説明

補助食品用粉体の製造方法および補助食品

【課題】 コンキオリン(蛋白質)を含有する貝殻または真珠を出発原料とする水素分子を大量に吸着保持する補助食品を提供する。
【解決手段】 焼成前の貝殻はCaCOからなる層間にコンキオリン(蛋白質)が保持されている。この蛋白質は通常の条件では脱落することはない。この貝殻を乾留すると、コンキオリン(蛋白質)は熱分解して消失する。この消失によってCaCO層は圧縮されて重なるがCaCO層間には僅かな隙間が残る。一方、タンパク質が熱分解する過程で水素分子が生じるが、この水素分子が前記僅かな隙間に吸着保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを吸着(付着)し、且つ吸着した水素ガスの保持能に優れた補助食品用粉体の製造方法、およびこの粉体を腸まで搬送するのに適した形態にした補助食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、貝殻やサンゴを焼成して有用性を付加することが行われている。例えば、特許文献1には、牡蛎やホッキ貝の貝殻を不活性ガス雰囲気で最終到達温度850〜1000℃で焼成して粉末状の抗菌剤を製造することが開示されている。即ち、焼成によってCaCOをCaOに変化させ、このCaOが水に接触してOHイオンを生成することで強アルカリによる殺菌効果を得ることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、シジミの貝殻を410℃〜580℃で焼成することで、CaCOの結晶型をアラレ石型結晶構造から方解石型結晶構造に変化させて、肝臓機能障害改善に有効な成分を得ることが開示されている。
【0004】
特許文献3には、サンゴカルシウムの粉末を乾燥させ、700℃で4時間酸化焼成した後、Nガス・Hガス雰囲気の還元炉で650℃で4時間還元焼成することで、マイナス水素イオンを吸着させる方法が記載され、この特許文献3に開示された方法でマイナス水素イオンを吸着させたサンゴカルシウムの粉末に玄米粉や豆乳粉を混合して補助食品とすることが特許文献4に開示されている。更に、サンゴ粉末にマイナス水素イオンを吸着させたとする健康食品がインターネットのウェブサイト(www.kenko-suiso.com)などに紹介されている。
【特許文献1】特開2001−026508号公報
【特許文献2】特開2001−204433号公報
【特許文献3】特開2005−245265号公報
【特許文献4】特開2007−217351号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から体内の活性酸素を無効化するのに有効な手段として水素分子を構成する水素イオンと電子をフリーラジカルと結合させることが考えられている。
【0006】
特許文献1に開示される方法で牡蛎殼やホッキ貝の粉末に水素分子を吸着させることはできない。特許文献1に開示される方法では貝殻を最終到達温度850〜1000℃で焼成しており、このような高温では仮に水素分子が焼成前に付着していたとしても焼成の際に飛散してしまう。
【0007】
特許文献2の実施例では、前記したシジミの他にアサリ及びホタテの貝殻を105℃〜900℃で2時間焼成することが記載されている。しかしながら、焼成雰囲気については何ら考慮されておらず、また水素分子を保持できる条件の示唆はされていない。
【0008】
一方、特許文献3、4に開示されるサンゴカルシウムを経口サプリメントとして、或いはサンゴカルシウムを溶解した水を体内に取り入れても有効な結果は得られていない。
【0009】
上記の原因の第1は、水に溶解する水素ガスの量は体内の活性酸素を無効化するためには少なく、また珊瑚に十分な量の水素ガスを吸着せせることが困難であることが挙げられる。即ち、仮に水素ガスが存在していたとしても700℃で4時間酸化焼成する前工程において消失してしまい、その後の還元焼成の際に外部から水素ガスを珊瑚に吸着させようとしても、外部からは殆んど吸着させることはできない。
【0010】
本発明者らは先にゼオライトの隙間表面に水素ガスを吸着させる方法について特許査定を受けたが、ゼオライトの表面積は300m/g程度と極めて大きく、水素ガスが吸着保持されるのに好適と考えられる5nm〜50nm程度の穴を多数有している。一方、天然の珊瑚(風化珊瑚)の表面積は1m/g程度であり、ゼオライトの表面積に比較すると表面積は小さく、珊瑚表面の穴は大きすぎて、珊瑚を水素ガス中に置いても、水素ガスは殆んど保持されない。
【0011】
また、特許文献3、4ではマイナス水素イオンを水素元素に更に1個の電子が付加された活性水素(ヒドリドイオン)として捉えている。しかしながら、マイナス水素イオンそのものが生体内に取り込まれると、電子が離れ酸素と反応して体に有害なスーパーオキサイドをはじめとする活性酸素種を誘発するおそれがある。さらにカルシウムにマイナス水素イオンを吸着させた水素化カルシウム(CaH)は非常に強い塩基性を有し、水(HO)と接触すると激しく反応し水素を発生するため、金属と直接接触すると爆発することもある消防法危険物にも該当する物質で、とても生体内でそのまま利用できるものではない。
【0012】
有効な結果が得られない第2の原因としては、胃の強烈なpHが考えられる。仮に十分な水素ガスを吸着した珊瑚やゼオライト等の多孔質体を口から取り入れても、胃酸を中和するための水酸イオン(OH)として消費されてしまい体内に水素イオンを取り入れることができないからと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、水素ガスの吸収は主として腸管壁、特に小腸の上皮粘膜細胞から行われ、腸管壁から体内に取り入れられた水素は気体であるから、細胞の中でも核の中でも入っていける。そして体内の活性酸素と結合してその活性を喪失させるとの知見を得た。
【0014】
この知見から、水素ガスを体内に送り込む担体は水ではなく固体が好ましいこと、また固体に水素ガスを保持する際にはある程度持続性が必要であるとの結論を得て本発明を成した。
【0015】
即ち、本発明に係る補助食品粉体の製造方法は、CaCOからなる層間にコンキオリン(蛋白質)を含有する貝殻、真珠または珊瑚を粉砕し、この粉砕した貝殻、真珠または珊瑚を水素ガスを添加しない非酸化雰囲気で焼成(乾留)することで前記コンキオリン(蛋白質)を低分子化し、低分子化によって発生した水素ガスを、前記コンキオリン(蛋白質)が消失してCaCO層が圧縮されることでCaCO層間に残る隙間内に物理的に吸着保持させるようにした。
【0016】
また、本発明に係る補助食品は、CaCOからなる層間に水素ガスが物理的に吸着保持されている粉体の表面、またはこの粉体を所定形状に成形した成形体の表面に、腸溶性(アルカリ可溶性)コーティングを施すか、前記成形体を、腸溶性(アルカリ可溶性)カプセル内に収納して構成される。
【0017】
牡蛎、ホッキ貝、アコヤ貝などの2枚貝、真珠、黒珊瑚にはCaCOからなる層間にコンキオリン(蛋白質)を含有することが知られている。このコンキオリンを所定の温度範囲で乾留すると、コンキオリンは熱によって低分子化して消失する。この消失によってCaCO層は圧縮されて重なるが、CaCO層間には僅かな隙間が残る。
【0018】
一方、コンキオリンが低分子化する過程で、CHやCOなどが発生するが、これらは熱を含む赤外線の吸収によって
双極子モーメントによる共振が生じ、隙間内で安定せずに外部に飛散しやすい。しかしながら、水素分子は単原子分子であるので双極子モーメントによる共振が起きず隙間内で安定するので、前記コンキオリンが消失することで形成された僅かな隙間内で吸着状態が維持される。
【0019】
水素ガスを添加しない非酸化雰囲気での焼成(乾留)の条件としては、コンキオリンを低分子化することができ、且つ低分子化によって発生した水素ガスが隙間内に留まることができる温度範囲にする必要がある、この範囲として好ましい範囲は300〜500℃、2〜8時間である。
【0020】
また、本発明に係る補助食品用粉体としては、純水(1L)に溶解した場合の溶存水素量(DH)が0.25ppm以上(25℃、1atm)であれば、補助食品としての効果が十分に期待できる。
【0021】
本発明に係る補助食品用粉体か否か、つまり水素ガスが吸着保持されているか否かは酸化還元電位の測定によって検証することもできる。即ち水素ガスが物理的に吸着保持された本発明に係る補助食品用粉体と水素ガスが物理的に吸着保持されていない補助食品用粉体とを同一の水に同一の濃度で溶解させた時の水溶液の酸化還元電位の差は−20〜−300mVである。
【0022】
同様に、水素ガスが物理的に吸着保持された本発明に係る補助食品用粉体を水に溶解した時の飽和塩化銀電極を比較電極とした酸化還元電位は0〜−400mVである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る補助食品用粉体は多量の水素ガスを吸着保持しており、しかも腸まで到達して水素ガスを徐々に放出する。このため、腸管壁(小腸の上皮粘膜細胞)から体内に水素ガスが取り込まれて以下に示した反応式のように活性酸素種の一種である極めて反応性が高く毒性の強いヒドロキシラジカル(・OH)を消去しヒドロキシラジカルによる生体内組織の損傷を防ぐことができる。
【0024】
+2・OH→2H
上記の式で示したようにヒドロキシラジカルはスーパーオキシドラジカルと比べ強い求核性を示すためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は本発明に係る補助食品用粉体としてのコンキオリンを含有する貝殻の焼成前の断面の模式図、(b)は焼成後の模式図、図2(a)はシジミ貝殻の焼成前の断面顕微鏡写真(10000倍)、(b)は還元雰囲気で400℃で2時間焼成したシジミ貝殻の断面顕微鏡写真(8000倍)、図3(a)は牡蛎貝殻の焼成前の断面顕微鏡写真(10000倍)、(b)は還元雰囲気で400℃で2時間焼成した牡蛎貝殻の断面顕微鏡写真(8000倍)、図4(a)はホッキ貝殻の焼成前の断面顕微鏡写真(10000倍)、(b)は還元雰囲気で400℃で2時間焼成したホッキ貝殻の断面顕微鏡写真(10000倍)である。
【0026】
図1(a)、図2(a)、図3(a)及び図4(a)に示すように、焼成前のシジミ貝殻、牡蛎貝殻、ホッキ貝殻などの貝殻はCaCOを主成分とする層状構造をしている。そして層間には貝殻特有のタンパク質であるコンキオリンがサンドイッチされ一定の形状を維持している。この蛋白質は通常の条件では脱落することはない。
【0027】
図2(b)に示すようにシジミの貝殻を乾留すると、コンキオリンは熱分解によってCaCO層間から放出され、CaCO層は圧縮されて重なり層間に極狭い隙間が残る。
【0028】
図3(b)に示すように牡蛎の貝殻を乾留すると、前記同様コンキオリンは熱分解によってCaCO層間から放出され、CaCO層は圧縮されて重なり、前記同様に層間に隙間が残ることが分かる。
【0029】
図4(b)に示すようにホッキ貝の貝殻を乾留すると、前記同様コンキオリンは熱分解によってCaCO層間から放出され、CaCO層は圧縮されて重なって一体となっており、前記同様に層間に微細な隙間が残ることが分かる。
【0030】
上記の隙間は数nm〜数十nmほどであり、水素分子を保持するのに好適である。したがって、図1(b)に示すように、蛋白質由来の水素ガスが層間に吸着保持されていることが、後述する分析結果からも推考される。
【0031】
図5(a)は焼成前のシジミ貝殻の定量分析結果を示すグラフ、(b)は焼成後のシジミ貝殻の定量分析結果を示すグラフ、図6は焼成前後のシジミ貝殻の組成成分の変化を示すグラフである。尚、図6における各成分の割合は左側が焼成前、右側が焼成後である。
【0032】
図5及び図6から、焼成後において炭素および酸素が減少している。これはコンキオリンを構成している炭素が熱分解過程で炭酸ガス等になって逸散したからであり、その結果、カルシウムの割合が相対的に増加したものと考えられる。
【0033】
図7(a)は焼成前の牡蛎の貝殻の定量分析結果を示すグラフ、(b)は焼成後の牡蛎の貝殻の定量分析結果を示すグラフ、図8は焼成前後の牡蛎貝殻の組成成分の変化を示すグラフである。また図9(a)は焼成前のホッキ貝の貝殻の定量分析結果を示すグラフ、(b)は焼成後のホッキ貝の貝殻の定量分析結果を示すグラフ、図10は焼成前後のホッキ貝の貝殻の組成成分の変化を示すグラフである。
尚、図8及び図10における各成分の割合は左側が焼成前、右側が焼成後である。
【0034】
図7〜図10から牡蛎、ホッキ貝の貝殻もシジミ貝と同様に焼成後において炭素および酸素が減少している。これはコンキオリンを構成している炭素が熱分解過程で炭酸ガス等になって逸散したからであり、その結果、カルシウムの割合が相対的に増加したものと考えられる。
【0035】
以下の(表)は本発明に係る補助食品用粉体のH濃度の検量結果を表すものである。
【表1】

【0036】
(表1)中、シジミ−1は、粉砕して乾燥させたシジミ貝殻の粉体を機密容器に入れ、機密容器内を窒素ガスで置換し、非酸化雰囲気、450℃で3時間乾留して得たものである。シジミ−2は、粉砕して乾燥させた未焼成のシジミ貝殻である。
【0037】
牡蛎−1は、粉砕して乾燥させた牡蛎貝殻の粉体を機密容器に入れ、機密容器内を窒素ガスで置換し、非酸化雰囲気、450℃で3時間乾留して得たものである。牡蛎−2は、粉砕して乾燥させた未焼成の牡蛎貝殻である。
【0038】
ホッキ−1は、粉砕して乾燥させたホッキ貝殻の粉体を機密容器に入れ、機密容器内を窒素ガスで置換し、非酸化雰囲気、450℃で3時間乾留して得たものである。ホッキ−2は、粉砕して乾燥させた未焼成のホッキ貝殻である。
【0039】
アコヤ−1は、粉砕して乾燥させた牡蛎貝殻の粉体を機密容器に入れ、機密容器内を窒素ガスで置換し、非酸化雰囲気、450℃で3時間乾留して得たものである。アコヤ−2は、粉砕して乾燥させた未焼成の牡蛎貝殻である。
【0040】
サンゴ−1は、粉砕して乾燥させたサンゴの粉体を機密容器に入れ、機密容器内を窒素ガスで置換し、非酸化雰囲気、450℃で3時間乾留して得たものである。サンゴ−2は、粉砕して乾燥させたサンゴの粉体50gを300mlのナスフラスコに入れ、ロータリエバポレータに組付け、真空ポンプで減圧(4〜5mmHg)し水素ガスで常圧に戻し、この操作を3回繰り返した後に取り出したものである。サンゴ−3は、粉砕して乾燥させたサンゴの粉体50gを300mlオートクレーブに入れ、水素ガス0.5Mpaで3回置換した後、水素ガス圧を0.8MPaまで高めて1時間静置したものである。
【0041】
濃度の検量は、容積1200mlガラス製希釈瓶にNを充填した後、Hガス1.2mlを加えてよく混合した。この時瓶中のH濃度は1000ppmとなる。このガスをGC(ガスクロマトグラム)に2回注入してHピークを得て、そのピーク面積値からHの検量ファクターを算出した。
【0042】
試料の定量は、内容積22mlのガラス製ヘッドスペースバイアルに試料1gを入れた後、純水10mlを添加して直ちにテフロン(登録商標)内張りシリコンゴムをアルミキャップでシールした。これをよく振った後室温で静置し、容器の気相0.5mlをガスタイトシリンジで採取してGCに注入した。
【0043】
分析条件は以下の通りである。
ガスクロマトグラム:島津 GC−14B
データ処理装置:島津クロマトパックC−R7A’
カラム:Molecular Sieve−5A 60-80メッシュ、2m
カラム温度:50℃
検出器:TCD
電流値:60mA
検出器温度:100℃
キャリヤーガス:アルゴン
入口圧:200kPa
アッテネーション:2^0
試料注入量:0.5ml
(表)から以下のことが判明した。
【0044】
生(未焼成)のシジミ貝殻、牡蛎貝殻、ホッキ貝殻、アコヤ貝殻の粉末を水に溶かしても水素は発生しない(検出限界の5ppm以下)。
【0045】
シジミ貝殻、牡蛎貝殻、ホッキ貝殻、アコヤ貝殻およびサンゴを乾留したものを水に溶かすと水素が発生する。
【0046】
また、外部から水素置換を試みたサンゴ−2、サンゴ−3の場合も、同様に水に溶かすと水素が発生する。しかもH濃度は殆んど変わらない結果が得られた。
【0047】
尚、表には示していないが、1000℃でシジミ貝殻、牡蛎貝殻、ホッキ貝殻、アコヤ貝殻およびサンゴを還元焼成した場合には、最少検出限界である5ppm以下であった。
【0048】
以上から、外部から水素置換を試みても当該水素はCaCOからなる層間に侵入せず、CaCOからなる層間に元から保持されていた有機物(タンパク質)が乾留によって低分子化し、最終的に水素ガスとして炭酸カルシウムからなる層間の隙間に保持されると考えられる。
【0049】
また、真珠に関してもCaCOからなる層間にコンキオリンが介在しているので、同様の結果が得られると思われる。
【0050】
図11(a)は、水素ガスを吸着保持した補助食品用粉体を造粒した成形体の表面に腸溶性コーティングを施したものであり、(b)は前記補助食品用粉体を腸溶性カプセル内に収容したものである。
【0051】
前記腸溶性コーティングとしては、メタクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロース(CMEC)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メタクリル酸−アクリル酸エチルエステル共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチルエステル共重合体、プロピレングリコール、ソルビタンモノラウレート、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸トリメリト酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、メタクリレート、キトサン、グアールガム、ペクチン、ローカスビーンガム及びポリエチレングリコール(PEG)、セラックなどが挙げられる。
【0052】
腸溶性カプセルとしては、ゼラチン、セルロース類またはでんぷんからなるカプセルの表面に上記腸溶性コーティング液を塗布したもの、或いはカプセル自体を腸溶性としたもの、例えば上記のゼラチン、セルロース類またはでんぷんにペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレートなどのセルロース類、メタクリル酸コポリマーなどを混合したものが考えられる。
【0053】
前記ゼラチンは、胃酸に溶けることなく、気温が上昇してもカプセル同士が付着せず、かつガスバリアー性も高いが、腸溶性ではない。そこで、ゼラチンのNH基とカラギーナンのSO基をイオン架橋させることによって、ゼラチンの性質を腸溶性にすることもできる。
【0054】
また、腸溶性カプセルの作製方法としてはエマルションの作成方法を利用してもよい。例えば、水素ガスを飽和状態まで溶解させたアルギン酸水溶液を用意し、このアルギン酸水溶液に前記水素ガスを吸着保持した珊瑚粉末、カキ殻粉末、アコヤ貝殻粉末または真珠粉末を溶解してこれを分散相とする。一方カルシウム水溶液を連続相として用意する。
【0055】
そして、前記分散相と連続相を隔壁を介して分離し、分散相に圧力をかけることで隔壁に形成した貫通穴を介して分散相を連続相中に粒子状に送り込む。すると、送り込まれた分散相粒子を構成するアルギン酸と連続相中のカルシウムとが反応して酸不溶性でアルカリ可溶性のアルギン酸カルシウム膜が分散相粒子の表面に形成され、このアルギン酸カルシウム膜が腸溶性カプセルとなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は本発明に係る補助食品用粉体としてのコンキオリン(蛋白質)を含有する貝殻の焼成前の断面の模式図、(b)は焼成後の模式図
【図2】(a)はシジミ貝殻の焼成前の断面顕微鏡写真(10000倍)(b)は還元雰囲気で、400℃で2時間焼成したシジミ貝殻の断面顕微鏡写真(8000倍)
【図3】(a)は牡蛎貝殻の焼成前の断面顕微鏡写真(10000倍)(b)は還元雰囲気で、400℃で2時間焼成した牡蛎貝殻の断面顕微鏡写真(10000倍)
【図4】(a)はホッキ貝殻の焼成前の断面顕微鏡写真(10000倍)(b)は還元雰囲気で、400℃で2時間焼成したホッキ貝殻の断面顕微鏡写真(8000倍)
【図5】(a)は焼成前のシジミ貝殻の定量分析結果を示すグラフ(b)は焼成後のシジミ貝殻の定量分析結果を示すグラフ
【図6】焼成前後のシジミ貝殻の組成成分の変化を示すグラフ
【図7】(a)は焼成前の牡蛎貝殻の定量分析結果を示すグラフ(b)は焼成後の牡蛎貝殻の定量分析結果を示すグラフ
【図8】焼成前後の牡蛎貝殻の組成成分の変化を示すグラフ
【図9】(a)は焼成前のホッキ貝殻の定量分析結果を示すグラフ(b)は焼成後のホッキ貝殻の定量分析結果を示すグラフ
【図10】焼成前後のホッキ貝殻の組成成分の変化を示すグラフ
【図11】(a)は、水素ガスを吸着保持した補助食品用粉体を造粒した成形体の表面に腸溶性コーティングを施した図、(b)は前記補助食品用粉体を腸溶性カプセル内に収容した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaCOからなる層間にコンキオリン(蛋白質)を含有する貝殻、真珠または珊瑚を粉砕し、この粉砕した貝殻、真珠または珊瑚を水素ガスを添加しない非酸化雰囲気で焼成することで前記コンキオリン(蛋白質)を低分子化し、低分子化によって発生した水素ガスを、前記コンキオリン(蛋白質)が消失してCaCO層が圧縮されることでCaCO層間に残る隙間内に物理的に吸着保持させることを特徴とする補助食品用粉体の製造方法。
【請求項2】
CaCOからなる層間にコンキオリン(蛋白質)を含有する貝殻、真珠または珊瑚を粉砕し、この粉砕した貝殻、真珠または珊瑚を水素ガスを添加しない非酸化雰囲気で焼成することで前記コンキオリン(蛋白質)を低分子化し、低分子化によって発生した水素ガスが、前記コンキオリン(蛋白質)が消失してCaCO層が圧縮されることでCaCO層間に残る隙間内に物理的に吸着保持された貝殻、真珠または珊瑚の粉体の表面、またはこの粉体を所定形状に成形した成形体の表面に、腸溶性コーティングを施したことを特徴とする補助食品。
【請求項3】
CaCOからなる層間にコンキオリン(蛋白質)を含有する貝殻、真珠または珊瑚を粉砕し、この粉砕した貝殻、真珠または珊瑚を水素ガスを添加しない非酸化雰囲気で焼成することで前記コンキオリン(蛋白質)を低分子化し、低分子化によって発生した水素ガスが、前記コンキオリン(蛋白質)が消失してCaCO層が圧縮されることでCaCO層間に残る隙間内に物理的に吸着保持された貝殻、真珠または珊瑚の粉体、またはこの粉体を所定形状に成形した成形体を、腸溶性カプセル内に収納したことを特徴とする補助食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−41990(P2010−41990A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252278(P2008−252278)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【特許番号】特許第4245655号(P4245655)
【特許公報発行日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(508115303)株式会社インテリジェントアセットマネジメント (4)
【Fターム(参考)】