説明

補助ボイラ

【課題】排ガスエコノマイザと補助ボイラが別体に設置された場合において、火炉上部の管板を過熱から守ることができる構造の補助ボイラを提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る補助ボイラ1は、気水分離が行われる上部ドラム20と、下部ドラム21と、上部ドラム20と下部ドラム21とを連結する複数の水管23と、上部ドラム20、下部ドラム21及び水管23によって囲まれた火炉16内で燃焼させるためのバーナ15と、上部ドラム20内に設置されたボイラ水を仕切るための仕切り板であるスクロール板40と、循環するボイラ水を上部ドラム20内の中心付近に戻すための循環水戻り管51と、を備え、戻されたボイラ水がスクロール板40に沿って流れることで、上部ドラム20の底面において水流を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用エンジン等の排ガスが保有する廃熱を利用して蒸気を発生する補助ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
舶用エンジンの排ガスの廃熱を利用するボイラとしては、例えば、下記特許文献1に開示されているボイラがある。
【特許文献1】特開平5−5502号公報
【0003】
上記特許文献1に開示されているボイラは、船舶に使用されるボイラであり、船舶エンジンの排ガスの保有する廃熱を利用すると共に、エンジンの負荷の変動あるいは停止により排ガスの熱量が不足した場合には、燃焼装置にて追い焚きを行い、所要の蒸気量を得るものである。そして、排ガスの熱交換を行う排ガスエコノマイザ(熱交換器)と、追い焚きを行う燃焼装置を備えた補助ボイラとを別体に構成し、ボイラ水を循環させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高さ制限のあるPCC(自動車運搬船)やコンテナ船に搭載する場合には、補助ボイラの高さ方向寸法を低く抑えるために、バーナ(燃焼装置)を側面に設置して横焚きする構成が望ましい。この場合には、火炉の上部管板(ドラム下面)に広い被加熱領域が生じるため、この部分を過熱から守ることが必要である。特に、船舶の揺れ等により、ドラム内の水が偏り、管板上に水に浸されない部分が生じると、管板が一気に過熱され、変形、破損等のおそれがある。
【0005】
また、管板上全域が常にドラム内の水によって浸されていても、スケールやスラッジ等の断熱層が管板上に堆積すると、これらが断熱層となり、管板が過熱されてしまうといった問題もある。しかし、上記特許文献1では、火炉上部の管板の過熱対策について、何も検討されていない。
【0006】
また、上部管板の被加熱領域に耐火材としてキャスターを設置することで、管板の過熱を防止することが一般に行われているが、被加熱領域が広い面積を有する場合には、劣化等により長期にわたってキャスターを保持することが困難である。特に揺動の激しい船舶等では、キャスターの劣化による落下も起こりやすく、危険であるため、キャスターによらない管板の過熱防止策が必要である。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、排ガスエコノマイザと補助ボイラが別体に設置された場合において、火炉上部の管板を過熱から守ることができる構造の補助ボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る補助ボイラは、気水分離が行われる上部ドラムと、下部ドラムと、前記上部ドラムと下部ドラムとを連結する複数の水管と、前記上部ドラム、下部ドラム及び水管によって囲まれた火炉内で燃焼させるための燃焼装置と、を有し、循環するボイラ水を加熱する補助ボイラにおいて、前記上部ドラム内に設置されたボイラ水を仕切るための仕切り板と、循環するボイラ水を前記上部ドラム内の所定の位置に戻すための循環水戻り管と、を備え、前記仕切り板により、所定の位置に戻されたボイラ水が前記上部ドラムの底面において流れを形成するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る補助ボイラによれば、火炉上部の管板を過熱から守ることができる構造の補助ボイラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る補助ボイラ1の上部ドラム20における断面図である。なお、図1では、水管23を想像線で示している。図2は、図1のA−A線における断面図である。図1及び図2に示すように、補助ボイラ1は、外枠を形成する円筒型の断熱層10、本体上部に設けられた上部ドラム20、本体下部に設けられた下部ドラム21、上部ドラム20及び下部ドラム21を連結して本体内側面に沿って設けられた複数の水管23、本体側面に設けられた開口に接続されたバーナ15を備えている。
【0011】
上部ドラム20は、円筒状鉄板の耐圧部22により形成されている。耐圧部22の下面の管板22aは、後述する燃焼室外郭を兼ねている。下部ドラム21は、円筒状鉄板の耐圧部24により形成され、耐圧部24の上板は、後述する燃焼室外郭を兼ねている。
【0012】
水管23と、上部・下部ドラム20,21によって囲まれた空間が火炉16を構成し、燃焼室外郭25によって形成されている。上述したように、燃焼室外郭の上下面は、耐圧部22の底面、耐圧部24の上面の鉄板を兼ねている。バーナの15の作動により火炉16内で燃焼が行われ、水管23が加熱される。
【0013】
上部ドラム20の上面には、上部ドラム20内に後述する排ガスエコノマイザからの循環ボイラ水を供給するための循環水戻り管51、上部ドラム20内で気水分離した蒸気を取り出して負荷へ供給するための蒸気取出管52、補助ボイラ1に新たなボイラ水を給水するための給水ノズル53が接続されている。
【0014】
上部ドラム20内には、ドラム内に水流を起こすため、仕切り板としてのスクロール板40がドラム底面の管板22a上に設置されている。スクロール板40は、上部ドラム20内のボイラ水の水面(制御水位)よりも若干高い高さを有すると共に、図1に示すように、その水平断面が円形の管板22aの中心から反時計回りに略渦巻き状に外側に延在する形状を有している。
【0015】
上部ドラム20内のドラム水の水位は、所定の制御水位となるように制御されているが、本実施形態では、船舶に搭載された場合を考慮して、補助ボイラ1本体がある程度傾いても、上部ドラム20底面の管板22aが常に水に浸されるように、十分な高さの制御水位としている。これは、管板22aが水に浸されていないと、一気に高温に加熱されるおそれがあると共に、後述する水流によるスラッジ等の除去ができなくなるからである。
【0016】
循環水戻り管51は、その先端が、上部ドラム20内のボイラ水中であって底面の中心付近に位置するように設置されており、後述する排ガスエコノマイザからの戻り水は、スクロール板40で仕切られた空間の中心付近に戻されることになる。
【0017】
下部ドラム21は、水管23を介して上部ドラム20の底と連通しており、ドラム内はボイラ水で満たされている。また、下部ドラム21は、その側面に連結された循環水送り管54によって、後述する循環水路へとつながっている。
【0018】
続いて、図3を参照して、本実施形態に係る補助ボイラ1の設置状況について説明する。図3は、補助ボイラ1と排ガスエコノマイザ60とを循環するボイラ水の概略的な循環系統図を示す。本実施形態では、駆動源としてのディーゼルエンジン61を備えた船舶に補助ボイラ1を搭載した場合を例に挙げて説明する。
【0019】
図3に示すように、ボイラ水の循環系統は、補助ボイラ1、排ガスエコノマイザ60、循環水路62を備え、循環ポンプ65の駆動力により、ボイラ水が循環水路62を介して、補助ボイラ1及び排ガスエコノマイザ60を循環している。排ガスエコノマイザ60は、エンジン61の排ガスの熱エネルギーを利用して被加熱管63内のボイラ水を加熱する。
【0020】
排ガスエコノマイザ60から送水されてきたボイラ水(蒸気も含む)は、補助ボイラ1の上部ドラム20に入る。ここで、排ガスエコノマイザ60による加熱により蒸気が十分に発生していない場合には、補助ボイラ1のバーナ15が点火され、追い焚きが行われる。上部ドラム20内では気水分離が行われ、生成された蒸気は、蒸気取出管52から外部へ取り出され、負荷へと供給される。
【0021】
補助ボイラ1による追い焚きが行われる場合には、バーナにより水管23が加熱されることで、水管23内のボイラ水が加熱され、蒸気が生成される。このとき、水管23の一部が上昇管となり、生成された蒸気や沸騰水が上昇管を伝わって上部ドラム20へ供給されると共に、一部の水管23は下降管となり、ボイラ水は下降管を通って下部ドラムへと送られる。
【0022】
下部ドラム21内のボイラ水は、上述したように、循環水送り管54から循環水路62を通って、排ガスエコノマイザ60へと送られる。このように、ボイラ水は、循環ポンプ65により、循環水路62を介して、排ガスエコノマイザ60と補助ボイラ1との間を循環している。
【0023】
以上、本実施形態に係る補助ボイラ1の構成について説明したが、本実施形態では、上部ドラム20内の底面に水流を作るために仕切り板であるスクロール板40を設置すると共に、循環ボイラ水の戻り管51の先端をスクロール板40の中央近辺のボイラ水中に位置させるように構成したことを特徴としている。
【0024】
すなわち、図1に示すような構成において、戻り水が上部ドラム20の中央近辺に戻されると、ボイラ水はスクロール板40に沿って、渦巻き状に外側に向けて移動する。このとき、上部ドラム20の底面である管板22a上に水流が形成されるので、管板22a上のスケールやスラッジを押し流し、これらの堆積を防ぐことができる。スケールやスラッジが管板22a上に堆積するのを防止できれば、常に管板22aにボイラ水が接することとなり、管板22aが過熱されて変形、破損等するのを防ぐことができる。
【0025】
以上、本実施形態に係る補助ボイラについて詳細に説明したが、本実施形態によれば、補助ボイラ1の上部ドラム20内に仕切り板を設置し、戻り水を所定の位置に戻すことで、上部ドラムの底面上に水流を形成し、スケールやスラッジが堆積することを防止できる。
【0026】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。下記の変形例は、仕切り板の形状を上記実施形態と異ならせている。
【0027】
(変形例1)
まず、図4を参照して、変形例1について説明する。図4(a)は、変形例1に係る補助ボイラの上部ドラムの断面図を示す図、図4(b)は、仕切り板の高さを示す図、図4(c)は、仕切り板の下部を示す図である。
【0028】
同図に示すように、仕切り板42により管板22aの水管23と接続されていない部分は、7つの部屋に分割されている。仕切り板42は、一部が開いた環状の仕切りが、管板22aの中央部分と周辺部に設置され、ほぼ環状にボイラ水を仕切ると共に、この環状部分を7つの部屋に仕切るためにそれぞれ高さの異なる仕切りが7つ設置されている。
【0029】
図4(b)に示すように、各部屋を仕切る仕切り板42の仕切りの高さは、部屋(1)から部屋(7)にかけて徐々に低くなっている。すなわち、部屋(7)と部屋(1)を仕切る仕切り板及び部屋(1)と部屋(2)との間を仕切る仕切りの高さが一番高く、部屋(3),(4),(5)…へと進むにつれて段々と各部屋を仕切る仕切りの高さが低くなり、部屋(6)と部屋(7)を仕切る仕切りが最も低い。なお、この部屋(6)と部屋(7)を仕切る仕切りの高さは、上部ドラム20の制御水位と同じ高さである。
【0030】
また、図4(c)に示すように、各部屋の仕切りの下部には、ボイラ水が通過するための開口43が設けられており、ボイラ水は、この開口43を介して隣の部屋に移動する。
【0031】
このような変形例1の仕切り板42の構成において、戻り管51の先端から上部ドラム20内の中心に戻されたボイラ水は、図中矢印に示すように、環状仕切りの開いている部分から部屋(1)へと進む。部屋(1)に流れ込んだボイラ水は、図中矢印で示すように、仕切り下部の開口43から部屋(2)へと流れ込み、続いて部屋(3)といった具合に、上部ドラム20の底面において流れを作りながら、部屋(7)及び仕切り板42の外側の領域まで流れ込むことになる。
【0032】
このように、上部ドラム20の底面上にボイラ水の流れを形成することで、管板22a上にスラッジやスケールが堆積するのを防止できる。なお、本変形例1において、各部屋を仕切る仕切りの高さに段差を設けてあるのは、上流側の部屋に入る水の高さを高くすることで、位置エネルギーを多く蓄えさせ、上流側のボイラ水の流速を大きくするためである。
【0033】
(変形例2)
続いて、図5を参照して、変形例2について説明する。図5は、変形例2に係る補助ボイラの上部ドラムの断面図を示す図である。同図に示すように、変形例2に係る仕切り板45は、上記実施形態と同様に、管板22aの中心から渦巻き状に外に向けて延在している。但し、仕切り板45は、平板の仕切りを所定の長さ毎に所定の角度折り曲げることで、ほぼ渦巻き状に延在させている。この仕切り板45の高さは、上部ドラム20内の制御水位よりも若干高い高さである。また、戻り管51の先端は、仕切り板45の中心付近の水中に位置するように構成されている。
【0034】
よって、本変形例2においても、上記実施形態と同様に、上部ドラム20の中心に戻された戻り水が、仕切り板45によって仕切られた空間に沿って、図中矢印で示すように渦巻き状に外側に向けて流れることになり、管板22a上にスケールやスラッジが堆積するのを防止することができる。
【0035】
(変形例3)
続いて、図6を参照して、変形例3について説明する。図6は、変形例3に係る補助ボイラの上部ドラムの断面図を示す図である。同図に示すように、変形例3に係る仕切り板47は、櫛歯上の仕切りを向かい合わせて配置することで、左右方向の中心において上下に伸びる流路と、その両側において、下から上、上から下、…と順次並行した流路を形成するように構成されている。中心流路の上端が最上流であり、中心流路の上端に位置する循環水戻り管51によって戻されたボイラ水は、順次、下流である外側の流路へと進んでいく。
【0036】
よって、本変形例3においても、図中矢印で示すように、上部ドラム20の底面のほぼ全体でボイラ水の流れが発生するので、管板22a上にスケールやスラッジが堆積するのを防止することができる。
【0037】
以上、変形例も含めて本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、バーナは、火炉の側面に設置する横焚きに限らず、火炉の上方や下方に設置する上焚きや下焚きであっても良い。
【0038】
また、仕切り板の形状や循環水戻り管の設置位置も上述した例に限定されるものではなく、上部ドラムの底面にボイラ水の流れを形成できるような形状及び配置であれば、他の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本実施形態に係る補助ボイラの上部ドラムにおける断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線における断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るボイラ水の概略的な循環系統図である。
【図4】図4は、本実施形態の変形例1に係る仕切り板の構成を説明する図である。
【図5】図5は、本実施形態の変形例2に係る補助ボイラの上部ドラムにおける断面図である。
【図6】図6は、本実施形態の変形例3に係る補助ボイラの上部ドラムにおける断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 補助ドラム
10 断熱層
15 バーナ
16 火炉
20 上部ドラム
21 下部ドラム
22 耐圧部
23 水管
24 耐圧部
25 燃焼室外郭
40 仕切り板(スクロール板)
51 循環水戻り管
52 蒸気取出管
53 給水ノズル
54 循環水送り管
60 排ガスエコノマイザ
61 エンジン
62 循環水路
65 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気水分離が行われる上部ドラムと、下部ドラムと、前記上部ドラムと下部ドラムとを連結する複数の水管と、前記上部ドラム、下部ドラム及び水管によって囲まれた火炉内で燃焼させるための燃焼装置と、を有し、排ガスエコノマイザとの間で循環するボイラ水を加熱する補助ボイラにおいて、
前記上部ドラム内に設置されたボイラ水を仕切るための仕切り板と、
前記排ガスエコノマイザから循環してくるボイラ水を前記上部ドラム内の所定の位置に戻すための循環水戻り管と、
を備え、前記仕切り板により、所定の位置に戻されたボイラ水が前記上部ドラムの底面において流れを形成するように構成されていることを特徴とする補助ボイラ。
【請求項2】
前記仕切り板の高さは、前記上部ドラム内の制御水位よりも高いことを特徴とする請求項1記載の補助ボイラ。
【請求項3】
前記仕切り板は、水平断面が渦巻き状の形状であって、前記循環水戻り管の先端が、渦巻きの中心付近のボイラ水中に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の補助ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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