説明

補強用ガラス不織布及びガラス不織布補強体

【課題】 光透過性にも優れる補強用ガラス不織布及びガラス不織布補強体を提供すること。
【解決手段】 本発明の補強用ガラス不織布は、扁平断面形状を有するガラス繊維を主体とする補強用ガラス不織布であり、ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で、一部のガラス繊維が存在している。また、本発明のガラス不織布補強体は前記補強用ガラス不織布の空隙に樹脂が充填されており、太陽電池用保護材として好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補強用ガラス不織布及びガラス不織布補強体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス不織布は強度的に優れているため、プラスチックの補強材として使用されている。例えば、浴槽、波板、ヘルメット、船舶や航空機の機材、或いは電気絶縁板やプリント配線板用積層板などの基材として使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、扁平断面のガラス繊維を含むガラス不織布が提案されている。このガラス不織布は扁平断面のガラス繊維を含んでいるため、繊維同士の重なりが広い。そのため、かさ密度が高く、寸法安定性に優れるとともに、少量のバインダーで強度的に優れているため、耐熱性に優れるという特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−257042号公報
【特許文献2】国際公開番号WO99/28543号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ガラス不織布で強化する用途として、前述のような用途以外に、光の透過性を必要とする用途が提案されている。例えば、太陽電池用保護材としての用途が提案されている。この用途においては、太陽電池モジュールのラミネート処理時に、充填材が流れ出さないように保持させたり、機械的強度を付与したりするために、ガラス不織布を使用することが提案されている。このような用途においては、充填材の保持作用や補強効果に加えて、発電を妨げないように、光透過性である必要があるが、前述のような、扁平断面のガラス繊維を含むガラス不織布を使用したところ、十分な光透過性が得られないことが判明した。
【0006】
本発明は上述の問題点を解決するためになしたものであり、光透過性にも優れる補強用ガラス不織布及びガラス不織布補強体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、「扁平断面形状を有するガラス繊維を主体とする補強用ガラス不織布であり、ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で、一部のガラス繊維が存在していることを特徴とする補強用ガラス不織布。」である。
【0008】
本発明の請求項2にかかる発明は、「請求項1に記載の補強用ガラス不織布の空隙に樹脂が充填されていることを特徴とするガラス不織布補強体。」である。
【0009】
本発明の請求項3にかかる発明は、「太陽電池用保護材として使用する請求項2記載のガラス不織布補強体。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1にかかる補強用ガラス不織布は、扁平断面形状を有するガラス繊維を主体としているため、光が散乱しにくく光透過性に優れており、また、一部のガラス繊維は長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で存在していることによって、ガラス不織布の厚さ方向に適度な空隙を保持していることから、樹脂が十分に含浸され、ボイドが発生しないため、光透過性に優れるガラス不織布補強体を製造できる。
【0011】
本発明の請求項2にかかるガラス不織布補強体は、請求項1に記載の補強用ガラス不織布の空隙に樹脂が十分に含浸されていることができ、ボイドが発生しにくいため、光透過性に優れている。
【0012】
本発明の請求項3にかかるガラス不織布補強体は太陽電池用保護材として使用したものであり、光透過性に優れているため、発電を妨げることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】両面テープを接着した後に撮影した、実施例1における補強用ガラス不織布断面の電子顕微鏡写真(100倍)
【図2】両面テープを接着した後に撮影した、実施例1における補強用ガラス不織布断面の電子顕微鏡写真(500倍)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の補強用ガラス不織布(以下、単に「ガラス不織布」と表記することがある)は光が散乱しにくく、光透過性に優れているように、扁平断面形状を有するガラス繊維(以下、「扁平ガラス繊維」と表記することがある)を主体として構成されている。この扁平断面形状とは、平板に近い横断面形状を有する繊維であり、一般的には横断面形状が長円形状、楕円形状、長方形状、角を丸めた長方形状、まゆ状などである。特に、横断面形状が長円形状、長方形状、又は角を丸めた長方形状のように平坦部を有すると、光の散乱が特に小さく、光透過性に優れるため好適である。なお、扁平ガラス繊維における扁平率(=長径/短径)は特に限定するものではないが、1.5〜6であるのが好ましく、3〜4.5であるのがより好ましい。なお、「長径」は扁平ガラス繊維の横断面において最も長い径を意味し、「短径」は長径に直交する径の中で最も長い径を意味する。
【0015】
なお、扁平ガラス繊維の一部がガラス不織布表面に対して略直交し、空隙を確保できるように、長径は大きい方が好ましい。他方、長径が大き過ぎるとガラス不織布表面に対して略直交させた状態を確保することが難しくなる。このため、長径は10〜40μmであるのが好ましく、15〜30μmであるのがより好ましい。また、扁平ガラス繊維の繊維長は特に限定するものではないが、1mm〜30mmであるのが好ましく、5mm〜20mmであるのがより好ましい。
【0016】
なお、扁平ガラス繊維の組成は光透過性に優れている限り特に限定されるものではなく、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Dガラス、クオーツガラスであることができ、特に限定するものではない。
【0017】
本発明のガラス不織布はこのような扁平ガラス繊維を主体としているため、光透過性に優れている。つまり、扁平ガラス繊維を50mass%以上含んでいる。この扁平ガラス繊維の量が多い程、光の散乱が少なく、光透過性に優れているため、扁平ガラス繊維は70mass%以上含まれているのが好ましく、80mass%以上含まれているのがより好ましく、90mass%以上含まれているのが更に好ましく、100mass%扁平ガラス繊維からなるのが最も好ましい。なお、本発明においては、扁平率、長径、短径、組成、繊維径及び/又は繊維長の点で相違する2種類以上の扁平ガラス繊維を併用することもできる。
【0018】
なお、扁平ガラス繊維以外の繊維として、例えば、横断面形状が円形の非扁平ガラス繊維、アルミナ繊維、石英繊維、ムライト繊維などの無機繊維、及び/又はアクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ビニロン繊維、エラストマー繊維などの有機繊維を使用することができる。しかしながら、これら例示の繊維に限定されず、あらゆる繊維を使用することが可能である。なお、ガラス不織布の光透過性を低下させないように、透明または半透明の繊維であることが好ましい。このような透明又は半透明の繊維として、例えば、ガラス繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、エラストマー繊維などを挙げることができる。
【0019】
本発明のガラス不織布はこのように扁平ガラス繊維を主体としているため、光の散乱が少なく、光透過性に優れるものであるが、単純に扁平ガラス繊維が多いと、厚さが薄い高密度のガラス不織布となり、さらに扁平ガラス繊維同士の密着性が高く、扁平ガラス繊維間の空隙が小さいことから樹脂の浸透性が劣り、特に扁平ガラス繊維が偶発的に密集する部分では樹脂の浸透性に劣り、樹脂を十分に充填できず、ボイドが発生しやすい。その結果、逆に光透過性が悪くなるという現象があるため、本発明においては、一部の扁平ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で存在していることにより、部分的に扁平ガラス繊維間の距離が長く、空隙が確保され、樹脂充填時における樹脂や空気が流れやすいパスラインが形成されている。このような不織布構造によって、樹脂充填時におけるボイドの発生を抑えることができるため、結果として光透過性に優れる補強体を製造することができる。この略直交する扁平ガラス繊維の比率は、高い方が樹脂の充填性は高まるが、ガラス不織布表面に直交する入射光に対して、扁平ガラス繊維の曲率が高い部分に入射する光の割合が増える結果、散乱や屈折により光透過性が低下する。このため、略直交する扁平ガラス繊維の本数比率は1〜50%であるのが好ましく、2〜30%であるのがより好ましい。
【0020】
なお、「ガラス不織布表面」とは、平板上でガラス不織布に両面テープを接着させた際に形成される、両面テープのガラス不織布側表面と接する面を意味し、実際には、両面テープのガラス不織布側表面をガラス不織布表面と同一視することができる。また、「略直交する」とは、ガラス不織布断面を電子顕微鏡で観察した際における、ガラス不織布表面と扁平ガラス繊維の長径方向とのなす角度(鋭角)が70〜90°であることを意味する。更に、略直交する扁平ガラス繊維の本数比率は、少なくとも100本以上の扁平ガラス繊維に関して観察し、扁平ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で存在する扁平ガラス繊維の本数の、扁平ガラス繊維の総本数に対する、百分率である。なお、扁平ガラス繊維の観察は、ガラス不織布断面の電子顕微鏡写真を撮影し、電子顕微鏡写真に写っている全ての扁平ガラス繊維に関して行う。1枚の電子顕微鏡写真に100本以上の扁平ガラス繊維が写っていない場合には、扁平ガラス繊維の総数が100本以上となるまで電子顕微鏡写真の撮影を行う。
【0021】
本発明のガラス不織布は、通常、熱硬化性、熱可塑性、又は熱水可溶性の有機樹脂バインダーあるいは無機のバインダーによって接着されて形態を維持している。このバインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル共重合樹脂などの熱可塑性樹脂、ポリビニルアルコールなどの熱水可溶性樹脂、アルミナゾル、シリカゾルなどの無機系バインダーを、単独で又は併用することができる。これらの中でも、光透過性に優れるアクリル樹脂が好適である。なお、本発明においては、扁平ガラス繊維を使用しており、繊維同士の密着性が高いため、従来よりも少ない量のバインダーで十分な強度を得ることができ、具体的には、ガラス不織布全体の5〜15mass%のバインダー量であることができる。
【0022】
本発明のガラス不織布は光透過性に優れているように、厚さは薄い方が好ましく、より具体的には0.5mm以下であるのが好ましく、0.3mm以下であるのがより好ましい。一方で、ある程度の強度を維持するために、0.05mm以上であるのが好ましい。なお、「厚さ」は直径10mm、押圧19.6kPaのダイヤルゲージを用いて測定した数値を指す。
【0023】
また、本発明のガラス不織布の目付は前記厚さであることができるように、70g/m以下であるのが好ましく、40g/m以下であるのがより好ましい。一方で、ある程度の強度を維持するために、5g/m以上であるのが好ましい。なお、「目付」は1mあたりの質量である。
【0024】
本発明のガラス不織布には、扁平ガラス繊維を含む無機材料と充填樹脂との密着性を高めるために、シランカップリング剤などの表面処理剤を付与することができる。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのシランカップリング剤を付与することができる。
【0025】
このような本発明のガラス不織布は、扁平ガラス繊維を含むスラリーを調製し、このスラリーを抄き上げて繊維ウエブを形成する際に、一部の扁平ガラス繊維が繊維ウエブ表面(ひいてはガラス不織布表面)に対して略直交させた繊維ウエブから製造することができる。
【0026】
通常通りスラリーを抄き上げると、スラリー水が濾水される際の作用により扁平ガラス繊維は力学的に安定な状態である、長径がガラス不織布表面に対して平行になるように抄造ネット上に配列するため、平坦部同士が密着した薄く見掛密度の高い繊維ウエブが形成されるが、本発明においては、その状態を敢えて乱すことによって、一部の扁平ガラス繊維を繊維ウエブ表面(ひいてはガラス不織布表面)に対して略直交させる。例えば、スラリーを激しく攪拌した直後に抄き上げる、スラリーの流速を高める、抄き上げ時間を短くする、スラリー水の粘度を低くするなど、扁平ガラス繊維が繊維ウエブ表面に対して平行に配列するのを阻害するように抄き上げることによって、一部の扁平ガラス繊維を繊維ウエブ表面(ひいてはガラス不織布表面)に対して略直交した状態で存在する繊維ウエブを形成する。
【0027】
その後、このような繊維ウエブに対して、前述のようなバインダー溶液を塗布又は散布した後、或いは前述のようなバインダー溶液中に繊維ウエブを浸漬した後に、乾燥し、バインダーの接着力を発現させることによって、本発明のガラス不織布を製造することができる。なお、熱可塑性繊維、熱水可溶性繊維、熱可塑性粒子、又は熱水可溶性粒子を、あらかじめスラリーに混ぜて抄き上げ、これらの繊維あるいは粒子を含む繊維ウエブを形成し、乾燥の際に、これらの繊維あるいは粒子を溶融接着させる方法によっても、本発明のガラス不織布を製造することができる。
【0028】
本発明のガラス不織布補強体は、前述のようなガラス不織布の空隙に樹脂が充填されたものである。本発明のガラス不織布は扁平ガラス繊維を主体としているため、光が散乱しにくく、光透過性に優れているばかりでなく、一部の扁平ガラス繊維は長径方向がガラス不織布表面に対して略直交した状態にあるため、樹脂を充填しやすく、ボイドが発生しにくいため、本発明のガラス不織布補強体は光透過性に優れている。そのため、光透過性を必要とする用途に好適に使用できるものである。例えば、透明樹脂成形体の補強材や表面保護材などの用途に使用することができ、特に、太陽電池用保護材として使用すると、充填材の保持作用に加えて、光透過性であることから発電性能の低下を小さくできる、という効果がある。
【0029】
なお、空隙に充填する樹脂は用途によって異なるため、特に限定するものではない。例えば、好適である太陽電池用保護材用途の場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂などの透明な樹脂を充填することができる。なお、これら樹脂はカップリング剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、光拡散剤、難燃剤、変色防止剤などの機能性薬剤を含んでいることができる。
【0030】
本発明のガラス不織布補強体の厚さは0.05〜1.5mmであるのが好ましい。すなわち、ガラス不織布補強体の厚さが0.05mmを下回ると、強度的に不十分である傾向がある。例えば、ガラス不織布補強体を太陽電池用保護材として使用する場合、封止性能が劣ったり、衝撃等により太陽電池素子が破損する可能性が高まりやすくなる傾向がある。一方、その厚さが1.5mmを上回ると、ガラス不織布補強体の光透過性が悪くなる傾向がある。例えば、ガラス不織布補強体を太陽電池用保護材として使用する場合、ガラス不織布補強体の透明性低下し、光透過性が悪くなる結果、太陽電池素子の受光量が低下し、出力が低下しやすい傾向がある。
【0031】
ガラス不織布の空隙への樹脂の充填は、例えば、含浸する方法、キャスト法、熱プレス、ナイフコーティング等により実施することができる。なお、樹脂の充填はモジュール形成前に実施しても良いし、モジュール形成時にガラス不織布と樹脂とを重ね、熱と圧力の作用で含浸一体化させても良い。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
Eガラスからなる扁平ガラス繊維(横断面形状:長円形状、扁平率:4、長径:28μm、短径:7μm、換算繊維径:15.8μm、繊維長:13mm)100mass%を分散させたスラリーを調製した後、傾斜短網抄紙機に供給し、抄き上げの直前にスタティックミキサーでスラリーを攪拌し、抄紙網通過時におけるスラリーの平均流速を4m/min.に設定して抄き上げて、湿式繊維ウエブを製造した。
【0034】
次いで、この湿式繊維ウエブに対してアクリル樹脂エマルジョンバインダーを散布し、乾燥して、本発明のガラス不織布(バインダー量:10mass%、目付:25g/m、厚さ:0.13mm)を製造した。このガラス不織布断面の電子顕微鏡写真を図1、2に示す。これらの図から明らかなように、一部の扁平ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で存在していた。なお、前記略直交するガラス繊維の本数比率は、扁平ガラス繊維全体の17%であった。
【0035】
(実施例2)
扁平ガラス繊維の量を85mass%とし、円形断面のEガラス繊維(繊維径6.5μm、繊維長13mm)15mass%を混ぜたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のガラス不織布(バインダー量:10mass%、目付:25g/m、厚さ:0.14mm)を製造した。このガラス不織布においては、一部の扁平ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で存在しており、その本数比率は扁平ガラス繊維全体の15%であった。
【0036】
(実施例3)
扁平ガラス繊維の量を50mass%とし、円形断面のEガラス繊維(繊維径6.5μm、繊維長13mm)50mass%を混ぜたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のガラス不織布(バインダー量:10mass%、目付:25g/m、厚さ:0.18mm)を製造した。このガラス不織布においては、一部の扁平ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で存在しており、その本数比率は扁平ガラス繊維全体の20%であった。
【0037】
(比較例1)
抄き上げの直前にスタティックミキサーでスラリーを攪拌せず、抄紙網通過時におけるスラリーの平均流速を0.5m/min.に設定した以外は、実施例1と同様にして、ガラス不織布(バインダー量:10mass%、目付:25g/m、厚さ:0.10mm)を製造した。このガラス不織布においては、扁平ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で存在している扁平ガラス繊維は発見されなかった。
【0038】
(比較例2)
扁平ガラス繊維の量を30mass%とし、円形断面のEガラス繊維(繊維径6.5μm、繊維長13mm)70mass%を混ぜたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のガラス不織布(バインダー量:10mass%、目付:25g/m、厚さ:0.21mm)を製造した。このガラス不織布においては、一部の扁平ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で存在しており、その本数比率は扁平ガラス繊維全体の15%であった。
【0039】
(光透過性の評価)
実施例1〜3及び比較例1〜2から採取したサンプルとEVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)フィルムとを積層した後、90℃に設定した平板プレス機を用いてプレスし、EVA樹脂がガラス不織布に浸透した、厚さ0.4mmのガラス不織布補強体を得た。このとき、実施例1〜3及び比較例2のガラス不織布補強体にはボイドが観察されなかったものの、比較例1のサンプルを用いたガラス不織布補強体には無数のボイドが観察された。
【0040】
次に、紫外・可視分光光度計を用いて可視光350〜1000nmにおけるこれらガラス不織布補強体の吸光度を測定した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0041】
(たて強度の測定)
実施例1〜3及び比較例1〜2のガラス不織布から、たて方向(ガラス不織布生産方向)に250mm、よこ方向(たて方向と直交する方向)に15mmの大きさで、それぞれ切断して試料を調製した。
【0042】
次いで、これら試料のたて方向を、引張強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUTM−III−100)に固定(チャック間距離:180mm)し、速度100mm/min.で引張り、破断時強さの測定を3回行い、その算術平均値をたて強度とした。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の扁平ガラス繊維量を含めて同じ配合である実施例1と比較例1との比較から、扁平ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する扁平ガラス繊維が発見されなかった比較例1のガラス不織布補強体では、見掛密度が高くなりすぎて樹脂が一部浸透せず、ボイドが発生し、光透過性が悪かったのに対して、実施例1のガラス不織布補強体は、ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で、一部のガラス繊維が存在していることによって、光透過性に優れているものであった。
【0045】
また、扁平ガラス繊維の配合量を変化させた実施例1〜3及び比較例2の比較から、扁平ガラス繊維量が多ければ多いほど、光透過性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の補強用ガラス不織布は光透過性に優れているため、光透過性を必要とする用途、特に太陽電池用保護材の補強に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平断面形状を有するガラス繊維を主体とする補強用ガラス不織布であり、ガラス繊維の長径方向がガラス不織布表面に対して略直交する状態で、一部のガラス繊維が存在していることを特徴とする補強用ガラス不織布。
【請求項2】
請求項1に記載の補強用ガラス不織布の空隙に樹脂が充填されていることを特徴とするガラス不織布補強体。
【請求項3】
太陽電池用保護材として使用する請求項2記載のガラス不織布補強体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−7145(P2013−7145A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142389(P2011−142389)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】