説明

裸眼立体表示装置とその駆動方法

【課題】メガネなどを掛けることなく、多人数で同時に、視点を移動させても、目の錯覚を利用することなく、目が疲れることがない立体動画表示装置およびその駆動方法を提供する。
【解決手段】裸眼立体表示装置は、ヒステリシス特性を持つ透明無機薄膜ELパネル2を多段に並べたELパネル群3と、励起光源4と、励起光源4からの励起光を2次元平面で変調する空間光変調器1と可変焦点レンズ5を有する。ELパネル群3の特定のELパネル2に対してしきい電圧を加え、励起光源4からの励起光を空間光変調器1で特定のELパネル2に書き込みたい画像に基づいて変調し、変調された励起光を可変焦点レンズ5で特定のELパネル2へ焦点を合わせることにより、特定のELパネル2を所望の画像に基づいて発光させることが可能となる。ELパネル群3の各ELパネル2に、順に、以上の操作を繰り返すことにより、立体動画画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸眼立体表示装置およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元表示、立体ディスプレイは、アミューズメント、エンターテイメント、ゲームなどで、広く使われてきた。その構造は、(1)偏光メガネを掛けて、ディスプレイに水平偏波、垂直偏波の2種類の画像を表示させ、左右の目で異なる画像が見えるようにして、画像が浮き出るようにしたもの、(2)メガネを掛けないで、ディスプレイの2方向あるいは多方向に異なる画像が出射され、これらの画像を左右の目で見る(視差を利用する)ことにより、画像が浮き出るようにしたもの、など様々なタイプがある。
【0003】
しかしこれらの方式は、実際の像と虚像で見える像のピントが異なり、目が疲れる等の問題があった。さらにメガネをかけなければ多数の人間が同時に同じ画像を見ることが出来ないことや、立体に見える視点が固定されているため、視点が変わると立体画像として認識できないことがあった。
【0004】
3次元ディスプレイとしては、人間の立体視における主な生理的要因(両眼視差、輻輳、ピント調整、運動視差)を満足でき、自然で疲れないことが望まれている。そのためには、奥行きのあるスクリーンに立体の画像を表示させるものがある。
例えば図10に示すように、液晶パネル表示素子や透明なEL表示素子を2枚から3枚奥行き方向に列べて、奥行き感を出した立体ディスプレイがある(例えば、非特許文献1参照)。図10において、10−1は手前にある画像を表示した偏光子が無い液晶ディスプレイであり、10−2は遠くの背景の画像を表示した偏光子がない液晶ディスプレイであり、10−3は中間の背景を表示した偏光子がない液晶ディスプレイであり、10−4、10−5は偏光子である。また、10−6は手前の画像を表示した透明ELパネルであり、10−7は遠い背景を表示した透明ELパネルであり、10−8は中間の背景を表示した透明ELパネルである。これらは人物を手前に表示し、背景を後ろに表示するようにして立体感を出している。さらに手前の画像の輝度を上げ、背景の輝度を下げることにより、より立体感を出している。以上のようにすることにより、目の錯覚を利用して立体感を出している。しかしながら、列べる液晶ディスプレイ、ELディスプレイの枚数が2枚から3枚であり、奥行き方向の解像度が低いため、実際の立体画像とは異なる画像しか見ることは出来ない。
【0005】
また、高速で回転、あるいは移動するスクリーンに発光ダイオードを搭載した立体ディスプレイが市販されている(例えば、非特許文献2、3参照)。あるいは、回転、移動(あるいは光学的に擬似的に移動)するスクリーンに光源と空間光変調器で構成され、投射器で投影する立体ディスプレイも開発されている。またVizta3D社からは、液晶スクリーンを20枚ならべて、その液晶スクリーンヘ空間光変調器からの投射した光を当てて画像を表示させる立体ディスプレイが発売されている。例えばVizta Z20/20(VISTZ3D inc.,)である。これは20枚のスクリーンを時系列で切り替えていくと、奥行きのある立体画像が得られるとしているものである。しかし、液晶スクリーンの応答速度が数10msと遅く、動画が表示できないという問題、また、スクリーンの枚数も20枚程度と少なく、奥行き方向の分解能が低いという問題、さらに、スクリーンが白濁しているので、立体表示が白濁して見えるという問題があった。また、この液晶スクリーンを用いた3次元ディスプレイでは、投射する光が完全にはスクリーンで散乱されず、スクリーンを直進して、ディスプレイ真正面に立っている観察者には、この光が目に入ってしまうという問題点があった。(例えば、非特許文献4、5、6参照)。
【0006】
従来の、これら立体表示装置は、実際に3次元の画像を表示しているので、目が疲れないという利点があるが、画像が荒く、医療分野や航空管制等での使用に耐えないとういう欠点があった。
【0007】
また、医療分野や航空管制などでは、視差利用あるいは錯覚を利用した立体ディスプレイではなく、実際に多数の人が同時に、上下左右どこから見ても、目の錯覚を利用することなく、実際の立体感を感じることができる三次元ディスプレイが必要とされている。
【非特許文献1】財団法人光産業技術振興協会、2004年3月、光技術動向調査報告書、「4.5.3新方式立体知覚関連」PP.304−305
【非特許文献2】[平成17年12月26日検索]、インターネット<http://www.actuality−systems.com/>
【非特許文献3】[平成17年12月26日検索]、インターネット<http://www.cadjapan.com/free/News/weekly−archive.php?weekvar=2002−07−29>
【非特許文献4】[平成17年12月26日検索]、インターネット<http://www.neurokoptics.com/company/press/archive/ichip1.shtml>
【非特許文献5】[平成17年12月26日検索]、インターネット<http://www.insightmedia.info/news/VIZTA3dSettoBuildMore3dDisplays.htm>
【非特許文献6】[平成17年12月26日検索]、インターネット<http://www.3dplugins.com/default.php?loc=news&id=247>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、メガネなどを掛けることなく、多人数で同時に、視点を移動させても、目の錯覚を利用することなく、目が疲れることがない立体動画表示装置およびその駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、透明基板の上に第1の透明電極、第1の絶縁層、発光層、第2の絶縁層、第2の透明電極の順で積層されたヒステリシス特性を有する透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを多段に列べたELパネル群と、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを励起する波長を有する励起光源と、前記励起光源からの光を画像データに基づいて2次元平面で変調し前記変調した光を前記ELパネル群へ照射する空間光変調器と、を具備することを特徴とする裸眼立体表示装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の裸眼立体表示装置において、前記空間光変調器と前記ELパネル群との間に、前記空間光変調器からの光を前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへ焦点が合うように投射する可変焦点レンズまたは位置可変レンズを設けたことを特徴とする裸眼立体表示装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、透明基板の上に第1の透明電極、第1の絶縁層、発光層、第2の絶縁層、第2の透明電極の順で積層されたヒステリシス特性を有する透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを多段に列べたELパネル群と、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを励起する波長を有する励起光源と、前記励起光源からの光を画像データに基づいて2次元平面で変調し前記変調した光を前記ELパネル群へ照射する空間光変調器と、前記空間光変調器と前記ELパネル群との間に設けられ、前記空間光変調器からの光を前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへ焦点が合うように投射する可変焦点レンズまたは位置可変レンズと、前記各透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへ順次しきい電圧を加えると共に、該しきい電圧を加えた透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルに書き込むべき画像データを前記空間光変調器に設定し、また、前記励起光源からの光が前記空間光変調器を介して前記しきい電圧を加えた透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルに焦点が合うように前記可変焦点レンズまたは位置可変レンズの焦点距離を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする裸眼立体表示装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の裸眼立体表示装置において、前記空間光変調器と前記励起光源の間に、前記励起光源からの光を平行光にする凸レンズを有することを特徴とする裸眼立体表示装置である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載の裸眼立体表示装置において、前記空間光変調器は電気書き込み型のデジタルマイクロミラーデバイス型の空間光変調器または電気書き込み型の強誘電性液晶空間光変調器であることを特徴とする裸眼立体表示装置である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載の裸眼立体表示装置において、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルの透明基板の端面が鏡面研磨されており、前記第1および第2の透明電極が、互いに接続されないようにして、前記透明基板の端面にエッジ部分を介して接続されるように形成されており、前記第1および第2の透明電極の、前記透明基板の端面の接続する部分に、取り出し電極が付けられている、ことを特徴とする裸眼立体表示装置である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の裸眼立体表示装置において、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルはZnSを母体としてMnをドープしたZnS:Mn黄橙色ELパネル、あるいはSrSを母体としてCeをドープしたSrS:Ce青色ELパネル、あるいはCaSを母体としてEuをドープしたCaS:Eu赤色ELパネルであり、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルの母体がZnSの場合、Mn濃度が0.3wt%よりも高い、ことを特徴とする裸眼立体表示装置である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかの項に記載の裸眼立体表示装置において、前記励起光源が、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルがZnS:Mn黄橙色ELの場合には、該光源が波長337nmを含む紫外線光源であり、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルがSrS:Ce青色ELの場合には波長430nmを含む青色光源であり、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルがCaS:Euの場合には、波長480nmを含む青色光源である、ことを特徴とする裸眼立体表示装置である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、透明基板の上に第1の透明電極、第1の絶縁層、発光層、第2の絶縁層、第2の透明電極の順で積層されたヒステリシス特性を有する透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを多段に列べたELパネル群と、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを励起する波長を有する励起光源と、前記励起光源からの光を画像データに基づいて2次元平面で変調し前記変調した光を前記ELパネル群へ照射する空間光変調器と、前記空間光変調器と前記ELパネル群との間に設けられ、前記空間光変調器からの光を前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへ焦点が合うように投射する可変焦点レンズまたは位置可変レンズと、を具備する裸眼立体表示装置の駆動方法において、前記ELパネル群の透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへしきい電圧を加え、該しきい電圧を加えた透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルに書き込むべき画像を前記空間光変調器に書き込み、前記励起光源からの光を該空間光変調器によって変調して前記可変焦点レンズまたは位置可変レンズによって前記しきい電圧を加えた透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルに焦点を合わせて投射して画像書き込みを行い各透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルの励起光が照射された部分のみを発光状態にし、前記ELパネル群において上記操作を繰り返すことによって立体画像を表示することを特徴とする裸眼立体表示装置の駆動方法である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項5および請求項9の発明によれば、メガネなどを掛けることなく、多人数で同時に、視点を移動させても、目の錯覚を利用せず、目が疲れることがない立体動画表示をすることができるという効果を奏する。
また、請求項6の発明によれば、透明な立体物としての裸眼立体表示装置の中に、立体画像を表示することができるという効果を奏する。
また、請求項7および8の発明によれば、黄橙色、青色、または赤色に発光する立体画像が表示することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
最初に、本発明に用いられる立体表示の原理について述べる。これはヒステリシス特性(メモリ効果)を持つ無機薄膜ELパネルにしきい電圧を印加し、発光センタを励起する光(励起光)を照射すると、しきい電圧が印加され且つ励起光が照射された無機薄膜ELパネルの部分のみが発光する、という発明者が発見した特異な現象を用いて実現されるものである。
【0020】
即ち、無機薄膜ELパネルを多数枚列べた全面ベタ薄膜EL発光パネル(ヒステリシス特性を持つ)群と、それぞれのEL発光パネルに映像を書き込む励起光源付き(光源の波長は無機ELパネルの発光センタの励起波長を含む)の空間光変調器から構成される。また空間光変調器の像を、無機ELパネルに焦点を合わせて書き込むため、高速の可変焦点レンズあるいは位置可変レンズをこの間に入れてもよい。
ここで用いるELパネルは輝度−電圧特性にヒステリシス特性を持ち、しきい電圧を印加しておき、その上に空間光変調器で、発光センタの励起波長の光で画像を書き込むと、この光が当たった部分が発光する。
それぞれのELパネルに書き込む画像は、立体の輪切り画像であり、列べるELパネルのガラス基板の厚さを薄くし、枚数を多くすることにより、より高精細で奥行きのある位体画像を得ることができる。
【0021】
以上のように、列べた薄膜ELパネル群の各ELパネルに、時系列にしきい電圧と立体の輪切り画像を書き込むことにより、上下左右どこから見ても、また多人数で同時に見ても、視点を動かして見ても、メガネなどを掛ける必要もなく、目の錯覚を利用することなく、目が疲れることもなく、高精細な立体映像を見ることが可能となる。
【0022】
また、ここで用いる薄膜ELパネルは、応答速度は1msと速く、動画を表示でき、さらにスクリーンの枚数も100枚〜200枚程度と多くすることができ、奥行き方向の分解能を高くすることができる。またELパネルは透明であり、ELパネルを積層して透明な立方体を作成すると、その立方体の中に立体画像が発光して見えるという利点も得られる。
【0023】
本発明の概要を図1に示す。1は透過型の空間光変調器、2は透明無機薄膜ZnS:MnELパネル、3は該ELパネル2を列べたELパネル群、4は励起光源、5は空間光変調器1からの励起光を選択された特定のELパネル2に結像させるための可変焦点レンズまたは位置可変レンズ、6は励起光をカットするフィルタである。
また、A1は励起光源4から照射された励起光であり、A2は空間光変調器1の上に書き込んだ画像である文字「A」の図形であり、A3は選択されたELパネル2が文字「A」の図形として発光している状態であり、Oは観察者である。
【0024】
ELパネル2はガラス基板上に、透明電極および絶縁層でZnS:Mn黄橙色EL発光層を挟んだ二重絶縁構造のAC駆動型無機薄膜ELパネルである。また、背面電極が透明であり、発光層および絶縁層が透明であるので、このELパネル2は透明である。
励起光源4は、ELパネル2の発光センタであるMnを励起するために、波長337nmを含む紫外線光源であることが望ましい。
【0025】
ここで本発明に用いる透明無機薄膜ZnS:Mn黄橙色ELパネル2のヒステリシス特性(メモリ効果)および光照射効果について説明する。無機薄膜ELのヒステリシス特性については、従来よく知られている現象であるが、我々はメモリ効果を持つ無機薄膜ELに光を照射するとその光照射パワーに応じて、発光強度が上がるという現象を見出し、本発明の裸眼立体表示装置にこの現象を適用した。
二重絶縁構造のZnS:Mn薄膜EL素子は、そのMn濃度を0.3wt%以上にすると、図2に示すように、電圧上昇時と降下時で電圧−輝度特性にヒステリシスが生じる。これはメモリ効果と呼ばれる。我々はメモリ効果を持つ薄膜ELパネルにしきい電圧を印加し、励起光を照射すると、その輝度が上昇するという現象を見出した。Mnの励起波長は約337nmであり、この付近の波長を持つ紫外線を、しきい電圧を印加したELパネルに照射すると、輝度を上昇させることができる。
【0026】
即ち、例えば、電圧上昇時のしきい電圧(図2の点A)に状態があるとする。このパネルに紫外線を照射すると点Bの発光状態に移動し、紫外線を切ってもその状態が保たれる。紫外線光のパワー強度を上げると、点B→C→D→E→Fに輝度が上昇していく。このため、グレースケールの表示も可能となる。
【0027】
またZnS:Mn以外に、SrS:Ce青色EL、CaS:Eu赤色ELでも、同じようにメモリ効果、励起光照射効果がある。これは、電界発光(EL発光)がMn、Ce、Eu等の発光センタを電子衝突で励起するのに対し、これらの発光センタを励起する波長の光を照射しても、同様に励起できるためである。
該無機薄膜EL素子がZnS:Mn黄橙色ELの場合には、光源が波長337nmを含む光がMnを励起し、SrS:Ce青色ELの場合には波長430nmを含む光がCeを励起し、CaS:Euの場合には、波長480nmを含む光がEuを励起して、上記の効果が現れる。
【0028】
また、しきい電圧は、一般に、ELパネルを構成する素材(ZnS、SrS、CaS、Mn、Ce、Euなど)や、EL発光層や絶縁層の厚さや、ELパネルに印加する交流周波数などに依存するものである。
【0029】
次に動作を説明する。図1の左側の励起光源4からの励起光A1を空間光変調器1(ここでは透過型の空間光変調器を例にしている)を通過させて、所望のELパネル2に可変焦点レンズ5を介してこの像を結像させる。所望のELパネル2には、発光開始直前の電圧(しきい電圧)が印加されており、励起光を照射していない部分は発光しないが、励起光が照射された部分は発光する。従って、空間光変調器に書き込まれた画像A2が、所望のELパネル2に表示される(A3)。ELパネルを通過した励起光が観測者Oの目に入ることや観測者Oが励起光を見ることを避けるために、励起光カットフィルタ6を本裸眼立体表示装置の前面に配置しておく。ELパネル群3において、この操作を、各ELパネル2に時系列で電圧の印加と光を照射することにより、観測者Oには、立体の画像が観測できることになる。
【0030】
次に、本発明の第一の実施の形態の構成を図3に示す。1はデジタル・マイクロミラ―・デバイス(Digital Micromirror Device:DMD)空間光変調器であり、2はメモリ効果を持つ透明無機ELパネルであり、3は該ELパネル2を列べたELパネル群であり、4は励起光源であり、5は可変焦点レンズであり、6は励起光をカットするフィルタであり、7は発光を開始する直前の電圧(しきい電圧)を出力する交流電源であり、8は時系列で各ELパネルに電圧を印加するスイッチである。
また、B1は該励起光源4からの励起光であり、B2はDMD空間光変調器1に表示された文字「A」の画像であり、B3は透明ELパネル2に励起光が当たり発光している所であり、Oは観察者である。
また、DMD空間光変調器1、励起光源4、可変焦点レンズ5、スイッチ8を制御する制御部がある。制御部については特に図示はしていない。
【0031】
次に、ELパネル2の一例として、透明二重絶縁構造薄膜ELパネルの断面図を図4に示す。4−1は透明ガラス基板である。4−2は透明電極であり、4−3はTa2O5などの絶縁層であり、4−4はZnS:Mn膜発光層であり、4−5は絶縁層4−3と同様の絶縁層であり、4−6は透明電極であり、この順序で透明ガラス基4−1の上に積層されている。4−7はガラス基板側面から取り出した電極である。
ここで、透明電極絶4−2は透明ガラス基板4−1の側面にエッジ部を介して接続されている。また、透明電極4−6は、透明電極絶4−2と接続されないように、透明電極絶4−2が透明ガラス基板4−1に接続されている側面と異なる透明ガラス基板4−1の側面にエッジ部を介して接続されている。
【0032】
ELパネル2は、In2O3:Ti(ITO)透明電極およびTa205等の絶縁層でEL発光層を挟んだ二重絶縁構造のAC駆動型透明無機薄膜ZnS:MnELパネルであり、ガラスの側面も鏡面研磨されており、背面電極が透明電極であるので、表面および側面から見ても透明である。透明電極、絶縁層、発光層の膜厚は数100nmと光の波長よりも薄いため、これらの材料の屈折率が高いにもかかわらず、光学的にはガラスの屈折率とこれらの膜の屈折率がほぼ等しく、ガラス/透明電極/絶縁層/発光層/・・・と積層しても、これらの界面反射による光の減衰はない。
【0033】
これらのELパネル2は重ねてもよいし、空間を置いて配列してもよい。空間を置く場合には、ガラス面および背面の透明電極には無反射コートを施す必要がある。また重ねる場合にも、これらのELパネル間に空隙が生じるので、ガラス/空気および透明電極/空気の界面の反射を押さえるために、ガラスの屈折率と同じ屈折率を持つマッチングオイルを充填してもよい。
また、上下左右どの方向から見ても立体的に見えるようにするために、例えば、ガラスの端面も鏡面研磨して、あたかも透明なガラスキューブに見えるようにすることもできる。但し電極の取り出し部分は透明とはならない。電極の取り出しは、ガラス表面と側面のエッジ部分を介して、ガラス側面まで透明電極を付け、ガラス側面の透明電極から電極を取り出している。
また、形状はガラスキューブのみによらず、立方体や、直方体や、任意の立体形状とすることも可能である。
【0034】
次に、可変焦点レンズ5について説明する。高速な可変焦点レンズには各種の物が開発されている。図5に可変焦点レンズの一例を示す。5−1はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)ピエゾ素子などの圧力をかける素子、5−2は伸縮性のあるゴムなどの側壁、5−3は液体を収める容器、5−4は透明液体(水など)、5−5は透明で伸縮性のあるゴムなど、5−6は人射光ビーム、5−7は出射光ビームである。
透明液体を伸縮性の透明ゴムで挟み、その側面からPZTなどのピエゾ素子の圧力で押したり引いたりして、ゴムの凸形状を変化させて、焦点距離を変えている。この速度は基本的にピエゾの速度であるので、μsと応答が速い(例えば、特開2000−249813号公報「可変焦点レンズ」参照)。
なお、可変焦点レンズ5の代わりに、可変位置レンズ5を用いて、画像を所望のディスプレイに投影してもよい。この場合も、固定の焦点のレンズにピエゾ素子を付けて、その位置を高速に移動する。
また、ピエゾ素子の代わりに、電磁モータを用いても構わない。この原理は、自動焦点力メラに用いられている。
【0035】
次に空間光変調器1について、簡単に説明する。空間光変調器とは、光の振幅、位相あるいは偏光の状態を変調する素子を、二次元的な空間にピクセルとして配列したものである。素子が二次元的に配置されているため、入力された文字の図形や輪切り画像に合わせて二次元的に光変調を行うことが可能である。空間光変調器には、小さい鏡(鏡面素子)を複数用いた反射型の空間光変調器(例えば、DMD空間光変調器)や、液晶を用いた透過型の空間光変調器(例えば、強誘電性液晶空間光変調器)がある。
第一から第三の実施の形態においては、空間光変調器1を用いて、励起光を任意の画像になるように二次元平面において変調させている。
【0036】
空間光変調器1として、まず、第一の実施の形態で用いる空間光変調器であるデジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device:DMD)空間光変調器について説明する。DMD空間光変調器は、例えば、TEXAS INSTRUMENTS(登録商標)社より、実験用のDMD空間光変調器としてDiscovery1100として、駆動ソフトを含めて販売されている。その構造を図6に示す。
DMDは、CMOS上にヒンジ付きのマイクロミラーアレイを列べたもので、電圧を印加しない場合には、ヒンジの角度は0°であるが、電圧をプラスあるいはマイナスに印加すると、ヒンジがDMD面の45°対角を対称線として土12°に傾く。光を斜めから照射すると−12°の角度に傾いたミラーがDMD基板に垂直に反射されてELパネルに到達するのに対し、+12°の光は蹴られて、ELパネルには達しない。μsの応答が可能である。
【0037】
また、空間光変調器1として、第三の実施の形態において用いられる、高速に動作する透過型の空間光変調器として、強誘電性液晶空間光変調器があり、これも市販されている。応答速度は数10μsである。例えば、DISPLAYTECH(登録商標)社の強誘電性液晶空間光変調器LIGHTCASTER(登録商標)1280×768が本実施の形態に適用可能である。
【0038】
次に第一の実施の形態の動作を説明する。図3の手前の励起光源4からの励起光B1を、DMD空間光変調器1に斜めから当てる。DMD空間光変調器1には文字「A」の画像B2が表示されており、文字「A」の図形の励起光がDMD空間光変調器1で垂直に反射される。その他の光は外側に蹴られる。選択したELパネル2に印加する電圧はしきい電圧とする。このELパネル2に、空間光変調器1から画像B2の形に反射されてきた励起光の焦点が合うように、可変焦点レンズ5の焦点を変え、選択したELパネル2に画像B2が書き込める。この操作を繰り返すことによって、動画表示が可能な立体ディスプレイが実現できる。
なお、可変焦点レンズ5の代わりに位置可変レンズ5を用い、可変焦点レンズ5の焦点を変える代わりに、位置可変レンズ5の位置を変えてもよい。
【0039】
図7に各ELパネル2(ELパネル群3)に印加する電圧パルスのタイムチャートを示す。7−1は第1番目のELパネル2のゼロ電位を示す。7−2は第2番目のELパネル2のゼロ電位を示す。7−3は第3番目のELパネル2のゼロ電位を示す。7−4は第4番目のELパネル2のゼロ電位を示す。7−nは第n番目のELパネル2のゼロ電位を示す。7−200は第200番目のELパネル2のゼロ電位を示す。時間経過に従い、まず第1番目のELパネル2に対して、しきい電圧が印加される。印加されるのは交流電圧である。図には交流を簡略して記載してある。また、図では交流の印加として1周期のみの交流が示してあるが、交流の印加期間は1周期のみに限られるものではない。
第1番目のELパネル2にしきい電圧が印加されている間に、第1番目のELパネル2に画像としての励起光が焦点を合わせて当てられることにより、第1番目のELパネル2が画像の形に光る。次に、第2番目のELパネルに対して、しきい電圧が印加され、同様の処理が行われ、第2番目のELパネル2が画像の形に光る。その後、次々に印加されるELパネルが変更されていき、第200番目のELパネルまで、しきい電圧が印加され、同様の処理がなされる。その後、再度第1番目のELパネルが印加される。このように、連続する各ELパネルに対して、時間的に連続して、しきい電圧を印加する点が重要となる。また、以上のような印加電圧のタイミングの制御は、スイッチ8と制御部によってなされる。
【0040】
以上のような構成において、例えば、200枚のパネルを書き込むのに100msecを要し、一枚のパネルに掛ける時間は500μsecである。DMD空間光変調器や強誘電性液晶空間光変調器が高速に駆動できるので、500μsecの間に空間光変調器を駆動させることは十分可能である。従って、1秒間に10コマの動画立体画像を表示することが可能となる。
【0041】
また、励起光が観察者Oに見えることや当たることを防ぐために、前面に励起光カットフィルタ6を配置している。図3では、本発明の内容を理解し易くするために、Aの文字が10個分離して奥行き方向に並んだように描いているが、実際にはガラス基板を薄くして文字のピッチを狭くし、枚数を増やすことにより、Aの文字が奥行き方向に連続しているように見える。例えば、10cmx10cmx0.5mm厚の透明無機ELパネルを200枚積層して、約10cm角の透明立方体を作成し、その中に立体表示をすることも可能である。
【0042】
以上に説明の、第一の実施の形態による立体ディスプレイは、メガネをかける必要はなく、さらに錯覚利用あるいは両眼視差を利用していないので、目が疲れることもなく、多数の人が同時に立体像を見ることができるという利点がある。
【0043】
同様にSrS:Ce青色EL、CaS:Eu赤色ELでも同様のメモリ効果があり、CeあるいはEuの励起波長(それぞれ430nm、480nm)に相当した青色光を照射すると光を照射した部分のみが発光することになる。
【0044】
以上に説明した第一の実施の形態においては、各ELパネル2には文字「A」の図形が描画されていた。しかし、各ELパネル2に、それぞれ任意の画像を描くことが可能である。好ましくは、1枚のELパネル2には立体物の輪切り画像が描かれ、輪切り画像の集合として、立体画像が見られる。また、先に説明したように、励起光の照射の強度(または単位時間における励起光の強度)によってELパネル2の発光量が変化し、濃淡を作り出すことができる。また、描画する画像を時間的に変化させることにより、3次元の動画やアニメーションとして表示することができる。このような実施の形態を、第二の実施の形態として以下に説明する。
【0045】
第二の実施の形態における構成については、図3の第一の実施の形態に、更に画像記憶部が追加される。
画像記憶部には、DMD空間光変調器1へ送る複数の連続する輪切り画像のデータが記憶されている。記憶されている画像は、連続する輪切り画像のデータであり、時刻t1の各輪切り画像は、輪切り画像データ(t1、1)、輪切り画像データ(t1、2)・・輪切り画像データ(t1、n)・・輪切り画像データ(t1、200)として連続して記憶されているとする。同様に、時刻t2の輪切り画像の各データは、輪切り画像データ(t2、1)、輪切り画像データ(t2、2)・・輪切り画像データ(t2、n)・・輪切り画像データ(t2、200)として保存されている。以下、各時刻tnについての、輪切り画像データも同様に保存されているものとする。
【0046】
また、制御部での処理として、画像記憶部より輪切り画像データを読み出し、輪切り画像データをDMD空間光変調器1へ設定し、また輪切り画像データの濃淡に応じてDMD空間光変調器1を制御することが追加される。
画像記憶部と制御部については、特に図に明示してはいない。
【0047】
次に、立体物の連続する輪切り画像の濃淡を付けて、各ELパネル2(ELパネル群3)に連続して描画し、3次元動画として表示を行う第二の実施の形態においてなされる動作を、図8のフローチャートを用いて説明する。
図8のフローチャートにおいては、選択する輪切り画像と選択するELパネルを識別するための番号として番号iと、動画としての画像識別するために時刻tが変数としてある。説明のため、初期値としてi=1、t=t1として説明を始める。
まず、制御部は、画像記憶部より輪切り画像データ(t1,1)を読み出し(ステップS1)、読み出した輪切り画像データ(t1、1)をDMD空間光変調器1に設定する(ステップS2)。次に、可変焦点レンズ5の焦点を変えることにより、第1番目のELパネル2に空間光変調器1からの画像の焦点が合うようにする(ステップS3)。次に、第1番目のELパネル2にしきい電圧を印加する(ステップS4)。次に、励起光源4を点灯する(ステップS5)。
【0048】
ここまでの処理により、励起光源4からの光が、DMD空間光変調器1に斜めから当てられる。DMD空間光変調器1には輪切り画像データ(t1、1)の画像に合わせて、鏡面素子の角度が調節されており、画像に合わせて励起光を反射する。輪切り画像データ(t1、1)の画像に対応する光がDMDで垂直に反射され、可変焦点レンズ5により第1番目のELパネル2にその焦点が合わせられ、また、第1番目のELパネル2にはしきい電圧が印加されているため、第1番目のELパネル2が輪切り画像データ(t1、1)の形に発光する。この第1番目のELパネル2の発光は、全方向へ向けて発光されるので、あらゆる方向の観察者Oから見ることができる。
【0049】
次に、輪切り画像データ(t1、1)の画像の濃淡に合わせてDMD空間光変調器1を制御し、第1番目のELパネル2の発光の強度(濃淡)を調整する(ステップS6)。
これは、鏡面素子を振動させて、ELパネルに達する光の量を多くすると、その鏡面素子に対応するELパネル2の部分は明るく光り、また逆に、ELパネルに達する光の量を少なくすると、その鏡面素子に対応するELパネル2の部分は暗く光ることを利用することにより行われる。
以上のように、DMD空間光変調器1の各鏡面素子の振動のさせ方を、画像の濃淡に合わせて調節することにより、ELパネル2に対して濃淡を付けて発光することが可能となる。
【0050】
次に、励起光源4を消灯し、第1番目のELパネル2へのしきい電圧の印加を無くす(ステップS7)。これにより、第1番目のELパネル2の発光は終了する。
【0051】
新規
その後、選択する輪切り画像データおよび選択するELパネル2の番号iをインクリメントし、番号iが2となる(ステップS8)。次の先のステップS1からステップS7と同様の処理が行われ、輪切り画像データ(t1,2)が第2番目のELパネル2に描画される。
【0052】
次に、選択する輪切り画像データおよび選択するELパネル2の番号iが、ELパネル2の枚数である200より大きくなった場合には、番号iが1に戻される(ステップS9)。その後、再度ステップ1からステップS7が繰り返され、輪切り画像データ(t1,1〜n)が第1〜n番目のELパネル2に、それぞれ描画される。
【0053】
以上までの処理により、連続した輪切り画像が、ELパネル群3の中に、立体的に表示される。また、各ELパネル2の発光は全方向になされるので、全方向の観測者Oから、同時に立体として見ることが可能である。
【0054】
次に、一定時間が経過した後に、時刻tがインクリメントされ、t1がt2となる。その後、ステップS1からS9が繰り返され、輪切り画像データ(t2,1〜n)が第1〜n番目のELパネル2に、それぞれ描画される。
これにより、全方向の観測者Oから、同時に、立体の動画として見ることが可能となる。
【0055】
また、ここでは、連続する輪切り画像のデータが、画像記憶部に保存されているとしたが、航空管制などにおいては、飛行機の時事刻々と変化する位置データに基づいて作成される画像でもよいし、3Dポリゴン画像のようにコンピュータ内でリアルタイムに作成される画像でもよい。
【0056】
また、上述のステップS9においては、一定時間が経過した後に、時刻tがインクリメントされるとしたが、ステップS9において無条件に時刻tをインクリメントすることも可能であるし、ステップS9を巡回した回数に応じて時刻tがインクリメントしてもよい。
また、ELパネルの枚数を200枚として説明を行ったが、枚数は200に限定されるものではない。
【0057】
次に第三の実施の形態について説明する。第一または第二の実施の形態では、空間光変調器1に描いた図を可変焦点レンズ5でELパネル2へ焦点を合わせて投影した。これに対して、第三の実施の形態では、可変焦点レンズまたは可動(位置可変)レンズを用いない構成からなる裸眼立体表示装置を説明する。
【0058】
第三の実施の形態を図9に示す。ここで1は強誘電性液晶空間光変調器、2はSrS:Ce青色薄膜ELパネル、3は該ELパネル2を列べたELパネル群、4はSrS中のCeを励起する波長430nmを含む励起光源、9は励起光源からの光を平行光にする凸レンズ、6は430nmの励起光をカットするフィルタである。各ELパネル2についての交流電源やスイッチは省略してある。
また、C1は該凸レンズ9によって平行にされた平行光、C2は強誘電性液晶空間光変調器1に描いた文字「A」の図形、C3は空間光変調器によって文字「A」の図形に応じた平行光、C4はELパネル2で励起されて発光している部分であり、Oは観測者である。
【0059】
ここで第三の実施の形態と第一または第二の実施の形態とで大きく異なるのは、空間光変調器1とELパネル2の間に可変焦点レンズ(図3の5)が設置されていない点である。第一または第二の実施の形態では、空間光変調器1に描いた画像B2を、各ELパネル2に焦点を合わせるようにして、ELパネル2に画像を書き込んだ。これに対して第三の実施の形態では、励起光源4からの励起光を、焦点を無限(即ち平行光)にして、全てのELパネル2に励起光を照射している。
光は回折するので、光路が長くなれば、画像がぼけるが、空間光変調器1とELパネル2の距離が短かければ、画像のぼけは少なくなり、可変焦点レンズ(図3の5)を用いなくても、全てのELパネル2に励起光を照射し、発光させたい所望のELパネル2に印加電圧を印加することにより、所望のELパネル2に画像を書き込むことができる。
このようにして、ELパネル群3の各ELパネル2に対して、画像を書き込む操作を繰り返すことにより、立体ディスプレイを実現できる。
ここで注意する点は、全てのELパネル2に励起光が照射されているが、全てのELパネル2が発光するわけではなく、励起光が照射されておりかつ印加電圧が印加されたELパネル2のみが発光する、ということである。
【0060】
以上の、第三の実施の形態におけるフローチャートは、第一または第二の実施の形態においてなされたものと、ほぼ同じである。図8のフローチャートにおいては、ステップS3の可変焦点レンズ5の調節が不要となるのみである。
【0061】
また図8のステップS6においてなされる画像に応じた濃度の調節において、強誘電性液晶空間光変調器に応じた調節がなされる。
【0062】
なお、第一から第三の実施の形態の説明において、レンズとして可変焦点レンズや位置可変レンズや凸レンズ、空間光変調器としてDMD空間光変調器や強誘電性液晶空間光変調器、ELパネルとしてZnS:Mn黄橙色ELパネル、SrS:Ce青色ELパネル、CaS:Eu赤色ELパネルと各ELパネルに対応する励起波長を有する励起光源とを用いて説明してきたが、これらの組み合わせは説明に限られるものではなく、任意に組み合わせることが可能である。
【0063】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は医療分野や航空管制などで用いる三次元ディスプレイ用に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の実施形態による裸眼立体表示装置の構成の概要を示す説明図である。
【図2】薄膜EL素子のメモリ効果を示すグラフである。
【図3】第一の実施形態による裸眼立体表示装置の構成を示す説明図である。
【図4】透明二重絶縁構造薄膜ELパネルの構造を示す断面図である。
【図5】可変焦点レンズの一例を示す説明図である。
【図6】DMDの構成を示す分解斜視図である。
【図7】各ELパネルに印加する電圧パルスのタイミングを示すタイムチャートである。
【図8】第二の実施形態による裸眼立体表示装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】第三の実施形態による裸眼立体表示装置の構成を示す説明図である。
【図10】従来の裸眼立体表示装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 空間光変調器
2 ELパネル
3 ELパネル群
4 励起光源
5 可変焦点レンズまたは位置可変レンズ
6 フィルタ
7 交流電源
8 スイッチ
9 凸レンズ
O 観測者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の上に第1の透明電極、第1の絶縁層、発光層、第2の絶縁層、第2の透明電極の順で積層されたヒステリシス特性を有する透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを多段に列べたELパネル群と、
前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを励起する波長を有する励起光源と、
前記励起光源からの光を画像データに基づいて2次元平面で変調し前記変調した光を前記ELパネル群へ照射する空間光変調器と、
を具備することを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の裸眼立体表示装置において、
前記空間光変調器と前記ELパネル群との間に、前記空間光変調器からの光を前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへ焦点が合うように投射する可変焦点レンズまたは位置可変レンズを設けたことを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項3】
透明基板の上に第1の透明電極、第1の絶縁層、発光層、第2の絶縁層、第2の透明電極の順で積層されたヒステリシス特性を有する透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを多段に列べたELパネル群と、
前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを励起する波長を有する励起光源と、
前記励起光源からの光を画像データに基づいて2次元平面で変調し前記変調した光を前記ELパネル群へ照射する空間光変調器と、
前記空間光変調器と前記ELパネル群との間に設けられ、前記空間光変調器からの光を前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへ焦点が合うように投射する可変焦点レンズまたは位置可変レンズと、
前記各透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへ順次しきい電圧を加えると共に、該しきい電圧を加えた透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルに書き込むべき画像データを前記空間光変調器に設定し、また、前記励起光源からの光が前記空間光変調器を介して前記しきい電圧を加えた透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルに焦点が合うように前記可変焦点レンズまたは位置可変レンズの焦点距離を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の裸眼立体表示装置において、
前記空間光変調器と前記励起光源の間に、前記励起光源からの光を平行光にする凸レンズを有することを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載の裸眼立体表示装置において、
前記空間光変調器は電気書き込み型のデジタルマイクロミラーデバイス型の空間光変調器または電気書き込み型の強誘電性液晶空間光変調器であることを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載の裸眼立体表示装置において、
前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルの透明基板の端面が鏡面研磨されており、
前記第1および第2の透明電極が、互いに接続されないようにして、前記透明基板の端面にエッジ部分を介して接続されるように形成されており、
前記第1および第2の透明電極の、前記透明基板の端面の接続する部分に、取り出し電極が付けられている、
ことを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の裸眼立体表示装置において、
前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルはZnSを母体としてMnをドープしたZnS:Mn黄橙色ELパネル、あるいはSrSを母体としてCeをドープしたSrS:Ce青色ELパネル、あるいはCaSを母体としてEuをドープしたCaS:Eu赤色ELパネルであり、
前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルの母体がZnSの場合、Mn濃度が0.3wt%よりも高い、
ことを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかの項に記載の裸眼立体表示装置において、
前記励起光源が、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルがZnS:Mn黄橙色ELの場合には、該光源が波長337nmを含む紫外線光源であり、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルがSrS:Ce青色ELの場合には波長430nmを含む青色光源であり、前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルがCaS:Euの場合には、波長480nmを含む青色光源である、
ことを特徴とする裸眼立体表示装置。
【請求項9】
透明基板の上に第1の透明電極、第1の絶縁層、発光層、第2の絶縁層、第2の透明電極の順で積層されたヒステリシス特性を有する透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを多段に列べたELパネル群と、
前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルを励起する波長を有する励起光源と、
前記励起光源からの光を画像データに基づいて2次元平面で変調し前記変調した光を前記ELパネル群へ照射する空間光変調器と、
前記空間光変調器と前記ELパネル群との間に設けられ、前記空間光変調器からの光を前記透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへ焦点が合うように投射する可変焦点レンズまたは位置可変レンズと、
を具備する裸眼立体表示装置の駆動方法において、
前記ELパネル群の透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルへしきい電圧を加え、
該しきい電圧を加えた透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルに書き込むべき画像を前記空間光変調器に書き込み、
前記励起光源からの光を該空間光変調器によって変調して前記可変焦点レンズまたは位置可変レンズによって前記しきい電圧を加えた透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルに焦点を合わせて投射して画像書き込みを行い各透明無機薄膜エレクトロルミネッセントパネルの励起光が照射された部分のみを発光状態にし、
前記ELパネル群において上記操作を繰り返すことによって立体画像を表示することを特徴とする裸眼立体表示装置の駆動方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−187863(P2007−187863A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5760(P2006−5760)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】