説明

装飾性材料が埋封された熱可塑性物品

本発明は、1つ又はそれ以上の積層体に熱及び圧力を加えることによって得られる、1つ又はそれ以上の装飾性材料が埋封された熱可塑性物品であって、前記積層体の少なくとも1つが、順に、(1)上部シート材料;(2)1つ又はそれ以上の装飾性材料;及び(3)下部シート材料を含んでなり;その上部及び下部シート材料がポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンドから形成されている熱可塑性物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装飾性材料が埋封された(embedded)新規な熱可塑性物品に関する。更に詳しくは、本発明は、装飾性材料が埋封された熱可塑性物品を製造するために、順に:上部シート材料;少なくとも1つの装飾性材料、例えば織物、金属ワイヤー、紙又は印刷層;及び下部シート材料を含む積層体に、熱及び圧力を加えることにより製造される物品に関する。本発明により提供される新規な熱可塑性物品は、建設業において、窓の板ガラスとして、間仕切りとして、そして装飾性パネルとして使用することができる。その物品の一方又は両方の表面は、その物品の成形中又は成形後に表面加工することができる。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、透明及び半透明のものの両方とも、窓の板ガラス材料及び間仕切りとして使用されてきており、ある種の用途では、特有の装飾効果を与えるため、塗装されたり、又は着色されたりしている。ガラスは高密度で高重量であって、作業現場で製造することは困難であり、一般に脆く、そして安全上の問題を起こしやすい。
【0003】
ポリ塩化ビニルシート、アクリル系、例えばポリメチルメタクリレートのシート及びポリカーボネートシートなどのガラスの代替品は、ある種の板ガラス用途でガラスに対する代替品として使用されてきた。一般に、これらの代替品は、透明な(光透過性の)、非装飾的な用途のために作製されている。本発明により提供されるシート材料は、先ず、透明度の異なる、様々なレベルの改善された安全性を有する装飾的な用途を創出し、獲得するために使用することができる。
【0004】
コポリエステルシートにより作製された物品については、特許文献1〜5に記載されている。しかしながら、コポリエステル単独のものと比較して、クリープ/熱に対するより高い耐性が必要な用途、例えばバックリットパネル(backlit paneling)などが存在する。更に単独のコポリエステルを単独のポリカーボネートで置き換えることも、ポリカーボネートを複合材製造の前に乾燥しなければならず、それによりサイクル時間及びコストが増大するので、なおさら望ましいことではない。ポリカーボネートはまた、高温度で積層しなければならず、そのことが装飾層の劣化の原因なるおそれがある。更に、ポリカーボネートは予備乾燥なしに後成形することが困難であり、より高い成形温度が必要になる。
【0005】
特許文献6には、特に浴室又はシャワーエリア(shower area)に有用な、頑強な壁面カバー材が記載されており、その壁面カバー材は、第一層に透明な、即ち光透過性の、アクリル系注型物、第二層に透明なポリエステル熱硬化性樹脂、そして第三層として薄い織物シートを含む積層体からなっており、着色ポリエステル熱硬化性被膜がその織物の層を覆っている。この場合のポリエステル熱硬化性樹脂は液体として適用され、続いて固体に硬化される。ポリエステル熱硬化性樹脂の使用に際しては幾つかの困難がある。液体の熱硬化性樹脂から気泡を取り除くことは困難である。熱硬化性樹脂は硬化の間にかなりの収縮を生じるおそれがある。更に架橋したポリエステル樹脂は脆いことで知られている。本発明はこれら多くの困難を解消するものである。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,894,04号明細書
【特許文献2】米国特許第5,958,539号明細書
【特許文献3】米国特許第5,998,028号明細書
【特許文献4】米国特許第5,643,666号明細書
【特許文献5】米国特許第6,025,069号明細書
【特許文献6】米国特許第5,413,870号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術を超える本発明の利点には、熱分解温度(HDT)の高さ、増大した強靱さ、及び増大した経時的耐クリープ性(creep resistance with time)が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、装飾性材料が埋封された、典型的にはシート材料の形体の熱可塑性物品を提供する。その熱可塑性物品は1つ又はそれ以上の積層体又はサンドイッチ体に熱及び圧力を加えることにより得られ、前記積層体の少なくとも1つは、順に、(1)少なくとも1つの上部シート材料、(2)少なくとも1つの装飾性材料及び(3)少なくとも1つの下部シート材料を含む。必要に応じて、接着剤層を(1)と(2)の間及び/又は(2)と(3)の間に用いてもよい。
【0009】
前記上部及び下部シート材料は、混和性のポリエステル/ポリカーボネートブレンドから製造される。ポリエステル成分は、以下に記載するように、ポリカーボネートとの混和性をもたらすために、コモノマーとして1,4−シクロヘキサンジメタノールを最小レベルで含むのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、1つ又はそれ以上の積層体に熱及び圧力を加えることによって得られる、装飾性材料が埋封された熱可塑性物品であって、前記積層体の少なくとも1つが、順に、(1)少なくとも1つの上部シート材料、(2)金属のワイヤー、ロッドもしくはバー、天然繊維、ガラス繊維、鉱物繊維、織物、紙及び/又は印刷層を含む、少なくとも1つの装飾性材料及び(3)少なくとも1つの下部シート材料を含んでなり、その上部及び下部シート材料が
(a)脂肪族、脂環族及び/又は芳香族ジカルボン酸よりなる群から選ばれる二酸残基成分であって、前記芳香族ジカルボン酸の芳香族部分が炭素原子6〜20を有し、前記脂肪族もしくは脂環族ジカルボン酸の脂肪族もしくは脂環族部分が炭素原子3〜20を有する二酸残基成分並びに1,4−シクロヘキサンジメタノール45〜100モル%及び、必要に応じて、炭素原子2〜20の、少なくとも1種の付加的な脂肪族グリコールを含み、そのグリコール成分についての合計のモル%が100モル%に等しい、グリコール残基成分を含むポリエステル1〜99重量%、
(b)芳香族ポリカーボネート99〜1重量%、
を含んでなる、混和性のポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンドから形成され;そのポリエステル/ポリカーボネートブレンド中の、ポリエステル及びポリカーボネートの組合せ合計重量百分率が100重量%である熱可塑性物品に関する。
【0011】
好ましいブレンド組成は、ポリエステル50〜90重量%及び芳香族ポリカーボネート50〜10重量%である。更に好ましいブレンド組成はポリエステル60〜80重量%及び芳香族ポリカーボネート40〜20重量%である。
【0012】
本発明に関して好ましいポリエステルは、式I:
【0013】
【化1】

【0014】
の繰り返し単位を有するポリエステルである。
【0015】
式中、Rは、1,4−シクロヘキサンジメタノール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールと、炭素原子2〜20の少なくとも1種のアリール、アルカンもしくはシクロアルカン含有ジオールもしくはその化学的均等物の残基との混合物であり、且つR1は炭素原子3〜20のアリール、脂肪族もしくはシクロアルカン含有二酸又はその化学的均等物から誘導されたジカルボン酸残基である。前記ジオール部分Rの例は、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−又は1,3−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールである。好ましい二番目のグリコールはエチレングリコールである。二酸部分R1の例は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、1,4−、1,5−及び2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸及びシス−又はトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。有用な芳香族ジカルボン酸の例はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−及びトランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸並びに1,4−、1,5’−、2,3−、2,6−及び2,7−ナフタレンジカルボン酸である。これら二酸の化学的均等物には、エステル、アルキルエステル、ジアルキルエステル、ジアリールエステル、酸無水物、塩、酸クロリド、酸ブロミド等が含まれ、本発明の範囲に含まれる。好ましいジカルボン酸はテレフタル酸及びイソフタル酸又はそれらの混合物である。好ましい化学的均等物には、テレフタル酸及びイソフタル酸のジアルキルエステルが含まれる。これらの酸又は均等物の何れかの混合物も使用できる。
【0016】
本発明の範囲内で有用な好ましいポリエステルは1,4−シクロヘキサンジメタノール40〜100モル%、より好ましくは60〜80モル%を有するポリエステルであるが、ここでポリエステル中のグリコール成分の合計のモル%は100モル%に等しい。残りのグリコール成分は、ここに記載された他の何れかのグリコールであることができるが、好ましくは、0〜60モル%、より好ましくは20〜40モル%の量のエチレングリコールである。ここに記載された何れの二酸も使用可能であるが、本態様では、テレフタル酸80〜100モル%が好ましい。
【0017】
本発明の範囲内で有用な別の好ましいポリエステルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール100モル%を有するポリエステルであるが、ここでポリエステル中のグリコール成分の合計のモル%は100モル%に等しい。この特定の態様においては、またイソフタル酸が5〜50モル%、より好ましくは20〜40モル%の量で存在することが好ましい。ここに記載された何れの二酸も使用可能であるが、テレフタル酸が95〜50モル%の量で存在することが好ましい。
【0018】
この技術分野では周知の、慣用の重縮合方法が、本発明のポリエステルを製造するために、使用される。これらには、酸のジオールとの直接縮合又は低級アルキルエステルを用いたエステル交換によるものが含まれる。本発明のポリエステルのインヘレント粘度は、フェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒中、25℃で、約0.4〜1.0dL/gの範囲であることができる。
【0019】
本発明の重合反応は、1種又はそれ以上の重合触媒の存在下に、実施することができる。典型的なポリエステル縮合のための触媒又は触媒系は、この技術分野では周知である。適当な触媒は、例えば米国特許第4,025,492号、第4,136,089号、第4,176,224号、第4,238,593号及び第4,208,527号の各明細書に開示されており、それらの開示は引用により本明細書に組み入れるものとする。更にR.E.Wilfongの“Journal of Polymer Science”,54巻、p.385(1961年)には、ポリエステル縮合反応に有用な典型的な触媒が記載されている。好ましい触媒系にはTi、Ti/P、Mn/Ti/Co/P、Mn/Ti/P、Zn/Ti/Co/P、Zn/Al及びLi/Alが含まれる。重縮合にコバルトを使用しないときには、共重合性トナーがコポリエステル中に、それらのコポリエステルの色調を制御するために組み入れられ、その結果、それらは色調が重要な特性であるように意図された用途に適している。触媒及びトナーに加えて、その他の慣用の添加剤、例えば酸化防止剤、染料等を典型的な量でコポリエステル化反応中に使用することができる。
【0020】
本発明の関連内で生成されるポリエステルの製造においては、1種又はそれ以上の分岐剤もまた有用である。分岐剤は、ポリエステルの酸単位部分で、又はグリコール単位部分で分岐を与えるものであることができ、またそれは複合体であることもできる。それら分岐剤の幾つかはすでにここに記載されている。しかし、そのような分岐剤の例証となるものは多官能酸、多官能グリコール及び酸/グリコール複合体である。例としては、トリ又はテトラカルボン酸、例えばトリメシン酸、ピロメリット酸及びそれらの低級アルキルエステル等並びにペンタエリスリトールなどのテトロールがあげられる。トリメチロールプロパンなどのトリオール又はヒドロキシルテレフタル酸ジメチルなどのジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシジカルボン酸並びに誘導体も本発明の関連内で有用である。無水トリメリット酸は好ましい分岐剤である。分岐剤はポリエステル自体を分岐するか、又は本発明のポリエステル/ポリカーボネートブレンドを分岐するかするために、使用されることができる。
【0021】
本発明で有用なポリカーボネートは、炭酸結合(carbonate linkage)を介して結合されている二価フェノールの二価の残基を含み、構造式II及びIIIにより表される。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
式中、Aは炭素原子1〜8のアルキレン基;炭素原子2〜8のアルキリデン基;炭素原子5〜15のシクロアルキレン基;炭素原子5〜15のシクロアルキリデン基;カルボニル基;酸素原子;硫黄原子;−SO−もしくは−SO2−;又はe及びg(両方とも0〜1の数を示す)に相当する基を表し;ZはF、Cl、Br又はC1〜C4アルキルを表し;そして、もし幾つかのZ基が1つのアリール基の置換基であるとき、それらは同一であるか又は互いに異なっていてもよく;dは0〜4の整数を表し;そしてfは0〜3の整数を表わす。
【0025】
用語「アルキレン」は2つの原子価が異なる炭素原子にある二価の飽和脂肪族基、例えばエチレン;1,3−プロピレン;1,2−プロピレン;1,4−ブチレン;1,3−ブチレン;1,2−ブチレン;アミレン;イソアミレン等を意味する。用語「アルキリデン」は、2つの原子価が同一の炭素原子にある二価の飽和脂肪族基、例えばエチリデン;プロピリデン;イソプロピリデン;ブチリデン;イソブチリデン;アミリデン;イソアミリデン、3,5,5−トリメチルヘキシリデンを意味する。「シクロアルキレン」の例には、シクロプロピレン、シクロブチレン及びシクロへキシレンがある。「シクロアルキリデン」の例には、シクロプロピリデン、シクロブチリデン及びシクロへキシリデンがある。C1〜C4アルキルの例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びイソブチルがある。
【0026】
使用される二価フェノールは公知であり、その反応基はフェノール性水酸基であると考えられる。使用される典型的な二価フェノールの幾つかは、ビスフェノール、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、3,3,5−トリメチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−スルホニルジフェノールである。その他の二価フェノールには、ヒドロキノン、レゾールシノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン類及びα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン類がそれらの核アルキル化化合物類と共に含まれる。これら及び更なる適当な二価フェノールは、例えば米国特許第2,991,273号;第2,999,835号;第2,999,846号;第3,028,365号;第3,148,172号;第3,153,008号;第3,271,367号;第4,982,014号;第5,010,162号の各明細書に記載されており、これら全ては引用により本明細書に組み入れるものとする。本発明のポリカーボネートは、その構造中に、1種又はそれ以上の適当なビスフェノールから誘導される単位を必須のものとすることができる。最も好ましい二価フェノールは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。
【0027】
カルボネート前駆体は、典型的にはカルボニルハライド、ジアリールカルボネート又はビスハロホルメートである。カルボニルハライドには、例えばカルボニルブロマイド、カルボニルクロライド及びそれらの混合物が含まれる。ビスハロホルメートには、二価フェノールのビスハロホルメート、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ヒドロキノン等のビスクロロホルメート類又はグリコールのビスハロホルメートなどが含まれる。上記カルボネート前駆体は全て有用であるが、ホスゲンとしても知られているカルボニルクロライド及びジフェニルカルボネートが好ましい。
【0028】
芳香族ポリカーボネートは、二価フェノールをカルボネート前駆体、例えばホスゲン、ハロホルメート又は炭酸エステルなどと、溶融して又は溶液で反応させることによるなど、何れかの方法により製造することができる。適当な方法が米国特許第2,991,273号;第2,999,846号;第3,028,365号;第3,153,008号;第4,123,436号;の各明細書に開示されており、これら全ては引用により本明細書に組み入れるものとする。
【0029】
本発明のポリカーボネートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したとき、重量平均分子量約10,000〜200,000、好ましくは15,000〜80,000を有し、そしてそれらのメルトフローインデックスは、ASTM D−1238により、300℃で約1〜65g/10分、好ましくは約2〜30g/10分である。ポリカーボネートは分岐されていてもよく、また分岐されていなくてもよい。ポリカーボネートは種々の公知の末端基を有することができるものと思われる。これらの樹脂は公知であり、容易に購入することができる。
【0030】
1種又はそれ以上の分岐剤がまた、本発明のポリカーボネートの製造に使用することもできる。分岐剤、例えば三又は四官能フェノール及び炭酸が、炭酸側鎖を有するビスフェノールと同様、典型的に使用される。例としては1,4−ビス(4’,4”−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン及びトリスフェノールTCが含まれる。窒素含有分岐剤も使用される。それらの例には、シアン酸クロリド及び3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールが含まれる。
【0031】
ポリマーの混和性とは、本明細書では、ポリマーが単一の相を形成することとして定義する。
【0032】
本発明の好ましい混和性ブレンドは、“Research Disclosure 22921”,5月(1983年)に初めて開示されたものであり、この文献はポリカーボネートの、テレフタル酸並びに1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールの混合物に基づくポリエステルとのブレンドに関するものである。同様の混和性ブレンドは米国特許第4,786,692号及び第5,478,896号の各明細書にも開示されている。ポリカーボネートの、テレフタル酸とイソフタル酸の混合物及び1,4−シクロヘキサンジメタノールに基づく、別のポリエステル族とのブレンドは、米国特許第4,188,314号及び第4,391,954号の各明細書に開示されている。英国特許第1,599,230号明細書(1980年1月16日発行)には、ポリカーボネートの、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び6員炭素環ジカルボン酸のポリエステルとのブレンドが開示されている。Mohn等は、1,4−シクロヘキサンジメタノール並びにテレフタル酸又はテレフタル酸/イソフタル酸混合物に基づくポリエステルの、ポリカーボネートとのブレンドの熱的特性について報告し[“J.Appl.Polym.Sci.”,23巻、p.575(1979年)]、2つの系の間ではほんの僅かの挙動上の差異しか存在せず、それらの結果は予想外であった旨結論付けた。もっと最近では、これら混和性ブレンド系の改善が達成され、その著者により出願されている。
【0033】
本発明の好ましい態様は、ここでは上部シート材料(1)、装飾層(2)及び下部シート材料(3)からなることが記載されている「サンドイッチ」態様であるが、「サンドイッチ」が単純に繰り返された、多重「サンドイッチ」でもありうることもまた本発明の範囲内である。多重「サンドイッチ」態様が、1つの層、即ち層(1)又は(3)を共通のものとすること、即ち、次のような層、順に:シート材料、装飾層、シート材料、装飾層、シート材料等からなる積層体なども、更に本発明の範囲内である。
【0034】
必要に応じて、接着剤層は、上部シート材料(1)と装飾性材料(2)との間に、及び/又は下部シート材料(3)と装飾性材料(2)との間に使用してもよい。多重積層体の態様においても、接着剤層が積層体の間に適用することができる。接着剤層には、この技術分野では公知の任意の接着剤を含むことができる。本発明の範囲内の具体例には、ポリウレタン、変性ポリエチレン、スルホポリエステル、エポキシ被覆があり、これらの全ては当技術分野で公知である。本発明の実施における接着剤として有用なスルホポリエステルは直鎖状又は分枝鎖状の何れであってもよい。好ましいスルホポリエステルは、−25℃〜+90℃の間のガラス転移温度(Tgとして示す)を有する。より好ましいスルホポリエステルは、0℃〜+65℃の間のTgを有する。更に好ましいスルホポリエステルは、+5℃〜+55℃の間のTgを有する。有用なスルホポリエステル及びその製造方法は、米国特許第3,546,008号;第3,734,874号;第4,233,196号;第4,946,932号;第5,543,488号;第5,552,495号;第5,290,631号;第5,646,237号;第5,709,940号;及び第6,162,890号の各明細書に記載されている。或いは、米国特許第4,111,846号明細書に記載されたものなどの、水分散性ホスホポリエステルも有利に使用することができるが、これらのポリマーは水性系での加水分解安定性が不足する欠点を持ち、そのため実際の使用ではあまり望ましくはない。
【0035】
上で詳述した好ましいTg範囲に加えて、有用なスルホポリエステルは、フェノール/テトラクロロエタン60/40重量部の溶媒100mLに、ポリマー約0.25gの濃度の溶液中、25℃で、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2、更に好ましくは少なくとも0.3のインヘレント粘度(分子量の尺度である)を有している。分枝鎖状のスルホポリエステル、例えば米国特許第5,543,488号明細書などに記載されたものについては、好ましい組成物は、数平均分子量(Mn)少なくとも4000ダルトンを有している。
【0036】
本発明のポリエステル/ポリカーボネートブレンドは、慣用の溶融加工技法により製造することができる。例えばポリエステルのペレットがポリカーボネートのペレットと混合され、次いで一軸又は二軸の何れかの押出機で溶融混合して均一な混合物を形成することができる。
【0037】
本発明の混和性のブレンド組成物は耐衝撃改良剤、UV安定剤、安定剤、成核剤、増量剤、難燃剤、補強剤、充填剤、帯電防止剤、離型剤、着色剤、酸化防止剤、押出助剤、滑剤、剥離剤、カーボンブラック及びその他の顔料等を含むことができ、それらの全て及びそれらの混合物は、ポリエステル/ポリカーボネートブレンドにおけるそれらの利用について技術分野では公知である。特に、所望なら、更に着色を減少させるための亜リン酸系安定剤を使用することが、当技術分野ではよく知られている。
【0038】
本発明の熱可塑性物品の第二の成分には装飾性材料が含まれる。装飾性材料は金属のワイヤー、ロッド又はバー;天然繊維、ガラス繊維、鉱物繊維、布帛(fabric)、紙;及び印刷層を含むことができる。
【0039】
例えば布帛は被包性の装飾性材料として使用することができる。布帛は、例えば織り込み技法又は編み込み技法により、その布帛中に作製された画像や装飾性デザインを表示することができる。本発明の物品の製造に用いることのできる布帛には、紡織繊維、即ち天然、半合成又は合成のポリマー材料の繊維が含まれる。例えば布帛は、綿、毛、絹、レーヨン(再生セルロース)、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン66及びナイロン6などの合成ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの合成ポリオレフィン、アクリル系、モダクリル系並びに酢酸セルロースの繊維などから製造される。紡織繊維の融点は、本発明の物品の製造及び加工の間に、何らかの布帛の分解及び歪みを避けるために十分なだけ高くすべきである。布帛は、織り、スパンボンドし、編み又は繊維業界では周知のその他の方法により、製造することができ、無着色、例えば白色であることができ、又は慣用の染色及び印刷技法により着色することができる。或いは、布帛は染色された織糸から又は、練り混み着色されたポリマーからもたらされるフィラメント及び織糸から製造することができる。普通、本発明の熱可塑性物品中に存在する布帛は、実質的に連続したものであり、識別できる層を構成している。従って、本発明の1つの態様は、順に、(1)混和性のポリエステル/ポリカーボネート配合物の層、(2)紡織繊維から構成又は製造された布帛層及び(3)先に示した混和性のポリエステル/ポリカーボネートブレンドの第二の層を含む新規な積層体である。
【0040】
別の実例として、本発明の熱可塑性物品の第二成分(装飾性成分)は、金属のワイヤー、ロッド又はバーを含んでいてもよい。金属ワイヤーは、様々な技法により成形され、金属メッシュ織物、スクリーン又は高透過性を有する目の粗いメッシュを製造することができる。金属ワイヤー、ロッド又はバーは、金属ワイヤー製造業界では周知のその他の方法により、織り、融着し、編み又は組立てることができる。金属のワイヤー、ロッド又はバーは、黒、灰色、緑、青、その他様々な色調であることができる。金属の要素は、別々の金属材料、例えば銅、アルミニウム、ステンレス鋼、鋼、亜鉛メッキ鋼、チタン等、又はそれらの組合せから構成することができる。本熱可塑性物品の金属成分は、例えばほぼ円形、卵形又は比較的平坦など、様々な横断面積及び形状寸法を有するワイヤーフィラメント、ロッド及びバーから製造することができる。そのワイヤー、ロッド及びバーの厚さ又は直径は、その熱可塑性物品の最終用途によって、約0.001〜19mm(0.00004〜0.75inch)の範囲であることができる。しかしながら、本発明の物品のほとんどについて、そのワイヤー、ロッド及びバーの厚さ又は直径は、約0.0254〜5.08mm(0.001〜0.20inch)の範囲である。本発明の1つの態様は、従って、順に、(1)混和性のポリエステル/ポリカーボネート配合物の層、(2)金属ワイヤーメッシュ及び(3)先に示した混和性のポリエステル/ポリカーボネートブレンドの第二の層を含む新規な積層体である。
【0041】
また更に装飾性成分は、化粧紙もしくは印刷紙、着色フィルム、画像や絵が印刷されたフィルム等であってもよい。
【0042】
本発明の熱可塑性物品は、装飾壁、間仕切り及び窓ガラス用途に使用することができる。本発明の熱可塑性物品は、熱成形技術の分野で公知の方法に従って、熱成形される。
【0043】
本発明の熱可塑性物品の製造に使用される、上部及び下部のシート材料は同一でも異なっていてもよい。例えば上部及び下部のシート材料は、別々の混和性ポリエステル/ポリカーボネート配合物(ここで定義されている)、又は異なる添加剤、例えば混和性ポリエステル/ポリカーボネートシートの透明性を変える顔料添加剤を含む混和性組成物から製造することができる。
【0044】
本発明の熱可塑性物品の製造において使用されるシート材料は、所望の特有の審美的な効果によって、透明、半透明又は一層が不透明であることができる。上部及び下部のシート材料は、透明性又は半透明性の度合が異なっていてもよく、また色調が異なっていてもよい。上部及び下部のシート材料が別々の混和性ポリエステル/ポリカーボネートブレンドで製造されるとき、それら混和性ポリエステル/ポリカーボネートブレンドは熱的に相溶性のものでなければならない。本明細書で用いる用語「熱的相溶性」は、シート材料の層が高温高圧条件下で一緒に接合するときに、それらの層がほぼ同一の熱膨張又は熱収縮を受けて、その固体表面が実質的に平坦となることを意味する。
【0045】
本発明の熱可塑性物品の製造に用いられるシート材料の厚さは本発明の重要な特徴ではなく、機能性、重量、コスト等の多数の要因によるものである。上部層(もしくは外層)又は上部表面が形成されるシート材料は、通常、約0.76〜6.4mm(0.03〜0.25inch)の範囲、好ましくは約1.6〜3.2mm(0.063〜0.126inch)の範囲の厚さを有する。下部層(もしくは裏面層)又は下部表面が形成されるシート材料は、通常、約0.76〜6.4mm(0.03〜0.25inch)の範囲、好ましくは約3.2mm(0.126inch)の範囲の厚さを有する。
【0046】
本発明の熱可塑性物品は、その積層体に、上部及び下部シート材料を互いに接合(又は融着)させるために十分な、温度及び圧力をかけることにより製造することができる。しかしながら、分解、歪み又はその他の望ましくない影響を完成された物品又はシート材料に起こさせるような温度は避けるべきである。そのような極端な温度が避けられることが、単独のポリカーボネートの使用と比較して、本発明の混和性ポリエステル/ポリカーボネートシート材料の利点である。通常、接合温度は、約90〜300℃(194〜572゜F)の範囲、好ましくは約129〜260℃(265〜500゜F)の範囲である。そのサンドイッチの接合又は積層に用いられる圧力は、好ましくは約0.65〜3.45MPa(約95〜500lb/inch2−psi)の範囲である。本発明の熱可塑性物品を接合するための最適の温度は、例えば採用された箇々の混和性コポリエステル/ポリカーボネートブレンドにより、また使用されるシート材料の厚さにより変わるであろうが、当業者により決定することができる。そのサンドイッチ又は積層体は、適宜の温度及び圧力で約4〜24分、又は上部及び下部シート材料の間に接合が形成されるような時間まで保持する。4〜24分の後、接合され/融着された熱可塑性物品は、約0.69〜2.4MPa(約100〜350psi)、好ましくは約1.4MPa(200psi)の圧力の下で、混和性ポリエステル/ポリカーボネートブレンドシート材料のガラス転移温度より低く冷却されるまで放冷する。接合工程の間に、混和性ポリエステル/ポリカーボネートブレンドシート材料は、接着剤を使用せずに互いに接合又は融着される。その積層工程では、装飾性材料に対する熱可塑性シート材料の接着を促進するために、布帛上に接着剤又はカップリング剤を使用してもよい。
【0047】
本発明の物品及びシートの製造に用いられるシート材料を構成する、混和性ポリエステル/ポリカーボネートブレンドは、一定の最終用途に対して必要なほど、又は所望されるほど、硬くなくてもよく、また耐スクラッチ性がなくてもよい。例えば、熱可塑性物品の外表面が引掻又は摩耗に曝されるような最終用途、即ち個室パーティション(privacy partition)では、その外表面の一方又は両方に対して、耐摩耗性被覆の適用が必要となりうる。例えばduPont Chemical Company製の“TEDLAR”などのフッ素化炭化水素であるポリパーフルオロエチレン又はduPont Chemical Company製の“MYLAR”などの延伸ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが、耐薬品性及び耐摩耗性の両方を改善するために使用することができる。耐摩耗性フィルムは、典型的には約0.025〜0.254mm(0.001〜0.01inch)、好ましくは約0.051〜0.178mm(0.002〜0.007inch)の範囲、最も好ましくは約0.076mm(0.003inch)の厚さを有している。しかしながら、そのようなフィルムの厚さは、その装備品に見合ったコスト及び機能上の理由によってのみ限定されたものであるから、これらの範囲よりも薄い又は厚い耐摩耗性フィルムも使用することができる。接着剤は、必要に応じて、混和性コポリエステル/ポリカーボネートブレンドと耐摩耗性フィルムの間に使用してもよい。
【0048】
或いは、耐摩耗性被覆をプラスチックフィルムに適用し、次いでその耐摩耗性被覆を付けたフィルムを、本発明の物品又はシートの一方又は両方の側に積層してもよい。そのフィルムは、積層作業に適合する多くの熱可塑性材料、例えばポリ塩化ビニル、PETGコポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、混和性ポリエステル/ポリカーボネートブレンド等から選ぶことができる。PETGは、ここで、テレフタル酸、エチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルとして定義される。好ましくは、PETGには、二酸合計100モル%のモル百分率及びジオール合計100モル%のモル百分率に基づいて、テレフタル酸80〜100モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜60モル%及びエチレングリコール80〜40モル%が含まれる。
【0049】
前記フィルムの厚さは、0.0025〜0.381mm(0.001〜0.015inch)の範囲であることができ、厚さ0.0762〜0.203mm(0.003〜0.008inch)であることが最も好ましい。その被覆は、多くの市販の材料、例えば熱により硬化されるポリウレタン、フッ素化ポリウレタン及びシリコーンから選ぶことができ、又はそれらは、紫外線(UV)もしくは電子線(EB)の照射により硬化される材料から選ぶことができる。そのようなUV/EB硬化材料は、アクリレート及びフッ素、シリコーン、エポキシ、ポリエステル、ポリエーテルもしくはカプロラクトンなどの残基又は官能基を含む変性アクリレートの一般的な種類に入る。選択される個々の被覆材料は、主として、要求される耐摩耗性の程度による。液体の、耐摩耗性被覆の熱又はUV/EB硬化性の前駆体の適用は、慣用の手順に従って実施されるが、通常は、ロール被覆機により達成される。フィルムに塗布された被覆の厚さは、通常、0.0076〜0.051mm(0.0003〜0.002inch)であり、厚さ約0.0127mm(0.0005inch)であることが最も好ましい。
【0050】
これらの被覆は、塗料の適用と同様な方法で適用することができる。その被覆は、ほんの僅かしか揮発成分を含有しない、主に無希釈の材料として、又は溶媒系もしくは水系の材料として存在する。それらは、その方法の一部として構造体に積層することができる、フィルムに対して適用することに加えて、完成品に直接適用してもよい。塗布は、ロール、塗装、噴霧、浸漬等の様々な技法により実施されることができる。
【0051】
熱可塑性物品、即ち積層体は、混和性ポリエステル/ポリカーボネート配合物に基づくものであるが、引き続いて、様々な有用の製品に形作ることができ、熱成形することができる。実例として、その熱可塑性物品は、摺動ガラス戸、シャワー室の扉、入口扉、個室部材、多区画窓(multipaned windows)、テーブルの天板及びその他の家具部材に、熱成形又はその他の方法で成形することができる。その装飾性材料の性質によって、本発明の熱可塑性物品は成形され、加熱予張りされ(heat draped)又は成型される。更に、本発明の物品は魅力的な外観を有しており、それから製造された建築材料の輸送や設置を容易にするため低密度である。
【実施例】
【0052】
本発明は、その好ましい態様である以下の実施例により更に例証するが、これらの実施例は例証の目的でのみ含まれたものであり、特に別段の指示がない限り、本発明の範囲を限定する意図ではないことはいうまでもない。出発原料は、別段の記載がない限り市販品である。
【0053】
例1
この例のために2つの装飾性積層体を製造した。積層体Aは混和性コポリエステル/ポリカーボネートブレンド(PCTG75重量%/PC25重量%)の1/8”のシート2枚の間にサンドイッチされたポリエチレン系布帛からなっていた。この積層体の合計の膜厚は1/4”であった。積層体Bはコポリエステル(PETG)単独の1/8”のシート2枚の間にサンドイッチされたポリエチレン系布帛からなっていた。2’×2’の大きさの2枚の積層体シートは、次いで締付枠(a clamped frame)に取り付けて、60℃で均一な負荷(10psi)を与えた。10時間後、負荷の掛かったままで2枚の積層体の中央(最大)偏差(deflection)を測定した。積層体Aは3.5”の偏差を有しており、また積層体Bは4.5”の偏差を有していた。この例は、積層体Bに比べて積層体Aが有利であることを例証している。この例におけるPETGは、1,4−シクロヘキサンジメタノール31モル%で変性されたポリエチレンテレフタレートである。この例におけるPCTGは、エチレングリコール34モル%で変性されたポリシクロヘキシレンジメタノールテレフタレートである。この例におけるPCは、ポリカーボネート、特にビスフェノールAからのポリカーボネートを示す。
例2
この例のために2つの装飾性積層体を製造した。積層体Aは混和性コポリエステル/ポリカーボネートブレンド(PCTG75重量%/PC25重量%)の1/8”のシート2枚の間にサンドイッチされたポリエチレン系布帛からなっていた。この積層体の合計の膜厚は1/4”であった。積層体Bは(PC)単独の1/8”のシート2枚の間にサンドイッチされたポリエチレン系布帛からなっていた。2枚の積層体シートA及びBは、2’×2’の大きさで製造した。2枚の積層体シートは、特定の湿度レベルである実験室環境で、2ヶ月間平衡状態においた。同じ平衡状態の後、2枚の積層体は、“Brown”熱成型装置に取り付け、成型品、この場合はカップに成型した。積層体Bからの成型品は酷いフクレを示した。積層体Aからの成型品にはフクレはなかった。この例は、積層体Bに比べて積層体Aが有利であることを例証している。この例におけるPCTGは、エチレングリコール34モル%で変性されたポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートである。この例におけるPCは、ポリカーボネート、特にビスフェノールAからのポリカーボネートである。
【0054】
本発明は、その好ましい態様を特に参照して詳細に記載してきたが、その変形や修正が本発明の精神及び範囲の中でもたらされうるということはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又はそれ以上の積層体に熱及び圧力を加えることによって得られる、1つ又はそれ以上の装飾性材料が埋封された熱可塑性物品であって、前記積層体の少なくとも1つが、順に、(1)上部シート材料、(2)1つ又はそれ以上の装飾性材料及び(3)下部シート材料を含んでなり、その上部及び下部シート材料が
(a)脂肪族もしくは脂環族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸よりなる群から選ばれる二酸残基成分であって、前記芳香族ジカルボン酸の芳香族部分が炭素原子6〜20を有し、前記脂肪族もしくは脂環族ジカルボン酸の脂肪族もしくは脂環族部分が炭素原子3〜20を有する二酸残基成分;並びに、1,4−シクロヘキサンジメタノール45〜100モル%及び、必要に応じて、炭素原子2〜20の、少なくとも1種の付加的な脂肪族グリコールを含み;そのグリコール成分についての合計のモル%が100モル%に等しい、グリコール残基成分を含むポリエステル1〜99重量%、
(b)芳香族ポリカーボネート99〜1重量%、
を含んでなる、ポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンドから形成され;そのポリエステル/ポリカーボネートブレンド中の、ポリエステル及びポリカーボネートの組合せ合計重量百分率が100重量%である熱可塑性物品。
【請求項2】
ポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンドが前記ポリエステル50〜90重量%及び前記芳香族ポリカーボネート50〜10重量%を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項3】
ポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンドが前記ポリエステル60〜80重量%及び前記芳香族ポリカーボネート40〜20重量%を含む請求項2に記載の熱可塑性物品。
【請求項4】
ポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンド中のポリエステルが、式:
【化1】

(式中、Rは1,4−シクロヘキサンジメタノール45〜100モル%及び炭素原子2〜20の少なくとも1種のアリール、アルカンもしくはシクロアルカン含有ジオール又はその化学的均等物55〜0モル%の残基を含むジオール残基成分であり;R1は炭素原子3〜20のアリール、脂肪族もしくはシクロアルカン含有二酸、又はその化学的均等物から誘導されたジカルボン酸残基を含む二酸残基成分である)
を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項5】
前記ポリエステルの前記ジオール残基成分がエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−又は1,3−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールよりなる群から選ばれる請求項4に記載の熱可塑性物品。
【請求項6】
前記ポリエステルの前記二酸残基成分がマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、1,4−、1,5−及び2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、シス−又はトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−及びトランス−4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸並びに1,4−、1,5’−、2,3−、2,6−及び2,7−ナフタレンジカルボン酸よりなる群から選ばれる請求項4に記載の熱可塑性物品。
【請求項7】
前記ポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンドの前記ポリエステルがテレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項8】
前記ポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンドの前記ポリエステルがテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールを含む請求項7に記載の熱可塑性物品。
【請求項9】
前記ポリエステルがテレフタル酸80〜100モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール45〜100モル%及びエチレングリコール0〜55モル%を含む請求項4に記載の熱可塑性物品。
【請求項10】
前記ポリエステルがテレフタル酸80〜100モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール60〜80モル%及びエチレングリコール40〜20モル%を含む請求項9に記載の熱可塑性物品。
【請求項11】
前記ポリエステル/芳香族ポリカーボネートブレンドの前記ポリエステルがテレフタル酸、イソフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項12】
前記ポリエステルがテレフタル酸50〜95モル%、イソフタル酸5〜50モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール90〜100モル%を含む請求項11に記載の熱可塑性物品。
【請求項13】
前記ポリエステルが1,4−シクロヘキサンジメタノール100モル%を含む請求項12に記載の熱可塑性物品。
【請求項14】
前記ポリエステルが多官能酸、多官能グリコール及び酸/グリコール複合体よりなる群から選ばれる分岐剤を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項15】
前記分岐剤がトリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、ヒドロキシルテレフタル酸ジメチル及びペンタエリスリトールよりなる群から選ばれる請求項14に記載の熱可塑性物品。
【請求項16】
前記芳香族ポリカーボネートが1種又はそれ以上の二価フェノールのカルボネート前駆体との反応により製造される請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項17】
前記二価フェノールが2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3,5−トリメチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−スルホニルジフェノール、ヒドロキノン、レゾールシノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン類及びα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンよりなる群から選ばれる請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項18】
前記二価フェノールが2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである請求項17に記載の熱可塑性物品。
【請求項19】
前記カルボネート前駆体がカルボニルハライド、ジアリールカルボネート及びビスハロホルメートよりなる群から選ばれる請求項16に記載の熱可塑性物品。
【請求項20】
前記カルボニルハライドがカルボニルブロマイド、カルボニルクロライド及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項19に記載の熱可塑性物品。
【請求項21】
前記ビスハロホルメートが2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ヒドロキノン等のビスクロロホルメート及びグリコールのビスハロホルメートよりなる群から選ばれる請求項19に記載の熱可塑性物品。
【請求項22】
前記カルボニルハライドがカルボニルクロライドである請求項20に記載の熱可塑性物品。
【請求項23】
前記ジアリールカルボネートがジフェニルカルボネートである請求項19に記載の熱可塑性物品。
【請求項24】
前記ポリカーボネートが三又は四官能性フェノール、炭酸及び炭酸側鎖を有するビスフェノールよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の分岐剤を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項25】
前記ポリカーボネートが1,4−ビス(4’,4”−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン及びトリスフェノールTCよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の分岐剤を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項26】
前記ポリカーボネートが窒素含有分岐剤を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項27】
前記ポリカーボネートがシアン酸クロリド及び3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の分岐剤を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項28】
前記配合物が耐衝撃改良剤、UV安定剤、亜リン酸安定剤、成核剤、増量剤、難燃剤、補強剤、充填剤、帯電防止剤、離型剤、着色剤、酸化防止剤、押出助剤、滑剤、剥離剤、カーボンブラック及びその他の顔料よりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の添加剤を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項29】
前記装飾性材料が金属のワイヤー、ロッド又はバー;天然繊維、ガラス繊維、鉱物繊維、布帛、紙;及び印刷層よりなる群から選ばれる請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項30】
その上部及び下部シート材料が0.76〜6.4mmの範囲の厚さを有し、且つ前記装飾性材料の厚さが0.254〜5.08の範囲である請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項31】
前記物品がその物品の一方又は両方の表面上に耐摩耗性被覆を含む請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項32】
前記耐摩耗性被覆が厚さ0.0127〜0.254mmの範囲のフィルムとして供給される請求項31に記載の熱可塑性物品。
【請求項33】
前記耐摩耗性フィルムが0.017〜0.254mmの範囲の厚さを有する、フッ素化炭化水素フィルム、ポリ(パーフルオロエチレン)フィルム、アクリルフィルム又は延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとして供給される請求項31に記載の熱可塑性物品。
【請求項34】
前記耐摩耗性被覆がポリ塩化ビニル、PETGコポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートのフィルム上の、熱、紫外線又は電子線硬化物質である請求項31に記載の熱可塑性物品。
【請求項35】
前記耐摩耗性被覆が熱硬化されたシリコーン、ポリウレタンもしくはフッ素化ポリウレタン又は紫外線もしくは電子線で硬化された、ポリウレタン、フッ素化ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、ポリエステル、ポリエーテルもしくはカプロラクトン残基を含む変性アクリレートから選ばれる物質である請求項31に記載の熱可塑性物品。

【公表番号】特表2006−507163(P2006−507163A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555503(P2004−555503)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/037033
【国際公開番号】WO2004/048090
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】