説明

装飾性を有する着色酸化チタン薄膜形成用組成物

【課題】均一な干渉色を呈する装飾性に優れた酸化チタン薄膜を、塗布、焼成という簡単な方法で形成することのできる着色酸化チタン薄膜形成用組成物、及び装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】有機チタンキレート化合物を有機ビヒクル中に分散させたペースト状組成物であって、該組成物中における有機チタンキレート化合物の含有量がチタン元素量として0.1〜3重量%であることを特徴とする装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾性を有する着色酸化チタン薄膜形成用組成物、及び装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン薄膜は、メタリック感のある様々な干渉色を呈するものであり、装飾性及び耐久性に優れた着色皮膜として各種の用途への利用が期待される。この様な装飾を目的とする酸化チタン薄膜は、所望の干渉色を得るためには、正確な膜厚の制御が必要であり、更に、基材との密着性や膜の耐久性なども要求されることから、通常は、真空蒸着法、スパッタリング法などの気相法によって成膜されている。
【0003】
しかしながら、これらの成膜方法では、高真空や高エネルギーを要するため大掛かりな装置が必要であり、さらにパターニングに際してウエットエッチング法等の多段工程を要するため、製造コストが高いという問題点がある。
一方、チタン化合物を含む組成物を用いて、塗布、焼成によって、酸化チタン膜を形成する方法も知られている(下記特許文献1〜5参照)。しかしながら、これらの方法は、塗装下地のプライマー層、光触媒作用や抗菌性を有する機能性膜、導電性皮膜などを形成することを目的とするものであり、装飾性に優れた良好な干渉色を呈する皮膜を形成するために有効な方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−240718公報
【特許文献2】特開2000−319568公報
【特許文献3】特開2009−256423公報
【特許文献4】特開2010−177109公報
【特許文献5】特開2011−60752公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、均一な干渉色を呈する装飾性に優れた酸化チタン薄膜を、塗布、焼成という簡単な方法で形成することのできる着色酸化チタン薄膜形成用組成物、及び装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、有機チタンキレート化合物を有機ビヒクル中にチタン元素量として0.1〜3重量%という低濃度で分散させたペースト状組成物によれば、これを各種の基材に塗布し、焼成して0.02〜0.5μm程度という薄い膜厚の皮膜を形成することによって、膜厚の制御された平滑な酸化チタン薄膜を形成することができ、様々な干渉色を呈する装飾性に優れた酸化チタン薄膜を、大掛かりな装置を要することなく、簡単な方法で形成することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜形成用組成物、及び着色酸化チタン薄膜の形成方法を提供するものである。
項1. 有機チタンキレート化合物を有機ビヒクル中に分散させたペースト状組成物であって、該組成物中における有機チタンキレート化合物の含有量がチタン元素量として0.1〜3重量%であることを特徴とする装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜形成用組成物。
項2. 更に、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物及び有機アルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機金属化合物を含有する上記項1に記載の着色酸化チタン薄膜形成用組成物。
項3. 上記項1又は2に記載の着色酸化チタン薄膜形成用組成物を基材に塗布し、焼成して、膜厚0.02〜0.5μmの酸化チタン薄膜を形成することを特徴とする、装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜の形成方法。
項4. 上記項3の方法によって形成された着色酸化チタン薄膜を有する物品。
【0008】
本発明の着色酸化チタン薄膜形成用組成物は、有機チタンキレート化合物を有機ビヒクル中に分散させたペースト状組成物であって、該組成物中における有機チタンキレート化合物の含有量がチタン元素量として0.1〜3重量%であることを特徴とするものである。
【0009】
以下、本発明の組成物、及び着色酸化チタン薄膜の形成方法について、具体的に説明する。
【0010】
(1)有機チタンキレート化合物
本発明の着色酸化チタン薄膜形成用組成物では、有機チタンキレート化合物としては、特に限定的ではなく、各種の公知のチタンキレート化合物を用いることができる。この様なチタンキレート化合物を用いることによって、安定性の良好なペースト状の組成物を得ることができ、また、これを含む組成物を塗布、焼成することによって膜厚の制御された平滑な酸化チタン薄膜を形成することができる。有機チタン化合物の具体例としては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミネート)チタン、ジ(2−エチルヘキシロキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、イソプロポキシ(2−エチルヘキサンジオラト)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン等を挙げることができる。これらの有機チタンキレート化合物は、一種単独又は2種類以上を混合して使用できる。
【0011】
本発明の組成物では、本発明組成物全体を基準(100重量%)として、チタン元素の含有量として0.1〜3重量%程度となるように有機チタンキレート化合物を配合することが必要である。この範囲の有機チタンキレート化合物を含有することによって、後述する方法で、塗布、焼成して得られる酸化チタン薄膜は、平滑で均一な薄膜となり、メタリック感のある様々な干渉色による良好な発色を呈する装飾皮膜が形成される。
【0012】
(2)有機ビヒクル
本発明の組成物では、上記した有機チタンキレート化合物を有機ビヒクルに均一に分散させでペースト状の組成物とすることが必要である。
【0013】
有機ビヒクルとしては、上記した有機チタンキレート化合物を均一に分散して、塗布方法に応じた適度な粘度のペースト状組成物として調整可能なものであれば特に限定なく使用できる。この様な有機ビヒクルとしては、例えば、有機溶剤に、必要に応じてバインダー樹脂を溶解させた溶液を用いることができる。
【0014】
この場合、有機溶剤としては、樹脂の溶解性に優れ、粘稠性のオイルを形成し得る、中沸点又は高沸点のエステル系溶剤、エーテル系溶剤、石油系溶剤、テルペン系溶剤、グルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤等を使用することが好ましい。また、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤等も使用できる。特に、形成される薄膜の平滑性が良好である点から、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤、ターピネオール等のテルペン系溶剤、プロピレングリコール等のグルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が好ましい。これらの有機溶剤は、単独又は2種類以上混合して使用できる。
【0015】
バインダー樹脂としては、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレンカーボネート樹脂が好ましい)、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられ、こられの樹脂は単独又は2種類以上混合して使用できる。これらの内で、セルロース系樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等を例示でき、アクリル樹脂としては、ポリブチルアクリレート、ポリイソブチルメタクリレート等を例示できる。
【0016】
バインダー樹脂は、必要に応じて使用できるものであり、バインダー樹脂を含む有機ビヒクルを用いることによって、適度な粘度に調整することができ、塗布作業が容易となって、複雑なパターニング等を簡単に行うことができる。但し、多量に用いると、形成される薄膜の成膜性が低下して焼成後の薄膜に欠陥部が生じ易くなる。このため、バインダー樹脂の使用量は、本発明の組成物全体を基準(100重量%)として、30重量%程度以下とすることが好ましい。
【0017】
(3)有機金属化合物
本発明の着色酸化チタン薄膜形成用組成物には、更に、必要に応じて、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物及び有機アルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機金属化合物を配合することができる。これらの有機金属化合物を配合することによって、形成される酸化チタン薄膜がより緻密となり、密着性が向上するが、本発明組成物の安定性が低下する場合がある。このため、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物及び有機アルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機金属化合物を添加する場合には、その配合量は、本発明組成物全体を基準(100重量%)として、有機金属化合物の総量が、0.1〜10重量%程度の範囲内とすることが好ましい。
【0018】
これらの有機金属化合物の内で、有機チタン化合物としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラキス−2−エチルヘキシロキ シチタン、テトラステアリロキシチタン等が挙げられる。これらの有機チタン化合物は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0019】
また、有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート等が挙げられる。これらの有機ジルコニウム化合物は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0020】
有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキ シシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル −N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラ ン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0021】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム sec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス (アセチルアセトネート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート等が挙げられる。これらの有機アルミニウム化合物は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0022】
(4)着色酸化チタン薄膜形成用組成物
本発明の着色酸化チタン薄膜形成用組成物は、上記した有機チタンキレート化合物、有機ビヒクル、及び必要に応じて、有機金属化合物を混合して、ペースト状にすることによって得ることができる。この際、得られた組成物の粘度については、特に限定的ではないが、塗布操作の容易さや形成される薄膜の平滑性などを考慮すると、25℃で測定した粘度として、10〜100Pa・s程度とすることが好ましい。従って、使用する有機チタンキレート化合物の種類に応じて、上記粘度範囲となるように、有機ビヒクルにおける有機溶剤の種類やバインダー樹脂の使用の有無などを適宜選択すればよい。
【0023】
本発明の組成物には、更に、必要に応じて、分散剤、レベリング剤などの公知の添加剤を配合することもできる。
【0024】
(5)着色酸化チタン薄膜の形成方法
本発明の着色酸化チタン薄膜形成用組成物によれば、これを基材塗布し、焼成することによって、干渉色による良好な発色を示す装飾性に優れた酸化チタン薄膜を形成できる。
【0025】
基材としては、特に限定はなく、後述する焼成温度において変質しない材料であればよい。例えば、ガラスやセラミックスなどを基材とすることも可能であるが、特に、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、クロム等の金属を基材とする場合に、金属光沢のある干渉色を有する装飾性に優れた薄膜を形成できる。
【0026】
塗布方法としては、特に限定はなく、例えばスピンコート、スプレーコート、バーコート、ブレードコート、ロールコート等のコート法、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷法を採用できる。特に本発明の組成物は、印刷法によって塗膜形成できる観点で好ましく、大面積の塗膜を簡単に形成でき、パターニングも容易に行える。
【0027】
塗布時の膜厚については、焼成後に形成される酸化チタン薄膜の膜厚が0.02〜0.5μmの範囲内となるように決めればよい。焼成後の酸化チタン薄膜の膜厚は、酸化チタン薄膜形成用組成物の塗布厚が同一であれば、該組成物中に含まれるチタン濃度によって決まるので、該組成物中に含まれる有機チタンキレート化合物の濃度に応じて、適切な塗布厚を決めればよい。通常は、15〜25μm程度の塗布厚とすればよい。
【0028】
次いで、本発明組成物が塗布された基材を空気中で400〜1000℃程度で焼成することによって、優れた装飾性を有する酸化チタン薄膜が形成される。焼成時間は通常10〜60分程度とすればよい。
【0029】
尚、焼成前に、空気中で乾燥させることが好ましく、これにより、特に欠陥のない均一な酸化チタン薄膜を形成できる。乾燥温度は室温〜200℃程度とし、乾燥時間は10〜30分間程度とすることが好ましい。
【0030】
形成される酸化チタン薄膜は、例えば、アナターゼ型、ルチル型、アナターゼとルチルの混合型などの各種の結晶質の酸化チタンを含むものとなる。該酸化チタン薄膜の膜厚は、0.02〜0.5μm程度の範囲内とすることが好ましい。膜厚がこの範囲内にある場合には、干渉色による均一な発色を呈するものとなるが、膜厚が薄すぎる場合には、発色せずに透明な薄膜が形成されやすく、一方、膜厚が厚すぎると、形成される薄膜にクラックが生じやすくなる。
【0031】
形成される酸化チタン薄膜の具体的な色調については、酸化チタン薄膜の膜厚によって決まるものである。この場合、本発明組成物の塗布厚が同一であれば、該組成物中のチタン濃度に応じて、焼成後の酸化チタン膜の膜厚が決まるので、具体的な塗布条件に応じて、適切なチタン濃度の組成物を選択することによって、目的とする色調を呈する装飾性に優れた酸化チタン薄膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の着色酸化チタン薄膜形成用組成物によれば、真空装置など大掛かりな装置を要することなく、ペースト状の組成物を塗布し、乾燥するという簡単な方法によって、膜厚の制御された平滑な酸化チタン薄膜を形成することができる。形成された酸化チタン薄膜は、膜厚に応じて様々な干渉色を呈し、装飾性に優れたものとなり、耐久性も良好である。
【0033】
また、本発明組成物から形成される酸化チタン薄膜の膜厚は、塗布条件に応じて、該組成物中のチタン濃度を選択することによって容易に制御できるので、任意の膜厚、即ち、任意の色調の薄膜を容易に形成できる。
【0034】
このため、本発明によれば、装飾性に優れ、耐久性も良好な酸化チタン薄膜を簡単な方法によって形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0036】
実施例1〜4及び比較例1〜2
下記表1に示す配合のチタン化合物と有機ビヒクルをプロペラ撹拌機にて5〜30分間撹拌混合して着色酸化チタン薄膜形成用組成物を得た。
【0037】
ステンレス325メッシュスクリーン版を用いて、0.8mm厚さのSUS304基板(研磨仕上げ品)上に、上記組成物をスクリーン印刷により、塗布厚20μmとなるように塗布した。塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した後、空気中450℃で10分間焼成することにより、酸化チタン薄膜を形成した。
【0038】
次いで、形成された酸化チタン薄膜について、下記の方法で膜厚、着色、膜性状の評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0039】
(酸化チタン薄膜の膜厚測定)
形成された酸化チタン薄膜の断面を、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察し、膜厚を算出した。
【0040】
(酸化チタン薄膜の着色)
マンセル色見本を参考にして、形成された酸化チタン薄膜の色を目視で判別した。
【0041】
(膜性状)
形成された酸化チタン薄膜のクラック発生の有無をマイクロスコープ(倍率:100倍)にて観察し判定した。
【0042】
【表1】

【0043】
以上の結果から明らかなように、チタン濃度が0.1〜3重量%の範囲にある本発明の組成物を用いることによって、良好な色調を有し、欠陥のない装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜が形成されることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機チタンキレート化合物を有機ビヒクル中に分散させたペースト状組成物であって、該組成物中における有機チタンキレート化合物の含有量がチタン元素量として0.1〜3重量%であることを特徴とする装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜形成用組成物。
【請求項2】
更に、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物及び有機アルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機金属化合物を含有する請求項1に記載の着色酸化チタン薄膜形成用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の着色酸化チタン薄膜形成用組成物を基材に塗布し、焼成して、膜厚0.02〜0.5μmの酸化チタン薄膜を形成することを特徴とする、装飾性に優れた着色酸化チタン薄膜の形成方法。
【請求項4】
請求項3の方法によって形成された着色酸化チタン薄膜を有する物品。

【公開番号】特開2013−49738(P2013−49738A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186687(P2011−186687)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】