説明

補助衣類

【課題】 従来の肌着等の肌に直接触れる衣類を利用しながら、肌に汗により濡れた衣類を触れさせないようにすることを課題とする。
【解決手段】 肌に直接触れる吸湿性・吸水性をもつ衣類の下に着用する補助衣類を、撥水加工された編物により形成する。吸湿性・吸水性のある衣類の下に着用しておくと、汗腺から出た汗は編物の網目を通ってこの吸湿性・吸水性のある衣類へ至り、吸収される。一方、汗を吸収した衣類が汗を多量に吸収して濡れた状態になっても、撥水加工された編物により肌に水分が至ることはなく、肌を不快な状態にすることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肌に直接触れる吸湿性・吸水性をもつ衣類の下に着用し、これを補助するための衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌に直接触れる衣類は吸湿性・吸水性により汗を吸い取ることを主眼にしたものがほとんどである。しかし、汗を大量にかくと吸湿した汗は十分蒸発せずに衣類を濡らしてしまう。このように汗で濡れた衣類は不快であり、また、登山などの肌着に使用する場合には体温の低下を招くことになる。このような問題に対応する発明として、下記特許文献1には、吸湿性・吸水性の繊維と撥水性の繊維を混成した編み物を撥水性の高い繊維部分を吸湿性・吸水性の繊維部分よりも高くすることで、肌には撥水性の高い繊維部分を触れさせ、濡れた吸湿性・吸水性の繊維部分は肌から離すことで、濡れた部分が肌に触れることを防ぐことが示されている。
【特許文献1】特開2000−256940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、肌に直接触れる衣類の生地自体の編み方を変更しなければならないために、従来からある吸湿性・吸水性のある肌着等の衣類は無駄になってしまう。一方、状況によっては吸湿性・吸水性のある衣類のみで十分な場合もあり、上記特許文献1に記載の発明では適宜柔軟に対応することができない。
そこで、上記の問題に鑑みて、従来の肌着等の肌に直接触れる衣類を利用しながら、肌に汗により濡れた衣類を触れさせないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、肌に直接触れる吸湿性又は吸水性をもつ衣類の下に着用する補助衣類であって、撥水加工された編物により形成される補助衣類である。
請求項2に記載の発明は、前記補助衣類において、前記編物の生地の厚さを0.3mm以上かつ0.8mm以下としたものである。
請求項3に記載の発明は、前記補助衣類いおいて、前記編物は、17T以上44T以下の糸により、20G以上33G以下の編みにより構成したものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明は、吸湿性・吸水性のある衣類の下に着用しておくと、汗腺から出た汗は編物の網目を通ってこの吸湿性・吸水性のある衣類へ至り、吸収される。一方、汗を吸収した衣類が汗を多量に吸収して濡れた状態になっても、撥水加工された編物により肌に水分が至ることはなく、肌を不快な状態にすることを防止することができる。また、吸湿性・吸水性のある衣類は従来の物をそのまま使用することができるので無駄がなく、また、状況に応じて本発明に係る補助衣類を着用しないことで、吸湿性・吸水性のある衣類を従来どおり使用することもできる。なお、肌に直接触れる吸湿性・吸水性をもつ衣類は、肌着、Tシャツ、スエットシャツの他、手袋、靴下、バラクラバなどが例示される。
請求項2に記載の発明は、編物の生地の厚さを0.3mm〜0.8mmとすることで、強度を確保しながら汗(気状、液状)の通りを良くするとともに、十分に薄いので吸湿性・吸水性のある衣類と重なる部分における不快感を低減することができる。
請求項3に記載の発明は、編物を17T(デシテックス)〜44Tの糸を使用し、20G(ゲージ)〜33Gの編みにより構成することで、強度を確保しながら汗の蒸気が通る穴を確保し、また、吸湿性・吸水性のある衣類からの汗の戻りを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に発明の実施形態に係る補助衣類Xの斜視図を示す。補助衣類Xは吸湿性・吸水性のある長袖のシャツの下に着用するためのものであり、形状は、長袖のシャツとほぼ同じ形状である。この補助衣類X、37Tのポリエステル異形糸を28Gでフライス編により編んだ後に、フッ素コーティングによる撥水加工を施したものであり、生地の厚さは0.45mmに形成されている。なお、撥水加工は糸の段階で行ってもよい。さらに、編み方はフライス編のほかに天竺編、トリコット編、メッシュなど種々の編み方が採用できる。
【0007】
このような構成を有する補助衣類Xは図2に示すように、吸湿性・吸水性のある一般的な長袖のシャツYを着用する前に肌に直接着用しておき、この上から長袖シャツYを着用するようにして使用する。このように長袖のシャツYの下に補助衣類Xを着用したときの作用を図2を用いて説明する。図2は着用時の補助衣類Xと長袖のシャツYの重なり部分における模式的な断面図である。まず、着用者が肌Sから発汗すると、気状となった汗は、図2(a)に示すように補助衣類Xを通り抜けて吸湿性・吸水性のある長袖のシャツYにより吸収される。補助衣類Xは十分に薄く、網目も十分に粗いので気状の汗はスムーズに通り抜けることができる。また、液状の汗も、補助衣類Xが薄く、網目が粗いために、長袖のシャツYに接触しやすく、吸湿性・吸水性の衣料の吸湿吸水作用で適宜吸収されていく。やがて、時間が経って発汗した汗の累積量が多くなると、長袖のシャツYは吸収した多量の汗により濡れた状態となる。しかし、濡れた長袖のシャツYは補助衣類Xにより肌Sにほとんど触れることはなく、長袖のシャツYからの水分も補助衣類Xの撥水性により補助衣類Xから肌Sの側へ移動することができない。このように、補助衣類Xは肌着等の下にさらに補助する衣類を着用するという従来にない着想によって、適切に汗を吸収しながら肌に対する不快感や濡れた衣類による体温の低下を低減させることができる。
なお、上記の実施の形態では補助衣類は補助する衣類と同じ形状としたが、発汗量が多いところや、濡れると不快感が高いところなど、一部分に限定して着用できるような形状でもよい。例えば、図3(a)に示すように、腹巻状として腹から背中に至る部分のみに設けたり、図3(b)に示すように、汗を比較的多量にかく、脇の下と背中の部分のみの設けるようにするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】発明の実施形態に係る補助衣類の斜視図である。
【図2】発明の実施形態に係る補助衣類の使用状態を示す図である。
【図3】(a)は発汗時の補助衣類の作用を示す断面図であり、(b)は補助する衣類が濡れた状態における補助衣類の作用を示す断面図である。
【図4】(a)(b)ともに補助衣類の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0009】
X 補助衣類
Y 吸湿性・吸水性のある長袖のシャツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に直接触れる吸湿性又は吸水性をもつ衣類の下に着用する補助衣類であって、撥水加工された編物により形成される補助衣類。
【請求項2】
前記編物は、生地の厚さが0.3mm以上かつ0.8mm以下である請求項1に記載の補助衣類。
【請求項3】
前記編物は、17T以上44T以下の糸により、20G以上33G以下の編みにより構成される請求項1又は2に記載の補助衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−111984(P2006−111984A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298004(P2004−298004)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(504113190)株式会社finetrack (5)
【Fターム(参考)】