説明

補体調節遺伝子における変異体が加齢性黄斑変性症を予測する

本明細書中には、AMDを発症する危険性がある対象を同定する方法が開示され、また、本方法を実施するために使用できるキットも開示されている。本発明の方法は、対象の遺伝子物質から、BF遺伝子、C2遺伝子、および/またはCFH遺伝子における多型性などの、特異的な防御型またはリスク型の多型または遺伝子型を同定することを含む。別の実施形態において、本発明はまた、これらの方法において使用されるマイクロアレイおよびキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2006年2月13日に出願された、米国仮特許出願第60/772,989号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/772,989号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
分野
本出願は、加齢性黄斑変性症に対する各人の遺伝的感受性を予測する方法に関する。
【0003】
政府支援に対する謝辞
本発明は、米国国立衛生研究所からの認可番号EY13435(RA)およびEY11515(GSH)による米国政府の支援により、また、米国国立衛生研究所国立癌研究所の契約番号NO1−CO−124000による連邦政府補助金の援助を受けて、一部、米国政府機関によって為されたものである。米国連邦政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
加齢性黄斑変性症(AMD)は、黄斑、すなわち詳細な視覚像をもたらす、網膜の中心にある光受容体に富む領域に影響を与える変性性の眼疾患である。AMDは、通常、周辺視力を損なうことなく中心視力を突然悪化させる。AMDは、先進国における回復不可能な失明の最も一般的な形態である。この疾患は、一般的には、片方の眼の中心視力の低下を示し、その後数ヶ月から数年以内にもう一方の眼も同じように中心視力を失う。本疾患の臨床的兆候には、黄斑に沈着物(ドルーゼン)が現れることが含まれる。
【0005】
主要な健康保険負担であるにもかかわらず、AMDの病因および発病機序は未だによく分かっていない。数多くの研究によって、AMDの病理生物学に炎症が関係するとされてきた(Andersonら、(2002)Am.J.Ophthalmol.134:411−31;Hagemanら、(2001)Prog.Retin.Eye Res.20:705−32;Mullinsら、(2000)Faseb J.14:835−46;Johnsonら、(2001)Exp.Eye Res.73:887−96;Crabbら、(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:14682−7;Bok,D.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102:7053−4)。補体経路の機能不全によって、黄斑部の細胞に重大なバイスタンダー損傷を引き起こし、その結果、他の補体介在性疾患過程で生じる損傷に類似した萎縮、変性、および脈絡膜新生血管膜の生成をもたらす可能性がある(Hagemanら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102:7227−32;MorganとWalport(1991)Immunol.Today 12:301−6;Kinoshita(1991)Immunol.Today 12:291−5;HolersとThurman(2004)Mol.Immunol.41:147−52)。この疾患には、遺伝が強く関与している可能性がある。例えば、FBLN6、ABCA4、およびAPOEの各遺伝子の変異体がリスク因子に関係すると言われている。最近、第二補体経路の主要なインヒビターをコードしている補体H因子遺伝子(CFH)の変異体が、AMDを発症するリスクの増加に関連していることが発見された(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。
【非特許文献1】Hainesら、(2005)Science 308:419−21
【非特許文献2】Kleinら、(2005)Science 308:385−9
【非特許文献3】Edwardsら、(2005)Science 308:421−4
【非特許文献4】Hagemanら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102:7227−32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この疾患の有病率と、利用できる治療法が限られているために、AMDを発症するリスクのある対象者を同定する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
加齢性黄斑変性症(AMD)を防御する多型および遺伝子型が同定されている。AMDを発症するリスクが増大している対象を同定するための方法が提供されている。これらの方法は、対象のB因子(BF)および/または補体成分2(C2)の遺伝子を解析すること、ならびにその対象が、少なくとも1つの防御型多型をもつか否かを判定することを含むが、それらに限定されない。このような防御型多型の例には、(a)BF内のR32Q(rs641153);(b)BF内のL9H(rs4151667);(c)C2内のIVS10(rs547154);および(d)C2内のE318D(rs9332739)などがある。あるいは、この方法は、対象の体内でタンパク質の変異体を検出することによって実施することができる。対象に、少なくとも1つの防御型多型がない場合には、その対象は、AMDを発症するリスクを増大させている。この態様の一つの実施形態では、さらに対象のCFH遺伝子の解析が行われる。いくつかの実施形態では、CFH遺伝子座における対象の遺伝子型を解析して、その対象が少なくとも1つの防御遺伝子型を持っているか否かを判定することができる。一つの実施形態において、BF遺伝子座またはC2遺伝子座のどちらかとCFH遺伝子座における対象の遺伝子型を解析して、その対象が少なくとも1つの防御遺伝子型を持っているか否かを判定することができる。本明細書で後述するように、場合によっては、その多型性について対象がホモ接合であるかヘテロ接合であるかを知ることが参考になるであろう。
【0008】
防御遺伝子型の例は、(a)BF内のR32Q(rs641153)多型についてヘテロ接合;(b)BF内のL9H(rs4151667)多型についてヘテロ接合;(c)C2内のIVS10(rs547154)多型についてヘテロ接合;(d)C2内のE318D(rs9332739)多型についてヘテロ接合;(e)CFHのdelTT多型についてホモ接合;(f)BF内のR150R(rs1048709)多型についてホモ接合;および(g)CFH内のY402についてホモ接合などである。対象に、少なくとも1つの防御遺伝子型がない場合には、その対象は、AMDを発症するリスクを増大させている。
【0009】
本発明は、ヒト対象における黄斑変性症またはその他の補体介在性疾患を発症するリスク、またはそれが進行している可能性を評価する方法を提供する。この方法の背景には、一定の遺伝的特徴を、補体関連疾患、今回の場合は加齢性黄斑変性症のリスク表現型または防御表現型に関連づける遺伝的関連研究によって為された発見である。本発明の方法は、ヒト対象から生体試料を得る工程、および、この試料を、当技術分野において既知の有効な技術によって解析して、その対象が以下の1つ以上を有するか否かを判定する工程を含む:
BF遺伝子のrs641153においてAまたはG:これは、ヒトBFタンパク質の32位においてRまたはQに翻訳する;
BF遺伝子のrs4151667においてAまたはT:これは、ヒトBFタンパク質の9位においてLまたはHに翻訳する;
C2遺伝子のrs547154においてGまたはT:これはイントロン10である;
C2遺伝子のrs9332379においてCまたはG:これは、ヒトC2タンパク質の318位においてEまたはDに翻訳する;
BF遺伝子のrs1048709においてAまたはG:これは、150位においてRに翻訳する;
CFH遺伝子におけるdelTT;および
CFH遺伝子のrs1061170においてCまたはT:これは、ヒトCFHタンパク質の402位においてYまたはHに翻訳する。
【0010】
一定の実施形態においては、試料を解析して、対象が以下の1つ以上を有するか否かを判定する:
BF遺伝子のrs641153においてAまたはG:これは、ヒトBFタンパク質の32位においてRまたはQに翻訳する;
BF遺伝子のrs4151667においてAまたはT:これは、ヒトBFタンパク質の9位においてLまたはHに翻訳する;
C2遺伝子のrs547154においてGまたはT:これはイントロン10である;および
C2遺伝子のrs9332379においてCまたはG:これは、ヒトC2タンパク質の318位においてEまたはDに翻訳する。
【0011】
いくつかの実施形態において、試料は、血液もしくは血液成分、または尿など、利用しやすい体液である。評価をDNAまたはmRNAのレベルで行う場合には、対象の細胞から遺伝子型を検出できるようにするために細胞材料が必要となる。
【0012】
いくつかの実施形態において、対象は、AMD、初期AMD、脈絡膜血管新生(CNV)、または地図状萎縮(GA)などの症状と診断されていてもよい。一つの実施形態では、対象は、疾患の症状、例えば、ドルーゼンの発生など、初期の黄斑変性症の症状を示している。対象の中には、ドルーゼンの発生を示す者がいてもよい。対象は、黄斑変性症またはその他の補体関連疾患について無症状であってもよいが、その場合には、この解析は、集団全般について、またはリスクが高くなると考えられている何らかの部分集団、例えば、補体関連疾患の家族歴をもつ個人などについて行うことができるスクリーニング法を本質的には提供する。さらに別の対象は、AMDになるリスクが高いかもしれない。一つの実施形態では、対象はY402H SNPを有する。
【0013】
したがって、別の態様において、本発明は、ヒト対象における黄斑変性症またはその他の補体介在性疾患を発症するリスク、またはそれが進行している可能性を評価するためのキットを提供する。本キットは、対象から採取した試料において、1つ以上、好ましくは2つ以上の上記多型または対立遺伝子変異体を検出するための一群の試薬を含む。本キットは、当技術分野において既知の方法をいくつか用いて変異体を検出するよう設計されたオリゴヌクレオチド、一般的には、標識されたオリゴヌクレオチドを含むことも可能である。本キットは、例えば、標的が多型である場合には、標的ポリヌクレオチドの配列を増幅するためのPCRプライマー、または、例えば、モノクローナル抗体など、関連する遺伝子/プロテオミクス情報を試料から得るための基礎として標的タンパク質の対立遺伝子変異体を認識して、それに特異的に結合する特異的結合タンパク質を含むことができる。好適な実施形態では、本キットは、固体支持体に固定されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0014】
フォーマットに応じて、加齢性黄斑変性症(AMD)を発症するリスクが高い対象を同定するためのキットの構成成分は、対象における少なくとも1つの防御型多型を検出するために1つ以上の試薬を含む。そのような試薬は、以下の少なくとも1つの防御型多型の検出を可能にする:(a)BF内のR32Q(rs641153);(b)BF内のL9H(rs4151667);(c)C2内のIVS10(rs547154);および(d)C2内のE318D(rs9332739)。このようなキットにおける試薬は、防御型多型を検出する1つ以上のオリゴヌクレオチドを含むことが可能である。その他のキット構成成分は、標的配列が防御型多型の1つ以上を包含する場合には、その標的配列を増幅するための1つ以上の試薬を含むことも可能である。本キットのいくつかのバージョンでは、1つ以上のオリゴヌクレオチドが固体支持体に固定されている。
【0015】
関連する態様において、本発明は、AMDを発症するリスクが高い対象を同定するためのマイクロアレイを提供する。さらなる態様において、本発明は、防御型多型を有する1つ以上の核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイを提供する。このような防御型多型の例には、(a)BF内のR32Q(rs641153);(b)BF内のL9H(rs4151667);(c)C2内のIVS10(rs547154);および(d)C2内のE318D(rs9332739)などがある。このようなマイクロアレイは、さらに、例えば、以下の多型性を有する別の1つ以上の核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブを含むことができる:(a)CFH内のdelTT多型;(b)BF内のR150R多型;および(c)CFH内のY402H多型。
【0016】
上記した本開示の特徴および利点、ならびにその他の特徴および利点は、以下のいくつかの実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0017】
配列
添付した配列表に列挙された核酸配列およびアミノ酸配列は、米国特許施行規則第1.822条に規定されているように、ヌクレオチド塩基については標準的な省略文字で、また、アミノ酸については3文字コードを用いて示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、表示されている鎖に言及することによって、その相補鎖も含まれると解される。本明細書において参照されている配列データベースのアクセッション番号はすべて、指定された日付に利用することができたものであるから、そのアクセッション番号によって識別されているバージョンの配列を意味するものと理解される。
【0018】
配列番号1は、2006年1月30日(2006年1月5日修正)にNCBIを介して利用可能であったrefSNP ID:rs641153のSNPに基づいている。このSNPは、BF遺伝子の22位のヌクレオチドがAまたはGで、R32Q変異体(32位のアミノ酸がアルギニンではなくグルタミン)を生じさせる。R32Qをもたらす配列は、CCACTCCATGGTCTTTGGCCCRGCCCCAGGGATCCTGCTCTCTであるが、ただし、R=AまたはGである(配列番号1)。
【0019】
配列番号2は、2006年1月30日(2006年1月5日修正)にNCBIを介して利用可能であったrefSNP ID:rs4151667のSNPを示している。このSNPは、BF遺伝子の26位のヌクレオチドがAまたはTで、L9H変異体(9位のアミノ酸がロイシンではなくヒスチジン)を生じさせる。rs4151667をもたらす配列は、ATGGGGAGCAATCTCAGCCCCCAACRCTGCCTGATGCCCTTTATCTTGGGCであるが、ただし、R=AまたはTである(配列番号2)。
【0020】
配列番号3は、2006年1月30日(2006年1月5日修正)にNCBIを介して利用可能であったrefSNP ID:rs547154のSNPに基づいている。このSNPは、C2遺伝子のイントロン10の23位のヌクレオチドがGまたはTになっている。rs547154をもたらす配列は、GAGGAGCCCGCCAGAGGCCCGTRTTGGGAACCTGGACACAGTGCCCであるが、ただし、RはGまたはTである(配列番号3)。
【0021】
配列番号4は、2006年1月30日(2006年1月5日修正)にNCBIを介して利用可能であったrefSNP ID:rs9332739のSNPを示している。このSNPは、C2遺伝子の26位のヌクレオチドがCまたはGで、E318D変異体(318位のアミノ酸がグルタミン酸ではなくアスパラギン酸)を生じさせる。rs9332739をもたらす配列は、ACGACAACTCCCGGGATATGACTGARGTGATCAGCAGCCTGGAAAATGCCAであるが、ただし、RはCまたはGである(配列番号4)。
【0022】
配列番号5は、2006年1月30日(2006年1月5日修正)にNCBIを介して利用可能であったrefSNP ID:rs1048709のSNPを示している。このSNPは、BF遺伝子の26位のヌクレオチドがAまたはGになっている。このSNPは、150位のアミノ酸変異を生じさせない(R150R)。rs1048709をもたらす配列は、ATCGCACCTGCCAAGTGAATGGCCGRTGGAGTGGGCAGACAGCGATCTGTGであるが、ただし、RはAまたはGである(配列番号5)。
【0023】
配列番号6および7は、delTT多型配列を示している。delTT多型は、2bpの挿入/欠失多型である。この配列は以下の通りである。CCTTGCTATTACATACTAATTCATAACTTTTTTTTTCGTTTTAGAAAGGCCCTGTGGACA(配列番号6)およびCCTTGCTATTACATACTAATTCATAACTTTTTTTTTTTCGTTTTAGAAAGGCCCTGTGGACA(配列番号7)。
【0024】
配列番号8は、2006年1月30日(2006年1月5日修正)にNCBIを介して利用可能であったrefSNP ID:rs1061170のSNPを示している。このSNPは、エキソン9の1277位のヌクレオチドがCまたはTで(以下の配列で26位のヌクレオチド)、CFH遺伝子のY402H変異体(402位のアミノ酸がチロシンではなくヒスチジン)を生じさせる。rs1061170をもたらす配列は、TTTGGAAAATGGATATAATCAAAATRATGGAAGAAAGTTTGTACAGGGTAAであるが、ただし、RはCまたはTである(配列番号8)。
【0025】
配列番号9は、9Hおよび32Rである、BFの全アミノ酸配列を示している:
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

配列番号13は、32Qである、BFの9個のアミノ酸配列を示している:wslaqpqgs(配列番号13)。
【0029】
配列番号14は、9Hである、BFの9個のアミノ酸配列を示している:lspqhclmp(配列番号14)。
【0030】
配列番号15は、318Dである、C2の7個のアミノ酸配列を示している:dmtdvis(配列番号15)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本明細書では、加齢性黄斑変性症(AMD)に対して防御作用があることが見出された配列多型が提供される。これらの多型は、B因子(BF)遺伝子および補体成分2(C2)遺伝子内に見出されるものを含む。防御多型は、CFH遺伝子内にあるdelTT多型も含む。これらの多型を有する対象を、最近発見されたリスクハプロタイプ(補体H因子(CFH)遺伝子内のY402H)を有する対象とともに同定することは、AMDの遺伝的リスクに直面している対象を診断するのに役立つであろう。
【0032】
用語
以下の用語および方法について説明は、本開示をよりよく説明するため、また、本開示を実施する際に当業者の指針となるよう提供するものである。単数形「a」、「an」および「the」は、文脈によって明確に別様であることが示されない限り、1つまたは2つ以上を意味する。例えば、「1つの核酸を含む」という用語は、単数または複数の核酸を含み、「少なくとも1つの核酸を含む」という語句と同一であるとみなされる。「or」という用語は、文脈によって明確に別様であることが示されない限り、明示された選択的要素のうちの単一の要素、または2つ以上の要素の組み合わせを意味する。本明細書において、「含む(comprises)」は「包含する(includes)」ことを意味する。したがって、「AまたはBを含む」は、更なる要素を排除することなく、「A、B、またはAおよびBを包含する」ことを意味する。例えば、「変異または多型」または「1つ以上の変異または多型」という語句は、1つの変異、1つの多型、またはこれらの組み合わせを意味するが、ただし、「1つ」は1つ以上を意味することもできる。
【0033】
本明細書に記載されている方法および材料に類似または同等の方法および材料を、本開示を実施または試験する際に用いることができるが、適当な方法および材料を下記に記載する。これらの材料、方法、および例は例示的なものにすぎず、限定的なものではない。
【0034】
別段の記載がない限り、技術用語は従来の用法に従って用いられる。分子生物学の一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes V,Oxford University Pressより発行,1994(ISBN 0−19−854287−9);Kendrewら(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,Blackwell Science Ltd.より発行,1994(ISBN 0−632−02182−9);およびRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.より発行,1995(ISBN 1−56081−569−8)に見出すことができる。
【0035】
加齢性黄斑変性症:黄斑における光感知細胞が機能不全に陥り、やがて機能を停止する病状。黄斑変性症において、最終形態もしくは疾患は、視野の中央にある読み取り部の視覚の喪失または低下をもたらす。視野の外側の周辺部は損なわれない。AMDは、さらに、「乾燥」型すなわち非滲出型、および「湿潤」型すなわち滲出型に分けられる。85から90パーセントの症例が、ドルーゼンとして知られている脂肪組織が網膜の裏側にゆっくりと蓄積する「乾燥」型黄斑変性症に分類される。乾燥型黄斑変性症の古典的な病変は地図状の萎縮である。10から15パーセントの症例が、網膜下での異常な血管増殖を伴う。これらの症例は、眼球内に網膜の裏側から血液およびその他の液体が漏出するため、「湿潤」型黄斑変性症と呼ばれる。湿潤型黄斑変性症は、大抵、乾燥型として始まる。治療しないままでおくと、これは、通常、黄斑の構造および機能を完全に破壊する。脈絡膜新生血管は、網膜の網膜色素上皮(RPF)層直下で異常血管が成長したものである。
【0036】
湿潤型黄斑変性症には、薬物療法、光線力学療法、レーザー光凝固療法、およびレーザー療法を使用することができる。AMDの危険因子には、加齢、喫煙、家族歴、日光とりわけ青色光への曝露、高血圧、高コレステロールおよび肥満などの心血管系危険因子、高脂肪摂取、酸化的ストレス、ならびに人種などがある。
【0037】
AMDは、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、および大動脈瘤を発症する素因も含む、第二補体カスケードの調節異常を特徴とする疾患の例である。AMD発症リスクの増加を検出するための、本明細書記載の方法は、第二補体カスケードの調節異常を特徴とするその他の疾患(例えば、MPGN)に対するリスクの増大を検出するために用いることもできる。
【0038】
対立遺伝子:染色体上で所定の遺伝子座(位置)を占めている同じ遺伝子のいくつかある実行可能なDNA暗号の任意の1つ(時には、この用語は非遺伝子配列を意味することもある)。その遺伝子に関する個体の遺伝子型は、それが偶然持っている対立遺伝子のセットとなるはずである。その染色体各々のコピーを2つずつ持つ生物(2倍体生物)において、2つの対立遺伝子が個体の遺伝子型を構成する。2倍体生物において、遺伝子の2つのコピーが同一であれば、すなわち、同じ対立遺伝子を持つ場合は、その遺伝子についてホモ接合であるという。その遺伝子で2つの相異なる対立遺伝子を持つ2倍体生物をヘテロ接合であるという。
【0039】
本明細書において、「対立遺伝子検出」する過程を、「対立遺伝子または多型を遺伝子型判定、決定、または同定する」、あるいは同じような言い回しで表すことができる。実際に検出された対立遺伝子は、対象のゲノムDNA内で明らかになるが、この領域から転写または翻訳されたRNA配列またはタンパク質配列からも検出することができるかもしれない。
【0040】
増幅:試料中の核酸分子のコピー数を増やす技術を用いること。インビトロ増幅法の例は、試料中の核酸分子にオリゴヌクレオチドプライマーをハイブリダイズさせることができる条件下で、対象から得られた生体試料を一対のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させるポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)である。これらのプライマーを、適当な条件下で伸長させ、鋳型から分離し、そして、リアニール、伸長、および分離させて核酸分子のコピー数を増幅する。増幅した産物は、電気泳動、制限酵素切断パターン、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションまたはライゲーション、および/または核酸シーケンシングなどの技術によって特徴付けることができる。
【0041】
増幅法のその他の例には、米国特許第5,744,311号に開示されている鎖置換増幅法;米国特許第6,033,881号に開示されている無転写等温増幅法;PCT公開公報第WO90/01069に開示されている修復連鎖反応増幅法;EP−A−320,308に開示されているリガーゼ連鎖反応増幅法;米国特許第5,427,930号に開示されているギャップ充填リガーゼ連鎖反応増幅法;および米国特許第6,025,134号に開示されている商標NASBA無RNA転写増幅法などがある。増幅法は、例えば、追加的工程によるか、増幅法を別のプロトコルと結合させることによって改変することができる。
【0042】
アレイ:分子、具体的には(ポリペプチドもしくは核酸などの)生体高分子、または細胞もしくは組織の試料を、基質上のアドレス可能な位置または基質中に並べたもの。「マイクロアレイ」は、小型化して、評価または解析するために顕微鏡検査を必要とするか、またはそれによって補助されるアレイである。これらのアレイはDNAチップ、または一般的には、バイオチップと呼ばれることがあるが、より正式にはマイクロアレイと呼ばれ、個体の遺伝子パターンを検査する工程は、マイクロアレイプロファイリングと呼ばれることもある。DNAアレイの製造化学法および構造は多様であり、一般的には、それぞれが異なったヒト遺伝子に由来するDNAを保持する、400,000の異なったフィーチャーからなるが、場合によっては、780,000個もの個別のフィーチャーをパターン化するために固体化学を用いることもある。
【0043】
分子のアレイ(「フィーチャー」)によって、ある試料について同時に非常に多数の解析を行うことが可能になる。一定のアレイの例では、例えば、内部標準を提供するために、1つ以上の分子(オリゴヌクレオチドプローブなど)が複数回(2回など)アレイ上に存在するであろう。アレイ上のアドレス可能な位置の数は、例えば、数個(3個など)から少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも1000個、少なくとも10,000個、またはそれ以上まで変えることができる。具体的な例において、アレイは、例えば、長さが少なくとも15ヌクレオチドあるオリゴヌクレオチド配列、例えば、長さ約15〜40ヌクレオチド、例えば、長さが少なくとも18ヌクレオチド、長さが少なくとも21ヌクレオチド、あるいはさらに長さが少なくとも25ヌクレオチドの核酸分子を含む。一例において、この分子はその5’末端または3’末端を介してアレイに付着したオリゴヌクレオチドを含む。
【0044】
アレイ内部で、アレイに配置された試料はそれぞれ、アレイの少なくとも2次元以内で確実かつ一貫して決定することができるという点でアドレス可能である。アレイ上のフィーチャー適用部位は、さまざまな形をとることができる。例えば、アレイは規則的(均一な行および列に配置されている)であっても不規則であってもよい。すなわち、規則的なアレイ内では、各試料の位置は、それが適用された時点でその試料に割り当てられ、それぞれの位置を適当な標的部位またはフィーチャー部位と関連づけるためにキーが提供されるかもしれない。しばしば、規則的アレイは対称なグリッドパターン状に並べられるが、別のパターンで(例えば、放射線状、渦巻線状、または規則的クラスター状に)試料を並べることもできる。アドレス可能なアレイは、通常、コンピューターをプログラムして、アレイ上の特定のアドレスを、その位置にある試料に関する情報(例えば、シグナル強度など、ハイブリダイゼーションまたは結合のデータ)と関連づけることができるという点でコンピューター可読型である。コンピューター可読型フォーマットのいくつかの例では、アレイ内の個々のフィーチャーは、例えば、デカルト格子のパターンに規則的に並べられているため、コンピューターによってアドレス情報を関連づけることができる。
【0045】
また、プローブ分子がタンパク質であるかタンパク質を含むか、または標的分子がタンパク質であるかタンパク質を含むタンパク質ベースのアレイ、およびタンパク質/ペプチドが結合している核酸を含むアレイまたはその逆のアレイも、本明細書において想定されている。
【0046】
結合または安定型結合:2つの物質または分子の間における結合、例えば、1つの核酸分子と別の核酸分子(またはそれ自身)とのハイブリダイゼーション、および抗体とペプチドとの会合など。十分な量のオリゴヌクレオチド分子が塩基対を形成したり、その標的核酸分子とハイブリダイズしたりすれば、オリゴヌクレオチド分子は標的核酸分子に結合もしくは安定的に結合して、その結合を検出することが可能になる。当業者に周知の任意の手順によって、例えば、標的オリゴヌクレオチド複合体の物理的または機能的な特性などによって、結合を検出することができる。例えば、結合が、遺伝子の発現、DNA複製、転写、翻訳などの生合成過程に観察可能な影響を及ぼしているかを判定することによって結合を機能的に検出することができる。
【0047】
核酸分子の相補鎖の結合を検出する物理的方法には、DNA分解酵素1または化学的フットプリント法、ゲルシフトアッセイ法およびアフィニティー切断アッセイ法、ノーザンブロット法、ドットブロット法、ならびに光吸収検出法などがあるが、これらに限定されない。例えば、一つの方法は、オリゴヌクレオチド(または類似体)および標的核酸を含む溶液の光吸収が、温度を徐々に上げると、220nmから300nmで変化するのを観察することを含む。このオリゴヌクレオチドまたは類似体がその標的に結合した場合には、オリゴヌクレオチド(または類似体)と標的が互いに乖離するか、溶解するにつれて、特徴的な温度で吸収の急増が見られる。別の例において、この方法は、相補鎖の一方または両方の上に存在するシグナル、例えば、検出可能な標識を検出することを含む。
【0048】
オリゴマーとその標的核酸との結合は、しばしば、オリゴマーの50%がその標的から溶失する温度(T)で特徴づけられる。(T)が高いほど、より低い(T)の複合体と比較して、より強くまたはより安定的な複合体であることを意味する。
【0049】
補体成分2(C2):補体系の古典的経路の一部。活性化C1は、C2をC2aおよびC2bに切断する。C2aはC3の活性化をもたらす。C2の欠損が、全身性狼そうエリテマトーデス、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、または多発性筋炎など、一定の自己免疫疾患と関連していることが報告されている。C2はEC3.4.21.43の一員である。これは、古典的補体経路C3/C5転換酵素としても知られている。
【0050】
補体因子H:別名β−1Hとしても知られている。第二補体経路の機能を調節し、第I因子(C3b不活性化因子)の補因子として働く血清糖タンパク質。これは、C4b2aなどのC3転換酵素の活性を調節する。
【0051】
相補性および相補率:相補的核酸を有する分子は、鎖が、ワトソン−クリック型、フーグスティーン型、または逆フーグスティーン型の塩基対合を形成することによって、互いに結合(ハイブリダイズ)し合うと、安定した二重鎖または三重鎖を形成する。オリゴヌクレオチド分子が、所要の条件下で標的核酸配列に検出可能な形で結合した状態にあるときに、安定した結合が生じる。
【0052】
相補性とは、1つの核酸鎖の中の塩基が、別の核酸鎖の塩基と塩基対合する程度のことである。相補性は百分率、すなわち、2本の鎖の間において、または2本の鎖の特定の領域もしくはドメインの内部において塩基対を形成するヌクレオチドの割合で便宜的に表記される。例えば、15ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドのうちの10ヌクレオチドが、DNA分子の標的領域と塩基対を形成するならば、そのオリゴヌクレオチドは、標的とされたDNAの領域と66.67%の相補性を有するということになる。
【0053】
本開示において、「十分な相補性」とは、オリゴヌクレオチド分子と標的核酸配列(CFH、BFまたはC2の配列など)との間に十分な数の塩基対が存在するために検出可能な結合に達することを意味する。形成された塩基対の割合で表示または測定される場合、この目的を達成する相補率は、わずか約50%の相補性から完全な(100%の)相補性までの範囲に及びうる。一般的に、十分な相補性とは、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約75%の相補性、少なくとも約90%の相補性、少なくとも約95%の相補性、少なくとも約98%の相補性、または更には少なくとも約100%の相補性である。
【0054】
当業者が、所望の条件下で使用するのに適したオリゴヌクレオチドを設計できるようにする結合条件を定めることに関係する定性的かつ定量的な条件の完全な処理法が、Beltzら(1983)Methods Enzymol 100:266−285;およびSambrookら、(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されている。
【0055】
DNA(デオキシリボ核酸):ほとんどの生物の遺伝物質(いくつかのウイルスはリボヌクレオチドであるRNAを含む遺伝子を持っている)を含む長鎖重合体。DNA高分子の繰り返し単位は4種類のヌクレオチドであり、それぞれが、リン酸基が付着しているデオキシリボース糖に結合している4種類の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、およびチミン)のうちの1つを含む。DNA分子内の、コドンと呼ばれるヌクレオチドのトリプレットが、ポリペプチドのアミノ酸をコードしている。コドンという用語は、DNA配列が転写されるmRNA内の3つのヌクレオチドの対応(および相補)配列にも用いられる。
【0056】
ドルーゼン:RPE基底層とブルッフ膜の内部膠質層との間に蓄積する沈着物(例えば、van der Schaftら(1992)Ophthalmol.99:278−86;Spraulら(1997)Arch.Ophthalmol.115:267−73;およびMullinsら、Histochemical comparison of ocular“drusen”in monkey and human,In M.LaVail,J.Hollyfield,and R.Anderson(Eds.),in Degenerative Retinal Diseases(pp.1−10).New York:Plenum Press,1997参照)。硬性ドルーゼンは、均質な好酸性物質を含む、小さな独特の沈着物であり、通常、円形または半球形で、傾斜した辺縁をもたない。軟性ドルーゼンはより大型で、通常は均質でなく、一般的には、介在物および球状の輪郭を含む。ドルーゼンには石灰化しているものもあるかもしれない。ブルッフ膜の内部膠質層と網膜色素上皮(RPE)との間に層を形成する無定形の物質を描写するために「散在性ドルーゼン」または「基層線状沈着物」という用語を用いる。この物質は、盛り上がっていないこと以外は、組織学的に軟性ドルーゼンと類似して見えることがある。
【0057】
B因子(BF):第二補体活性化経路内の補体3の活性化因子前駆体。b因子は、d因子によってc3転換酵素に変えられる。BFはEC3.4.21.47の仲間である。B因子は、一本鎖ポリペプチドとして血液中を循環する。これは、第二経路が活性化されると、補体因子dによって切断されて、非触媒鎖Baおよび触媒サブユニットBbになる。活性型サブユニットBbは、C3bと結びついて第二経路C3転換酵素を形成するセリンプロテアーゼである。BFは第二補体経路C3/C5転換酵素としても知られている。
【0058】
遺伝的素因またはリスク:遺伝性疾患、例えば、AMDなどに対する対象の感受性。ただし、この感受性は、病気を実際に発症させる結果となることもあれば、ならないこともある。
【0059】
ハプロタイプ:個々の染色体の遺伝子構成。2倍体生物において、ハプロタイプは、各部位に関する対立遺伝子対の一方を含む。ハプロタイプは、1つの遺伝子座だけを意味したり、全ゲノムを意味したりすることがある。また、ハプロタイプは、単一の染色分体上で統計学的に関連していると認められた一組の一塩基多型(SNP)も意味することがある。
【0060】
ハイブリダイゼーション:オリゴヌクレオチドおよびその類似体は、相補的塩基の間で、ワトソン−クリック型、フーグスティーン型、または逆フーグスティーン型の水素結合など、水素結合によってハイブリダイズする。一般的に、核酸は、ピリミジン(シトシン(C)、ウラシル(U)、およびチミン(T))またはプリン(アデニン(A)およびグアニン(G))のいずれかである窒素含有塩基からなる。これらの窒素含有塩基は、ピリミジンとプリンの間に水素結合を形成し、このピリミジンとプリンとの結合を「塩基対合」と呼ぶ。より具体的には、AはTまたはUと水素結合し、GはCと結合するはずである。「相補」は、2つの別個の核酸配列間、または同一核酸配列の2つの別個の領域間に生じる塩基対合を意味する。
【0061】
「特異的にハイブリダイズ可能」および「特異的に相補的」とは、オリゴヌクレオチド(またはその類似体)と、DNAまたはRNAの標的との間に安定的で特異的な結合を生させるのに十分な程度の相補性を表す用語である。オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド類似体は、特異的にハイブリダイズ可能な、その標的配列と100%相補的でなくともよい。オリゴヌクレオチドまたは類似体が、標的であるDNA分子またはRNA分子に結合すると、その標的DNA分子またはRNA分子の正常な機能を妨げ、かつ、そのオリゴヌクレオチドまたは類似体が、特異的な結合が望まれる条件下、例えば、インビボにおけるアッセイまたは系の場合には生理学的条件下で、標的以外の配列に非特異的に結合するのを回避できる程度の相補性があるときには、オリゴヌクレオチドまたは類似体は特異的にハイブリダイズ可能である。このような結合は、特異的ハイブリダイゼーションと呼ばれる。
【0062】
特定の度合いのストリンジェンシーをもたらすハイブリダイゼーション条件は、選択されたハイブリダイゼーション法の性質、およびハイブリダイズする核酸配列の組成および長さに依存して変化する。一般的には、ハイブリダイゼーション温度およびハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(特にNa+および/またはMg++の濃度)によって、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが決定されるが、ただし、洗浄回数もストリンジェンシーに影響を及ぼす。特定の度合いのストリンジェンシーを達成するのに必要なハイブリダイゼーション条件に関する計算法が、Sambrookら、(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989,chapters 9 and 11;およびAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology,4th ed.,John Wiley & Sons,Inc.,1999によって検討されている。
【0063】
本開示の目的では、「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイズする分子と標的配列との間に25%よりも低いミスマッチが存在する場合にのみハイブリダイゼーションが起こる条件を含む。「ストリンジェントな条件」は、より正確に定義するために、特定のレベルのストリンジェンシーに分類してもよい。すなわち、本明細書において、「緩やかなストリンジェンシー」条件は、25%よりも大きな配列ミスマッチのある分子がハイブリダイズしない条件であり、「中程度のストリンジェンシー」条件は、15%よりも大きな配列ミスマッチのある分子がハイブリダイズしない条件であり、「高ストリンジェンシー」条件は、20%よりも大きな配列ミスマッチのある分子がハイブリダイズしないものである。「極度な高ストリンジェンシー」条件は、10%よりも大きな配列ミスマッチのある分子がハイブリダイズしない条件である。
【0064】
以下は、一連のハイブリダイゼーション条件の例であって、限定的なものではない。
【0065】
極度な高ストリンジェンシー(90%の同一性を有する配列を検出する)
ハイブリダイゼーション:5×SSC、65℃にて16時間
2回洗浄:2×SSC、室温(RT)にて15分間ずつ
2回洗浄:0.5×SSC、65℃にて20分間ずつ
高ストリンジェンシー(80%以上の同一性を有する配列を検出する)
ハイブリダイゼーション:5×〜6×SSC、65℃〜70℃にて16〜20時間
2回洗浄:2×SSC、RTにて5〜20分間ずつ
2回洗浄:1×SSC、55℃〜70℃にて30分間ずつ
低ストリンジェンシー(50%以上の同一性を有する配列を検出する)
ハイブリダイゼーション:6×SSC、RT〜55℃にて16〜20時間
少なくとも2回洗浄:2×〜3×SSC、RT〜55℃にて20〜30分間ずつ
単離された:「単離された」生体成分(核酸分子、タンパク質、またはオルガネラなど)は、その成分が天然に存在する生物の細胞内にある他の生体成分、例えば、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質、ならびにオルガネラから実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質には、標準的な精製法によって精製された核酸分子およびタンパク質が含まれる。また、この用語は、宿主細胞内で組み換え発現によって調製された核酸分子およびタンパク質、および化学的に合成された核酸分子およびタンパク質も含む。
【0066】
連鎖不平衡(LD):必ずしも同じ染色体上にはない2つ以上の遺伝子座における対立遺伝子のランダムでない関連性。LDは、集団内で、対立遺伝子または遺伝子マーカーのいくつかの組み合わせが、それらの頻度に基づいて、対立遺伝子からハプロタイプがランダムに形成されるときに期待されるよりも高いかまたは低い頻度で存在している状態を表している。独立して遺伝する2つの対立遺伝子が存在する期待頻度は、第1の対立遺伝子の頻度に第2の対立遺伝子の頻度を乗じたものである。期待頻度で共存する対立遺伝子は、連鎖平衡しているという。
【0067】
遺伝子座:染色体上の遺伝子(あるいは、他の重要な配列)の位置。
【0068】
突然変異:遺伝子または染色体内部のDNA配列の変化。いくつかの例において、突然変異は、特性または形質(表現型)を変化させるが、必ずしもそうなるわけではない。突然変異の種類には、塩基置換点突然変異(例えば、トランジションまたはトランスバージョン)、欠失、および挿入などがある。ミスセンス変異は、コードされたタンパク質の配列の中に別のアミノ酸を導入する変異であり、ナンセンス変異は、新たな終止コドンを導入する変異である。挿入または欠失の場合、突然変異は、インフレーム(配列全体のフレームを変えない)の場合もあり、フレームシフト変異の場合もあるが、これは、多数のコドンの読み誤りを生じさせる可能性がある(また、別のフレーム内に終止コドンが存在するために、コードされた産物の異常終止をもたらすことがしばしばある)。
【0069】
この用語は、具体的には、体細胞変異によって生じる変異、例えば、特定の個体において病気細胞のみに見られるが、体質的には見られない変異を含む。このような体細胞的に獲得された変異の例には、癌の発症に関与するさまざまな遺伝子の機能の変化をしばしばもたらす点変異が含まれる。また、この用語は、体質的に存在し、コードされたタンパク質の機能を容易に明らかにできる形で変更し、かつ、罹患した個体の子供に遺伝する可能性があるDNAの変化も含む。この点で、この用語は下記に定義される「多型」と重複するが、一般的には、体質的な変化のサブセットを意味する。
【0070】
核酸分子:重合体型のヌクレオチドであって、RNA、cDNA、ゲノムDNA、ならびにこれらの合成型および混合型重合体のセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含む。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、またはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾型を意味する。本明細書において「核酸分子」は「核酸」および「ポリヌクレオチド」と同義的である。核酸分子は、別段の記載がない限り、通常、長さが少なくとも10塩基である。この用語は、一本鎖型および二本鎖型のDNAを含む。ポリヌクレオチドは、天然型および/または非天然型のヌクレオチド結合によって結合している天然型および修飾型のヌクレオチドの一方または両方を含むことができる。
【0071】
ヌクレオチド:ピリミジン、プリンもしくはそれらの合成類似体など、糖に結合した塩基、またはペプチド核酸(PNA)におけるように、アミノ酸に結合した塩基を含む単量体などであるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの中の1個の単量体である。ヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド中の塩基の配列を意味する。
【0072】
オリゴヌクレオチド:一般に、長さ300塩基以下からなる核酸分子。この用語は、しばしば、一本鎖デオキシリボヌクレオチドを意味するが、同様に、とりわけ、一本鎖または二本鎖のリボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、および二本鎖DNAも意味する。「オリゴヌクレオチド」という用語は、オリゴヌクレオシド(すなわち、リン酸を持たないオリゴヌクレオチド)およびその他の有機塩基重合体も含む。いくつかの例において、オリゴヌクレオチドは長さが約10から約90塩基、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19または20塩基の長さである。その他のオリゴヌクレオチドは、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60塩基、約65塩基、約70塩基、約75塩基、または約80塩基の長さである。オリゴヌクレオチドは、例えば、プローブまたはプライマーとして用いるためには一本鎖であってもよく、例えば、突然変異遺伝子を構築する際に用いるには二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれであってもよい。核酸分子に関して上述したように、オリゴヌクレオチドを修飾することができる。オリゴヌクレオチドは、既存の核酸由来源(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)から得ることができるが、合成(例えば、研究室またはインビトロでのオリゴヌクレオチド合成によって作出)することもできる。
【0073】
多型:遺伝子配列における変異。多型は、個体間、または異なった民族の間、およびに地理的位置間に見られる変異(DNA配列の差異)であって、異なった配列をもっていても、機能的に同等の遺伝子産物を産生する変異であってもよい。また、この用語は、機能的に同等でない遺伝子産物を生じうる配列の変異体も意味する。また、多型は、機能が変化しているかもしれない遺伝子産物を生じさせることができる対立遺伝子および/または変異として分類することができる変異も含む。また、多型は、遺伝子産物を生じさせないか、または不活性な遺伝子産物、または異常な割合で、もしくは不適切な組織の中で、もしくは不適切な刺激に応答して活性型遺伝子産物を産生する対立遺伝子および/または変異として分類することができる変異も含む。さらに、この用語は、必要に応じて、対立遺伝子と同義的に用いられる。
【0074】
多型は、例えば、変異が存在するヌクレオチドの位置で、ヌクレオチドの変異によって生じたアミノ酸配列の変化で、または変異と連関した核酸分子もしくはタンパク質のその他何らかの特徴の変化で言及されることもある。
【0075】
プローブおよびプライマー:プローブは、標的核酸配列を認識する、同定可能な、単離核酸を含む。プローブは、アドレス可能な位置、検出可能な標識、またはその他のレポーター分子に付着している核酸であって、標的配列とハイブリダイズする核酸を含む。一般的な標識には、放射性同位元素、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光性もしくは蛍光性の薬剤、ハプテン、および酵素などがある。標識する方法、およびさまざまな目的に適した標識を選択する際の指針が、例えば、Sambrookら(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989およびAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology,4th ed.,John Wiley & Sons,Inc.,1999で論じられている。
【0076】
プライマーは短い核酸分子、例えば、連続した相補的なヌクレオチドまたは増幅すべき配列にハイブリダイズする、例えば、長さ10ヌクレオチド以上のDNAオリゴヌクレオチドである。それより長いDNAオリゴヌクレオチドは長さが約15、20、25、30または50ヌクレオチド以上あってもよい。プライマーを、核酸ハイブリダイゼーションによって、相補的な標的DNA鎖にアニールさせて、プライマーと標的DNA鎖との間にハイブリッドを形成させ、その後、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿ってプライマーを伸長させることができる。プライマー対は、後述するように、例えば、PCR法または当技術分野において既知の核酸増幅法によって、核酸配列の増幅に用いることができる。
【0077】
核酸のプローブおよびプライマーを調製して用いるための方法は、例えば、Sambrookら(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989;AusubelらShort Protocols in Molecular Biology,4th ed.,John Wiley & Sons,Inc.,1999;およびInnisらPCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.,San Diego,CA,1990に記載されている。増幅プライマー対は、例えば、Primer(Version 0.5,著作権1991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,MA)など、その目的のためのコンピュータプログラムを用いて、既知の配列から得ることができる。当業者は、特定のプローブまたはプライマーの特異性が、その長さが長くなるのにしたがって増加すると理解していよう。したがって、さらに大きい特異性を得るためには、標的ヌクレオチド配列の少なくとも20、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上の連続したヌクレオチドを含むプローブまたはプライマーを選択することができる。
【0078】
試料:ヒトまたは非ヒト哺乳類の対象から得られた試料。本明細書において、生体試料は、細胞、組織、および体液、例えば、血液;血液の誘導体および画分(血清または血漿など);抽出胆汁;生検組織または手術摘出組織であって、例えば、固定されていない、凍結された、ホルマリン固定された、および/またはパラフィン抱埋された組織など;涙;乳;皮膚の切屑;表面洗浄物;尿;痰;脳脊髄液;前立腺液;膿;骨髄吸引液;BAL;唾液;子宮頸部拭き取り検体;膣拭き取り検体;および口腔咽頭洗浄物など、対象内での遺伝子解析に有用なすべての試料を含むが、これらに限定されない。
【0079】
一塩基多型すなわちSNP:同種の仲間でゲノム内の単一ヌクレオチド;アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)またはグアニン(G)が異なる場合に生じるDNA配列変異。本明細書において、「一塩基多型」(またはSNP)という用語は突然変異および多型を含む。SNPは、遺伝子のコード配列(CDS)の内部、または遺伝子の間(遺伝子間領域)に含まれることがある。CDS内部のSNPは、コドンを変え、タンパク質配列内のアミノ酸を変えることもあれば、変えないこともある。前者は異なった対立遺伝子を構成する可能性がある。後者はサイレント変異と呼ばれ、一般的には、(ゆらぎ位置と呼ばれる)コドンの第3位に生じる。
【0080】
対象:ヒトまたは非ヒト哺乳類(獣医学の対象など)。
AMDのリスクが増大している対象を同定する方法
加齢性黄斑変性症(AMD)を発症するリスクが増大している対象を同定するための方法を提供する。これらの方法は、対象のB因子(BF)および/または補体成分2(C2)の遺伝子を解析すること、および対象が少なくとも1つの防御型多型を持っているかどうかを判定することを含む。ただし、その防御型多型は、a)BF内のR32Q(rs641153);b)BF内のL9H(rs4151667);c)C2内のIVS10(rs547154);およびd)C2内のE318D(rs9332739)からなる群から選択される。対象が少なくとも1つの防御型多型を持っていなければ、その対象はAMDを発症するリスクが増大している。この方法は、さらに、対象のCFH遺伝子、またはその他任意の所望の遺伝子を解析することを含みうる。本明細書に記載されているように、CFH遺伝子内のdelTT多型は、AMDについて防御的であることが同定されている。
【0081】
また、この方法は、BFまたはC2の遺伝子座のいずれか、およびCFH遺伝子座における対象の遺伝子型を解析すること、および対象が、a)BF内のR32Q(rs641153)多型についてヘテロ接合;b)BF内のL9H(rs4151667)多型についてヘテロ接合;c)C2内のIVS10(rs547154)多型についてヘテロ接合;およびd)C2内のE318D(rs9332739)多型についてヘテロ接合;e)CFH内のdelTT多型についてホモ接合;およびf)BF内のR150R(rs1048709)多型についてホモ接合かつCFH内のY402についてホモ接合からなる群から選択される少なくとも1つの防御的遺伝子型を持っているかを判定することも含む。ただし、対象が少なくとも1つの防御的遺伝子型を持っていなければ、対象のAMDを発症するリスクは増大している。あるいは、この方法は、BFおよびC2の遺伝子座、ならびにCFH遺伝子座における対象の遺伝子型を解析することを含んでもよい。また、本明細書で提供する方法は、対象が、上記に示した多型または遺伝子型の少なくとも1つを持つか否かを判定することによって、AMDを発症するリスクが低下している対象を同定するのにも有用である。
【0082】
特定の多型の有無に関する対象の遺伝物質の解析は、対象由来の試料を得ることによって行われる。この試料は、DNAまたはRNAを単離することができる、対象の身体のいずれの部位からのものであってもよい。試料から単離されたタンパク質に対して解析を行ってもよい。そのような試料の例については、より詳しく後述する。対象は、初期AMD、脈絡膜血管新生、または地図状萎縮などのAMDと診断されていてもよい。対象は、AMDの症状、例えば、ドルーゼン、色素変化、滲出性変化、例えば、出血、硬性白斑、もしくは網膜下/RPE下/網膜内液、視力低下、かすみ目、乱視(変視症)、中心暗点、または色覚異常などをもっていてもよい。あるいは、対象は、AMDと診断されたことはないが、家族歴、年齢、人種、または生活様式の選択肢に基づくと高リスク群に入っているかもしれない。これらの生活様式の選択肢には、喫煙、日光への曝露(特に青色光)、高血圧、心血管系危険因子、例えば、高コレステロールおよび肥満、高脂肪摂取、ならびに酸化ストレスなどがあるが、これらに限定されない。また、AMD発症の危険にさらされている対象には、CFH遺伝子内のリスク型ハプロタイプY402Hについてヘテロ接合またはホモ接合である者も含まれる。
【0083】
対象となる特定の多型または遺伝子型の有無を判定するための技術は、当技術分野においてよく知られている。これらの方法の例は後述するが、用いられた具体的な方法に限定しようとするものではない。さらに、本明細書に開示された特定の多型について、対象のBF遺伝子、C2遺伝子、またはCFH遺伝子を解析することには、その多型で見られるアミノ酸変異をもたらす突然変異を検出することも含まれるものとする。例えば、BF内のL9H多型は、第9位のアミノ酸に対するヌクレオチドコドンをCTCからCACに変えて、ロイシンの代わりにヒスチジンを生成する。この変異は、CATヌクレオチドコドンがCATであることによっても特定することができる。C2内のE318D多型は、第318位のアミノ酸に対するヌクレオチドコドンをGAGからGACに変えて、グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸を生成する。この変異は、ヌクレオチドコドンがGATであることによっても特定することができる。BF内のR150R多型は、第150位のアミノ酸に対するヌクレオチドコドンをCGGからCGAに変える。この変異は、コードされているアミノ酸(アルギニン)を変えない。アルギニンは、CGTまたはCGCによってもコードされうる。さらに、アルギニンは、AGAまたはAGGによってもコードされうる。CFH内のY402H多型は、第402位のアミノ酸に対するヌクレオチドコドンをTATからCATに変えて、チロシンの代わりにヒスチジンを生成する。この変異は、ヌクレオチドコドンがCACであることによっても特定することができる。これらのヌクレオチドコドンのいずれか、または当業者が同定することができるその他のヌクレオチドコドンも、対象内で検出することができる。
【0084】
本発明の方法によって、AMDを発症する対象の少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%を同定することができる。
AMD予防療法
本開示は、AMDを発症する遺伝的素因を有すると判定された対象におけるAMDの発生を回避または低下させる方法も提供する。例えば、前述の方法を用いる際に、前述の危険因子のいずれかに基づいてAMDを発症するリスクのある対象において、BF遺伝子、C2遺伝子、および/またはCFH遺伝子に突然変異または防御性多型が同定されない場合、AMDの発生を回避または低下させるか、AMDの発症を遅らせたりするためには、生活様式の選択を対象に負わせることができる。例えば、対象は、禁煙したり;より少ない脂肪摂取を含むように食事を変えたり;ビタミンCおよびE、β−カロテン、および亜鉛などの抗酸化物の摂取量を増加させたり;網膜血管新生の発症を遅らせる薬を予防量摂取したりしてもよい。このような個人に対する治療法は、一定の病原体に対するワクチン、または抗生物質、または抗ウイルス薬、または抗真菌薬を含むかもしれない。また、治療法は、抗炎症薬または補体阻害剤も含むかもしれない。いくつかの例において、選択される治療法は、対象の遺伝子プロフィールの解析に基づいて、その対象に特異的で個別に適合するようになっている。
既知の多型の検出法
既知の多型を検出する方法には、制限断片長多型(RFLP)法、一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)、マッピング法、核酸シーケンシング法、ハイブリダイゼーション法、蛍光インシトゥハイブリダイゼーション(FISH)法、PFGE解析法、RNA分解酵素保護アッセイ法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法、ドットブロット解析法、対立遺伝子特異的PCR増幅(ARMS)法、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)法、およびPCR−SSCP法などがあるが、これらに限定されない。最近開発された質量分析法(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)法または飛行時間型MALDI(MALDI−TOF)法など)、および突然変異を検出するためのDNAマイクロチップ技術も有用である。例えば、Human Molecular Genetics 2.Tom StrachanおよびAndrew編、Read.New York:John Wiley & Sons Inc.,1999の第6章および17章参照。
【0085】
これらの技術は、解析の前に核酸を増幅することを含んでいてもよい。増幅技術は、当業者に周知であり後述する。
【0086】
多型が、制限酵素の認識部位を作出するか破壊するヌクレオチド変異を生じさせると、その制限酵素を用いてその多型を同定することができる。多型部位全域をPCR増幅してから、関連する制限酵素でPCR産物を分解することによって、多型対立遺伝子を区別することができる。ゲル電気泳動法などのサイズ分画法を用いて、さまざまな産物を検出することができる。あるいは、制限断片長多型(RFLP)法を用いることも可能である。多型が制限部位の違いをもたらさない場合には、増幅によって作られた制限部位PCRによって対立遺伝子間の違いを検出することができる。この方法では、制限部位の直近に隣接しているが、それを包含していない配列からプライマーを設計する。このプライマーは、両方の多型配列のハイブリダイゼーションおよび増幅を妨げない、重要でない位置に一塩基のミスマッチを有するように慎重に設計される。このヌクレオチドミスマッチが、多型部位の配列と一緒になって、対立遺伝子の一方に存在しない制限部位を作出する。
【0087】
一本鎖高次構造多型(SSCP)マッピング法は、配列変化によって、一本鎖の分子内塩基対合に差異が引き起されたために示差的に移動するようになったバンドを検出する。たった1つの塩基が異なる一本鎖DNA分子は、しばしば、非変性ゲル中で異なった電気泳動移動度を示す。正常型DNAと変異型DNAの移動度の差異は、標識プローブを用いるハイブリダイゼーションよって明らかになる。特に、DNA断片のサイズが約500bpより大きい場合には、この方法によってすべての配列変化が検出できるわけではないが、ほとんどのDNA配列変異を検出すように最適化することはできる。検出感度が低いことが不都合ではあるが、SSCPによって処理量の増加が可能になることから、この方法は、研究ベースでは、変異検出のための直接シーケンシング法に代わる魅力的な方法となっている。そこで、SSCPゲル上で移動度を変えた断片をシーケンシングして、DNA配列変異の正確な性質を測定する。
【0088】
手動によるシーケンシングまたは自動蛍光シーケンシングのいずれかによる直接DNAシーケンシングによって、配列変異を検出することができる。
【0089】
Taqポリメラーゼを用いて、特異的な対立遺伝子の検出を行うことができる(Hollandら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:7276−80;Leeら(1999)J.Mol.Biol.285:73−83)。これは、Taqポリメラーゼがプルーフリーディングする3’→5’エキソヌクレアーゼ活性をもたないが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性をもつという事実に基づいている。このアッセイ法は、標的配列に特異的である、2つの従来型PCRプライマー(順方向と逆方向)と、順方向プライマー結合部位の下流にある標的配列上の部位に特異的に結合するように設計されている第3のプライマーを用いることを含む。第3のプライマーは、通常、5’末端においてレポーター色素、また、3’末端において、レポーター色素とは異なる発光波長を有するクエンチャー色素という2種類のフルオロフォアで標識されている。また、第3のプライマーは、単独では新たなDNA合成を開始することができないように、3’末端のヌクレオチドに保護基も担持している。PCR反応の過程で、TaqDNAポリメラーゼは、順方向プライマーによって開始される新たなDNA鎖を合成し、この酵素が第3のプライマーに接近するにしたがって、その5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によって、第3のプライマーをその5’末端から次第に分解していく。その最終結果として、新生DNA鎖が第3のプライマー結合部位を越えて伸長し、レポーター色素およびクエンチャー色素はもはや同じ分子に結合できなくなる。レポーター色素がクエンチャー色素の近くに存在しなくなると、レポーターの発光強度の増加がもたらされ、それを検出することができるようになる。
【0090】
多型は、所望の遺伝子内にある特定の多型とハイブリダイズするように設計された1つ以上のハイブリダイゼーション用プローブを用いて同定することができる。ハイブリダイゼーション検出法に用いられるプローブを、ハイブリダイゼーションが成功したことを検出することができよう、何らかの方法で標識しなければならない。これは、放射標識されたヌクレオチドによってプローブ内のヌクレオチドを置換するニックトランスレーション法などのインビトロ法によるか、または、標識されたコピーを合成するための鋳型として非標識分子が働くランダムプライマー伸長法によって行うことができる。ハイブリダイゼーションを検出するためにプローブを標識する、その他の標準的方法が当業者に知られている。
【0091】
長さが最大約2kbまでのDNA断片については、変異体−正常体ヘテロ二本鎖内のミスマッチ塩基のところで化学的に切断することによって一塩基の変化を検出することができる。例えば、目的とする多型を含まないDNA鎖の片側の端を放射標識し、次に、対象DNA鎖の一方の鎖とハイブリダイズさせる。得られたヘテロ二本鎖DNAをヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムで処理すると、それらは、対合しない一本鎖領域内のC、またはCおよびTをそれぞれ修飾し、修飾された骨格がピペリジンによって切断されやすくなる。目的とする多型を含まないDNAと比較しながら、短くなった標識断片をゲル電気泳動法およびオートラジオグラフィーによって検出する。
【0092】
ミスマッチとは、二本の鎖が100%相補的ではない、ハイブリダイズした核酸二本鎖のことである。全体的な相同性の欠如は、欠失、挿入、逆位、または置換が原因である可能性がある。ミスマッチの検出を利用して、遺伝子内またはそのmRNA産物内にある点変異を検出することができる。これらの手法はシーケンシング法よりも感度は低いが、多数の試料に対して実施しやすい。ミスマッチ切断手法の一例はRNA分解酵素保護法である。この方法は、検出中の多型(通常は、AMDからの防御とは関連性のない多型)の1つの変異に相補的な標識リボプローブの使用を伴う。このリボプローブと、被検者から単離したmRNAまたはDNAのどちらかとを共にアニーリング(ハイブリダイズ)してから、二本鎖RNA構造内のいくつかのミスマッチを検出することができる酵素であるRNA分解酵素Aによって分解させる。RNA分解酵素Aによってミスマッチが検出されると、そのミスマッチ部位で切断される。したがって、アニーリングされたRNA調製物を電気泳動ゲルマトリックス上で分離すると、もし、ミスマッチがRNA分解酵素Aによって検出されて切断されていれば、そのリボプローブに相当する全長二本鎖RNA、およびmRNAまたはDNAよりも短いRNA産物が見られるはずである。リボプローブは、mRNAまたは遺伝子の全長である必要はなく、どちらかの分節であってもよい。あるいは、ミスマッチは、一致した二本鎖と比較して、ミスマッチ二本鎖の電気泳動移動度が変化することによって検出することができる。
【0093】
PCR法を用いて増幅されたBF、C2またはCFHの各遺伝子のDNA配列も、対立遺伝子特異的なプローブまたはオリゴヌクレオチド(ASO)を用いてスクリーニングすることができる。これらのプローブは核酸オリゴマーであって、そのひとつひとつが、既知の変異または多型をもつ遺伝子配列の領域を含んでいる。例えば、あるオリゴマーは、長さが約30ヌクレオチドであって、BF遺伝子、C2遺伝子、またはCFH遺伝子の配列の一部に相当しているかもしれない。そのような対立遺伝子特異的プローブ一連のものを用いて、PCR増幅産物をスクリーニングして、本明細書に記載されている1つ以上の多型の存在を同定することができる。対立遺伝子特異的プローブの、増幅したBF、C2またはCFHの配列へのハイブリダイゼーションは、例えば、ナイロンフィルター上で行うことができる。また、逆ドットブロット法を用いてもよい。例えば、1つ以上の多型性のスクリーニングは、各多型性対立遺伝子に特異的な一連のASOであって、標識されたPCR増幅被検DNAとハイブリダイズさせることになる単一膜上にスポットされた一連のASOを用いて行うことができる。これらのアッセイ法は、少数の手動でスポットされたアレイから、多数の多型を検出する可能性を秘めた「遺伝子チップ」上の非常に大きなASOアレイにまで及ぶ。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で特定のプローブにハイブリダイズすることは、対立遺伝子特異的プローブにある多型と同一の多型が組織中に存在することを示している。このような技術では、金のナノ粒子で標識されて、可視的な着色結果をもたらすプローブを利用することができる(Elghanianら(1997)Science 277:1078−81)。
【0094】
対立遺伝子特異的PCR増幅法は、増幅不応性変異システム(ARMS)と呼ばれる方法に基づいている(Newtonら(1989)Nucleic Acids Res.17:2503−16)。この方法では、ミスマッチ3’−残基をもつオリゴヌクレオチドが、適当な条件下ではPCRのプライマーとして機能しない。2種類のプライマー、すなわち一つは共通プライマーであり、他方は、2つのわずかに異なった形で存在する、各多型に特異的なプライマーを用いて、ペアードPCR反応を実施する。これらの対立遺伝子特異的プライマーは、変異体ヌクレオチドの前に位置し、変異体ヌクレオチド自体まで続き、その中で終わる領域にわたって、2つの対立遺伝子の配列と同一であるように設計されている。したがって、特定の多型または突然変異が存在しなければ、増幅産物は認められない。一般的には、別の対照用プライマーを用いて、無関係の配列を増幅する。共通プライマーの位置は、異なった多型について異なった大きさの産物を生成して、多重反応からのPCR産物がゲル上でラダーを形成するように設計することができる。多型特異的プライマーは、さまざまな蛍光標識またはその他の標識で標識することができ、あるいはさまざまな大きさの5’伸長物を付加してもよい。この方法は、リアルタイムPCRに使用できるよう適合させることができる。
【0095】
オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)では、2種類のオリゴヌクレオチドが、標的内で隣接配列にハイブリダイズするように設計されている。これらが結合する部位が多型部位である。これら2種類のオリゴヌクレオチドが完全にハイブリダイズしている場合に限り、DNAリガーゼが、この2つのオリゴヌクレオチドを連結させる(Nickersonら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:8923−7)。このアッセイは、ELISA解析法または蛍光シーケンチャーなど、さまざまなフォーマットを用いることができる。
【0096】
マイクロチップ技術を用いる核酸解析技術を用いることもできる。この技術では、シリコンチップ上のアレイ内に、何千もの個別のオリゴヌクレオチドプローブを作成することが可能である。解析の対象となる核酸は蛍光標識されており、チップ上でこれらのプローブとハイブリダイズする。これらの核酸マイクロチップを用いて、核酸−タンパク質の相互作用を調べることも可能である。この技術を用いて、突然変異の存在を判定し、更には、解析中の核酸の配列決定をすることができ、あるいは、対象となる遺伝子の発現レベルを測定することができる。この方法は、同時に、何千であってもよい数多くのプローブを並列処理する方法であり、解析速度を飛躍的に増大させることができる。
【0097】
当技術分野で知られている任意の技術によって、BF、C2、またはCFHのmRNA発現の変化を検出することができる。これらには、ノーザンブロット解析法、PCR増幅法、およびRNA分解酵素保護法などがある。mRNA発現の減少は野生型遺伝子が変化したことを示している。特定の対立遺伝子がアミノ酸変異を有するタンパク質を産生する場合には、対立遺伝子検出法は、タンパク質に基づくことができる。例えば、アミノ酸変異に特異的なエピトープは、モノクローナル抗体によって検出することができる。あるいは、BF、C2、またはCFHと免疫反応性のあるモノクローナル抗体を用いて、組織をスクリーニングすることができる。同種抗原が存在しなければ、突然変異があることが示されよう。また、変異対立遺伝子の産物に特異的な抗体を用いて、変異遺伝子の産物を検出することもできる。このような免疫アッセイは、当技術分野で知られている都合のよいフォーマットで行うこともできる。これらには、ウエスタンブロット法、免疫組織化学的アッセイ法、およびELISAアッセイ法などがある。改変タンパク質を検出するための任意の手段を用いて、野生型のBF遺伝子、C2遺伝子、またはCFH遺伝子の改変を検出することができる。機能分析法、例えば、タンパク質結合測定法などを用いることができる。さらに、BF、C2、またはCFHの生化学的機能を検出するアッセイ法を用いることができる。変異型のBF、C2、またはCFHの遺伝子産物が見つかれば、野生型のBF、C2またはCFHの遺伝子が変更されたことが示される。
【0098】
核酸分子の増幅
対象から得られた核酸試料は、検出前に臨床試料から増幅してもよい。一つの実施形態では、DNA配列を増幅する。別の実施形態では、RNA配列を増幅する。
【0099】
任意の核酸増幅法を用いることができる。一つの具体的で非限定な例では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、AMDに関連する核酸配列を増幅する。その他の方法例には、RT−PCR法および転写介在増幅(TMA)法、クローニング法、対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PASA)法、リガーゼ連鎖反応法、ならびにネスティッドポリメラーゼ連鎖反応法があるが、これらに限定されない。
【0100】
プライマー対は、増幅反応に利用することができる。一方または両方のプライマーを、例えば、検出可能な放射標識、フルオロフォア、またはビオチン分子で標識することができる。このプライマー対は、上流プライマー(下流プライマーの5’に結合する)および下流プライマー(上流プライマーの3’に結合する)を含むことができる。増幅反応に用いられるプライマー対は、AMDに関係する核酸を増幅することを可能にする選択プライマーであってもよい。
【0101】
別のプライマー対を内部対照として増幅反応の中に含ませることができる。例えば、これらのプライマーは、「ハウスキーピング」核酸分子を増幅するのに用いることができ、適正な増幅が行われたことを確認するのに役立つ。別の例では、プライマーハイブリダイゼーション部位を含む標的核酸分子を構築して、増幅反応器の中に入れることができる。当業者は、内部対照プライマーとして働くプライマー対を容易に同定することができよう。
【0102】
増幅産物は、サイズ分析、制限酵素消化後のサイズ分析、反応産物中の特異的標識オリゴヌクレオチドプライマー検出、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーション、シーケンシング、ハイブリダイゼーションなどのさまざまな方法でアッセイすることができる。
【0103】
PCR法に基づく検出アッセイ法は、複数の多型を同時に多重増幅することを含む。例えば、大きさが重複しないため、同時に解析することができるPCR産物を作成するためにPCRプライマーを選択することが、当技術分野でよく知られている。あるいは、示差的に標識されているために、それぞれを検出することができるプライマーによって、さまざまな多型を増幅することが可能である。複数の多型性を多重解析できるようにする、その他の技術が当技術分野で知られている。遺伝子の断片を増幅してコピーをつくり、断片のコピーが特定の防御型の多型または遺伝子型を含むか否か判定することができる。
防御タンパク質の免疫検出法
本発明の一つの実施形態において、対象のC2遺伝子またはBF遺伝子における多型を特徴づける、例えば、防御タンパク質を検出または同定するために、タンパク質アッセイ法を実施する。変異タンパク質を検出するために適合させることができる方法が当技術分野においてよく知られており、電気泳動法(キャピラリー電気泳動法および二次元電気泳動法を含む)などの分析生化学的方法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィー、質量分析法などのクロマトグラフ法、液体プレシピチン反応またはゲルプレシピチン反応、免疫拡散法(一次元および二次元)、免疫電気泳動法、放射免疫測定(RIA)法、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)法、免疫蛍光アッセイ法、ウエスタンブロット法などの免疫学的方法がある。
【0104】
例えば、本発明を実施するのに適した、いくつかの確立した免疫学的結合アッセイフォーマットが知られている(例えば、Harlow,E.;Lane,D.Antibodies:A laboratory manual.Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory;1988;およびAusubelら、(2004)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York NY参照)。このアッセイ法は、例えば、競合的なものであっても、非競合的なものであってもよい。一般的には、免疫学的結合アッセイ法(すなわち免疫測定法)は、分析物と特異的に結合し、しばしば、それを固定するために「補足剤」を利用する。一つの実施形態において、補足剤は、変異型のC2またはBFのポリペプチドまたは部分列に特異的に結合する部分である。結合タンパク質は、例えば、検出可能に標識された抗C2/BF抗体を用いて検出することができる。一つの実施形態において、抗体の少なくとも1つは、変異体に特異的である(例えば、野生型のC2ポリペプチドまたはBFポリペプチドには結合しない)。
【0105】
このように、一の態様では、この方法は、対象から試料(例えば、血液、血清、血漿、または尿)を得ること、この試料を、防御型および非防御型のC2またはBFを識別する結合剤に接触させること、そして、結合剤と、もし存在するのであれば非防御型のC2またはBFとの間で複合体が形成されたことを検出することを含む。抗体パネルを用いて、患者の試料内にある防御タンパク質を検出できることが理解されよう。
【0106】
本発明は、防御型のC2タンパク質またはDFタンパク質には特異的に結合するが、野生型ポリペプチド(すなわち、防御と関係ないC2タンパク質またはBFタンパク質)には特異的に結合しない抗体も提供する。これらの抗体は、防御型にしか存在しないエピトープに結合する。例えば、ある抗体は、上記したように、野生型のBF(Genbank受入番号.NM_001710;AAB67977によってコードされている)またはC2(Genbank受入番号.NM_000063;NP_000054によってコードされている)には結合しないが、BFまたはC2の変異体(すなわち、AMDに対して防御的であると本明細書に記載されている多型の1つを有するタンパク質)と結合する。例えば、この抗体は、第32位にグルタミンを有するか、または第9位にヒスチジンを有するBFタンパク質、または第318位にアスパラギン酸を有するC2を認識することができる。
【0107】
この抗体は、ポリクローナルであってもモノクローナルであってもよく、標準的なプロトコルに従って作成される。抗体は、防御タンパク質またはその断片を適当な哺乳類に注射して作成することができる。標準的なプロトコルに従ってモノクローナル抗体をスクリーニングする(KoehlerとMilstein 1975、Nature 256:495;Dowerら、WO91/17271、およびMcCaffertyら、WO92/01047;およびVaughanら、1996,Nature Biotechnology,14:309;ならびに下記の参考文献)。モノクローナル抗体は、当技術分野において周知の方法を用いて、対応する野生型ポリペプチドではなく、防御型ポリペプチドを用いて、特異的免疫活性についてアッセイすることができる。抗体のスクリーニング法およびサブトラクション法など、方法に関しては、HarlowとLane、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,New York(1988);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら、eds.,1999,including supplements through 2005);Goding,Monoclonal Antibodies,Principles and Practice(2d ed.)Academic Press,New York(1986);Burioniら、1998,”A new subtraction technique for molecular cloning of rare antiviral antibody specificities from phage display libraries”Res Virol.149(5):327−30;Amesら、1994,Isolation of neutralizing anti−C5a monoclonal antibodies from a filamentous phage monovalent Fab display library.J Immunol.152(9):4572−81;Shinoharaら、2002,Isolation of monoclonal antibodies recognizing rare and dominant epitopes in plant vascular cell walls by phage display subtraction.J Immunol Methods 264(1−2):187−94参照。免疫またはスクリーニングは、全長防御タンパク質に対するものであってもよいし、あるいは(しばしば、より簡便には)、変異型と野生型で異なることが知られているエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド断片に対するものであってもよい。抗体は、2本の軽鎖および2本の重鎖を含む四量体として、別々の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvとして、または重鎖および軽鎖の可変ドメインがスペーサーを介して連結している一本鎖抗体として発現させることができる。
【0108】
核酸分子の増幅
対象から得られた核酸試料は、検出前に臨床試料から増幅してもよい。一つの実施形態では、DNA配列を増幅する。別の実施形態では、RNA配列を増幅する。
【0109】
任意の核酸増幅法を用いることができる。一つの具体的で非限定な例では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、AMDに関連する核酸配列を増幅する。その他の方法例には、RT−PCR法および転写介在増幅(TMA)法、クローニング法、対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PASA)法、リガーゼ連鎖反応法、ならびにネスティッドポリメラーゼ連鎖反応法があるが、これらに限定されない。
【0110】
プライマー対は、増幅反応に利用することができる。一方または両方のプライマーを、例えば、検出可能な放射標識、フルオロフォア、またはビオチン分子で標識することができる。このプライマー対は、上流プライマー(下流プライマーの5’に結合する)および下流プライマー(上流プライマーの3’に結合する)を含むことができる。増幅反応に用いられるプライマー対は、AMDに関係する核酸を増幅することを可能にする選択プライマーであってもよい。
【0111】
別のプライマー対を内部対照として増幅反応の中に含ませることができる。例えば、これらのプライマーは、「ハウスキーピング」核酸分子を増幅するのに用いることができ、適正な増幅が行われたことを確認するのに役立つ。別の例では、プライマーハイブリダイゼーション部位を含む標的核酸分子を構築して、増幅反応器の中に入れることができる。当業者は、内部対照プライマーとして働くプライマー対を容易に同定することができよう。
【0112】
増幅産物は、サイズ分析、制限酵素消化後のサイズ分析、反応産物中の特異的標識オリゴヌクレオチドプライマー検出、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーション、シーケンシング、ハイブリダイゼーションなどのさまざまな方法でアッセイすることができる。
【0113】
PCR法に基づく検出アッセイ法は、複数の多型を同時に多重増幅することを含む。例えば、大きさが重複しないため、同時に解析することができるPCR産物を作成するためにPCRプライマーを選択することが、当技術分野でよく知られている。あるいは、示差的に標識されているために、それぞれを検出することができるプライマーによって、さまざまな多型を増幅することが可能である。複数の多型性を多重解析できるようにする、その他の技術が当技術分野で知られている。遺伝子の断片を増幅してコピーをつくり、断片のコピーが特定の防御型の多型または遺伝子型を含むか否か判定することができる。
補体因子H(CFH)
CFH遺伝子は、家族ベースの研究では、Iq染色体上のAMDに反復して結合している領域内に位置している。最近、3つの独立した研究によって、補体因子H遺伝子内でチロシンをヒスチジンに変える(Y402H)、エキソン9内の1277位のヌクレオチドにおけるT→Cへの置換という多型が、AMDへの感受性に実質的に関与していることが明らかになった(Kleinら(2005)Science 308:385−389;Hainesら(2005)Science.308:4l9−421;Edwardsら(2005)Science.308:421−424)。これらの研究では、AMDのオッズ比が、C対立遺伝子の保因者について3.3〜4.6、CCホモ接合体については3.3〜7.4であることが報告された。その後、2つの別の研究によって、この連関が確認された(Zareparsiら(2005)Am.J.Hum.Genet.77:149−153;Hagemanら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102:7227−7232)。1つの研究では、7つの別の共通SNPが、Y402H多型以外にもAMDと関連していることが分かった(Hagemanら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102:7227−7232)。
【0114】
対連鎖解析によって、前記7つの多型が連鎖不平衡にあり、これらの多型を一組もつ1つの共通リスク型ハプロタイプが、症例者の50%対対照者の29%で検出された[OR=2.46、95%CI(1.95〜3.11)]。このハプロタイプのホモ接合体は、症例者の24.2%および対照者の8.3%で見出された。また、2つの共通した防御型ハプロタイプが、対照者の34%および症例者の18%で見出された[OR=0.48、95%CI(0.33〜0.69)]および[OR=0.54、95%CI(0.33〜0.69)]。
【0115】
B因子および補体成分2
第二経路の活性化は、C3bに結合したB因子(BF)がD因子に触媒されて切断されることにより開始され、その結果、C3Bb複合体(C3転換酵素)が形成される。この複合体は、調節タンパク質のプロパージン(properdin)によって安定化されるが、一方で、その解離が、CFHなどの調節タンパク質によって促進される。BFおよびC2は、ヒト染色体6p21上でわずか500bpしか離れていない位置にあるパラロガス遺伝子である。C2は古典的補体経路内で機能する。これら2つの遺伝子は、補体成分4A(C4A)および4B(C4B)をコードする遺伝子とともに、主要組織適合複合体(MHC)クラスIII領域内にあるHLA−BとHLA−DR/DQの間で約100〜120kbを占めている「コンプロタイプ(complotype)」(補体ハプロタイプ)を含んでいる。
【0116】
臨床試料
対象のAMDに罹りやすい遺伝的素因を測定する際に本開示とともに用いるのに適した臨床試料は、血液または血液分画(血清または血漿など)、含嗽液または口腔を掻きとったもの、絨毛膜生検試料、精液、ガスリーカード、眼内液、痰、リンパ液、尿、および組織を含む、従来の臨床試料であるが、これらに限定されない。最も簡単には、血液を採取し、血液の細胞からDNA(またはRNA)を抽出することができる。野生型のBF、C2、および/またはCFHの対立遺伝子の変化は、例えば、点変異であろうと欠失であろうと、本明細書に記載された手段のいずれによっても検出することができる。
【0117】
そのような試料を得るための技術は当技術分野において周知されている(血清試料の採集については、例えば、Schlugerら(1992)J.Exp.Med.176:1327−33参照)。血清またはその他の血液分画は、従来の方法で調製することができる。例えば、約200μLの血清を用いて、増幅反応で使用するDNAを抽出することができる。
【0118】
いったん試料が得られれば、この試料を直接用いるか、(例えば、遠心または濾過によって)濃縮するか、精製するか、または、これらを組み合わせることができ、そして、増幅反応を実施することができる。例えば、市販のキット(the InstaGene Matrix,BioRad,Hercules,CA;the NucliSens isolation kit,Organon Teknika,Netherlandsなど)を用いて、迅速にDNA調製を行うことができる。一例では、このDNA調製法によって、核酸増幅に利用しやすく、これを容易に行うことができるヌクレオチド調製物が得られる。
【0119】
マイクロアレイ
特定の例において、BF遺伝子、C2遺伝子、および/またはCFH遺伝子における多型を検出する方法では、本明細書に開示されたアレイが用いられる。このようなアレイは核酸分子を含むことができる。一例では、このアレイは、本明細書に開示された多型のような多型性のBF、C2、および/またはCFHの遺伝子配列にハイブリダイズできる核酸オリゴヌクレオチドプローブを含む。このようなアレイの一定のものは(ならびに本明細書に開示された方法)、AMDを発症するリスクに関連するか、それからの防御に関連するその他の多型、および、1つ以上のハウスキーピング遺伝子を認識する1つ以上のプローブなど、その他の配列を含むことができる。
【0120】
本明細書において「AMD検出アレイ」と名付けたアレイは、対象がAMDを発症する遺伝的感受性を判定するために用いられる。一例では、一組のオリゴヌクレオチドプローブが、例えば、対象から得られた核酸配列を増幅した遺伝子である、BF遺伝子、C2遺伝子、および/またはCFH遺伝子における多型を検出するのに使用するための固体支持体の表面に付着している。さらには、増幅反応で内部対照用核酸配列が増幅されたならば(上記参照)、この増幅された核酸分子の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブを加えることができる。
【0121】
アレイに結合しているヌクレオチドプローブは、増幅反応(高ストリンジェンシー条件下など)で増幅された配列に特異的に結合することができる。BF、C2、および/またはCFHの各遺伝子の少なくとも15、20、25、30、35、40、またはそれ以上の連続したヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを用いることもできる。
【0122】
本開示に従った方法および装置は、適当な条件下ではオリゴヌクレオチドが、相補的塩基配列を有する核酸分子と塩基対合した二本鎖を形成するという事実を利用している。この二本鎖の安定性は、オリゴヌクレオチドの長さ、塩基組成、およびハイブリダイゼーションを生じさせる溶液の組成など、いくつかの因子に依存する。塩基組成の二本鎖の安定性に対する影響は、ハイブリダイゼーションを特定の溶液中、例えば、高濃度の三級または四級のアミンの存在下で行うことによって低下させることができる。
【0123】
二本鎖の熱安定性は、配列間の配列類似性の度合いにも依存する。標的配列と、アレイに結合しているオリゴヌクレオチドとの間で形成されることが予想される二本鎖のタイプについて予測されるTmに近い温度でハイブリダイゼーションを行うことによって、ミスマッチ二本鎖を形成する率を実質的に低下させることができる。
【0124】
アレイ内で用いられる各オリゴヌクレオチド配列の長さは、標的であるBF、C2、および/またはCFHの核酸配列の結合を最適化するように選択することができる。具体的なスクリーニング条件下において、特定のBF、C2、および/またはCFHの核酸配列と使用するのに最適な長さは、経験的に決定することができる。したがって、アレイに含まれているオリゴヌクレオチド配列のセットの各個別要素の長さを、スクリーニングするために最適化することができる。一例で、オリゴヌクレオチドプローブは、約20ヌクレオチドから約35ヌクレオチドの長さであるか、または約25ヌクレオチドから約40ヌクレオチドの長さである。
【0125】
アレイを形成しているオリゴヌクレオチドプローブの配列を、例えば、プローブの5’末端または3’末端を介して、支持体に直接結合させることができる。一例では、オリゴヌクレオチドは、5’末端によって固体支持体に結合されている。しかし、当業者は、オリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端のどちらを使用することが、固体支持体に結合させるのに適しているかを決定することができる。一般的に、3’末端および5’末端の領域内におけるオリゴヌクレオチドプローブの内部相補性が、支持体への結合を決定する。あるいは、固体支持体に対してスペーサーまたはリンカーとして作用するオリゴヌクレオチドまたはその他の分子など、BF、C2、および/またはCFHの配列以外の配列によって、オリゴヌクレオチドプローブを支持体に付着させることができる。
【0126】
別の例では、アレイはタンパク質配列を含むが、それらのタンパク質配列は、少なくとも1つのBFタンパク質、C2タンパク質、および/またはCFHタンパク質(または記載された配列の1つを含む遺伝子、cDNA、もしくはその他のポリヌクレオチド分子、またはその断片)か、そのようなタンパク質の断片、またはそのようなタンパク質もしくはタンパク質断片に特異的な抗体を含む。アレイを形成するタンパク質または抗体は、支持体に直接連結することができる。あるいは、固体支持体に対するスペーサーまたはリンカーによって、タンパク質または抗体を支持体に付着させることができる。
【0127】
BFタンパク質、C2タンパク質、および/またはCFHタンパク質の異常は、場合によっては検出可能に標識されている、例えば、BFタンパク質、C2タンパク質、および/またはCFHタンパク質に特異的な結合剤を用いて検出することができる。したがって、一定の例においては、異常の検出は、対象由来の試料を、BFタンパク質、C2タンパク質、および/またはCFHタンパク質に特異的な結合剤と接触させること、そして、この結合剤に試料が結合したか否かを検出し、それによって、この試料に存在するBFタンパク質、C2タンパク質、および/またはCFHタンパク質の量を測定することを含むが、ただし、この場合、AMDを発症する素因をもたない対象に由来する類似試料に存在するBFタンパク質、C2タンパク質、および/またはCFHタンパク質の量、またはAMDを発症する素因をもたない対象に由来する類似試料にあるBFタンパク質、C2タンパク質、および/またはCFHタンパク質の標準的な量と較べて、その試料中のBFタンパク質、C2タンパク質、および/またはCFHタンパク質の量が異なることが、そのBF分子、C2分子、および/またはCFH分子の異常である。
【0128】
特定の例において、マイクロアレイの材料は、ガラス(二酸化ケイ素)から作られる。固体支持体用に適した二酸化ケイ素の種類は、ケイ酸アルミニウム、ホウケイ酸、シリカ、ソーダ石灰、亜鉛チタニア、および溶融シリカなどであるが、これらに限定されない(例えば、Schena,Microarray Analysis.John Wiley & Sons,Inc,Hoboken,New Jersey,2003参照)。当技術分野周知の方法、例えば、有機ポリマーを原料とする表面処理剤によって、核酸をガラスの表面に付着させることができる。具体的な例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピロリジン、ポリテトラフルロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、ポリフルオロエチレン−プロピレン、ポリエチレンビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリスルホルン、ヒドロキシル化2軸配向ポリプロピレン、アミン化2軸配向ポリプロピレン、チオール化2軸配向ポリプロピレン、エチレンアクリル酸、メタクリル酸チレン、およびこれらの共重合体の混合物(米国特許第5,985,567号参照、これは参照されて本明細書に組み込まれる)、化学的に活性なアミン基またはアルデヒド基をもたらす有機シラン化合物、マイクロアレイのエポキシまたはポリリシン処理を含むが、これらに限定されない。固体支持体表面の別例は、ポリプロピレンである。
【0129】
一般的に、固体支持体表面を形成するために用いることができる物質に適した特性には以下のものが含まれる。すなわち、表面活性化されやすいため、活性化されると、支持体の表面がオリゴヌクレオチドなどの生体分子をそれに共有結合させることができること;生体分子の「インサイツ」合成に適していること;化学的に不活性であるため、オリゴヌクレオチドに占領されていない支持体上の領域において、非特異的結合を起こしにくいか、または非特異的結合が生じたときには、オリゴヌクレオチドを除去することなく、そのような物質を表面から容易に除去することができることなどである。
【0130】
一例では、表面処理剤は、アミン含有シラン誘導体である。核酸のアミン表面への付着は、DNA骨格上の負に荷電したリン酸基と、正に荷電したアミノ基との相互作用を介して生じる(Schena,Microarray Analysis.John Wiley & Sons,Inc,Hoboken,New Jersey,2003、これは参照されて本明細書に組み込まれる)。別の例では、反応性アルデヒド基が表面処理剤として用いられる。アルデヒド表面への付着は、目的とするDNAに5’−アミン基またはアミノリンカーを付加することによって行われる。アミンリンカー上の非結合電子対が、アルデヒド基の陽性炭素原子を攻撃する求核試薬として作用すると結合が生じる。
【0131】
本開示に従って多様なアレイフォーマットを用いることができる。一例には、当技術分野において通常ディップスティックと呼ばれる、直線配列のオリゴヌクレオチドバンドが含まれる。別の適当なフォーマットには、分離したセルになった二次元パターン(64×64アレイ内の4096個の四角形など)が含まれる。当業者が認めるように、スロット状(長方形)および円形のアレイなどであるがこれらに限定されない、その他のアレイフォーマットも等しく使用に適している(米国特許第5,981,185号参照。これは参照されて本明細書に組み込まれる)。一例では、糸状、膜状、またはフィルム状のポリマー媒体上にアレイが形成される。有機ポリマー媒体の例は、厚さが約1mm(0.001インチ)から約20mmのポリプロピレンシートであるが、ただし、フィルムの厚さは重大な意味を持たず、かなり広範囲に変えることができる。2軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムが、今回は、アレイを調製するために具体的に開示されている。BOPPフィルムは、その耐久性に加えて、低バックグラウンド蛍光を示す。特定の例では、アレイは、固相型の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)を用いる核酸アレイである。
【0132】
本開示のアレイフォーマットは、さまざまな異なった型のフォーマットに含めることができる。「フォーマット」は、固体支持体を固定することができる任意のフォーマット、例えば、マイクロタイタープレート、試験管、無機シート、ディップスティックなどを含む。例えば、固体支持体がポリプロピレン糸の場合、1本以上のポリプロピレン糸を、プラスチック製のディップスティック型装置に貼り付けることができ、ポリプロピレン膜は、スライドガラスに貼り付けることができる。具体的なフォーマットは、それ自体、重要ではない。必要なことは、固体支持体が、その固体支持体、またはそこに吸着する任意の生体高分子の機能的挙動に影響することなく貼り付けることができるということであり、また、フォーマット(ディップスティックまたはスライドガラスなど)が、装置が導入される任意の物質(臨床試料およびハイブリダイゼーション溶液など)に対して安定しているということである。
【0133】
本開示のアレイは、さまざまな方法によって調製することができる。一例では、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質の配列を別々に合成してから、固体支持体に付着させる(米国特許第6,013,789号参照、これは参照されて本明細書に組み込まれる)。別の例では、固体支持体上で配列を直接合成して所望のアレイを提供する(米国特許第5,554,501号参照、これは参照されて本明細書に組み込まれる)。オリゴヌクレオチドおよびタンパク質を固体支持体と共有結合させるのに適した方法、および支持体上でオリゴヌクレオチドまたはタンパク質を直接合成するのに適した方法は当業者に周知されており、適当な方法の要約を、Matsonら(1994)Anal.Biochem.217:306−10に見出すことができる。一例において、固体支持体上でオリゴヌクレオチドを調製するための通常の化学的技術を用いて、支持体上でオリゴヌクレオチドを合成する(例えば、PCT公開85/01051号および89/10977号、または米国特許第5,554,501号などを参照、これらはそれぞれ参照されて本明細書に組み込まれる)。
【0134】
適当なアレイは、アレイのセル内でオリゴヌクレオチドを合成する自動的手段を用いて、予め定められたパターンで4種類の塩基の前駆体を固着させることによって、作成することができる。要するに、多重チャネル型自動的化学物質送達系を用いて、基質全面に(送達系のチャネル数と同じ数の)平行な列にオリゴヌクレオチドプローブ集団を作出する。第1の方向にオリゴヌクレオチドの合成が完了した後、基質を90度回転させて、第1の組に垂直な2組目の列の内部で合成を進行させることができる。このプロセスにより、交点に複数の分離したセルを生じさせる多重チャネル型アレイが作出される。
【0135】
特定の例において、アレイ上のオリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドプローブ:標的配列のハイブリダイゼーション複合体の検出を可能にする、1つ以上の標識を含む。
【0136】
キット
本開示は、対象、例えば、その他の点では健康なヒト対象にAMDの遺伝的素因があるか否かを判定するのに用いることができるキットを提供する。そのようなキットによって、対象が、BF、C2またはCFHの遺伝子配列内に1つ以上の遺伝子の変異または多型をもっているかを判定できるようになる。
【0137】
これらのキットは、対象のBF遺伝子、C2遺伝子、またはCFH遺伝子に少なくとも1つの多型が存在するかしないかを判定するのに役立つ試薬、例えば、本明細書中で同定されているBF、C2またはCFHの多型配列に選択的にハイブリダイズするプローブまたはプライマーなどを含む。このようなキットを本明細書に記載された方法とともに用いて、対象のBF、C2、またはCFHの遺伝子型またはハプロタイプを判定することができる。
【0138】
対象における特異的なBF、C2、またはCFHの配列、例えば、本明細書に記載されたSNPまたはハプロタイプを検出するのに使用するキットの形にして、オリゴヌクレオチドプローブおよび/またはプライマーを供給することもできる。そのようなキットでは、適当な量の1つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーが、1つ以上の容器に入れられて提供される。これらのオリゴヌクレオチドプライマーは、例えば、水溶液中に懸濁されるか、フリーズドライ粉末すなわち凍結乾燥粉末として提供することも可能である。オリゴヌクレオチドを供給する容器は、供給時の形状を保持できる任意の従来の容器、例えば、微量遠心用チューブ、アンプル、またはビンであってもよい。使用目的によっては、プライマー対を、一般的には使い捨てになっている別々のチューブ、またはそれと等価の容器の中に、予め一回量を測り入れて提供することもできる。このような準備をして、BF、C2、またはCFHの多型が存在するかを検査する試料をそれぞれのチューブに加えて増幅を直接行うことができる。
【0139】
このキットで供給されるオリゴヌクレオチドプライマーそれぞれの量は、任意の適量であればよく、例えば、その製品が目指すマーケットに応じて決まる。例えば、このキットが、研究用または臨床用に合わせてある場合、提供される各ヌクレオチドプライマーの量は、数回のPCR増幅反応を開始させるのに十分な量となっているであろう。当業者は、一回の増幅反応に使用するのに適したオリゴヌクレオチドプライマー量を知っている。一般的な指針が、例えば、Innisら(PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.,San Diego,CA,1990)、Sambrookら(In Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York,1989)、およびAusubelら(In Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc,and Wiley−Intersciences,1992)に記載されている。
【0140】
BF、C2またはCFHをコードする配列、例えば、特異的な標的であるBF、C2、もしくはCFHの各遺伝子、またはその5’側または3’側の近傍領域をインビトロ増幅するのを容易にするために、キットは3種類以上のプライマーを含んでいてもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、キットが、例えば、DNA試料調製用試薬、適当な緩衝剤(例えば、ポリメラーゼ緩衝剤)、塩類(例えば、塩化マグネシウム)、およびデオキシリボヌクレオチド(dNTP)など、ヌクレオチド増幅反応を行うのに必要な試薬も含んでいてもよい。
【0142】
さらに、キットは、BF、C2、またはCFHの多型またはハプロタイプを検出するのに用いるための標識型または非標識型のオリゴヌクレオチドプローブを含むことができる。一定の実施形態において、これらのプローブは、増幅された標的配列に存在するかもしれない多型性部位の可能性がある部位に特異的であろう。そのようなプローブにとって適当な配列は、プローブの配列が、多型性部位およびその周囲のBF、C2、またはCFHの配列と相補的になるよう、同定された多型性部位の1つ以上を含む任意の配列であろう。一例として、そのようなプローブは長さが少なくとも6ヌクレオチドであり、多型性部位が、このプローブの長さの任意の位置に存在している。特異性を確保するためには、より長いプローブを用いることがしばしば有益である。そこで、いくつかの実施形態では、プローブは、少なくとも8ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、またはそれ以上である。
【0143】
このキットでは、増幅反応で使用するための1つ以上の対照用配列を提供することも有益であるかもしれない。適当な陽性対照用配列の設計は、適当な技術分野における当業者によく知られている。一例として、対照用配列は、本明細書に記載されているような1つ以上の標的SNP部位に既知の配列をもつヒト(または非ヒト)のBF、C2、またはCFHの核酸分子を含んでもよい。対照は、非BF、非C2、または非CFHの核酸分子も含むことも可能である。
【0144】
いくつかの実施形態において、キットは、インビトロ増幅反応でRT−PCR法を行うのに必要な試薬のうちのいくつかまたは全部、例えば、RNA試料調製用試薬(例えば、RNA分解酵素阻害剤など)、適当な緩衝液(例えば、ポリメラーゼ緩衝液)、塩類(例えば、塩化マグネシウム)、およびデオキシリボヌクレオチド(dNTP)などを含むことができる。
【0145】
さらに、そのようなキットは、インビトロで増幅された標的配列の検出に使用するための標識オリゴヌクレオチドプローブまたは非標識オリゴヌクレオチドプローブを含むことができる。そのようなプローブに適した配列は、提供された2つのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング部位の間にある任意の配列であって、プローブが相補的である配列をPCR反応の過程で増幅させるような配列であろう。特定の実施形態では、これらのプローブは、増幅された標的配列に存在しうる潜在的な多型に特異的である。
【0146】
RT−PCR反応に用いる1つ以上の対照用配列をキットに入れて提供するのも有益であろう。適当な陽性対照用配列の設計は、適当な技術分野における当業者によく知られている。
【0147】
BF、C2、またはCFHのタンパク質発現(例えば、過剰発現もしくは過少発現、または特定のアイソフォームの発現など)の検出または解析を行うためのキットも含まれる。そのようなキットは、少なくとも1つの標的タンパク質特異的結合剤(例えば、BFタンパク質、C2タンパク質、またはCFHタンパク質を特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体または抗体断片、またはBFタンパク質、C2タンパク質、またはCFHタンパク質の特定の多型性形態)を含んでいてもよく、また、少なくとも1つの対照(所定量の標的BF、C2、もしくはCFHタンパク質、または所定量のBF、C2、またはCFHタンパク質を含む試料など)を含んでもよい。前記のBF、C2、またはCFHタンパク質に特異的に結合する剤および対照は、別々の容器に入れることもできる。前記の抗体は、BFタンパク質、CDタンパク質、および/またはCFHタンパク質の多型性形態を識別する能力をもつかもしれない。
【0148】
BFタンパク質、C2タンパク質、もしくはCFHタンパク質、またはアイソフォームの発現を検出するキットは、BF、C2、またはCFH:結合剤の複合体を含むことも可能であり、例えば、この結合剤は検出できるように標識付けされていてもよい。検出可能な結合剤が標識付けされていなければ、例えば、二次抗体またはプロテインAによって検出することができるが、これらは、キットによっては、1つ以上の別の容器の中に入れて提供することもできる。このような技術は周知のものである。
【0149】
具体的なキットのさらなる構成要素には、アッセイを行うための説明書などがあろう。説明書によって、試験者がBF、C2、またはCFHの発現量を測定することが可能になる。キットには、反応用容器、および、色素原、緩衝液、酵素などの補助試薬も含まれるかもしれない。説明書には較正曲線または補正図が、決定値(例えば、実験的に測定された値)と比較するために提供されていることもある。
【0150】
本明細書に記載されたようなBF遺伝子、C2遺伝子、またはCFH遺伝子の特異的SNP(またはハプロタイプ)について、ホモ接合である個体とヘテロ接合である個体とを区別することを可能にするキットも提供される。このようなキットの例では、Nickersonら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:8923−8927に記載されているように、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を行うのに必要な材料が提供されている。具体的な実施形態において、これらのキットは、本明細書に記載されているように、対象のBF、C2、またはCFHの配列内における多型を検出するように設計された、1つ以上のマイクロタイタープレートアッセイを含む。これらのキットに入っている説明書によって、試験者は、特定のBF、C2、またはCFHの対立遺伝子が存在するか否か、また、それがホモ接合であるかヘテロ接合であるかを判定することができるようになる。このキットで、OLA反応に用いる1つ以上の対照用配列を提供するのも有益であろう。適当な陽性対照配列の設計については適当な技術分野における当業者によく知られている。
【0151】
このキットは、フィルター、ビーズ、マイクロタイタープレートなどへの結合など、核酸結合を含む、いくつかのアッセイフォーマットの使用を含んでいてもよい。技術には、ドットブロット法、RNAブロット法、DNAブロット法、PCR、RFLPなどがある。
【0152】
マイクロアレイに基づくキットも提供される。これらのマイクロアレイキットは、遺伝子型判定解析において有用であるかもしれない。一般に、これらのキットは、基質上の、例えば、アドレス可能な部位に固定されて提供される、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。このキットは、また、使用者がこのアレイを検索するのに役立つ、通常は書面になった指示も含む。このような説明書は、任意には、コンピューター可読型メディア上で提供することができる。
【0153】
キットは、さらに、提供されたアレイを解析する際に使用するための1つ以上の緩衝液を含むことができる。例えば、そのような緩衝液は、低ストリンジェンシー洗浄液、高ストリンジェンシー洗浄液、および/または剥離用溶液などであろう。これらの緩衝液はまとめて提供することができる。すなわち、各緩衝液容器が大きく、何回分かのプロービング処理または洗浄処理または剥離処理を行うのに十分な緩衝液を保持していてもよい。あるいは、緩衝液は、キットに含まれるアレイのサイズおよび形に合わせて、予め秤量された等量液にして提供することもできる。一定のキットは、内部でアレイ−プロービング反応を行うことができる、1つ以上の容器を提供するかもしれない。
【0154】
キットは、さらに、アレイ上で捕捉された生体分子を検出するために、抗体またはプローブ(または抗体の混合物、プローブの混合物、または抗体およびプローブの混合物)などの検出分子の容器を1つ以上含んでいてもよい。このキットは、また、標識処理もしくはアレイのプロービングのいずれか、またはその両方の内部試験を行うために、標識されているか、標識されていない対照用プローブ分子も含むことができる。対照用プローブ分子は、例えば、水溶液中に懸濁して、またはフリーズドライもしくは乾燥凍結された粉末として提供することができる。対照が入っている容器は、例えば、微量遠心用チューブ、アンプル、またはビンなど、供給された形態を保持することができる任意の従来の容器であってもよい。使用目的によっては、対照プローブを、個別の、一般的には使い捨てのチューブまたはそれと等価の容器に、予め秤量された一回使用量にして提供することができる。
【0155】
このキットにおいて供給される各対照用プローブの量は、例えば、その製品が目指すマーケットに応じて、任意の特定量にすることができる。例えば、このキットが、研究用または臨床用に合わせてある場合、アレイを何回か対照用解析するのに十分な対照用プローブが提供されることであろう。同様に、複数の対照プローブが1つのキットで提供される場合、提供される具体的なプローブは、マーケットおよび付随するキットに適合するように提供される。一定の実施形態において、複数の異なった対照用プローブが単一のキットで提供されるが、各対照プローブは、関連するアレイ上に存在する異なったタイプの検体に由来のものである(例えば、真核生物と原核生物両方の検体を提供するキットでは、原核生物特異的な対照用プローブと、それとは別の真核生物特異的な対照用プローブとを提供することができる)。
【0156】
本発明のいくつかの実施形態において、1つ以上のプローブ標識反応を行うのに必要な試薬も含むことも可能である。含まれる具体的な試薬は、プローブ分子の種類(例えば、DNAまたはRNA)、および標識する方法(例えば、プローブ合成過程で取り込まれる放射標識、結合可能な蛍光タグなど)に応じて、エンドユーザーを満足させるよう選択されるはずである。
【0157】
本明細書で提供されているアレイをアッセイするのに用いるプローブ分子を標識するために、さらなるキットが提供される。そのようなキットは、任意で、そのように標識されたプローブ分子によってアッセイされることになるアレイを含むことができる。
【0158】
本開示は、以下の非限定的な実施例によって具体的に説明されている。
【実施例】
【0159】
実施例1
材料および方法
対象:本研究では、欧米人の子孫である60歳を超えたAMD症例、および年齢が一致する対照のそれぞれ独立した2群を用いた。これらの群は、アイオワ大学から報告された350人の血縁関係のない臨床的にAMDと確認された対象(平均年齢79.5+/−7.8歳)、および114人の血縁関係のない対照個体(平均年齢78.4+/−7.4歳;年齢および民族性が一致)、ならびにコロンビア大学から報告された548人の血縁関係のない臨床的にAMDと確認された対象(平均年齢71.32+/−8.9歳)、および275人の血縁関係のない、年齢と民族性が一致する対照(平均年齢68.84+/−8.6歳)からなる。対象は、熟練した眼科医の検査を受けた。
【0160】
立体眼底写真を、Hageman,2005,前掲;Birdら、(1995)Surv.Ophthalmol.39:367−74;およびKlaverら、(2001)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.42:2237−41に記載されているように標準化された分類システムに従って等級分けした。対照は、黄斑疾患に特徴的な徴候を示しておらず、AMDの家族歴があることが分かっている者はいなかった(病期0および1a)。AMD対象を募集した時に、彼らの重症の方の眼の分類に基づいて表現型によるカテゴリーに細分した。QIAamp DNA Blood Maxiキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて、末梢血白血球からゲノムDNAを調製した。
【0161】
実験は、コロンビア大学およびアイオワ大学の施設内倫理委員会によって承認されたプロトコルに従って実施した。すべての実験対象者から事前にインフォームドコンセントを得ておいた。
【0162】
免疫組織化学法:Andersonら(2002)Am.J.Ophthalmol.134:411−31に記載されているとおりに、後極を処理して、切片にし、Ba因子(Quidel)に対する抗体で標識した。隣接した切片を二次抗体だけとインキュベートし、対照として用いた。既述されたように(Andersonら、2002、前掲)、いくつかの免疫標識された標本を調製して、共焦点レーザー走査顕微鏡によって観察した。
【0163】
変異のスクリーニングと解析:SSCP解析法、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)、および直接配列決定法を用いて、BFおよびC2のコード領域と隣接するイントロン領域を変異体について調べた。SSCP、DHPLC,およびDNA配列決定による解析のためのプライマーは、各エキソンおよびそれに隣接したイントロン領域が増幅されるよう、Mac Vectorソフトウェア(San Diego,CA)を用いて設計された。Allikmetsら、(1997)Science 277:1805−1807、およびHayashiら、(2004)Ophthalmic Genet.25:111−9に記載されているとおりに、PCRにより作成した単位複製配列を配列変異についてスクリーニングした。SSCPおよびDHPLCによって検出された変異はすべて、標準的なプロトコルに従って2方向の配列決定を行って確認した。
【0164】
遺伝子型判定:データマイニング(Ensemblデータベース、dbSNP;Celera Discovery System)および配列決定によって一塩基多型(SNP)が発見された。検定集団内で10%よりも頻度の高い変異体のアッセイは、Validated,InventoriedSNP Assays−on−DemandとしてApplied Biosystems社から購入するか、Applied Biosystems社のAssays−By−Design pipelineに提出した。利用した技術は、Hagemanら、2005、前掲に記載されている技術と同じものであった。要するに、5ngのDNAをABl 9700 384−ウェルのサーマルサイクラー上で50サイクルの増幅を行い、Applied Biosystems社の7900 HT Sequence Detection Systemでプレートを読み取った。
【0165】
統計解析:Hagemanら、2005、前掲、およびKlaverら、2001、前掲に記載されているような分割表解析を行うために、遺伝子型をMicrosoft Excelで一覧表にしてSPSS(SPSS,Inc.)に提出した。SAS/Genetics(SAS Institute,Inc.,Cary,NC)を用いて、ハーディー7−ワインベルグ平衡への適合度を確認したところ、症例および対照のどちらにおいても、すべてのSNPが、p<0.05のカットオフ値を切り抜けた。ハプロタイプを推定するために、本発明者らは、ケンブリッジ医学研究所のウェブサイトhttp://www−gene.cimr.cam.ac.uk/clayton/software/からダウンロードしたsnphap(David Clayton著;Cambridge Institute for Medical Research,Cambridge,United Kingdom)、SNPEM(Dr.Nicholas SchorkとM.Daniele Fallin著、そして、D. Fallinから取得)、およびPHASEバージョン2.11(Matthew Stephens著;University of Washington,Seattle,WA,そして、彼のウェブサイトであるwww.stat.washington.edu/stephens/software.htmlから利用可能)を用いた。用いたハプロタイプ解析法は、第一には、期待値最大化(EM)アルゴリズムまたはギブスサンプリングアルゴリズムを用いてハプロタイプの推定値を得るためのものであり、第二には、連鎖不平衡の領域内にある最小情報セットを表すhtSNPを同定するためのものであり、第三には、これらが、AMDと有意な関連性があることを評価するためのものである。連鎖不平衡は、Innate Immunity PGAのウェブサイト(www.innateimmunity.net)で利用できる画像ツールを用いて評価した(図示せず)。すべてのp値は両側検定されたものであり、X2値は、漸近有意確率として表示されている。全第I種過誤率(α)は、Innate Immunity PGAのウェブサイト(https://innateimmunity.net/IIPGA2/Bioinformatics/multipletestfdrform)で実施されている、BenjaminiとHochberg(1995)J.R.Stat.Soc.Ser.B57:289−300の方法を用いて遡及的に計算されたが、2×10−3よりも小さかった。
【0166】
有意性のあるハプロタイプに、SNPEMとPHASEで並べ替え検定を行った。図2Aに示された防御型SNPモデルをExemplar2.2(Sapio Sciencesのウェブサイト上、http://www.sapiosciences.comで利用可能)に提示し、このソフトウェアによって、図2Bに示した3つのデータベース(アイオワ、コロンビア、および混合)に対する適合度について統計的な評価を行った。遺伝的アルゴリズム(GA)から導出されたモデル(図2Cに示されている)の作成は、Exemplarソフトウェアを含んでいた。GAのオプション値は以下の通りに設定した。すなわち、モデルサイズが5以下(16種類の遺伝子型が可能となる)の1500AND/ORモデルを各15回反復した。さらに、遺伝的アルゴリズムの実行および有意性検定の詳細は実施例2に含まれている。
【0167】
適当なモジュールをもつSPSSバージョン14.0統計用パッケージを用いて、マイナーな対立遺伝子を持つもの(+)と持たないもの(−)に再コード化したコロンビア、アイオワ、および混合のデータに対して分類および回帰ツリー解析を行った。モデルは、CFHおよびC2/BFの両遺伝子座を非独立の結果に対する寄与因子として取り込んだ3つのデータセットのそれぞれを用いて自動的に作成された。
【0168】
結果
コロンビア大学で確認されたコホートから得られた約90人のAMD症例者および90人の対照者において、まず変性HPLCによって、全部で18のBFエキソンを、50〜80bpの隣接するイントロン領域も含めて解析した。8種類のミスセンス変異を含む17種類の配列変異体を同定したところ、L9H(rs4151667)対立遺伝子とR32Q(rs641153)対立遺伝子は、症例者よりも対象者において頻度が高かった(表1)。BF内およびその隣接ホモログであるC2内のハプロタイプ−タギングSNP(htSNP)が同定され(図1)、548人のAMD症例者および275人の対照者からなるコロンビア大学コホートにおいて遺伝子型判定が行われた。これらの解析によって、AMDと有意に関連する4つの変異体が明らかになった。BFにおけるL9H変異体は、C2(rs9332739)におけるE318D変異体とほぼ完全な連鎖不平衡(LD)にあったが、AMDに対して非常に防御的であった(X2=13.8 P=0.00020,OR=0.37[95%CI=0.18〜0.60])。BFにおけるR32Q対立遺伝子は、C2のイントロン10におけるrs547154のSNPとほぼ完全なLDにあり、これも非常に防御的であった(X2=33.7,P=6.43×10−9,OR=0.32[95%CI=0.21〜0.48])。
【0169】
アイオワ大学で得られた350人の症例者および114人の対照者からなる独立したコホートの遺伝子型判定によってこれらの知見が確認された。例えば、C2 E318D/BF L9HのSNP対は、このコホートにおいてAMDと有意に関連していた(X2=10.6,P=0.0012,OR=0.34[95%CI=0.18−0.67])。C2遺伝子座およびBF遺伝子座にわたるハプロタイプを解析するために、この2つのコホートから得られたデータを一緒にした(表2)。共通のハプロタイプ(H1,図1)は、AMDに対する有意なリスクをもたらしていた(X2=10.3,P=0.0013,OR=1.32[95%CI=1.1〜1.6])。BFのR32QのSNPによってタグ付けされたハプロタイプ(H7)は、その他すべてのハプロタイプと比べると、AMDに対して非常に防御的であり(X2=26.9,P=2.1×10−7,OR=0.45[95%CI=0.33〜0.61]、また、C2のE318D/BFのL9Hを含むハプロタイプ(H10)も有意に防御的であった(X2=21.6,P=3.4×10−6,OR=0.36[95%CI=0.23〜0.56])(図1)。H1ハプロタイプを参照用ハプロタイプとして使用すると、H7(X2=29.6,OR=0.42[0.32〜0.58])およびH10(X2=24.9,OR=0.33[0.21〜0.52])に対して僅かに有意性の高い結果を生じさせた。SNPEMプログラムによる解析でも、同じハプロタイプが本疾患と有意に関連することが明らかとなり、C2遺伝子および/またはBF遺伝子における対立遺伝子が、AMDに対するリスクを予測できるという仮説が裏付けられた。この2つの防御型ハプロタイプをもつ個体(H7、H10についてホモ接合体であるか、または7/10複合へテロ接合体である)が、対照者の3.4%に見られたが、症例者では僅か0.77%にしか見られなかった(X2=12.2,P=0.00048,OR=0.22[0.087〜0.56])。2つの防御型対立遺伝子をもつ対象のオッズ比は、1つの防御型対立遺伝子をもつ対象のオッズ比のほぼ半分であり、共優性モデルと整合した。
【0170】
観察された関連性は、全AMD対象コホートを対照者と比較した場合、または、初期AMD(eAMD)、脈絡膜血管新生(CNV)、および地図状萎縮(GA)など、主なAMDサブタイプを別々に解析した場合に非常に有意性が高かった。GA群(2つのコホートから合計で133人の対象)は、場合によっては、CFHに関係した本発明者らの観察結果(Hagemanら、2005、前掲)と同じように、結果一般的な傾向から逸脱した。具体的には、R32Q対立遺伝子によってタグ付けされたハプロタイプが、本疾患に対してもっとも強い防御を示した。すなわち、GA群を対照者と比較するとORが0.22であるのに対し、残りのAMD試料を同じ解析にかけると0.45であった。このずれは、本疾患にさまざまな病因論があるという点では有意であるかもしれないが、恐らくGA症例者の数が少なかったために、統計的に有意であるというまでには至らなかった(信頼区間が重複した)。
【0171】
複合解析は、まず、対象をCFHのY402H対立遺伝子の状態にしたがって階層化して実施した。C2/BFによって付与される防御は、CFHの402Hホモ接合体で最も強く(OR=0.27)、402H/Yヘテロ接合体で中程度(OR=0.36)、そして、402Yホモ接合体で最も弱かった(OR=0.44)。しかし、これらの推定値のすべてで信頼区間が重複した。この結果は、主に、C2/BF防御型対立遺伝子の頻度が402Hホモ接合体(「リスク」遺伝子型)で最も高いという傾向にあるせいであった。対照コホートにおけるこれらの対象の40%が少なくとも1つの防御型対立遺伝子を持っていた。これに対し、402H/Yまたは402Yである対照者では、C2/BF防御の頻度が次第に低下した(それぞれ32%および26%)。言い換えると、CFH遺伝子型のために高リスクになっている個体は、AMDを発症せず、高頻度でC2/BF遺伝子座に防御型対立遺伝子を有する。
【0172】
個体SNP分析によって示唆されたように、AMDに対して防御的なCFHおよびC2/BFのSNPの組み合わせで可能なものを同定するために、利用可能なデータの解析を2つの方法、すなわち、まずは、経験的な手作りモデルによって、次に、Exemplarソフトウェアを用いた機械学習(machine−learned)モデルによって行った(図2)。最初のモデルは、データを経験的に検討することによって作り出されるような仮説(手作り)モデルであった(図2A)。モデルについての説明がパネルAとして示されており、AMDから防御する遺伝子型の組み合わせである可能性のある4つの組み合わせ(「真」であるモデルをもたらす組み合わせ)を提示していると解される。このモデルを試料に対して適用したところ、各コホート別と混合コホートについてパネルBに示す分布が得られた(図2B)。症例におけるパーセンテージは、モデルが偽であるという症例者の割合であって、言い換えれば、彼らは、モデルによって表されるような防御を受けなかった者である。対照におけるパーセンテージは、モデルによって表された防御因子を持っていて、モデルが真であることを意味している対照者の割合である。これらの分布に対し、フィッシャーの正確確率検定による有意性検定を行い、p値がそれぞれ、P=0.00237、P=4.28×10−8、およびP=7.90×10−10であることを証明した。この後、Exemplarソフトウェアを動かして、遺伝的アルゴリズムと呼ばれる機械学習法を用いて、データに対して「最適適合」した防御モデルを作成した。すなわち、本発明者らは、機械学習ソフトウェアが、手作りのモデルを凌ぐことができるという仮説をテストした。コロンビアのコホートについてモデルを学習させ、得られた最適合モデルを保持し、次に、独立したコホートに対する確認検定(外挿確認(out−of−sample verification)としてアイオワコホートに適用した。最後に、これらのモデルを混合試料セットに適用した。得られた最良のモデルを図2Cに示す。このモデルは、AMDから防御すると思われる4種類の個別の(または組み合わされた)遺伝子型(すなわち、「真」であるモデルをもたらす組み合わせ)を表している。アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートのそれぞれに対する、このモデルの成績を図2Dに示す。これらの分布に対し、フィッシャーの正確確率検定による有意性検定を行い、p値がそれぞれ、P=7.49×10−5、P=2.97×10−22、およびP=1.69×10−23であることを証明した。症例者と対照者の指定を無作為化し、データセットの置換を3000回行うことによって、この方法をさらに検証した。実際のデータは、これらの置換例のどれよりも有意性が高かった。
【0173】
要約すると、CFHに変異をもつこれらのハプロタイプをExemplarソフトウェアによって複合解析したところ、56%の健常対照者は、少なくとも1つの防御型CFHハプロタイプまたはC2/BFハプロタイプを保有しているが、74%のAMD対象は、これらの遺伝子座にいずれの防御型ハプロタイプも持っていないことが明らかになった。このデータを検討すると、症例者におけるリスク型の約60%、および対照者の防御型の65%は、CFH遺伝子座の作用によるものであり、残り(それぞれ40%および35%)はC2/BF遺伝子座によるものであることが分かる。機械学習モデルは、手作りモデルよりも優れており、有意により正しく臨床結果を予測することが可能となった。分類および回帰ツリー(C&RT)解析によって、遺伝的アルゴリズム解析と同様のツリーが作成され、AMDにおけるC2/BFの役割を裏付ける結果がもたらされた。コロンビアのデータセットを単独で用いると、C2/BF対立遺伝子の存在によって、C&RTモデルが症例の37%を占めるが、アイオワを用いると36%を占め、混合解析では27%という僅かに低い効果を示した。これらの推定値はすべて、遺伝的アルゴリズム解析から推定された35〜40%というC2/BF遺伝子座の寄与度と整合している。これらの方法の詳細と具体的な解析については、実施例2に記載されている。
【0174】
BFおよびC2は、神経網膜、RPE、および脈絡膜で発現している。ヒト提供者の眼で、AMDに罹っている眼(67歳と94歳の2人の提供者)とAMDに罹っていない眼(69歳と82歳の2人の提供者)から、単離されたRPE、RPE/脈絡膜複合体、および神経網膜から、BFおよびC2の遺伝子産物に対する適当なサイズのPCR単位複製配列が検出された(データを示さず)。BFタンパク質は、ブルッフ膜内部の眼のドルーゼン、およびあまり顕著ではないが脈絡膜実質の中に存在した(図3A)。Ba(BFに由来するペプチド)の免疫反応性はあまり顕著ではなかったが、RPE細胞に関連した斑点、およびブルッフ膜全体には明らかに存在していた(図3B)。BFの分布は、C3の分布に類似しており(図3C)、それらはともに、CFHおよびC5b−9の分布と本質的に同一である(Hagemanら、2005、前掲)。
【0175】
要約すると、これらのデータは、補体経路関連遺伝子C2およびBFの変異体が、AMDと有意に関連していることを示している。C2/BF遺伝子座における防御型ハプロタイプは、第二補体活性化経路の重要な活性化因子であるBF遺伝子に非同義SNPを含む。利用可能なデータにより、AMD表現型が、異常なBF活性によって調節されうるという仮説が裏付けられた。実際、32位にグルタミンを含むBFタンパク質(防御型ハプロタイプをタグ付けする2種類のBF SNPの一方から得られた)は、より高頻度のアルギニン32型と較べて溶血作用が低いことが明らかになっている(LokkiとKoskimies(1991)lmmunogenetics 34:242−6)。同じ研究で、R32W変異体についての機能的作用は実証されていないが、今回の研究では、AMDとの関連性はなかった。これらのデータに基づいて、本発明者らは、酵素活性が低下している活性化因子によって、ドルーゼンの形成およびAMDをもたらしうる慢性的な補体反応に対するリスクの低下がもたらされることを示唆する。この仮説は、CFHの変異による第二補体カスケードの阻害が不十分であると、網膜色素上皮/ブルッフ膜界面における慢性的損傷をもたらすという本発明者らの提示内容と適合する(Hagemanら、2005、前掲;Anderson、2002、前掲;Hageman、2001、前掲)。別のBFのhtSNPであるL9Hはシグナルペプチド内に位置する。この変異体の機能的結果は直接には明らかになっていないものの、この変異体はBFの分泌を調節する可能性がある。
【0176】
遺伝子および機能に関するデータは、BFにおける変異が、観察されたAMDとの関連性の原因である可能性が高いことを示唆している。これは、BFにおける2つのハプロタイプをタグ付けする変異体が非保存的な変異体であり、この2つのうち1つが直接の機能的関連性(低下した溶血作用)をもつと実証されているのに対し、C2における変異体は保存的変異であってイントロンのSNPであるという事実に基づいている。また、BFは、CFHも関与する経路である第二経路に直接関与する。しかしながら、特に、C2およびBFが、ともにC3の産生を制御していることから、C2の直接的な役割を無視することもできない。C2およびBFは、そのカルボキシ末端にセリンプロテアーゼドメインがあり、そのアミノ末端に3つのCCPモジュールをもつなど、ほぼ同一の分子構造をもつ。BFがAMDの発病に関与する遺伝子であることのさらなる根拠は、ドルーゼンの組成の研究から生まれている。第二経路に関与する大多数のタンパク質(CFH、BFなど)がドルーゼンに存在するのに対し、C2やC4など古典的な経路からはそれらのアナログが見られない(Mullinsら(2000)Faseb J.14:835−46;Crabbら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:14682−7)。これらのデータは、さらに、C2遺伝子におけるSNPが、BFとの広範なLDのために、AMDに関連することを示唆している。
【0177】
C2とBFの両方における、いくつかの一般的な機能的変異体が説明されている(DavisとForristal(1980)J.Lab.Clin.Med.96:633−9;Raumら(1979)Am.J.Hum.Genet.31:35−41;Alperら(2003)J.Clin.Immunol.23:297−305)が、これらのほとんどは稀なものである。シアトルSNPプロジェクトのウェブサイト(www.pga.mbt.washington.edu/)で利用可能な両遺伝子に関する再配列決定データから判断したところ、欧州集団において2%よりも高い頻度をもつミスセンス対立遺伝子のすべてが解析された。さらに、本発明者らのハプロタイプであるH2、H5、およびH7の例など、いくつかのHLAハプロタイプの完全長配列決定の後、どちらの遺伝子においてもそれ以上の非同義変異体は見つかっていない(Stewartら(2004)Genome Res.14:1176−87)。
【0178】
C2およびBFは、炎症に関係する他の多くの遺伝子とともにHLA遺伝子座に存在しているため、本研究で観察された関連性が隣接する遺伝子とのLDによるものである可能性を考慮する必要がある。(LarsenとAlper(2004)Curr.Opin.Immunol.16:660−7)。しかし、5種類の証拠が、C2/BF遺伝子座が観察された関連性に対する主要な寄与因子であることを示唆している。まず、HapMapデータでは、C2/BFと隣接するクラスIII遺伝子座との間には中度のLDしか見られないことが挙げられる。次に、MHCクラスII遺伝子座、ならびにBFハプロタイプであるH7およびH10は強いLDを示さないことが挙げられる。第三に、Kleinら(2005)Science 308:385−9によって行われた全ゲノムスキャンでは、MHC遺伝子座は、AMDと統計的に有意な関連性を示さなかった。Affymetrix Mapping 100K Arrayを用いた彼らの解析は、MHC遺伝子座の全域で80のSNPを含んでいたが、本研究でタイプ分けされた8種類のSNPのいずれも含んでいなかった(https://www.affymetrix.com/analysis/netaffx/index.affx)。第四に、HapMapデータから推定された組換え率から、C2/BF遺伝子座の両側に高い組換え領域があることが示されていることである(Myersら(2005)Science 310:321−324)。最後に、AMDにおけるMHCに関する、公表された1つの研究では、クラスI遺伝子座のB*4001(P=0.027)およびクラスII遺伝子座DRB1*1301(P=0.009)について中度の防御が示されている(Goverdhanら(2005)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.46:1726−34)。本研究で同定された防御型対立遺伝子は、実質的により高い統計的有意度でAMDに関連しているため、C2/BFの関連性が、MHCのこれらの遺伝子座および/または別の遺伝子座とのLDによるものであるという可能性は非常に低い。
【0179】
表1.DHPLCスクリーニングによって検出されたBF遺伝子における配列変異体
【0180】
【表1】

表2.混合コロンビア・アイオワコホートにおけるC2/BF変異体の関連性解析
【0181】
【表2】

実施例2.Exemplar統計学法
Sapio Scienceは、NCIと共同して遺伝子型判定データを解析した。NCIが、全部で約1360の試料を、遺伝子型判定された10の2対立遺伝子SNPとともに提供した。このデータは、対立遺伝子を数値表現したものとともにSapioに提示された。このデータを、対立遺伝子を遺伝子型の数値表現に変えることによって(AAについては「11」が「1」となり、ABについては「12」が「2」となり、BBについては「22」が「3」となり、「00」はノーコールであり、「0」に変換された)、Exemplarを行いやすいフォーマットに変換し、また試料の重複を排除するためにスクリプトを書いた。表現型は加齢性黄斑変性症(AMD)であった。同定されたAMDにはいくつかのサブクラスがあったが、本解析では、データを全体として用いて、さまざまなAMD表現型の基となる共通した遺伝子型があるか否かを判定した。
【0182】
Sapio Scienceは、Exemplar Genotyping Analysis Suiteを利用して、供給されたデータを解析した。Exemplarは、症例−対照研究のためにいくつかの関連性に基づく解析を行う。この解析に用いられたモジュールは以下の通りである。
・遺伝的アルゴリズムモジュール(GAモジュール)−このモジュールは、SNP(モデル)に基づく実験の論理結合を発見するための機械学習法を行う。
・関連性実験モジュール(ASモジュール)−このモジュールは、カイ二乗、イェーツ法、フィッシャーの正確確率検定、オッズ比、相対危険率、連鎖不平衡、D’、r2、およびハプロタイプ推定のような多くの有用な統計値を計算する。
【0183】
Exemplarは、一般的には、表現型に相関するモデルを発見する。言い換えると、モデルによって、その表現型からの防御ではなく、その表現型を得るのに寄与する因子を予測するのであるが、このモデルから防御因子を推測することは可能である。例えば、あるモデルが、RS001がBBであるか、またはRS001がABである試料が、その表現型と相関することを示しているのであれば、RS001がAAである試料は、その表現型から防御されると推測することができよう。
【0184】
Exemplarモデルは、SNPの論理結合である。このモデルは、仮説を検証するために手作りすることもできるし、遺伝的アルゴリズムを利用して、高い有用性をもつモデルを見つけるための試みを行うことも可能である。遺伝的アルゴリズムは、大きなデータ領域内でパターンを見つけるのを得意とする機械学習法である。GAは、3分の2・3分の1妥当性確認法を利用している。これは、症例者および対照者の2/3を無作為に訓練セットに振り分けることによって行われる。そして、GAは、この訓練セットに関するモデルを学習する。学習期を終わると、最も効率のよいモデルを試験セット(データの残り1/3)に適用する。試験および訓練を通じて最も効率のよいモデルがユーザに戻される。本研究では、少数のSNPだけが調べられていたとしても、試料数が多いため、すべてのデータを通じて適用できるパターンを人間が効果的に区別することは困難であった。このため、より有用性が高い、より複雑なパターンを見つけるためにGAを利用した。伝統的な手法に対するこれらのタイプのモデルの有益性は、予測を行う際にゲノム全体から多数の遺伝子座を取り込むことができる点にある。これによって、1つのモデルで、何が、しばしば結果と相関する多型の複合的な相互作用となるかを同定することが可能になる。
【0185】
本研究は、AMDに対して防御的なモデルを発見することに注目したという点でユニークなものであった。これは、加法モデルを発見するという、通常のExemplar法から逸脱しているため、入力データに変更を加えなければならなかった。Exemplarに対し、症例者が対照者であり、その逆も同様であると指示するだけで、それは、ある試料がその表現型を獲得しなかった理由を明らかにするモデルを学習する。すなわち、防御を付与したSNPの組み合わせを見つけようとしていた。
【0186】
研究グループ情報:データは、アイオワコホートおよびコロンビアコホートという、2つの別々のコホートから提供された。コロンビアのデータは、560人が症例者、および270人が対照者である、全部で約830人の試料をもつ大きなグループであった。アイオワコホートは、414人の症例者および115人の対照者による全部で約529人の試料を有していた。2つの試料グループがあったため、モデル構築を、一方のコホートにはGAモジュールを用いて行ない、得られたモデルのサンプル外(out−of−sample)効率を他方のコホートで検定することが可能であった。
【0187】
研究結果:入力したデータセットの中で各SNP/遺伝子型について多数の統計値が生成された。統計値は、2×2分割表を作成し、遺伝子型を適正にカウントすることによって作成された(これは対立遺伝子のカウントではなく、計算されていない2つの遺伝子型を1つの値に崩壊させた遺伝子型カウントであることに留意されたい)。2×2分割表の各セルの値は、症例(真)、症例(偽)、対照(真)、対照(偽)という見出しの下に表の中に記載されている。すべての統計値は両側計算値であった。
【0188】
表3から表6は、アイオワコホートとコロンビアコホートに関する統計値を並列して示している。注:「カテゴリー」欄は、1がAAに相当し、2がABに、また3がBBに相当する遺伝子型である。表7は、混合コホートに関する統計値を示している。
【0189】
表3.コロンビアとアイオワを並列させたカイ二乗統計値
【0190】
【表3】

表4.コロンビアとアイオワを並列させたカイ二乗イェーツ統計値
【0191】
【表4】

表5.コロンビアとアイオワを並列させたフィッシャー正確確率統計値
【0192】
【表5】

表6.コロンビアとアイオワを並列させたオッズ比統計値
【0193】
【表6】

表7.混合コホートのカイ二乗統計値
【0194】
【表7】

表8.混合コホートのカイ二乗イェーツ統計値
【0195】
【表8】

表9.混合コホートのフィッシャー正確確率統計値
【0196】
【表9】

表10.混合コホートのオッズ比統計値
【0197】
【表10】

明らかに、これらのSNPの多くは、両コホートにおいて非常に統計的に有意であった。これは、主に、本研究のための選択をもたらしたアプリオリな情報のせいであった。特に注意すべきは、フィッシャー値がp<4.81E−20であって3(T/Tとして知られるBB)であるRS1061170であって、防御型の遺伝子型としての強力な可能性があることを示している。並列比較で、アイオワコホートとコロンビアコホートの間にはいくつかの違いがあることが明らかになった。
【0198】
どのSNP/遺伝子型が防御型または寄与型であるかをさらに測定するために、フィッシャー法を、遺伝子型浸透分散(genotype penetration variance)の基礎として用いた。これを行うために、症例者および対照者の遺伝子型の割合を計算し、それらの差異の絶対値を計算した。表11は、この情報を提供し、差異の頻度が高いものの順に並べられている。
【0199】
表11.遺伝子型浸透分散
【0200】
【表11】

仮定された防御モデル:本研究では、予備実験で、AMDから防御すると可能性があると思われるSNPの組み合わせが示された。この仮説を検定するために、NCIの詳細な説明について手作りモデルを構築した。モデル図を図2Aに示す。このモデルは、仮定(IF)文として以下のように記載されうる:
RS547154がG/Aであり、かつRS1061170がT/Tであるか、または
RS547154がG/Aであり、かつRS1061170がC/Cであるか、または
RS4151667がT/Aであり、かつRS1061170がC/Tであるか、または
RS4151667がT/Aであり、かつRS1061170がC/Cである場合には、
この人物は、AMDから防御されている。
【0201】
したがって、このモデルは、AMDから防御する可能性がある遺伝子型の以下の4つの組み合わせ(モデルが「真」になる組み合わせ)を与える:
1.G/AであるRS547154、およびT/TであるRS1061170
対照者 8.82%、症例者 5.45%
2.G/AであるRS547154、およびC/CであるRS1061170
対照者 7.22%、症例者 1.93%
3.T/AであるRS4151667、およびC/TであるRS1061170
対照者 4.8%、症例者 2.02%
4.T/AであるRS4151667、およびC/CであるRS1061170
対照者 3.47%、症例者 .79%。
【0202】
このモデルを試料に対して適用すると、アイオワおよびコロンビアの混合コホートについて以下の結果が得られた:
・794人の症例者は、防御因子を持っていなかった(モデルは偽であった)...90.12%
・88人の対照者は、防御因子を持っていた(モデルは真であった)...23.52%
・87人の症例者は、防御因子を持っていた...9.88%
・286人の対照者は、防御因子を持っていなかった...76.47
注:すべてのモデルに関する統計値は、モデルを混合コホートに対して適用し、その真陽性(TP)、偽陰性(FN)、偽陽性(FP)、および真陰性(TN)の割合を見た。そして、これらの数字を、すべての統計値が作成された2×2表に入れた。表12は、各コホートに対する統計値を示している。
【0203】
表12.NCIが仮定した防御モデル統計値
【表12】

遺伝的アルゴリズム(GA)から得られたモデル:GAモジュールがSNPのより良好な組み合わせを見つけることができたか否かを見ようとして、GAモジュールを作動させて、反転データに対するモデルを学習させた(防御型モデルを学習させるため)。以下のものを含む、さまざまなパラメータ設定値を利用した:
・モデルタイプ:該モデルが、「かつ(AND)」および「または(OR)」の組み合わせ、および「AND」だけ、または「OR」だけをもつか否かを示している。
・モデルサイズ:いくつのSNPがモデルの中に存在しうるかについての上限値を示す。
・GA特異的パラメータ:例えば、世代、モデル数など。
【0204】
一般的に言えば、小規模のANDだけからなるモデルが好ましい。その理由は2つある。第一に、ANDだけからなるモデルでは、真であるべきモデルに対してそのSNPのすべてが真であることを要求されるため、その解釈は一義的であるが、ORをもつモデルでは、真であるべきモデルに対して全てのSNPが存在することは要求されないため、一定レベルの不確定さが入り込むことである。第二に、測定すべきSNPが少なくなるため、モデルが小さいほど解釈が楽になることである。
【0205】
Exemplarは、より一般的に適用可能な結果になるという所望の成果による入力データに対する過学習を避けるために、3分の2・3分の1妥当性確認法を用いている。
【0206】
さらに、2つの別々の実験グループがあったことから、コロンビアのデータだけに基づいたモデルを構築し、得られたモデルをアイオワコホートに対して検定することが可能であった。このモデルの成績が、2つのグループを通じて整合していれば、このモデルの一般的適用性が強く示されることとなる。これは、上記統計学の項において議論したような、この2つのグループ間における興味深い統計的差異を考えると、特に興味深い。このような変異を考えると、GAによって、コロンビアのデータについては高い適合モデルを見つけることができるが、アイオワデータについては成績がよくないと思われる。
【0207】
GAによって、コロンビア、アイオワ、および混合グループのデータセット全体について良好な成績を得たモデルが見つけられた。このモデルがコロンビアのデータに対して学習させられていたことから、予想通りコロンビアのデータに対するモデルの成績の方がアイオワデータよりも優れていた。それにもかかわらず、GAがアイオワのデータについて事前の知識がなく、2つのコホート間で主なSNPの間に有意な統計的差異があったことを考えると、このモデルの成績は特筆すべきものである。得られた最適なモデルは、混合コホートについて手作りで仮定されたモデルよりも成績がよかった(RS1061170)。まず、このモデルは、「INDELTTがホモ接合であり、かつ(AND)RS547154がGGである」という、もう一つのセクションを含んでいたが、さらに調べてみたところ、このセクションはモデル解釈とは無関係であると判定されたため、これを排除して、同一の成績をもつモデルを作成した。最終的なモデル図を、図2Cで見ることができる。
【0208】
このタスクのためのGA特異的オプションは以下の通りであった:
モデル:1500−これは、モデルの新しい世代を発展させるための基礎として、GAが内部的に構築したモデルの数である;
反復:25−これは、解を見つけるまでにモデルが検討された進化的反復(evolutionary iterations)の回数である;
モデルサイズ:5−これは、モデルに、単一のモデルにおいて最大16の遺伝子型を出現させることができるサイズである;
モデル型:AND/OR型−これは、GAに、かつ型およびまたは型の両方を使用できるモデルを構築させる。
【0209】
このモデルは、仮定文で以下のように書き表すことができる:
RS1048709がG/Gであり、かつRS1061170がT/Tであるか、または
RS547154がG/Aであるか、または
RS4151667がT/Aであるか、または
INDELTTが+/+であれば、
この人物は、AMDから防御されている。
【0210】
このモデルは、AMDから防御する以下の4つの個別の遺伝子型、または遺伝子型の組み合わせを与える(モデルが「真」となる組み合わせ):
1.RS1048709がG/G、およびRS1061170がT/T
・14.20%の症例者、34.31%の対照者で存在
2.RS547154がG/A
・9.6%の症例者、18.32%の対照者で存在
3.RS4151667がT/A
・4.2%の症例者、9.92%の対照者で存在
4.INDELTTが+/+
・1.45%の症例者、6.86%の対照者で存在
このモデルを試料に対して適用すると、アイオワおよびコロンビアの混合コホートについて以下の結果となる:
・682人の症例者(74.78%)は防御因子をもたず、230人はもっていた。
【0211】
・204人の対照者(55.74%)は防御因子をもち、162人はもっていなかった。
【0212】
表13は、各コホートについての統計値を示している。GAは、ボード全体にわたって良好な成績を上げた。全体として、このモデルによって記述された防御因子をもつ者は、防御因子を持たないものよりも3.6581倍AMDになりにくかった。
【0213】
表13.遺伝的アルゴリズムから得られたモデル統計値
【0214】
【表13】

この2つのコホート間におけるいくつかの主要SNPには明確な統計学的差異があることを考えると、より正確に転帰/防御を予測する単一のモデルを発見することがヒトにとっても、機械学習にとっても同じように難問であった。手作りモデルは、立派な成績を上げ、興味深いことに、SNPをORで同一にまとめるなど、GAが同定したのと同じSNPのヘテロ接合的組み合わせを同定した(ABであるRS547154、ABであるRS4151667)。
【0215】
このタスクが困難であるにもかかわらず、GAは、外挿検定(out of sample test)について良好な成績を上げた(フィッシャー値アイオワp<0.0000749)。GAは、すべてのコホートについて、手作りモデルよりも優れていた。それにもかかわらず、手作りモデルは、非常に適正に結果を予測するジョブを行う。このモデルの他の改変モデルをテストしたが、その成績を上げることはできなかった。SNP/遺伝子型/論理演算子の組み合わせには多くの可能性があることを考えると、これは予想されることであるから、適当な時間枠の中で何万ものモデル変動を検定することができる機械学習法の値となる。
【0216】
単一のSNPの高い統計学的有意性(T/TであるRS1061170:×2=97.25)を考えて、それだけでAMDのリスクを予測できると結論するかもしれない。単一のSNPのモデルまたは複数遺伝子座のモデルが一般集団における防御を予測するのに適している可能性があるかをテストするために、データに対して並べ替え検定を行った。並べ替え検定によって、単一のSNPでは、GAによるモデル、または手作りモデルのいずれよりも、データのランダム混合による方が、3000回の並べ替えに対してカイ二乗スコアが4.8153であるのに対して、GAでは3.3157、および手作りモデルでは1.2207となって、統計学的に有意な結果を生じる可能性がずっと高いことが示された。オッズ比評価について、単一SNPでは、OR>1.5で625の並べ替えがあるのに対し、GAモデルでは133、また手作りモデルでは46であった。この手作りモデルは、単に、どの試料でも稀にしか存在しない遺伝子型の組み合わせを表しているだけである。結局、GAモデルが、もっとも正しい症例対照成績および並べ替えの結果を示した。
【0217】
モデル統計学、ROCプロット、および並べ替え検定を総合的に眺めると、転帰を予測するための多遺伝子座モデル法の方が、多様なグループにわたる単一の遺伝子座よりも優れていると思われる。
結論
結論として、本研究は、AMDの病理生物学における第二補体経路の役割を広く示すとともに精緻化し、また、感染および/または炎症が、この普遍的な疾患において主要な役割を果たすという提案モデルをさらに強化している(Hagemanら、2005、前掲;Andersonら、2002、前掲;Hagemanら、2001、前掲)。
【0218】
実施例3.AMDの発症を予防するための防御型BFタンパク質またはC2タンパク質の投与
対象は、ドルーゼンを含む、AMDの兆候および/または症状を呈している。この対象は、防御型多型である、BFにおけるR32QおよびL9H、ならびにC2におけるIVS 10およびE318Dについては陰性と判定されている。この対象は、防御型BFタンパク質(R32Q多型を有する)で治療することを推奨されている。この対象に、BFの血清濃度が9から31mg/dLになるのに十分な量の防御型BFを生理食塩水に入れて、6ヶ月間月に1回静脈に投与する。この時、ドルーゼン、ならびにAMDの他の兆候および/または症状がないか、対象を観察する。AMDの兆候および/または症状が進行していなければ、指示された頻度で、しかし、少なくとも半年に1回の頻度で患者の臨床状態を観察しながら、防御型BFの投与を月に1回ずつ無期限に継続する。
【0219】
別の臨床投薬計画では、防御型BFタンパク質を1日に1回鼻腔内に投与して、より持続的にこのタンパク質の防御作用に暴露する。
【0220】
本明細書に記載されたすべての刊行物および特許出願は、本発明が属する技術分野における技術水準を示すものである。すべての刊行物および特許出願は、各刊行物および特許出願が具体的かつ個別に参照して本明細書に組み込まれると記載されているものとして、参照されて本明細書に組み込まれる。
【0221】
本発明の原理を利用することができる多くの可能な実施形態を考慮すると、例示された実施形態は、本発明の好適な実施例に過ぎないと認識されるべきであって、本発明の範囲を制限するものと考えるべきではない。むしろ、本発明の範囲は下記の請求項によって規定される。したがって、本発明者らは、本発明はすべて、それらの請求項の範囲と趣旨に含まれるものであると主張する。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】BFおよびC2におけるSNPの略図とハプロタイプ解析結果である。本研究で使用されたSNPを、予測されたハプロタイプ、オッズ比(OR)P値(P)、および組み合わせた場合(CAS)と対照(CON)の各頻度とともに示している。H7に対する95%信頼区間は(0.33−0.61)であり、H10に対しては(0.23−0.56)である。祖先(チンパンジー)のハプロタイプはAncと表されている。ハプロタイプH2(NCBIアクセッション番号:AL662849の2006年2月8日に利用可能であったもの)、ハプロタイプH5(NCBIアクセッション番号:AL645922およびNCBIアクセッション番号:NG_004658の2006年2月8日に利用可能であったもの)、およびハプロタイプH7(NCBIアクセッション番号:NG_000013の2006年2月8日に利用可能であったもの)の各例が配列決定されており、C2遺伝子にもBF遺伝子にも、これ以外に非同義変異体は存在しない(Stewartら(2004)Genome Res.14:1176−87)。
【図2A】組み合わせ相補遺伝子解析を示している。個別のSNP解析によって、個体をAMD発症から保護する、いくつかのSNPの組み合わせが可能であることが明らかになった。これらをテストするために、まず経験的モデルを適用した。図2Aは、AMDから防御する可能性のある4つの遺伝子型の組み合わせになると解釈される、モデル図を示している。それらは、(1)rs641153(R32Q)がG/A、およびrsl061170(Y402H)がC/T;(2)rs547154がG/A、およびrsl061170がC/C;(3)rs4151667(L9H)がT/A、およびrsl061170がC/T;(4)rs4151667がT/A、およびrsl061170がC/C。これらのモデルを適用したところ、アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートのそれぞれについて、図2Bに示す分布が得られた。これらの分布に対して、フィッシャーの正確確率検定を行い、p値がP=0.00237、P=4.28×10−8、およびP=7.90×10−10であることを証明した。比較のために、模範的なソフトウェアで、遺伝的アルゴリズムとして知られている機械学習法を用いて、データに対し「最良適合度」をもたらす防御モデルを作成した。その結果得られた最良のモデルを図2Cに示す。このモデルは、AMDから防御する以下の可能性のある4つの個別の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせ、すなわち、モデルが「真」となる組み合わせを説明している。これらの遺伝子型は、(1)rs1048709(R150R)がG/G、およびrs1061170がC/C;または(2)rs547154がG/A;または(3)rs4151667がT/A;または(4)CFHイントロン1変異体がdelTT。モデルの成績を、アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートについて図2Dに示す。これらの分布によってp値がそれぞれP=7.49×10−5、P=2.97×10−22、およびP=1.69×10−23であることが証明された。
【図2B】組み合わせ相補遺伝子解析を示している。個別のSNP解析によって、個体をAMD発症から保護する、いくつかのSNPの組み合わせが可能であることが明らかになった。これらをテストするために、まず経験的モデルを適用した。図2Aは、AMDから防御する可能性のある4つの遺伝子型の組み合わせになると解釈される、モデル図を示している。それらは、(1)rs641153(R32Q)がG/A、およびrsl061170(Y402H)がC/T;(2)rs547154がG/A、およびrsl061170がC/C;(3)rs4151667(L9H)がT/A、およびrsl061170がC/T;(4)rs4151667がT/A、およびrsl061170がC/C。これらのモデルを適用したところ、アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートのそれぞれについて、図2Bに示す分布が得られた。これらの分布に対して、フィッシャーの正確確率検定を行い、p値がP=0.00237、P=4.28×10−8、およびP=7.90×10−10であることを証明した。比較のために、模範的なソフトウェアで、遺伝的アルゴリズムとして知られている機械学習法を用いて、データに対し「最良適合度」をもたらす防御モデルを作成した。その結果得られた最良のモデルを図2Cに示す。このモデルは、AMDから防御する以下の可能性のある4つの個別の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせ、すなわち、モデルが「真」となる組み合わせを説明している。これらの遺伝子型は、(1)rs1048709(R150R)がG/G、およびrs1061170がC/C;または(2)rs547154がG/A;または(3)rs4151667がT/A;または(4)CFHイントロン1変異体がdelTT。モデルの成績を、アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートについて図2Dに示す。これらの分布によってp値がそれぞれP=7.49×10−5、P=2.97×10−22、およびP=1.69×10−23であることが証明された。
【図2C】組み合わせ相補遺伝子解析を示している。個別のSNP解析によって、個体をAMD発症から保護する、いくつかのSNPの組み合わせが可能であることが明らかになった。これらをテストするために、まず経験的モデルを適用した。図2Aは、AMDから防御する可能性のある4つの遺伝子型の組み合わせになると解釈される、モデル図を示している。それらは、(1)rs641153(R32Q)がG/A、およびrsl061170(Y402H)がC/T;(2)rs547154がG/A、およびrsl061170がC/C;(3)rs4151667(L9H)がT/A、およびrsl061170がC/T;(4)rs4151667がT/A、およびrsl061170がC/C。これらのモデルを適用したところ、アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートのそれぞれについて、図2Bに示す分布が得られた。これらの分布に対して、フィッシャーの正確確率検定を行い、p値がP=0.00237、P=4.28×10−8、およびP=7.90×10−10であることを証明した。比較のために、模範的なソフトウェアで、遺伝的アルゴリズムとして知られている機械学習法を用いて、データに対し「最良適合度」をもたらす防御モデルを作成した。その結果得られた最良のモデルを図2Cに示す。このモデルは、AMDから防御する以下の可能性のある4つの個別の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせ、すなわち、モデルが「真」となる組み合わせを説明している。これらの遺伝子型は、(1)rs1048709(R150R)がG/G、およびrs1061170がC/C;または(2)rs547154がG/A;または(3)rs4151667がT/A;または(4)CFHイントロン1変異体がdelTT。モデルの成績を、アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートについて図2Dに示す。これらの分布によってp値がそれぞれP=7.49×10−5、P=2.97×10−22、およびP=1.69×10−23であることが証明された。
【図2D】組み合わせ相補遺伝子解析を示している。個別のSNP解析によって、個体をAMD発症から保護する、いくつかのSNPの組み合わせが可能であることが明らかになった。これらをテストするために、まず経験的モデルを適用した。図2Aは、AMDから防御する可能性のある4つの遺伝子型の組み合わせになると解釈される、モデル図を示している。それらは、(1)rs641153(R32Q)がG/A、およびrsl061170(Y402H)がC/T;(2)rs547154がG/A、およびrsl061170がC/C;(3)rs4151667(L9H)がT/A、およびrsl061170がC/T;(4)rs4151667がT/A、およびrsl061170がC/C。これらのモデルを適用したところ、アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートのそれぞれについて、図2Bに示す分布が得られた。これらの分布に対して、フィッシャーの正確確率検定を行い、p値がP=0.00237、P=4.28×10−8、およびP=7.90×10−10であることを証明した。比較のために、模範的なソフトウェアで、遺伝的アルゴリズムとして知られている機械学習法を用いて、データに対し「最良適合度」をもたらす防御モデルを作成した。その結果得られた最良のモデルを図2Cに示す。このモデルは、AMDから防御する以下の可能性のある4つの個別の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせ、すなわち、モデルが「真」となる組み合わせを説明している。これらの遺伝子型は、(1)rs1048709(R150R)がG/G、およびrs1061170がC/C;または(2)rs547154がG/A;または(3)rs4151667がT/A;または(4)CFHイントロン1変異体がdelTT。モデルの成績を、アイオワコホート、コロンビアコホート、および混合コホートについて図2Dに示す。これらの分布によってp値がそれぞれP=7.49×10−5、P=2.97×10−22、およびP=1.69×10−23であることが証明された。
【図3】初期段階のAMDに罹った72歳の高齢者ドナーの固定されていない眼(unfixed eye)から得られた切片における、網膜色素上皮(RPE)−脈絡膜(CH)複合体に沿ったBF(図3A)、Ba(全長B因子の断片)(図3B)、およびC3(図3C)の免疫局在性を示している。抗BF抗体(Quidel;反応産物は赤色)は、特にそれらの周縁に沿ってドルーゼン(D)を、また、ブルッフ膜および脈絡膜実質(choroidal stroma)を標識する。抗Ba抗体(Quidel;反応産物は紫色)は、ブルッフ膜およびRPE結合パッチ(RPE−associated patches)を標識する。BFの分布は、C3の分布と同様であることに注意されたい。RPEの細胞質および脈絡膜における茶色の着色はメラニンによるものである。ブルッフ膜(BM);網膜(R)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第二補体カスケードの調節異常を特徴とする、黄斑変性症などの疾患を発症するリスク、またはそれが進行している可能性をヒト対象において評価する方法であって、以下の工程を含む方法:
i)ヒト対象から生体試料を得る工程;
ii)該試料を分析して、該対象が、以下のa)〜d)の1つ以上を有するか否かを判定する工程:
a)補体B因子(BF)遺伝子のrs641153においてAまたはG、または該BFタンパク質の32位においてRまたはQ;
b)該BF遺伝子のrs4151667においてAまたはT、または該BFタンパク質の9位においてLまたはH;
c)C2遺伝子のrs547154においてGまたはT;および
d)該C2遺伝子のrs9332379においてCまたはG、または該C2タンパク質の318位においてEまたはD。
【請求項2】
さらに、前記対象が、以下のa)〜b)の1つ以上を有するか否かを判定する工程を含む、請求項1記載の方法:
a)補体H因子(CFH)遺伝子においてdelTT;および
b)CFH遺伝子のrs1061170においてCまたはT、または該CFHタンパク質の402位においてYまたはH。
【請求項3】
前記対象が黄斑変性症について無症状である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記対象が黄斑変性症の症状をもつ、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、利用可能な体液である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記対象の細胞から遺伝子型を検出することを含む、請求項1記載の方法
【請求項7】
前記対象におけるタンパク質変異体を検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記対象の細胞からmRNAを検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記対象が前記多型についてホモ接合であるかヘテロ接合であるかを判定することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
第二補体カスケードの調節異常を特徴とする、黄斑変性症を含む疾患を発症するリスク、または該疾患が進行している可能性をヒト対象において評価するキットであって、該対象由来の試料において以下の1つ以上の多型または1つ以上の対立遺伝子変異体を検出するための試薬を含むキット:
a)補体B因子(BF)遺伝子のrs641153においてAまたはG、または該BFタンパク質の32位においてRまたはQ;
b)該BF遺伝子のrs4151667においてAまたはT、または該BFタンパク質の9位においてLまたはH;
c)C2遺伝子のrs547154においてGまたはT;および
d)該C2遺伝子のrs9332379においてCまたはG、または該C2タンパク質の318位においてEまたはD。
【請求項11】
前記対象から得た試料において以下の1つ以上の多型または1つ以上の対立遺伝子変異体を検出するための試薬を含む、請求項10記載のキット:
a)補体H因子(CFH)遺伝子においてdelTT;および
b)CFH遺伝子のrs1061170においてCまたはT、または該CFHタンパク質の402位においてYまたはH。
【請求項12】
2つ以上の多型または2つ以上の対立遺伝子変異体を検出するための試薬を含む、請求項10記載のキット。
【請求項13】
前記多型を検出するオリゴヌクレオチドを含む、請求項10記載のキット。
【請求項14】
前記多型を含む標的ポリヌクレオチド配列を増幅するための試薬をさらに含む、請求項10記載のキット。
【請求項15】
固体支持体上に固定されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項10記載のキット。
【請求項16】
前記対立遺伝子変異体を認識して特異的に結合する特異的結合タンパク質を含む、請求項10記載のキット。
【請求項17】
ストリンジェントな条件下で、以下のa)〜d)からなる群から選択される防御型多型をもつ1つ以上の核酸分子にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイ:
a)BF内のR32Q(rs641153);
b)BF内のL9H(rs4151667);
c)C2内のIVS 10(rs547154);および
d)C2内のE318D(rs9332739)。
【請求項18】
ストリンジェントな条件下で、以下のa)〜c)からなる群から選択される多型をもつ1つ以上の核酸分子にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブをさらに含む、請求項17記載のマイクロアレイ:
a)CFH内のdelTT多型;
b)BF内のR150R多型;および
c)CFH内のY402H多型。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2009−526524(P2009−526524A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554415(P2008−554415)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/003696
【国際公開番号】WO2007/095185
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(507272740)ユニバーシティー オブ アイオワ リサーチ ファウンデーション (2)
【出願人】(306018457)ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク (25)
【出願人】(508245253)ナショナル インスティテューツ オブ ヘルス (2)
【Fターム(参考)】