説明

補強天然又は集成石板様エレメント及びその多層保護コーティング

【課題】 新規な補強天然又は集成石板様エレメントを提供する。
【解決手段】 本発明の補強天然又は集成石板様エレメントは、
(a)天然石材又は集成石材の基板(1)と、(b)エレメントに作用する薬品及び摩耗性機械的作因に対して前記基板(1)を保護するための多層コーティングとからなり、前記多層コーティングは3個の単一又は複数フィルム形成性組成物層からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然又は集成石板様エレメントに関し、特に、基板大理石又はその他の炭酸カルシウム系岩石からなるタイルボード又はスラブなどのような平坦なエレメントに関する。
【0002】
本発明の第1の側面は、前記の天然又は集成石板様エレメントの耐摩耗性又は耐薬品性が特定の保護コーティングにより顕著に改善されることである。この保護コーティングは、前記天然又は集成石板様エレメントがビルディング又は構造体表面の被覆材として使用され、取設されたときに、当該天然又は集成石板様エレメントの表面又はエレメントが現れる表面に意図的に積重される複数枚の保護層からなる。この石板様エレメントの多層保護コートは、引掻、摩耗及び機械的衝撃に対してばかりでなく、基板構造体に悪影響を及ぼすことができる外部からの化学薬品に対しても基板を保護する。塗布される保護コーティングは、比較的薄い天然又は集成石板(特に大理石及びリサイクル粒子を大量に含む集成石板)も基板として使用可能にする。
【0003】
本発明の実施態様では、保護機能にも拘わらず、仕上面の優れた視認性を可能にする前記多層保護層により保護された仕上面をその表面に有する天然又は集成石板様エレメントが提供される。仕上面には任意のデザインパターン(特に、天然木外観など)を採用できる。
【背景技術】
【0004】
天然及び集成石板エレメントは建築業界で広く使用されている。例えば、フローリング及び壁面パネリングから台所及びカウンター上面まで様々な用途に使用されている。幾つかの天然及び集成石板エレメント(特に、大理石又はその他の炭酸カルシウム系石板類からなる石板エレメント)の主要な欠点の一つは、引掻、摩耗、化学腐食及びUV(紫外線又は紫外光)攻撃に対する抵抗性が比較的低いことである。
【0005】
天然及び集成石板様エレメントを保護するために多くの提案が為されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、天然又は人造石構造部材の表面又はベースに接着剤層を介して接着されたホウ素シリカガラスの保護層の塗布方法が記載されている。この発明は天然又は人造石表面の耐摩耗性及び耐薬品性の両方の解決策を提供するが、ホウ素シリカガラスの薄層を塗布するための解決策は前記特許文献に記載された解決策と著しく異なり、前記特許文献に記載された様な効果は得られない。
【0007】
特許文献2には、スラブ又は石材材料の可視面に補強層を塗布することが記載されている。大理石及び花崗岩のスラブ(特に、薄いスラブ)の場合、補強層は非撚ガラス糸(好ましくはマット形状のもの)及び大気中成分及び化学薬剤の攻撃に対して耐性を有する透明樹脂により構成されている。薄い補強スラブが得られ、前面に沿って耐負屈曲性が著しく向上され、スラブの背面も補強されている場合には、スラブの背面又は可視面に沿って耐正屈曲性も同時に向上される。この特許文献には、耐引掻性又は耐摩耗性を高めるために、石英粉末の非常に微細なガラスの使用も記載されている。また、この特許文献には、最終製品の耐UV性を高めるために、UV吸収剤又は所謂UVスカベンジャーが追補されたエポキシ又はアクリル樹脂の使用も記載されている。
【0008】
ラミネート工業分野では、耐摩耗性表面保護層が広く使用されている。例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6などに記載されている。特許文献7は、ナノ粒子系添加剤を含む木製製品などのような製品類又は自動車の表面の耐引掻性の向上について記載し、また、樹脂、複数のナノ粒子、界面活性剤及び高分子分散剤からなるフィルム形成組成物を開示している。
【0009】
特許文献8は、硬質表面を変性する長期持続性コーティング及びその塗布方法に関する発明であり、硬質表面に塗布する塗料を開示しており、前記塗料は有効量の非光活性ナノ粒子を含有している。特許文献8には、この塗料が花崗岩、大理石、砂岩などのような石表面への塗布にも適していると記載されているが、特許文献8の明細書では主に自動車の車体パネルについて記載され、かつ、自動車の車体パネルが特許請求されている。
【0010】
特許文献9には、架橋性樹脂内に分散された表面処理済ナノ結晶性粒子を含有する透明フィルム形成組成物が記載されている。この透明フィルム形成組成物は、床及びカウンター上面及び自動車パネルなどのような基板上に形成される透明な耐摩耗性コーティングを提供する。
【0011】
特許文献10には、Al層を有する塗布物体の形成方法が記載されている。この塗布は高温及び制御環境下で化学蒸着法(CVD)により行われる。
【0012】
特許文献11には、基板上に易清浄性で耐摩耗性のコーティングを形成するのに使用される組成物が記載されている。この組成物は、フルオロカーボンポリマー成分とエナメル形成成分の混合物からなる。前記エナメル形成成分は約15wt%〜30wt%のAlからなる。このコーティングは主に自動車パネルに適用されるが、セラミック及び石の被覆用としての用途も記載されている。
【0013】
特許文献12には、ハイブリッドコーティング組成物が記載されており、従来技術として、セラミックなどのような基板へ十分に接着する非粘着性高分子コーティングを得るための問題点及びフルオロカーボンポリマートップコートが基板に十分に接着するために、接着剤樹脂を含有する1種類以上のベースコートを塗布するための問題点を避けることが記載されている。本発明における従来技術として、ベースコート及びプライマーコートという用語は、この特別な意味を有する用語として理解される。
【0014】
特許文献13、特許文献14、及び特許文献15は、摩耗から基板を保護するための多層コーティングが配設されたコンクリート基板を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】ドイツ特許公開第102004023153号公報
【特許文献2】米国特許第6205727号明細書
【特許文献3】米国特許第3663341号明細書
【特許文献4】米国特許第3756901号明細書
【特許文献5】米国特許第4255480号明細書
【特許文献6】ドイツ特許公開第2107091号公報
【特許文献7】米国特許公開第2008/0014343号公報
【特許文献8】米国特許第6955843号明細書
【特許文献9】米国特許第6896958号明細書
【特許文献10】欧州特許第1122334号明細書
【特許文献11】欧州特許第1160283号明細書
【特許文献12】米国特許第6896934号明細書
【特許文献13】米国特許第5431962号明細書
【特許文献14】特開昭61−289281号公報
【特許文献15】ドイツ特許公開第3223043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、岩様基板の適当な補強及び保護のために特別に作成された保護多層コーティングを有する天然又は集成石板様エレメント(特に、タイル又はスラブとしての平坦なエレメント)を提供することである。本発明のエレメントは当業者に公知の石板様エレメントよりも薄くすることができる。
【0017】
本発明の別の目的は、前記多層保護コーティングにより覆われた残りの部分に特に木目調の仕上を有する天然又は集成石板様エレメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明は天然又は集成石板様エレメントの耐摩耗性及び耐薬品性の両方を改善する解決策を提供する。この解決策は、天然又は集成石板表面に1個以上の保護層を塗布し、そして、これらに耐衝撃性も付与し、これにより、タイルスラブ又は大型ボードなどのような石板様エレメントを提供する。前記石板様エレメントは、非友好的環境(例えば、侵略的薬剤環境)下のエリアに実装することができ、また、前記エレメントが床に実装される場合には、通行人のステッピングにより発生されるような異なる種類の衝撃に耐えることができる。
【0019】
従って、本発明は補強天然又は集成石板様エレメントを提供する。本発明の補強天然又は集成石板様エレメントは、
(a)天然石材又は集成石材の基板と、
(b)エレメントに作用するであろう薬品及び幾つかの摩耗性の機械的作因に対して前記基板を保護するための多層コーティングと、
からなる。
【0020】
前記多層コーティングは、
(i)引掻保護用の上層、
(ii)耐衝撃性用のクッション中間層、及び
(iii)耐摩耗性用に前記基板に隣接する下層、
を含む3層以上の単一又はマルチフィルムからなる。
【0021】
前記上層はポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂又はこれらの組み合わせからなる群から選択される樹脂内に埋め込まれた耐引掻性ナノ粒子を含む。また、耐摩耗性を付与する前記下層は、Al又は炭化シリコンなどと共にアクリルポリマーを含む。
【0022】
保護多層コーティングは、酸などのような特定の薬品に対する耐性も向上させる。
【0023】
また、多層コーティングは、UVに対する保護性も付与する。このため、多層コーティングはUV安定剤又は抗酸化剤を有する樹脂により形成される。
【0024】
前記耐引掻性ナノ粒子に関して、上層は例えば、SiC、BN、BN、アルミナ又はこれらの組合せを含有する。
【0025】
前記クッション中間層は例えば、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂からなる。
【0026】
前記基板と前記多層コーティングとの間の接着力を高めるために、本発明のエレメントは、基板と前記多層コーティングとの間にプライマーコーティング(下塗)を施す。
【0027】
基板の外観面の優れた可視性を可能にするために、又は所望により基板上に施されたデザインパターンを看取可能にするために、多層コーティングは一般的に、透明又は光透過性である。前記プライマーコーティングが使用される場合には、プライマーコーティングも透明又は光透過性である。
【0028】
前記実施態様に関連して、本発明により提供されるエレメントは、前記プライマーコーティングと前記多層コーティングとの間に、多層コーティングの透明性又は光透過性のお陰で外部から視認できる、デザインパターンを採用する仕上層又は印刷層を包含する。
【0029】
前記デザインパターンの色彩に応じて、本発明のエレメントは前記プライマーコーティングと前記印刷層との間に、前記デザインパターン(例えば、本物の木目調外観)を引き立たせるための背景色(一般的に、白色)による1個以上のペイント層により形成されるベースコートを包含する。
【0030】
前記印刷層は一般的に、前記基板の色又は前記ベースコート層が使用される場合にはベースコート層の色と少なくとも異なる色のペイント層である。
【0031】
前記ペイント層は例えば、水性ペイントを熱乾燥させることにより形成される。
【0032】
前記ペイント層は例えば、ローラーにより前記基板上に塗布し、その後硬化させることにより得られる。
【0033】
用途に応じて、本発明のエレメントは5〜12個の層又はフィルムを有する。前記層又はフィルムの各々は、実験テストの結果に従って本発明者が検討したところ、20〜30g/m及び10〜30ミクロンの範囲内である。良好な性能を得るためには、層全体の厚さは150ミクロン未満である。
【0034】
オプションとして、また、樹脂からなる前記層の基板表面への接着力を高めるために、本発明のエレメントにおいて、前記多層コーティングが配置される基板表面をコロナ放電処理する。
【0035】
前記基板はリサイクル材料(例えば、スラッジ)の集成人造石(厚さ6mm〜30mm)であることもできる。有機又は無機バインダーと共に集成された1枚又は数枚のリサイクル材料(例えば、人造石)も含有できる。
【0036】
好ましい実施態様として、エレメント自体により構成されるか、又は本発明によるエレメントがボードである場合に小さなピースに切断されるかに拘わらず、本発明はスラブ又はタイルを提供する。基板が集成品である場合、本発明は主に大きな面積を被覆する広大なボードを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明により提供されるエレメントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら更に詳細に説明する。
【0039】
図1は本発明の詳細なイメージを示している。図1に図示された本発明の補強天然又は集成石板様エレメントは、
(a)天然石材又は集成石材の基板1と、
(b)エレメントに作用するであろう薬品及び摩耗性機械的作因に対して前記基板1を保護するための概ね透明な又は光透過性の多層コーティングと、
からなる。
【0040】
図1に図示された前記多層コーティングは、複合層を形成する3個の単一フィルムからなる。これらは、
(i)引掻に対する保護用の上層6と、
(ii)耐衝撃性を付与するクッション中間層5と、
(iii)耐摩耗性を付与する、前記基板1に隣接した下層4と、
からなる。
【0041】
図1のエレメントは、前記基板1と前記多層コーティングとの間に、これらの間の接着力を高めるためのプライマーコーティング2aも包含し、プライマーコーティング2aの上部にはデザインパターン(本例では本物の木目調外観)を採用する仕上層又は印刷層3が存在する。
【0042】
前記プライマーコーティング2aと前記印刷層3との間には、前記デザインパターンを引き立たせるための白色ベースコート2bが存在する。
【0043】
図1に示された実施態様は、人目を引かない天然又は集成石(例えば、リサイクル石材から得られた集成石)表面の基板1を示す。この場合、外観面は前記の印刷層3を含むことにより審美的かつ魅力的な表面に変更されている。
【0044】
この場合、例えば、基板1はリサイクルスラッジの集成人造石により形成されている。前記基板はその取扱性を考慮して薄くすることもできる。これは、現に産生されているスラッジ又は集成石製造プロセスからのその他の廃棄材料の再利用に対する環境的に友好的かつ経済的な価値ある解決策を提供する。これにより、廃棄材料の廃棄物処理を避けるか又は著しく軽減することができる。
【0045】
その他の実施態様として、図示されていないが、基板自体が良好な審美的外観を有することもできる。この場合、印刷層3及び前記ベースコート2bは使用されない。樹脂/耐摩耗性粒子多層コーティング4,5,6の透明性のお陰で、天然又は集成石表面の可視外観は全く又は殆ど影響を受けない。従って、製品は優れた製品性能を有しながら、クラシックな天然又は集成石として市販することができる。
【0046】
天然石材及び殆ど樹脂で結合された集成石材の欠点は、天候、更に特定的にはUV光に対する耐性が低いことであり、その結果、時間の経過により品質劣化を生じる。UV安定剤又は酸化防止剤(抗酸化剤)を表面保護層内に添合することにより、UV光に対する耐性は向上される。これらUV安定剤が天然又は集成石板様エレメントの薄い表面保護層内で使用されることにより、最終製品のコストを不合理なほど上昇させること無く、比較的高濃度のUV安定剤を使用できる。例えば、樹脂結合集成石エレメントにおいて、UV劣化から樹脂を十分に保護するために、比較的高濃度のUV安定剤を使用しなければならない。樹脂が集成石マトリックス全体で使用される場合、これは最終製品のコストを著しく増大させる。これに対して、これらUV安定剤を表面保護層だけで使用すれば、これによるコスト増加は著しく低い。
【0047】
本発明は次ぎの2つの方法で、従来の発明と区別される。天然及び集成石エレメントに適用される本発明に比べて、従来技術の発明は耐衝撃性と同様に耐摩耗性(引掻及び摩耗に対する耐性)を提供する解決策を全く開示していない。本発明によれば、樹脂バインダー中に集塊された高耐摩耗性Al粒子が存在する上層6を有する保護多層コーティングを塗布することにより、耐衝撃性と耐摩耗性を同時に付与する。これに対して、樹脂混合物中に埋め込まれた高耐摩耗性Al粒子を用いる耐摩耗性及び耐薬品性に対する従来技術の解決策は単なる予想であり、実際には積層板又は複合板用途でしか使用されていない。これは天然石材及び集成石材と特性的に著しく異なる。
【0048】
積層板又は木質系材料の代わりに集成石に保護表面層を配設する主要な相違点は、その分子構造が著しく異なることである。従って、集成石材へ表面保護層を接着させることは非常に面倒である。樹脂系保護多層コーティング4,5,6と基板1の天然及び集成石表面との間の接着力を高めるために、異なる種類の表面処理法を使用できる。例えば、コロナ放電を使用することにより、集成石表面の表面エネルギーを高めることができる。これにより、集成石表面の極性が高められ、その結果、極性樹脂の接着力が高められる。
【実施例1】
【0049】
前記の天然/集成石の表面の著しい改善効果を検証するために、実験を行った。最初に、コランダム(鋼玉石)粒子を含む市販の無着色オーバーレイ紙を大理石系複合石に異なる種類の樹脂を用いて塗布した。複合大理石の研磨面にオルトフタル酸ポリエステルによりオーバーレイ紙を手作業で塗布した場合、所望の結果が得られなかった。少量の樹脂を用いた場合、オーバーレイ紙は透明な外観を呈さなかった。これに対して、透明な外観が得られるまで大量の樹脂をテストサンプルに塗布した場合、テスト片の上面はポリエステル樹脂により完全に覆われ、元の大理石複合石よりも低い耐引掻性及び表面硬度がもたらされる。アクリル系及びエポキシ系の異なる種類の樹脂を用いてテストを繰り返したが、結果は全く改善されなかった。
【0050】
透明性の結果を改善するために、ダブルベルトプレス処理を繰り返すことによりテストを行った。テストは成功しなかった。ダブルベルトが低圧力(<10バール)の場合、オーバーレイ材料は表面に十分に膠着しなかった。また、ダブルベルトが高圧力(>10バール)の場合、大理石複合材はこの高圧力に耐えられず、破壊された。
【0051】
オーバーレイ紙を用いるテストの結果が不良なので、石英粉末のような高耐摩耗性粒子を異なる種類の樹脂と異なる割合で混合することからなる新たな概念に基づいてテストを行った。ポリエステル樹脂マトリックスに対して石英粉末を5wt%含有する混合物を大理石複合石表面に塗布すると、完全に透明な保護ラッカーが得られた。石英粉末の配合量が低い場合、モース硬度スケールが2〜3の表面硬度を有する元の大理石複合石片に比べて、表面硬度(モース硬度スケール<3)は改善されなかった。石英粉末の配合量を50%にまで高めた場合、モース硬度は改善された。しかし、表面層は不透明になった。従って、特定の用途には無益である。アクリル系及びエポキシ系の異なる樹脂で同様なテストを行ったが、テスト結果は同様であるか又は悪くなった。
【0052】
異なる複合材料の数枚の“マイクロ層”を複合大理石表面に塗布し、最後には図1に示されるような本発明により提供されるエレメントを形成することからなる新たなテストを計画した。各々僅か数ミクロンの数枚の層(この場合には、層2a、2b、3、4、5及び6)を塗布するために、ラッカーローラ塗布装置を使用した。
【0053】
耐引掻性についてテスト標準UNE・EN・438−2を適用することにより、個々のテストは、表面保護層で処理された大理石複合石は1.7Nから6.0Nに増大したことを示した。このテスト結果は、テスト片に対して視認可能な引掻傷をつけるには、無保護大理石系複合材に比べて、保護テスト片は殆ど4倍超の高い圧力が必要であることを意味する。
【0054】
耐摩耗性についてテスト標準UNE48250:1922を適用することにより、個々のテストは、表面保護層により処理された大理石複合石の摩耗量が106mg/1000サイクルから56mg/1000サイクルに減少したことを示した。このテスト結果は、同じ摩耗サイクル量が保護大理石複合石に適用された場合、元の無保護大理石複合石に比べて、半分量の材料しかテスト片から除去されないことを意味する。
【0055】
衝撃吸収性能に関するテストも行った。その結果、中間層5が存在するお陰で、本発明のエレメントは優れた衝撃吸収性能を有することが示された。
【0056】
これらのテストを総括する結論は、本明細書に記載された多層保護コーティングを塗布することにより、耐摩耗性、耐引掻性及び耐衝撃性の全てが著しく改善されることである。
【0057】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0058】
1 天然石材又は集成石材の基板
2a プライマーコーティング
2b ベースコート
3 仕上層又は印刷層
4 下層
5 クッション中間層
6 上層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)天然石材又は集成石材の基板(1)と、
(b)エレメントに作用する薬品及び摩耗性機械的作因に対して前記基板(1)を保護するための多層コーティングと、
からなり、
前記多層コーティングは、
(i)ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂又はこれらの組み合わせからなる群から選択される樹脂内に埋め込まれた耐引掻性ナノ粒子を含む、引掻保護性を付与する上層(6)と、
(ii)エポキシ樹脂又はアクリル樹脂からなり、耐衝撃性を付与するクッション中間層(5)と、
(iii)Al粒子又は炭化珪素粒子等と共にアクリルポリマーを含有する、耐摩耗性を付与するための、前記基板(1)に隣接した下層(4)と、
を含む少なくとも3個の単一又は複数フィルム形成性組成物層(4〜6)からなる、
ことを特徴とする補強天然又は集成石板様エレメント。
【請求項2】
前記耐引掻性ナノ粒子は、SiC、BN、BN、アルミナ又はこれらの組合せからなる、
ことを特徴とする請求項1記載のエレメント。
【請求項3】
前記基板(1)と前記多層コーティングとの間に、これらの間の接着力を高めるためのプライマーコーティング(2a)を更に有する、
ことを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載のエレメント。
【請求項4】
前記多層コーティング(4〜6)は概ね透明である、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエレメント。
【請求項5】
前記プライマーコーティング(2a)と前記多層コーティング(4〜6)との間に、デザインパターンを採用する仕上層又は印刷層(3)を更に有し、前記仕上層の優れた視認性を可能にするため、前記多層コーティング(4〜6)は透明又は光透過性である、
ことを特徴とする請求項3に記載のエレメント。
【請求項6】
前記プライマーコーティング(2a)と前記印刷層(3)との間に、前記デザインパターンを引き立たせるための背景色を有する1個以上のペイント層により形成されるベースコート(2b)を更に有し、前記ペイント層又は層類(2b,3)は熱乾燥水性ペイントにより形成される、
ことを特徴とする請求項5に記載のエレメント。
【請求項7】
前記デザインパターンは本物の木目調外観を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のエレメント。
【請求項8】
前記層は前記基板(1)上に堆積させ、次いで、硬化させることにより得られる、
ことを特徴とする請求項6に記載のエレメント。
【請求項9】
前記層又はフィルムの各々は20〜30g/m及び10〜30ミクロンであるのものである、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のエレメント。
【請求項10】
樹脂からなる前記層類の前記基板表面への接着力を高めるために、前記多層コーティングが配置される基板表面はコロナ放電処理が施される、
ことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のエレメント。
【請求項11】
多層コーティングはUV保護性も有し、前記UV保護性を付与するために、前記多層コーティングはUV安定剤又は酸化防止剤成分を有する樹脂を含有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレメント。
【請求項12】
前記エレメントはスラブ又はタイルである、
ことを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載のエレメント。
【請求項13】
前記基板(1)は人造石又はスラッジのリサイクル材料集成体である、
ことを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載のエレメント。
【請求項14】
前記基板の厚さは6mm〜30mmの範囲内である、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載のエレメント。

【図1】
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【公表番号】特表2012−516279(P2012−516279A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546989(P2011−546989)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000152
【国際公開番号】WO2010/086713
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511181290)シリカリア,エス.エル. (2)
【Fターム(参考)】