説明

補助ランプ付き高圧放電ランプ

【課題】より低い印加電圧で点灯始動する補助ランプ付き高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】補助ランプ付き高圧放電ランプ10を、発光部26と封止部28a、28bとを有する発光管18、一対の主放電用電極20a、20b、および一対の給電手段22a、22bを備える高圧放電ランプ12と、気密容器34、一端が内部空間40に配設された内部電極36、および一端が気密容器34の外面に取り付けられるとともに他端が他方の給電手段22bに接続された外部電極38を備える補助ランプ14とで構成し、幅広の内部電極36で内部空間40を大小2つの空間40a、40bに区切り、内部電極36によって区切られた大きい方の内部空間40aを臨む位置に外部電極38を配設し、さらに、大きい方の内部空間40aが封止部28aを向くように補助ランプ14を配置することにより、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯始動に必要な電圧を低下させて始動特性を向上させるための紫外線を発する補助ランプを備える高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタや露光装置等の光学装置に用いられる光源装置には、主として高圧放電ランプが使用されている。高圧放電ランプは、水銀やハロゲン化物などの発光物質やハロゲンサイクル生成物等が封入された空間を有する発光管と、当該発光管内で互いに対向して配設された一対の主放電用電極とを有しており、点灯開始時に高電圧を印加し、主放電用電極間で絶縁破壊による放電を生じさせることにより、発光物質が励起されて発光する。
【0003】
近年、高圧放電ランプの点光源化や発光効率を高めるため、発光物質の封入量が多くなっているとともに、発光管の内部空間の容積が小さくなっている。このため、点灯時の発光管の内部圧力は非常に高くなっている。最近の例では200気圧前後あるいはそれ以上のものが報告されている。さらに、この種の光学装置では、最初の点灯時間(コールドスタート)の短縮はもちろん、再点灯時間(ホットスタート)の短縮も要求されている。
【0004】
とりわけ発光管の内部圧力が高いほど放電の開始に必要な電圧は高くなることから、発光管の内部温度が高い状態での再点灯(ホットスタート)では、高い印加電圧が必要になるだけでなく高圧放電ランプの温度がある程度下がるまで待つ必要があった。また、最初の点灯時(コールドスタート)でも高い電圧(例えば、10数kV)の印加が必要であった。
【0005】
しかし、高圧放電ランプの点灯始動時に高い電圧を印加することには問題が伴う。例えば、主放電用電極間だけでなく意図しないところ(例えば、絶縁ケーブル被覆の絶縁破壊あるいはコネクタや接続端子での沿面放電など)で絶縁破壊が生じて感電事故が発生したり、高い電圧を印加した時のノイズによって光学装置に配設されている電子回路が誤動作したりする等の問題である。
【0006】
そこで、より低い電圧で高圧放電ランプを点灯始動する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の光源装置1は、図8に示すように、高圧放電ランプ2と、該高圧放電ランプ2とは別体に形成された補助ランプ3および給電装置4とで構成されている。この高圧放電ランプ2は、水銀等の発光物質M1が封入された内部空間を有する発光部5aおよび発光部5aの内部空間を封止する封止部5bを有する発光管5と、発光部5a内に互いに対向して配設された一対の主放電用電極6a、それぞれの主放電用電極6aに電気的に接続され、封止部5bに埋設された一対の金属箔6b、一端が各金属箔6bに電気的に接続されるとともに封止部5bに埋設され、他端が発光管5の外部に突設された一対の外部リード棒6cを備える給電手段6とで構成されている。
【0007】
補助ランプ3は、放電によって励起されたときに紫外線UVを発生する物質が放電用媒質M2として封入された放電空間を有し、封止部5bの端面に向けて配置された放電容器7と、前記放電空間内に配設されているとともに一方の外部リード棒6cに電気的に接続された内部電極8と、一端部が放電容器7の外面に巻回されているとともに他端が他方の外部リード棒6cに電気的に接続されている外部電極9とで構成されている。
【0008】
この光源装置1では、高圧放電ランプ2の点灯始動に際し、補助ランプ3の内部電極8および外部電極9の間に高周波の電圧を印加する。すると、これら内部電極8および外部電極9の間で放電容器7の放電空間を介して放電が生じ、この放電によって励起された放電空間の放電用媒質M2が紫外線UVを発生する。そして、この紫外線UVが高圧放電ランプ2における発光部5a内の主放電用電極6aを照らすことにより、主放電用電極6a間の放電が促進されるので、より低い印加電圧で高圧放電ランプ2を点灯始動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−151006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、特許文献1に記載の光源装置1によれば、低い印加電圧で高圧放電ランプ2を点灯始動させることができるが、始動電圧が低ければ低い程、上述したような問題が生じ難くなるとともに、光源装置1に給電する給電装置4の容量を小さくして光源装置1をコンパクトにできることから、さらに低い印加電圧で点灯始動する補助ランプ付き高圧放電ランプの開発が待たれていた。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、さらに低い印加電圧で点灯始動する補助ランプ付き高圧放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1に示すように、補助ランプ付き高圧放電ランプ10を次のように構成した。
【0013】
発光物質M1が封入された内部空間24を有する発光部26と前記発光部26から延びる1又は2の封止部28a、28bとを有する発光管18、前記内部空間24に互いに対向して配設された一対の主放電用電極20a、20b、および前記一対の主放電用電極20a、20bに給電する一対の給電手段22a、22bを備える高圧放電ランプ12と、
放電用媒質M2が充填された内部空間40を有する気密容器34、一端が前記内部空間40に配設されるとともに他端が一方の前記給電手段22aに接続された内部電極36、および一端が前記気密容器34の外面に取り付けられるとともに他端が他方の前記給電手段22bに接続された外部電極38を備える補助ランプ14とを備えており、
前記内部電極36は、幅広に形成されているとともに、前記内部空間40を大小2つの空間40a、40bに区切る位置に配設されており、
前記外部電極38は、少なくとも、前記内部電極36によって区切られた大きい方の前記内部空間40aを臨む位置に配設されており、
前記補助ランプ14は、大きい方の前記内部空間40aが前記封止部28aを向くように配置されている。
【0014】
補助ランプ14における、内部電極36によって区切られた気密容器34の内部空間40において、大きい方の内部空間(=大空間40a)を臨む位置に配設された外部電極38と内部電極36との間で発生する放電は、小さい方の内部空間(=小空間40b)で発生する放電に比べて放電強度が大きいことから、大空間40aからは大量の紫外線UVが発生する。
【0015】
ここで、補助ランプ14は、大空間40aが高圧放電ランプ12の封止部28aを向くように配置されていることから、大空間40aで発生した大量の紫外線UVを効率的に封止部28a内に導くことができる。封止部28a内に導かれた紫外線UVが発光部26内に入り、この発光部26内に配設された主放電用電極20a、20bを照らすことにより、この主放電用電極20a、20bから電子が放出され易くなり(光電効果)、あるいは、発光部26内に封入された発光物質M1が紫外線UVを受けることによってイオン化し、主放電用電極20a、20b間で放電が生じるための道(放電ルート)が形成される。このため、コールドスタート時はもちろん、ホットスタート時でも低い電圧(例えば、1.2kV)でも、高圧放電ランプ12を瞬時に点灯始動することができる。
【0016】
本発明には、次の構成を加えることが好ましい。
【0017】
前記高圧放電ランプ12の前記給電手段22a、22bは、前記封止部28a、28b内に埋設され、一端に前記主放電用電極20a、20bが取り付けられた短冊形の金属箔30a、30bと、前記金属箔30a、30bの他端に取り付けられ、前記封止部28a、28bから外部へ延びる外部リード32a、32bとを有しており、
前記補助ランプ14における大きい方の前記内部空間40aが向かう前記封止部28aに埋設された前記金属箔30aの配設角度θ2は、前記補助ランプ14が前記金属箔30aの正面から外れるように設定されている。
【0018】
封止部28aに埋設された短冊形の金属箔30aの配設角度を、その正面から補助ランプ14が外れるように設定することにより、図5に示すように、補助ランプ14から放出され、封止部28a内に導入された紫外線UVがこの封止部28a内を何度か反射して発光部26に進んでいくとき、紫外線UVが金属箔30aに当たって遮られる可能性が低くなる。このため、補助ランプ14から放出された紫外線UVを無駄なく主放電用電極20a、20bに作用させることができるので、コールドスタートあるいはホットスタート時に低い電圧でも高圧放電ランプ12をさらに確実に点灯始動することができる。
【0019】
本発明には、次の構成を加えることが好ましい。
【0020】
前記補助ランプ14を覆う反射部材44をさらに備えており、
前記反射部材44には、前記補助ランプ14に向かう反射面46が形成されており、
前記反射面46は、前記補助ランプ14から放出されて前記封止部28aを逸れる紫外線UVを、前記封止部28aに向けて反射させることを特徴とする。
【0021】
これにより、封止部28a内に導かれる紫外線UVの量をさらに多くできるので、低い電圧でも高圧放電ランプ12をさらに確実に点灯始動することができる。
【0022】
また、前記外部電極38の一端に給電装置からの電流供給線48を接続してもよい。
【0023】
これにより、1本の電流供給線48で、外部電極38を兼ねることになるので、補助ランプ付き高圧放電ランプ10の部品点数を減らすことができる。
【0024】
前記補助ランプ14が前記封止部28aに接触するようにしてもよい。
【0025】
この場合、点灯中に高圧放電ランプ12の封止部28aで生じた熱の一部が補助ランプ14に伝導し易くなり、全体として放熱面積が増大することから、封止部28aが熱による損傷を受ける可能性を低減することができ、高圧放電ランプ12の寿命を長くすることができる。
【0026】
また、前記補助ランプ14における前記内部電極36の表面に微小な凹凸を形成してもよい。
【0027】
内部電極36の表面に微小な凹凸を形成することにより、その凸部に電界集中が生じることから、内部電極36と外部電極38との間の放電をより低い電圧で発生させることができるようになり、高圧放電ランプ12をより確実に点灯始動させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来のものに比べて、さらに低い印加電圧で安定して点灯始動する補助ランプ付き高圧放電ランプを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明が適用された、補助ランプ付き高圧放電ランプを示す(a)長手方向の断面図、(b)A-A矢視による端面図である。
【図2】封止部に対する、補助ランプの大空間が向く角度を(a)0°、(b)45°、(c)90°、(d)105°に設定した場合の端面図である。
【図3】補助ランプの外部電極に関する他の実施例について説明する図である。(a−2)は、(a−1)断面図のB-B矢視による端面図である。また、(b−2)は、(b−1)断面図のC-C矢視による端面図である。
【図4】補助ランプ付き高圧放電ランプを反射鏡に取り付けた状態を示す端面図である。
【図5】補助ランプに対する、封止部に埋設された金属箔の角度を(a)0°、(b)10°、(c)20°、(d)30°に設定した場合の断面図である。
【図6】反射部材を取り付けた場合を示す(a)長手方向の断面図、(b)D-D矢視による端面図である。
【図7】外部電極の一端に給電装置からの電流供給線を接続した場合を示す断面図である。
【図8】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明が適用された、補助ランプ付き高圧放電ランプ10の実施例について、図面を用いて説明する。本実施例の補助ランプ付き高圧放電ランプ10は、図1に示すように、大略、高圧放電ランプ12と、補助ランプ14と、トリガーワイヤー16とで構成されている。
【0031】
高圧放電ランプ12は、発光管18と、一対の主放電用電極20a、20bと、一対の給電手段22a、22bとで構成されている。
【0032】
発光管18は、石英ガラスで形成されており、水銀等の発光物質M1が封入された内部空間24を有する発光部26と、この発光部26の内部空間24を封止するため、発光部26の両側部から突設された一対の封止部28a、28bとを有している。なお、本実施例では、2つの封止部28a、28bが形成された高圧放電ランプ12を使用しているが、前記従来例のように、封止部が1つ形成された高圧放電ランプを使用してもよい。
【0033】
一対の主放電用電極20a、20bは、タングステンで形成されており、発光部26の内部空間24内に互いに対向して配設されている。また、主放電用電極20a、20bの形状は、本実施例のように直流点灯用の高圧放電ランプ12の場合、陽極側の主放電用電極20aが陰極側の主放電用電極20bに比べて大きく形成される。なお、交流点灯用の高圧放電ランプ12の場合は、両主放電用電極20a、20bともに略同一形状になる。
【0034】
一対の給電手段22a、22bは、それぞれ、モリブデン製の短冊状の金属箔30a、30bと、これら金属箔30a、30bに給電するための外部リード32a、32bとで構成されている。
【0035】
補助ランプ14は、気密容器34と、内部電極36と、内部電極用外部リード37と、外部電極38とを備えており、高圧放電ランプ12の一方の封止部28aに接触するように配設されている。
【0036】
気密容器34は、円筒状の石英ガラスで形成されており、一端が半球状に形成され、放電用媒質M2(本実施例では、アルゴン等の希ガス)が充填された内部空間40と、他端に、この内部空間40を封止する補助ランプ封止部42とを有している。
【0037】
内部電極36は、モリブデン製の短冊状の幅広部材であり、その一端部36aが気密容器34の長手方向に沿って内部空間40に配設されており、その他端36bが補助ランプ封止部42に埋設されている。なお、内部電極36の形状は、幅広であれば、短冊状に限定されることはない。
【0038】
この内部電極36は、内部空間40を気密容器34の長手方向に沿って大小2つの空間(大空間40a、および小空間40b)に区切る位置に配設されており、補助ランプ14は、この大空間40aが一方の封止部28aを向くように配置されている。
【0039】
ここで、「一方の封止部28aを向く」とは、図2に示すように、断面視において、内部電極36の中央および内部空間40の中心を結んだ直線L1と、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2とが成す角度θ1が、0°以上105°以下である状態のことをいう(もちろん、図示するような時計回りの角度だけでなく、反時計回りの角度も同様である。)。なお、この角度範囲が好適である理由については後述する。
【0040】
また、「内部空間40を区切る」とは、図示するように、内部電極36の断面視両端が内部空間40の周縁(=気密容器34の内壁)に接しており、内部空間40を完全に二分するような場合だけでなく、内部電極36の両端が内部空間40の周縁から離間して隙間が存在するような場合も含む概念である。
【0041】
内部電極用外部リード37は(図1参照)、その一端が補助ランプ封止部42において内部電極36の他端36bに接続されており、その他端が高圧放電ランプ12の一方の封止部28aから延出する一方の外部リード32aに接続されている。
【0042】
外部電極38は、その一端部が気密容器34の外周面であって内部空間40を臨む位置に巻回されており、その他端が高圧放電ランプ12の他方の封止部28bから延出する他方の外部リード32bに接続されている。
【0043】
なお、気密容器34の内部空間40で生じた紫外線UVを補助ランプ14の外に放出させるため、巻回した外部電極38同士の間に紫外線UVが通る隙間を空けておくのが好適である。もちろん、紫外線UVは気密容器34の先端を通って外に出ることもできるので、図示するように外部電極38同士を隙間なく巻回したとしても、補助ランプ14の効果が毀損されることはない。
【0044】
また、気密容器34に対する外部電極38の取り付け方法は、内部電極36によって区切られた大空間40aを臨む位置に配設されるのであれば、上述のように巻回するだけに限られず、図3(a)に示すように、外部電極38の一端部を気密容器34の外周面における大空間40aを臨む位置に沿わせるだけでもよいし、図3(b)に示すように、気密容器34の外周面における大空間40aを臨む位置に金属箔50を取り付け、この金属箔50に外部電極38の一端を接続してもよい。また、他の取り付け方法を用いてもよい。
【0045】
トリガーワイヤー16は、電気導通性を有する金属線であり、その一端部が他方の封止部28bと発光部26との境目に巻回されており、他端が他方の外部リード32bに接続されている。他方の封止部28bと発光部26との境目に加えて、一方の封止部28aと発光部26との境目にも巻回してもよい。
【0046】
本実施例に係る補助ランプ付き高圧放電ランプ10の組み立て手順について簡単に説明すると、公知の方法で製造した高圧放電ランプ12および補助ランプ14(未だ外部電極38が巻回されていない状態)を準備し、然る後、外部電極38の一端部を補助ランプ14の気密容器34の外周面に巻回して、一方の封止部28aの外周面に接触する位置に補助ランプ14を配設する(より正確に言えば、気密容器34に巻回した外部電極38が封止部28aの外周面に接触する。)。その後、外部電極38の他端を高圧放電ランプ12の他方の外部リード32bに接続し、内部電極用外部リード37を一方の外部リード32aに接続する。最後に、トリガーワイヤー16の一端部を他方の封止部28bと発光部26との境目に巻回するとともにその他端を他方の外部リード32bに接続することにより、補助ランプ付き高圧放電ランプ10が完成する。もちろん、気密容器34に対する外部電極38の巻回、外部電極38および内部電極用外部リード37の外部リード32a、32bへの取り付け、ならびに、トリガーワイヤー16巻回・接続の作業順番は、上記の手順に限定されるものではない。
【0047】
完成した補助ランプ付き高圧放電ランプ10は、図4に示すように、内面に反射面70を有する椀状の反射鏡72に取り付けて使用されるのが一般的である。反射鏡72の底部には、補助ランプ14が取り付けられた方の封止部28aが補助ランプ14と共に収容されるランプ収容穴74が設けられた頸部76が設けられており、このように収容された状態で、熱伝導性の高い接着剤等(図示せず)を用いて反射鏡72と補助ランプ付き高圧放電ランプ10とが固定される。また、補助ランプ14を、反射鏡72の開口側、つまり、高圧放電ランプ12の他方の封止部28bに取り付けてもよい。この場合、補助ランプ14は、風通しのよい反射鏡72の開口付近に位置することから、補助ランプ14が反射鏡72の頸部76に取り付けられている場合に比べて放熱能力が大きくなる。これにより、高圧放電ランプ12の封止部28aが熱による損傷を受ける可能性をさらに低減することができる。
【0048】
この補助ランプ付き高圧放電ランプ10の高圧放電ランプ12を点灯する際には、図示しない給電装置から延びる一対の電流供給線48を高圧放電ランプ12の両外部リード32a、32bにそれぞれ接続し、給電装置からの高電圧を両外部リード32a、32b間に印加する。すると、補助ランプ14における内部電極36と外部電極38との間において絶縁破壊が生じて放電が始まる。この放電によって励起された内部空間40内の放電用媒質M2から紫外線UVが放出される。放出された紫外線UVは、一方の封止部28aの内部を通って発光部26の内部空間24に入り、一対の主放電用電極20a、20bを照らす。紫外線UVに照らされた主放電用電極20a、20bからは電子が放出され易くなり(光電効果)、あるいは、発光部26の内部空間24に封入された発光物質M1がこの紫外線UVを受けることによってイオン化し、主放電用電極20a、20b間で放電が生じるための道(放電ルート)が形成されるので、コールドスタート時はもちろん、ホットスタート時でも低い電圧(例えば、1.2kV)でも高圧放電ランプ12を瞬時に点灯始動することができる。
【0049】
本実施例の補助ランプ14では、気密容器34の内部空間40が内部電極36によって大小2つの空間(大空間40aと小空間40b)に区切られており、これら空間の内、大きい方の空間(=大空間40a)を臨む位置にある外部電極38と内部電極36との間で発生する、大空間40aにおける放電は、小さい方の空間(=小空間40b)で発生する放電に比べて放電強度が大きいことから、大空間40aからは大量の紫外線UVが発生する。
【0050】
ここで、補助ランプ14は、この大空間40aが一方の封止部28aを向くように配置されているので、大空間40aで発生した大量の紫外線UVが封止部28aを通って主放電用電極20a、20bを照射する。このため、従来のものに比べて、さらに低い印加電圧で安定して高圧放電ランプ12を点灯始動させることができる。
【0051】
また、補助ランプ14が封止部28aに接触するようになっているので、点灯中に高圧放電ランプ12の封止部28aで生じる熱の一部が補助ランプ14に伝導し易くなって放熱面積が増大する。このため、封止部28aが熱による損傷を受ける可能性を低減することができ、高圧放電ランプ12の寿命を長くすることができる。
【0052】
また、補助ランプ14の大空間40aが向かう一方の封止部28aに埋設された金属箔30aの配設角度を、図5に示すように、その金属箔30aの正面Xから補助ランプ14が外れるように設定するのが好適である。具体的にいえば、断面視において、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2と、金属箔30aの幅方向に平行な直線L3とが成す角度θ2を0°から30°に設定する。この角度範囲が好適である理由については後述する。
【0053】
これにより、補助ランプ14から放出され、封止部28a内に導入された紫外線UVがこの封止部28a内を何度か反射して発光部26に進んでいくとき、紫外線UVが金属箔30aに当たって遮られる可能性が低くなる。このため、補助ランプ14から放出された紫外線UVを無駄なく主放電用電極20a、20bに作用させることができるので、コールドスタートあるいはホットスタート時に低い電圧でも高圧放電ランプ12をさらに確実に点灯始動することができる。
【0054】
また、図6に示すように、補助ランプ14を覆う反射部材44をさらに設けてもよい。図示実施例では、外部電極38の一端部を気密容器34の外周面に巻回せず、導電性を有する金属製の反射部材44で補助ランプ14を覆い、然る後、外部電極38の一端をこの反射部材44に接続している。これにより、反射部材44も外部電極38の役割を果たすことになる。この場合、反射部材44(=外部電極38)は、大空間40a側で気密容器34の外表面から離間した状態になるが、このような状態でも反射部材44の外表面から離間した部分44aは、大空間40aを臨位置にあり、この部分44aと内部電極36との間(=大空間40a)で問題なく放電が生じる。もちろん、外部電極38の一端部を気密容器34の外周面に巻回し、その上から反射部材44を被せてもよい。
【0055】
この反射部材44の内面には、補助ランプ14に向かう反射面46が形成されており、この反射面46は、補助ランプ14から放出されて封止部28aを逸れる紫外線UVaを、封止部28aに向けて反射させるようになっている。
【0056】
この実施例によれば、封止部28a内に導かれる紫外線UVの量をさらに多くできるので、低い電圧でも高圧放電ランプ12をさらに確実に点灯始動することができる。
【0057】
さらに、図7に示すように、高圧放電ランプ12の他方の外部リード32bに給電する電流供給線48を外部電極38の一端に接続してもよい。これにより、1本の電流供給線48で、外部電極38を兼ねることができ、補助ランプ付き高圧放電ランプ10の部品点数を減らすことができる。
【0058】
また、補助ランプ14の内部電極36の表面に微小な凹凸を形成してもよい。内部電極36の表面に微小な凹凸を形成することにより、その凸部に電界集中が生じることから、内部電極36と外部電極38との間の放電をより低い電圧で発生させることができるようになり、高圧放電ランプ12をより確実に点灯始動させることができる。微小な凹凸を形成する方法としては、例えば、硝酸水溶液を用いた電解エッチングを挙げることができる。もちろん、凹凸を形成する方法は、これに限られるものではない。
【0059】
内部電極36の中央および内部空間40の中心を結んだ直線L1と、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2とが成す角度θ1の好適な範囲を確認した結果を表1に示す。角度θ1を0°、45°、90°、105°、および120°に設定した試料ランプをそれぞれ5つ作成し、各試料ランプに1.0kV、1.2kV、1.4kV、1.6kV、および1.8kVの高圧始動電圧を印加して、高圧放電ランプ12が点灯するか否かを確認した。なお、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2と、金属箔30aの幅方向に平行な直線L3とが成す角度θ2は、0°の状態で確認を行った。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示すように、高圧始動電圧が1.0kVおよび1.2kVの時は、全ての角度θ1において、点灯しない試料ランプが存在していた。しかし、高圧始動電圧が1.4kV以上であれば、角度θ1を0°から105°に設定することにより、全ての試料ランプが問題なく点灯している。したがって、角度θ1の範囲は、0°から105°の範囲が好適であると考えられる。
【0062】
次に、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2と、金属箔30aの幅方向に平行な直線L3とが成す角度θ2の好適な範囲を確認した結果を表2に示す。角度θ2を0°、10°、20°、30°、および40°に設定した試料ランプをそれぞれ5つ作成し、各試料ランプに1.0kV、1.2kV、1.4kV、1.6kV、および1.8kVの高圧始動電圧を印加して、高圧放電ランプ12が点灯するか否かを確認した。なお、内部電極36の中央および内部空間40の中心を結んだ直線L1と、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2とが成す角度θ1は、0°の状態で確認を行った。
【0063】
【表2】

【0064】
表2に示すように、高圧始動電圧が1.0kVおよび1.2kVの時は、全ての角度θ2において、点灯しない試料ランプが存在していた。しかし、高圧始動電圧が1.4kV以上であれば、角度θ2を0°から30°に設定することにより、全ての試料ランプが問題なく点灯している。したがって、角度θ2の範囲は、0°から30°の範囲が好適であると考えられる。
【0065】
また、反射部材44の有無で点灯性能がどのように変化するかを確認した結果を表3に示す。なお、内部電極36の中央および内部空間40の中心を結んだ直線L1と、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2とが成す角度θ1、および、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2と、金属箔30aの幅方向に平行な直線L3とが成す角度θ2は、ともに0°の状態で確認を行った。
【0066】
【表3】

【0067】
表3に示すように、反射部材44を設けない場合、5つの試料ランプが全て点灯するのは高圧始動電圧を1.4kVに設定したときに限られるが、反射部材44を設けることにより、高圧始動電圧が1.2kV以上であれば5つの試料ランプが全て点灯するようになることが判った。
【0068】
さらに、補助ランプ14の内部電極36の表面に微小な凹凸を設けることにより、点灯性能がどのように変化するかを確認した結果を表4に示す。なお、内部電極36の中央および内部空間40の中心を結んだ直線L1と、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2とが成す角度θ1、および、内部空間40の中心および封止部28aの中心を結んだ直線L2と、金属箔30aの幅方向に平行な直線L3とが成す角度θ2は、ともに0°の状態で確認を行った。
【0069】
【表4】

【0070】
表4に示すように、内部電極36の表面に微小な凹凸を設けない場合、5つの試料ランプが全て点灯するのは高圧始動電圧を1.4kVに設定したときに限られるが、凹凸を設けることにより、高圧始動電圧が1.2kV以上であれば5つの試料ランプが全て点灯するようになることが判った。
【0071】
また、補助ランプ14が封止部28aに接触していることにより、高圧放電ランプ12の点灯中における封止部28aの温度がどの程度低下するかを確認した結果を表5に示す。
【0072】
【表5】

【0073】
表5に示すように、補助ランプが封止部から離間している従来の補助ランプ付き高圧放電ランプであれば、点灯中の温度が約409℃であるのに対し、補助ランプ14を封止部28aに接触させた本実施例の補助ランプ付き高圧放電ランプ10であれば、点灯中の温度が約355℃となり、50℃以上の温度低下を確認することができた。発明者らが知る、封止部の温度と高圧放電ランプ12の寿命との関係によれば、点灯中の封止部温度が約409℃の場合、寿命は2000時間程度であるのに対し、点灯中の封止部温度が約355℃であれば、寿命は7000時間程度となり、飛躍的に長寿命化することがわかる。
【符号の説明】
【0074】
10…補助ランプ付き高圧放電ランプ:12…高圧放電ランプ:14…補助ランプ:16…トリガーワイヤー:18…発光管:20a、20b…主放電用電極:22a、22b…給電手段:24…内部空間:26…発光部:28a、28b…封止部:30a、30b…金属箔:32a、32b…外部リード:34…気密容器:36…内部電極:37…内部電極用外部リード:38…外部電極:40…内部空間:42…補助ランプ封止部:44…反射部材:46…反射面:48…電流供給線:50…(外部電極用の)金属箔:70…(反射鏡の)反射面:72…反射鏡:74…ランプ収容穴:76…頸部:M1…発光物質:M2…放電用媒質


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光物質が封入された内部空間を有する発光部と前記発光部から延びる1又は2の封止部とを有する発光管、前記内部空間に互いに対向して配設された一対の主放電用電極、および前記一対の主放電用電極に給電する一対の給電手段を備える高圧放電ランプと、
放電用媒質が充填された内部空間を有する気密容器、一端が前記内部空間に配設されるとともに他端が一方の前記給電手段に接続された内部電極、および一端が前記気密容器の外面に取り付けられるとともに他端が他方の前記給電手段に接続された外部電極を備える補助ランプとを備えており、
前記内部電極は、幅広に形成されているとともに、前記内部空間を大小2つの空間に区切る位置に配設されており、
前記外部電極は、少なくとも、前記内部電極によって区切られた大きい方の前記内部空間を臨む位置に配設されており、
前記補助ランプは、大きい方の前記内部空間が前記封止部を向くように配置されていることを特徴とする補助ランプ付き高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記高圧放電ランプの前記給電手段は、前記封止部内に埋設され、一端に前記主放電用電極が取り付けられた短冊形の金属箔と、前記金属箔の他端に取り付けられ、前記封止部から外部へ延びる外部リードとを有しており、
前記補助ランプにおける大きい方の前記内部空間が向かう前記封止部に埋設された前記金属箔の配設角度は、前記補助ランプが前記金属箔の正面から外れるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の補助ランプ付き高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記補助ランプを覆う反射部材をさらに備えており、
前記反射部材には、前記補助ランプに向かう反射面が形成されており、
前記反射面は、前記補助ランプから放出されて前記封止部を逸れる紫外線を、前記封止部に向けて反射させることを特徴とする請求項1または2に記載の補助ランプ付き高圧放電ランプ。
【請求項4】
前記外部電極の一端に給電装置からの電流供給線が接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の補助ランプ付き高圧放電ランプ。
【請求項5】
前記補助ランプが前記封止部に接触するように配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の補助ランプ付き高圧放電ランプ。
【請求項6】
前記補助ランプにおける前記内部電極の表面には、微小な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の補助ランプ付き高圧放電ランプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93142(P2013−93142A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233310(P2011−233310)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(510138741)フェニックス電機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】