説明

装飾表面を有するポリマーアセンブリ

2つの不規則表面を有するシートの異なる面に非装飾表面と熱可塑性「基材」の表面とを溶融結合させることにより、装飾表面と非装飾表面とを有するポリマーシートを熱可塑性「基材」に接合させてもよい。得られた物品は、自動車、器具および動力工具などの、熱可塑性基材上の装飾表面が望ましい製品のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーアセンブリに関する。より詳しくは、本発明は装飾表面を有するポリマーシートに関し、2つの不規則表面を有するシートの異なる面に非装飾表面と熱可塑性「基材」の表面とを溶融結合させることにより、通常、非装飾表面を熱可塑性「基材」に接合させてもよい。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマー(TP)は商業の重要な品目であり、多くの異なるタイプ(化学組成)およびそのブレンドが多くの用途のために製造されている。これらの用途の1つは、見られることを意図されている(少なくとも)1つの装飾表面を有する装飾シートである。それらの主目的は外観または装飾であり、それらは、構造安定度、バリア特性または耐熱性を改善するなどの他の機能を通常殆どまたは全く有していない。これらの装飾表面は平滑であってもよく、殆どまたは全く歪みなしで画像を反射することが意図されていてもよく、および/または輝いていてもよく、および/または着色されているか、あるいは装飾外観であってもよい。これらの装飾シートは、耐引掻性、耐変色性および耐候性などの他の望ましい特性を更に有してもよい。これらの装飾シートは、単一層または各層が種々の光学的特性、機械的特性または外観特性をもたらす多層であってもよい。装飾層が多層シートである場合、しばしば、種々の層は、種々の層の互いに対する接着力に関わる問題を避けるために同じポリマーか、ほぼ同じポリマーから製造される。こうした構造は知られている。例えば、米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)ならびに(特許文献6)を参照すること。それらのすべては本明細書に参照により援用する。
【0003】
しばしば、装飾層を熱可塑性基材に接着または結合させることが望ましい。通常、この熱可塑性基材は装飾層の中で用いられるポリマーとは異なる熱可塑性ポリマーである。この結合を多くの方法、例えばメカニカルファスナーまたはスナップ嵌締めによって行ってもよいけれども、しばしば、最も簡単で最も安価な方法は、ある種の結合プロセスである。これは、接着剤または相溶化性接着剤層の使用を含んでもよいか、あるいは単純に熱可塑性樹脂を溶融し、熱可塑性樹脂が溶融している間に熱可塑性樹脂を互いに接触させることを含んでもよい。こうした結合を改善するために、場合によって、相溶化剤をTPの1つまたは複数に添加してもよい。
【0004】
しかし、殆どすべてのTPが互いに非常に非相溶性であり、有効な接着剤または相溶化剤を見つけるのは、しばしば難しく、単純に互いに溶融結合させるのは殆ど常に機能しない(すなわち、殆どまたは全く強度が得られない)ことが周知されている。従って、多くの場合、装飾シートと基材熱可塑性樹脂を含む異なるTPを結合する単純で安価な方法は入手できないことが多い。
【0005】
米国特許公報(特許文献7)には、規定組成の微孔質ポリオレフィン層をTPなどの無孔質材料と融着結合させることにより形成された多層物品が記載されている。2つ以上の異なるTPを互いに結合させるためにポリオレフィン層材料を用いることは記載されていない。
【0006】
不織布(NWF)も木材およびポリエチレンなどの他の材料を互いに結合させるために用いられてきた。NWFに粉末接着剤を染み込ませ、その後、粉末接着剤を溶融させることにより粉末接着剤をNWFに結合させる米国特許公報(特許文献8)を参照すること。このシートは、NWF上で接着剤を溶融させることにより「ビニルおよび/または布地カバーと、金属、プラスチック、ゴムおよび木材を含む様々な表面」を結合させるために用いてもよい。しかし、2種のTPを互いに結合させることは特に記載されていない。
【0007】
米国特許公報(特許文献9)は、ゴムを微孔質シートの表面に「融着」させ、微孔質シートの非被覆面を露出させてこのアセンブリを射出型に入れ、プロピレンを型に射出成形する実施例(すなわち実施例19)を含んでいる。2種の異なる熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を接合することはこの特許において開示されていない。
【0008】
(非特許文献1)には、ポリプロピレンを微孔質シートの両面に成形することが可能であると報告されている。2種の異なる熱可塑性樹脂を接合するために、こうしたシートを用いることは開示されていない。
【0009】
米国特許公報(特許文献10)には、熱可塑性樹脂の各々を不規則表面シートの片面に溶融結合させることにより2種の異なる熱可塑性樹脂を互いに結合させるために2つの不規則表面を有するポリマーシートの使用を記載している。装飾シートを結合させることは記載されていない。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,931,324号明細書
【特許文献2】米国特許第5,916,643号明細書
【特許文献3】米国特許第5,938,881号明細書
【特許文献4】米国特許第20030055006号明細書
【特許文献5】米国特許第20020114951号明細書
【特許文献6】国際公開第02/078953号パンフレット
【特許文献7】米国特許第4,892,779号明細書
【特許文献8】米国特許第6,136,732号明細書
【特許文献9】米国特許第6,544,634号明細書
【特許文献10】米国特許出願第10/852278号明細書
【特許文献11】米国特許第3,351,495号明細書
【特許文献12】米国特許第4,698,372号明細書
【特許文献13】米国特許第4,867,881号明細書
【特許文献14】米国特許第4,874,568号明細書
【特許文献15】米国特許第5,130,342号明細書
【非特許文献1】第4回国際会議「自動車におけるTPO「97」」(TPOs in Automotive「97」)、1997年10月、ミシガン州ノヴァイで示されたシュワルツ(S.Schwarz)ら著の論文「Mist(商標)技術−「界面接着性への新たなアプローチ(MistTM Technology−A New Approach to Interfacial Adhesion)」
【非特許文献2】バトラー(I.Butler)著「不織布ハンドブック(The Nonwoven Fabrics Handbook)」、ノースカロライナ州ケアリーのアソーシエーション・オブ・ザ・ノンウーブン・ファブリックス・インダストリー(Association of the Nonwoven Fabrics Industry(Cary,NC))、1999
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡単に言うと、そして本発明の1つの態様によると、第1面と第2面を有する熱可塑性樹脂または架橋熱硬化性樹脂を含む第1シートと、第1の熱可塑性樹脂から製造され、装飾面と前記第1シートの前記第1面に溶融結合されている第3面とを有する第2シートと、任意選択的に前記シートの前記第2面に溶融結合されている第2の熱可塑性樹脂とを含む物品であって、ただし、前記第1面と前記第2面は不規則表面を有し、前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂は異なることを特徴とする物品が提供される。
【0012】
本発明のもう1つの態様によると、(a)架橋熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含む第1シートの第1面を、第1の熱可塑性樹脂から製造され、装飾面と第3面とを有する第2シートの前記第3面に溶融結合させる工程と、(b)任意選択的に、前記第1シートの第2面を第2の熱可塑性樹脂に溶融結合させる工程とを含む物品を形成する方法であって、ただし、前記第1面と前記第2面は不規則表面を有し、前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂は異なることを特徴とする方法が提供される。
【0013】
溶融樹脂が注入される前に上の物品が型内にある部品を射出成形することにより、熱成形および「インジェクションクラッディング」などの上で記載された物品の造形品を成形する方法も本明細書において開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書および添付した特許請求の範囲の文脈における用法に従って参考として以下の定義を提供する。
【0015】
「シート」は、表面の2つが、他の外面のいずれかの表面積の少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約10倍を有する材料形状を意味する。寸法15cm×15cm×厚さ0.3cmのシートおよび15cm×15cm×厚さ0.2mmのフィルムはこの定義に含まれる。多くの場合に(しばしばフィルムと呼ばれる)シートは、不規則表面に順応するように構成され得るように可撓性であり、ドレープ性であってもよい。シートは、好ましくは約0.03mm、より好ましくは約0.08mm、特に好ましくは約0.23mmの最小厚さを有する。シートは、好ましくは約0.64mm、より好ましくは約0.38mm、特に好ましくは約0.25mmの最大厚さを有する。好ましい厚さ範囲を形成させるために、好ましいあらゆる最小厚さを好ましいあらゆる最大厚さと組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。本明細書において時には第2シートと呼ばれる装飾表面を有するシートの場合、このシートは、例えば、2つ以上の層、シートまたはフィルムから製造してもよい。典型的には、これらの層は、単一シートを形成させるために互いに積層されるか、または共押出される。好ましくは、装飾シートの層は1つまたは複数の顔料入り層の上に透明な表面層を含む。シート層は、加工の容易さおよび層間接着力を提供するために似た材料の層であってもよいか、または異なる材料の層であることが可能である。この場合、異なる材料は、加工目的のために似ている粘度を有してもよいか、および/または適する層間接着力を有してもよい。透明な表面層は、フィルター処理されなかった太陽光にさらされた時により良好な外観耐久性を提供することが可能である。あるいは、特に、著しい太陽光にさらされない最終用途物品に関して、顔料入り層を表面層として用いることが可能である。顔料入り層は、成形プロセスにおいて引落される領域においてシートを薄くするシートの引落または成形を必要とする用途において良好な外観を提供するのに十分な顔料濃度と層厚さの組み合わせを有するべきである。
【0016】
「不規則表面」は、前記表面および前記表面上の凹凸の中または上に流れるあらゆる溶融材料を前記表面に機械的に固定するのを助ける前記表面の中または上の凹凸を前記表面が有することを意味し、溶融材料が後で固化する時、前記表面が材料を不規則表面に機械的に固定(すなわち結合)させる。
【0017】
「樹脂」は、天然由来であろうと、人造(合成)由来であろうと、あらゆる高分子材料を意味する。合成材料が好ましい。
【0018】
「不規則表面シート(ISS)」は、2つの「不規則表面」を有するシートを意味する。
【0019】
「溶融結合」はTPが溶融されることを意味し、ここで、「溶融される」は、結晶性TPが最高融点辺りまたは最高融点より上に加熱される一方で、非晶質熱可塑性樹脂が最高ガラス転移温度より上で溶融されることを意味する。溶融されている間、TPはISSの適切な表面に接触して置かれる。この接触中に、通常、多少の圧力(すなわち力)が加えられて、TPをISSの表面上の孔または凹凸の幾つかの上に流れさせ、そして孔または凹凸の幾つかに場合により浸透させる。その後、TPは放置されて冷えるか、あるいは固体になる。
【0020】
「熱可塑性樹脂」(TP)は、ISSに溶融結合される前およびISSに溶融結合されている間は溶融可能である材料であるが、最終形態において固体である。すなわち、こうした固体は、結晶性またはガラス状(従って、典型的なエラストマーであり、その融点および/またはガラス転移温度は、あるとすれば周囲温度より低く、TPに含まれないが、熱可塑性エラストマーはTPに含まれる)である。従って、これは、ポリエチレンなどの典型的な(すなわち「古典的な」)TPポリマーを意味することが可能である。好ましくは、TPは「古典的な」TP、特に装飾シートである。TPは、熱硬化性ポリマーが熱硬化する(例えば、架橋する)前、すなわち、熱硬化性ポリマーが溶融されるとともに溶融状態で流れることが可能である間は熱硬化性ポリマーも意味することが可能である。おそらく溶融結合が起きた同じ装置内で、そしておそらく熱硬化性樹脂を単純に更に加熱してガラス状および/または結晶性である樹脂を形成させることにより、熱硬化は溶融結合が起きた後に起きてもよい。有用な熱可塑性エラストマーには、ポリエーテルソフトセグメントを有するブロックコポリエステル、スチレン−ブタジエンブロックコポリマーおよび熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。
【0021】
TPが「異なる」とは、TPが異なる化学組成を有することを意味する。異なる熱可塑性樹脂の例には、ポリエチレン(PE)とポリプロピレン、ポリスチレンとポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ナイロン−6,6とポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ナイロン−6,6とナイロン−6、ポリオキシメチレンとポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エーテル−エーテル−ケトン)とポリ(ヘキサフルオロプロピレン)(パーフルオロメチルビニルエーテル)コポリマー、サーモトロピック液晶ポリエステルと熱硬化性エポキシ樹脂(架橋前)および熱硬化性メラミン樹脂(架橋前)と熱硬化性フェノール樹脂(架橋前)が挙げられる。異なる熱可塑性樹脂は、同じ熱可塑性樹脂であるが、異なる割合のブレンドも含んでよい。例えば、85重量%PETと15重量%PEのブレンドは35重量%PETと65重量%PEのブレンドとは異なる。異なるは、他のコモノマーの存在および/または量が異なることも含む。例えば、PETはポリ(エチレンイソフタレート/テレフタレート)とは異なる。
【0022】
本明細書における「結合される」は、本明細書において殆どの場合、材料間で永久的に、および/またはISSにより材料が互いに結合されることを意味する。典型的且つ好ましくは、ISS以外の他の接着剤も類似材料も結合プロセスにおいて用いられない。
【0023】
ISSシートは多くの方法で形成された不規則表面を有する。ISSシートは、布地、例えば、織布、メリヤス生地または不織布、紙、発泡体、特に、連続気泡発泡体および/または微小気泡発泡体、例えば、サンドブラスト仕上げによって、あるいはサンドペーパーまたはシャークスキンなどの研磨剤により形成された粗面を有するシート、および微孔質シート(MPS)であってもよい。ISSの好ましい形態は、布地、特に不織布(NWF)および微孔質シート(MPS)である。
【0024】
「微孔質」は、少なくとも約20体積%、より好ましくは少なくとも約35体積%の孔である材料、通常、熱硬化性高分子材料または熱可塑性高分子材料、好ましくは熱可塑性樹脂を意味する。しばしば、体積%は、より高い、例えば、約60〜約75体積%の孔である。気孔率は、以下の式
「気孔率」=100(1−d1/d2
(式中、d1は、サンプルを秤量し、サンプルの寸法から決定されるサンプルの体積によって当該重量を除すことにより決定される多孔質サンプルの実密度である。値d2は、空隙も孔もサンプルの中に存在しないと仮定したサンプルの「理論」密度であり、サンプル成分の量および対応する密度を用いる既知の計算によって決定される)により決定される。気孔率の計算に関するより詳しい事項は米国特許公報(特許文献7)において見られる。この特許は本明細書に参照により援用する。好ましくは、微孔質材料は連続孔を有する。
【0025】
本明細書におけるMPSは、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、米国特許公報(特許文献13)、米国特許公報(特許文献14)および米国特許公報(特許文献15)に記載された方法によって製造してもよい。これらの特許のすべては本明細書に参照により援用する。好ましい微孔質シートは米国特許公報(特許文献7)に記載されている。この特許は本明細書に参照により援用する。多くの微孔質シートに似て、本特許の微孔質シートは多量の粒子状物質(充填剤)を有する。この特定のタイプのシートはポリエチレンから製造され、その多くは、線状超高分子量ポリマーである。「布地」は繊維から製造されたシート様材料である。繊維を製造する材料は合成(人造)または天然であってもよい。布地は織布、メリヤス生地または不織布であってもよく、不織布は好ましい。布地のために有用な材料には、コットン、ジュート、セルロース系材料、ウール、ガラス繊維、炭素繊維、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン−6、ナイロン−6,6および芳香族脂肪族コポリアミドなどのポリアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)などのアラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、サーモトロピック液晶ポリマー、フルオロポリマーおよびポリ(フェニレンスルフィド)が挙げられる。
【0026】
本明細書における布地は、ウィービングまたはニッティングなどの既知のいずれかの布地製造技術によって製造することが可能である。しかし、好ましい布地のタイプはNWFである。NWFは、(非特許文献2)に記載された方法によって製造することが可能である。この参考文献は本明細書に参照により援用する。本発明のためにNWFを製造するプロセスの有用なタイプには、スパンボンドおよびメルトブローが挙げられる。典型的には、NWFの中の繊維はある関係状態で互いに固定される。NWFが溶融TPとしてレイダウンされる時(例えば、スパンボンド)、新たな繊維層が前の繊維層に接触する前に繊維は完全には固化しない場合があり、よって繊維の互いの部分融着をもたらす。布地は、繊維を絡ませるとともに固定するために針で縫うか、またはスパンレースするか、あるいは繊維は互いに熱接着してもよい。
【0027】
布地の特性は、接合されるべきTPの間の結合の特性をある程度決定する。好ましくは、布地は、溶融TPが布地の繊維の中におよび布地の繊維のまわりに浸透するのが(用いられた溶融結合条件下で)困難であるほどにしっかりと織られない。従って、布地が比較的多孔質であることが好ましいことがあり得る。しかし、布地が多孔質すぎる場合、布地は弱すぎる結合を形成し得る。布地(および次に布地の中で用いられる繊維)の強度および剛性は、形成される結合の強度および他の特性をある程度決定する。従って、炭素繊維またはアラミド繊維などのより高い強度の繊維は場合によって有利であり得る。
【0028】
理論に拘束されずに、ISSシートへのTPの機械的固定によって熱可塑性樹脂がISSシートの表面に(少なくとも部分的に)結合し得ることが考えられる。溶融結合工程中に、TPが表面上の凹凸に、または孔、空隙および/または他の溝(それらが存在する場合)を通して表面より実際に下に、あるいは孔、空隙および/または他の溝を通して表面を通して凹凸に「浸透」することが考えられる。TPが固化する時、TPは、これらの凹凸および存在するなら孔、空隙および/または他の溝の中におよび/または上に機械的に固定される。
【0029】
第1のTPおよび/または第2のTPのために好ましい材料の1つのタイプは、容易に架橋できないとともに約30℃より高い融点および/またはガラス転移温度を有する材料である「古典的な」TPである。こうした古典的なTPが結晶性である場合、それは、好ましくは50℃以上の結晶融点、より好ましくは2J/g以上、特に好ましくは5J/g以上の融解熱を有する。TPがガラス状である場合、それは、好ましくは50℃以上のガラス転移点を有する。場合によって、融点またはガラス転移温度は、当該温度に到達する前にTPが分解するほどに高くてもよい。こうしたポリマーもTPとして本明細書に含まれる。融点およびガラス転移温度は、ASTM方法ASTM D3418−82を用いて測定される。融点は溶融吸熱のピークとして取られ、ガラス転移温度は遷移中点で取られる。
【0030】
こうした古典的なTPには、ポリ(オキシメチレン)およびそのコポリマー、PET、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)およびポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)などのポリエステル、ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−11および芳香族脂肪族コポリアミドなどのポリアミド、ポリエチレン(すなわち、低密度、線状低密度、高密度などのすべての形態)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレン/ポリ(フェニレンオキシド)ブレンドなどのポリオレフィン、ポリ(ビスフェノール−Aカーボネート)などのポリカーボネート、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリ(フッ化ビニル)およびエチレンとフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニルとのコポリマーなどのパーフルオロポリマーおよび部分フッ素化ポリマーなどのフルオロポリマー、ポリ(p−フェニレンスルフィド)などのポリスルフィド、ポリ(エーテル−ケトン)、ポリ(エーテル−エーテル−ケトン)およびポリ(エーテル−ケトン−ケトン)などのポリエーテルケトン、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートコポリマー、ポリ(エーテルイミド)、アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)などの熱可塑性(メタ)アクリル酸ポリマー、テレフタレート、1,4−ブタンジオールおよびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールからの「ブロック」コポリエステル、およびスチレンブロックと(水素添加)1,3−ブタジエンブロックを含むブロックポリオレフィンなどの熱可塑性エラストマー、およびポリ(塩化ビニル)、塩化ビニルコポリマーなどの塩素化ポリマー、エチレンと、(メタ)アクリル酸と、カルボン酸基の幾つかが金属カルボキシレートに転化された任意選択的に他のコモノマーとのコポリマーなどのイオノマー、およびポリ(塩化ビニリデン)、ならびにそれらのブレンドが挙げられる。(メタ)アクリレートエステルポリマーなどの現場(in−situ)で形成され得るポリマーも含まれる。本明細書に記載されたプロセスにおいてこのリストの中のTPのタイプのどれも、このリストの中のTPのいずれかの他のタイプと接合させて、好ましいアセンブリを製造してもよい。単一タイプからのポリマー(例えば、ポリオレフィンのポリエチレンおよびポリプロピレン)は、2種のポリマーが化学的に異なる限り本プロセスにおいて互いに接合してもよい。1つの形態において、第1のTPと第2のTPの一方または両方が古典的なTPであることが好ましい。
【0031】
装飾シートに関して、表面層ポリマーの好ましいタイプは、イオノマー、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリカーボネート、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート(ASA)コポリマーおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマーである。イオノマーは、この用途のために特に好ましい。有用なイオノマーには、エチレンと、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリレートエステルなどの任意選択的に他のモノマー、例えば、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレートおよびイソブチルアクリレートとのコポリマーが挙げられる。好ましいイオノマーはエチレンのコポリマーであり、コポリマーの重量を基準にして8〜25重量%の間のコモノマー含量を有し、コモノマーは、表面高分子層に強化された透明性および表面特性を提供するためにコポリマー中のカルボン酸部分の少なくとも30%が金属イオン、好ましくは金属イオンの混合物で中和されたC3〜C8α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸である。より好ましいコポリマーは、酸部分の少なくとも40%が金属イオンで中和されていて、約10〜20重量%のコモノマー含量を有する。有用な金属カチオンには、Na+、Zn++、Ca++、Mg++およびLi+ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
装飾シートは1層以上の層を含んでもよい。例えば、シートにカラーおよび/またはデザインを与える顔料入り層および透明であるとともに引っ掻きまたは特に外観への他の損傷からシートを保護し得る外層(外層は、見る時に観察者に最も近い層である)が存在してもよい。場合によって、好ましくは、表面層は高い光沢を有する。顔料入り層は、熱可塑性樹脂の中で普通に見られる他の成分に加えて、顔料、染料、着色剤および金属ならびに他のタイプのフレーク材料の内の1つまたは複数を含んでもよい。特にフィルター処理されなかった太陽光にさらされた装飾シートに関して、耐候性を改善するために添加剤および安定剤を表面および下にある層に添加することが可能である。プラスチックに通常配合されるか、または塗料組成物に添加される添加剤は、成形されている得られた製品、すなわち、自動車またはトラックの部品またはパネルあるいは積層物またはフィルムの最終用途のために必要に応じて共押出高分子層の第1の層および下にある層に含めてもよい。これらの要件およびこれらの要件を満たすために必要とされる添加剤は当業者に周知されている。例えば、UV吸収剤、UVヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤および熱安定剤、加工助剤および顔料などは、しばしば望ましい材料の典型である。これらの成分を含める時、これらの成分は、好ましくは高分子材料の100重量部当たり約0.5〜約3.0(好ましくは約1.0〜約2.0)部の量で存在するが、より少ない量またはより多い量で存在してもよい。
【0033】
太陽光に存在するような紫外(UV)線に部品がさらされる場合、イオノマーのための1つまたは複数のUV安定剤および/またはUV吸収剤を含めることは特に重要である。典型的なUV安定剤は、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルセバケート)およびジ[4(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)]セバケート、ポリ[[6−[1,1,3,3−テトラメチルブチル]アミノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]]、「チマソーブ(Chimassorb)」(登録商標)2020、1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−4−ピペリジル)−、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンを有するポリマー、N−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンを有する反応製品、「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)NOR371、トリアジン誘導体およびそれらのいずれかの混合物などのヒンダードアミン光安定剤である。
【0034】
典型的に有用なUV吸収剤には、ヒドロキシドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンおよびスルホン酸基を含むヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン、2−フェニル−4−(2’,2’−ジヒドロキシベンゾイル)−トリアゾールなどのトリアゾール、ヒドロキシフェニルチアゾールなどの置換ベンゾチアゾール、トリアジンの3,5−ジアルキル−4−ヒドロキシフェニル誘導体、ジアルキル−4−ヒドロキシフェニルトリアジンの硫黄含有誘導体およびヒドロキシフェニル−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン、ジフェニロールプロパンのジベンゾエートおよびジフェニロールプロパンの第三ブチルベンゾエートなどのベンゾエートならびにフェノールを含むより低級のアルキルチオメチレンなどのその他、1,3−ビス−(2’−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンなどの置換ベンゼン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸の金属誘導体、非対称シュウ酸、ジアリールアリド、アルキルヒドロキシフェニル−チオアルカン酸エステルおよびビピペリジル誘導体のヒンダードアミンが挙げられる。
【0035】
チバ・ガイギー(Ciba Geigy)からすべて入手できる好ましいUV吸収剤およびヒンダードアミン光安定剤は、「チヌビン(TINUVIN)」(登録商標)234(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール)、「チヌビン(TINUVIN)」(登録商標)327(2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、「チヌビン(TINUVIN)」(登録商標)328(2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール)、「チヌビン(TINUVIN)」(登録商標)329(2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、「チヌビン(TINUVIN)」(登録商標)765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート)、「チヌビン(TINUVIN)」(登録商標)770(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)デカンジオエート)および「チマソーブ(CHIMASSORB)」(登録商標)944(2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンと2,4,4−トリメチル−1,2−ペンタンアミンを有するN,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンポリマー)である。
【0036】
チバ・ガイギー(Ciba Geigy)からすべて入手できる好ましい熱安定剤は、「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)259(ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)1010(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸,2,2−ビス[[3−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロポキシ]メチル]1,3−プロパンジイルエステル)、「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)1076(オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)1098(N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)、「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)B215(「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)1010とトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット)との33/67ブレンド)、「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)B225(「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)1010とトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット)との50/50ブレンド)および「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)B1171(「イルガノックス(IRGANOX)」(登録商標)1098とトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット)との50/50ブレンド)である。
【0037】
顔料には、無機ケイ質顔料(例えばシリカ顔料)および従来の顔料などの両方の透明顔料が挙げられる。従来の顔料には、二酸化チタンおよび酸化鉄などの金属酸化物、金属水酸化物、アルミニウムフレークなどの金属フレーク、クロム酸鉛などのクロム酸塩、硫化物、硫酸塩、炭酸塩、カーボンブラック、シリカ、タルク、白土、フタロシアニンブルーおよびグリーン、オルガノレッド、オルガノマロンおよびその他の有機顔料および染料が挙げられる。高温で安定である顔料は特に好ましい。顔料と、顔料を導入しようとする材料と同じであり得るか、または顔料を導入しようとする材料と相溶性であり得る分散用樹脂とを混合することにより顔料は一般にミルベースに配合される。顔料分散体は、サンドグラインディング、ボールミル粉砕、磨砕機粉砕または2本ロール粉砕などの従来の手段によって形成される。ガラス繊維および鉱物繊維、増摩剤、可塑剤および核剤などの他の添加剤は、一般には必要がないし用いられない一方で、導入することが可能である。
【0038】
装飾シートのこの2層タイプは、自動車製造などの特定の産業で用いられるいわゆるベースコート−透明コート仕上げの効果を模倣してもよい。以前の装飾シートにおいて、顔料入り層の「裏側の」追加の層は、普通には、装飾シートを接着させようとした基材に接着力を提供するために存在することが多かった。例えば、顔料入り層の裏側に、いわゆるタイ層または接着剤層が存在するであろう。通常、基材を製造した同じかまたは似たポリマーのもう1層の層(第4の層)がそれに結合されるであろう。タイ層または接着剤層は、第4の層のポリマーのタイプごとに注意深く選択しなければならなかった。接着力(例えば、結合)は時には所望するほどには良好ではなかった。装飾シートに関するより多くの情報に関しては、米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)ならびに(特許文献6)を参照すること。これらの特許のすべては前に参照により援用した。
【0039】
本発明において、ある意味でISSはタイ層の代わりをし、第4の層は不要である。ISSの他の面は基材に直接結合してもよく、通常、良好な結合が得られる。場合によって、基材は、ポリマーへの接着が良くみても難しかったので以前には用いることが困難または不可能であったポリマーから製造してもよい。ISSの単一タイプを殆どの基材のために用いてもよく、従って、最終製品の製造および在庫は製品ラインにわたって単純化される。タイ層または接着剤層をなくすこともプロセスの単純化(例えば、より少ない押出機しか必要としない)およびより低いプロセスエネルギー必要量につながり得る。
【0040】
装飾シートは、熱可塑性樹脂(基材)の多くの異なるタイプ、例えば、ポリオレフィン(特にポリエチレンおよびそのコポリマー、ポリプロピレンおよびそのコポリマーおよびポリスチレン)、ポリ(メタ)アクリレート[特にポリ(メチルメタクリレート)]、ポリカーボネート、フッ素化ポリマー(特にパーフルオロポリマー)、ポリエステル[特にポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレン)テレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,6−シクロヘキシレンジメタノールテレフタレート)およびポリ(エチレン1,6−ナフタレート)およびこれらのすべてのコポリマー]、ポリアミド(特にナイロン6,6、ナイロン−6およびポリ(1,4−フェニレンテレフタルアミド)およびこれらのいずれかのコポリマー]、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリ(オキシメチレン)ホモポリマーおよびコポリマー、ポリスルフィド、ポリケトン(エーテル連結基を含むポリケトンを含む)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、塩素化ポリマー[特にポリ(塩化ビニル)およびポリ(塩化ビニリデン)]または熱可塑性エラストマー、特に熱可塑性ブロック共(ポリエステル−ポリエーテル)、ブロック共ポリオレフィン、熱可塑性ウレタンまたは熱可塑性エラストマーポリマーブレンドに結合してもよい。
【0041】
本発明の物品は多くの方法によって製造してもよく、これらの幾つかを以下でおよび実施例で概説する。装飾シートが単一層である場合、装飾シートを押し出してもよく、押し出ししだい、装飾シートのアンダーコート(上の第3面)をISSに積層する。あるいは、装飾シートを単純に別個の工程でISSに熱間積層してもよい。
【0042】
装飾シートが1層以上の層である場合、層は共押出してもよく、正しい順序で当該プロセス中に接合してもよい。共押出後に、ISSを装飾シートの遠方面に積層してもよい。あるいは、装飾シートの層を互いに積層してもよく、装飾シートを互いに積層した後に、または装飾シート層の積層と同時に、ISSを装飾シートに積層してもよいか、あるいは、ISSを装飾シートの「裏側」層に最初に積層してもよく、その後、装飾シートの「裏側」層を装飾シートの他の層に積層してもよい。
【0043】
ISSの第2面を結合させる基材は、上述したプロセスのいずれかの間に結合させてもよい。ISSへの積層は、ISSを装飾シートに結合させると同時、結合させる前または結合させた後のいずれかである。
【0044】
他のプロセスも用いてよい。例えば、装飾シートまたはその構成成分層、ISSおよび基材を熱成形機に入れてもよい一方で、これらの層を熱成形している間に、十分な熱が種々の層に加えられると仮定してこれらの層を互いに積層/溶融結合してもよい。あるいは、造形品を成形しつつ既に互いに溶融結合された装飾およびISSを基材およびISSに溶融結合された基材と合わせて熱成形機に入れてもよい。もちろん、装飾シート、ISSおよび基材を含む完全に組み立られた物品もシートの形を取って熱成形してよい。これらの成分を含む物品は、熱成形されているか否かを問わずこうしたシートを含む。
【0045】
熱成形に多少似た方法において、ISSに溶融結合された装飾シートは、ISSの第3面が型キャビティ中に面して、射出型または圧縮型に入れてもよく、溶融熱可塑性樹脂はISSの第3面に溶融熱可塑性樹脂を溶融結合させるために型に注入される。この方法は、射出成形と圧縮成形の両方に適用可能であり、時には「インジェクションクラッディング」と呼んでもよい。これは、装飾表面を有するが、熱成形によって普通得られる装飾表面より厚いか、または複雑な形状であってもよい部品を形成させる。注入された熱可塑性樹脂は、「古典的な」熱可塑性樹脂または固化するとともに型から取り除いた後に放置して型の中で硬化(架橋)するかまたは架橋され得る未硬化熱硬化性樹脂であってもよい。プロセスのこのタイプにおいて、好ましくは、装飾シートの層は完全には溶融されない。装飾シートの層は、装飾シートの層が接触している型壁によって冷却してもよい。従って、たとえ溶融熱可塑性樹脂の溶融温度が装飾シートポリマーの融点より高い場合があっても、しばしば高い光沢を有する満足のいく部品を得ることが可能である。
【0046】
中空品、例えばボトルを形成させるためにブロー成形または回転成形などの他の成形プロセスも用いてよい。
【0047】
溶融結合プロセスにおいて、その特徴がどんなものであれ、ISSの粗い表面の特徴が普通には全面的に破壊されず、しばしばほとんど無傷のまま残ることが好ましい。例えば、ISSがTPを含む場合、そして溶融結合プロセスの温度が当該TPを溶融させるという結果になる場合、ISSの凹凸は失われる場合がある。これは、多くの方法によって避けてもよい。装飾シートおよび/または基材を溶融させるために必要な温度は、ISSを含むあらゆるTPの融点(あれば)および/またはガラス転移点が溶融結合プロセス温度より高いように十分に低くてもよい。表面凹凸の喪失を避けるためのもう1つの方法は、架橋された熱硬化性樹脂または金属などの高い融点を有するもう1種の材料からISSを製造することである。ISSがTPを含む場合、場合によって、TPは、その溶融温度/ガラス転移温度より上では、TPが流れるにしても殆ど流れないほどに粘性であってもよい。粘度は大量の充填剤を用いることにより、および/または超高分子量ポリエチレンなどの非常に高い分子量を有するTPを用いることにより高めることが可能である。例えば、好ましいISSの1つのタイプ、好ましくは熱可塑性樹脂から製造されたMPSにおいて、熱可塑性樹脂が、約500,000以上、より好ましくは約1,000,000以上の重量平均分子量を有することが好ましい。こうした高分子量において得ることができるTPの1つの有用なタイプはポリエチレンであり、それは、ISS、好ましくはMPSのために好ましいTPである。より高い融点またはガラス転移温度によりTPを結合させる時に粗い表面の特徴の喪失を防ぐもう1つの方法は、より高い温度にISSをさらす時間を最少化し、粗い表面の喪失を引き起こすのに十分な熱伝達時間でない短い時間後にTPが粗い表面に「浸透する」ようにすることである。これらの方法の幾つかは、ISSの中の表面凹凸の喪失を更に妨害するために組み合わせてもよい。
【0048】
一旦結合された構造が形成されると、多くの場合、結合された界面は構造における弱点ではない。すなわち、多くの場合、2種のTP(溶融結合プロセス中の意味におけるTP)を互いから引き剥がそうとする試みは、TPまたはISSの一方の凝集破壊をもたらし、材料の固有の強度が結合されたアセンブリの弱点であることを例示している。
【0049】
ISSのTPおよび/またはポリマーのいずれかであるが、特にTPである本明細書で記載されたポリマーは、こうした組成物の中で通常用いられる量でこうしたポリマーの中で通常見られる材料、例えば、充填剤、強化剤、酸化防止剤、顔料、染料、難燃剤などを含んでもよい。
【0050】
上で記載したように、装飾シートは使用中に特定の光学特性または外観特性を有してもよい。例えば、装飾シートは輝いていてもよいか(反射性および/または光沢性)、または画像を反射する際に鏡様光学特性を有してもよい。これらの特性は、しばしば特定の試験によって測定することが可能である。耐引掻性などの他の特性も重要である。これらの幾つかを以下に記載する。それらは、装飾層とISSとを含むアセンブリに適用可能であり、装飾層とISSと基材とを含むアセンブリにも適用可能である。
【0051】
本明細書に記載された物品は、自動車または車体パネル(クォータパネル、フード、トランクの蓋、ルーフ、バンパー、ダッシュボード、内装パネル、内装品、ガスキャップおよびホイールカバー)などの自動車部品、蓋、カバー、本体およびパネル、動力工具ハウジングなどの部品を含む器具、コンピュータ、キーボード、モニター、プリンタ、テレビジョンセット、ラジオなどの種々の電子製品のためのボックスおよびハウジング、携帯電話およびセルフォンなどの電話機、玩具、家具、スキー、スノーボード、スケートボード、靴およびブーツ、バックルおよびバインディングなどのスポーツ商品、香水瓶または化粧用物品のための他の容器のような化粧用物品、ならびにライター、ペンなどの他の消費者製品などの、幾つかのタイプの装飾表面を望ましく有する熱可塑性樹脂から製造された製品の種々のタイプのための中間製品または種々のタイプの部品として有用である。この方法は、ポーカーチップまたはカジノチップあるいは身分証明書などの偽造され得るプラスチック物品に識別的な着色層をしっかりと結合するためにも用いてよい。
【0052】
画像の鮮明度(DOI)。この測定は、米国ミシガン州48170、プリマスのパーセプトロン(Perceptron(Plymouth,MI))から入手できる「オートスペクト・ペイント・アピアランスクオリティ・メジャーメントシステム(AutoSpect Paint Appearance Quality Measurement System(QMS))」を用いて行った。これは装飾表面上で測定する。DOIが約60以上、より好ましくは約75以上の値を有することが好ましい。
【0053】
表面反射光、物体の反射ハイライトまたは反射画像を表面上に重ね合わせてもよい度合に関わる反射率のη−角選択性としてASTM方法284によって測定される光沢。60度光沢は、好ましくは70%より大きい、より好ましくは85%より大きいのがよい。
【0054】
表面からの反射によって見られる物体のコントラストの見掛けの減少の原因である試験片の光沢表面での光のη−散乱としてASTM方法284によって測定される曇り度。
【0055】
自動車耐候性プロトコル、SAE J1960が存在する。耐候試験暴露の2500KJ後の残留光沢{[(初期光沢−耐候試験光沢)/初期光沢]×100}は、好ましくは約80%より大きい。同様に、L、a、b色変化は、好ましくは「2.5デルタE」未満であるべきである。
【0056】
(比較)実施例において、以下の略称および材料を用いている。
【0057】
「ミスト(MiST)」(登録商標)SP700およびSP1400−高分子量ポリエチレンおよび米国ペンシルバニア州ピッツバーグのPPGインダストリーズ(PPG Industries(Pittsburg,PA))から入手できる大量の沈降シリカを含む微孔質シート。
【0058】
「ハイファックス(HiFax)」(登録商標)387−米国メリーランド州21921、エルクトンのバーゼル・ノースアメリカ(Basell North America,Inc.(Elkton,MD))から入手できるポリプロピレン。
【0059】
以下はすべて本願特許出願人から入手できる。
「デルリン(Delrin)」(登録商標)511P−中粘度アセタールホモポリマー
「デルリン(Delrin)」525GR−25%のガラス強化剤を含む中粘度アセタールホモポリマー
「クラスティン(Crastin)」(登録商標)SK605−30%のガラス強化剤を含むポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)
「ザイテル(Zytel)」(登録商標)101−非強化ナイロン−6,6
「ザイテル(Zytel)」CDV805−ガラス強化ナイロン−6,6、強化され、導電性である。
「サーリン(Surlyn)」(登録商標)9910イオノマー−亜鉛イオンで部分的に中和されたエチレン/メタクリル酸コポリマー、比重:0.97、メルトフローインデックス:0.7。
【実施例】
【0060】
(実施例1〜2)
「サノ(Sano)」多押出機共押出ラインで「サーリン(Surlyn)」(登録商標)9910イオノマーの2層を押し出すことにより、3層積層物を調製した。厚さ250μmであったこれらの層の1層は、(光学的に)透明で無色であった。他の層は、「サーリン(Surlyn)」(登録商標)9910中に赤のカラーコンセントレート6〜8重量%を用いる顔料入りの赤であり、厚さ300μmであった。2層の「サーリン(Surlyn)」層を互いに積層し、赤の顔料入り層を「ミスト(MiST)」(登録商標)SP700(厚さ175μm)に積層して、積層物Aを形成させたか、または「ミスト(MiST)」(登録商標)SP1400(厚さ350μm)に積層して、積層物Bを形成させた。コートハンガーダイを通して2層の「サーリン(Surlyn)」層を形成させることにより積層を行った。2層の「サーリン(Surlyn)」層が一対のニップロールを通り抜ける前に、「ミスト(MiST)」フィルムを顔料入り「サーリン(Surlyn)」層に接触させるようにした。ニップロールは「ミスト(MiST)」フィルム上に溶融イオノマーを押し付け、ロールを通過する間におそらくまだ多少溶融状態であった顔料入り「サーリン(Surlyn)」層に結合させた。積層物AおよびBはいずれも互いに十分に積層されたため、層を引き剥がすことができなかった。
【0061】
(実施例3)
積層物Aを約120℃(ポリマー表面温度)で熱成形機内で真空熱成形した。型は周囲温度であった。形成された部品は、13.5cm×9.5cm×深さ2.5cmの浅い皿であった。今は積層物Cと呼ぶ熱成形された積層物Aは引き剥がすことができなかった。積層物Cを用いた射出成形実施例4〜17に関して、底を皿から切り離し、用いた。
【0062】
(実施例4〜17)
これらの実施例のために2つの異なる型を用いた。型1は中央ゲート付きディスク型であり、キャビティは、直径12.5cm、深さ2.5cmであった。型2は5×13cm×深さ3cmのプラック型であった。
【0063】
透明な「サーリン(Surlyn)」層が接着剤を用いて型壁に接着され、従って、積層物の「ミスト(MiST)」面が型キャビティに面した状態で積層物を型に入れた。その後、特定の熱可塑性樹脂のために典型的な射出成形条件(温度、圧力、型サイクルタイム)を用いて前記熱可塑性樹脂を型に注入した。剥離強度を測定しようと試みたが、殆どの場合、「ミスト(MiST)」層を前記熱可塑性樹脂から分離させることができなかった。分離できた場合、剥離強度が与えられる。結果を表1に示している。
【0064】
【表1】

【0065】
従って、前述した目的および利点を完全に満たす物品および装飾表面を有するポリマーアセンブリのための方法が本発明により提供されたことが明らかである。本発明をその特定の実施形態に関連して記載してきた一方で、多くの代替方法、変更および変形が当業者に対して明らかであることは明白である。従って、添付した特許請求の範囲の趣旨と広い範囲内に入るこうしたすべての代替方法、変更および変形を包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面を有する熱可塑性樹脂または架橋熱硬化性樹脂を含む第1シートと、第1の熱可塑性樹脂から製造され、装飾面と前記第1シートの前記第1面に溶融結合されている第3面とを有する第2シートと、任意選択的に前記シートの前記第2面に溶融結合されている第2の熱可塑性樹脂とを含む物品であって、
ただし、前記第1面と前記第2面は不規則表面を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂は異なることを特徴とする物品。
【請求項2】
前記第1シートが不織布または微孔質シートであることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1シートが約500,000以上の重量平均分子量を有するポリエチレンを含む微孔質シートであることを特徴とする請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂が両方とも古典的な熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂が、ポリ(オキシメチレン)およびそのコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン/ポリ(フェニレンオキシド)ブレンド、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリスルフィド、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートコポリマー、熱可塑性(メタ)アクリル酸ポリマー、熱可塑性エラストマー、塩素化ポリマー、イオノマーおよびそれらのブレンドからなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記第2シートの前記装飾面が、イオノマー、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートコポリマーおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記第2シートが1層以上の層を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記第2シートの前記装飾面が透明な外層を有し、着色層が前記透明な外層の下にあることを特徴とする請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記第2シートがUV安定剤、UV吸収剤の一方または両方を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品を含む自動車部品、器具、動力工具ハウジング、電子製品のためのボックスまたはハウジング、玩具、家具の一部分、スポーツ用品、化粧品または化粧用物品のための容器、ライターまたはペンからなる群から選択されることを特徴とする機器。
【請求項11】
前記自動車部品がボディパネル、クォータパネル、フード、トランクの蓋、ルーフ、バンパー、ダッシュボード、内装パネル、内装品、ガスキャップまたはホイールカバーであるか、またはそれらの一部であることを特徴とする請求項10に記載の機器。
【請求項12】
(a)架橋熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含む第1シートの第1面を、第1の熱可塑性樹脂から製造され、装飾面と第3面とを有する第2シートの前記第3面に溶融結合させる工程と、
(b)任意選択的に、前記第1シートの第2面を第2の熱可塑性樹脂に溶融結合させる工程と
を含む物品を形成する方法であって、
ただし、前記第1面と前記第2面は不規則表面を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂は異なることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記第1シートが不織布または微孔質シートであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂が両方とも古典的な熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂が、ポリ(オキシメチレン)およびそのコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン/ポリ(フェニレンオキシド)ブレンド、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリスルフィド、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートコポリマー、熱可塑性(メタ)アクリル酸ポリマー、熱可塑性エラストマー、塩素化ポリマー、イオノマーおよびそれらのブレンドからなる群から選択されることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2シートの前記装飾面が、イオノマー、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートコポリマーおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含むことを特徴とする請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2シートが1層以上の層を含むことを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2シートの前記装飾面が透明な外層を有し、着色層が前記透明な外層の下にあることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶融結合が積層、熱成形、射出成形およびブロー成形またはそれらの組み合わせによって行われることを特徴とする請求項12〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の層が積層によって形成され、任意選択的に、前記第1面および第2面も積層によって溶融結合されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第1面および前記第2面が積層によって溶融結合されることを特徴とする請求項12〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項12〜21のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された自動車部品、器具、動力工具ハウジング、電子製品のためのボックスまたはハウジング、玩具、家具の一部分、スポーツ用品、化粧品または化粧用物品のための容器、ライターまたはペンからなる群から選択されることを特徴とする機器。
【請求項23】
前記自動車部品がボディパネル、クォータパネル、フード、トランクの蓋、ルーフ、バンパー、ダッシュボード、内装パネル、内装品、ガスキャップまたはホイールカバーであるか、またはそれらの一部であることを特徴とする請求項22に記載の機器。

【公表番号】特表2008−515666(P2008−515666A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535727(P2007−535727)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/035451
【国際公開番号】WO2006/041771
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】