説明

補充現像剤を収容する現像剤容器

【課題】本発明の目的は、トナー凝集塊を含有せず、トリクル現像方式の画像形成装置に補給された際に画像濃度ムラや画像荒れの画像不良を発生させずに画像形成が可能な補充現像剤を収容する現像剤容器の提供すること。
【解決手段】現像剤容器内に、キャリアの配合比がトナーに対して5〜30質量%の範囲であり、且つ、キャリア配合比の偏差が10質量%の範囲にある補充現像剤を収容すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分現像方式で静電潜像をトナーで現像する際にトナーとキャリアからなる補充現像剤を補給しながら現像を行う、トリクル現像方式の画像形成装置に装着される補充用の現像剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
POD(プリントオンデマンド)分野、あるいは軽印刷分野では、プリント作製規模がオフィスに比べるとはるかに大きく、連続して数千枚に上るプリント作製を行うことも想定しておく必要がある。このような場合でも開始から終了までの間、画質に変動をきたすことのない安定性が求められていた。また、この分野では多種多様な情報が収録されたプリントを作製する機会も多々あり、プリント作製中に画像の画素率変化に伴ってトナー消費量が大きく変化することもあった。
【0003】
フルカラー画像形成におかれては、トナーとキャリアからなる現像剤を用いる2成分現像方式による画像形成が広く行われているが、良好な画質のフルカラー画像を安定して提供するためにも、長期の使用に耐え得る2成分現像剤が求められていた。
【0004】
2成分現像方式では、トナーをキャリア表面で摩擦させて適度に帯電させているが、長期にわたり現像を繰り返し行っていると、キャリア表面の樹脂層が摩耗剥離したり、あるいはトナー構成成分がキャリア表面に固着したりして、キャリアの帯電能力が次第に低下する。その結果、キャリアから所定量のトナーを感光体に供給する現像性能が低下して、画像濃度が変動する、特に、フルカラー画像形成においては所定のカラーバランスを得ることが難しくなるといった問題を有していた。
【0005】
また、数千枚レベルのプリント作製を連続で行う場合でも、最初から最後までの全プリントで画像濃度及び色相の変化が少なく抑えられているような、プリント作製の性能が求められていた。
【0006】
そこで、現像時に消費される分のトナーを補うために新しいトナーを補給する際に、新しいトナー中に少量の新しいキャリアが混合された補充現像剤を補充用の現像剤容器から現像装置に補給して、使用中のキャリアを新しいキャリアに少しずつ入れ替えることによりキャリアの帯電能力を維持する、いわゆるトリクル現像方式の現像装置を用いた画像形成装置が提案されていた。(例えば、特許文献1、2参照)
特許文献1に記載の技術には、キャリア濃度が約3%〜約50%になるように混合して調製された補充現像剤を補給するトリクル現像方式の現像装置を用いたカラー画像形成装置である。
【0007】
特許文献2に記載の技術には、抵抗値の異なる3種の各キャリアをトナーと調製された3種類の補充現像剤を現像剤容器の長手方向に3つの領域に区分して収納するものである。そして、トナー補給の時間経過に伴い異なる抵抗値の新キャリアを順次補給させるものである。
【0008】
劣化の進んだキャリアの中に新しいキャリアを補給すると、ロングレンジの観点ではキヤリアの能力低下を抑制できる。他方において、現像剤容器から現像装置内に実際に時々刻々に補給される補充現像剤のキヤリア濃度(補充現像剤の質量に対するキャリア質量の割合)が安定せず、大きく変動する。
【0009】
そのために、感光体上の潜像に対面する現像ローラ上に供給される現像剤のトナー供給性能が大きく変動したり、現像ローラの位置で性能差が生じたりして、ベタ濃度画像部に画像濃度ムラ、あるいは中間調(ハーフトーン)画像部に画像あれが発生するという画質問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−223960号公報
【特許文献2】特開2004−29306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、トリクル現像方式の画像形成装置に補給された際に画像濃度ムラや画像荒れの画像不良を発生させずに画像形成が可能な補充現像剤を収容する現像剤容器の提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、下記に記載の構成により解消された。
【0013】
1.少なくともトナーとキャリアとからなる補充現像剤を収容する現像剤容器において、前記現像剤容器内に収容される補充現像剤におけるキャリアの濃度が、トナーとキャリアを含む現像剤全体に対して5〜30質量%の範囲であり、且つ、前記現像剤容器内に収容される補充現像剤におけるキャリア濃度の偏差が10質量%の範囲であることを特徴とする現像剤容器。
【0014】
2.前記キャリアの濃度が、トナーとキャリアを含む現像剤全体に対して20質量%以下の範囲であることを特徴とする1に記載の現像剤容器。
【0015】
3.前記補充現像剤が、トナーが収容され、該トナーの上にキャリアが積載され収容された容器と、該容器の壁面に対し振動エネルギーを加える加振行程を有する調製方法を用いて調製されることを特徴とする1又は2に記載の現像剤容器。
【0016】
4.前記現像剤容器が、画像形成装置に装着可能であることを特徴とする1から3の何れか1に記載の現像剤容器。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の現像剤容器は、現像剤容器に収容された補充現像剤が画像形成装置で使用されることによって、画像安定性及び現像剤耐久性能に優れたトリクル現像方式の画像形成装置の提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】補充現像剤を収容する現像剤容器Bの外観斜視図及び側面図。
【図2】キャップB20が容器本体B10から取り外された状態の現像剤容器Bの外観斜視図及び側面図。
【図3】第1の実施形態に係る調製方法及び調製装置の原理を示す概要図。
【図4】第1の実施形態で調製された現像剤容器B内のキャリア濃度分布を示す模式図。
【図5】第2の実施形態に係わる調製方法及び調製装置の概要図。
【図6】第1加振行程及び第2加振行程の起動タイミングを示すタイミングチャート。
【図7】第2の実施形態で調製された現像剤容器B内のキャリア濃度分布を示す模式図。
【図8】第3の実施形態に係る現像剤容器Bの外観斜視図及び正面図。
【図9】第3の実施形態に係わる調製方法及び調製装置の概要図。
【図10】本発明に係る調製方法及び調製装置で調製された補充現像剤の実機評価テストに用いられた画像形成装置Dの中央断面図。
【図11】実写テストの運用計画のタイムテーブル。
【図12】テスト画像のレイアウト図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本欄の記載は、請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、以下の、本発明の実施の形態にける断定的な説明は、代表的な形態を示すものであって、本発明の用語の意義や技術的範囲を限定するものではない。
【0020】
[現像剤容器]
図1は、本発明の実施の形態に係る、補充現像剤を収容する容器としての現像剤容器Bの外観斜視図及び側面図である。
【0021】
補充現像剤は、第1粒子としてのトナーと、第2粒子としてのキャリアを主体に構成されている。補充現像剤を収容する現像剤容器Bは、筒状の容器本体B10とキャップB20とを有する。
【0022】
キャップB20は、容器本体B10に収容されているトナーを封止するとともに、容器本体B10から排出されたトナーを画像形成装置の現像装置へと排出するもので、プラスチックのインジェクション成型で作られたものである。
【0023】
現像剤容器Bが画像形成装置(図示せず)に装着された状態では、容器本体B10は図示のW1方向に回転するが、キャップB20は静止している。
【0024】
容器本体B10内のトナーはW1方向の回転時に螺旋状の突起B11の推進作用でキャップB20の方向に送られ、キャップB20に設けられた図示していない排出口から画像形成装置内の現像装置に排出される。
【0025】
キャップB20に設けられている複数の係止爪B21を外側に変位させた状態で容器本体B10を矢印aの方向に引くことにより、キャップB20を容器本体B10から外すことができる。
【0026】
図2は、キャップB20が容器本体B10から外された状態における現像剤容器Bの外観斜視図及び側面図である。
【0027】
キャップB20を矢印a方向に容器本体B10に装着された状態では、キャップB20の係止爪B21が容器本体B10のリング状凸部B12に係止することにより、キャップB20の容器本体B10からの抜けが防止される。
【0028】
なお、容器本体B10の開口部には、容器本体B10とキャップB20との間隙をシールし、補充現像剤の漏洩を防止するシール部材B13を有する。
【0029】
[補充現像剤の処方]
上記の補充現像剤に用いるトナーとキャリアは、トナーとキャリアと外添剤とで構成されるが、画像形成装置の現像装置に初期から装着されている通常の現像剤に用いられるトナー、キャリア、及び外添剤と同じものを使用した。外添剤はトナー及びキャリアの作製段階で調合されるために、補充現像剤の調製はトナーとキャリアとを混合することになる。
【0030】
<トナーの処方>
トナーは、特開2002−351142号公報等に開示される乳化重合によるトナー粒子分散液の製造方法を用いて作製されたスチレンアクリル重合体の樹脂中に着色剤粒子が分散された粒子であり、その粒径は4〜7μmである。
【0031】
トナーとして比重は1.05である。
【0032】
外添剤の添加量は上記トナーに対して0.5質量部である。
【0033】
<キャリア>
キャリアは、磁性芯材と該芯材の表面に被覆された樹脂被覆層と構成される。
【0034】
磁性芯材は、耐久性の観点から軽くて磁力が強いフェライト材を用いた。粒子径は平均質量で30μmである。
【0035】
樹脂被覆層は、熱可塑性樹脂のアクリル酸エステル重合体である。
【0036】
キャリアの比重は、3.50でありトナーに比較して大きい。
【0037】
<外添剤>
外添剤としては疎水性のシリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製の市販品R−805)である。
【0038】
[補充現像剤の調製装置;第1の実施の形態]
図3は、トリクル現像方式の補充現像剤を調製する調製装置の原理を示す、概念図である。
【0039】
第1ステップは、容器本体B10内に開口部から所定量のキャリアCを装填する行程である。図3(a)は、第1ステップ行程が為された後の状態を示す。所定量のキャリアは、現像剤容器B内に充填されるキャリアの全量である。
【0040】
第2ステップは、図3(a)の状態の容器本体B10に所定量のトナーTを装填してキャリアC層上にトナーTの堆積層を形成する行程である。図3(b)は、第2ステップの行程が為された後の状態を示す。所定量のトナーは、現像剤容器B内に充填されるトナーの全量である。
【0041】
第3ステップは、容器本体B10の開口にキャップB20を装着して容器本体内の補充現像剤が外部へ漏洩するのを防止している。図3(c)は第3ステップの行程が為された後の現像剤容器B内の状態を示す。現像剤容器B内の底にキャリアCの層が形成され、その層の上にトナーTの層が堆積して形成されている。
【0042】
第4ステップは、作業者の操作により、図3(c)の状態の現像剤容器Bを180°回転して現像剤容器Bを上下に転換して、調製装置Aの載置台A12上に設置する行程である。この行程によって、現像剤容器B内においてトナーTの層が下に形成され、トナーTの層の上部にトナーTに比較して比重が大きいキャリアCの層が形成されるようになる。
【0043】
図3(d)は、第4ステップの行程が為された後の状態を示す。図示のように、作業者の操作により、現像剤容器Bは2個の加振部材A22と1個の押圧部材A14からなる3つの部材で挟まれ支持されて載置台A12上に載置されている。上記のように、加振手段A20及び押圧手段A14によって安定的に支持可能である。つまり、現像剤容器Bを支持する調製装置Aの支持部は、少なくとも載置台A12及び加振手段A20及び押圧手段A14で構成される。
【0044】
また、図3(d)に示すように、加振部材A22はトナーが堆積された領域に対応する現像剤容器Bの外壁に押圧している。
【0045】
次に、本発明に係わる第5ステップの加振行程を図3(e)に基づき説明する。第5ステップは上方の加振手段A20のみを作動させて、現像剤容器B内のトナー層及びその上方に積載するキャリア層を振動させて、キャリアをトナー層中に攪拌混入させる行程である。
【0046】
上方の加振手段A20のみを作動させると、上方の加振部材A22は矢印のように現像剤容器Bの外壁を垂直方向に振動させる。上方の加振手段A20からの振動波は、加振部材を媒介して現像剤容器Bを通過して現像剤容器B内に堆積されたトナーTの層を伝搬する。更に反対側の現像剤容器Bの壁面で反射して加振手段A20側に帰還するように伝搬する。図3(e)には、加振部材A22から放射される波動を実線で、容器壁で反射された波動を破線で模式的に示す。
【0047】
このために、加振手段A20からの振動が及ぶトナー層領域では、振動波に晒され攪拌状態になり、凝集トナーが解されてトナー相互の結合力が弱められている。上記の振動状態(攪拌状態)の領域に存在するキャリアCは、振動強度に対応する速度で重力に従って下方に移動する。トナー堆積層の最上部も振動波に晒されるために、上方にあるキャリア層からキャリアCが順次侵入する。
【0048】
鋭意検討したところ、現像剤容器B内の長手方向におけるキャリア濃度の分布は、加振手段A20から出力される次式で定まるエネルギーEaで決まる。
【0049】
Ea=1/2・Pa・Ta
加振期間Taは加振手段A20が作動する加振期間であり、Paは圧縮エアーの圧力である。
【0050】
換言すると、圧縮エアーの圧力Paを一定にした場合、現像剤容器B内の長手方向におけるキャリア濃度は、加振期間Taに伴い変化する。例えば、トナー層の最上部領域では初期に極めて高い濃度であるが、次第に減少し最終的に零に漸近する。他方、加振部材A22から離れて下方に位置して振動波が実効的に弱くなる領域Zbでは、初期に零であった濃度が、ある時点になると上方領域から降下するキャリアCが到達し滞留するために、最終的に領域Zb近傍が現像剤容器B内で最大のキャリア濃度を示すようになる。
【0051】
図4は、第1の実施形態で調製された現像剤容器B内のキャリア濃度分布を示す模式図であり、最上部のキャリア濃度が下記に示す平均値に低下した時点に加振手段A20の作動を停止させた場合である。なお、図示の破線は、補充現像剤を理想的に均一に混合したものとして算出される平均値(ここでは15質量%)である。
【0052】
上記第1の実施形態で調製された補充現像剤を領域毎に評価すると、振動エネルギーが十分に及んだA領域から採取された現像剤のキャリア濃度は平均値に近い値を示している。B領域から採取された現像剤はトナー濃度検出の誤作動及び画像問題を発生するような高いキャリア濃度を示すものであった。B領域より下方に位置するC領域から採取された現像剤は、0%、あるいはそれに近い濃度であり、トリクル現像方式の機能が全く機能しないものである。
【0053】
上記の実施の形態では、加振手段A20の振動が容器の長手方向における全域に十分に及ばない状態を生じる形態であったが、上記振動が十分に及んだ領域ではトナー凝集塊を発生させず、キャリアCとトナーを平均値に近いキャリア濃度に均一に混合できることが確認できた。しかも、従来の調製方法に比較して投下エネルギーを必要とせず、10秒以下の短時間に調製できる方法であることも確認できた。
【0054】
一方、上記の振動が十分に及ばない領域では、キャリアのトナー層への混入が進行せずキャリア濃度が高くなるという課題もあるが、加振部材からの振動が十分な強さで容器内の全域に及ぶような形態にすれば十分に実用可能な調製方法であることも確認できた。
【0055】
[第2の実施の形態]
本実施形態の調製方法は、上記第1の実施形態で生じた課題を解決するものであり、第1の実施形態における第5ステップの行程を改良するものである。
【0056】
図5は、第2の実施形態に係わる調製方法の改良点の原理を示す概要図である。改良点の要点は、現像剤容器Bの長手方向における全域に対して加振部材からの振動が及ぶように、上下の加振手段を作動させるようにしたものである。
【0057】
図5(a)は、上記の第1の実施形態における第4ステップの行程が為された後の状態を示す。
【0058】
図5(a)に示すように、作業者の操作により、現像剤容器Bは調製装置本体A10の載置台A12上に載置され、上下に配置された2つの加振手段A20と1つの押圧手段A14からなる3つの手段で挟まれ支持される。
【0059】
次に、本発明に係る2つの加振手段A20を作動させて現像剤容器B内のトナー層にキャリアを混合させる第5ステップ行程について、図5(b)及び(c)に基づき説明する。
【0060】
この行程は、上方に配設される上方の加振手段A20を振動させる第1加振行程と、下方の加振手段A20を振動させる第2加振行程とで構成される。
【0061】
両加振行程におけてキャリアCがトナー層内に移動する混入挙動は、第1の実施形態の説明と同様であり省略する。特に、第1加振行程は第1の実施形態における第5ステップの行程と同一であり、トナー層の最上部領域のキャリア濃度が目標値付近に低下する時点で上方の加振手段A20の作動が停止する。
【0062】
第1加振行程の終了後に、第2加振行程の作動を起動させる。また、下方の加振手段A20の振動がB領域から現像剤容器Bの底までに及ぶように下の加振手段A20は配設されている。
【0063】
現像剤容器B内の最下層の現像剤におけるキャリア濃度が目標値に達すると推定される時点で下方の加振手段A20の作動を停止し、第2加振行程は終了する。
【0064】
図6は、第1加振行程の加振期間である第1加振期間T1と第2加振行程の加振期間である第2加振期間T2のタイミングシークエンスである。横軸が時間軸で、第1加振期間T1(ON)と、第2加振期間T2(ON)とを示している。下欄のA形態は、上記で説明した第2の実施の形態における両加振期間T1、T2のタイミングシークエンスである。現像剤容器B内の補充現像剤のキャリア濃度分布が適正な範囲に収まるように、それぞれの加振期間T1、T2が適宜選定されるものである。
【0065】
上欄のB形態のように、それぞれの起動期間を重複させることも可能である。調製時間が短縮できる長所があるが、現像剤容器B内の補充現像剤のキャリア濃度分布が適正な範囲に収めるためには、それぞれの加振期間T1、T2の他に重複期間T3についても適正化することが必要になり、適正化するための条件出しが複雑になる。
【0066】
いずれにしても、容器の長手方向におけるキャリア濃度の分布を狭い範囲に収めるためには、複数の加振部材を加振して容器内全域のトナーに振動を加えることに止まらず、図示のように「上方の第1加振行程が完了した後に、下方の第2加振行程の作動を起動させる、あるいは少なくとも第1加振行程の作動後に第2加振行程の作動を起動させる」ことが肝要である。
【0067】
図7は、第2の実施の形態で調製した場合の現像剤容器B内のキャリア濃度分布を示す模式図である。横軸が容器長手方向の位置を示し、左側が現像剤容器Bの上方で、右側が下方である。縦軸が補充現像剤のキャリア濃度である。
【0068】
そして、実線は上記A形態のタイミングシークエンスで作動した場合のキャリア濃度分布であり、平均値を中心に実用上障害のない濃度範囲(偏差)に均一に混合されている。破線は、第2加振期間T2と第1加振期間T1が同期して重なるタイミングシークエンスで作動した場合のキャリア濃度分布である。容器長手方向におけるキャリア濃度の偏差が大きくなり、キャリア濃度分布の均一性の点で劣るタイミングシークエンスであること判る。
【0069】
更に容器の長手方向におけるキャリア濃度の分布をより狭い範囲に収めるために、加振手段の個数を増やす、あるいは現像剤容器に対する各加振手段の位置を適宜調整することが有効である。更に加振部材A22の先端部の面積や硬度を変えることで振動の伝搬具合を調整できることが確認されており、加振部材先端部の面積や硬度を適宜選定することも有効である。
【0070】
[第3の実施の形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係る、異なるタイプの現像剤容器Bの外観斜視図及び正面図である。
【0071】
図示のように、現像剤容器Bは、長い箱状の容器本体B10と容器本体B10の開口を開閉する開閉蓋B30とを有する。
【0072】
容器本体B10の開口部には開閉蓋B30を案内する不図示の溝を有し、開閉蓋B30は矢印のように該溝をスライドさせて、容器本体B10の開口部を開閉するものである。
【0073】
作業者は、容器本体B10に所定量のトナーTを上面が水平になるよう装填し、更にトナーTの層の上に所定量のキャリアCを均等に積載する。次に、開閉蓋B30を容器本体B10にきちんと装着して、該現像剤容器Bをトナー層上にキャリア層が積載される状態で調製装置本体A10の支持台A11に水平に載置する。
【0074】
図示の一点鎖線内は、支持台A11上載置された容器本体B10の正面の一部を透視した透視図であり、容器本体B10に装填されたトナーTの層LtとキャリアCの層Lcを示している。
【0075】
図9(a)は、図8の現像剤容器Bを支持台A11上に載置する調製装置本体A10の上面図である。図9(b)は、図9(a)のAA断面図である。
【0076】
図示のように支持台A11上に載置された現像剤容器Bは3つの加振手段A20によって挟持される。現像剤容器Bの一方側にある2つの加振手段A20は調製装置本体A10の支持台A11に固設されている。他方側にある1つの加振手段A20は、図示の矢印のように移動可能であり、作業者の操作によって、所定の押圧力で現像剤容器Bを上記2つの加振手段に押し付けている。
【0077】
図9(a)のように、上記のように現像剤容器Bが3つの加振手段A20によって挟持・支持された状態下において、作業者により開始操作が為されると、3つの加振手段A20の各々は現像剤容器Bの所定部分に対し所定量のエネルギーを加える。
【0078】
第3の実施の形態では、各加振手段が上下の位置関係にないため、各加振手段A20の作動タイミングの影響はない。従って、現像剤容器B内の補充現像剤の同一高さにおける振動エネルギーが均等になるよう、各加振手段A20の配置を適正化すること。更に、投下する振動エネルギー(ピストンバイブレータA21のエアー圧Paが一定である場合は、加振期間)を適正化することが肝要である。実際には、現像剤容器Bに合わせて上記の2点を考慮して調整することになる。
【0079】
[上記の調製装置で調整された補充現像剤の実機評価]
図10は、本発明に係る調製装置(第2の実施形態)を用いて調製された補充現像剤及び補充現像剤が収容される現像剤容器Bについて、実機評価テストを行った画像形成装置の中央断面図である。
【0080】
[評価用の画像形成装置]
画像形成装置Dは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、ベルト状の中間転写体6と給紙装置20及び後述する定着部30等から構成されている。
【0081】
画像形成装置Dの上部には、画像読取装置Eが設置されている。原稿台上に載置された原稿は画像読取装置Eの原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光手段3Y,3M,3C,3Kに入力される。
【0082】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、像担持体としての感光体ドラム1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像装置4Y及びクリーニング手段5Yを有する。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、像担持体としての感光体ドラム1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像装置4M及びクリーニング手段5Mを有する。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、像担持体としての感光体ドラム1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像装置4C及びクリーニング手段5Cを有する。黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、像担持体としての感光体ドラム1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像装置4K及びクリーニング手段5Kを有する。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C及び帯電手段2Kと露光手段3Kとは、潜像形成手段を構成する。
【0083】
4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径トナーとキャリアからなる二成分現像剤を収容する現像装置である。
【0084】
各色の現像装置4Y、4M、4C、4Kは、そのトナー補給部に、本発明に係る調製装置Aで調製された補充現像剤を収容する現像剤容器Bが装着される構成(非図示)を有するものであり、所謂、トリクル現像方式の現像装置である。
【0085】
転写部は、複数のローラにより巻回され回動可能に支持されている中間転写体6と、一次転写手段7Y、7M、7C、7Kを有する一次転写部と、二次転写手段9を有する二次転写部とで構成される。
【0086】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写部の一次転写手段7Y、7M、7C、7Kにより、回動する中間転写体6上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
【0087】
給紙装置20の用紙収納部(給紙カセット)21内に収容された記録媒体(以下、用紙と称す)Pは、給紙手段(第1給紙部)22により給紙され、給紙ローラ23,24,25A、25B、レジストローラ(第2給紙部)26等を経て、二次転写部の二次転写手段(転写ローラ)9に搬送され、用紙P上にカラー画像が転写される。
【0088】
カラー画像の転写された用紙Pは、定着部30に搬送される。そして、熱と圧力の作用が加えられ、用紙上のカラートナー像(あるいはトナー像)は用紙P上に定着される。
【0089】
定着処理された用紙Pは、搬送ローラ対37に挟持されて搬送され、排紙搬送路に設けられた排紙ローラ27から機外に排出され、機外の排紙トレイ28上に載置される。
【0090】
[補充現像剤の評価方法]
第2の実施形態の調製装置を用いて調製されたトリクル現像用補充現像剤の評価方法(手順)を以下に説明する。
【0091】
手順1;第2の実施形態(A形態のタイミングシークエンス)の調製装置を用いて、第1加振行程の第1加振期間T1及び第2加振行程の第2加振期間T2を変更して、評価用の補充現像剤が収容された評価用の現像剤容器Bを製作する。
【0092】
手順2;評価用の現像剤容器B内の100箇所から補充現像剤を適量のサンプルを採集し、各サンプルについてキャリア濃度を調べて、現像剤容器B内に収容されている補充現像剤のキャリア濃度バラツキ(平均濃度と濃度偏差)を求めた。
【0093】
手順3;手順2の調査を終えた評価用の現像剤容器Bを画像形成装置Dに実際に装着して、実写テストを行う。
【0094】
図11は、実写テストの運用計画のタイムテーブルである。
【0095】
評価テストは、実写モードとテストモードからなり、両モードは2500プリント毎に繰り替えされ、総プリント数として50万プリントを行う。
【0096】
上記の評価テストは、第1加振期間T1及び第2加振期間T2を変更して調製された各評価用の現像剤容器Bについて適用した。
【0097】
実写モードは、平均印字率3%の各色画像で構成された捨て焼き画像をフルカラー画像形成モードで連続して印刷して進行する。
【0098】
テストモードは、Y色、M色、C色、K色毎に単色モードで連続100枚のテスト画像を印刷するものである。
【0099】
図12は、テスト画像のレイアウト図である。図示の領域Zaは印字率が100%であるベタ画像の領域で、領域Zbは印字率が50%であるハーフトン画像の領域で、領域Zcは印字率が0%である画像が全く形成されない領域である。従って、テスト画像は平均印字率で50%相当になる。
【0100】
テスト進行として印刷される捨て焼き画像が平均印字率で3%であること考慮すると、テストモード時には、多量のトナーが消費されて、画像形成装置Dの各現像装置に多量の補充現像剤が補給される状況にある。そのような状況下でテスト画像が出力されるために、テストモード時には補充現像剤の特性が顕著に変化し、画像不良として反映される。
【0101】
例えば、領域Zaには、トリクル現像方式の主効果である感光体へのトナー供給性能(通常、ベタ現像性と称される)の劣化防止がその画像濃度の推移として反映する。
【0102】
領域Zbには、高濃度キャリアの補充現像剤が現像装置に補給されることに起因する画質不良が、『画像濃度ムラ』として反映する。
【0103】
領域Zcには、補充現像剤中の混在するトナー凝集塊に起因する画像不良が、『カブリ』として反映する。
【0104】
キャリア付着は、画像サンプルの表面に触れることによって判定する。
【0105】
[本発明に係る調製方法で調製された現像剤の評価結果]
【0106】
【表1】

【0107】
表1は、本発明に係る調製方法で調製された現像剤容器B内の補充現像剤の評価結果をまとめた、一覧表である。現像剤容器B内に収容された補充現像剤における平均キャリア濃度とキャリア濃度の偏差値をパラメータにしてトリクル現像方式の画像形成装置Dで50万プリントの実写テストの評価結果をまとめたものである。平均キャリア濃度はトナーとキャリアを含む現像剤全体に対してキャリアの質量%である。
【0108】
評価用の補充現像剤は、図5の調製装置Aを用いて、平均キャリア濃度が5〜40質量%の範囲になるように調合された。表1に示すキャリア濃度分布欄の『平均』は、平均キャリア濃度に該当する。
【0109】
また、評価用の補充現像剤は、調製装置Aの各加振条件(T1、T2)を変更して、現像剤容器B内に収容された補充現像剤におけるキャリア濃度の偏差値が異なる評価用の補充現像剤を調製した。キャリア濃度分布欄の『偏差』は、現像剤容器Bから採取された100個の採取現像剤を測定して得られたキャリア濃度値のうちの最大値と最小値の差分を2で除した値である。
【0110】
現像剤容器B(図1に示す)が画像形成装置Dに装着され図1に示すW1の方向に回転して現像剤容器Bのキャップ部B20の開口部から現像装置に補給される補給現像剤のキャリア濃度は、現像剤容器B内のキャリア濃度分布がストレートに反映される。従って、画像形成装置に補給される補給現像剤のキャリア濃度の変動幅は、キャリア濃度分布欄の『偏差』に該当するものである。
【0111】
次に、実写テストの評価結果について表1に基づき以下に示す。
【0112】
表1の『現像剤ライフ』の欄は、サンプルのベタ濃度が1.2以下に低下した場合における最初のプリント数を記入しており、単位は万プリントである。
【0113】
表1の画像評価は、10万枚プリント時に以下の通り行った。
【0114】
濃度ムラ評価においては、Zaの画像領域において、8箇所の濃度測定を行い、最大値と最小値の差を濃度ムラとした。濃度ムラは、0.05未満が望ましいが、0.2未満で問題のないレベルである。また、画像荒れ評価においては、Zbの領域において目視で、画像あれの有無を確認した。◎は全くない状態であり、○で問題のないレベルである。カブリ評価においては、Zc領域で白紙部の画像濃度を測定した。0.005以下が望ましいが、0.01未満で使用上問題のないレベルである。
【0115】
表1に示すように、本発明に係る調製装置を用いることにより、従来の課題であった『画像濃度ムラ』を解消できることが確認できた。
【0116】
また、本発明に係る調製装置を用いて補充現像剤のキャリア濃度の偏差を10%以内の範囲に調合することによって、高品質な画像を長期に出力できるトリクル現像用補充現像剤の提供と、該補充現像剤の補給により画像安定性及び現像剤耐久性能に優れたトリクル現像方式の画像形成装置の提供を可能にした。
【0117】
また、本発明に係る調製装置の加振条件を適正に設定することによって、高品質な画像を長期に出力できるトリクル現像用補充現像剤の提供を可能した。画像安定性及び現像剤耐久性能に優れたトリクル現像方式の画像形成装置の提供が可能である。
【0118】
なお、本発明に係る上記の実施形態では、現像剤容器を本発明に係る容器として用いているが、本発明の容器はこれに限定されるものではなく、後行程で現像剤容器に装填されるトリクル現像用補充現像剤を大量、あるいは連続的に調製できる大型設備の形態も含むものである。
【0119】
なお、本発明に係る第2の実施形態では、上下に複数の加振手段を設けているが、それぞれの位置に加振手段を順次移動して異なる期間に該加振手段を加振されるようにしてもよい。
【0120】
本発明に係る第2の実施形態では、第1行程及び第2行程をリレー作動しており、合計10秒の加振期間で調製を完了可能にしているが、各加振手段の加振強度を増加することにより数秒程度まで短縮できる。しかも、本発明に係る調製装置は設置面積も要さない、コンパクト設備に適したものである。
【0121】
一連の実験結果を整理すると、以下の内容に集約された。
【0122】
(1)少なくともトナーとキャリアとからなる補充現像剤のキャリア濃度を5〜30質量%の範囲にし、且つ該補充現像剤のキャリア濃度の偏差を10質量%以下の範囲にすることにより、本発明の課題を解消する、現像剤耐久性能に優れたトリクル現像用補充現像剤の提供を可能にする。
【0123】
(2)少なくともトナーとキャリアとからなる補充現像剤のキャリア濃度を5〜20質量%の範囲にし、且つ該補充現像剤のキャリア濃度の偏差を10質量%以下の範囲にすることにより、本発明の課題を解消する、画質安定性及び現像剤耐久性能に優れたトリクル現像用補充現像剤の提供を可能にする。
【0124】
(3)現像剤容器に収容され少なくともトナーとキャリアとからなる補充現像剤のキャリア濃度を5〜30質量%の範囲にし、且つ該補充現像剤のキャリア濃度の偏差を10質量%以下の範囲にすることによって、本発明の課題を解消する、現像剤耐久性能に優れたトリクル現像用の現像剤容器の提供を可能にする。
【0125】
(4)現像剤容器に収容され少なくともトナーとキャリアとからなる補充現像剤のキャリア濃度を5〜20質量%の範囲にし、且つ該補充現像剤のキャリア濃度の偏差を10質量%以下の範囲にすることによって、本発明の課題を解消する、画質安定性及び現像剤耐久性能に優れたトリクル現像用の現像剤容器の提供を可能にする。
【0126】
(5)ロングレンジに補給される、少なくともトナーとキャリアとからなる補充現像剤のキャリア濃度の平均値を5〜30質量%の範囲にし、該補充現像剤のキャリア濃度の偏差を10質量%以下の範囲にして画像形成装置に補充現像剤を補給することによって、本発明の課題を解消する、現像剤耐久性能に優れたトリクル現像方式の画像形成装置の提供を可能にする。
【0127】
(6)ロングレンジに補給される、少なくともトナーとキャリアとからなる補充現像剤のキャリア濃度の平均値を5〜20質量%の範囲にし、該補充現像剤のキャリア濃度の偏差を10質量%以下の範囲にして画像形成装置に補充現像剤を補給することによって、本発明の課題を解消する、画質安定性及び現像剤耐久性能に優れたトリクル現像方式の画像形成装置の提供を可能にする。
【符号の説明】
【0128】
C キャリア
T トナー
B 現像剤容器
A 調製装置
D 画像形成装置
E 読取装置
A20 加振手段
A22 加振部材
T1 第1加振期間
T2 第2加振期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナーとキャリアとからなる補充現像剤を収容する現像剤容器において、
前記現像剤容器内に収容される補充現像剤におけるキャリアの濃度が、トナーとキャリアを含む現像剤全体に対して5〜30質量%の範囲であり、且つ、
前記現像剤容器内に収容される補充現像剤におけるキャリア濃度の偏差が10質量%の範囲であることを特徴とする現像剤容器。
【請求項2】
前記キャリアの濃度が、トナーとキャリアを含む現像剤全体に対して20質量%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の現像剤容器。
【請求項3】
前記補充現像剤が、トナーが収容され、該トナーの上にキャリアが積載され収容された容器と、該容器の壁面に対し振動エネルギーを加える加振行程を有する調製方法を用いて調製されることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像剤容器。
【請求項4】
前記現像剤容器が、画像形成装置に装着可能であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の現像剤容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−185912(P2010−185912A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28170(P2009−28170)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】