説明

裏カーボン型感圧複写シート

【課題】筆圧等の転写で複写された数字(金額)等の改ざん等による偽造の真偽判定が即座に視認可能な裏カーボン型感圧複写シートの提供にある。
【解決手段】支持体5の裏面に裏カーボン層6が印刷された上用紙12と、筆圧等でその裏カーボン層6が転写される下用紙16とでなる2枚が組合わされた裏カーボン型感圧複写シート1において、前記上用紙12の裏面に印刷される裏カーボン層6はパール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料を含有していて、前記下用紙16の表面には濃色印刷層7が形成されている裏カーボン型感圧複写シート1としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、領収書などに使用される感圧複写シートに関するものであり、さらに詳細には、伝票用紙等支持体の裏面にワックス型カーボンインキを用いて裏カーボンとしたもので、偽造防止を目的とした裏カーボン型感圧複写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、領収書等伝票類の複写方式として、圧力あるいは衝撃力を利用する感圧記録方式が採用され、その記録方式として、古くから使用されているカーボン紙を用いたものと、比較的新しいノーカーボン紙といわれるものが知られている。
【0003】
そのうちのカーボン紙を用いた感圧複写シートとして、支持体の裏面の全面または必要部分にカーボンインキを用いて裏カーボン層が印刷された上用紙と、筆圧等でその上用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる2枚組の裏カーボン型感圧複写シート、あるいは前記の裏カーボン層が施された上用紙と、少なくとも1枚の支持体の裏面の全面または必要部分にカーボンインキを用いて裏カーボン層が印刷された中用紙と、筆圧等でその中用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる多数枚組の裏カーボン型感圧複写シートが一般化されている。
【0004】
上記でいうカーボンインキとは、通称カーボン紙を作るのに用いられるインキのことで、ホットメルト型とソルベント型の2種類に大別され、前者のホットメルト型は、主に紙の裏面の必要部分に印刷されるスポットカーボン紙に使用され、後者のソルベント型は、クリーンカーボン紙といわれ、紙の裏面全面に塗布されるカーボン紙に使用され、色材(顔料)と植物性不乾性脂等流動性油分とカルバナワックス等ワックス類とからなるインキのことで、かならずしもカーボンブラックを色材としているものではない。
【0005】
上記の裏カーボン型感圧複写シートは、各保証書や領収書など、書面にセキュリティを施す必要のある証票の一つであり、そのため、この裏カーボン型感圧複写シートに施す偽造防止策として、例えば、ホログラム箔の転写や蛍光インキあるいは赤外線吸収インキで印刷されている裏カーボン型感圧複写シートがあるが、これらは証票自体の偽造防止策としては、効果があるが、例えば、筆圧等で複写された数字(金額)等が改ざんされた場合の対策が不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記の裏カーボン型感圧複写シートの複写された数字(金額)等が改ざん防止策として、例えば、裏カーボン用のカーボンインキとして、蛍光カーボンや赤外線不可視化カーボンなど裏カーボンに偽造防止用インキを用いたものがある。
【0007】
しかしながら、上記偽造防止用インキを用いた裏カーボン型感圧複写シートでは、複写された数字(金額)等が不可視タイプであるため、その真偽判定に専用のブラックライトや赤外線モニター等を必要とし、その場で容易に(即座に)真偽判定ができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、支持体の裏面の必要部分にカーボンインキを用いて裏カーボン層が印刷された上用紙と、筆圧等でその上用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる2枚が組合わされた、あるいは前記の裏カーボン層が施された上用紙と、少なくとも1枚の支持体の裏面の必要部
分にカーボンインキを用いて裏カーボン層が印刷された中用紙と、筆圧等でその中用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる多数枚が組合わされた裏カーボン型感圧複写シートにおいて、前記筆圧等の転写で複写された数字(金額)等の改ざん等による偽造の真偽判定が即座に視認可能な裏カーボン型感圧複写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、支持体の裏面の必要部分に裏カーボン層が印刷された上用紙と、筆圧等でその上用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる2枚が組合わされた、あるいは前記の裏カーボン層が施された上用紙と、少なくとも1枚の支持体の裏面の必要部分に裏カーボン層が印刷された中用紙と、筆圧等でその中用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる多数枚が組合わされた裏カーボン型感圧複写シートにおいて、前記上用紙あるいは上用紙および中用紙の裏面に印刷される裏カーボン層はパール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料を含有していることを特徴とする裏カーボン型感圧複写シートとしたものである。
【0010】
また、請求項2の発明では、前記パール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料
顔料の含有率は、前記裏カーボン層を形成する裏カーボンインキに対し20〜50重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の裏カーボン型感圧複写シートとしたものである。
【0011】
また、請求項3の発明では、前記下用紙の表面もしくは中用紙および下用紙の表面で、前記上用紙の裏面あるいは上用紙および中用紙の裏面の裏カーボン層と対峙する場所に濃色印刷層が施されていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項記載の裏カーボン型感圧複写シートとしたものである。
【0012】
また、請求項4の発明では、前記上用紙あるいは上用紙および中用紙の裏面の裏カーボン層上に発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層が施され、該マイクロカプセル組成物層に対峙する下用紙の表面あるいは中用紙および下用紙の表面の場所に、前記発色剤と接触したときに呈色する顕色剤層が施されていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項記載の裏カーボン型感圧複写シートとしたものである。
【0013】
上記でいう裏カーボンインキとは、顔料(色材等)と流動性油分とワックス類からなるインキを用い紙等支持体の裏面に裏カーボンを形成してカーボン紙とするインキのことで、比較的低熱で溶融するワックスを主体としたホットメルト型のインキでスポット印刷に適するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0015】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、支持体の裏面の必要部分に裏カーボン層が印刷された上用紙と、筆圧等でその上用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる2枚が組合わされた、あるいは前記の裏カーボン層が施された上用紙と、少なくとも1枚の支持体の裏面の必要部分に裏カーボン層が印刷された中用紙と、筆圧等でその中用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる多数枚が組合わされた裏カーボン型感圧複写シートにおいて、前記上用紙あるいは上用紙および中用紙の裏面に印刷される裏カーボン層にパール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料を含有させたものとすることによって、筆圧等で前記裏カーボン層が下用紙あるいは下用紙および中用紙の表面に転写された数字(金額)等が外光によるパール調もしくは偏光性の輝度感を有するようになり、よって数字(金額)等の改ざん等による偽造の真偽判定が即座に視認可能な裏カーボン型感
圧複写シートとすることができる。
【0016】
また、上記請求項2に係る発明によれば、前記パール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料の含有率を前記裏カーボン層を形成する裏カーボンインキに対し20〜50重量%の範囲とすることによって、転写された数字(金額)等に所望の外光による光学可変性(パール調もしくは偏光性の輝度感)の効果を有するようになる。この含有率が20重量%に満たないと外光による光学可変性(パール調もしくは偏光性の輝度感)の効果が薄くなり、50重量%を越えると光学可変性の効果はアップするが、裏カーボン層を形成する裏カーボンインキがこれら顔料を捉え切れなくなり、支持体である紙に対する顔料の付着性および転写(複写)適性が劣る(インキのチョーキング現象が起こる)ようになるので好ましくない。
【0017】
また、上記請求項3に係る発明によれば、前記下用紙の表面あるいは中用紙および下用紙の表面で、前記上用紙の裏面あるいは上用紙および中用紙の裏面の裏カーボン層と対峙する場所に濃色印刷層を施こしたものとすることによって、この濃色印刷層上に転写された数字(金額)等がパール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料の含有による光学可変性(パール調もしくは偏光性の輝度感)の効果がより向上し、すなわち濃色印刷層上に転写された数字(金額)等が浮かび上がったように見えるようになり、その結果複写された数字(金額)等の真偽判定が視認し易い裏カーボン型感圧複写シートとすることができる。
【0018】
また、上記請求項4に係る発明によれば、前記上用紙あるいは上用紙および中用紙の裏面の裏カーボン層上に発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層が施され、該マイクロカプセル組成物層に対峙する下用紙の表面あるいは中用紙および下用紙の表面の場所に、前記発色剤と接触したときに呈色する顕色剤層が施されているような構成とすることによって、筆圧等で前記裏カーボン層とともに発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層が下用紙あるいは中用紙および下用紙の表面に施されている顕色剤層に転写されると、マイクロカプセルが破壊されてその中の発色剤と顕色剤層との接触で発色し、転写された裏カーボン層でなる数字(金額)等が発色した顕色剤層上で外光によるパール調もしくは偏光性の輝度感の効果がより向上し、よって数字(金額)等の改ざん等による偽造の真偽判定が即座に視認可能な裏カーボン型感圧複写シートとすることができる。
【0019】
従って本発明は、領収書などに使用される感圧複写シートで、特に伝票用紙等支持体の裏面にワックス型カーボンインキを用いて裏カーボンとした裏カーボン型感圧複写伝票の如き用途において、優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
本発明の裏カーボン型感圧複写シートは、例えば、図1の側断面を表す模式図に示すように、支持体(5)の裏面の必要部分に裏カーボン層(6)が印刷された上用紙(12)と、筆圧等でその上用紙(12)の裏カーボン層(6)が転写される下用紙(16)とでなる2枚の一端が天糊(3)で接合された裏カーボン型感圧複写シート(1)、あるいは例えば図3の側断面を表す模式図に示すように、支持体(5)の裏面に裏カーボン層(6)が施された上用紙(12)と、1枚の支持体(5)の裏面の必要部分に裏カーボン層(6)が印刷された中用紙(14)と、筆圧等でその中用紙(14)の裏カーボン層(6)が転写される下用紙(16)とでなる多数枚(図面では3枚)の一端が天糊(8)で接合された裏カーボン型感圧複写シート(1)に関するもので、特にこれら裏カーボン層(6)に偽造防止策を施して、筆圧等で転写(複写)された数字(金額)などの改ざんを防止することを目的とした裏カーボン型感圧複写シート(1)に関するものである。
【0022】
そこで、上記請求項1に係る発明では、例えば、図1に示す上用紙(12)を構成する支持体(5)の裏面に印刷される裏カーボン層(6)、あるいは図3に示す中用紙(14)および上用紙(16)を構成する支持体(5)の裏面に印刷される裏カーボン層(6)はパール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料を含有していることを特徴とする裏カーボン型感圧複写シート(1)とするものである。
【0023】
また、上記請求項3に係る発明では、例えば、図1に示すように、2枚組の裏カーボン型感圧複写シート(1)において、下用紙(16)を構成する支持体(5)の表面に、上用紙(12)を構成する裏カーボン層(6)と対峙する場所に濃色印刷層(7)が施されていることを特徴とする裏カーボン型感圧複写シート(1)としたものである。
【0024】
また、上記請求項3に係る発明では、例えば、図3の側断面図に示すよに、3枚組の裏カーボン型感圧複写シート(1)において、1枚の中用紙(14)および下用紙(16)を構成する支持体(5)の表面に、上用紙(12)および1枚の中用紙(14)を構成する裏カーボン層(6)と対峙する場所に濃色印刷層(7)が施されていることを特徴とする裏カーボン型感圧複写シート(1)としたものである。
【0025】
また、図3に示す支持体(5)の表面には濃色印刷層(7)と裏面には裏カーボン層(6)が形成されている中用紙(14)を2枚とする4枚組の裏カーボン型感圧複写シート(図示せず)とすることもでき、さらにまた、これと同様の構成の中用紙(14)を3枚とする5枚組の裏カーボン型感圧複写シート(図示せず)とすることもできる。
【0026】
このように、濃色印刷層(7)を施すことによって、例えば、図2(a)の側断面図に示すように、上用紙(12)を構成する支持体(5)上からの筆圧等により、上用紙(12)を構成する裏カーボン層(6)が下用紙(16)を構成する濃色印刷層(7)上に転写され、この転写された裏カーボン層(6)でなる数字(金額)等が外光によるパール調もしくは偏光性の輝度感を有するようになる。すなわち図2(b)の平面図に示すように、下用紙(16)を構成する支持体(5)上の金座(30)に相当する部分の網点でなる濃色印刷層(7a)上に転写された裏カーボン層(6)の数字(金額)等が浮かび上がったように見えるようになる。
【0027】
また、例えば、図2(c)の平面図に示すように、下用紙(16)を構成する支持体(5)上の金座(30)に相当する部分に細紋でなる濃色印刷層(7b)とすることもできる。
【0028】
上記網点でなる濃色印刷層(7a)および細紋でなる濃色印刷層(7b)のPCS値は、Aフィルターで0.7以上とした金座(30)とすると、パール調や偏光性の輝度感がより向上するようになる。
【0029】
また、図示しないが、例えば、PCS値がAフィルターで0.7以上の万線でなる濃色印刷層、あるいはAフィルターで0.5以上のベタ印刷で濃色印刷層を形成することもできる。
【0030】
上記PCS値とは、Print C0ntrast Signalの略で、コントラストを(偽造防止用の可変印字(20)の)画線と(ベース)被印刷体の相対反射率で表し、次式で計算される濃度であって、
PCS=(被印刷体の反射率)−(画線の反射率)/(被印刷体の反射率)
で表される。
【0031】
上記濃色印刷層(7)を、例えば、図3に示す3枚組の裏カーボン型感圧複写シート(1)に適用することもでき、この3枚組の裏カーボン型感圧複写シート(1)では、中用紙(14)および下用紙(16)を構成する支持体(5)の表面で、上用紙(12)を構成する支持体(5)の裏面の裏カーボン層(6)と対峙する場所に施こしたものとすることもでき、この場合の筆圧等で転写された裏カーボン層(6)の数字(金額)等は、図2(a)に示す下用紙(16)および図示しないが中用紙の表面がパール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料の含有による光学可変性(パール調もしくは偏光性の輝度感)を示し、すなわち濃色印刷層(7)上に転写された裏カーボン層(6)の数字(金額)等が浮かび上がったように見えるようになり、その結果複写された数字(金額)等の真偽判定がより視認し易い裏カーボン型感圧複写シート(1)とすることができる。
【0032】
さらにまた、上記請求項4に係る発明では、例えば、図4の側断面を表す模式図に示すように、上用紙(12)を構成する支持体(5)の裏面の裏カーボン層(6)上に発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層(8)が施され、このマイクロカプセル組成物層(8)に対峙する下用紙(16)を構成する支持体(5)の表面の場所に、このマイクロカプセル組成物層(8)内の発色剤と接触したときに呈色する顕色剤層(9)が施されていることを特徴とする2枚組の裏カーボン型感圧複写シート(1)とするものである。
【0033】
また、上記請求項4に係る発明では、例えば、図6の側断面を表す模式図に示すように、上用紙(12)を構成する支持体(5)および中用紙(14)を構成する支持体(5)の裏面の裏カーボン層(6)上に発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層(8)が施され、このマイクロカプセル組成物層(8)に対峙する中用紙(14)および下用紙(16)を構成する支持体(5)の表面の場所に、マイクロカプセル組成物層(8)中の発色剤と接触したときに呈色する顕色剤層(9)が施されていることを特徴とする3枚組の裏カーボン型感圧複写シート(1)とすることもできる。
【0034】
さらにまた、図6に示す支持体(5)の表面には顕色剤層(9)と裏面には裏カーボン層(6)上に発色剤が内包しているマイクロカプセル組成物層(8)が施されている中用紙(14)を2枚とする4枚組の裏カーボン型感圧複写シート(図示せず)とすることもでき、また同様の構成でなる中用紙(14)を3枚とする5枚組の裏カーボン型感圧複写シート(図示せず)とすることもできる。
【0035】
以上のように、発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層(8)およびこの発色剤と接触したときに呈色する顕色剤層(9)を施すことによって、例えば図5(a)の側断面図に示すように、上用紙(12)を構成する支持体(5)上からの筆圧等で、その裏面に形成されている裏カーボン層(6)とともに発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層(8)が下用紙(16)を構成する支持体(5)の表面に施されている顕色剤層(9)上に転写されると、マイクロカプセルが破壊されてその中の発色剤と顕色剤層(9)との接触で発色し、転写された裏カーボン層(6)でなる数字(金額)等が発色した顕色剤層(9a)上に形成され、図5(b)の正面図に示すように、発色した顕色剤層(9a)上の裏カーボン層(6)は、外光によるパール調もしくは偏光性の輝度感の効果がより向上したものとなり、よって転写された裏カーボン層(6)でなる数字(金額)等の改ざん等による偽造の真偽判定が即座に視認可能な2枚組の裏カーボン型感圧複写シート(1)とすることができる。
【0036】
また、例えば、図6に示す3枚組の裏カーボン型感圧複写シート(1)では、中用紙(14)および下用紙(16)を構成する支持体(5)の表面で、上用紙(12)を構成する支持体(5)の裏面のマイクロカプセル組成物層(8)と対峙する場所に顕色剤層(9)を施こしたものに、図示しないが筆圧等で裏カーボン層とともに発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層が中用紙および下用紙の表面に施されている顕色剤層に転写される
と、マイクロカプセルが破壊されてその中の発色剤と顕色剤層との接触で発色し、転写された裏カーボン層でなる数字(金額)等が発色した顕色剤層上で外光によるパール調もしくは偏光性の輝度感の効果がより向上する3枚組の裏カーボン型感圧複写シートとすることもできる。
【0037】
以下に本発明の裏カーボン型感圧複写シート(1)を構成する各層の材料やその形成方法などについて説明する。
【0038】
まず、本発明の裏カーボン型感圧複写シート(1)を構成する上用紙(12)、中用紙(14)、下用紙(16)の支持体(5)としては、坪量40g/m2 の原紙が標準として使用されるが、多数枚組の場合の支持体(5)としては、坪量30g/m2 、35g/m2 の極薄物の原紙が使用される。
【0039】
また、裏カーボン層(6)としては、油とワックスでなるメジウムに顔料が分散されている裏カーボンインキで形成され、その顔料としては、上記請求項2に係る発明では、パール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料が20〜50重量%とし、これに対しメジウムとして、鉱物油、グリース、植物性不乾性油、石油系ワセリンなどの油が20〜40重量%とカルバナワックス、パラフィン、合成ワックス、モンタワックス、鉱物ワックスなどの40〜110℃の融点をもつワックス類が30〜70重量%とでなっている。なお、白色度や不透明度を多角するために、数%の炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタンなどの内てん料を添加することもできる。
【0040】
上記の裏カーボンインキを構成するパール顔料としては、透明であること、屈折率が大きいこと、表面が平滑であることがきらきらとしたパール調の光沢を発するための条件であり、これらパール顔料が含有しているインキで印刷した場合、例えば図9の模式図に示すように、パール顔料(32)がインキ中に平行に配列していると、入射光(34)は各パール顔料(34)粒子から一定方向に規則的に反射する。この規則的反射光(36)がパール調光沢であり、パール顔料(32)の屈折率、粒径、形状、厚さ、表面の平滑性などにより、様々なパール光沢感が表現される。
【0041】
上記パール顔料として、例えば、天然パールエッセンス、塩基塩基性炭酸鉛、酸塩化ビスマス、金属酸化物被覆雲母などが挙げられ、その天然パールエッセンスは、無毒性で、屈折率は1.85とやや小さく、粒径は30μm以下でソフトで滑らかなパール光沢が得られるものとして使用される。
【0042】
また、塩基塩基性炭酸鉛は、パール顔料中最も理想的な形状を持っているもので、屈折率は2.0で、粒径は5〜20μmと小さく、さらに表面が平滑なのでシルバー色から干渉色まで得られる顔料として好適に使用できる。
【0043】
また、酸塩化ビスマスは、無毒性で、その結晶形状は不規則型と角のとれた正方形のものがあり、屈折率は2.15であるが平滑性にやや欠ける。粒径は5〜40μm、厚さは0.15〜0.20μmでソフトなパール調光沢が得られる。
【0044】
さらにまた、金属酸化物被覆雲母は、無毒性で天然産白雲母を微粉砕したものを用いるのでやや平滑性に欠けるが、屈折率が高く、粒径も5〜150μmまで広い範囲で選択でき、ソフトなパール調光沢からメタリック調までいろいろ変えることができる。
【0045】
また、上記の裏カーボンインキを構成する偏光性コレステリック高分子液晶顔料としては、キラル相を有する三次元架橋性液晶物質を配向し、三次元的に架橋し、所望の粒度に粉砕して得られた顔料で、このキラル相を有する液晶物質はネマチック、スメクチック又
はディスコチック構造にキラル物質を加えることで製造できる。
【0046】
上記偏光性コレステリック高分子液晶顔料の製造は、例えば、3次元架橋性液晶ポリオルガノシロキサンと光重合開始剤の混合溶液を、ガラス支持体上に加温しながらドクターを用いて剪断力を加えながら塗布し、液晶分子を配向させ、次いで、液晶層に紫外線を照射し、三次元架橋させる。三次元架橋した液晶層を支持体から剥離し、万能ミル等で粉砕し、フレーク状の顔料を得る。該顔料の大きさは5μm〜5mmの粒度を有し、1〜100μm、好ましくは5〜50μmの厚さを有するものである。
【0047】
上記のような構成の裏カーボンインキを使用して、グラビア印刷方式あるいはアニロックスローラーを介してインキを版に供給するフレキソ印刷方式などでスポット印刷され、裏カーボン層(6)とすることができる。
【0048】
上記裏カーボン層(6)の形成をさらに詳しく説明すると、まずグラビア印刷方式では、例えば、図7の側面図に示すように、90℃で粘度0.2〜1.0ポイズのインキ(20)を100℃に加熱してインキパン(26)内に供給し、100℃のグラビア版胴(22)のインキを50℃の圧胴(23)上を走行する支持体(5)に転移させ、冷却胴(24)で冷却されて支持体(5)に固着され裏カーボン層(6)が形成される。
【0049】
また、フレキソ印刷方式では、例えば、図8の側面図に示すように、90℃で粘度0.6〜20ポイズのインキ(20)を100℃に加熱してインキパン(26)内に供給し、そのインキを100℃のアニロックスローラー(42)と80℃の付ローラー(43)を介して70℃のフレキソ版胴(44)に転移させ、さらに60℃の圧胴(45)上を走行する支持体(5)に転移させ、冷却胴(46)で冷却されて支持体(5)に固着され裏カーボン層(6)が形成される。
【0050】
また、本発明の裏カーボン型感圧複写シート(1)を構成する濃色印刷層(7)としては、黒色あるいは茶色、紺色などでなるオフセットインキやグラビアインキで形成され、例えば、図2(b)に示すように、PCS値0.7以上で50〜70%程度の網点でなる濃色印刷層(7a)としてもよく、図2(c)に示すように、PCS値0.7以上の細紋でなる濃色印刷層(7b)とすることもできる。さらには図示しないがPCS値0.5以上のベタ(印刷面に濃淡の差や白く抜けた部分がなく、印刷インキで完全に覆われている部分)印刷でなる濃色印刷層とすることもできる。
【0051】
また、本発明の裏カーボン型感圧複写シート(1)の一部を構成するマイクロカプセル組成物層(8)は、発色剤としてのクリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトンなどのトリフェニルメタン系ラクトン化合物、ベンゾイルロイコメチレンブルーなどのフェノチアジン系ラクトン化合物であるロイコ染料が固体ゼラチン皮膜で包み込まれたマイクロカプセル組成物(粒子)がアクリル樹脂やウレタン樹脂、ポリエステル樹脂でなるインキビヒクルに分散されているマイクロカプセルインキを用い、グラビア印刷方式やスクリーン印刷方式でマイクロカプセル組成物層(8)を得ることができる。
【0052】
また、本発明の裏カーボン型感圧複写シート(1)の一部を構成する顕色剤層(9)としては、ロイコ染料を発色させる顕色剤の塗布で得られ、その顕色剤には、活性クレーなどの無機固体酸と酸性を示すフェノール樹脂やマレイン酸などがあり、これら顕色剤と、オイルの吸収を良くする炭酸カルシウムの如く顔料と、紙(支持体)に接着させるバインダーを水に分散させて塗布液とし、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式で顕色剤層(9)とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の裏カーボン型感圧複写シートの一実施の形態を側断面で模式的に表した説明図である。
【図2】本発明の裏カーボン型感圧複写シートの一実施の形態を示すもので、(a)は、転写した時の側断面図であり、(b)は、転写された下用紙の一事例の平面図であり、(b)は、転写された下用紙の他の事例の平面図である。
【図3】本発明の裏カーボン型感圧複写シートの他の一実施の形態を側断面で模式的に表した説明図である。
【図4】本発明の裏カーボン型感圧複写シートの他の一実施の形態を側断面で模式的に表した説明図である。
【図5】本発明の裏カーボン型感圧複写シートの他の一実施の形態を示すもので、(a)は、転写した時の側断面図であり、(b)は、転写された下用紙の一事例の平面図である。
【図6】本発明の裏カーボン型感圧複写シートの他の一実施の形態を側断面で模式的に表した説明図である。
【図7】本発明の裏カーボン型感圧複写シートを構成する裏カーボン層の形成法の一事例を側面で表した説明図である。
【図8】本発明の裏カーボン型感圧複写シートを構成する裏カーボン層の形成法の他の一事例を側面で表した説明図である。
【図9】本発明の裏カーボン型感圧複写シートを構成する裏カーボン層に含有するパールインキ層の光学的特性を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1‥‥裏カーボン型感圧複写シート
5‥‥支持体
6‥‥裏カーボン層
7‥‥濃色印刷層
7a‥‥網点でなる濃色印刷層
7b‥‥細紋でなる濃色印刷層
8‥‥マイクロカプセル組成物層
9‥‥顕色剤層
9a‥‥発色層
12‥‥上用紙
14‥‥中用紙
16‥‥下用紙
20‥‥裏カーボンインキ
22‥‥グラビア版胴
23‥‥圧胴
24‥‥冷却胴
26‥‥インキパン
27‥‥ドクターブレード
30‥‥金座
32‥‥パール顔料
24‥‥入射光
26‥‥反射光
42‥‥アニロックスローラー
43‥‥付ローラー
44‥‥フレキソ版胴
45‥‥フレキソ圧胴
46‥‥冷却胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の裏面の必要部分に裏カーボン層が印刷された上用紙と、筆圧等でその上用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる2枚が組合わされた、あるいは前記の裏カーボン層が施された上用紙と、少なくとも1枚の支持体の裏面の必要部分に裏カーボン層が印刷された中用紙と、筆圧等でその中用紙の裏カーボン層が転写される下用紙とでなる多数枚が組合わされた裏カーボン型感圧複写シートにおいて、前記上用紙あるいは上用紙および中用紙の裏面に印刷される裏カーボン層はパール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料を含有していることを特徴とする裏カーボン型感圧複写シート。
【請求項2】
前記パール顔料もしくは偏光性コレステリック高分子液晶顔料顔料の含有率は、前記裏カー
ボン層を形成する裏カーボンインキに対し20〜50重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の裏カーボン型感圧複写シート。
【請求項3】
前記下用紙の表面あるいは中用紙および下用紙の表面で、前記上用紙の裏面あるいは上用紙および中用紙の裏面の裏カーボン層と対峙する場所に濃色印刷層が施されていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項記載の裏カーボン型感圧複写シート。
【請求項4】
前記上用紙あるいは上用紙および中用紙の裏面の裏カーボン層上に発色剤を内包したマイクロカプセル組成物層が施され、該マイクロカプセル組成物層に対峙する下用紙の表面あるいは中用紙および下用紙の表面の場所に、前記発色剤と接触したときに呈色する顕色剤層が施されていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項記載の裏カーボン型感圧複写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−62217(P2006−62217A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247867(P2004−247867)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】