説明

製パン機及び製パン機の運転方法

【課題】米粉を含む製パン材料を用いて製パンする際、ガス抜き工程を略実行しない構成で、発酵工程をできるだけ長い時間実行できる製パン機及び製パン機の運転方法の提供。
【解決手段】内部にパンケース2を収容するケーシングCの開口部4を密封状態で閉塞する蓋体3と、ケーシングCと蓋体3とにより形成される加熱室5内を温度調整する温度調整部6と、温度調整部6の運転を制御する制御部7とを備え、制御部7が、パンケース2内の製パン材料の混練工程、温度調整部6を加熱作動させ製パン材料を発酵する発酵工程を実行し、温度調整部6を加熱作動させ製パン材料を焼き上げる焼成工程を実行する製パン機にて、製パン材料として少なくとも米粉を含む原材料を用い、加熱室5内の圧力を調整する圧力調整部12を備え、制御部7が、発酵工程における加熱室5内の圧力が大気圧よりも高くなるように、圧力調整部12を加圧作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を介して内部にパンケースを収容するケーシングと、ケーシングの開口部を密封状態で閉塞する蓋体と、ケーシングと蓋体とにより形成される加熱室内を温度調整する温度調整部と、温度調整部の運転を制御する制御部とを備えた製パン機、及びその製パン機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような製パン機では、制御部が、パンケース内に配設された混練羽根によりパンケース内の製パン材料を混練する混練工程と、温度調整部を低温度で加熱作動させて製パン材料を発酵する発酵工程とを実行し、さらに、温度調整部を高温度で加熱作動させて製パン材料を焼き上げる焼成工程を順次自動的に実行し、製パンする構成とされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4222959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、製パン材料を十分に発酵させるためには、発酵に適した温度で発酵工程の時間を十分に長い時間確保する必要がある。しかしながら、発酵工程の時間を長くすると、発酵により発生したガスが製パン材料を必要以上に膨張させてパンケースからあふれさせたり、製パン材料内に当該ガスの気泡が不均一に分布する虞があるため、発酵工程中においてパンケース内に配設された混練羽根を定期的に回転させるガス抜き工程を実行する必要がある。
【0005】
一方で、製パン材料としては、従来から小麦粉を含む原材料を用いることが行われているが、近年、小麦粉の全部又は一部に替えて米粉を含む原材料を用いることが提案されている。この米粉は、水と混合攪拌された際、グルテンを含む小麦粉と比較して粘弾性が十分ではなく比較的脆いものであり、発酵工程において混練羽根を回転させるガス抜き工程を実行すると、製パン材料の組織が分断して安定した形状を維持できない状態となり易い。このような状態のまま焼成工程にて製パン材料を焼き上げても、ふっくらとした品質の高いパンを焼き上げることは困難である。
従って、米粉を含む製パン材料では、ガス抜き工程を極力実行しなくて済むよう、一般的に、ガスの発生の原因となる発酵工程の時間が極力短くなるように設定されている。この点、粘弾性を付与するためにグルテンを添加して、発酵工程をある程度長くしつつ、ガス抜き工程を実行した際の組織の分断を防止することも可能であるが、米粉を含む原材料を用いているので、米粉の存在に起因するガス抜き工程での製パン材料の組織の分断が発生する虞は依然として残る。
【0006】
このような事情から、特許文献1の製パン機では、小麦粉を含む原材料の製パン材料における発酵工程の時間(例えば、2〜3時間程度)よりも、米粉を含む原材料の製パン材料における発酵工程の時間を短くして(例えば、0.5〜1.5時間程度)、ガス抜き工程の回数を減らし、製パン材料の組織の分断を防止することとしている。
【0007】
しかしながら、発酵工程を短くすると製パン材料の発酵が十分に進まず、パン特有の発酵による香りを十分に引き出すことができないまま、また、生地の熟成が十分に進まないまま、発酵工程から焼成工程に移行して、パンが焼き上げられてしまうことになる。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、米粉を含む製パン材料を用いて製パンする際に、ガス抜き工程を略実行しない(多くとも1回だけ実行する)構成としながら、発酵工程をできるだけ長い時間実行できる製パン機及びその製パン機の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る製パン機は、開口部を介して内部にパンケースを収容するケーシングと、前記ケーシングの開口部を密封状態で閉塞する蓋体と、前記ケーシングと前記蓋体とにより形成される加熱室内を温度調整する温度調整部と、前記温度調整部の運転を制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記パンケース内に配設された混練羽根により前記パンケース内の製パン材料を混練する混練工程と、前記温度調整部を加熱作動させて前記製パン材料を発酵する発酵工程とを実行し、さらに、前記温度調整部を加熱作動させて前記製パン材料を焼き上げる焼成工程を実行するように構成された製パン機であって、その特徴構成は、
前記製パン材料として少なくとも米粉を含む原材料を用い、
前記加熱室内の圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記制御部が、前記発酵工程における前記加熱室内の圧力が大気圧よりも高くなるように、前記圧力調整部を加圧作動させる点にある。
【0010】
ここで、米粉を含む製パン材料を用いて製パンする際に、ガス抜き工程を複数回実行すると米粉特有の製パン材料の組織の分断が発生する虞があるため、ガス抜き工程を実行しない又は多くても1回実行する程度の発酵工程とならざるを得ないことから発酵工程を短くする構成とされていたが、発酵工程が短いと発酵が十分に進行しないため、本願の発明者らは、ガス抜き工程を略実行しない(多くとも1回だけ実行する)構成としながら、発酵工程をできるだけ長い時間実行でき、発酵工程において製パン材料を十分に発酵できる構成とするために、鋭意研究を重ねた。
その結果、上記特徴構成のように、制御部が、パンケース内の製パン材料の混練工程、発酵工程、焼成工程を実行する際、発酵工程における加熱室内の圧力が大気圧よりも高くなるように圧力調整部を加圧作動させることにより、発酵工程において加熱室内を加圧した状態で製パン材料を発酵させることができ、発酵により発生したガスが製パン材料を膨張させようとしても、製パン材料は外表面全体に所定の圧力(大気圧よりも高い圧力)を受け、その膨張が抑制されることを見出した。これにより、発酵工程において発酵が所望程度進行したと判断できる所定の膨張量となるまでの時間に関して、加熱室内を大気圧よりも高い圧力で加圧した場合の当該時間を、加圧しない場合(大気圧程度)より長くしても、発酵により発生したガスが製パン材料を必要以上に膨張させてパンケースからあふれさせたり、製パン材料内に当該ガスの気泡が不均一に分布する等の問題を回避することができる。つまり、発酵工程においてガス抜き工程を略実行しない状態で、発酵が所望程度進行するまでの発酵時間を長く確保することができる。なお、加圧の上限は製パン材料の発酵を阻害しない程度の圧力に設定される。
よって、製パン材料として米粉を含む原材料を用いた場合でも、ガス抜き工程を略実行しない状態で、発酵工程における製パン材料の発酵を十分に進行させることができる。
【0011】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記発酵工程において前記加熱室内の圧力が大気圧よりも高くなるように前記圧力調整部を加圧作動させた後、前記焼成工程における前記加熱室内の圧力が大気圧よりも低くなるように前記圧力調整部を減圧作動させる点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、制御部が、大気圧を基準として、発酵工程では加熱室内の圧力が当該基準の大気圧よりも高い圧力となるように圧力調整部を加圧作動させ、焼成工程では加熱室内の圧力が当該基準の大気圧よりも低い圧力となるように圧力調整部を減圧作動させるので、上述の通り、発酵工程では、製パン材料は外表面全体に所定の圧力(大気圧よりも高い圧力)を受け、その膨張が抑制され、これに対し、焼成工程では、製パン材料は外表面全体に所定の圧力(大気圧よりも低い圧力)を受け、製パン材料の膨張が促進されることとなる。これにより、焼成工程において膨張が所望程度進行したと判断できる所定の膨張量となるまでの時間に関して、加熱室内を減圧した場合(大気圧よりも低い圧力)の当該時間を、減圧しない場合(大気圧程度)よりも短くすることができる。つまり、発酵工程においてガス抜き工程を略実行しない状態で、発酵が所望程度進行するまでの発酵時間を長く確保しながら、一方で、焼成工程において膨張が所望程度進行するまでの焼成時間を短くすることにより、製パン材料の混練工程、発酵工程及び焼成工程を実行して、パンを焼き上げるまでに必要な総工程時間が、不必要に長くなることを防止することができる。
【0013】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記制御部が、大気圧下で前記発酵工程及び前記焼成工程を実行する場合の総工程時間と、前記圧力調整部を加圧作動させて前記発酵工程を実行する時間及び前記圧力調整部を減圧作動させて前記焼成工程を実行する時間の総工程時間との両総工程時間が略同一の長さの時間になるように、前記温度調整部及び前記圧力調整部を作動させる点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、製パン材料を米粉を含む原材料とした場合において、大気圧下で発酵工程及び焼成工程を実行した総工程時間と、大気圧に対して加圧した状態における発酵工程及び減圧した状態における焼成工程を実行した総工程時間とが、略同一の長さの時間となるので、発酵工程の時間を長くして発酵を十分に進行させたとしても、焼成工程の時間を焼成を十分に行える範囲内で短くして、最終的に、パンを焼き上げるまでに必要な総工程時間が、大気圧下で圧力を変動させない場合における総工程時間よりも長くなることを防止することができる。なお、両総工程時間が略同一とは、完全に同一の時間のみならず、相互に±5分程度ずれた時間となっている場合も誤差の範囲として含まれる概念である。
【0015】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記発酵工程において、前記加熱室内の温度が3〜10℃の低温範囲内となるように、前記温度調整部及び前記圧力調整部を作動させる点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、制御部が、発酵工程において、加熱室内の温度が3〜10℃の低温範囲内となるように、温度調整部及び圧力調整部を作動させるので、発酵に関与する酵母の活性を低下させ、より長時間且つ低速度での発酵を進行させることができる。すなわち、一般に、発酵に関与する酵母が活性化する温度は、25〜40℃程度、特に35℃程度であるが、本特徴構成では当該温度よりも低い温度範囲で発酵工程を実行することとなる。これにより、上述した作用効果に加えてさらに、ガス抜き工程を略実行することなく、発酵工程において発酵が所望程度進行したと判断できる所定の膨張量となるまでの時間をより長くすることができ、生地の熟成をより十分に進行させることができる。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係る製パン機の運転方法は、上記特徴構成の何れかの製パン機の運転方法であって、その特徴構成は、
前記製パン材料として少なくとも米粉を含む原材料を用い、
前記発酵工程における前記加熱室内の圧力を大気圧よりも高くして、当該発酵工程を実行する点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、上述の通り、制御部が、パンケース内の製パン材料の混練工程、発酵工程、焼成工程を実行する際、発酵工程における加熱室内の圧力が大気圧よりも高くなるように圧力調整部を加圧作動させることにより、発酵工程において加熱室内を加圧した状態で製パン材料を発酵させることができ、発酵により発生したガスが製パン材料を膨張させようとしても、製パン材料は外表面全体に所定の圧力(大気圧よりも高い圧力)を受け、その膨張が抑制される。これにより、発酵工程において発酵が所望程度進行したと判断できる所定の膨張量となるまでの時間に関して、加熱室内を大気圧よりも高い圧力で加圧した場合の当該時間を、加圧しない場合(大気圧程度)より長くしても、発酵により発生したガスが製パン材料を必要以上に膨張させてパンケースからあふれさせたり、製パン材料内に当該ガスの気泡が不均一に分布する等の問題を回避することができる。つまり、発酵工程においてガス抜き工程を略実行しない状態で、発酵が所望程度進行するまでの発酵時間を長く確保することができる。なお、加圧の上限は製パン材料の発酵を阻害しない程度の圧力に設定される。
よって、製パン材料として米粉を含む原材料を用いた場合でも、ガス抜き工程を略実行しない状態で、発酵工程における製パン材料の発酵を十分に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】蓋体を開けた状態での製パン機の外観を示す斜視図
【図2】製パン機の縦断正面視図
【図3】製パン機の運転状態の概略を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、製パン機は、上方が上方開口部4(開口部の一例)にて開口したケーシングCを内部に備えた本体1、上方開口部4を介してケーシングCの内部に収容されて着脱自在に装着されるパンケース2、ケーシングCの上方開口部4を密封状態で閉塞可能で開閉自在な蓋体3、ケーシングCと蓋体3とにより形成される加熱室5内を温度調整する電熱ヒータ6(温度調整部の一例)、電熱ヒータ6の運転を制御する制御部7等を備えて構成されている。
【0021】
本体1は、平面視が概ね長方形状で、上部が開口した有底箱状に形成され、平面視において、その本体1内における長手方向の一端側(図2の左側)に寄せて、四隅が丸みを帯びた概ね長方形状のケーシングCが設けられている。そして、本体1内は、平面視で長手方向の一端側のケーシングC内に形成される加熱室5と、長手方向の他端側(図2の右側)の制御部収容室8と、それら加熱室5及び制御部収容室8の下方の伝動部収容室9との三区画に仕切られている。
【0022】
具体的には、本体1には、平面視で、矩形板状の底板部材C1が本体1内の略全域にわたって配設されている。底板部材C1は、本体1の底部との間に伝動部収容室9を形成すべく、スペーサ(図示せず)により間隔を開けて配設されている(図2参照)。また、本体1には、平面視で四隅が丸みを帯びた概ね長方形状で角筒状に構成された周壁部材C2が、本体1の長手方向の一端側に寄せた状態で底板部材C1上に固定されて配設されている。この周壁部材C2は、底板部材C1の上部の空間において、本体1の長手方向の一端側に加熱室5の一部を形成し、他端側に制御部収容室8を形成すべく配設されている。本体1の長手方向の一端側の底板部材C1によりケーシングCの底部が形成され、周壁部材C2によりケーシングCの側周面が形成されて、ケーシングCは上方開口部4を備えた有底箱状に形成される。従って、有底箱状のケーシングCと縦断側面視及び縦断正面視で上方に膨出する概略逆U字形状の蓋体3とにより区画形成された内部空間が加熱室5として形成され、この加熱室5内にパンケース2が収容されることとなる。
【0023】
電熱ヒータ6は、ケーシングCの底面上を巡らせるように屈曲した形状で長尺状のいわゆるシーズヒータで構成され、加熱室5内の下部に(パンケース2の底面の下部において、パンケース2の側壁面を外周側から所定間隔を空けて囲繞する形態で)配設されて、加熱室5内、特に、加熱室5内の下部、パンケース2の下部及び側部を加熱できるように構成されている。なお、電熱ヒータ6は、加熱室5内を加熱して、パンケース2内の製パン材料を良好に加熱可能であれば、加熱室5内の適宜位置に配設することができる。
【0024】
パンケース2は、平面視で四隅が丸みを帯びた長方形状で、上部が開口した有底箱状であり、パンケース2の底部の裏面側には、パンケース2を載置支持するパンケース台20が一体的に取り付けられ、パンケース台20を介してケーシングC内(加熱室5内)に装着される。
又、パンケース2の底部には、一対の駆動軸21,21が、上下方向の軸心回りで回転自在に支持された状態で長手方向に並べて設けられ、各駆動軸21におけるパンケース2の底部から下方側に突出した突出部には、従動側連結具22が固定されている。各駆動軸21におけるパンケース2内の底部から上方側に突出した部分には、混練羽根23が着脱自在に装着される。
【0025】
ケーシングCの底部には、パンケース2がパンケース台20に装着状態でケーシングC内に装着されたときに、一対の従動側連結具22,22夫々に係合するように、一対の駆動側連結具24,24が、上下方向の軸心回りで回転自在に支持された状態で、加熱室5の長手方向に並べられて設けられている。
【0026】
制御部収容室8には、一対の駆動軸21を駆動回転するための電動モータ25、並びに、電熱ヒータ6及び電動モータ25等の作動を制御することにより製パン機の運転を制御する制御部7が設けられている。図示しないが、制御部7は、公知の情報処理手段であるCPUやメモリ等を備えて構成され、また、電源から供給される電力を適切に各機器に供給可能に構成されている。又、制御部収容室8の上部を閉じるカバー10には、運転スイッチ等を備えた操作部11が設けられている。図示を省略するが、操作部11には、この製パン機の運転開始及び停止を指令する運転スイッチのほかに、自動焼き上げスイッチ、焼き上げ時刻を指令するタイマー、及び、製パン材料の原材料(米粉及び小麦粉の何れを含む原材料か)の選択スイッチ等が設けられている。
【0027】
更に、伝動部収容室9には、電動モータ25と一対の駆動軸21,21とを伝動連結する伝動部30が設けられている。
伝動部30は、一対の駆動側連結具24,24の夫々における底板部材C1から下方に突出する回転軸部(図示せず)に、夫々固定された一対の小プーリ31,31と、一方の小プーリ31の下側に突出する回転軸部(図示せず)に固定された大プーリ32と、電動モータ25の出力軸25a及び大プーリ32にわたって巻回された第1タイミングベルト33と、一対の小プーリ31,31にわたって巻回された第2タイミングベルト34とを備えて構成されている。これにより、電動モータ25により、一対の駆動軸21,21が回転駆動されるように構成されている。
【0028】
蓋体3は、ケーシングCの上方開口部4の後縁部に、ヒンジ構造によりケーシングCの長手方向に沿った軸心周りに揺動自在に設けられて、その揺動によりケーシングCの上方開口部4を開閉自在に構成されている。そして、蓋体3がケーシングCの上方開口部4を閉塞した状態で、蓋体3とケーシングCとの間には耐熱シール材(図示せず)が配設され、加熱室5内と製パン機の外部との間を密封状態(気密状態)とすることが可能に構成されている。
図2に示すように、蓋体3は、上部に配設される外蓋3Aと、下部に配設される内蓋としての遮熱板3Bと、外蓋3Aと遮熱板3Bとの間に配設され、少なくとも可視光を透過して外部から加熱室5内を視認可能な耐熱板ガラス3Cからなる確認窓とを備える。
【0029】
次に、本願の特徴的構成について説明する。
本願の製パン機では、図2に示すように、制御部収容室8内に、加熱室5内の圧力を調整する加減圧ポンプ12(圧力調整部の一例)を備える。詳細は図示しないが、加減圧ポンプ12は、加熱室5内にガスを強制的に供給して加熱室5内を加圧することができ、且つ、加熱室5内のガスを強制的に吸引して加熱室5内を減圧することができるように構成される。加熱室5内に供給されるガスとしては、酸素、窒素、二酸化炭素、空気等が例示でき、また、供給圧力及び流量も適宜設定することができる。加減圧ポンプ12の作動は、上述の制御部7からの指令により制御される。なお、圧力調整部として、加減圧の両方を行うことができる加減圧ポンプ12ではなく、加圧ポンプと減圧ポンプ(真空ポンプ)とをそれぞれ別個に設ける構成としてもよい。
【0030】
製パン材料としては、小麦粉(全部又は一部)の替わりに、少なくとも米粉を含む原材料であればよく、その他、水(牛乳等を含む)、イースト(酵母菌の一例)、調味料及び増粘剤等を必要に応じて加えたものを用いる。なお、米粉にグルテンを添加した製パン材料とすることもできる。
【0031】
次に、製パン機にて、製パン材料からパンを焼き上げる際の、制御部7等の動作(製パン機の運転方法)について説明する。
【0032】
作業者が、蓋体3を開放してパンケース2内に米粉を含む製パン材料を入れ、操作部11の選択スイッチを押圧して原材料として米粉を選択(グルテンの有無も選択)するとともに、自動焼き上げスイッチを押圧することにより、運転開始を指令する。
すると、図3のタイムチャートに示すように(実施例1、2参照)、制御部7は、電動モータ25を作動させて混練羽根23を回転させることによりパンケース2内の製パン材料を混練する混練工程の後、電熱ヒータ6を加熱作動させてパンケース2内の製パン材料を発酵させる発酵工程を実行し、さらに、電熱ヒータ6を加熱作動させて製パン材料を焼き上げる焼成工程を順次自動的に実行し、パンを焼き上げる。なお、図3に示すタイムチャートにおいて、各工程を示す幅は、概略の工程時間の時間幅の例を示すものである。
【0033】
本願では、制御部7は、発酵工程において加減圧ポンプ12を加圧作動させて、加熱室5内を大気圧(約0.1MPa、以下同様)よりも加圧させるように、製パン機を運転する。
具体的には、本願では、実施例1のように製パン機を運転して、パンを焼き上げるが、実施例1について比較例1と対比しながら説明する。
【0034】
〔実施例1〕
製パン材料として、パンケース2内に、米粉を100重量部、水を96重量部、グルテンを20重量部、イーストを2重量部添加して、蓋体3により上部開口部4を密封状態で閉塞固定した後、制御部7が、所定時間(例えば、15分)、所定温度(例えば、25℃)、略大気圧下において、混練羽根23を所定回転数で回転させ、当該製パン材料を混練する混練工程を実行する。
【0035】
次に、制御部7は、混練工程の終了と同時に、加減圧ポンプ12を加圧作動させて、密閉された加熱室5内に空気を強制的に供給して加熱室5内を加圧する。この際、制御部7は、加熱室5内の圧力を計測する圧力センサ(図示せず)の圧力計測結果が、所定の発酵用目標圧力となるように加減圧ポンプ12を制御する。この発酵用目標圧力は、大気圧よりも高い圧力に設定(例えば、0.25MPa)される。また、制御部7は、電熱ヒータ6を加熱作動させて、加熱室5内の温度を計測する温度センサ(図示せず)の温度計測結果が、所定の発酵用目標温度(例えば、35℃)となるように制御する。従って、制御部7は、発酵工程を、所定時間(例えば、150分)、所定温度(例えば、35℃)、大気圧よりも高い加圧雰囲気下(例えば、0.25MPa)で実行する。このような条件下で発酵工程を実行することにより、製パン材料は発酵が所望程度進行した状態となり、発酵工程を終了して焼成工程に移行できる状態となっている。
【0036】
次に、制御部7は、発酵工程の終了と同時に、加減圧ポンプ12の加圧作動を停止させて、加減圧ポンプ12により略大気圧の空気を加熱室5内に供給させる。これにより、加熱室5内は略大気圧程度に維持される。また、制御部7は、電熱ヒータ6を加熱作動させて、加熱室5内の温度を計測する温度センサ(図示せず)の温度計測結果が、所定の焼成用目標温度(例えば、180℃)となるように制御する。従って、制御部7は、焼成工程を、所定時間(例えば、50分)、所定温度(180℃)、略大気圧雰囲気下で実行して、米粉を含む製パン材料を焼き上げてパンを製造する。この実施例1では、混練工程の開始から焼成工程の終了までの総工程時間は、215分とされ、発酵工程の工程時間は、150分とされる。
【0037】
〔比較例1〕
製パン材料として、パンケース2内に、小麦粉を100重量部、水を72重量部、イーストを1重量部添加して、蓋体3により上部開口部4を密封状態で閉塞固定した後、制御部7が、所定時間(例えば、15分)、所定温度(例えば、25℃)、略大気圧下において、混練羽根23を所定回転数で回転させ、当該製パン材料を混練する混練工程を実行する。即ち、米粉及びグルテンの替わりに小麦粉を用い、小麦粉、水及びイーストの添加割合を変更した以外は、実施例1と同様にして、混練工程を実行する。
【0038】
次に、制御部7は、混練工程の終了と同時に、混練工程と同様の略大気圧下で、所定時間(例えば、149分)の間、発酵工程を実行する。比較例1の発酵工程は、3つの工程に分割されており、1次発酵工程、2次発酵工程、成型発酵工程の順に実行される。1次発酵工程は、所定時間(例えば、52分)、所定温度(例えば、32℃)で、2次発酵工程は、所定時間(例えば、37分)、所定温度(例えば、32℃)で、成型発酵工程は、所定時間(例えば、60分)、所定温度(例えば、38℃)で実行される。なお、制御部7は、各発酵工程において電熱ヒータ6をそれぞれ加熱作動させて、加熱室5内の温度を計測する温度センサ(図示せず)の温度計測結果が、各発酵工程に対応した所定の発酵用目標温度(例えば、32℃、38℃)となるように制御する。また、比較例1では、1次発酵工程と2次発酵工程との間に混練羽根23を回転させるガス抜き工程を実行し(例えば、10秒)、2次発酵工程と成型発酵工程との間にもガス抜き工程を実行して(例えば、8秒)、製パン材料が所望程度以上に膨張することを防止している。従って、制御部7は、3つに分割した発酵工程を、所定時間(例えば、149分)、所定温度、略大気圧雰囲気下で実行する。
【0039】
次に、制御部7は、成型発酵工程の終了と同時に、電熱ヒータ6を加熱作動させて、加熱室5内の温度を計測する温度センサ(図示せず)の温度計測結果が、所定の焼成用目標温度(例えば、180℃)となるように制御する。従って、制御部7は、焼成工程を、所定時間(例えば、50分)、所定温度(180℃)、略大気圧雰囲気下で実行して、小麦粉を含む製パン材料を焼き上げてパンを製造する。この比較例1では、混練工程の開始から焼成工程の終了までの総工程時間は、約215分とされ、発酵工程の工程時間は、149分とされる。
【0040】
検討すると、比較例1の小麦粉を含む製パン材料を用いた発酵工程は、149分の発酵時間が確保されているため、十分な発酵が進んでいるものと考えられるが、発酵が進行することに伴うガスの発生により製パン材料が所定の膨張量にまですぐに到達してしまい、製パン材料を収縮させるため、1次発酵工程と2次発酵工程との間及び2次発酵工程と成型発酵工程との間にそれぞれガス抜き工程を実行している。
これに対して、実施例1では、米粉及びグルテンを含む製パン材料を用いた発酵工程は、加圧雰囲気下(例えば、0.25MPa)で実行されていることから、発酵により発生したガスが製パン材料を膨張させようとしても、製パン材料は外表面全体に所定の圧力(大気圧より高い圧力)を受け、その膨張が抑制されている。このため、発酵工程において発酵が所望程度進行したと判断できる所定の膨張量となるまでの時間は、発酵工程が終了する時間(例えば、150分)となっている。
つまり、米粉を含む製パン材料を用いた場合(実施例1参照)において、発酵工程においてガス抜き工程を略実行しない状態で、発酵が所望程度進行するまでの時間を、小麦粉を含む製パン材料を用いた場合(比較例1参照)においてガス抜き工程を実行する状態で発酵工程を実行する時間と、同等の長さの時間にすることができる。
よって、製パン材料として米粉を含む原材料を用いた場合において、ガス抜き工程を実行することなく、発酵工程における製パン材料の発酵を、小麦粉を含む製パン材料を用いた場合と同程度にまで十分に進行させることできる。
【0041】
一方、本願では、制御部7は、発酵工程において加減圧ポンプ12を加圧作動させて、加熱室5内を大気圧よりも加圧させるとともに、焼成工程において加減圧ポンプ12を減圧作動させて、加熱室5内を大気圧よりも減圧させるように、製パン機を運転する。
具体的には、本願では、実施例2のように製パン機を運転して、パンを焼き上げるが、実施例2について比較例2と対比しながら説明する。
【0042】
〔実施例2〕
製パン材料として、パンケース2内に、米粉を100重量部、水を96重量部、グルテンを20重量部、イーストを2重量部添加して、蓋体3により上部開口部4を密封状態で閉塞固定した後、制御部7が、所定時間(例えば、15分)、所定温度(例えば、25℃)、略大気圧下において、混練羽根23を所定回転数で回転させ、当該製パン材料を混練する混練工程を実行する。
【0043】
次に、制御部7は、混練工程の終了と同時に、加減圧ポンプ12を加圧作動させて、密閉された加熱室5内に空気を強制的に供給して加熱室5内を加圧する。この際、制御部7は、加熱室5内の圧力を計測する圧力センサ(図示せず)の圧力計測結果が、所定の発酵用目標圧力となるように加減圧ポンプ12を制御する。この発酵用目標圧力は、大気圧よりも高くなるように設定(例えば、0.18MPa)される。また、制御部7は、電熱ヒータ6を加熱作動させて、加熱室5内の温度を計測する温度センサ(図示せず)の温度計測結果が、所定の発酵用目標温度(例えば、35℃)となるように制御する。従って、制御部7は、発酵工程を、所定時間(例えば、110分)、所定温度(例えば、35℃)、大気圧よりも高い加圧雰囲気下(例えば、0.18MPa)で実行する。このような条件下で発酵工程を実行することにより、製パン材料は発酵が所望程度進行した状態となり、発酵工程を終了して焼成工程に移行できる状態となっている。即ち、加圧の発酵用目標圧力を若干低く設定し、加圧時間も若干短く設定した以外は、実施例1と同様にして、発酵工程を実行する。
【0044】
次に、制御部7は、発酵工程の終了と同時に、加減圧ポンプ12の加圧作動を停止させ、逆に、減圧作動させて、密閉された加熱室5内の空気を強制的に吸引して加熱室5内を減圧する。この際、制御部7は、加熱室5内の圧力を計測する圧力センサの圧力計測結果が、所定の焼成用目標圧力となるように加減圧ポンプ12を制御する。この焼成用目標圧力は、大気圧よりも低い圧力に設定(例えば、0.05MPa)される。また、制御部7は、電熱ヒータ6を加熱作動させて、加熱室5内の温度を計測する温度センサ(図示せず)の温度計測結果が、所定の焼成用目標温度(例えば、220℃)となるように制御する。従って、制御部7は、焼成工程を、所定時間(例えば、25分)、所定温度(220℃)、大気圧よりも低い減圧雰囲気下(0.05MPa)で実行して、米粉を含む製パン材料を焼き上げてパンを製造する。この実施例2では、混練工程の開始から焼成工程の終了までの総工程時間は、150分とされ、発酵工程の工程時間は、110分とされる。
【0045】
〔比較例2〕
実施例2と同様にして、混練工程を実行する。
次に、制御部7は、混練工程の終了と同時に、混練工程と同様の略大気圧下で、所定時間(例えば、83分)の間、発酵工程を実行する。比較例2の発酵工程は、2つの工程に分割されており、1次発酵工程、成型発酵工程の順に実行される。1次発酵工程は、所定時間(例えば、26分)、所定温度(例えば、32℃)で、成型発酵工程は、所定時間(例えば、57分)、所定温度(例えば、38℃)で実行される。なお、制御部7は、各発酵工程において電熱ヒータ6をそれぞれ加熱作動させて、加熱室5内の温度を計測する温度センサ(図示せず)の温度計測結果が、各発酵工程に対応した所定の発酵用目標温度(例えば、32℃、38℃)となるように制御する。また、比較例2では、1次発酵工程と成型発酵工程との間に混練羽根23を回転させるガス抜き工程を実行して(例えば、10秒)、製パン材料が所望程度以上に膨張することを防止している。従って、制御部7は、2つに分割した発酵工程を、所定時間(例えば、83分)、所定温度、略大気圧雰囲気下で実行する。
次に、制御部7は、成型発酵工程の終了と同時に、電熱ヒータ6を加熱作動させて、加熱室5内の温度を計測する温度センサ(図示せず)の温度計測結果が、所定の焼成用目標温度(例えば、180℃)となるように制御する。従って、制御部7は、焼成工程を、所定時間(例えば、50分)、所定温度(180℃)、略大気圧雰囲気下で実行して、米粉を含む製パン材料を焼き上げてパンを製造する。この比較例2では、混練工程の開始から焼成工程の終了までの総工程時間は、約148分とされ、発酵工程の工程時間は、83分とされる。
【0046】
検討すると、比較例2の米粉及びグルテンを含む製パン材料を用いた略大気圧下で実行される発酵工程は、83分であり比較的短い発酵時間であるが、発酵が進行することに伴うガスの発生により製パン材料が所定の膨張量にまで膨張してしまい、製パン材料を収縮させるため、1次発酵工程と成型発酵工程との間に1回のガス抜き工程を実行している。
これに対して、実施例2では、米粉及びグルテンを含む製パン材料を用いた発酵工程は、加圧雰囲気下(例えば、0.18MPa)で実行されていることから、発酵により発生したガスが製パン材料を膨張させようとしても、製パン材料は外表面全体に所定の圧力(大気圧より高い圧力)を受け、その膨張が抑制されている。このため、発酵工程において発酵が所望程度進行したと判断できる所定の膨張量となるまでの時間は、発酵工程が終了する時間(例えば、110分)と比較的長い時間となっている。
すなわち、実施例1と比較して実施例2では、発酵工程における加圧の発酵用目標圧力が若干低く設定されていることから、所定の膨張量となるまでの時間は若干短くなり、その結果、発酵工程の時間も若干短くなっているが、発酵工程において加圧を実行しない比較例2と比較すると実施例2では、発酵工程の時間は充分に長くなっている。
つまり、米粉を含む製パン材料を用いた場合において、発酵工程においてガス抜き工程を略実行しない状態で、発酵が所望程度進行するまでの発酵時間を長く確保することができる。
【0047】
また、実施例2では、焼成工程は減圧雰囲気下(例えば、0.05MPa)で実行されていることから、製パン材料は外表面全体に所定の圧力(大気圧よりも低い圧力)を受け、製パン材料の膨張が促進されることとなる。このため、焼成工程において膨張が所望程度進行したと判断できる所定の膨張量となるまでの時間に関して、加熱室5内を減圧した場合(例えば、0.05MPa)の当該時間を、減圧しない場合(略大気圧下)よりも短くすることができ、さらに高温の220℃で焼き上げることによって、焼成を完了することができる。
つまり、実施例2では、発酵工程においてガス抜き工程を略実行しない状態で、発酵が所望程度進行するまでの発酵時間を長く確保(例えば、110分)しながら、一方で、焼成工程において焼成が所望程度進行するまでの焼成時間を短くする(例えば、25分とする)ことにより、製パン材料の混練工程、発酵工程及び焼成工程を実行して、パンを焼き上げるまでに必要な総工程時間(例えば150分)が、不必要に長くなることを防止することができる。これに対し、比較例2では、混練工程、発酵工程、ガス抜き工程及び焼成工程を実行する総工程時間(例えば、約148分)は、実施例2の総工程時間(例えば、150分)と略同一であるにも拘わらず、発酵工程の時間(例えば、83分)は、実施例2の発酵工程の時間(例えば、110分)よりも比較的短い時間となっている。
【0048】
これにより、最終的に、パンを焼き上げるまでに必要な総工程時間が、実施例2では、圧力を変動させない比較例2の場合における総工程時間よりも長くなることを防止しながら、発酵工程の発酵時間を長くして発酵を十分に進行させつつ、焼成工程の工程時間を焼成を十分に行える範囲内で短くすることができる。
【0049】
よって、本願では、実施例1及び2に示すように、米粉を含む製パン材料を用いて製パンする際に、ガス抜き工程を実行しない構成としながら、発酵工程をできるだけ長い時間実行できることが実証された。
【0050】
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態では、制御部7が、発酵工程における加熱室5内の発酵用目標温度を35℃に設定したが、当該発酵用目標温度は、製パン材料の発酵を阻害しない温度範囲(3〜40℃程度の温度範囲)であれば、適宜変更することができる。
例えば、発酵工程において、加熱室5内の温度を、混練工程における加熱室内の温度(例えば、常温(25〜27℃程度)よりも低い温度(例えば、3〜10℃程度)に設定することもできる。これにより、発酵に関与する酵母の活性を低下させ、より長時間且つ低速度での発酵を進行させることができる。例えば、加熱室5内の発酵用目標温度を3〜10℃とした場合の発酵工程の時間を、発酵工程における加熱室5内の発酵用目標温度を35℃にした場合の発酵工程の時間に対して2〜6倍程度長くすることができる。よって、ガス抜き工程を実行することなく、発酵工程において発酵が所望程度進行したと判断できる所定の膨張量となるまでの時間をより長くすることができ、生地の熟成をより十分に進行させることができる。なお、この際には、温度調整部として加熱室5内を加熱する電熱ヒータ6に加えて、加熱室5内を冷却する冷媒等を循環通流させる冷却部を備える構成とすることが好ましい。
【0051】
(B)上記実施形態では、制御部7は、発酵工程において、混練羽根23を回転させるガス抜き工程を実施しない構成としたが、米粉を含む製パン材料の組織の分断が発生しない程度であれば、ガス抜き工程を略実行しない範囲として、所定の短い時間で且つ1回だけガス抜き工程を実行することもできる。
【0052】
(C)上記実施形態では、混練工程、発酵工程及び焼成工程を、それぞれ所定時間及び所定温度で実行する構成としたが、これら時間及び温度は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能である。
【0053】
(D)上記実施形態では、混練工程、発酵工程及び焼成工程を実行する構成について説明したが、制御部7が、予め設定された運転状態で、混練工程や発酵工程或いは焼成工程の前に、電熱ヒータ6を加熱作動させて加熱室5内を予熱する予熱工程を実行する構成としてもよい。また、制御部7が、焼成工程の終了後に必要に応じて、電熱ヒータ6を加熱作動させて焼き上がったパンを保温する保温工程を実行してもよい。さらに、制御部7が、予熱工程と混練工程との間、混練工程と焼成工程との間に、電熱ヒータ6や電動モータ25等を作動させず放置する放置工程を所定時間実行するように構成してもよい。
【0054】
(E)上記実施形態では、ケーシングCの上方に上方開口部4を設け、当該上方開口部4を蓋体3により閉塞する構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、ケーシングCの前方や側方に開口部を設け、当該開口部を蓋体3により閉塞する構成としてもよい。
【0055】
(F)上記実施形態における実施例1では、制御部7は、発酵工程の終了と同時に、加減圧ポンプ12の加圧作動を停止させて、加減圧ポンプ12により略大気圧の空気を加熱室5内に供給させたが、加熱室5内に略大気圧の空気を供給せずに、そのままの圧力状態で焼成工程を実行する構成としてもよい。
【0056】
(G)上記実施形態では、加熱室5内の圧力を略大気圧とした状態で混練工程を実行したが、制御部7が圧力調整部を加圧作動させて、大気圧よりも高い圧力下で混練工程を実行する構成としてもよい。
【0057】
(H)上記実施形態では、圧力調整部として加減圧ポンプ12を用いたが、加熱室5内を大気圧よりも加圧できる構成であれば特に制限なく用いることができ、例えば、加圧ポンプを採用することもできる。
【0058】
(I)上記実施形態では、製パン材料として米粉及びグルテンを含む原材料を用いて説明したが、製パン材料としてはグルテンを含まず米粉を含む原材料を用いて、製パンを行う構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、米粉を含む製パン材料を用いて製パンする際に、ガス抜き工程を略実行しない(多くとも1回だけ実行する)構成としながら、発酵工程をできるだけ長い時間実行できる製パン機及びその製パン機の運転方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
2 パンケース
3 蓋体
4 上方開口部(開口部)
5 加熱室
6 電熱ヒータ(温度調整部)
7 制御部
12 加減圧ポンプ(圧力調整部)
23 混練羽根
C ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を介して内部にパンケースを収容するケーシングと、前記ケーシングの開口部を密封状態で閉塞する蓋体と、前記ケーシングと前記蓋体とにより形成される加熱室内を温度調整する温度調整部と、前記温度調整部の運転を制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記パンケース内に配設された混練羽根により前記パンケース内の製パン材料を混練する混練工程と、前記温度調整部を加熱作動させて前記製パン材料を発酵する発酵工程とを実行し、さらに、前記温度調整部を加熱作動させて前記製パン材料を焼き上げる焼成工程を実行するように構成された製パン機であって、
前記製パン材料として少なくとも米粉を含む原材料を用い、
前記加熱室内の圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記制御部が、前記発酵工程における前記加熱室内の圧力が大気圧よりも高くなるように、前記圧力調整部を加圧作動させる製パン機。
【請求項2】
前記制御部が、前記発酵工程において前記加熱室内の圧力が大気圧よりも高くなるように前記圧力調整部を加圧作動させた後、前記焼成工程における前記加熱室内の圧力が大気圧よりも低くなるように前記圧力調整部を減圧作動させる請求項1に記載の製パン機。
【請求項3】
前記制御部が、大気圧下で前記発酵工程及び前記焼成工程を実行する場合の総工程時間と、前記圧力調整部を加圧作動させて前記発酵工程を実行する時間及び前記圧力調整部を減圧作動させて前記焼成工程を実行する時間の総工程時間との両総工程時間が略同一の長さの時間になるように、前記温度調整部及び前記圧力調整部を作動させる請求項2に記載の製パン機。
【請求項4】
前記制御部が、前記発酵工程において、前記加熱室内の温度が3〜10℃の低温範囲内となるように、前記温度調整部及び前記圧力調整部を作動させる請求項1〜3の何れか一項に記載の製パン機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の製パン機の運転方法であって、
前記製パン材料として少なくとも米粉を含む原材料を用い、
前記発酵工程における前記加熱室内の圧力を大気圧よりも高くして、当該発酵工程を実行する製パン機の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−94573(P2013−94573A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242678(P2011−242678)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】