなし、蓋175が複数のボルト176により固定されることで密閉されたシリンダとして機能する。この第1フランジ172は、内部にピストン177が移動自在に支持されており、このピストン177は、支持軸174の基端部に固定されている。そして、第1フランジ172は、内部のピストン177により2つの部屋R1,R2の区画され、外部から部屋R1,R2に連通する通水孔178,179が形成されている。
【0065】
また、第2フランジ173は、取付筒130の内面に嵌合するものの、注水管台74の注水ノズル73内に進入可能な小径部173aが形成されている。
【0066】
なお、支持ロッド本体171は、蓋175に複数の操作桿180が固定されると共に、蓋175(第1フランジ172)と第2フランジ173にそれぞれ吊り具181,182が固定されている。
【0067】
支持ロッド170は、先端部に押圧装置200が装着されている。この押圧装置200において、支持軸174は、先端部側にリング形状をなす2つの押圧部材(例えば、ゴムなどの弾性部材)201が装着されている。また、支持軸174は、2つの押圧部材201の間に円筒形状をなすマンドレル202が装着されると共に、先端のストッパ174aと一方の押圧部材201との間にリング形状をなすフランジ部材203が装着されている。この場合、マンドレル202とフランジ部材203との間に一方の押圧部材201が隙間なく介装され、第2フランジ173とマンドレル202との間に他方の押圧部材201が隙間なく介装されている。
【0068】
そして、支持ロッド170のピストン177が作動しない図2に示す状態では、第2フランジ173の小径部173a、各押圧部材201、マンドレル202、フランジ部材203の各外周面と、注水管台74の注水ノズル73の内周面との間に所定の隙間が確保されている。
【0069】
従って、通水孔178から部屋R1に給水すると、部屋R1の水圧が上昇することで、ピストン177が図2にて左方向に移動する。ピストン177が図2にて左方向に移動すると、このピストン177と一体の支持軸174が同方向に移動する。すると、支持軸174のストッパ174aがフランジ部材203を介して一方の押圧部材201を同方向に移動させ、更に、マンドレル202及び他方の押圧部材201を同方向に移動させる。このとき、支持ロッド本体171は、取付筒130に嵌合して移動しないことから、各押圧部材201は、第2フランジ173、マンドレル202、フランジ部材203により圧縮され、径方向における外方に突出するように変形する。その結果、各押圧部材201は、注水管台74の注水ノズル73の内周面を押圧することができる。
【0070】
このとき、支持軸174に対して各押圧部材201が外方に変形し、注水ノズル73の内面を周方向にわたって均一に押圧することから、支持ロッド170は押圧装置200により注水ノズル73(注水管台74)の軸中心位置に移動する。このとき、支持筒130が取付筒120に対して移動自在に支持されているため、支持ロッド170が嵌合している支持筒130も同様に移動することとなり、支持筒130の軸心が注水管台74の軸心に一致するように調整される。
【0071】
本実施例の装置支持治具の装着装置161を用いた装置支持治具の装着方法は、以下の工程から構成されている。
1.取付筒120をアクセス孔102に固定する工程
2.支持筒130を取付筒120に挿入して仮固定する工程
3.支持ロッド170を支持筒130に嵌入すると共に先端部を注水管台74の注水ノズル73に挿通する工程
4.支持ロッド170の先端部に装着された押圧部材201を注水ノズル73の内面に対して周方向にわたって均一に押圧して支持筒130を位置調整(調心)する工程
5.押圧部材201を注水ノズル73の内面に押圧した状態で支持筒130を取付筒120に固定する工程
6.支持筒130を取付筒120に固定した後に押圧部材201による注水ノズル73の内面への押圧を解除する工程
7.押圧部材201の押圧を解除した後に支持ロッド170を支持筒130及び注水ノズル73から抜き取る工程
【0072】
ここで、本実施例の装置支持治具の装着装置201を用いた装置支持治具の装着方法について、図8のフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0073】
装置支持治具の装着方法において、まず、原子炉容器41は、上部に位置する制御棒駆動装置58を取り外し、原子炉容器本体42から原子炉容器蓋43を取り外しておく。そして、図8に示すように、ステップS11にて、上方が開口した原子炉容器本体42の上部に取付筒120を固定する。このとき、図5−1に示すように、原子炉容器本体42の水位は、各管台71,72,74よりも上方にあり、水中での固定作業となる。また、架台101は、各アクセス孔102が各注水管台74に対向する位置となるように位置決めする。ステップS12にて、図5−2に示すように、水中ポンプにより排水することで、原子炉容器本体42の水位が各管台71,72,74よりも下方となるように排水する。
【0074】
ステップS13にて、固定プラグ103がアクセス孔102を閉塞していることから、各固定ボルト103eを弛緩することで、架台101から固定プラグ103を取り外し、アクセス孔102を開放する。
【0075】
ステップS14にて、架台101の内部から取付筒120をアクセス孔102に嵌合し、取付筒フランジ部122が架台101の内面に密着した位置で、各取付ボルト126を各取付孔124から架台101に螺合し、取付筒120を架台101に固定する。続いて、ステップS15にて、架台101の内部から支持筒130を取付筒120に挿入し、各第1固定ボルト140を各取付孔133から各ねじ孔125に螺合すると共に、各第2固定ボルト150を各ねじ孔134に螺合する。このとき、第1、第2固定ボルト140,150を強固に締結しないことで、支持筒130がその軸心方向及び軸心方向に直交する方向に移動できるように、この支持筒130を取付筒120に仮固定する。
【0076】
そして、ステップS16にて、支持ロッド170を先端部側から支持筒130に挿入していき、第1、第2フランジ172,173をアクセス孔102に嵌合すると共に、押圧装置200を注水管台74の注水ノズル73に挿入する。この状態で、ステップS17にて、支持ロッド170の通水孔178から部屋R1に給水することで、ピストン177と共に支持軸174を図2にて左方向に移動する。すると、支持軸174のストッパ174aによりフランジ部材203、押圧部材201、マンドレル202、押圧部材201が同方向に移動し、各押圧部材201が圧縮されて外方に突出する。そのため、各押圧部材201は、注水管台74の注水ノズル73の内周面を押圧する。
【0077】
このとき、各押圧部材201は、注水ノズル73の内面を周方向にわたって均一に押圧することから、支持ロッド170は、押圧装置200により注水ノズル73(注水管台74)の軸心位置に移動する。支持筒130は、取付筒120に対して移動可能に仮固定されているため、支持ロッド170と共に移動し、支持筒130の軸心が注水管台74の軸心に一致する。
【0078】
支持筒130が位置調整されると、ステップS18にて、第1、第2固定ボルト140,150を強固に締結することで、支持筒130が移動できないように取付筒120に固定する。そして、ステップS19にて、支持筒130が取付筒120に固定されると、支持ロッド170の部屋R1から通水孔178により排水し、弾性変形した各押圧部材201の復元力により支持軸174、フランジ部材203、押圧部材201、マンドレル202、押圧部材201が図2にて右方向に移動する。そのため、各押圧部材201による注水ノズル73の内周面への押圧が解除される。続いて、ステップS20にて、支持ロッド170及び押圧装置200を、支持筒130及び注水管台74の注水ノズル73から引き抜いて取り外す。
【0079】
この作業により、装置支持治具111は、支持筒130の軸心が注水管台74の軸心に一致するように、架台101のアクセス孔102に固定されることから、各種の作業装置をこの装置支持治具111の支持筒130に装着するだけで、作業装置の軸心と注水管台74の軸心が一致することとなり、容易に各種の作業を開始することが可能となる。
【0080】
このように本実施例の装置支持治具にあっては、原子炉容器本体42の注水管台74に所定間隔をあけて配置されて注水管台74の注水ノズル73の入口部に対向したアクセス孔102が形成される架台101と、アクセス孔102に挿入可能な筒形状をなす支持筒130と、架台101に対して支持筒130をその軸心方向に直交する方向に移動可能に支持する支持装置(第1固定ボルト140)と、架台101に対して支持筒130を所定の位置に固定する固定装置(第2固定ボルト150)とを設けている。
【0081】
従って、支持筒130が架台101のアクセス孔102に挿入され、軸心方向に直交する方向に移動自在に仮固定可能であると共に、位置調整後に所定の位置に固定可能であるため、支持筒130を適正位置に容易に位置決めすることができる。その結果、子炉容器本体42の注水管台74(注水ノズル73)に対して各種の作業を行う装置を、この支持筒130を介して所定の位置に効率良く支持することができ、作業性を向上することができる。
【0082】
また、本実施例の装置支持治具では、アクセス孔102に挿入して固定可能な筒形状をなす取付筒120を設け、支持筒130をこの取付筒120の内部に挿入して仮固定可能及び固定可能としている。従って、取付筒120がアクセス孔102に固定され、この取付筒120に支持筒130が挿入されることから、この支持筒130を容易に支持することができると共に、容易に固定することができる。また、架台101にねじ孔を形成するだけで、その他の孔などを形成する必要がなくなり、加工コストを低減することができる。
【0083】
また、本実施例の装置支持治具では、取付筒120と支持筒に軸心方向に重なるフランジ部122,132をそれぞれ設け、2つのフランジ部122,132間に第1、第2固定ボルト140,150を配置している。従って、取付筒120と支持筒130の各フランジ部122,132を用いて支持筒130の仮固定や固定を容易に行うことができ、作業性を向上することができる。
【0084】
また、本実施例の装置支持治具では、取付筒120の先端部に注水管台74の端面に密着するシール部材127を設けている。従って、シール部材127により取付筒120の先端部と注水管台74の端面とが隙間なく連通することとなり、各種の作業装置による作業時に、洗浄水や切削油などの漏洩や落下を防止することができる。
【0085】
また、本実施例の装置支持治具では、取付筒120に支持筒130から落下する異物を受け止める異物受け部128を設けている。従って、取付筒120に異物受け部128が設けられることで、各種の作業装置による作業時に、洗浄水や切削油などの流体、または、工具や各種部品などが異物受け部128に受け止められることで、下方への異物落下を防止することができ、作業の安全性を向上することができる。
【0086】
また、本実施例の装置支持治具では、支持筒130に各種の作業装置を固定する固定具135を設けている。従って、固定具135により各作業装置を支持筒130に固定することができ、作業装置による管台74へのアクセス性を向上することができる。
【0087】
また、本実施例の装置支持治具の装着装置によれば、支持筒130の内部に嵌入可能であると共に先端部が注水管台74に挿通可能な支持ロッド170と、支持ロッド170の先端部に装着された押圧部材201を注水ノズル73の内面に対して周方向にわたって均一に押圧可能な押圧装置200とを設けている。
【0088】
従って、架台101のアクセス孔102に挿入され支持筒130は、軸心方向に直交する方向に移動可能に支持されており、支持ロッド170を支持筒130に嵌入し、先端部を注水ノズル73に挿通した状態で、押圧部材201を注水ノズル73の内面に対して周方向にわたって均一に押圧すると、支持筒130が支持ロッド170を介して軸心方向に直交する方向に移動することで調心されることとなり、この位置で支持筒130を取付筒120に固定することで、支持筒130を適正位置に容易に位置決めすることができる。そのため、注水管台74に対して各種の作業を行う装置をこの支持筒130を介して所定の位置に効率良く支持することができ、作業性を向上することができる。
【0089】
また、本実施例の装置支持治具の装着方法によれば、支持筒130を取付筒120に挿入する工程と、支持ロッド170を支持筒130に嵌入すると共に先端部を注水ノズル73に挿通する工程と、支持ロッド170の先端部に装着された押圧部材201を注水ノズル73の内面に対して周方向にわたって均一に押圧する工程と、押圧部材201を注水ノズル73の内面に押圧した状態で支持筒130を取付筒120に固定する工程と、支持筒130を取付筒120に固定した後に押圧部材201による押圧を解除する工程と、押圧部材201の押圧を解除した後に支持ロッド170を支持筒130及び注水ノズル73から抜き取る工程とを設けている。
【0090】
従って、支持筒130を適正位置に容易に位置決めすることができることから、注水管台74の注水ノズル73に対して各種の作業を行う装置をこの支持筒130を介して所定の位置に効率良く支持することができ、作業性を向上することができる。
【0091】
なお、上述した実施例では、架台101のアクセス孔102に取付筒120を固定し、この取付筒120に支持筒130を固定するようにしたが、支持筒130を架台101のアクセス孔102に直接固定してもよい。
【0092】
また、上述した実施例では、取付筒120や支持筒130を円筒形状とし、支持筒130を注水管台74の軸心と合わせるように調整したが、この構成に限定されるものではない。例えば、取付筒120や支持筒130を角筒形状としたり、軸心を合わせるのではなく、所定の位置に調整するようにしてもよい。
【0093】
また、上述した実施例では、本発明の装置支持治具並びに装置支持治具の装着装置及び方法を原子炉容器41の注水管台74に適用して説明したが、他の管台71,72に適用することもできる。また、本発明は、原子炉容器41に限らず、構造体に所定間隔をあけて架台が配置されると共に構造体に形成された処理孔の入口部に対向して架台に作業孔が形成され、作業孔に装着される装置支持治具に関するものであればよく、いずれのものであっても適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
11 原子炉格納容器
12 加圧水型原子炉
41 原子炉容器
42 原子炉容器本体(構造物)
43 原子炉容器蓋
44 入口ノズル
45 出口ノズル
71 入口管台
72 出口管台
73 注水ノズル(処理孔)
74 注水管台
75 注水配管
101 架台
102 アクセス孔(作業孔)
103 固定プラグ
111 装置支持治具
120 取付筒
130 支持筒
140 第1固定ボルト(支持装置)
150 第2固定ボルト(固定装置)
161 装置支持治具の装着装置
170 支持ロッド
200 押圧装置
201 押圧部材(押圧部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に所定間隔をあけて配置されて前記構造体に形成された処理孔の入口部に対向した作業孔が形成される架台と、
前記作業孔に挿入可能な筒形状をなす支持筒と、
前記架台に対して前記支持筒をその軸心方向に直交する方向に移動可能に支持する支持装置と、
前記架台に対して前記支持筒を所定の位置に固定する固定装置と、
を備えることを特徴とする装置支持治具。
【請求項2】
前記作業孔に挿入して固定可能な筒形状をなす取付筒を有し、前記支持筒は、前記取付筒の内部に挿入可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置支持治具。
【請求項3】
前記取付筒と前記支持筒は、軸心方向に重なるフランジ部をそれぞれ有し、前記支持装置と前記固定装置は、前記2つのフランジ部間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の装置支持治具。
【請求項4】
前記取付筒の先端部に前記構造体における前記入口部の周辺部に密着するシール部材が設けられることを特徴とする請求項2または3に記載の装置支持治具。
【請求項5】
前記取付筒は、前記支持筒から落下する異物を受け止める異物受け部を有することを特徴とする請求項2から4のいずれか一つに記載の装置支持治具。
【請求項6】
前記支持筒は、この支持筒を通して前記処理孔に挿入される作業装置を固定する固定具を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の装置支持治具。
【請求項7】
構造体に所定間隔をあけて架台が配置されると共に、前記構造体に形成された処理孔の入口部に対向して前記架台に作業孔が形成され、前記作業孔に支持筒を挿入して装置支持治具を装着する装置であって、
前記架台に対して前記支持筒をその軸心方向に直交する方向に移動可能に支持する支持装置と、
前記支持筒の内部に嵌入可能であると共に先端部が前記処理孔に挿通可能な支持ロッドと、
前記支持ロッドの先端部に装着された押圧部を前記処理孔の内面に対して周方向にわたって均一に押圧可能な押圧装置と、
前記架台に対して前記支持筒を固定する固定装置と、
を備えることを特徴とする装置支持治具の装着装置。
【請求項8】
構造体に所定間隔をあけて架台が配置されると共に、前記構造体に形成された処理孔の入口部に対向して前記架台に作業孔が形成され、前記作業孔に支持筒を挿入して装置支持治具を装着する方法であって、
前記支持筒を前記作業孔に挿入する工程と、
支持ロッドを前記支持筒に嵌入すると共に先端部を前記処理孔に挿通する工程と、
前記支持ロッドの先端部に装着された押圧部を前記処理孔の内面に対して周方向にわたって均一に押圧する工程と、
前記押圧部を前記処理孔の内面に押圧した状態で前記支持筒を前記架台に固定する工程と、
前記支持筒を前記架台に固定した後に前記押圧部による前記処理孔の内面への押圧を解除する工程と、
前記押圧部の押圧を解除した後に支持ロッドを前記支持筒及び前記処理孔から抜き取る工程と、
を有することを特徴とする装置支持治具の装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61294(P2013−61294A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201045(P2011−201045)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)