説明

装飾表示体

【課題】画素の拡大虚像を利用して色のグラデーション効果を奏することが可能な装飾表示体を提供する。
【解決手段】装飾表示体1は、透明素材10の表面に複数の集光素21を各集光素21の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して集光素パターン22が形成されるとともに、透明素材10の裏面に複数の画素31を各画素31の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して画素パターン32が形成され、各集光素21と各画素32の配列ピッチを異ならせることにより画素31の拡大虚像を透明素材10の上方に現出させる。本装飾表示体1において画素31はマゼンダで着色されたm色画素51とイエローで着色されたy色画素61とからなり、両色画素51、61を重ねることによって画素31が形成されるとともに画素パターン32の所定の方向に沿ってm色画素51の画素径が次第に変化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機やゲーム機の外装パネル、包装箱、広告体、飾り品、デジタルフォトフレームなどの各種商品の装飾に用いられる装飾表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、遊技機やゲーム機の外層パネル、包装箱、広告体、飾り品や、あるいはデジタルフォトフレームなどの種々の商品は、表面に文字や図柄などの装飾を施される場合が多い。こういった装飾においては、各種商品の表面から図柄などの拡大虚像を上方に現出させる装飾表示体を採用する技術が従来より知られており、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1の装飾表示体は、同一形状・同一大きさの平凸レンズ状集光素を透明素材の表面において多数縦横に整列させることにより形成される平凸レンズ状集光素層と、同一形状・同一大きさの画素を透明素材の裏面において多数縦横に整列させることにより形成される画素層とから構成されており、平凸レンズ状集光素層における集光素の配列ピッチと画素層における画素の配列ピッチとをずらして構成することにより、画素の拡大虚像を透明素材の上方に現出させる。
【0004】
また、特許文献1の技術を応用して、拡大虚像の形状を変形などさせる技術も知られており、例えば下記特許文献2および特許文献3に開示されている。特許文献2の装飾表示体は、基準の画素として設定した基礎画素から離れていくに連れて、画素形状を次第に変形させることにより、観る位置の移動に伴って次第に拡大虚像が変形するようにしている。また、特許文献3の装飾表示体は、上記したような基礎画素から離れていくに連れて、画素を次第に回転させることにより、観る位置の移動に伴って次第に拡大虚像が回転するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−055000号公報
【特許文献2】特開2003−226100号公報
【特許文献3】特開2003−226099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、観る位置の移動に伴って画素の拡大虚像が次第に変形または回転する装飾表示体は従来より存在するが、装飾表示体の表面において色のグラデーション効果を奏するものは存在していなかった。
【0007】
本発明は、上述の技術的背景に鑑みてなされたものであって、画素の拡大虚像を利用して色のグラデーション効果を奏することが可能な装飾表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る装飾表示体は、上記目的を達成するために、シート状または板状の透明素材の表面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して集光素パターンが形成されるとともに、透明素材の裏面に、複数の画素を各画素の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して画素パターンが形成され、各画素の配列ピッチが各集光素の配列ピッチよりも大きくなるように集光素パターンと画素パターンとが形成されることにより、画素の拡大虚像を透明素材の上方に現出させる。本装飾表示体において、画素は互いに異なる色で着色された透明または半透明の複数の色画素からなり、色画素を重ねることによって画素が形成されるとともに、画素パターンの所定の方向に沿って少なくともいずれかの色画素の画素径が次第に変化することを特徴とする。
【0009】
これによれば、互いに異なる色で着色された透明または半透明の複数の色画素を重ねることによって画素が形成されることにより、画素の拡大虚像は各色画素の拡大虚像が合成された状態となるため、各色画素の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させることができる。また、これとともに、画素パターンの所定の方向に沿って少なくともいずれかの色画素の画素径が次第に変化することにより、画素を構成する各色画素の色の割合が該所定の方向に沿って変化するため、それに伴って画素の拡大虚像の合成色を次第に変化させることができ、観る者に対して色のグラデーション効果を奏することが可能となる。
【0010】
また、画素パターンの画素を形成する各色画素は、集光素パターンの集光素の配列ピッチの101%以下の配列ピッチで配列しているのが好ましい。これによれば、各色画素の拡大虚像の拡大率が高まり、各色画素の拡大虚像を輪郭がより一層ぼやけた状態で大きく現出させることができる。このため、上下に重なる各色画素の拡大虚像はより一層合成された状態となり、画素全体として各色画素の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させ易くなる。しかも、隣り合う画素の拡大虚像同士もより一層合成された状態となるため、結果として観る者に対して滑らかに色が変化するグラデーション効果を奏することが可能となる。
【0011】
また、画素パターンの画素を形成する各色画素は、同一の配列ピッチで配列しているのが好ましい。これによれば、各色画素を簡単かつ確実に重ならせることができるため、画素を形成する各色画素の色の割合を精度良く設定することができ、所望のパターンのグラデーション効果を奏することが容易となる。また、画素パターンの画素を形成する各色画素は、シアン、マゼンダ、イエローの三原色のいずれかの色で着色されているのが好ましい。これによれば、シアン、マゼンダ、イエローの三原色からなる様々な色画素の拡大虚像を用いて新たな合成色の画素の拡大虚像を上方に現出させることができ、所望の色からなるグラデーション効果を奏することが容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、互いに異なる色で着色された透明または半透明の複数の色画素を重ねることによって画素が形成されることにより、画素の拡大虚像は各色画素の拡大虚像が合成された状態となるため、各色画素の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させることができる。また、これとともに、画素パターンの所定の方向に沿って少なくともいずれかの色画素の画素径が次第に変化することにより、画素を構成する各色画素の色の割合が該所定の方向に沿って変化するため、それに伴って画素の拡大虚像の合成色を次第に変化させることができ、観る者に対して色のグラデーション効果を奏することが可能となる。
【0013】
このため、遊技機やゲーム機の外装パネル、包装箱、広告体、飾り品、デジタルフォトフレームなどの各種商品の装飾に本装飾表示体を用いることにより、消費者などに各種商品に対する興味を持たせることができるため、商品に対する購買意欲を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る装飾表示体の平面図である。
【図2】第1実施形態に係る装飾表示体における(a)集光素と画素、(b)集光素とm色画素、(c)集光素とy色画素の関係を示す拡大平面図である。
【図3】第1実施形態に係る装飾表示体の模式断面図である。
【図4】第1実施形態に係る装飾表示体における色のグラデーション効果を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る装飾表示体の(a)集光素と画素、(b)集光素とc色画素、(c)集光素とy色画素の関係を示す拡大平面図である。
【図6】第2実施形態に係る装飾表示体の模式断面図である。
【図7】第2実施形態に係る装飾表示体における色のグラデーション効果を示す図である。
【図8】第3実施形態に係る装飾表示体の集光素と画素の関係を示す拡大平面図である。
【図9】第3実施形態に係る装飾表示体の(a)集光素とc色画素、(b)集光素とm色画素、(c)集光素とy色画素の関係を示す拡大平面図である。
【図10】第3実施形態に係る装飾表示体の模式断面図である。
【図11】第3実施形態に係る装飾表示体における色のグラデーション効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)第1実施形態
次に、本発明に係る装飾表示体の第1の実施形態について図1〜図4を参照しつつ説明する。本実施形態では、装飾表示体1が画素の拡大虚像を利用してマゼンダおよびイエローによるグラデーション効果を奏する場合について説明する。
【0016】
装飾表示体1は、図1および図3に示すように、アクリル板などの板状の透明素材10の表面において無着色の透明インキよりなる複数の凸レンズ状の集光素21を配列させることにより形成された集光素パターン22を有する集光素層20と、透明素材10の裏面において着色された透明インキよりなる複数の点状の画素31を配列させることにより形成された画素パターン32を有する画素層30と、画素層30を透明素材10と挟む態様で設けられた背景層40とを備えている。
【0017】
前記集光素層20は、図1〜図3に示すように、集光素21を各集光素21の並びに方向性を持たせて2次元的に配列させることにより集光素パターン22が形成されている。この集光素パターン22は、水平に対して時計方向に45°の角度だけ傾斜させたx方向とこれに直交するy方向に、同じ配列ピッチpで各集光素21をマトリクス状に等配列させて規則正しく形成されている。なお、本実施形態における集光素21の直径は0.3mmであり、配列ピッチpは0.431mmである。また、以下の説明においては、便宜上、集光素21が配列するx方向およびy方向の各々について反時計方向に45°の角度だけ回転させた方向をα方向およびβ方向とする。
【0018】
前記画素層30は、図2および図3に示すように、画素31を各画素31の並びに集光素パターン22と同じ方向性を持たせて2次元的に配列させることにより画素パターン32が形成されている。この画素パターン32は、画素31が集光素21の配列ピッチpより大きい配列ピッチqで配列しているため、画素31の拡大虚像を透明素材10の上方に現出させる。なお、本実施形態において、画素31の配列ピッチqは0.4313mmである。
【0019】
前記画素31は、マゼンダに着色された透明インキによって形成される色画素(以下「m色画素」という)51と、イエローに着色された透明インキによって形成される色画素(以下「y色画素」という)61とが用いられて形成されている。具体的には、図3に示すように、透明素材10の裏面において、上記画素パターン32の配列に則した態様でm色画素51を配列させるm色画素層50を形成した後、上記画素パターン32の配列に則した態様でy色画素61を配列させるy色画素層60を形成している。従って、画素31は、マゼンダおよびイエローで各々着色された透明のm色画素51およびy色画素61が重ねられることによって形成されている。このことにより、画素31の拡大虚像は、m色画素51およびy色画素61の拡大虚像を合成された状態となるため、各色画素51、61の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させることができる。特に各色画素51、61は着色された透明であるため、各色画素51、61の拡大虚像も着色された透明なものとなって、各色画素51、61の拡大虚像の色を確実に合成することができる。
【0020】
このとき、図2(a)に示すように、m色画素51とy色画素61は同一の配列ピッチqで配列している。従って、m色画素51とy色画素61を簡単かつ確実に重ならせることができるため、画素31を形成するm色画素51とy色画素61の各色の割合を精度良く設定することができ、マゼンダおよびイエローを用いた所望の拡大虚像によるグラデーション効果を奏することが容易となる。
【0021】
また、m色画素51は、図2(b)に示すように、−αから+αの方向に沿って画素径が次第に小さくなるように形成され、途中から形成されなくなっている。一方、y色画素61は、図2(c)に示すように、α方向のいずれにおいても画素径が一定である。従って、−αから+αの方向に沿って画素31におけるm色画素51の面積の割合が小さくなっていくことより、画素31におけるm色画素51の色の割合が次第に小さくなっていくため、y色画素61の色の割合が相対的に大きくなっていく。このため、画素31を構成する各色画素51、61の色の割合の変化に伴って、図4に示すように、画素31の拡大虚像の合成色を一般にいう赤色(R)→橙色(O)→黄色(Y)というように次第に変化させることができるため、観る者に対して色のグラデーション効果を奏することが可能となる。
【0022】
ここにおいて、画素31を形成するm色画素51およびy色画素61は、集光素21の配列ピッチpの101%以下(p<q≦p×1.01)の配列ピッチqで配列している。これにより、m色画素51およびy色画素61の拡大虚像の拡大率を高めることができる。一般的に、拡大レンズなどにおいては、対象物の拡大率が高くなることに伴って、対象物の虚像における輪郭のぼやけ方が次第に強まっていく。従って、各色画素51、61の拡大虚像の拡大率を高くすることにより、各色画素51、61の拡大虚像を輪郭がより一層ぼやけた状態で大きく現出させることができる。このことにより、上下に重なるm色画素51およびy色画素61の拡大虚像はより一層合成された状態となり、画素31全体としてm色画素51およびy色画素61の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させ易くなる。しかも、隣り合う画素31の拡大虚像同士もより一層合成された状態となるため、結果として観る者に対して滑らかに色が変化するグラデーション効果を奏することが可能となる。なお、
【0023】
前記背景層40は、図3に示すように、透明素材10側の面が不透明な白色に着色されており、装飾表示体1の正面側から入射した光を反射する。従って、背景層40によって反射した光は、画素層30の各画素31を透過することにより、拡大虚像が該画素31の色で現出し易くなる。
【0024】
(2)第2実施形態
次に、本発明に係る装飾表示体の第2の実施形態について図5〜図7を参照しつつ説明する。本実施形態では、装飾表示体2が画素の拡大虚像を利用してシアンおよびイエローによるグラデーション効果を奏する場合について説明する。なお、以下の説明においては、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、第1実施形態と同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0025】
本実施形態における装飾表示体2は、第1実施形態の画素層30と異なる画素層130を備えている。
【0026】
前記画素層130は、図5および図6に示すように、画素131を各画素131の並びに集光素パターン22と同じ方向性を持たせて2次元的に配列させることにより画素パターン132が形成されている。この画素パターン132は、第1実施形態と同様、画素131が配列ピッチqで配列しているため、画素131の拡大虚像を透明素材10の上方に現出させる。
【0027】
前記画素131は、シアンに着色された透明インキによって形成される色画素(以下「c色画素」という)71と、y色画素61とが用いられて形成されている。具体的には、図6に示すように、透明素材10の裏面において、上記画素パターン132の配列に則した態様でc色画素71を配列させるc色画素層70を形成した後、上記画素パターン132の配列に則した態様でy色画素61を配列させるy色画素層60を形成している。従って、画素131は、シアンおよびイエローで各々着色された透明のc色画素71およびy色画素61が重ねられることによって形成されている。このことにより、画素131の拡大虚像が、c色画素71およびy色画素61の拡大虚像を合成させた状態となるため、各色画素71、61の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させることができる。特に各色画素71、61は着色された透明であるため、各色画素51、61の拡大虚像も着色された透明なものとなって、各色画素71、61の拡大虚像の色を確実に合成することができる。
【0028】
このとき、図5(a)に示すように、c色画素71とy色画素61はともに配列ピッチqで配列している。従って、c色画素71とy色画素61を簡単かつ確実に重ならせることができるため、画素131を形成するc色画素71とy色画素61の各色の割合を精度良く設定することができ、シアンおよびイエローを用いた所望の拡大虚像によるグラデーション効果を奏することが容易となる。
【0029】
また、c色画素71は、図5(b)に示すように、−αから+αの方向に沿って画素径が次第に大きくなるように形成されている。一方、y色画素61は、図5(c)に示すように、α方向のいずれにおいても画素径が一定である。従って、−αから+αの方向に沿って画素131におけるc色画素71の面積の割合が大きくなっていくことより、画素131におけるc色画素71の色の割合が次第に大きくなっていくため、y色画素61の色の割合が相対的に小さくなっていく。このため、画素131を構成する各色画素71、61の色の割合の変化に伴って、図7に示すように、画素131の拡大虚像の合成色を一般にいう黄色(Y)→黄緑(YG)→緑色(G)というように次第に変化させることができるため、観る者に対して色のグラデーション効果を奏することが可能となる。
【0030】
ここにおいて、画素131を形成するc色画素71およびy色画素61は、集光素21の配列ピッチpの101%以下(p<q≦p×1.01)の配列ピッチqで配列している。これにより、各色画素71、61の拡大虚像の拡大率が高くなるため、各色画素51、61の拡大虚像を輪郭がより一層ぼやけた状態で大きく現出させることができる。このことにより、上下に重なるc色画素71およびy色画素61の拡大虚像はより一層合成された状態となり、画素131全体としてc色画素71およびy色画素61の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させ易くなる。しかも、隣り合う画素131の拡大虚像同士もより一層合成された状態となるため、結果として観る者に対して滑らかに色が変化するグラデーション効果を奏することが可能となる。
【0031】
(3)第3実施形態
次に、本発明に係る装飾表示体の第3の実施形態について図8〜図11を参照しつつ説明する。本実施形態では、装飾表示体3が画素の拡大虚像を利用してシアン、マゼンダおよびイエローによるグラデーション効果を奏する場合について説明する。なお、以下の説明においては、第1および第2実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、第1および第2実施形態と同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0032】
本実施形態における装飾表示体3は、第1実施形態の画素層30および第2実施形態の画素層130と異なる画素層230を備えている。
【0033】
前記画素230は、図8および図9に示すように、画素231を各画素231の並びに集光素パターン22と同じ方向性を持たせて2次元的に配列させることにより画素パターン232が形成されている。この画素パターン232は、第1および第2実施形態と同様、画素231が配列ピッチqで配列しているため、画素231の拡大虚像を透明素材10の上方に現出させる。
【0034】
前記画素231は、c色画素71、m色画素51およびy色画素61が用いられて形成されている。具体的には、図10に示すように、透明素材10の裏面において、上記画素パターン232の配列に則した態様でc色画素71を配列させるc色画素層70を形成し、次に上記画素パターン232の配列に則した態様でm色画素51を配列させるm色画素層50を形成し、次に上記画素パターン232の配列に則した態様でy色画素61を配列させるy色画素層60を形成している。従って、画素231は、シアン、マゼンダおよびイエローで各々着色された透明のc色画素71、m色画素51、y色画素61が適宜重ねられることによって形成されている。このことにより、画素231の拡大虚像が、各色画素71、51、61の拡大虚像を合成させた状態となるため、各色画素71、51、61の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させることができる。特に各色画素51、61は着色された透明であるため、各色画素51、61の拡大虚像も着色された透明なものとなって、各色画素51、61の拡大虚像の色を確実に合成することができる。
【0035】
このとき、図8に示すように、c色画素71、m色画素51、y色画素61の各々はともに配列ピッチqで配列している。従って、各色画素71、51、61を簡単かつ確実に重ならせることができるため、画素231を形成するc色画素71、m色画素51およびy色画素61の各色の割合を精度良く設定することができ、シアン、マゼンダ、イエローを用いた所望の拡大虚像によるグラデーション効果を奏することが容易となる。
【0036】
また、c色画素71は、図9(a)に示すように、α方向のいずれにおいても画素径が一定である。また、m色画素51は、図9(b)に示すように、−αから+αの方向に沿って途中から画素径が次第に大きくなっていくように形成されている。またy色画素61は、図9(c)に示すように、−αから+αの方向に沿って画素径が次第に小さくなるように形成され、途中から形成されなくなっている。従って、−αから+αの方向に沿って画素231におけるc色画素71の面積の割合は一定であり、m色画素51の面積の割合は大きくなっていき、y色画素61の面積の割合は小さくなっていく。このことにより、図11に示すように、画素231を構成する各色画素71、51、61の色の割合の変化に伴って、画素231の拡大虚像の合成色を一般にいう緑色(G)→水色(LB)→青色(B)→紫色(P)というように次第に変化させることができるため、観る者に対して色のグラデーション効果を奏することが可能となる。
【0037】
ここにおいて、画素231を形成する各色画素71、51、61は、集光素21の配列ピッチpの101%以下(p<q≦p×1.01)の配列ピッチqで配列していることより、各色画素71、51、61の拡大虚像の拡大率が高くなるため、各色画素71、51、61の拡大虚像を輪郭がより一層ぼやけた状態で大きく現出させることができる。このことより、上下に重なる各色画素71、51、61の拡大虚像はより一層合成された状態となり、画素231全体としてc色画素71、m色画素51およびy色画素61の拡大虚像の色が合成されてなる合成色の拡大虚像を現出させ易くなる。しかも、隣り合う画素231の拡大虚像同士もより一層合成された状態となるため、結果として観る者に対して滑らかに色が変化するグラデーション効果を奏することが可能となる。
【0038】
なお、各色画素51、61、71の画素径の変化する方向が−αから+αである場合について説明したが、β方向あるいはその他任意の方向に沿って各色画素51、61、71の画素径が変化するようにしてもよい。また、色画素の色を変化させる方向は各々同一方向でなくてもよい。
【0039】
また、各色画素51、61、71は、画素31、131、231を形成する際に同一の配列ピッチで配列している場合について説明したが、各色画素同士が重ねられれば、同一の配列ピッチでなくてもよい。
【0040】
また、色画素はシアン、マゼンダ、イエローの三原色のいずれかで着色されている場合について説明したが、任意の色で着色されてもよい。
【0041】
また、画素31、131、231は、1つの色画素によりあるいは2つの色画素が重ねられることにより構成される場合について説明したが、3つ以上の色画素が重ねられて構成されるようにしてもよい。
【0042】
また、色画素51、61、71は、所定の方向に沿って少なくともいずれかの画素径が変化していけばよい。
【0043】
また、画素パターン32、132、232は、集光素パターン22と同じ方向性を持たせて2次元的に配列させる場合について説明したが、適宜方向を変更して2次元的に配列させてもよい。
【0044】
また、色画素51、61、71が透明である場合について説明したが、半透明であってもよい。
【0045】
また、透明素材10が板状である場合について説明したが、シート状であってもよい。
【0046】
また、画素31、131、231が点状である場合について説明したが、任意の形状でよい。
【0047】
また、画素31、131、231は、図3、図6、図10において平面状であるように図示されているが、特に限定されるものではなく、球面状あるいはその他の形状であってもよい。
【0048】
また、背景層40は不透明である場合について説明したが、背景層は透明または半透明であってもよい。また、背景層40を光透過の可能な白色または拡散白に着色した場合、バックライト照明等を使用してグラデーション効果を変化させることができる。
【0049】
また、画素パターンの画素を形成する前記各色画素は、前記集光素パターンの集光素の配列ピッチの101%以下の配列ピッチで配列しているものとしたが、101%を超える配列ピッチで配列しているものとしてもよい。ただ、各色画素の配列ピッチが集光素の配列ピッチの101%を超える場合には、各色画素の拡大虚像の拡大率が些か足りない場合があり、この場合には拡大虚像があまりぼやけた状態とならずグラデーション効果が小さくなることがある。このため画素パターンの画素を形成する前記各色画素は、前記集光素パターンの集光素の配列ピッチの101%以下の配列ピッチで配列しているのが好ましい。特に、各色画素の配列ピッチが集光素の配列ピッチに近づく程、各色画素の拡大虚像の拡大率が増大するため、印刷上可能な限りにおいて、各色画素の配列ピッチを集光素の配列ピッチに近づけるのがより好ましい(但し、各色画素の拡大虚像を透明素材の上方に現出させるために、あくまでも各色画素の配列ピッチが集光素の配列ピッチよりも大きいことが必須要件である)。
【0050】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、2、3…装飾表示体
10…透明素材
20…集光素層
21…集光素
22…集光素パターン
30、130、230…画素層
31、131、231…画素
32、132、232…画素パターン
40…背景層
50…m色画素層
51…m色画素
60…y色画素層
61…y色画素
70…c色画素層
71…c色画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状または板状の透明素材の表面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して集光素パターンが形成されるとともに、前記透明素材の裏面に、複数の画素を各画素の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して画素パターンが形成され、各画素の配列ピッチが各集光素の配列ピッチよりも大きくなるように前記集光素パターンと前記画素パターンとが形成されることにより、前記画素の拡大虚像を透明素材の上方に現出させる装飾表示体であって、
前記画素は互いに異なる色で着色された透明または半透明の複数の色画素からなり、
前記色画素を重ねることによって前記画素が形成されるとともに、前記画素パターンの所定の方向に沿って少なくともいずれかの前記色画素の画素径が次第に変化することを特徴とする装飾表示体。
【請求項2】
前記画素パターンの画素を形成する前記各色画素は、前記集光素パターンの集光素の配列ピッチの101%以下の配列ピッチで配列している請求項1に記載の装飾表示体。
【請求項3】
前記画素パターンの画素を形成する前記各色画素は、同一の配列ピッチで配列している請求項1または請求項2に記載の装飾表示体。
【請求項4】
前記画素パターンの画素を形成する前記各色画素は、シアン、マゼンダ、イエローの三原色のいずれかの色で着色されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の装飾表示体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−236375(P2012−236375A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107832(P2011−107832)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【特許番号】特許第4999023号(P4999023)
【特許公報発行日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(599144859)美濃商事株式会社 (7)
【Fターム(参考)】