説明

裏地用織物

【課題】滑り性、ドレープ性、ソフト感に優れ、裁断作業が容易で、しかも衣料に仕立てた場合に、人の動作に追従して良好な着心地が得られる、優れた裏地用織物を提供する。
【解決手段】衣料の裏地に用いられる織物であって、経糸および緯糸のそれぞれに、沸水30分処理後の捲縮率40〜50%のサイドバイサイド型捲縮糸が70重量%以上用いられており、織物の経方向伸度が8〜12%、同じく緯方向伸度が10〜20%で、緯方向伸度が経方向伸度の1.2〜1.8倍に設定されているとともに、織物表面の経緯平均動摩擦係数(μ)が0.35〜0.50に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料の裏地として用いるのに最適な裏地用織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣料の裏地に用いられる織物としては、表地への追従性を考慮して、従来から、ポリエステルやポリアミドからなるウーリー加工糸を経緯に用いたものが多く出回っているが、これらのものは、ウーリー加工糸の一本一本にランダムな向きでクリンプ形状が付与されているため、生地に凹凸が生じ、滑りが悪いという問題がある。
【0003】
そこで、最近、ウーリー加工糸に代えて、いわゆるサイドバイサイド型捲縮糸を用いたものがいくつか提案されている(例えば、特許文献1等参照)。また、裏地ではないが、沸水30分処理後の弾性率が70%以上でかつ捲縮率が50%以上の、ポリエステル系繊維からなるサイドバイサイド型捲縮糸を用いた伸縮性織物(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【特許文献1】特許3800922号公報
【特許文献2】特許2953539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記サイドバイサイド型捲縮糸を用いたものは、ウーリー加工糸を用いたものに比べると滑りやすくなっているものの、伸縮性の設定によっては細かいシボが生じて滑りにくくなる場合があり、その改良が求められている。また、ドレープ性に優れ、ふくらみのあるソフトな裏地が望まれているが、そのような手触りには到達していないのが実情である。さらに、従来の裏地は、経緯の伸縮性のバランスが特に考慮されていないため、体を左右にねじる動作等に追従しにくいという問題や、伸縮性が高すぎると、製造時に、生地が伸びて裁断位置が定まらず、作業性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、滑り性、ドレープ性、ソフト感に優れ、裁断作業が容易で、しかも衣料に仕立てた場合に、人の動作に追従して良好な着心地が得られる、優れた裏地用織物の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、衣料の裏地に用いられる織物であって、経糸および緯糸のそれぞれに、沸水30分処理後の捲縮率40〜50%のサイドバイサイド型捲縮糸が70重量%以上用いられており、織物の経方向伸度が8〜12%、同じく緯方向伸度が10〜20%で、緯方向伸度が経方向伸度の1.2〜1.8倍に設定されているとともに、織物表面の経緯平均動摩擦係数(μ)が0.35〜0.50に設定されている裏地用織物を第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記サイドバイサイド型捲縮糸が、ポリエチレンテレフタレートからなるものである裏地用織物を第2の要旨とし、上記織物のドレープ係数が0.40以下に設定されている裏地用織物を第3の要旨とする。
【0008】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記経糸として無撚のものが用いられ、緯糸として300〜1500T/mの撚りを与えたものが用いられている裏地用織物を第4の要旨とする。
【0009】
なお、本発明において、「沸水30分処理後の捲縮率」、「伸度」、「経緯平均動摩擦係数」、「ドレープ係数」とは、それぞれ以下に述べる方法に従って得られる値である。
【0010】
〔沸水30分処理後の捲縮率〕
検尺機を用いて5回かせ取りした潜在捲縮性サイドバイサイド型複合糸を二重にして0.0015mN/dtexの荷重W1 をかけスタンドに吊り、さらに0.88mN/dtexの荷重W2 をかけて長さ(a)を測定する。そして、上記荷重W1 をかけたまま30分間放置し、ついで、この状態を維持したまま、沸水中に入れて30分間処理する。その後、30分間風乾し、0.018mN/dtexの荷重W3 をかけ、長さ(b)を測定する。つぎに、上記荷重W3 を外した後、0.44mN/dtexの荷重W4 をかけて、その長さ(c)を測定する。そして、以下の式(1)によって、沸水30分処理後の捲縮率を算出する。
【0011】
【数1】

【0012】
〔伸度〕
カトーテック社製のKES−FB1(商品名)を用いて、20cm×20cmの試料を、引張速度0.2mm/秒で、緯方向に伸長したときの、4.9N/cm応力下での伸び(A:cm)より、下記の式(2)にしたがって算出した。
【0013】
【数2】

【0014】
〔経緯平均動摩擦係数(μ)〕
カトーテック社製のKES−SE(商品名)を用いて、摩擦面寸法が1cm×1cmで重量が0.49Nの摩擦子に、カナキン3号精錬上がりの綿布を取り付け、5cm/分の速度で、固定した試料の表面上を滑らせ、そのときの摩擦抵抗力から、下記の式(3)により動摩擦係数を求めた。そして、試料(裏地用織物)の経糸方向に滑らせたときの動摩擦係数と、緯糸方向に滑らせたときの動摩擦係数の平均値を、試料の経緯平均動摩擦係数(μ)とした。
【0015】
【数3】

【0016】
〔ドレープ係数〕
JIS L 1096.6.19.7法(−1999−G法)に準じて測定する。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、本発明の裏地用織物は、経糸および緯糸のそれぞれに、沸水30分処理後の捲縮率40〜50%のサイドバイサイド型捲縮糸を用い、織物の経方向伸度と緯方向伸度を特定の範囲に限定するとともに、織物表面の経緯平均動摩擦係数が特定の範囲となるよう設定したものである。このものは、裏地に最適な伸縮性と滑らかさを兼ね備えているため、衣料の裏地として用いると、人の動作に追従して適度に伸縮し、非常に優れた着用感となる。しかも、ドレープ性に優れ、ふくらみのあるソフトな手触りを有するため、肌への違和感がない。さらに、従来のストレッチ裏地とは異なり、その伸縮性に一定の制限が与えられているため、例えば延反台に幾重にも重ねて裁断する場合、従来は、織物が伸びて正確に裁断することが容易でなかったが、本発明の裏地用織物によれば、そのような不都合は生じない。また、従来のストレッチ裏地は、長期間使用すると経方向に生地が伸びて表地の外にはみ出すという問題を有していたが、そのような問題も生じない、という利点を有する。
【0018】
なお、本発明の裏地用織物のなかでも、特に、上記サイドバイサイド型捲縮糸が、ポリエチレンテレフタレートからなるものは、とりわけ耐熱性に優れたものとなる。
【0019】
また、同様に、上記織物のドレープ係数が0.40以下に設定されているものは、とりわけ柔らかくて肌触りのよいものとなる。
【0020】
さらに、上記経糸として無撚のものを用い、緯糸として300〜1500T/mの撚りを与えたものを用いたものは、とりわけ上記ドレープ性にも表面タッチにも優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0022】
まず、本発明の裏地用織物は、経糸および緯糸のそれぞれに、サイドバイサイド型捲縮糸を用いなければならない。
【0023】
上記サイドバイサイド型捲縮糸とは、収縮率の異なる2種類のポリマーを貼り合わせて得られる糸条で、沸水処理等によって生じる2成分の収縮差により、繊維にコイル状等のクリンプを発生させて捲縮糸としたものである。
【0024】
そして、本発明に用いるサイドバイサイド型捲縮糸は、沸水30分処理後の捲縮率が、40〜50%でなければならず、なかでも45〜48%であることが好適である。すなわち、上記捲縮率が40%未満では、捲縮力が弱く、縮もうとする力が不足することから、無理に縮ませようとすると、得られる織物に凹凸が生じやすく、伸度も低くなるため、裏地としての実用性に乏しいものとなる。逆に50%を超えると、伸度が高すぎて、生地の安定感が悪く、裁断作業性が悪くなる。しかも、捲縮率が50%を超えるものは、捲縮力が強く、縮もうとする力が強いため、伸度を低く抑えることが難しく、「経方向伸度8〜12%、緯方向伸度10〜20%」という本発明の設定条件となるように織物を仕上げることが困難となる。
【0025】
また、上記サイドバイサイド型捲縮糸を構成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等、繊維形成性を有するポリエステルを用いることが好適である。なかでも、耐熱性、取り扱い性等の理由から、PETを用いることが、特に好ましい。
【0026】
さらに、サイドバイサイド型捲縮糸に用いられる低粘度ポリマーとしては、ホモポリエステルがあげられ、高粘度ポリマーとしては、ビスフェノールA誘導体、イソフタール酸、スルフォン酸ナトリウム等の共重合成分とホモポリエステルとを共重合してなる共重合ポリエステルがあげられる。
【0027】
そして、上記サイドバイサイド型捲縮糸は、生糸の状態で集束されてマルチフィラメントにされ、経糸および緯糸として用いられる。経糸および緯糸として用いるときの繊度は、30〜100dtex/12〜100fに設定することが好適である。上記範囲よりも糸が細いと、裏地としての強度が弱くなるおそれがあり、逆に、上記範囲よりも糸が太いと、着用感や表地への追従性が悪くなるおそれがあるからである。
【0028】
また、上記サイドバイサイド型捲縮糸は、無撚のものであっても、撚りを与えたものであってもよいが、撚りを与える場合は、300〜1500T/mの実撚を施すことが好適である。すなわち、上記の範囲で実撚を入れることによって、糸の締まりをよくしてドレープ性を高めるとともに、優れた表面タッチを得ることができる。そして、撚数が300より小さいと、ドレープ感があまり得られなくなるおそれがあり、撚数が1500より大きいと、ドレープ感というよりじゃりじゃりした感じになるおそれがあり好ましくない。なお、実撚を施したサイドバイサイド型捲縮糸を緯糸に用い、無撚のサイドバイサイド型捲縮糸を経糸に用いることが、経方向および緯方向に目よれしにくくなり、好適である。
【0029】
本発明の裏地用織物は、上記サイドバイサイド型捲縮糸を、経糸および緯糸のそれぞれに用いて製織することにより得ることができる。このとき、上記サイドバイサイド型捲縮糸は、経糸、緯糸に対し、それぞれ70重量%以上用いなければならない。すなわち、70重量%未満では、上記サイドバイサイド型捲縮糸による効果が得られないからである。
【0030】
なお、上記サイドバイサイド型捲縮糸とともに、経糸および緯糸のそれぞれ30重量%未満の割合で用いることのできる糸は、特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル糸のなかでも、単糸繊度が0.5〜2.0dtex程度の細目のフィラメント糸を用いることが、本発明の特徴的効果が損なわれず、好適である。
【0031】
上記織物の織組織は、特に限定するものではなく、例えば、平織、綾織、朱子織等があげられる。なかでも、薄さ、軽さの点で、平織が好ましく、きれいな仕上がりの点で、綾織、特に1/2〜2/2ツイルの織組織にすることが好適である。
【0032】
そして、本発明の裏地用織物を得るための、経糸・緯糸の打ち込み本数は、通常、経が80〜200本/2.54cm、緯が70〜150本/2.54cmに設定することが好適である。すなわち、経糸・緯糸の打ち込み本数が、上記の範囲から外れると、好ましいドレープ性と滑り性が得られにくくなるからである。
【0033】
また、本発明の裏地用織物のカバーファクター(CF)は、ソフトな風合いおよび軽さの点から、経方向のCF1 が600〜1500、緯方向のCF2 が500〜1000、トータルCFが1100〜2500となるように設定することが好適である。なかでも、経方向のCF1 が800〜1300、緯方向のCF2 が700〜900、トータルCFが1500〜2100となるように設定することが好適である。
【0034】
なお、上記経方向のCF1 および緯方向のCF2 は、下記の式(4)によって求めることができ、上記トータルCFは、下記の式(5)によって求めることができる。
【0035】
【数4】

【0036】
【数5】

【0037】
また、本発明の裏地用織物は、織物の経方向伸度が8〜12%、同じく緯方向伸度が10〜20%でなければならない。すなわち、上記伸度が、この範囲より小さいと、裏地として用いた場合に伸びにくく、表地への追従性が悪く着用感も悪くなるおそれがあるからである。また、上記伸度が、この範囲より大きいと、伸びすぎて体へのフィット感が得られにくいからである。そして、上記緯方向伸度は、経方向伸度の1.2〜1.8倍に設定されていなければならない。経方向に対し緯方向での伸度を上記の範囲に設定すると、体の動きに沿った伸縮性となり、優れた着用感が得られるからである。
【0038】
さらに、本発明の裏地用織物は、前記経緯平均動摩擦係数(μ)が、0.35〜0.50に設定されていなければならない。すなわち、経緯平均動摩擦係数(μ)が0.35未満のものは、捲縮率を制限せざるを得ず伸縮性に乏しくなり、逆に、動摩擦係数(μ)が0.50を超えるものは、表面に凹凸があって滑らかさがなく、着用感が悪くなるからである。
【0039】
このようにして得られる本発明の裏地用織物は、経糸および緯糸として、沸水30分処理後の捲縮率40〜50%のサイドバイサイド型捲縮糸が用いられ、しかも、織物の経方向伸度と緯方向伸度が特定の範囲に限定されているとともに、織物表面の平均動摩擦係数(μ)が特定の範囲となるよう設定されている。したがって、このものは、裏地に最適な伸縮性と滑らかを兼ね備えており、衣料の裏地として用いると、人の動作に追従して適度に伸縮し、非常に優れた着用感となる。しかも、ドレープ性に優れ、ふくらみのあるソフトな手触りを有するため、肌への違和感がない。さらに、従来のストレッチ裏地とは異なり、その伸縮性に一定の制限が与えられているため、例えば延反台に幾重にも重ねて裁断する場合、従来は、織物が伸びて正確に裁断することが容易でなかったが、本発明の裏地用織物によれば、そのような不都合は生じない。また、従来のストレッチ裏地は、長期間使用すると経方向に生地が延びて表地の外にはみ出すという問題を有していたが、そのような問題も生じない。
【0040】
なお、本発明の裏地用織物において、前記ドレープ係数が0.40以下となるよう設定したものは、とりわけ柔らかくて肌触りのよいものとなる。
【実施例】
【0041】
つぎに、本発明の実施例と比較例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
<糸の準備>
サイドバイサイド型捲縮糸を得るための第1成分として、ビスフェノールA誘導体とイソフタール酸とホモポリエステルとを、5:5:90のモル比で共重合させてなる共重合ポリエステル(固有粘度0.686)を準備した。また、第2成分として、ホモポリエステル(固有粘度0.470)を準備した。
【0043】
<紡糸>
そして、下記の条件で溶融紡糸することにより、上記異なる2つの成分が1:1の断面積割合で貼り合わされた、サイドバイサイド型フィラメントからなる、56dtex/24fのマルチフィラメントを得た。このものの沸水30分処理後の捲縮率は47%であった。また、後記の方法に従って得られる沸水30分処理後の弾性率は68%であった。
<紡糸条件>
口金温度 :295℃
第1ゴデッドローラ:80℃×1500m/分
第2ゴデッドローラ:150℃×4000m/分
【0044】
〔沸水30分処理後の弾性率〕
検尺機を用いて5回かせ取りした潜在捲縮性サイドバイサイド型複合糸を二重にして0.0015mN/dtexの荷重W1 をかけスタンドに吊り、さらに0.88mN/dtexの荷重W2 をかけて長さ(a)を測定する。そして、上記荷重W1 をかけたまま30分間放置し、ついで、この状態を維持したまま、沸水中に入れて30分間処理する。その後、30分間風乾し、0.018mN/dtexの荷重W3 をかけ、長さ(b)を測定する。つぎに、上記荷重W3 を外した後、0.44mN/dtexの荷重W4 をかけて、その長さ(c)を測定する。さらに、上記荷重W4 を外し、再び0.018mN/dtexの荷重W3 をかけ、その長さ(d)を測定する。そして、以下の式(6)によって、沸水30分処理後の弾性率を算出する。
【0045】
【数6】

【0046】
<製織>
つぎに、上記サイドバイサイド型捲縮糸を撚りを施さないまま経糸および緯糸に用い、ウォータージェット製織機を用い、2/1ツイル組織に製織して生機を得た。製織条件は、下記のとおりである。
<製織条件>
生機幅 :156cm
生機密度 :経139本/2.54cm、緯90本/2.54cm
【0047】
<加工>
つぎに、得られた生機を解反し、60℃、85℃、95℃、30℃の4槽のオープンソーパー型精練機を通した後、130℃にて乾燥した。ついで、190℃で30秒ヒートセットし、減量率6%で減量加工を施した後、130℃で40分間、液流染色した。そして、ファイナルセット(180℃×30秒)を施すことにより、裏地用織物を得た。このものの目付は79g/cm2 、厚みは0.23mmであった。また、このものの仕上形態は、下記のとおりであった。
<仕上形態>
仕上幅 :123cm
仕上密度 :経176本/2.54cm、緯112本/2.54cm
【0048】
〔比較例1〕
経糸に、56dtex/24fのレギュラーポリエステルマルチフィラメント(セミダル、丸断面)を用い、製織条件を下記のようにする以外は、実施例1と同様にして、裏地用織物を得た。このものの仕上形態は、下記のとおりであった。
<製織条件>
生機幅 :161cm
生機密度 :経141本/2.54cm、緯96本/2.54cm
<仕上形態>
仕上幅 :123cm
仕上密度 :経185本/2.54cm、緯100本/2.54cm
【0049】
〔比較例2〕
84dtex/36fのポリエステル未延伸糸(セミダル、丸断面)を用い、フリクション仮撚し、56dtex/36fの仮撚加工糸(伸縮復元率:35%)を得た。そして、この仮撚加工糸を経緯に用いて織組織を平織とし、製織条件を下記のようにする以外は、実施例1と同様にして、裏地用織物を得た。このものの仕上形態は、下記のとおりであった。
<製織条件>
生機幅 :155cm
生機密度 :経82本/2.54cm、緯96本/2.54cm
<仕上形態>
仕上幅 :123cm
仕上密度 :経104本/2.54cm、緯104本/2.54cm
【0050】
〔比較例3〕
比較例2で用いた仮撚加工糸を経緯に用い、製織条件を下記のようにする以外は、実施例1と同様にして、裏地用織物を得た。このものの仕上形態は、下記のとおりであった。
<製織条件>
生機幅 :155cm
生機密度 :経142本/2.54cm、緯95本/2.54cm
<仕上形態>
仕上幅 :123cm
仕上密度 :経179本/2.54cm、緯109本/2.54cm
【0051】
〔実施例2〕
仕上形態を下記のようにする以外は、実施例1と同様にして、裏地用織物を得た。このものの目付は74g/cm2 、厚みは0.21mmであった。
<仕上形態>
仕上幅 :125cm
仕上密度 :経173本/2.54cm、緯100本/2.54cm
【0052】
〔実施例3〕
仕上形態を下記のようにする以外は、実施例1と同様にして、裏地用織物を得た。このものの目付は84g/cm2 、厚みは0.27mmであった。
<仕上形態>
仕上幅 :117cm
仕上密度 :経185本/2.54cm、緯114本/2.54cm
【0053】
〔比較例4〜6〕
後記の表1に示すような経緯の伸度となるよう仕上げ形態を調整する以外は、実施例1と同様にして、裏地用織物を得た。
【0054】
〔実施例4〕
実施例1で用いたサイドバイサイド型捲縮糸を無撚のまま経糸に用い、前記サイドバイサイド型捲縮糸をS方向に1000T/m実撚を施した糸を緯糸として用いた。それ以外は実施例1と同様にして、裏地用織物を得た。このものの目付は80g/cm2 、厚みは0.21mmであった。また、このものの仕上形態は、下記のとおりであった。
仕上幅 :121cm
仕上密度 :経179本/2.54cm、緯112本/2.54cm
【0055】
〔実施例5〕
織組織を平織とし、製織条件を下記のとおりとする以外は、実施例1と同様にして、裏地用織物を得た。このものの目付は69g/cm2 、厚みは0.15mmであった。また、このものの仕上形態は、下記のとおりであった。
<製織条件>
生機幅 :157cm
生機密度 :経98本/2.54cm、緯85本/2.54cm
<仕上形態>
仕上幅 :123cm
仕上密度 :経125本/2.54cm、緯96本/2.54cm
【0056】
〔実施例6〕
緯糸として、S方向に1600T/mの実撚を施したサイドバイサイド型捲縮糸を用いた。それ以外は、実施例4と同様にして、裏地用織物を得た。このものの目付は82g/cm2 、厚みは0.22mmであった。
【0057】
〔比較例7〕
沸水30分処理後の捲縮率が69%、弾性率が80%のポリエステル系サイドバイサイド型捲縮糸を集束した56dtex/12fのマルチフィラメントを経糸および緯糸に用いて、経糸密度110本/2.54cm、緯糸密度80本/2.54cmのタフタを製織した。そして、実施例1と同様の加工を施して染色加工を行うことにより、裏地用織物を得た。
【0058】
得られた各実施例品および比較例品である裏地用織物の経伸度、緯伸度、ドレープ係数を測定し、その結果を後記の表1〜表4にまとめて示した。また、表地として、ウール100%のストレッチサキソニー(伸度は、経/緯=15/25%)を使用し、背裏、袖裏に、上記裏地用織物を用いてメンズジャケットを縫製した。
【0059】
そして、男性モニター5名に上記ジャケットを着用させ、室温25℃に設定された室内で3時間事務作業に従事させて、裏地用織物のストレッチ性、裏地表面の滑り、ドレープ性、裏地表面のしなやかさの各項目について下記のとおり官能評価を行った。評価は、良好と感じたモニターが5名全員の場合…◎、3〜4名の場合…○、1〜2名の場合…△、だれも良好と感じなかった場合…×、の4段階評価とした。その結果を、後記の表1〜表4にまとめて示した。また、ジャケット用のものとは別に、裏地用織物を延反台上に5枚重ねて5枚同時に裁断することを5名の女性モニターに行わせ、その裁断作業のしやすさについて評価を行った。評価は、裁断がしやすいと感じたモニターが5名全員の場合…◎、3〜4名の場合…○、1〜2名の場合…△、だれも裁断作業がしやすいと感じなかった場合…×、の4段階評価とした。その結果も、後記の表1〜表4にまとめて示した。
【0060】
<ストレッチ性>
体を前後に曲げたり左右に動かしたりする動作、および腕を曲げたり伸ばしたりする動作を行った際、裏地が追従して伸びて窮屈感を感じることなく良好であったか否かを評価した。
【0061】
<裏地表面の滑り>
体の動きに対し、裏地表面が滑らかに追従して動いたか、また着脱の際、裏地が当たる部分に抵抗感がなく良好であったか否かを評価した。
【0062】
<ドレープ性>
裏地表面に触れたとき、柔らかくドレープ性があるか否か、表地のふくらみあるソフトな風合いが、裏地によって損なわれることなく良好に保たれているかを評価した。
【0063】
<裏地表面のしなやかさ>
裏地表面がすべすべして滑りがよく、ふくらみがあってしなやかであるか否かを評価した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
上記の結果から、実施例品は、いずれの項目も概ね良好な結果が得られているのに対し、比較例品は、悪い評価項目を含み、実用上問題を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣料の裏地に用いられる織物であって、経糸および緯糸のそれぞれに、沸水30分処理後の捲縮率40〜50%のサイドバイサイド型捲縮糸が70重量%以上用いられており、織物の経方向伸度が8〜12%、同じく緯方向伸度が10〜20%で、緯方向伸度が経方向伸度の1.2〜1.8倍に設定されているとともに、織物表面の経緯平均動摩擦係数(μ)が0.35〜0.50に設定されていることを特徴とする裏地用織物。
【請求項2】
上記サイドバイサイド型捲縮糸が、ポリエチレンテレフタレートからなるものである請求項1記載の裏地用織物。
【請求項3】
上記織物のドレープ係数が0.40以下に設定されている請求項1または2記載の裏地用織物。
【請求項4】
上記経糸として無撚のものが用いられ、緯糸として300〜1500T/mの撚りを与えたものが用いられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の裏地用織物。

【公開番号】特開2008−248438(P2008−248438A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91637(P2007−91637)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】