説明

裏込め注入システム

【課題】低費用で、比較的低い注入圧により、セグメントからテールボイド全周に確実に裏込め材を充填することができ、地盤沈下や曲線施工にも確実に対応でき、漏水を確実に防止することのできる裏込め注入システムを提供する。
【解決手段】裏込め主材と、硬化材とをセグメント16の注入孔28に設けたミキシングノズル22にて混合して混合状態の裏込め材をテールボイド20に注入する裏込め注入システムにおいて、ミキシングノズル22はセグメント16の周方向における各セグメントピースに形成された注入孔28のうちの複数のセグメントピースの注入孔28に各々設けられ、各ミキシングノズル22は、供給源からの裏込め主材及び硬化材を各ミキシングノズル22に分配供給するバルブユニット24に接続され、バルブユニット24は、裏込め注入制御部26により少なくとも注入するミキシングノズル、裏込め材の注入時間、注入量及び注入圧が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏込め注入システムに関し、特に、セグメントに設けた注入孔からテールボイドに裏込め材を注入する裏込め注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド掘進時に発生するテールボイドは、裏込め材で迅速にかつ確実に充填することが地山の緩みと地表面の沈下を抑えるとともに漏水を防止するするために重要な課題となる。
【0003】
このため、比較的大きな断面のシールド掘進機においては、シールド掘進機自体に裏込め注入装置を設け、そこからテールボイドに裏込め材を自動充填することが行われている。
【0004】
しかし、比較的小さな断面のシールド掘進機においては、シールド掘進機自体に裏込め注入装置を設けると構造が複雑になり、機内が狭溢になることから、特許文献1に示すように、セグメントに形成した注入孔からテールボイドに裏込め材を注入するようにしているのが一般的である。
【0005】
この特許文献1に示されるように、セグメントに形成した注入孔からテールボイドに裏込め材を注入する場合、一般には、セグメント1リングについて1箇所の注入孔から所定の注入圧、注入量にて注入を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−156276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、セグメント1リングについて1箇所の注入孔から所定の注入圧、注入量にて裏込め注入材の注入を行う場合にあっては、裏込め材の注入時に、注入圧が上昇した場合、掘進を停止し、手動にて注入中のセグメントピースの注入孔からの注入をやめ、他のセグメントピースに形成された注入孔に変更して注入しなければならず、逆に、注入圧が上昇しない場合には、裏込め材がテールボイドに均等に注入されず、地山の軟弱な位置1箇所に集中して注入されることが懸念されることとなる。
【0008】
また、注入後、すぐに裏込め材がテールボイド全周に回り込まず、自立性のない地山ではテールボイドが潰され、地盤沈下が発生することとなり、しかも、曲線施工時には、均等に充填されないため、反力がとれないこととなり、さらには、裏込め材が確実に全周に回り込まないと、漏水の原因にもなるものである。
【0009】
本発明の目的は、低費用で、比較的低い注入圧により、セグメントからテールボイド全周に確実に裏込め材を充填することができ、地盤沈下や曲線施工にも確実に対応でき、漏水を確実に防止することのできる裏込め注入システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)前記目的を達成するため、本発明の裏込め注入システムは、裏込め主材と、硬化材とをセグメントの注入孔に設けたミキシングノズルにて混合して混合状態の裏込め材をテールボイドに注入する裏込め注入システムにおいて、
前記ミキシングノズルはセグメントの周方向における各セグメントピースに形成された注入孔のうちの複数のセグメントピースの注入孔に各々設けられ、
前記各ミキシングノズルは、供給源からの裏込め主材及び硬化材を各ミキシングノズルに分配供給するバルブユニットに接続され、
前記バルブユニットは、裏込め注入制御部により少なくとも注入するミキシングノズル、裏込め材の注入時間、注入量及び注入圧が制御されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、セグメントの複数の注入孔に裏込め主材及び硬化材を混合注入するミキシングノズルを設け、このミキシングノズルが接続されたバルブユニットを制御部により注入するミキシングノズル、裏込め材の注入時間、注入量及び注入圧を制御することにより、1つの注入孔より注入してテールボイド全周に充填する場合に比し、比較的低い圧力で裏込め材をテールボイド全周に確実に注入することができ、しかも、地下埋設物や地上への影響をより小さくすることが可能となる。
【0012】
また、軟弱地盤層で注入圧が上昇せずに同位置に裏込め材が入ってしまうのを防止し、均等に充填することが可能となる。
【0013】
さらに、急曲線施工時にセグメントの固定が早く、確実に反力をとることが可能となる。
【0014】
そしてさらに、均等に裏込め材を注入させることで、シールド掘進機の中心にセグメント軸をたてることが可能で、RCセグメントの場合は欠けなど、鋼製セグメントの場合は変形などの欠損が発生しにくくなる。
【0015】
(2)本発明においては、(1)において、前記裏込め注入制御部は、前記バルブユニットを制御して、所定の注入量の範囲内において、設定時間毎に注入するミキシングノズルを順次切り替えるようにすることができる。
【0016】
このような構成とすることにより、より確実にテールボイド全周に裏込め材を注入することができる。
【0017】
(3)本発明においては、(2)において、裏込め材の注入圧を検出する圧力センサーを備え、
前記裏込め注入制御部は、前記圧力センサーによる検出値が設定値を超えた場合、前記設定時間内においても注入するミキシングノズルを次順のミキシングノズルに切り替え制御するようにすることができる。
【0018】
このような構成とすることにより、注入圧が上昇した場合には、即座に他の注入孔より裏込め材を注入して均等な注入を確実に行うことができる。
【0019】
(4)本発明においては、(1)において、前記裏込め注入制御部は、バルブユニットを制御して、所定の注入量の範囲内において、複数のすべてのミキシングノズルから同時に設定時間前記裏込め材を注入するようにすることができる。
【0020】
このような構成とすることにより、低い注入圧でかつ確実にテールボイド全周への注入を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる裏込め注入システムを示す全体概略断面図である。
【図2】図1のII−IIに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態にかかる裏込め注入システムを示す図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態にかかる裏込め注入システム10は、シールド掘進機12のカッタビット14による掘進後、セグメント16を組み立て、このセグメント16と掘削した地山18との間のテールボイド20の全周にわたって裏込め材を注入するもので、複数のミキシングノズル22と、バルブユニット24と、裏込め注入制御部26とを有している。
【0025】
ミキシングノズル22は、裏込め主材と、硬化材とを注入直前に混合してセグメント16の注入孔28からテールボイド20へと注入するもので、セグメントの周方向における異なる位置に形成された複数の注入孔28に複数設けられている。
【0026】
具体的には、セグメント16は、図2に示すように、複数、例えば5個、のセグメントピース16a、16b、16c、16d、16eから1リングが構成されるようになっており、各セグメントピース16a、16b、16c、16d、16eにはそれぞれ注入孔28a、28b、28c、28d、28eが設けられ、これらのうち例えば4つの注入孔28a、28b、28c、28dにそれぞれミキシングノズル22a、22b、22c、22dが設けられるようになっている。
【0027】
各ミキシングノズル22a、22b、22c、22dには、それぞれ裏込め主材ホース30及び硬化材ホース32が接続され、これら各裏込め主材ホース30及び硬化材ホース32がバルブユニット24に接続されている。
【0028】
バルブユニット24は、供給源から裏込め主材配管34及び硬化材配管36を介して供給される裏込め主材及び硬化材を各ミキシングノズル22a、22b、22c、22dに分配供給可能にされている。
【0029】
また、このバルブユニット24は、裏込め注入制御部26により、注入するミキシングノズル22a、22b、22c、22d、注入時間、裏込め材の注入量、注入圧力が制御されるようになっている。
【0030】
裏込め制御部26は、裏込め注入制御盤48と、中央監視計測システム50とを有し、流量計38及び40と、圧力センサー42と、裏込め注入操作盤44と、計測信号インターフェイス盤46とが接続されている。
【0031】
裏込め注入制御盤48は、裏込め注入操作盤44にて設定された注入モードに応じて、流量計38、40及び圧力センサー42からの計測データを監視し、注入ポンプ及びバルブユニット24の各ミキシングノズル22a、22b、22c、22dへの注入切り替えを制御するようになっている。
【0032】
中央監視計測システム50は、予め計画した注入方法を記憶し、裏込め注入制御盤48から裏込め注入操作盤44へと送信するとともに、シールド掘進機運転台車52もしくは裏込め専用台車上の掘進管理盤から掘進データを取得して注入状況を監視するようになっている。
【0033】
流量計38及び40は、裏込め主材配管34及び硬化材配管36に取り付けられ、バルブユニット24に供給される裏込め主材及び硬化材の流量を検出するようになっている。
【0034】
圧力センサー42は、裏込め主材配管34に取り付けられ、この裏込め主材配管34内の圧力を検出するようになっている。
【0035】
これら流量計38、40の検出結果及び圧力センサー42の検出結果は、裏込め注入制御部26を介して計測信号インターフェイス盤46に送信されるようになっている。
【0036】
裏込め注入操作盤44は、定時間設定注入モード、注入量管理モード、注入圧力管理モード、全孔同時注入モード等の注入モードの設定及び注入状況の管理等を行うようになっている。
【0037】
計測信号インターフェイス盤46は、シールド掘進機運転台車52もしくは裏込め専用台車上の掘進管理盤から掘進データを取得して裏込め注入制御盤48に送信するようになっている。
【0038】
次に、このような裏込め注入システム10の注入状態について説明する。
【0039】
まず、複数のミキシングノズル22a、22b、22c、22dをセグメント16の複数の注入孔28a、28b、28c、28dにセットする。
【0040】
次に、シールド掘進機12の掘進開始と同時に、裏込め注入操作盤44で設定した注入モードにて注入を開始する。
【0041】
この場合、注入信号は、中央監視盤計測システム50にて計画した注入方法が裏込め注入制御盤48から裏込め注入操作盤44に送られる。
【0042】
注入は、裏込め注入制御盤48からバルブユニット24へ信号を取り込み、設定した注入モードで各ミキシングノズル22a、22b、22c、22dの選択、所定時間、所定注入量、所定圧力を制御して自動注入を行う。
【0043】
裏込め注入制御盤48へは流量計38、40及び圧力センサー42の上限、下限設定値を超えた場合の信号が送られる。
【0044】
送られた信号は中央監視計測システム50で判断され、設定値を超えている場合は、バルブユニット24へ信号を発信し、次孔の裏込めを開始する。
【0045】
設定値を超えない場合は、選定した注入モードで順次注入を行う。
【0046】
掘進に合わせた裏込め材の注入量は、計測信号インターフェイス盤46よりシールドジャッキ速度信号で積算し、シールド掘進機12が進み、発生したテールボイド20分の体積を演算し必要量の裏込め材を可変式ポンプで送液する。
【0047】
また、曲線部や蛇行修正でコピーカッターを使用し、テールボイド20が大きくなった場合は、併せて流量を自動計算する。
【0048】
注入状況は、中央監視盤計測システム50に送られ、データとして蓄積し、記録として保存、帳票として印刷する。
【0049】
掘進終了時は、計測信号インターフェイス盤46、裏込め注入制御盤48、バルブユニット24の順で信号を受け取り裏込めを終了する。
【0050】
このように、バルブユニット24を制御して、所定の注入量の範囲内において、設定時間毎に注入するミキシングノズル22a、22b、22c、22dを順次切り替えるようにすることで、比較的低い注入圧力で、より確実にテールボイド全周に裏込め材を注入することができる。
【0051】
また、裏込め材の注入圧を検出する圧力センサー42による検出値が設定値を超えた場合、設定時間内においても注入するミキシングノズル22a、22b、22c、22dを、例えばミキシングノズル22aから次順のミキシングノズル22bに切り替え制御するようにすることで、例えば、注入圧が上昇した場合には、即座に他のミキシングノズルより裏込め材を注入して均等な注入を確実に行うことができる。
【0052】
この場合、土質にあわせてセグメント1リング当たりの注入量を設定した場合には、注入圧上昇で入らない注入孔の注入量は、他孔に自動配分し、積算して注入量を確保するような注入管理となる。
【0053】
また、セグメント1リングで所定量が注入できない場合は、累積し、次リングにて注入し注入量を確保するような注入管理となる。
【0054】
さらに、注入圧が上昇しない場合には、所定の時間でそのミキシングノズルからの注入を停止し、次順のミキシングノズルに切り替えることで、裏込め材が1箇所に留まるのを防止して均一に注入を行うことができる。
【0055】
また、裏込め注入制御部26により、バルブユニット24を制御して、所定の注入量の範囲内において、複数のすべてのミキシングノズル22a、22b、22c、22dから同時に設定時間前記裏込め材を注入するようにすることで、低い注入圧でかつ確実にテールボイド全周への注入を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、種々の形態に変形可能である。
【0057】
例えば、本発明においては、シールド掘進機を用いてシールドトンネルを構築する場合であれば、泥水圧シールド工法、泥土圧シールド工法その他のシールド工法にも適用可能である。
【0058】
また、セグメントの注入孔の数及び用いるミキシングノズルの数は、複数であれば前記実施の形態に限らず、掘削条件に合わせて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 裏込め注入システム
12 シールド掘進機
16 セグメント
20 テールボイド
22、22a、22b、22c、22d ミキシングノズル
24 バルブユニット
26 裏込め注入制御部
28、28a、28b、28c、28d、28e 注入孔
38、40 流量計
42 圧力センサー
48 裏込め注入制御盤
50 中央監視計測システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏込め主材と、硬化材とをセグメントの注入孔に設けたミキシングノズルにて混合して混合状態の裏込め材をテールボイドに注入する裏込め注入システムにおいて、
前記ミキシングノズルはセグメントの周方向における各セグメントピースに形成された注入孔のうちの複数のセグメントピースの注入孔に各々設けられ、
前記各ミキシングノズルは、供給源からの裏込め主材及び硬化材を各ミキシングノズルに分配供給するバルブユニットに接続され、
前記バルブユニットは、裏込め注入制御部により少なくとも注入するミキシングノズル、裏込め材の注入時間、注入量及び注入圧が制御されることを特徴とする裏込め注入システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記裏込め注入制御部は、前記バルブユニットを制御して、所定の注入量の範囲内において、設定時間毎に注入するミキシングノズルを順次切り替えることを特徴とする裏込め注入システム。
【請求項3】
請求項2において、
裏込め材の注入圧を検出する圧力センサーを備え、
前記裏込め注入制御部は、前記圧力センサーによる検出値が設定値を超えた場合、前記設定時間内においても注入するミキシングノズルを次順のミキシングノズルに切り替え制御することを特徴とする裏込め注入システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記裏込め注入制御部は、バルブユニットを制御して、所定の注入量の範囲内において、複数のすべてのミキシングノズルから同時に設定時間前記裏込め材を注入することを特徴とする裏込め注入システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−190602(P2011−190602A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57206(P2010−57206)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(594203999)株式会社タック (3)
【Fターム(参考)】