説明

補強部材付き筒状部材および筒状部材の補強方法

【課題】補強部材付き筒状部材を製作するのに、部材や工数を減らすことのできる、補強部材付き筒状部材および筒状部材の補強方法を提供する。
【解決手段】筒状部材10の内部に、筒状部材10の伸びる方向に向かって、筒状部材10の仮想断面方向に大きさをもつ補強部材11を、筒状部材10の内壁10Aに接触させることなく、挿入し、筒状部材10の内部で、補強部材11を、筒状部材10の仮想断面A内にて回動させることで、補強部材11の外周の一部11Bを、筒状部材10の内壁10Aの一部に接触させた上で、筒状部材10と補強部材11とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材付き筒状部材および筒状部材の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状部材は、あらゆる物の製造に多く使われている。
【0003】
例えば、図2中の10は、特許文献1などに記載の、自動車のセンタピラーと呼ばれる筒状部材であり、周囲の部材と溶接されて、自動車の外部構造を構成する。
【0004】
図2中、11は補強部材であり、センタピラー10の内部に接合されている。
【0005】
特許文献1によれば、補強部材付き筒状部材であるセンタピラー10は、図3に示すごとく、筒状部材10を構成する、平板状の内壁10Aと、凹状の外壁10Bと、の間に、補強部材11を間挿し、ところどころに設けたフランジ部11Aを、内壁10Aや外壁10Bに溶接することにより製造される。
【0006】
あるいは、図4に示すごとく、内壁10Aと外壁10Bを、ともに凹状とする場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−282106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のような方法によれば、部材を三つも必要とし、部材同士を接合するための工数も多く、何とか部材や工数を減らせないか、ということが課題になっていた。
【0009】
本発明は、従来技術のかような問題を解決するためになされたものであり、補強部材付き筒状部材を製作するのに、部材や工数を減らすことのできる、補強部材付き筒状部材および筒状部材の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)筒状部材と、補強部材とを備え、該補強部材の外周の一部を、前記筒状部材の内壁の一部に接合した補強部材付き筒状部材であって、
前記補強部材は、前記筒状部材の仮想断面方向に大きさをもつとともに、
前記筒状部材の内壁に接触させることなく、前記筒状部材の内部に、前記筒状部材の伸びる方向に向かって挿入でき、
前記筒状部材の内部で、前記筒状部材の仮想断面内にて回動させることで、前記補強部材の外周の一部を、前記筒状部材の内壁の一部に接触させることができるものである
ことを特徴とする補強部材付き筒状部材。
(2)筒状部材の内部に、該筒状部材の伸びる方向に向かって、前記筒状部材の仮想断面方向に大きさをもつ補強部材を、
前記筒状部材の内壁に接触させることなく、挿入し、
前記筒状部材の内部で、前記補強部材を、前記筒状部材の仮想断面内にて回動させることで、前記補強部材の外周の一部を、前記筒状部材の内壁の一部に接触させた上で、
前記筒状部材と前記補強部材とを接合する
ことを特徴とする筒状部材の補強方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、補強部材付き筒状部材を製作するのに、部材や工数を減らすことのできる、補強部材付き筒状部材および筒状部材の補強方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る、補強部材付き筒状部材とその製作方法を示す線図
【図2】従来技術について説明するための線図
【図3】従来技術について説明するための線図
【図4】従来技術について説明するための線図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の本発明に係る補強部材付き筒状部材1は、図1(a)に示すごとく、補強部材11が、筒状部材10の仮想断面方向に大きさをもつ。仮想断面方向とは、図1(a)中にAで示すような仮想断面が展伸する矢印の方向を意味する。
【0014】
そして、補強部材11は、図1(b)に示すごとく、筒状部材10の内壁10Aに接触させることなく、筒状部材10の内部に、筒状部材10の伸びる方向に向かって挿入でき、図1(c)に示すごとく、例えば、筒状部材10の内部で、筒状部材10の仮想断面A内にて、補強部材11の仮想中心11Cまわりに、回動させることで、補強部材11の外周の一部11Bを、筒状部材10の内壁10Aの一部に接触させることができる。
【0015】
第2の本発明のように、図1(b)に示すごとく、筒状部材10の内部に、筒状部材10の伸びる方向に向かって、筒状部材10の仮想断面方向に大きさをもつ補強部材11を、筒状部材10の内壁10Aに接触させることなく、挿入し、図1(c)に示すごとく、筒状部材10の内部で、補強部材11を、筒状部材10の仮想断面内にて回動させることで、補強部材11の外周の一部11Bを、筒状部材10の内壁10Aの一部に接触させた上で、筒状部材10と補強部材11とを接合することで、補強するのに、部材や工数を減らすことができる。
【0016】
筒状部材10の仮想断面方向に大きさをもつ補強部材11を、筒状部材10の内壁10Aに接触させることなく、挿入し、図1(c)に示すごとく、筒状部材10の内部で、補強部材11を、筒状部材10の仮想断面内にて回動させるには、補強部材11の外周の一部11Bとは別の、筒状部材10の内壁10Aとの接合に寄与しない、図1(b)、(c)中に示す、補強部材11の外周の別の一部11Dを、筒状部材10の伸びる方向と同様、棒状に伸びるアームの先端に設けた図示しない挟持機構により挟持した上で、補強部材11を回動させるようにするのが好ましいが、補強部材11が鋼材であれば、棒状に伸びるアームの先端に取り付けた磁石に補強部材11を吸引させた上で、筒状部材10の伸びる方向に向かって挿入し、回動させるようにするのも好ましい。
【0017】
接合には、特に、各部材が鋼材の場合には、テルミット溶接や、通電溶接、アーク溶接などが用いて好適である。
【0018】
以上の通りであるが、本発明は、以上説明した実施の形態に限られるものではない。例えば、筒状部材10は、仮想断面方向にみて、図1に示すごとく角管状のものに限られるものではなく、また、補強部材11も、図1(b)、(c)に示す形状のものに限られるものではない。
【0019】
そして、各部材は、鋼材のみならず、鋼材以外の金属や、樹脂、あるいは、木材などであってもよい。
【0020】
あるいは、筒状部材10の内部で、補強部材11を、筒状部材10の仮想断面内にて回動させる中心は、補強部材11の仮想中心11Cに限らず、ずれていたとしても、補強部材11の外周のどこかが、筒状部材10の内壁10Aに接触して以降も回動させつづけることにより、自然に調心されるよう、予め、補強部材11の形状を決めておくこともできる。図1を用いて説明した、以上の実施の形態に係る、補強部材付き筒状部材および筒状部材の補強方法もこの例による。
【符号の説明】
【0021】
1 補強部材付き筒状部材
10 筒状部材(センタピラー)
10A 内壁
10B 外壁
11 補強部材
11A フランジ部
11B 補強部材11の外周の一部
11C 補強部材11の仮想中心
11D 補強部材11の外周の他の一部
A 仮想断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材と、補強部材とを備え、該補強部材の外周の一部を、前記筒状部材の内壁の一部に接合した補強部材付き筒状部材であって、
前記補強部材は、前記筒状部材の仮想断面方向に大きさをもつとともに、
前記筒状部材の内壁に接触させることなく、前記筒状部材の内部に、前記筒状部材の伸びる方向に向かって挿入でき、
前記筒状部材の内部で、前記筒状部材の仮想断面内にて回動させることで、前記補強部材の外周の一部を、前記筒状部材の内壁の一部に接触させることができるものである
ことを特徴とする補強部材付き筒状部材。
【請求項2】
筒状部材の内部に、該筒状部材の伸びる方向に向かって、前記筒状部材の仮想断面方向に大きさをもつ補強部材を、
前記筒状部材の内壁に接触させることなく、挿入し、
前記筒状部材の内部で、前記補強部材を、前記筒状部材の仮想断面内にて回動させることで、前記補強部材の外周の一部を、前記筒状部材の内壁の一部に接触させた上で、
前記筒状部材と前記補強部材とを接合する
ことを特徴とする筒状部材の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116424(P2012−116424A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270150(P2010−270150)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】