説明

装飾板及びその製造方法

【課題】基材の表面全体を被覆する金属箔層を備え、金属箔層の重厚な雰囲気を保ち、凹凸や起伏等の複雑な曲面を有する装飾対象面に対して金属箔層の皺を発生させずに容易に後加工できる優れた装飾板を安価に提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【解決手段】アルミニウム製板材からなる基材と、該金属製の基材上にワニス層を介在させて金属箔層を積層し、基材の表面全体を金属箔層で被覆し、金属箔層を透明塗料層で被覆した装飾用内装材において、基材は厚さ0.5mm程度とし、基材とワニス層との間にシケラックニス層を介在させ、且つ、金属箔層はアルミニウム箔とし、金属箔層を被覆する透明塗料層が厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄塗布層であることを特徴とする装飾板を解決手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材若しくは内装材として使用する、金属箔の外観を呈する装飾板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ホテルの玄関柱等の外装材や、壁等の内装材、或いは額縁の表面等のように金箔若しくは金属光沢を有する装飾部分に対して、金属箔を積層してなる装飾板や、印刷層を積層してなる装飾板が使用される。
【0003】
上記金属箔を積層した装飾板は、基材と接着剤の役割を果たす層(接着剤層)と金属箔層と透明の保護膜層を備えたものが一般的である。このような装飾板を示すものとしては、例えば、基材と、基材に塗着した樹脂塗料による接着層と、接着層によって固着した多数の皺模様を有する金属箔層と、金属箔層の上面に被着する透明樹脂塗料よりなる保護膜層とを積層してなることを特徴とする金属箔を用いた塗装物が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記特許文献1に係る発明は、基材として下地処理したアルミニウム板等を使用し、接着層を介して金属箔層を設け、その上面に透明樹脂塗料よりなる保護膜層を積層した装飾板を開示するものである。該装飾板は、基材と金属箔層とをエポキシ系樹脂塗料等の接着剤を用いて接着し、硬化前のエポキシ系樹脂塗料に金属箔を積層し、エポキシ系樹脂塗料の硬化によって金属箔層に多種多様な皺を発生させ、これを意匠上のポイントとしようとするものである。
【0005】
また、上記した金属箔を積層した外装材、内装材を用途とする装飾板とは異なるものではあるが、基材と接着剤の役割を果たす層(ニス(ワニス)層)と、金属箔層を備えた装飾板としては、基材の平坦面にニス(ワニス)層を形成するニス(ワニス)剤と、ニス(ワニス)層の表面に、文字やデザインなどを印刷し印刷樹脂層を形成する樹脂インキと、印刷樹脂層が生乾きの時、印刷樹脂層の表面に金属箔層を形成するホットスタンプ用の金属箔剤と、金属箔剤側に被覆層を形成する透明な保護皮膜材とを設け、前記基材と樹脂インキとの間にニス(ワニス)剤を介在し、且つ密着した印刷樹脂層の表面に、金属箔層を圧着することを特徴とする装飾部材(装飾板)が公知である(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開平4−133799号公報
【特許文献2】特開平9−62190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外装材若しくは内装材として使用する装飾板における金属箔層は、非常に薄いものであり、装飾板の施工時に、皺を発生させやすい欠点がある。
このため、皺の発生を意匠上のポイントとして利用する特許文献1は、施工時の取扱いにおいて非常に容易となる利益が得られるが、皺を意匠上のポイントとする点で特許文献1は特殊な例であり、一般に使用される装飾板は、むしろ皺を発生させないことが外観の向上に繋がるものである。
【0008】
通常、平面上に装飾板を取着する作業では皺の発生は、顕著に生じるというものではないが、装飾板を複雑な曲面を有する装飾対象面に対して取着すべく当該装飾板を曲げる後加工を行うと、装飾板中の金属箔に皺が寄り、外観体裁を著しく損なうことになる。
【0009】
一方、特許文献2に係る発明は、基材と接着剤の役割を果たす層(ニス(ワニス)層)と金属箔層を備えた装飾板であるものの、基板の表面全体を金属箔で被覆した装飾板をする構成ではなく、ホットスタンプによる加熱と加圧を伴う部分的な金属箔の形成を前提とするものである。このため、従来の装飾板の表面全体を金属箔層で積層形成し、更には後加工によって金属箔層に皺が寄らない装飾板を実現するには、適さない構成であった。
【0010】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、基材の表面全体を被覆する金属箔層を備え、金属箔層の重厚な雰囲気を有し、凹凸や起伏等の複雑な曲面を有する装飾対象面に対して金属箔層の皺を発生させずに容易に後加工できる、優れた装飾板を安価に提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
アルミニウム製板材からなる基材、ワニス層、金属箔層、透明塗料層を順次積層被覆した装飾板において、基材は厚さ0.5mm程度とし、基材とワニス層との間にシケラックニス層を設け、金属箔層はアルミニウム箔とし、透明塗料層は厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄塗布層としたことを特徴とする装飾板と、その製造方法を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、アルミニウム製板材からなる基材、ワニス層、金属箔層、透明塗料層を順次積層被覆した装飾板において、基材は厚さ0.5mm程度とし、基材とワニス層との間にシケラックニス層を設け、金属箔層はアルミニウム箔とし、透明塗料層は厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄塗布層としたことを特徴とする装飾板としたことから、シケラックニスの上澄塗布層が、柔軟性と金属箔層の固定との均衡を保つことで金属箔層の皺を防止し、0.5mm程度としたアルミニウム製の基材の柔軟性とワニス層との間にシケラックニス層が介在することで、基材表面に対して浸透性の高いシケラックニスがアルミニウム製板材からなる基材に対して十分な結着性を発揮し、且つ、アルミニウム製板材からなる基材の有する柔軟性を保持するため、凹凸や起伏等の複雑な曲面を有する装飾対象面に対して金属箔層の皺を発生させずに容易に後加工できる。
【0013】
そして、請求項2に係る発明によれば、上記請求項1記載の発明の作用効果を得ることができた上で、金属箔層をアルミニウムの焼箔としたことによって、焼箔の不規則且つ複雑な模様と該焼箔に積層されるシケラックニスの上澄塗布層とによって、金属箔の重厚な雰囲気と美しい光沢が得られる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、上記請求項1記載の発明の作用効果を得ることができた上で、金属箔層を被覆するシケラックニスの上澄塗布層に撥水層を積層したことによって、本発明における装飾板に十分な耐水性を付与することができるので、当該装飾板を内装材のみならず外装材としても使用することができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、表面の油分等を除去した厚さ0.5mm程度のアルミニウム製の基材上に、シケラックニスを塗布してシケラックニス層を形成し、シケラックニス層上に、接着剤となるワニスを塗布してワニス層を形成し、ワニス層上に金属箔層としてアルミニウム箔を積層し、金属箔層上に、シケラックニスの上澄を塗布して、厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄塗布層を形成する装飾板の製造方法としたことから、加熱手段を用いることなく作業安全性の高い積層工程を行え、厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄の塗布によって、透明性が高く柔軟性に優れ、金属箔層の皺の発生を抑えて、該金属箔層を保持することができ、本発明の請求項1乃至請求項3に記載の優れた装飾板を提供することができる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、上記請求項4の発明の構成に加えて、金属箔層としてアルミニウム製の焼箔を使用し、金属箔層の積層時に生ずる金属箔の余剰片の縁相互を重合し、金属箔層として使用することから、製造過程において、通常、金属箔層の余剰片は利用価値がないところ、製造時に発生した焼箔の余剰片の縁部を重合し、張り合わせることによっても、同様の複雑な模様を維持することができるので、従来余剰片の使用ができない金箔等の製造と比べて、無駄が少なく、製造コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、アルミニウム製板材からなる基材と、該金属製の基材上にワニス層を介在させて金属箔層を積層し、基材の表面全体を金属箔層で被覆し、金属箔層を透明塗料層で被覆した装飾用内装材において、基材は厚さ0.5mm程度とし、基材とワニス層との間にシケラックニス層を介在させ、且つ、金属箔層はアルミニウムの焼箔とし、金属箔層を被覆する透明塗料層が厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄塗布層であり、シケラックニスの上澄塗布層上に更に撥水層を積層した装飾板としたことによって、シケラックニスの上澄塗布層が柔軟性と金属箔層の固定との均衡を保つことで金属箔層の皺を防止し、0.5mm程度としたアルミニウム製の基材の柔軟性とワニス層との間にシケラックニス層が介在することで、基材表面に対して浸透性の高いシケラックニスが金属製の基材に対して十分な結着性を発揮するため、凹凸や起伏等の複雑な曲面を有する装飾対象面に対して金属箔層の皺を発生させずに容易に後加工でき、金属箔の重厚な雰囲気と美しい光沢が得られ、装飾板に十分な耐水性を付与することができるので、当該装飾板を内装材のみならず外装材としても使用することができる優れた装飾板を実現した。
【0018】
また、本発明は、表面の油分等を除去した厚さ0.5mm程度のアルミニウム製の基材上に、シケラックニスを塗布してシケラックニス層を形成し、シケラックニス層上に、接着剤となるワニスを塗布してワニス層を形成し、ワニス層上に金属箔層としてアルミニウムの焼箔を積層し、金属箔層上に、シケラックニスの上澄を塗布して、厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄塗布層5を形成し、前記金属箔層であるアルミニウム製の焼箔の積層時に生ずる金属箔の余剰片の縁相互を重合し、金属箔層として使用する装飾板の製造方法としたことから、加熱手段を用いることなく作業安全性の高い積層工程を行え、厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄の塗布によって、透明性が高く柔軟性に優れ、金属箔層の皺の発生を抑えて、該金属箔層を保持することができ、また製造時に発生した焼箔の余剰片の縁部を重合し張り合わせることによって焼箔の複雑な模様を維持することができるので、従来余剰片の使用ができない金箔等の製造と比べて、無駄が少なく、製造コストの低廉化を図ることができる優れた装飾板の製造方法を実現した。
【実施例】
【0019】
図1は本発明の実施例に係る装飾板Sの層構造を示す説明図、図2は他の実施例に係る装飾板Sの層構造を示す説明図である。
【0020】
本発明の実施例に係る装飾板Sは、図1にその層構造を示すように、基材1上に、該基材1とワニス層3との結着性を向上させるためのシケラックニス層2、ワニス層3、金属箔層4、シケラックニスの上澄塗布層5、撥水層6を、順次積層した構成である。
【0021】
基材1は、厚さ0.5mm程度のアルミニウム製板材である。当該厚さによって、取付対象面の凹凸や起伏等に対応するのに十分な柔軟性と形状保持性を有している。即ち、施工時に手指等で変形させるには容易でありながら、変形した状態を保つ可塑性を有している。
【0022】
基材1上に設けられるシケラックニス層2は、アルコールを溶剤としてセラック樹脂を溶解したものであり、0.2mm乃至0.3mm程度の厚さとして形成してある。シケラックニス層は、ワニス層とアルミニウム製基材との間に介在することによって、ワニス層の金属に対する接着力を確保するために設けたものである。
【0023】
シケラックニス層2上に設けられるワニス層3は、溶剤であるテレビン油10部に対しワニス1部を溶解したテレビン油ワニスからなる。
【0024】
ワニス層3の上に設けられる本実施例に係る金属箔層4は、厚さ30μm乃至50μmの市販のアルミニウム焼箔を用いている。
【0025】
金属箔層4上に設けられるシケラックニスの上澄塗布層5は、長期間静置されたシケラックニスの透明な上澄のみを用いた層である。その性状からセラック樹脂から完全に分離したアルコールではなく、シケラックニス中のセラック樹脂の含有濃度の低い部分であると考えられる。シケラックニスの上澄のみを用いることで、当該上澄塗布層5の柔軟性を利用することができ、割れ等を生じず、良好な外観を保つことができる。
【0026】
シケラックニスの上澄塗布層5上に設けられる撥水層6はヒバ油からなる。シケラックニスは耐水性が低いため、内装材の外表面に用いるだけであれば問題はないが、外装材として使用するためには、撥水層を形成する必要がある。当該撥水層6を形成することによって、本実施例に係る装飾板Sは内装材としても外装材としても使用することができる。
【0027】
以上の構成を有する本実施例に係る装飾板Sは、取付対象物に対して別途設けられる施工用接着剤を基材1の底面10に塗布し、取付対象物の表面に対して施工用接着剤で基材1の底面10を接着し、取着することもできるし、施工用接着剤等の接着手段を用いることなく、取付対象物である柱等の曲面に対して装飾板Sを湾曲させて捲着し、固定することもできる。
【0028】
尚、本発明においては、アルミニウム製板材からなる基材1の厚さを0.5mm程度としているが、基材1が当該数値程度よりも大きくなると(即ち、基材1の厚みが増すと)、アルミニウム製板材の柔軟性が低下し、凹凸や起伏等の複雑な曲面を有する装飾対象面に対して十分に適合させることができなくなる。一方、基材1の厚さが0.5mm程度よりも大幅に薄くなると、装飾板S全体の強度が不足し、外力の作用により過度に変形しやすくなる欠点を生ずる。
【0029】
また、本発明におけるシケラックニスの上澄塗布層5については、0.2mmを超えて層の厚みが大きくなると、柔軟性が低下し、シケラックニスの上澄塗布層5自体の割れを生ずる原因となる。また、0.1mmよりも極端に厚みを小さくすると、金属箔層の固定を十分に行うことができず、金属箔層の剥離や皺の発生を招来する可能性がある。
【0030】
次に、本発明の実施例に係る装飾板Sの製造方法について説明する。
本実施例に係る装飾板Sは、基材1の油分や塵等をアルコールで拭取り、アルコールが揮発した後に、シケラックニスを塗布する。上記したように、シケラックニス層2の厚みが0.2mm乃至0.3mm程度となるようにする。
【0031】
次に、刷毛又はスプレーを用いて、ワニス層3となるテレビン油ワニスを均一的に塗布する。ワニス層3が乾燥しないうちに、ワニス層3上にアルミニウム焼箔を載せ、接着する。ここで、アルミニウムの焼箔は一枚のものを装飾板Sの表面全体に接着する構成であるが、アルミニウムの焼箔のうち、先の製造時等で生じた余剰片を用いることができる。即ち、余剰片の縁部を重合して下地が見えないようにワニス層上に敷き詰めることで、焼箔の雰囲気や体裁を損なうことなく、金属箔層を形成することができる。当該手法によって、材料の無駄が少なくすることで、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0032】
接着後、刷毛又はスプレーを用いて、シケラックニスの上澄を、層の厚みが0.1mm乃至0.2mm程度となるように均一に塗布し、アルミニウムの焼箔を固定する。
【0033】
乾燥後、シケラックニスの上澄塗布層5上に檜葉油からなる撥水層6を塗布乾燥させて、形成する。以上の工程によって、本発明の実施例に係る装飾板Sを製造することができる。
【0034】
本発明における装飾板Sは、上記実施例に限るものではなく、例えば、内装材として使用することを前提とするのであれば、図2に示すように、他の実施例として、撥水層6を設けない構成(即ち、金属箔層4上にシケラックニスの上澄塗布層5のみを形成した構成)とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例に係る装飾板Sの層構造を示す説明図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る装飾板Sの層構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 基材
10 底面
2 シケラックニス層
3 ワニス層
4 金属箔層
5 シケラックニスの上澄塗布層
6 撥水層
S 装飾板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製板材からなる基材、ワニス層、金属箔層、透明塗料層を順次積層被覆した装飾板において、
基材は厚さ0.5mm程度とし、基材とワニス層との間にシケラックニス層を設け、金属箔層はアルミニウム箔とし、透明塗料層は厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄塗布層としたことを特徴とする装飾板。
【請求項2】
金属箔層でアルミニウム箔は、焼箔としたことを特徴とする請求項1記載の装飾板。
【請求項3】
シケラックニスの上澄塗布層の表面上に撥水層を積層したことを特徴とする請求項1又は2記載の装飾板。
【請求項4】
表面の油分等を除去した厚さ0.5mm程度のアルミニウム製の基材上に、シケラックニスを塗布してシケラックニス層を形成し、シケラックニス層上に、接着剤となるワニスを塗布してワニス層を形成し、ワニス層上に金属箔層としてアルミニウム箔を積層し、金属箔層上に、シケラックニスの上澄を塗布して、厚さ0.1mm乃至0.2mmのシケラックニスの上澄塗布層を形成することを特徴とする装飾板の製造方法。
【請求項5】
金属箔層であるアルミニウム箔は焼箔とし、金属箔層の積層時に生ずる金属箔の余剰片の縁相互を重合し、金属箔層として使用することを特徴とする請求項4記載の装飾板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−73077(P2009−73077A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244980(P2007−244980)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(392016340)
【Fターム(参考)】