説明

補強材の塗布方法、補強材の塗布装置、および薄板補強構造

【課題】簡単な構成で、塗布された補強材が硬化する際の収縮により薄板が変形するのを防止し、もって薄板の外観を維持することができる補強材の塗布方法を提供する
【解決手段】本発明の補強材の塗布方法は、薄板Pに補強主部Raを塗布するときにその側縁に収縮量減少部10bを塗布する。収縮量減少部10bは、補強主部10aの表面から連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成され、補強主部Raの両側縁にそれぞれ塗布される。補強主部Raの側縁に、この補強主部Raから離れるにしたがって漸次厚みが減少するようにテーパ状の収縮量減少部Rbが形成されていることにより、この収縮量減少部Rbの厚みが補強主部Raから離れるほど少なくなるためにその収縮による歪みが少なくなる。したがって、補強主部Raの収縮などによる歪みも緩和され、薄板Pの急激に歪むような変形が抑止され、意匠面の外観が損なわれることがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強材の塗布方法、補強材の塗布装置、および薄板補強構造に関し、特に、例えば自動車のボデーに使用される鋼板などの薄板を補強するための薄板に補強材を塗布する方法、薄板に補強材を塗布するための装置、および薄板に補強材を塗布してなる薄板補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄板として例えば自動車のボデーに使用される鋼板では、軽量化を図るとともに、剛性を向上させ耐デント性を高めるなどのために、裏面の補強性樹脂塗装膜を形成することが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、薄肉鋼板の裏面に補強性樹脂塗膜層が形成されている薄肉鋼板補強構造体であって、前記補強性樹脂塗膜層が、エポキシ樹脂系塗料(軟質タイプのみを除く。)で形成されていること、さらには、前記補強性樹脂塗膜層がスプレー塗布により形成されてなることなどを特徴とする薄肉鋼板補強構造体が開示されている。
【0004】
そして、特許文献1には、「エポキシ樹脂系塗料を構成する主剤と硬化剤を混合タンクで混合して、エアスプレー等により、吊り下げたバックドア12のアウターパネル(被塗布体)12a等の補強必要部位Aに噴霧塗布する」こと(0043)、「適用可能な補強部位としては、図2に示す各フロントドア14、リアドア16、クォータパネル18の各補強必要部位(斜線部位)Aに適用できる」こと(0044)、「エポキシ樹脂が加熱硬化タイプである場合に、例えば、150〜200℃×30〜10分の硬化条件で硬化させる」こと(0045)、「スプレーで塗布して補強塗膜を形成した場合は、周縁の塗膜厚が徐変可能なため、薄板鋼板に樹脂収縮によるヒケや歪みが発生し難い」こと(0046)などが記載されている。さらに、特許文献1には、「水平においた薄板のSPCC鋼板(150mm長×25mm幅×0.8mm厚さ)20の周囲に堰を設け、厚さ2mmの厚さでスプレー塗布した。そして、塗布して1時間経過後、表示の条件で加熱硬化させて、補強性樹脂塗膜層10を形成した」こと(0057)なども記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−166503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、水平においた薄板の周囲に堰を設けてエポキシ樹脂塗料など補強性樹脂塗膜層をスプレー塗布すると、図10に示すように、その塗布された補強性樹脂塗膜層R’の縁部が堰と対応して薄板Pの表面に対して略垂直の側壁が形成されることとなる。そして、補強性樹脂塗膜層R’は硬化する際に図11に矢印で示すように収縮するが、この収縮よって薄板Pの表面の補強性樹脂塗膜層R’を塗布された端縁と塗布されていない部分との境界と対応する位置が急激に歪むように変形し、外観が損なわれるという問題があった。さらに、薄板に塗布され硬化した補強性樹脂塗膜層が温度変化による収縮や膨張する場合にも、上述したような薄板の変形を引き起こすこととなる。
【0007】
また、特許文献1には、上述したように、補強性樹脂塗膜層をスプレーで塗布して補強塗膜を形成した場合は、周縁の塗膜厚が徐変可能なため、薄板鋼板に樹脂収縮によるヒケや歪みが発生し難いなどと記載されているが(0046)、補強性樹脂塗膜層をただ単にスプレーで塗布して周縁の塗膜厚を徐変可能としただけでは、補強性樹脂塗膜層が硬化するときの収縮などによる薄板の表面の変形を防止するには不充分であり、薄板の外観を維持することができなかった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、塗布された補強材が硬化する際の収縮により薄板が変形するのを防止し、もって薄板の外観を維持することができる補強材の塗布方法を提供することを目的とする。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、塗布した補強材が硬化する際の収縮により薄板が変形するのを防止し、もって薄板の外観を維持することができる補強材の塗布装置を提供することを目的とする。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、塗布した補強材が硬化する際の収縮により薄板が変形するのを防止し、もって薄板の外観を維持することができる薄板補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の補強材の塗布方法に係る発明は、上記目的を達成するため、薄板に補強材を塗布する方法であって、補強主部を塗布するときにその側縁に収縮量減少部を塗布することを特徴とするものである。
請求項2の補強材塗布装置に係る発明は、上記目的を達成するため、薄板に補強材を塗布するための装置であって、補強主部を塗布する補強主部塗布用ノズルと、該補強主部塗布用ノズルの側部に隣接して配設され収縮量減少部を塗布する収縮量減少部塗布用ノズルとを備えていることを特徴とするものである。
請求項3の薄板補強構造に係る発明は、上記目的を達成するため、薄板に補強材を塗布してなる薄板補強構造であって、補強材が、薄板の裏面の補強必要部位に形成された補強主部と、該補強主部の側縁に形成された収縮量減少部とにより構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、補強主部を塗布するときにその側縁に収縮量減少部を塗布するという簡単な構成により、塗布された補強材が硬化する際の収縮により薄板が変形するのを防止して薄板の外観を維持することが可能な補強材の塗布方法を提供することができる。
請求項2に係る発明によれば、補強主部を塗布する補強主部塗布用ノズルと、該補強主部塗布用ノズルの側部に隣接して配設され収縮量減少部を塗布する収縮量減少部塗布用ノズルとを備えているという簡単な構成により、塗布された補強材が硬化する際の収縮により薄板が変形するのを防止して薄板の外観を維持することが可能な補強材の塗布装置を提供することができる。
請求項3に係る発明によれば、補強材が、薄板の裏面の補強必要部位に形成された補強主部と、該補強主部の側縁に形成された収縮量減少部とにより構成されているという簡単な構成により、塗布された補強材が硬化する際の収縮により薄板が変形するのを防止して薄板の外観を維持することが可能な薄板補強構造を提供することができる。
【0011】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項が請求項2に相当し、(8)項が請求項3に相当する。
【0012】
(1) 薄板に補強材を塗布する方法であって、
補強主部を塗布するときにその側縁に収縮量減少部を塗布することを特徴とする補強材の塗布方法。
【0013】
(1)項に記載の発明では、薄板に塗布される補強材を、補強主部とその側縁に塗布した収縮量減少部とにより一体に構成して、補強主部を塗布するときにその側縁に収縮量減少部を塗布することにより、補強材が硬化する際に補強主部の収縮量をその側縁の収縮量減少部が減少させるため、補強材を塗布された薄板が変形するのを防止して薄板の外観を維持することができる。
【0014】
(2) 収縮量減少部を、補強主部の表面から連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成することを特徴とする(1)項に記載の補強材の塗布方法。
【0015】
(2)項に記載の発明では、(1)項に記載の発明において、収縮量減少部を、補強主部の表面から連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成することにより、補強材が硬化する際に補強主部の収縮量を確実に減少させることができる。
【0016】
(3) 補強主部の両側縁に収縮量減少部をそれぞれ塗布することを特徴とする(1)または(2)項に記載の補強材の塗布方法。
【0017】
(3)項に記載の発明では、(1)または(2)項に記載の発明において、補強主部の両側縁に収縮量減少部をそれぞれ塗布することにより、補強材が硬化する際に補強主部の収縮量を確実に減少させることができるとともに、補強主部の両側縁に収縮量減少部を同時に塗布するために工程数を少なくすることができる。
【0018】
(4) 薄板に補強材を塗布するための装置であって、
補強主部を塗布する補強主部塗布用ノズルと、
該補強主部塗布用ノズルの側部に隣接して配設され収縮量減少部を塗布する収縮量減少部塗布用ノズルとを備えていることを特徴とする補強材塗布装置。
【0019】
(4)項に記載の発明では、補強主部塗布用ノズルとその側部に隣接して配設された収縮量減少部塗布用ノズルとを備えていることにより、補強主部とその側縁に収縮量減少部が塗布されて補強材を構成する。そのため、塗布された補強材が硬化する際に補強主部の収縮量をその側縁の収縮量減少部が減少させることとなり、補強材を塗布された薄板が変形するのを防止して薄板の外観を維持することができる。
【0020】
(5) 収縮量減少部塗布用ノズルが、補強主部塗布用ノズルから連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成されていることを特徴とする(4)項に記載の補強材塗布装置。
【0021】
(5)項に記載の発明では、(4)項に記載の発明において、収縮量減少部塗布用ノズルが、補強主部塗布用ノズルから連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成されていることにより、収縮量減少部は、補強主部の表面から連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成される。そのため、補強材が硬化する際に補強主部の収縮量を確実に減少させることができる。
【0022】
(6) 補強主部塗布用ノズルの両側縁に収縮量減少部塗布用ノズルがそれぞれ配設されていることを特徴とする(4)または(5)項に記載の補強材の塗布装置。
【0023】
(6)項に記載の発明では、(4)または(5)項に記載の発明において、補強主部塗布用ノズルの両側縁に収縮量減少部塗布用ノズルがそれぞれ配設されていることにより、一度の工程で、補強主部の両側縁に収縮量減少部を同時に塗布して補強材を構成することができる。そのため、塗布された補強材が硬化する際に補強主部の収縮量をその両側縁の収縮量減少部が確実に減少させることができ、補強材を塗布された薄板が変形するのを防止して薄板の外観を維持することができる。
【0024】
(7) 補強主部塗布用ノズルと収縮量減少部塗布用ノズルとが独立して補強材の供給を制御することが可能であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれか一項に記載の補強材の塗布装置。
【0025】
(7)項に記載の発明では、補強主部塗布用ノズルと収縮量減少部塗布用ノズルとが独立して補強材の供給を制御することが可能であることにより、補強主部と収縮量減少部を同時に塗布することができ、また、必要に応じて補強主部と収縮量減少部のいずれか一方のみを塗布することができる。
【0026】
(8) 薄板に補強材を塗布してなる薄板補強構造であって、
補強材が、薄板の裏面の補強必要部位に形成された補強主部と、該補強主部の側縁に形成された収縮量減少部とにより構成されていることを特徴とする薄板補強構造。
【0027】
(8)項に記載の発明では、補強材が、薄板の裏面の補強必要部位に形成された補強主部と、該補強主部の側縁に形成された収縮量減少部とにより構成されていることにより、塗布された補強材が硬化する際に補強主部の収縮量をその側縁の収縮量減少部が減少させることができるため、補強材を塗布された薄板が変形するのを防止して薄板の外観を維持することができる。
【0028】
(9) 収縮量減少部が、補強主部の表面から連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成されていることを特徴とする(8)項に記載の薄板補強構造。
【0029】
(9)項に記載の発明では、(8)項に記載の発明において、収縮量減少部が、補強主部の表面から連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成されていることにより、補強材が硬化する際に補強主部の収縮量を確実に減少させることができる。
【0030】
(10) 補強主部の全周に亘る側縁に収縮量減少部がそれぞれ配設されていることを特徴とする(8)または(9)項に記載の薄板補強構造。
【0031】
(10)項に記載の発明では、(8)または(9)項に記載の発明において、補強主部の全周に亘る側縁に収縮量減少部がそれぞれ配設されていることにより、補強材が硬化する際に補強主部の収縮量を確実に減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
最初に、本発明の補強材の塗布装置の実施の一形態を、図1〜図4に基づいて説明する。同一符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の塗布装置は、概略、薄板Pに補強材Rを塗布するためのものであって、補強主部Raを塗布する補強主部塗布用ノズル10aと、この補強主部塗布用ノズル10aの側部に隣接して配設され収縮量減少部Rbを塗布する収縮量減少部塗布用ノズル10bとを備えている。
そして、収縮量減少部塗布用ノズル10bは、補強主部塗布用ノズル10aから連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成されており、また、補強主部塗布用ノズル10aの両側縁にそれぞれ配設されている。
さらに、補強主部塗布用ノズル10aと収縮量減少部塗布用ノズル10bとは、それぞれ独立して補強材を塗布することができるように制御するためにそれぞれバルブ11を備えている。
【0033】
図1に示すように、塗布装置は、補強材Rを塗布する塗布機1と、補強材Rを貯留するタンク5と、このタンク5から塗布機1へと補強材Rを供給するポンプ6と、補強材Rを塗布する部分に応じて塗布機1を移動させるロボット2と、塗布機1による補強材Rの塗布を制御する塗布機コントローラ3と、塗布機コントローラ3の指示に従ってロボット2を制御するロボットコントローラ4とを備えている。
【0034】
塗布機1は、図2に示すように、ポンプ6によってタンク5から管路50を介して供給される補強材Rを圧送するためのブースタ12と、このブースタ12を駆動するためのモータ13と、ブースタ12によって圧送された補強材Rを吐出するノズル10と、ノズル10からの補強材Rの吐出を制御するバルブ11とを備えている。バルブ11は、この実施の形態の場合、エアなどの圧力流体によって開閉動作を行うものが採用されており、エア供給管14が接続されている。そして、ブースタ12を駆動するためのモータ13と、バルブ11の開閉動作用のためのエアなどの圧力流体の供給・停止は、塗布機コントローラ3から送られる信号および駆動電源により制御される。
【0035】
ノズル10は、図3に示すように、補強主部Raを塗布する補強主部塗布用ノズル10aと、この補強主部用ノズル10aの側部に隣接して配設され収縮量減少部Rbを塗布する収縮量減少部塗布用ノズル10bとを備えている。収縮量減少部塗布用ノズル10bは、補強主部塗布用ノズル10aから連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成されている。収縮量減少部塗布用ノズル10bは、補強主部塗布用ノズル10aの両側縁にそれぞれ配設されている。バルブ11は、補強主部塗布用ノズル10aと各収縮量減少部塗布用ノズル10bとにそれぞれ設けられている。なお、本発明におけるノズル10は、上述した実施の形態に限定されることなく、図4に示したように、ノズル10全体を断面が台形形状となるように形成し、この断面台形形状のノズル10の内部に仕切壁10cを設けて補強主部塗布用ノズル10aと収縮量減少部塗布用ノズル10bを構成することもできる。また、補強主部塗布用ノズル10aの両側部に収縮量減少部塗布用ノズル10bを配設することに限定されることはなく、補強主部塗布用ノズル10aの一方の側部のみに収縮量減少部塗布用ノズル10bを配設することもできる。
【0036】
次に、本発明の補強材の塗布方法の実施の一形態を、上述したように構成された塗布装置を用いる場合によって、その作動とともに説明する。同一符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の補強材の塗布方法は、概略、薄板Pに補強材Rを塗布する方法であって、補強主部Raを塗布するときにその側縁に収縮量減少部10bを塗布するものである。
そして、収縮量減少部10bを、補強主部10aの表面から連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成するものである。さらに、補強主部Raの両側縁に収縮量減少部Rbをそれぞれ塗布するものである。
【0037】
薄板Pに補強材Rを塗布するに際しては、液状の補強材Rがタンク5に貯留されており、補強材Rを塗布される薄板Pが所定の位置に位置決め固定されている。補強材Rは、例えば、エポキシ系で、硬化する前の粘度は、40℃でのせん断速度が430sec-1の条件で80−120Pa・s程度の液状のものが採用される。タンク5に貯留された補強材Rはポンプ6を駆動することによって塗布機1のブースタ12に供給される。バルブ11には圧力流体がエア供給管14を介して供給可能となっている。塗布機コントローラ3は、補強材Rの塗布開始位置に塗布機1のノズル10を位置させるようロボットコントローラ4に信号を出力してロボット2を制御し、塗布機1のブースタ12のモータ13に駆動電力を供給するとともに、各ノズル10から補強材Rを吐出させるようバルブ11を開かせるための信号を出力する。
【0038】
図3に示した補強主部塗布用ノズル10aと収縮量減少部塗布用ノズル10bの双方のバルブ11が同時に開状態とされて補強材Rが吐出されると、薄板Pの意匠面を構成しない表面(すなわち裏面)上には、図5および図6に示すように、断面矩形の補強主部Raの両側縁に、補強主部Raの表面から連続し且つ側方に向かって漸次厚さが減少するように断面三角形状の収縮量減少部Rbが隣接して、それぞれ確実に同時に塗布されることとなる。なお、図9に示すように、補強主部Raの全周に亘る側縁に収縮量減少部Rbを形成するように補強材Rを塗布する場合には、塗布開始位置から塗布終了位置に向かって図5に示したように補強主部Raの両側縁に収縮量減少部Rbを形成し、その後、ロボット2の駆動により収縮量減少部塗布用ノズル10bを塗布開始位置および/または塗布終了位置の一方の側縁側に位置させて、対応する収縮量減少部塗布用ノズル10bのバルブ11のみを開状態とするよう独立制御して補強材Rを吐出させながら、塗布開始位置および/または塗布終了位置の他方の側縁側に向かって移動させることにより、塗布開始位置および/または塗布終了位置の端縁のみに収縮量減少部Rbを塗布することができる。なお、薄板に塗布された補強材Rは、必要に応じて焼付けなどの工程により硬化される。
【0039】
次に、本発明の薄板補強構造の実施の一形態を、上述したように構成された補強材Rの塗布装置を使用して、上述したように構成された補強材Rの塗布方法を実施して、薄板Pとして自動車のボデーを構成するサイドメンバの補強位置に補強材Rを塗布する場合により説明する。同一符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の薄板補強構造は、概略、薄板Pに補強材Rを塗布してなるものであって、補強材Rが、薄板Pの裏面の補強必要部位に形成された補強主部Raと、この補強主部Raの側縁に形成された収縮量減少部Rbとにより構成されており、収縮量減少部Rbが、補強主部Raの表面から連続して厚みが漸次減少する断面三角形状に形成されており、補強主部Raの全周に亘る側縁に収縮量減少部Rbがそれぞれ配設されている。
【0040】
図8および図9に示すように、自動車のボデーを構成するサイドメンバPの意匠面を構成する外側とは反対側となる裏面の補強必要部位には、補強主部塗布用ノズル10aと収縮量減少部塗布用ノズル10bから吐出されることにより、補強主部Raと、その全周に亘る側縁に連続して形成された収縮量減少部Rbとからなる補強材Rが塗布されている。この塗布された補強材Rは、硬化するときや周囲の温度変化などによって収縮し歪みを生じさせようとする。しかしながら、本発明による薄板補強構造では、図7に示すように、補強主部Raの側縁に、この補強主部Raから離れるにしたがって漸次厚みが減少するようにテーパ状の収縮量減少部Rbが形成されていることにより、この収縮量減少部Rbの厚みが補強主部Raから離れるほど小さくなるためにその収縮による歪みが少なくなる。したがって、補強主部Raの収縮などによる歪みも緩和され、その結果として、薄板Pの急激に歪むような変形が抑止され、意匠面の外観が損なわれることがなくなる。
【0041】
薄板Pの厚みが例えば1.0〜1.4mmで、補強主部Raの厚み(図6においては、垂直方向の長さ)が2mmの場合、収縮量減少部Rbの幅(図6においては薄板Pと接している水平方向の長さ)が20mm程度に形成される。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることはなく、自動車のボデーを構成するサイドメンバ以外のドアなどや、自動車のボデー以外の薄板Pに補強材Rを塗布する場合にも適用することができる。また、薄板Pに塗布する補強材Rの形状は矩形の他に、台形、平行四辺形、円形や楕円形など、任意の形状に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の塗布装置の全体の構成を説明するために示した実施の一形態を示す概念図である。
【図2】塗布機の全体を説明するために示した側面図である。
【図3】本発明のノズルの実施の一形態を示す端面図である。
【図4】本発明のノズルの別の実施の形態を示す端面図である。
【図5】本発明のノズルにより塗布された補強材の平面図である。
【図6】本発明のノズルにより塗布された補強材の正面図である。
【図7】本発明により塗布された補強材の収縮を説明するために示した概念図である。
【図8】本発明により補強材が塗布される薄板の一例として自動車のボデーを構成するサイドメンバを示した正面図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】従来の技術により薄板に塗布された補強材を示す正面図である。
【図11】従来の技術により塗布された補強材が収縮し薄板が変形する状態を説明するために示した概念図である。
【符号の説明】
【0044】
P:薄板、 R:補強材、 Ra:補強主部、 Rb:収縮量減少部、 1:塗布機、 2:ロボット、 10:ノズル、 10a:補強主部塗布用ノズル、 10b:収縮量減少部塗布用ノズル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板に補強材を塗布する方法であって、
補強主部を塗布するときにその側縁に収縮量減少部を塗布することを特徴とする補強材の塗布方法。
【請求項2】
薄板に補強材を塗布するための装置であって、
補強主部を塗布する補強主部塗布用ノズルと、
該補強主部塗布用ノズルの側部に隣接して配設され収縮量減少部を塗布する収縮量減少部塗布用ノズルとを備えていることを特徴とする補強材塗布装置。
【請求項3】
薄板に補強材を塗布してなる薄板補強構造であって、
補強材が、薄板の裏面の補強必要部位に形成された補強主部と、該補強主部の側縁に形成された収縮量減少部とにより構成されていることを特徴とする薄板補強構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−72660(P2009−72660A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242370(P2007−242370)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】