説明

補強構造を有するグリーンハウス

【課題】構造が単純で施工コストが低いにもかかわらず、堅牢で変形し難く、フィルム留め材の変形を抑制してフィルムの破損を防止することができるグリーンハウスの補強構造を提供する。
【解決手段】並設された複数のアーチ状パイプ11とそれらを平行状態でつなぐ肩用直管12及び母屋とで構成された骨組を有するグリーンハウスにおいて、肩用直管12の少なくとも両妻面近傍に単クランプ31及びその側部に取付けた中間金具32を介して桁方向に延びるフィルム留め材21を固定する。さらに、屋根部に設置した桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材の下面側に補強用形鋼を嵌め込んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンハウス等、骨組みをパイプ材で構成したグリーンハウスの農業用フィルムを留めるフィルム留め材に補強材を付設したグリーンハウスの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、骨組みをパイプ材で構成したグリーンハウス等では、例えば図1に示すように、アーチ状に湾曲させた複数本の主アーチ11を桁方向に平行に並設し、その両端を地中に打込み、或いは埋め込んで固定している。そして、複数の主アーチ11と桁方向に配置される肩用直管12や母屋13との交差部が連結金具で固定されている。しかも設置場所を有効に活用するために、図2に示すように、構造物を数棟併設し、主アーチを構成するパイプ材の柱を連結クランプで連結した、いわゆる連棟型のグリーンハウスが多数設置されている。
なお、図1,2中、14は根がらみ、15は側筋かいである。また、16は屋根筋かいである。
【0003】
側筋かいや屋根筋かいは、配設することで更なる安定性を確保するものである。
一般的に、骨組みをパイプ材で構成したグリーンハウスの安定性を妨げる要因としては、妻面に受ける風圧力が挙げられるが、この風圧力によるグリーンハウスの変形は前記の側筋かいや屋根筋かいにより抑制されている。
【0004】
ところで、グリーンハウスでは、外周面に張り渡す農業用フィルムを固定するためのフィルム留め材が、主アーチを構成するパイプ材に固定されている。例えば、図1に示されるようなグリーンハウスでは、当該グリーンハウスを構成する両側壁面上部に桁方向に伸びるフィルム留め材が主アーチを構成するパイプ材の肩部に固定され、また必要に応じてグリーンハウスの屋根部に結露水回収機能付フィルム留め材が、同じく主アーチを構成するパイプ材のアーチ部に固定されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、図2に示されるような連棟型のグリーンハウスでは、連棟型グリーンハウスを構成する両側壁面上部に桁方向に伸びるフィルム留め材が主アーチを構成するパイプ材の肩部に固定され、連棟型グリーンハウスの谷屋根を構成する屋根面の下方部に結露水回収機能付フィルム留め材が、同じく主アーチを構成するパイプ材のアーチ部に固定されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−103号公報
【特許文献2】実公平6−2535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなグリーンハウスでは、風圧力を受けた際に構造体全体が変形することが大きな問題となる。構造体全体が変形しないまでも、風圧力により農業用フィルムに大きな荷重が加わりフィルム留め材が変形し、当該フィルム留め材および農業用フィルムの破損につながることがある。
このため、風圧力を受けた際にも構造体全体の変形を抑制するために、前記のような側筋かいや屋根筋かいを配設している。
しかし、筋かいを配設したグリーンハウスにあっても、風圧力を受けた際のフィルム留め材の変形を抑制し切れておらず、グリーンハウスの破損事故を引き起こしている。
【0006】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、構造が単純で施工コストが低いにもかかわらず、堅牢で変形し難く、フィルム留め材の変形を抑制してフィルムの破損を防止することができるグリーンハウスの補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の補強構造を有するグリーンハウスは、その目的を達成するため、並設された複数のアーチ状パイプとそれらを平行状態でつなぐ肩用直管及び母屋とで構成された骨組を有し、前記アーチ状パイプの外側に透明又は半透明のフィルムが展張されたグリーンハウスであって、前記肩用直管の少なくとも両妻面近傍に単クランプ及びその側部に取付けた中間金具を介して桁方向に延びるフィルム留め材が固定されていることを特徴とする。
また、屋根部に設置した桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材の下面側に補強用形鋼が嵌め込まれていてもよい。
【0008】
さらに、並設された複数のアーチ状パイプとそれらを平行状態でつなぐ肩用直管及び母屋とで構成された骨組を有し、前記アーチ状パイプの外側に透明又は半透明のフィルムが展張されたグリーンハウスを複数連ねた連棟型グリーンハウスであっては、両側壁面の肩用直管の少なくとも両妻面近傍に単クランプ及びその側部に取付けた中間金具を介して桁方向に延びるフィルム留め材を固定するとともに、二つのグリーンハウスで形作られる谷屋根部に設置した桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材の下面側に補強用形鋼が嵌め込まれていてもよい。
上記のようなグリーンハウスとしては、両妻面の間に側筋かい及び屋根筋かいが設置されているものが好ましい。そして、少なくとも妻面から3m程度の領域の肩用直管に単クランプ及びその側部に取付けた中間金具を介してフィルム留め材が固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の補強構造は、単純な構造により高い固定強度が得られるため、構築が極めて容易に行える。特に、フィルムを固定するフィルム留め材を従来の主パイプへの固定の他に中間金具を介して肩用直管とも固定する構造の採用により、中間金具により支点間距離が短い態様で固定されているためにフィルム留め材の変形が抑制される。またフィルム留め材の下面側に嵌めこんだ補強用形鋼はフィルム留め材にかかる荷重を小さくするためにフィルム留め材自身の変形が抑制される。その結果、フィルム破損が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者等は、堅牢で構築も行いやすいグリーンハウスの補強構造、特に農業用フィルムを固定するフィルム留め材の変形によるフィルム破損を防止できる補強構造に関し、種々検討を重ねてきた。
骨組みをパイプ材で構成したグリーンハウスにおいて、構築物として維持していく際に最も障害となるのが風雨、特に強風である。強風により構築物としての骨格が変形させられた場合は勿論、骨組を変形させないまでも、風,雨,雪の影響でフィルム留め材が変形し、その結果フィルムの破損につながっている。
【0011】
そこで、風雨を受けてもフィルム留め材の変形を抑制し、その結果グリーンハウス全体を堅牢にできる補強構造を検討した。そして、フィルム留め材を固定する支点間距離とフィルム留め材自身が受ける荷重を減らせばその変形量が小さくなるので、以下の構造を採ることとした。
すなわち、桁方向に延びるフィルム留め材を、グリーンハウスの骨組を構成する肩用直管に単クランプ及びその側部に取付けた中間金具を介して固定する、支点間距離を短くする構造を採用した。また桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材にあっては、その下面側に補強用形鋼を嵌め込み、フィルム留め材自身の負担荷重を軽減させる構造を採用した。
【0012】
ところで、グリーンハウスは、一般的には図1,2に示すような構造を備えている。
そして、通常、その両妻面の間に側筋かい及び屋根筋かいが設置されるとともに、前記アーチ状パイプの外側には透明又は半透明の、いわゆる農業用フィルムが展張されている。
透明又は半透明の農業用フィルムを展張するために、アーチ状パイプの肩部に桁方向に延びるフィルム留め材が固定されている。
具体的には、図3に示すように、アーチ状パイプ11の肩部に、例えば同図に示されるような、上面にフィルム留め用の凹部を有する断面形状のフィルム留め材21が図示しない連結具で固定されている。そしてこのフィルム留め材21の上面凹部溝に、展張された農業用フィルム22が留め線等の留め具23で固定されている。
また、必要に応じて、桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材が、グリーンハウスの屋根部を構成するアーチ状パイプのアーチ部に固定されている。
【0013】
上記のようなフィルム留め材21の固定態様では、前記した通り、風雨を受けた際に変形しやすく、その変形によりフィルム留め材21および農業用フィルム22の破損につながっている。
そこで、フィルム留め材21の変形を防止するために、アーチ状パイプの肩部に固定されて桁方向に延びるフィルム留め材21の少なくとも妻面近傍部分を、図3に示すように、グリーンハウスの骨組を構成する肩用直管12に単クランプ31及びその側部に取付けた中間金具32を介して固定した。アーチ状パイプ11に固定するだけではなく、肩用直管12にも固定する態様を採用したものである。
【0014】
具体的には、図4に示すような、側部に断面L字状の立片を溶接接合した単クランプを用いた。そして、当該単クランプの側部に溶接接合された立片の先端は、予め折り曲げられている。この補強態様では、先端部が折り曲げられ、後端が単クランプ31の側部に溶接接合された断面L字状の立片が中間金具32となっている。
このような中間金具32を備えた単クランプ31を肩用直管12に固定するとともに、中間金具32の折曲げ部に前記フィルム留め材21の底面をビス33等で固定している。
【0015】
次に、谷屋根部に設置された結露水回収機能付フィルム留め材の変形を防止するための対策について説明する。
結露水回収機能付フィルム留め材41は、通常、図5に示されるような、フィルム留め用の凹部と、その一側の側壁に沿って延出した結露水受け部42を有する断面形状とされている。結露水受け部42は、結露水を効率的に回収するため、フィルム留め用凹部の上端から延びる水平壁の先端に繋がる縦壁とその下端から伸びる底壁から構成されている。
なお、前記のフィルム留め材21と同様、上面凹状の部分に農業用フィルムを展張させ、留め線等の留め具23で固定する態様が採られる。
そして、このような結露水回収機能付フィルム留め材32は、通常、そのまま図示しない連結具を用いたり、或いはビス等を用いたりしてアーチ状パイプのアーチ部に固定されているが、このような固定態様では、強度的に不十分である。
【0016】
そこで、本発明では、結露水回収機能付フィルム留め材の下面側に補強用形鋼を嵌め込む構造を採用した。
具体的には図5に示すような、結露水回収機能付フィルム留め材41のフィルム留め用凹部の下側に形鋼43を嵌め込んで、スポット溶接やビス等で両者を接合したものを準備した。そして、図6に示すように、形鋼43で複合させた結露水回収機能付フィルム留め材41をアーチ状パイプ11のアーチ部に固定する態様を採用した。
【0017】
なお、結露水回収機能付フィルム留め材41には、結露水受け部42の溜まった結露水を除去するための排水口(図示せず)及びそれに連結される排水ホースが接続されている。この結露水除去を邪魔しないためにも、下面側に嵌め込む補強用の形鋼は、前記フィルム留め用凹部の形状と合致した断面形状、若しくは前記結露水受け部42を構成する縦壁とフィルム留め用凹部とで形成される形状と合致した断面形状の溝形鋼とすることが好ましい。このような断面形状とすることにより、嵌合強度の強い固定を行うことができ、排出口との接続も容易に行える。
【0018】
ところで前記したように、昨近では、設置場所の有効活用の観点から、骨組みをパイプ材で構成したグリーンハウスを数棟併設し、主アーチを構成するパイプ材の柱を連結クランプで連結した、いわゆる連棟型のグリーンハウスが多数設置されている。
このような連棟型グリーンハウスにあっては、通常、アーチ状パイプの両側壁面の肩位置に桁方向に延びるフィルム留め材が固定されているとともに、二棟のグリーンハウスで形作られる谷屋根部のアーチ部に桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材が固定されている。
【0019】
そこで、フィルム留め材の変形を抑えるために、本発明にあっては、両桁面の肩位置のアーチ状パイプに固定したフィルム留め材を、アーチ状パイプへの固定とは別に、グリーンハウスの骨組を構成する肩用直管に単クランプ及びその側部に取付けた中間金具を介して固定するとともに、二棟のグリーンハウスで形作られる谷屋根部のアーチ部に固定された桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材の下面側に補強用形鋼を嵌め込む構造を採用した。
フィルム留め材及び結露水回収機能付フィルム留め材の好ましい固定態様は前記したものと同じで構わない。
【0020】
さらに、棟数に関係なく、一般的なグリーンハウスにあっては、補強のために両妻面の間に側筋かい及び屋根筋かいが設置されているが、このような、補強されているグリーンハウスに本発明のフィルム留め材補強構造や結露水回収機能付フィルム留め材補強構造を付加すると、さらに補強される。特に、妻面から3m程度の領域に、本発明のフィルム留め材補強構造を採用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】グリーンハウスの構造を概略的に説明する斜視図
【図2】連棟型グリーンハウスの構造を概略的に説明する斜視図
【図3】フィルム留め材の固定形態を説明する図
【図4】単クランプ側部への中間金具接続形態を説明する図
【図5】補強用形鋼付き結露水回収機能付フィルム留め材の構造を説明する図
【図6】結露水回収機能付フィルム留め材の固定形態を説明する図
【符号の説明】
【0022】
11:主アーチ 12:肩用直管 13:母屋 14:根がらみ
15:側筋かい 16:屋根筋かい
21:フィルム留め材 22:フィルム 23:留め具
31:単クランプ 32:中間金具 33:ビス
41:結露水回収機能付フィルム留め材 42:結露水受け部 43:補強用形鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数のアーチ状パイプとそれらを平行状態でつなぐ肩用直管及び母屋とで構成された骨組を有し、前記アーチ状パイプの外側に透明又は半透明のフィルムが展張されたグリーンハウスであって、前記肩用直管の少なくとも両妻面近傍に単クランプ及びその側部に取付けた中間金具を介して桁方向に延びるフィルム留め材が固定されていることを特徴とする補強構造を有するグリーンハウス。
【請求項2】
並設された複数のアーチ状パイプとそれらを平行状態でつなぐ肩用直管及び母屋とで構成された骨組を有し、前記アーチ状パイプの外側に透明又は半透明のフィルムが展張されたグリーンハウスであって、屋根部に設置した桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材の下面側に補強用形鋼が嵌め込まれていることを特徴とする補強構造を有するグリーンハウス。
【請求項3】
並設された複数のアーチ状パイプとそれらを平行状態でつなぐ肩用直管及び母屋とで構成された骨組を有し、前記アーチ状パイプの外側に透明又は半透明のフィルムが展張されたグリーンハウスを複数連ねた連棟型グリーンハウスであって、両側壁面の肩用直管の少なくとも両妻面近傍に単クランプ及びその側部に取付けた中間金具を介して桁方向に延びるフィルム留め材を固定するとともに、二つのグリーンハウスで形作られる谷屋根部に設置した桁方向に延びる結露水回収機能付フィルム留め材の下面側に補強用形鋼が嵌め込まれていることを特徴とする補強構造を有する連棟型グリーンハウス。
【請求項4】
グリーンハウスの両妻面の間に側筋かい及び屋根筋かいが設置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の補強構造を有するグリーンハウス。
【請求項5】
グリーンハウスの両妻面の間に側筋かい及び屋根筋かいが設置されているとともに、両側壁面の肩用直管の少なくとも両妻面近傍に単クランプ及びその側部に取付けた中間金具を介してフィルム留め材が固定されている請求項1又は3に記載の補強構造を有するグリーンハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−306886(P2007−306886A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141502(P2006−141502)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(397072695)平林物産株式会社 (9)
【Fターム(参考)】