説明

補強マット

【課題】玄関などに設置されるゴムバッキングされた靴拭いマットに代表されるダストコントロールマットに関して、軽量で機械的物性に優れ、繰り返し洗濯しても、亀裂や千切れの発生を抑えることが可能であり、かつマットを設置して例えば靴拭いを実施しても位置ズレが発生し難い構造を有する、マットを提供する。
【解決手段】基布層の裏面に発泡ゴム層が積層された生機部と該生機部の外周に少なくとも中実ゴム層からなる額縁状耳部が形成されてなる補強マットであって、該中実ゴム層の一部が生機部の外周から中心方向にわたって、該発泡ゴム層の上層または下層と積層一体化していることを特徴とする補強マット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄関などに設置される靴拭いマット等で代表されるダストコントロールマットにおいて、軽量かつ洗濯耐性がありレンタルマット等に好適な補強マットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に靴拭いマットは、パイル糸からなる不織布等の基布の裏側に、合成ゴムを加硫接着することにより基布のパイル糸を抜け難く固定すると共に、マットを床面から動き難くしたものであり、戸外から室内への履物に付着して侵入する塵埃等を防ぐ目的で、店舗、事務所、工場建屋、住居、ホテル、病院、学校、その他建物の入口付近に敷かれて使用されている。
【0003】
しかしながら、基布層の裏側の層を、合成ゴム製の中実ゴム(ソリッドゴム)とした補強マットはその重量が重くなり、マットの配送や洗濯において支障をきたすため、効率を向上させる目的で、発泡ゴムによる軽量化が試みられてきた。
【0004】
そして、ゴムシートに化学発泡剤を配合して1.2〜3倍に低発泡させるものが知られている(特許文献1)。しかしながら、化学発泡剤を靴拭いマット用の1mm程度の薄い未加硫ゴムシートに使用した場合、混練時の初期分解を防ぐために綿密に温度制御する必要であり、かつ加水分解による発泡の不均一を防ぐために水分管理が必要であり、さらには、耐オゾン性も低下する傾向があった。
【0005】
前出の問題に対し、ベースポリマー100質量部に対し発泡性マイクロカプセルを5〜10質量部の配合比率で配合し、発泡倍率を1.5〜3.0倍に発泡させた軽量マットが提案されている(特許文献2)が、発泡性マイクロカプセルの外殻樹脂と合成ゴムとの相溶性が悪く、ゴムの物性が著しく低下し、マットの最外側にゴム層が露出した構造を有するマットへの適用は困難であった。
【0006】
上記した二例の問題を解決すべく、相溶性の良い発泡性マイクロカプセルと化学発泡剤を併用したゴム層からなる額縁状耳部とパイル布の裏側に発泡ゴムが積層された発泡ゴムシート部からなる玄関マットが提案されている(特許文献3)。しかしながら、マットを長期間使用した場合には、発泡ゴムシート部と額縁状耳部との境界において、亀裂や千切れが発生する問題が発生し、さらには、軽量化されることで人の往来によりマットが設置位置からズレ易い傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平7−6848号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献2】特許第2972136号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2010−200931号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前記の各種マットの課題である軽量で機械的物性(引張強度、引裂強度、永久伸び等)に優れ、繰り返し洗濯しても、特に額縁状耳部と生機部との境界における、亀裂や千切れの発生を抑えることが可能であり、かつマットを設置した場合に、設置場所からの位置ズレが発生し難い構造を有し、レンタル用途に好適な軽量な補強マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、基布層の裏面に発泡ゴム層が積層された生機部と該生機部の外周に少なくとも中実ゴム層からなる額縁状耳部が形成されてなる補強マットであって、該中実ゴム層の一部が生機部の外周から中心方向にわたって、該発泡ゴム層の上層または下層と積層一体化していることを特徴とする補強マットである。
【0010】
また本発明の補強マットは、中実ゴム層が生機部の外周から中心方向にわたり5〜50mmの幅で発泡ゴム層の上層または下層と積層一体化している補強マットである。
【0011】
さらに本発明の補強マットは、生機部と中実ゴム層とが積層一体化された箇所の補強マットの厚さが、生機部の厚さより1.0〜3.0mm厚い補強マットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の補強マットは、軽量で機械的物性に優れ、繰り返し洗濯しても、特に額縁状耳部と生機部との境界における、亀裂や千切れの発生を抑えることが可能である。またマットを設置した場合に、設置場所からの位置ズレが発生し難い構造を有するものであり、例えば、ダストコントロールマット等のレンタル・リースマット用途に最適な補強マットである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る補強マットの平面図である(説明上、一部基布層を除去)。
【図2】額縁状耳部が中実ゴム層単体からなり、額縁状耳部を構成する中実ゴム層の一部が生機部の発泡ゴム層の下層側に積層一体化した本発明の補強マットの断面図の一態様である。
【図3】額縁状耳部が中実ゴム層単体からなり、額縁状耳部を構成する中実ゴム層の一部が、生機部の発泡ゴム層と基布層との間に存在して積層一体化した本発明の補強マットの断面図の一態様である。
【図4】額縁状耳部が中実ゴム層単体からなり、額縁状耳部を構成する中実ゴム層の一部が生機部の発泡ゴム層の下層側に積層一体化し、かつ積層一体化した部分の厚さが生機部よりも厚い本発明の補強マットの断面図の一態様である。
【図5】額縁状耳部が中実ゴム層単体からなり、額縁状耳部を構成する中実ゴム層の一部が、生機部の発泡ゴム層と基布層との間に存在して積層一体化し、かつ積層一体化した部分の厚さが生機部よりも厚い本発明の補強マットの断面図の一態様である。
【図6】額縁状耳部が中実ゴム層と発泡ゴム層との積層構造からなり、額縁状耳部を構成する中実ゴム層の一部が、生機部の発泡ゴム層と基布層との間に存在して積層一体化した本発明の補強マットの断面図の一態様である。
【図7】額縁状耳部が中実ゴム層と発泡ゴム層との積層構造からなり、額縁状耳部を構成する中実ゴム層の一部が生機部の発泡ゴム層の下層側に積層一体化した本発明の補強マットの断面図の一態様である。
【図8】額縁状耳部が中実ゴム層と発泡ゴム層との積層構造からなり、額縁状耳部を構成する中実ゴム層の一部が、生機部の発泡ゴム層と基布層との間に存在して積層一体化し、かつ積層一体化した部分の厚さが生機部よりも厚い本発明の補強マットの断面図の一態様である。
【図9】額縁状耳部が中実ゴム層と発泡ゴム層との積層構造からなり、額縁状耳部を構成する中実ゴム層の一部が生機部の発泡ゴム層の下層側に積層一体化し、かつ積層一体化した部分の厚さが生機部よりも厚い本発明の補強マットの断面図の一態様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の補強マット1は、基布層2の裏面に発泡ゴム層7が積層されてなる生機部3と、少なくとも中実ゴム層6からなる額縁状耳部4とから構成されるものであって、中実ゴム層6の一部が生機部3の外周から中心方向にわたって、該発泡ゴム層7の上層または下層と積層一体化していることが重要である。
【0015】
生機部3は、基布層2、発泡ゴム層7から構成される。このような構造をとることで、ダスト除去性と軽量性との両面に優れる。基布層2は、軽量性を有し、マット洗濯時の収縮に関する異方性が少ない点から不織布が好ましい。該不織布の目付は60〜200g/m2で、厚さは、0.5〜2.0mmであることが好ましい。
さらに美観とダスト除去の観点から、パイル糸を基布である不織布にタフテッドカーペット織りした不織布であることがより好ましい。
【0016】
パイル糸および基布層2を構成する繊維は、天然繊維、化学繊維、合成繊維のいずれでもよいが、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等に代表される合成繊維が耐久性と価格の点でより好適である。
さらにパイル糸に関しては、マットを靴拭いマット等で使用する場合には特に、踏みつけによる摩耗と起毛だおれを加味して、ナイロン繊維またはナイロン繊維と他の合成繊維との混綿であることが好ましい。パイル糸の総繊度については、300〜1500dtexが好ましく、さらにパイル糸の目付量600〜1000g/m2で、基布へ打ち込み密度1/8ゲージにて7〜12ステッチでタフテッドカーペット織りされることがより好ましい。
【0017】
なお、基布層2と発泡ゴム層7との接着性を高め、積層化した際の生機部3の強度特性を向上させるために、基布層2の裏面と発泡ゴム層7と接する面にラテックス系プレコート剤を塗布することが好ましい。発泡ゴム層を構成するゴムと化学的に近い物質をラテックス系プレコート剤として選定することがより好ましく、本発明においてはアクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)を選択することが最も好ましい。
【0018】
また、生機部3を構成する発泡ゴム層7については、軽量化とゴム物性面から比重0.5〜1.0(発泡倍率1.2〜2.4倍)の発泡体であることが好ましく、さらには比重0.6〜0.8(発泡倍率1.5〜2.0倍)であることがより好ましい。さらに、本発明の効果を損なわない程度に、発泡ゴム層7の表面に、未発泡ゴム層を0.05〜0.5mmの厚さで有していることも、他層との対剥離性や発泡ゴム層7の耐摩耗性および洗濯乾燥時の利便性を考慮すると好ましい態様の一つである。
発泡ゴム層7を構成するゴムの材質は、前記比重を満足するゴムであれば、合成ゴム、天然ゴム、合成樹脂の如何を問わないが、耐磨耗性、耐永久歪性、耐油性の点から、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)であることが好ましい。特にレンタル用のダストコントロールマットに本発明の補強マットを用いる場合には、塵芥吸着の目的で静電オイルをマットに塗布することもあり、強い耐油性が求められるため、結合アクリロニトリル量が30〜35%のアクリルニトリルブタジエンゴムが特に好ましい。
【0019】
発泡ゴム層7の発泡剤としては、発泡性マイクロカプセルと化学発泡剤とを併用することが好ましく、特に該カプセルの外殻がアクリロニトリルとメタアクリロニトリルの共重合体から成り、外殻の平均粒子径が28〜38μmの範囲であり、イソオクタンおよび/またはイソブタンの発泡性ガスをカプセル内に内包したマイクロカプセルと、化学発泡剤としてアゾ系発泡剤および尿素系発泡助剤等の化学発泡剤とを併せて配合することがより好ましい。
【0020】
発泡ゴム層7を製造する際の、前記したゴムと発泡剤との配合割合は、ゴム100質量部に対し、発泡性マイクロカプセルを0.4〜4.0質量部、かつアゾ系発泡剤と尿素系発泡助剤とをそれぞれ0.5〜3.0質量部配合することが好ましい。
【0021】
額縁状耳部4は、本発明のマットを構成する生機部3と設置面との高さギャップを減らし、マット捲れや歩行者のつまずきを防止する目的で、生機部3の周囲に額縁状に配された少なくとも中実ゴム層6を有するものであり、その組成および製法において特に限定されるものではない。本発明の効果を損なわない限り、未加硫状態の額縁状耳部の一部(例えば、額縁状耳部4と生機部3との境界付近)または全部が未加硫状態の発泡ゴム層7と積層され、加硫成型することで一体化された、中実ゴム層6と発泡ゴム層7との積層構造を有していてもよい。
【0022】
額縁状耳部4の幅は、その機能性と美観より10〜30mmの幅であることが好ましい。また、額縁状耳部を構成するゴムの材質は、額縁状耳部4が中実ゴム層6単独である場合も、中実ゴム層6と発泡ゴム層7との積層構造である場合も、生機部3の発泡ゴム層7とポリマーが同一であることが好ましい。
特にアクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)が額縁状耳部4と生機部3との接合性を確保し、補強マットとしての強度特性や伸度特性との兼ね備える意味でより好ましい。また、レンタル用のダストコントロールマットに本発明のマットを用いる場合には、強い耐油性が得られる点で、額縁状耳部を構成するゴムにも、結合アクリロニトリル量が30〜35%のアクリルニトリルブタジエンゴムを用いることが好ましい。
また、マットの軽量性を確保したい場合には、生機部3を構成する発泡ゴム層7が額縁状耳部4まで延長してもよい。
【0023】
本発明の補強マットでは、洗浄時等に生機部3と額縁状耳部4との剥離が生じることを防止し、さらに靴拭いマット等として使用する場合に、マットが設置場所からずれていくことを防止するために、中実ゴム層6の一部が生機部3の外周から中心方向にわたって、該発泡ゴム層の上層または下層と積層一体化してなる積層構造(以下、生機部周縁積層構造と称することがある)を設けることを特徴としている。
さらに生機部周縁積層構造を構成する中実ゴム層6は、額縁状耳部4を構成する中実ゴム層6から連続した構造である。
ここで、生機部3の外周とは、生機部3を構成する、基布層2および発泡ゴム層7のいずれもが積層されている最外郭部をいう。
【0024】
中実ゴム層6は、生機部3の外周から中心方向にわたり5〜50mmの幅で発泡ゴム層7の上層または下層に積層一体化していることが好ましい。前記の幅とすることにより、額縁状耳部と生機部との曲げ硬さの差が減少し、洗濯時のモミ応力が境界部に集中することが回避されることで、境界における亀裂や千切れの発生を抑え、洗濯等における耐久性が向上する。
生機部3と中実ゴム層6とが積層一体化された生機部周縁積層構造の幅が50mmを超える場合には、マットの重量が大きくなってマット設置時やマット洗浄等のハンドリング性に劣ったり、生機部3と額縁状耳部4との耐剥離特性に劣ったりすることとなり、好ましくない。一方、幅が5mm未満の場合には、マット本体の強度特性が劣る傾向にあり、またマット設置時の位置ずれの問題が発生しやすくなる等の問題があり、好ましくない。
【0025】
生機部3と中実ゴム層6とが積層一体化された箇所の補強マットの厚さは、生機部3の厚さよりも厚いことが好ましく、特に1.0〜3.0mmの範囲で厚いことが、踏み荷重が生機部周縁積層構造に集中することや、突起の滑り止め効果によって、位置ずれが防止できる点から好ましい。厚さの差が1.0mm未満であれば位置ずれ防止の効果が確認できず、厚さの差が3.0mmを超えると歩行時に引っ掛かるという別の問題が発生しやすい。
【0026】
生機部周縁積層構造は、マットの上側から順に、基布層2、発泡ゴム層7、中実ゴム層6の順番であってもよく(図2、図4、図7、図9)、基布層2、中実ゴム層6、発泡ゴム層7の順番であってもよい(図3、図5、図6、図8)。補強マット本体の耐磨耗性を重視する場合は、前者が好ましく、マットを設置する床面に対する発泡ゴム層7の滑り止め防止効果を重視する場合は、後者が好ましい。また、軽量性や耐剥離性が確保される範囲で、各層の間に別のシートが含まれていてもよい。
【0027】
生機部周縁積層構造における、中実ゴム層6と発泡ゴム層7との厚さ比率は、特に指定されることはないが、該構造部の硬さが、額縁状耳部4の硬さと生機部3の硬さとの中間的な硬さとなることが好ましい。中実ゴム層6と発泡ゴム層7との厚さ比率が2:8〜8:2であることが生機部周縁積層構造における硬度特性と軽量性とを両立する点で好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましい。
なお、生機部周縁積層構造における、発泡ゴム層7と中実ゴム層6との厚さ比率は上記比率の範囲内であれば、一定であってもよく、変化してもよい。さらに該構造部において、発泡ゴム層7の厚さと中実ゴム層6の厚さとのいずれかが変化してもよく、いずれもが変化してもよい。
【0028】
本発明の一例である図2、図3、図4、図5は、額縁状耳部4が中実ゴム層6単体で構成されるが、額縁状耳部4が実質的に中実ゴム層6のみで構成される補強マットは洗濯時の過酷な揉みや屈曲への耐久性において特に優れている点で好ましい。
【0029】
本発明の一例である図6、図7、図8、図9は、額縁状耳部4が中実ゴム層6と発泡ゴム層7との積層構造で構成されるが、補強マット本体に対して額縁状耳部の割合が大きい場合においては軽量化と耐久性のバランスを示すという点で好ましい。
【0030】
本発明の一例である図4、図5、図8、図9は生機部周縁積層構造が生機部3と比べて厚い構造を有しているが、生機部周縁積層構造およびその周辺に荷重を集中させことで、補強マットの位置ずれを防止する点で好ましい。
【0031】
図2〜図9に示した各種の本発明の補強マットの一例は、全てにおいて実用に適するものではあるが、額縁状耳部が実質的に中実ゴム層6のみで構成されることで洗濯時の過酷な揉みや屈曲への耐久性を示し、かつ生機部周縁積層構造における厚さが生機部3の厚さよりも大きい構造であって位置ずれを防止する、図4または図5の構造が、軽量で頑健かつ位置ずれを防止する補強マットを提供するという点で、最も好ましい。
【0032】
本発明の補強マットの製造方法については、前記した補強マットの構造が再現され、発明の目的が達成される限りにおいては、特に制限されるものではなく、例えば、基布層2を形成する基布に、予め発泡剤を練り込んだ発泡ゴム層7用のゴム片、および額縁状耳部5を形成する中実ゴム層6用のゴム片とを所望のマット構造に応じて、ゴムを重ね合わせる順番を選定した上で、加圧プレスすることによって得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
実施例1
ポリエステル繊維からなる目付け120g/m2の不織布にパイル繊維として太さ1500dtexのナイロン繊維を前記不織布にパイル目付け量800g/m2でタフテッドカーペットされた基布裏面に、NBRラテックスを塗付したのち、厚さ8.0mm、タテ720mm×ヨコ870mmで裁断して基布層を形成した。また、発泡ゴムとして、結合アクリロニトリル量が32質量%のNBR100質量部に対し、発泡性マイクロカプセル[エクスパンセルマイクロスフェアー(日本フェライト株式会社製)カプセル外殻は、アクリロニトリルとメタアクリロニトリルとの共重合体、平均粒子径28〜38μmの範囲内、イソオクタンとイソブタンの混合物ブレンド比が4:1〜2.5:1の範囲内]3.0質量部、イオウ加硫剤0.8質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤1.8質量部、チウラム系加硫促進剤0.8質量部、を配合し混練、圧延して厚さ0.65mmとし、タテ720mm×ヨコ870mmで裁断して発泡ゴム層を形成した。一方、結合アクリロニトリル量が32質量%のNBR100質量部に対し、イオウ加硫剤0.8質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤1.8質量部、チウラム系加硫促進剤0.8質量部、を配合し混練、圧延して厚さ2.5mm、幅30mm、長さ760mmの状態の中実ゴム片を2つ用意し、幅30mmのうち、基布層のタテ方向の外周から中心方向にわたり10mmの幅で発泡ゴム層の下層に配置して、残りの幅20mmは基布層の外周からはみ出すように露出させ額縁状耳部として配置した。同様に、厚さ2.5mm、幅30mm、長さ850mmの状態の中実ゴム片を2つ用意し、幅30mmのうち、基布層のヨコ方向の外周から中心方向にわたり10mmの幅で発泡ゴム層の下層に配置して、残りの幅20mmは基布層の外周からはみ出すように露出させ額縁状耳部として配置した。
そして、上記積層体の基布層表面側より、積層体全体に対して1kg/cm2加圧プレスの下、170℃で15分間加硫させることにより幅15mm(15mm以上の部分は化粧成型としてカットオフ)の中実ゴム層単体からなる額縁状耳部を有し、図4の構造を有する750mm×900mmの補強マットからなるダストコントロールマット(靴拭いマット)を得た。
得られたダストコントロールマットの生機部周縁積層構造の厚さは9.0mm、生機部の厚さは7.0mm、額縁状耳部の厚さは2.3mmであった。
【0035】
実施例2
実施例1で用いた基布裏面にNBRラテックスを塗布したものを厚さ8.0mm、タテ720mm×ヨコ870mmに裁断して基布層を形成した。また、発泡ゴムとして、結合アクリロニトリル量が32質量%のNBR100質量部に対し、発泡性マイクロカプセル[エクスパンセルマイクロスフェアー(日本フェライト株式会社製)カプセル外殻は、アクリロニトリルとメタアクリロニトリルとの共重合体、平均粒子径28〜38μmの範囲内、イソオクタンとイソブタンの混合物ブレンド比が4:1〜2.5:1の範囲内]3.0質量部、イオウ加硫剤0.8質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤1.8質量部、チウラム系加硫促進剤0.8質量部、を配合し混練、圧延して厚さ0.65mmとし、タテ750mm×ヨコ900mmで裁断して発泡ゴム層を形成した。一方、結合アクリロニトリル量が32質量%のNBR100質量部に対し、イオウ加硫剤0.8質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤1.8質量部、チウラム系加硫促進剤0.8質量部、を配合し混練、圧延して厚さ1.5mm、幅30mm、長さ760mmの状態の中実ゴム片を2つ用意し、幅30mmのうち、基布層のタテ方向の外周から中心方向にわたり10mmの幅で発泡ゴム層と基布層との間に配置して、残りの幅20mmは基布層の外周からはみ出すように露出させ額縁状耳部として配置した。同様に中実ゴム配合を混練、圧延して厚さ1.5mm、幅30mm、長さ850mmの状態の中実ゴム片を2つ用意し、幅30mmのうち、基布層のヨコ方向の外周から中心方向にわたり10mmの幅で発泡ゴム層と基布層との間に配置して20mmが基布層外周からはみ出すように露出させ額縁状耳部として配置した。
そして、上記積層体の基布層表面側より、積層体全体に対して1kg/cm2加圧プレスの下、170℃で15分間加硫させることにより幅15mm(15mm以上の部分は化粧成型としてカットオフ)の発泡ゴム上に中実ゴム層が積層された額縁状耳部を有し、図8の構造を有するタテ750mm×ヨコ900mmの補強マットからなるダストコントロールマット(靴拭いマット)を得た。
得られたダストコントロールマットの生機部周縁積層構造の厚さは8.2mm、生機部の厚さは7.0mm、額縁状耳部の厚さは2.5mmであった。
【0036】
比較例1
実施例1で用いた基布裏面にNBRラテックスを塗布したものを厚さ8.0mm、タテ720mm×ヨコ870mmに裁断し基布層を形成した。また、中実ゴム配合として、結合アクリロニトリル量が32質量%のNBR100質量部に対し、イオウ加硫剤0.8質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤1.8質量部、チウラム系加硫促進剤0.8質量部、を配合し混練、圧延して厚さ1.2mmとし、タテ750mm×ヨコ900mmで裁断して中実ゴム層を形成した。一方、中実ゴム配合を混練、圧延して厚さ1.5mm、幅30mm、長さ760mmの状態の中実ゴム片を2つ用意し、幅30mmのうち、基布層のタテ方向の外周から中心方向にわたり10mmの幅で中実ゴム層と基布層との間に配置して20mmが基布層外周からはみ出すように露出させ額縁状耳部として配置した。同様に中実ゴム配合を混練、圧延して厚さ1.5mm、幅30mm、長さ850mmの状態の中実ゴム片を2つ用意し、幅30mmのうち、基布層のヨコ方向の外周から中心方向にわたり10mmの幅で中実ゴム層と基布層との間に配置して20mmが基布層外周からはみ出すように露出させ額縁状耳部として配置した。
そして、上記積層体の基布層表面側より、積層体全体に対して1kg/cm2加圧プレスの下、170℃で15分間加硫させることにより幅15mm(15mm以上の部分は化粧成型としてカットオフ)の中実ゴム層上に中実ゴムが積層された額縁状耳部を有する、タテ750mm×ヨコ900mmの補強マットからなるダストコントロールマット(靴拭いマット)を得た。
得られたダストコントロールマットに発泡ゴムは全く使用されておらず、したがって生機部および生機部周縁積層構造は存在せず、額縁状耳部の厚さは2.3mmであった。
【0037】
比較例2
実施例1で用いた基布裏面にNBRラテックスを塗布したものを厚さ8.0mm、タテ720mm×ヨコ870mmに裁断し基布層を形成した。また、発泡ゴムとして、結合アクリロニトリル量が32質量%のNBR100質量部に対し、発泡性マイクロカプセル[エクスパンセルマイクロスフェアー(日本フェライト株式会社製)カプセル外殻は、アクリロニトリルとメタアクリロニトリルとの共重合体、平均粒子径28〜38μmの範囲内、イソオクタンとイソブタンの混合物ブレンド比が4:1〜2.5:1の範囲内]3.0質量部、イオウ加硫剤0.8質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤1.8質量部、チウラム系加硫促進剤0.8質量部、を配合し混練、圧延して厚さ0.65mmとし、タテ750mm×ヨコ900mmで裁断して発泡ゴム層を形成した。一方、発泡ゴム配合を混練、圧延して厚さ0.65mm、幅30mm、長さ780mmの状態の発泡ゴム片を2つ用意し、幅30mmが基布層タテ方向の外周からはみ出すように露出させて発泡ゴム層の上層となるよう配置した。同様に発泡ゴム配合を混練、圧延して厚さ0.65mm、幅30mm、長さ930mmの状態の発泡ゴム片を2つ用意し、幅30mmが基布層ヨコ方向の外周からはみ出すように露出させて発泡ゴム層の上層となるよう配置した。
そして、上記積層体の基布層表面側より、積層体全体に対して1kg/cm2加圧プレスの下、170℃で15分間加硫させることにより、基布層の外側に幅15mm(15mm以上の部分は化粧成型としてカットオフ)の発泡ゴム層上に発泡ゴムが積層された構造を有する、タテ750mm×ヨコ900mmの補強マットからなるダストコントロールマット(靴拭いマット)を得た。
得られたダストコントロールマットに中実ゴムは全く使用されておらず、したがって生機部周縁積層構造および額縁状耳部は存在せず、生機部の厚さは7.0mmであった。
【0038】
実施例1、実施例2、比較例2で得たダストコントロールマットの発泡ゴム層の比重は、共に0.65であり、比較例1で得たダストコントロールマットの裏打ち中実ゴム層の比重は1.18であった。各々のマットの総重量は、実施例1が750g、実施例2が730g、比較例1が1170g、比較例2が710gであり、実施例1、実施例2、比較例2、共に比較例1と比べ35%以上の軽量化が為されていることが確認できた。
【0039】
実施例1、実施例2、比較例2で得られたダストコントロールマットの中央部を裁断し、基布層の下層の発泡ゴム層を50倍マイクロスコープで拡大し確認したところ、ガス抜けおよび分散不良による発泡バラツキは見られず、発泡ゴム層は均一な発泡状態であった。
【0040】
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のダストコントロールマットがレンタル・リースマットの用途に供された場合の洗濯耐久性を確認するため、洗濯、脱水、乾燥が出来る大型タンブラー洗濯機にて、洗濯40℃×20分、脱水時間10分、乾燥80℃×15分を1サイクルとして連続洗濯試験を行った結果、実施例1と比較例1は、連続洗濯100回(実用4年相当以上)でも、破れ、波打ち、基布剥離等の異常は全く確認されなかった一方、比較例2では連続洗濯18回(1年相当未満)において生機部と額縁状耳部との境界に沿って発泡ゴム層が裂ける現象が発生した。また、実施例2では実用3年相当を越えた連続洗濯72回で額縁状耳部を構成する積層された発泡ゴム層が部分的に剥離する現象が確認された。
【0041】
洗濯耐久性試験の結果、比較例2は全く実用に適さないこと、実施例2は、3年以上の実用レベルでの洗濯耐久性を有し、実施例1および比較例1は4年以上の洗濯耐久性を有することが確認された。
【0042】
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2が設置された状態での位置安定性を確認するため、各々をフラットな状態のPタイル上に設置し、一定方向からの歩行を100回繰り返し位置の移動状態(進行方向を+、手前側を−)を確認した。
【0043】
確認の結果、実施例1、実施例2、および比較例1は±0であるのに対し、比較例2は−15mmの移動が確認され、生機部に対して生機部周縁積層構造を厚くすることによって、マット重量が軽量であっても位置ずれを防止することが証明された。
【0044】
本発明の補強マットは、基布層の裏面に発泡ゴム層が積層された生機部と該生機部の外周に少なくとも中実ゴム層からなる額縁状耳部が形成されてなる補強マットであって、該中実ゴム層の一部が生機部の外周から中心方向にわたって、該発泡ゴム層の上層または下層と積層一体化していることを特徴とし、亀裂や千切れの発生が少なく、位置ズレを抑制し、軽量化による配送作業の軽減および重量制限のあるタンブラー洗濯機の処理能力の向上、並びに洗濯耐性の向上との両立を求められるレンタル・リースマット用途に最適な補強マットを提供するものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の補強マットは、店舗、事務所、工場建屋、住居、ホテル、病院、学校、その他建物に戸外から室内への履物に付着して侵入する塵埃等を防ぐ、靴拭いを目的としたダストコントロールマットに好適であり、特には、機械洗浄や塵埃吸着オイル等静電オイルの吹きつけ等に対応可能な耐久性と、重量制限のあるタンブラー洗濯処理能力や搬送効率の向上との両立が求められるレンタル・リースマットの用途に最適である。
【符号の説明】
【0046】
1 補強マット
2 基布層
3 生機部
4 額縁状耳部
5 生機部周縁積層構造
6 中実ゴム層
7 発泡ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布層の裏面に発泡ゴム層が積層された生機部と該生機部の外周に少なくとも中実ゴム層からなる額縁状耳部が形成されてなる補強マットであって、該中実ゴム層の一部が生機部の外周から中心方向にわたって、該発泡ゴム層の上層または下層と積層一体化していることを特徴とする補強マット。
【請求項2】
中実ゴム層が生機部の外周から中心方向にわたり5〜50mmの幅で発泡ゴム層の上層側または下層側と積層一体化している請求項1記載の補強マット。
【請求項3】
生機部と中実ゴム層とが積層一体化された補強マットの厚さが、生機部の厚さより1.0〜3.0mm厚い請求項1または2に記載の補強マット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の補強マットからなるダストコントロールマット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−9701(P2013−9701A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142417(P2011−142417)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000104906)クラレプラスチックス株式会社 (52)