説明

補強材及び温室

【課題】 柱材を内方向へ引っ張る引張り作用によって生じる柱材の変形や傾きを簡易かつ効果的に防止する。
【解決手段】 本発明の補強材は、温室の外周部に配設される柱材30に対して略平行に配置される圧縮応力発生部10と、該圧縮応力発生部10と前記柱材30との間に設けられる桟部材20とを備え、前記柱材30の外側に取り付けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室の外周部に配設される柱材の補強材及びそれを具備する温室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温室において栽培される植物の茎を、植物の成長に合わせて誘引する誘引装置が知られている(例えば、特開2000−209955号公報、特開2005−229933号公報参照)。誘引装置は、概して、誘引部と支持部とを有して構成される。誘引部は、支持部に吊り下げられ、植物の茎を誘引するものである。支持部は、ワイヤ等から構成される。支持部の両端は、温室の外周部に配設された柱材同士の間に架設された支持部材によって支持されている。
【0003】
ところで、温室の柱材は、温室の外周部に配設されるものも温室の内部に配設されるものと区別されることなく、同じ太さ(同じ断面積)を有するものが使用されている。また、柱材としては、採光性を高めるため、極力細い(断面積が小さい)ものが使用されている。柱材の太さ(断面積)は、柱材が設置される基礎の大きさ(特に平面の面積)に関係し、柱材の剛性を高めるために、その太さを太くするほど、基礎の平面の面積が大きくなる。しかし、基礎の平面の面積が大きくなると、その分栽培面積が減少する。従って、より大きな栽培面積を確保する観点からも、極力細い柱材の使用が望まれている。
【0004】
もっとも、上記した誘引装置を温室に設置した場合には、温室の外周部に配設された柱材が誘引装置を構成する支持部によって内方向へ引っ張られることになるため、細い(断面積が小さい)柱材では、変形や傾きが生じ易くなる。この問題を解消するため、当初から誘引装置の設置が予定されている温室では、柱材として、太い(断面積が大きい)ものを使用するよう設計することができる。しかしながら、太い(断面積が大きい)柱材の使用は、建築コストの増大、採光性の低下、栽培面積の減少などといった問題を招来する。
【0005】
一方、温室において栽培される植物の種類を変更するケースは多分にある。この場合に、既存の温室に誘引装置を後付けすると、柱材が細く剛性が不足するために、柱材に変形や傾きが顕著に発生する。しかしながら、これを修復するために、温室の外周部に配設された柱材のみを太い(断面積が大きい)ものに交換するだけでも、大掛かりな工事が必要となり、その作業は概して容易ではない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−209955号公報
【特許文献2】特開2005−229933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、柱材を内方向へ引っ張る引張り作用によって生じる柱材の変形や傾きを簡易かつ効果的に防止することができる補強材及びそれを具備する温室を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、以下の補強材及び温室を提供する。
(1)温室の外周部に配設される柱材に対して略平行に配置される圧縮応力発生部と、該圧縮応力発生部と前記柱材との間に設けられる桟部材とを備え、前記柱材の外側に取り付けられることを特徴とする補強材。
(2)前記桟部材の少なくとも1つは、前記柱材に対する引張り作用を惹起する部材を支持する支持部材を支持するものであることを特徴とする前記(1)に記載の補強材。
(3)前記(1)又は(2)に記載の補強材を備えることを特徴とする温室。
【発明の効果】
【0009】
前記(1)に記載の本発明によれば、温室の外周部に配設される柱材に対して略平行に配置される圧縮応力発生部と、該圧縮応力発生部と前記柱材との間に設けられる桟部材とを備え、前記柱材の外側に取り付けられるため、前記柱材を内方向へ引っ張る引張り作用によって前記柱材に生ずる引張応力を弱めることができる。従って、柱材を内方向へ引っ張る引張り作用によって生じる柱材の変形や傾きを効果的に防止することが可能となる。また、その構造上、柱材に対して後付けが可能であるため、柱材を交換する場合等と比較して簡易に柱材の変形や傾きを防止することが可能となる。
前記(2)に記載の本発明によれば、前記桟部材の少なくとも1つは、前記柱材に対する引張り作用を惹起する部材を支持する支持部材を支持するものであるため、前記支持部材の取り付けを容易なものとすることが可能となる。
前記(3)に記載の本発明によれば、前記(1)又は(2)に記載の補強材を備えるため、温室の外周部に配設される柱材を内方向へ引っ張る引張り作用によって生じる前記柱材の変形や傾きを簡易かつ効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る補強材を柱材に取り付けた状態を示す図である。この図に示したように、本実施例に係る補強材は、圧縮応力発生部10及び桟部材20を有して構成される。
【0012】
圧縮応力発生部10は、鋼材からなる棒状体であって、その両端には、所定角度で曲げ加工された連結部10aを有する。圧縮応力発生部10は、連結部10aが温室の外周部に配設される柱材30に取り付けられることにより、該柱材30に対して、略平行に配置される。
【0013】
桟部材20は、圧縮応力発生部10と柱材30との間に、1又は2以上設けられる。桟部材20も圧縮応力発生部10と同様に、鋼材からなる棒状体である。桟部材20は、圧縮応力発生部10に対して略直交するように配設される。
【0014】
桟部材20が本実施例のように複数設けられる場合であっても、桟部材20の少なくとも1つは、柱材30に対する引張り作用を惹起する部材を支持する支持部材40を支持するものであることが好ましい。桟部材20が支持部材40を支持するものとして機能することにより、支持部材40を取り付ける際の位置決めが容易となり、支持部材40を簡易に取り付けることが可能になる。
【0015】
ここで、「柱材30に対する引張り作用を惹起する部材」とは、温室の外周部に配設される柱材30に対し、該柱材30を内方向に引っ張る引張り作用を引き起こす部材を意味し、ここにいう部材には、そのような部材の全てが包含される。例えば、温室に上記した誘引装置を設置する場合には、誘引装置を構成する支持部がかかる部材に相当する。
【0016】
上記のように構成される補強材は、温室の外周部に配設される柱材30の外側に取り付けられる。
【0017】
例えば、温室に誘引装置を設置し、図2に示したように、誘引装置を構成する支持部50の引張り作用により、柱材30に対して内方向に引張荷重(矢印A)が加えられた場合、柱材30の内部には、引張応力(矢印B)が発生する。この引張応力が強いほど、柱材30の変形や傾きの度合いが大きくなるが、柱材30の外側に補強材が取り付けられることにより、圧縮応力発生部10に圧縮応力(矢印C)が発生するため、柱材30に生ずる引張応力は弱められることになる。従って、柱材30に対して内方向に大きな引張荷重が加えられた場合でも、柱材30の変形や傾きを効果的に防止することができる。
【0018】
本実施例の補強材によれば、温室の外周部に配設される柱材30として細い(断面積が小さい)ものを使用した場合でも、上記のように柱材30の変形や傾きを効果的に防止し得る。また、補強材は、その構造上、柱材30に対して後付けが可能である。従って、柱材30を交換する場合等と比較して簡易に柱材30の変形や傾きを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る補強材を柱材に取り付けた状態を示す図である。
【図2】補強材の作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0020】
10 圧縮応力発生部
10a 連結部
20 桟部材
30 柱材
40 支持部材
50 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室の外周部に配設される柱材に対して略平行に配置される圧縮応力発生部と、該圧縮応力発生部と前記柱材との間に設けられる桟部材とを備え、前記柱材の外側に取り付けられることを特徴とする補強材。
【請求項2】
前記桟部材の少なくとも1つは、前記柱材に対する引張り作用を惹起する部材を支持する支持部材を支持するものであることを特徴とする請求項1記載の補強材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の補強材を備えることを特徴とする温室。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−82440(P2007−82440A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273281(P2005−273281)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(503034766)
【Fターム(参考)】