説明

装飾体取付具

【課題】本発明は装飾体取付具に関し、コサージュ、ブローチ、エンブレム、ワッペン、記章の何れかのような装身具よりなる装飾体を、ドレス、ブラウスのような衣服を被取付体として、傷付けることなく、着脱可能に取付け、装飾体が前屈みになったり、歪みを生ぜずに保形性を発揮する。
【解決手段】装飾体1が、取付部材5の表面に固定され、止め具部材7が、合成樹脂製の板状体により構成され、取付部材の基盤部3が、止め具部材よりも大径に形成され、基盤部の表面には、装飾体の裏面、または裏面側を包み込んで保持する湾曲凹面部3aが構成され、ピン体部4が、被取付体Wに対する取付時に被取付体Wを屈曲させるようにして挿入孔6内に嵌入され、被取付体が止め具部材と取付部材の基盤部との間に挟持されて固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装飾体取付具に関し、コサージュ、または、ブローチ、エンブレム、ワッペン、記章の何れかのような装身具よりなる装飾体を、ドレス、ブラウスのような衣服よりなる被取付体に、傷付けることなく、着脱可能に簡単かつ確実に取付け、しかも、装飾体が前屈みになったり、歪みを生ぜずに保形性を発揮するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コサージュのような装飾体を被取付体としてのドレス、ブラウス等の衣服に着脱可能に取付けるための装飾体取付具には、装飾体が固着手段により固定された基盤部の裏面に係止部を有するピン体部が突設された取付部材と、可撓性を有する合成樹脂により形成されて開口端部が内側に狭搾する周壁部が基盤部の周囲に形成され、そして、前記ピン体部が係脱可能になる挿入孔が設けられた止め具部材と、を有するものがあった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−299413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の装飾体取付具は、取付部材、または、止め具部材の何れかが、コサージュのような装飾体の内面に固定されたものであり、装飾体の裏面側の布帛と、ドレス、ブラウス等の衣服としての被取付体を構成するための布帛とは、取り付時には、必ず重合されて、開口端部が内側に狭搾する周壁部が基盤部の周囲に形成された止め具部材の挿入孔内に、前記取付部材のピン体部が嵌脱可能に嵌入されるのと一緒に嵌入されて取付けが行われるものである。すなわち、特許文献1に記載の従来の装飾体取付具では、前記取付部材、および、前記止め具部材の双方は、装飾体を被取付体に取付けるのを意図して発明がなされたものである。そして、前記取付部材、および、前記止め具部材の双方は、装飾体に対する保形性については、無関係であって何等の工夫が施されていない構成なので、装飾体は被取付体に取付後において、前屈みになったり、歪む等の型崩れを生じていた。このため、装飾体は、本来の装飾機能が損なわれるという不都合を生じていた。この現象は、コサージュのような装飾体の外容積が大きくなったり、または、装飾体にビーズや人工宝石等の付帯装飾体が付着されることにより、重量が大きくなった場合に、前屈み等の現象が顕著に表れる。
【0004】
また、特許文献1に記載の従来の装飾体取付具は、装飾体の裏面側に設けられた布帛と、ドレス等の被取付体を構成するための布帛とは、被取付体に装飾体を取付けるという取付時には、必ず重合されて、開口端部が内側に狭搾している周壁部が、基盤部の周囲に形成された止め具部材の挿入孔内に、取付部材のピン体部が嵌脱可能に嵌入されるのと一緒に嵌入されて取付けが行われるので、挿入孔と、この挿入孔が挿入されるピン体部との間には、装飾体の裏面側の布帛と、衣服等の被取付体を構成するための布帛と、の厚みを加えた程度のほぼ一定の間隙を確保されなければならなかった。このため、ドレスのように薄い厚さばかりではなく、厚い厚さの多様な厚みの布帛にて縫製されている被取付体に対応して装飾体をクリーニングを行う等の必要時に、着脱自在に取付けるのには、ピン体部を有する取付部材と、挿入孔を有する止め具部材との相互の製作精度、および加工精度が高くなければ、取付部材に止め具部材を容易かつ確実に取付けたり、反対に取付部材から止め具部材が外れ易くなり、製作が容易ではなかった。
【0005】
しかも、特許文献1に記載の従来の装飾体取付具は、取付部材、または止め具部材の何れかがコサージュのような装飾体の内面に固定されているものであり、装飾体の外面に固定されるものではないので、作業がしずらく装飾体取付具自体の製作、および組付けには多くの時間および手間を要し、生産効率が悪いという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、装飾体を被取付体に取付けた場合に、装飾体の保形性に優れ、装飾体の装飾機能が充分に発揮され、また、取付部材、および止め具部材との製作精度、および加工精度の高さが高くなくても装飾体を被取付体に容易かつ確実に取付けが行え、そして、装飾体取付具自体の製作および組付けが容易に行えると共に、生産効率が高い装飾体取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、装飾体が固着手段により固定された基盤部の裏面中央に係止部を有するピン体部が突設された取付部材と、可撓性を有する合成樹脂により形成されて前記ピン体部が係脱可能になる挿入孔が設けられた止め具部材と、を有する装飾体取付具において、
(イ)前記止め具部材が、前記合成樹脂製の板状体により構成され、
(ロ)前記取付部材の前記基盤部が、前記止め具部材よりも大径に形成され、
(ハ)前記基盤部の表面には、前記装飾体の裏面、または裏面側を包み込んで保持する湾曲凹面部が構成され、そして、
(ニ)前記ピン体部が、被取付体に対する取付時に前記被取付体を屈曲させるようにして前記挿入孔内に嵌入されることにより、前記被取付体が前記止め具部材と前記取付部材の前記基盤部との間に挟持されて固定されている
ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記装飾体が、コサージュ、またはブローチ、エンブレム、ワッペン、記章の何れかであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記取付部材が、皿状をなし、かつ、その取付部材の直径が、前記装飾体の横幅に対して1/3〜1/2とされていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、前記取付部材が、前記装飾体の裏面側に設けられている補強用布帛の外側に前記固着手段により固定されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、前記取付部材が、前記装飾体の裏面側に設けられている補強用布帛の内側に前記固着手段により固定され、そして、前記補強用布帛から前記ピン体部が外部に突出されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項において、前記取付部材に前記装飾体を接着剤を用いて行う接着であるか、前記取付部材に前記装飾体を両面テープを用いて行う接着であるか、または、前記取付部材に前記装飾体を縫着糸を用いて行う縫着であるかの何れかにより、固定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1または6項において、前記取付部材に設けられた前記湾曲凹面部が、前記補強用布帛を接着する接着剤の接着剤溜まりとされることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項において、前記止め具部材には、前記ピン体部が係脱可能に係入される前記挿入孔と、前記挿入孔の周囲に該挿入孔に連通された分周的な複数個の切溝部と、これらの切溝部間に形成されて前記ピン体部に係脱可能にされた係止爪片と、が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか1項において、前記止め具部材には、前記切溝部間の外周に円弧溝が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項10に記載の発明は、請求項1〜9の何れか1項において、前記止め具部材には、前記被挟持体の取り外し時に、前記取付部材と、前記止め具部材の前記取付部材に対向する外周に前記取付部材との間に間隙を拡大可能にする薄肉部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、装飾体が固着手段により固定された基盤部の裏面中央に係止部を有するピン体部が突設された取付部材と、可撓性を有する合成樹脂により形成されて前記ピン体部が係脱可能になる挿入孔が設けられた止め具部材と、を有する装飾体取付具において、前記止め具部材が、前記合成樹脂製の板状体により構成され、前記取付部材の前記基盤部が、前記止め具部材よりも大径に形成され、前記基盤部の表面には、前記装飾体の裏面、または裏面側を包み込んで保持する湾曲凹面部が構成され、そして、前記ピン体部が、被取付体に対する取付時に前記被取付体を屈曲させるようにして前記挿入孔内に嵌入されることにより、前記被取付体が前記止め具部材と前記取付部材の前記基盤部との間に挟持されて固定されているので、取付部材の前記基盤部が、前記止め具部材よりも大径に形成されて装飾体の裏面を確実に保持するのと、そして、前記基盤部の表面には湾曲凹面部が構成されることにより、前記装飾体の裏面、または裏面側を包み込んで保持するのと、から、装飾体の保形性に優れ、装飾体は前屈みや歪み等の型崩れがない。従って、装飾体本来の装飾性が発揮される。また、取付部材、および止め具部材との製作精度、および加工精度の高さが高くなくても装飾体を被取付体に容易かつ確実に取付けが行え、製作および組付けが容易に行え、生産効率が高くなる。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1において、前記装飾体が、コサージュ、またはブローチ、エンブレム、ワッペン、記章の何れかであるので、取付部材と被取付部材とを用いて装飾体を被取付体に係脱可能に取付けた場合に、装飾体により、装飾性が発揮される。また、被取付体として、ドレス、ブラウス等の衣服をクリーニングする場合に、装飾体を被取付体から容易に取り外すことができる。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2において、前記取付部材が、皿状をなし、かつ、その取付部材の直径が、前記装飾体の横幅に対して1/3〜1/2とされているので、装飾体の裏面を充分な支持面積により確実に保持するのと、そして、装飾体が皿状に形成されることにより、前記装飾体の裏面、または裏面側を充分な支持面積により包み込んで保持するのと、から、装飾体は前屈みや歪み等の型崩れがなく、装飾体の保形機能が充分に発揮される。従って、装飾体本来の装飾性が発揮される。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか1項において、前記取付部材が、前記装飾体の裏面側に設けられている補強用布帛の外側に前記固着手段により固定されているので、装飾体に取付部材を容易かつ確実に取付けることができる。
【0021】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか1項において、前記取付部材が、前記装飾体の裏面側に設けられている補強用布帛の内側に前記固着手段により固定され、そして、前記補強用布帛から前記ピン体部が外部に突出されているので、装飾体に取付部材を容易かつ確実に、しかも構造堅牢に取付けることができる。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5の何れか1項において、
前記取付部材に前記装飾体を接着剤を用いて行う接着であるか、前記取付部材に前記装飾体を両面テープを用いて行う接着であるか、または、前記取付部材に前記装飾体を縫着糸を用いて行う縫着であるかの何れかにより、固定されるので、装飾体に取付部材を容易かつ確実に、しかも構造堅牢に取付けることができる。
【0023】
また、本発明の請求項7に記載の発明によれば、請求項1または6項において、前記取付部材に設けられた前記湾曲凹面部が、前記補強用布帛を接着する接着剤の接着剤溜まりとされるので、接着剤が溢れ出たり、またははみ出すことにより、装飾体が接着剤により、汚れることなく、取付部材を容易かつ確実に取付けられる。
【0024】
また、本発明の請求項8に記載の発明によれば、請求項1〜7の何れか1項において、前記止め具部材には、前記ピン体部が係脱可能に係入される前記挿入孔と、前記挿入孔の周囲に該挿入孔に連通された分周的な複数個の切溝部と、これらの切溝部間に形成されて前記ピン体部に係脱可能にされた係止爪片と、が設けられているので、装飾体を被取付体に取付けるという取付時には、係止爪片は分周的な複数個の切溝部間に設けられることにより半径方向の可撓性が充分に発揮され、ピン体部が複数個の係止爪片により弾力的に係止される。そして、装飾体を被取付体から取外すという取外し時には、挿入孔内にピン体部が係入されている取付部材は、止め具部材を引き剥がすように間隔を拡げると、挿入孔に連通する切溝部により半径方向に可撓性が発揮される複数個の係止爪片から脱係させることにより装飾体を容易かつ確実に取外すことができる。
【0025】
また、本発明の請求項9に記載の発明によれば、請求項1〜8の何れか1項において、前記止め具部材には、前記切溝部間の外周に円弧溝が形成されているので、装飾体を被取付体に取付けるという取付時には、係止爪片は分周的な複数個の切溝部間に設けられた円弧溝により周方向の可撓性が充分に発揮され、ピン体部が複数個の係止爪片により弾力的に係止される。そして、装飾体を被取付体から取外すという取外し時には、挿入孔内にピン体部が係入されている取付部材は、止め具部材を引き剥がすように間隔を拡げると、円弧溝により周方向に可撓性が発揮される複数個の係止爪片から脱係されて装飾体を容易かつ確実に取外すことができる。
【0026】
また、本発明の請求項10に記載の発明によれば、請求項1〜9の何れか1項において、前記止め具部材には、前記取付部材に対向する外周に前記取付部材との間に間隙を拡大可能にする薄肉部が設けられているので、装飾体の取外し時に、取付部材のピン体部を挿入孔から脱係させる場合に、取付部材と止め具部材の薄肉部との間に爪先を差し込んで、間隙を容易に拡大させて止め具部材を引き剥がすようにすれば、挿入孔からピン体部を容易かつ確実に脱係させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に従って本発明の実施の最良の形態により、本発明の詳細を説明する。
【0028】
<実施形態1>
図1は本発明の装飾体取付具の実施形態1を示す分解斜視図、図2は同じく正面図、図3は同じく取付け状態の断面図、図4は同じく本実施形態を構成する止め具部材の拡大正面図、図5は同じく図4のA−A断面図、図6は同じく本実施形態1を構成する止め具部材の他の変形例を示す拡大正面図である。
【0029】
本実施形態1の装飾体取付具は、装飾体1が固着手段2により固定された基盤部3の裏面に係止部4aを有するピン体部4が突設された取付部材5と、可撓性を有する合成樹脂により形成されて前記ピン体部4が係脱可能になる挿入孔6が設けられた止め具部材7と、を有する装飾体取付具である点は、例えば特許文献1に記載の従来の装飾体取付具と同様の構成、作用である。
【0030】
しかしながら、本実施形態1では、前記止め具部材7が、前記合成樹脂製の板状体により構成され、前記取付部材5の前記基盤部3が、前記止め具部材7よりも大径に形成され、前記基盤部3の表面には、前記装飾体1の裏面、または裏面側を包み込んで保持する湾曲凹面部3aが構成され、そして、前記ピン体部4が、被取付体Wに対する取付時に前記被取付体Wを屈曲させるようにして前記挿入孔6内に嵌入されることにより、前記被取付体Wが前記止め具部材7と前記取付部材5の前記基盤部3との間に挟持されて固定される。
【0031】
前記装飾体1が、本実施形態1ではコサージュ8、またはブローチ、エンブレム、ワッペン、記章のような装身具の何れかであるが、これは代表的な例示である。8Aはコサージュの花びら、8Bは補強用布帛であり、この補強用布帛8Bはコサージュ8の前記花びら8Aを裏面側から一まとめにまとめ上げるためのものである。この補強用布帛8Bを花びら8Aの裏面に固定することにより花びら8Aを一まとめにするのには、例えば接着剤により接着したり、縫着することにより行われる。また、前記被取付体Wとしては、ドレス、ブラウス等の衣服があげられる。前記ドレスとしては、例えば、ウエディングドレス、イブニングドレス、舞踏ドレスがあげられるが、これは例示であり、これに限られない。
【0032】
図示するこの実施形態1では、取付部材5が装飾体1の裏面側に設けられている補強用布帛8Bの外側に前記固着手段2により固定されている(図1,図3参照)。この固着手段2が、図3示すように前記取付部材5に前記装飾体1を接着剤Sを用いて接着するほか、図には示さないが前記取付部材5に前記装飾体1を接着する両面テープを用いた接着であるか、または、前記取付部材5に前記装飾体1を縫着糸を用いて縫着する縫着であるかの何れかにより、固定される。この縫着は図には示さないが、前記取付部材5に設けられた取付用の複数の孔を通じて行われる。
【0033】
前記取付部材5は、熱可塑性の合成樹脂、例えばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂により形成される。
【0034】
また前記ピン体部4は、上方から下方に向かって次第に縮小される傾斜断面により図1、図3に示されるように、前記係止部4aが形成されるが、ピン体部4の断面形状は図示は代表的な例示であり、これに限られない。要はピン体部4が挿入孔6と係脱可能になる形状であればよい。
【0035】
前記取付部材5が、皿状をなし、かつ、その取付部材5の直径φが、前記装飾体1の横幅Lに対して1/3〜1/2とされている(図2,図3参照)。
【0036】
前記取付部材5に設けられた前記湾曲凹面部3aが、前記補強用布帛8Bを接着する接着剤Sの接着剤溜まりとされている。
【0037】
前記止め具部材7は、熱可塑性の合成樹脂、例えばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂により形成され、可撓性が発揮される。そして、この止め具部材7は、装飾体1に調和する彩色も容易である。前記止め具部材7には、前記ピン体部4が係脱可能に係入される前記挿入孔6と、前記挿入孔6の周囲に該挿入孔6に連通された分周的な複数個の切溝部9と、これらの切溝部9間に形成されて前記ピン体部4に係脱可能にされた係止爪片10と、が設けられている。図3、および図5において、11は前記止め具部材7に、前記取付部材5に対向する外周に形成された薄肉部であり、この薄肉部11は装飾体1の取外し時に、取付部材5のピン体部4を挿入孔6から脱係させる場合に、取付部材5と止め具部材7の薄肉部11との間に爪先を差し込んで、間隙tを容易に拡大させ、止め具部材7の挿入孔6からピン体部4を容易かつ確実に脱係させるためのものである。
【0038】
本発明の装飾体取付具の実施形態は以上の構成からなり、図示するようなコサージュ8、または図には示さないが、ブローチのような装身具の何れかの装飾体1を例えばドレス、ブラウス等の衣服よりなる被取付体Wに取付けるのには、先ず、装飾体1を被取付体Wの表面側の所望の取付位置に配置し、次いで、装飾体1の裏面に固着手段2により固定された取付部材5の基盤部3の裏面に設けられたピン体部4に被取付体Wを屈曲させるようにし、この被取付体Wの裏面から宛われた止め具部材7に設けられている挿入孔6内に前記ピン体部4と一緒に前記被取付体Wを嵌入することにより、前記被取付体Wが前記止め具部材7と前記取付部材5の前記基盤部3との間に挟持されて固定がなされ、装飾体1を被取付体Wに取付けることができる。このように、装飾体1を被取付体Wに取付けるのに、従来のように安全ピンを用いて行うのとは異なり、被取付体3としてのドレス等に孔をあけなくても装飾体1の取付けが行え、不体裁はなくなる。
【0039】
そして、前記取付部材5の前記基盤部3が、前記止め具部材7よりも大径に形成されて接触面積が増大され、装飾体1の裏面を確実に保持するのと、そして、前記基盤部3の表面には湾曲凹面部3aが構成されることにより、前記装飾体1の裏面、または裏面側を包み込むように保持すること、から、取付部材5を介して被取付体Wに取付けられた装飾体1は取付部材5により保形がなされ、従来のように安全ピンにより装飾体を被取付体に取付けるのとは異なり、装飾体1が前屈みや歪みにより型崩れすることなく、優れた保形性が発揮される。従って、装飾体1本来の装飾性が発揮される。
【0040】
すなわち、前記取付部材5が、皿状をなし、かつ、前記装飾体1の横幅Lに対して1/3〜1/2の直径φに構成されているので、装飾体1の裏面を充分に広い支持面積により確実に保持するのと、しかも、前記装飾体1の裏面、または裏面側を取付部材5により充分な支持面積により包み込むように保持するのと、から、装飾体1の保形性に優れ、装飾体1は必然的に正面を向き、前屈みや歪み等の型崩れがなく、装飾体1の保形機能が充分に発揮される。この時、装飾体1の外容積が大きくなったり、または、ビーズ、人工宝石等の付帯装飾体が装飾体1に付着されることにより、装飾体1の重量が増大する場合でも、装飾体1の取付部材5による保形機能は保証される。
【0041】
また、取付部材5に装飾体1を固定する場合に、図3に示すように、固着手段2が、接着剤Sを用いて取付部材5が装飾体1の裏面側に設けられている補強用布帛8Bの外側に接着されるようにしているが、この際、前記取付部材5に設けられた前記湾曲凹面部3aが、前記補強用布帛8Bに対する接着剤Sの接着剤溜まりとされるので、装飾体1が接着剤Sにより、汚れることなく、取付部材5を容易かつ確実に取付けることができる。
【0042】
また、前記止め具部材7は、可撓性を有する板状体により形成され、前記挿入孔6の周囲に該挿入孔6に連通された分周的な複数個の切溝部9と、これらの切溝部9間に形成されて前記ピン体部4を係脱可能に係止する係止爪片10と、が設けられているので、装飾体1をドレス、ブラウス等の被取付体Wに取付けるという取付時には、係止爪片10は分周的な複数個の切溝部9,9間に設けられることにより半径方向Rの可撓性が充分に発揮され、ピン体部4が複数個の係止爪片10により弾力的に係止される。従って、ピン体部4が係止爪片10から不用意に脱係することにより装飾体1が被取付体Wから脱落されることはない。
【0043】
しかも、図6に示す変形例のように、止め具部材7に、前記切溝部9,9間の外周に円弧溝12を形成した場合には、装飾体1を被取付体Wに取付けるという取付時に、係止爪片10は分周的な複数個の切溝部9間に設けられた円弧溝12により周方向Tの可撓性が充分に発揮され、ピン体部4が複数個の係止爪片10により弾力的に係止される。
【0044】
従って、本実施形態1の装飾体取付具では、特許文献1に記載の従来の装飾体取付具のように、装飾体の裏面側の布帛と、被取付体を構成するための布帛とは、取り付時に、必ず重合されて、開口端部が内側に狭搾する周壁部が基盤部の周囲に形成された止め具部材の挿入孔内に、取付部材のピン体部が嵌脱可能に嵌入されるのと一緒に嵌入されて取付けが行われることにより、挿入孔と、この挿入孔が挿入されるピン体部との間には、装飾体の裏面側の布帛と、衣服等の被取付体を構成するための布帛と、の双方の厚みを加えた程度のほぼ一定の間隙を確保しなければならず、ドレスのように多様な厚みの布帛に形成される被取付体に対応してピン体部を有する取付部材と、挿入孔を有する止め具部材との製作精度、および加工精度を高いことが要求されるのとは異なり、取付部材5、および止め具部材7の加工精度が高くなくても、挿入孔6とピン体部4との間には被取付体Wの1枚分の布帛の厚みを確保するだけで、装飾体1を容易かつ確実に被取付体Wに固定することができる。この時、ドレス等の被取付体Wを構成する厚薄の布帛の厚さに相応して取付部材5のピン体部4の外周に対して挿入孔6の孔径が大小異なる止め具部材5を数種類用意しておけば、使い分けが行え、便利である。
【0045】
そして、ドレス等の衣服よりなる被取付体Wをクリーニングする必要時に、装飾体1を被取付体Wから取外すという取外し時には、挿入孔6内にピン体部4が係入されている取付部材5に取付けられた装飾体1は、挿入孔6からピン体部4を脱係することにより、被取付体Wから取外される。
【0046】
この際、前記取付部材5に対向する止め具部材7の外周に前記取付部材5との間に薄肉部11が形成されているので、装飾体1の取外し時に、取付部材5のピン体部4を挿入孔6から脱係させる場合に、取付部材5と止め具部材7の薄肉部11との間に爪先を差し込んで、止め具部材7を引き剥がすようにして間隙tを拡大させれば、挿入孔6からピン体部4を容易かつ確実に脱係させることができる。
【0047】
そして、挿入孔6に連通する切溝部9により、複数個の係止爪片10は、半径方向Rに可撓性が発揮されるので、装飾体1を容易かつ確実に取外すことができる。しかも、前記止め具部材7には、前記切溝部9,9間の外周に円弧溝12が形成されているので、複数個の係止爪片10は、円弧溝12を設けることにより周方向Tに可撓性が発揮され、ピン体部4が係止爪片10から脱係され、装飾体1を容易かつ確実に取外すことができる。
【0048】
<実施形態2>
図7に示すものは本発明の実施形態2であり、この実施形態2では、前記取付部材5が、前記装飾体1の裏面側に設けられている補強用布帛8Bの内側に前記固着手段2により固定され、そして、前記補強用布帛8Bから前記ピン体部4が外部に突出されている構成により、装飾体1に取付部材5を容易かつ確実に、しかも構造堅牢に取付けることができる。そして、ピン体部4に被取付体Wを屈曲させるようにし、この被取付体Wの裏面から宛われた止め具部材7に設けられている挿入孔6内にピン体部4と一緒に被取付体Wを嵌入することにより、前記被取付体Wが前記止め具部材7と前記取付部材5の前記基盤部3との間に挟持されて固定がなされることを作用・効果とするほかは、前記実施形態1と同様の構成を採用し、同様の作用を奏する。
【0049】
なお、上記説明では、装飾体1の背面に取付部材5を固定するための固着手段2として、接着剤Sを用いて接着しているが、固着手段2はこれに限ることなく、このほか、例えば図には示さないが前記取付部材5に前記装飾体1を両面テープを用いて接着させるか、または、前記取付部材5に前記装飾体1を縫着させるかの何れかによってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、装飾体を被取付体に取付けた場合に、装飾体の保形性に優れ、装飾体の装飾機能が充分に発揮され、また、取付部材、および止め具部材との製作精度、および加工精度の高さが高くなくても装飾体を被取付体に容易かつ確実に取付けが行え、そして、製作および組付けが容易に行え、装飾体取付具自体の生産効率が高いという用途・機能に適する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は本発明の装飾体取付具の実施形態1を示す分解斜視図である。
【図2】図2は同じく正面図である。
【図3】図3は同じく取付け状態の断面図である。
【図4】図4は同じく本実施形態を構成する止め具部材の拡大正面図である。
【図5】図5は同じく図4のA−A断面図である。
【図6】図6は同じく本実施形態を構成する止め具部材の他の変形例を示す拡大正面図である。
【図7】図7は同じく本発明の装飾体取付具の実施形態2を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 装飾体
2 固着手段
3 基盤部
3a 湾曲凹面部
4 ピン体部
5 取付部材
6 挿入孔
7 止め具部材
8 コサージュ
8A 補強用布帛
9 切溝部
10 係止爪片
11 円弧溝
12 薄肉部
S 接着剤
W 被取付体
t 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾体が固着手段により固定された基盤部の裏面中央に係止部を有するピン体部が突設された取付部材と、可撓性を有する合成樹脂により形成されて前記ピン体部が係脱可能になる挿入孔が設けられた止め具部材と、を有する装飾体取付具において、
(イ)前記止め具部材が、前記合成樹脂製の板状体により構成され、
(ロ)前記取付部材の前記基盤部が、前記止め具部材よりも大径に形成され、
(ハ)前記基盤部の表面には、前記装飾体の裏面、または裏面側を包み込んで保持する湾曲凹面部が構成され、そして、
(ニ)前記ピン体部が、被取付体に対する取付時に前記被取付体を屈曲させるようにして前記挿入孔内に嵌入されることにより、前記被取付体が前記止め具部材と前記取付部材の前記基盤部との間に挟持されて固定されている
ことを特徴とする装飾体取付具。
【請求項2】
前記装飾体が、コサージュ、またはブローチ、エンブレム、ワッペン、記章の何れかであることを特徴とする請求項1に記載の装飾体取付具。
【請求項3】
前記取付部材が、皿状をなし、かつ、その取付部材の直径が、前記装飾体の横幅に対して1/3〜1/2とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の装飾体取付具。
【請求項4】
前記取付部材が、前記装飾体の裏面側に設けられている補強用布帛の外側に前記固着手段により固定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の装飾体取付具。
【請求項5】
前記取付部材が、前記装飾体の裏面側に設けられている補強用布帛の内側に前記固着手段により固定され、そして、前記補強用布帛から前記ピン体部が外部に突出されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の装飾体取付具。
【請求項6】
前記固着手段が、前記取付部材に前記装飾体を接着剤を用いて行う接着であるか、前記取付部材に前記装飾体を両面テープを用いて行う接着であるか、または、前記取付部材に前記装飾体を縫着糸を用いて行う縫着であるかの何れかにより、固定されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の装飾体取付具。
【請求項7】
前記取付部材に設けられた前記湾曲凹面部が、前記補強用布帛を接着する接着剤の接着剤溜まりとされることを特徴とする請求項1または6項に記載の装飾体取付具。
【請求項8】
前記止め具部材には、前記ピン体部が係脱可能に係入される前記挿入孔と、前記挿入孔の周囲に該挿入孔に連通された分周的な複数個の切溝部と、これらの切溝部間に形成されて前記ピン体部に係脱可能にされた係止爪片と、が設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の装飾体取付具。
【請求項9】
前記止め具部材には、前記切溝部間の外周に円弧溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の装飾体取付具。
【請求項10】
前記止め具部材には、前記被挟持体の取り外し時に、前記取付部材と、前記止め具部材の前記取付部材に対向する外周に前記取付部材との間に間隙を拡大可能にする薄肉部が設けられていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の装飾体取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−142387(P2010−142387A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321850(P2008−321850)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000195188)清原株式会社 (9)
【Fターム(参考)】